JP2008056530A - 誘電体セラミックスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼合成法により得られ、良好な温度係数を維持したまま比誘電率が高い等の優れた誘電特性を有する誘電体セラミックスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含み、燃焼合成法により得られる誘電体セラミックスであって、モル組成比で SrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63 (ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )であり、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを少なくとも含む反応原料においてそれぞれの粉末を、該誘電体セラミックスが上記モル組成比となる割合で配合し、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成法により得られる。
【選択図】なし
【解決手段】少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含み、燃焼合成法により得られる誘電体セラミックスであって、モル組成比で SrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63 (ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )であり、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを少なくとも含む反応原料においてそれぞれの粉末を、該誘電体セラミックスが上記モル組成比となる割合で配合し、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成法により得られる。
【選択図】なし
Description
本発明は燃焼合成法により得られ、誘電特性に優れる所定組成を有する酸化物系の誘電体セラミックスおