JP4533209B2 - 酸化物系セラミックスおよびその製造方法 - Google Patents
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外部加熱を行なわない製造方法として、燃焼合成法によるセラミックス粉末の合成が提案されている(特許文献1)。
燃焼合成法は、外部加熱を必要とすることなく、化合時に放出される大量の化学熱反応を利用して連鎖的に物質を合成する方法である。
上記特許文献1による製造方法では、1種類の金属酸化物と2種類の異なる金属元素の計3種類の原料を出発原料とし、金属間化合物あるいは非酸化物セラミックスと酸化物セラミックスの2種類を合成している。例えば、酸化ニッケル粉末とアルミニウム粉末とアルミナ粉末とを混合し成形体とした後、高圧反応容器内に収納し、アルゴン雰囲気下で該成形体の上端面を着火することによりアルミニウム粉末の酸化燃焼反応を誘導し、還元されたニッケルが過剰に添加したアルミニウムと反応してNiAlを合成しながら、燃焼反応が連鎖的に進行する。その結果、外部加熱なしに金属間化合物の1つであるNiTiのインゴットを製造することができる。
また加熱により酸素を発生するイオン結合性物質を含む出発原料を用いて、燃焼合成法で酸化物系セラミックスを製造すると、副生物として残存するイオン結合性物質がその後の酸化物系セラミックスの焼結を阻害するという問題がある。
また、上記水で洗浄するときの粉末の平均粒径が100μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の酸化物系セラミックスの製造方法によれば、合成粉末を微粉化した後、水で洗浄することで十分な副生成物の除去が可能となるので、理論密度に近い焼結体が得られる。
4族A元素は単独でもあるいは混合しても使用できる。また、これら4族A元素と同時に配合できる元素としては、ラザホージウム(Rf)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロビウム(Eu)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)、アスタチン(At)等が挙げられる。
本発明において、金属粉未の比表面積は、BET法により測定された値をいう。
本発明に使用できる平均粒子径としては150μm以下、好ましくは0.1〜100μmである。150μmをこえると、他の原材料との混合が十分でなくなり、燃焼波が伝播しない場合が生じる。
表面に凹凸が形成された粒子またはいびつな形状の平均粒子径の測定方法は、画像解析法が好ましい。
2族A元素は単独でもあるいは混合しても使用できる。また、これら2族A元素と同時に配合できる元素としては、Rf、Sn、Sb、Te、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Bi、Po、At等が挙げられる。
これらの中で過塩素酸塩類、塩素酸塩類、亜塩素酸塩類が好ましく、特にNaClO4、KClO4は、副生成物であるNaCl、KClが繰り返し純水で洗浄することで除去できるので好適である。なお、過塩素酸塩類の場合、生成する炭酸ガスがガス化するため、合成粉末には残存しない。
反応原料はそれぞれ所定割合で配合するが、燃焼合成反応において誘電体セラミックスは、例えばチタン酸バリウムの場合、以下の化学反応式にしたがって生成する。各反応原料は、4族金属粉末と2族炭酸塩とは反応に必要なそれぞれのモル質量に相当する量を配合するが、酸素発生物質は反応に必要なモル質量以上を配合できる。
Ti+BaCO3+0.5NaClO4 → BaTiO3+CO2↑+0.5NaCl
混合粉末は、るつぼに投入して燃焼合成を行なうが、そのるつぼの材質としては好ましくは非酸化物である炭素(C)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素Si3N4等が使用できる。これらの中で炭素(C)材が熱伝導と形状加工性に優れているので好ましい。
混合粉末をるつぼへ投入する方法としては、混合粉末をパウダーベット状に敷き詰めたり、敷き詰めた後圧縮したり、ペレット状に押し固めたものをるつぼへ投入する方法等が使用できる。
燃焼合成法の条件について、反応系の断熱火炎温度は1500℃以上である。1500℃以上であれば、燃焼波が伝播するからである。
燃焼合成はチャンバー内で行なうが、その雰囲気としては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の希ガス雰囲気が好ましい。なお、反応生成物の誘電特性を劣化させなければ、窒素ガス、炭酸ガス雰囲気等を利用することも可能である。また、酸素分圧を制御可能であれば、酸素ガスを使用することも可能である。
燃焼合成を開始させるための混合粉末への着火方法は、金属粉が着火発熱可能となる方法であれば特に限定されない。カーボンフイルムを着火発熱させて熱源とし、混合粉末に接触させて着火発熱させる方法が取り扱いに優れているので好ましい。
上記配合割合で燃焼合成反応させ、反応生成物を粉砕する工程を経て、水で洗浄することにより、理論密度に近い緻密化される酸化物系セラミックスが得られる。
表1に示す比表面積の異なる4族金属粉末、2族炭酸塩、酸素発生物質をそれぞれ表1に示すモル比でボールミルを用いて5時間混合することにより混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100g)をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、アルゴン(Ar)ガスを封入し、チャンバーの内圧を0.1MPaとした。
次にその各セラミック粉末の10gと、洗浄液である蒸留水200mlとをビーカに入れ、10分間超音波洗浄を行なった。洗浄処理後、電気伝導度計を用いて洗浄液の電気伝導度を測定した。測定後、洗浄液を除去し、新しい蒸留水を200ml投入し、10分間超音波洗浄を行なった。再度、電気伝導度計を用いて洗浄液の電気伝導度を測定した。この操作を6回繰り返した。洗浄液を除去して、120℃で24時間乾燥した後、粉末の結晶相の同定をX線回折装置(XRD)を用いて行なった。XRDの結果、全ての材料は、SrTiO3であることがわかった。測定結果を表2に示す。
得られた焼結体は、5.18g/cm3の理論密度に対して、すべて5.10g/cm3(相対密度:約98.5%)以上であり、十分緻密化していた。緻密化の度合いの判定基準として、相対密度が96%以上を○、96%未満を×とした。結果を表2に示す。
表3に示す比表面積のTi金属粉末、炭酸塩、過酸化物をそれぞれ所定のモル比でボールミルを用いて5時間混合することで混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100g)をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、Arガスを封入し、チャンバーの内圧を0.1MPaとした。合成実験の結果を表4に示す。Ti金属粉の比表面積が0.01より小さいため、燃焼波が伝播せず、合成粉を得ることができなかった。
表3に示す比表面積のTi金属粉末と断熱火炎温度を下げるためにTiO2を併用し、炭酸塩、過酸化物をそれぞれ所定のモル比でボールミルを用いて5時間混合することで混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100g)をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、Arガスを封入し、チャンバーの内圧を0.1MPaとした。合成実験の結果を表4に示す。断熱火炎温度が1500℃より低いため、燃焼波が伝播せず、合成粉を得ることができなかった。
表3に示す金属粉末、炭酸塩、過酸化物をそれぞれ所定のモル比でボールミルを用いて5時間混合することで混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100g)をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、Arガスを封入し、チャンバーの内圧を0.1MPaとした。
比較例3においては、燃焼波が伝播し、燃焼合成法により合成粉末と副生成物(NaCl)が得られた。この両者を粉砕することなく、洗浄を行なった。
未洗浄セラミックス粉の10gと、洗浄液である蒸留水200mlとをビーカに入れ、10分間超音波洗浄を行なった。洗浄処理後、電気伝導度計を用いて洗浄液の電気伝導度を測定した。測定後、洗浄液を除去し、新しい蒸留水を200ml投入し、10分間超音波洗浄を行なった。再度、電気伝導度計を用いて洗浄液の電気伝導度を測定した。この操作を7回繰り返した。次に、合成粉末をアルミナ製乳鉢を用いて粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした後、再度蒸留水を200ml投入し、10分間超音波洗浄を行なった。電気伝導度計を用いて洗浄液の電気伝導度を測定した結果、160μS/cmと実施例の3回洗浄品よりその値は大きく、まだNaClの除去が不十分であった。
次に、洗浄液を除去して、120℃で24時間乾燥した後、粉末の結晶相の同定をX線回折装置(XRD)を用いて行なった。XRDの結果、全ての材料は、SrTiO3であることがわかった。
得られた酸化物系セラミックス粉末に成形用バインダ(ポリビニルブチラール樹脂)を1質量%添加して混合した。次に4gの混合粉末を直径20mmの金型に投入し、1.5ton/cm2の圧力を加えてグリーン体を成形した。そのグリーン体を大気雰囲気の電気炉に投入し、600℃で1時間保持して有機分を除去し、続けて1300℃で3時間焼成を行なった。
得られた焼結体は、5.18g/cm3の理論密度に対して、4.5g/cm3(相対密度:約86.9%)以下であり緻密化していなかった。緻密化の度合いの判定基準として、相対密度が96%以上を○、96%未満を×とした。結果を表4に示す。
Claims (6)
- 比表面積が0.01〜2m2/gの4族元素を含む金属粉末と、2族元素を含む元素の炭酸塩と、加熱により酸素を発生するイオン結合性物質とを少なくとも含む反応原料をそれぞれ所定割合で配合し、断熱火炎温度が1500℃以上である燃焼合成法により反応させて得られた反応生成物を、粉砕後、水で複数回超音波洗浄して得られる粉末であって、
洗浄後の洗浄水の電気伝導度が150μS/cm以下であることを特徴とする酸化物系セラミックス。 - 前記水で洗浄するときの粉末の平均粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1記載の酸化物系セラミックス。
- 前記4族元素がチタンまたはジルコニウムであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の酸化物系セラミックス。
- 前記2族元素がストロンチウム、バリウムおよびカルシウムから選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の酸化物系セラミックス。
- 前記加熱により酸素を発生する物質が過塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の酸化物系セラミックス。
- 比表面積が0.01〜2m2/gの4族元素を含む金属粉末と、2族元素を含む元素の炭酸塩と、加熱により酸素を発生するイオン結合性物質とを少なくとも含む反応原料をそれぞれ所定割合で配合する工程と、
前記所定割合で配合された配合物を断熱火炎温度が1500℃以上である燃焼合成法により反応させる工程と、
前記反応生成物を粉砕する工程と、
前記粉砕された粉末を水で複数回超音波洗浄することにより、洗浄後の洗浄水の電気伝導度を150μS/cm以下とする工程とを備えることを特徴とする酸化物系セラミックスの製造方法。
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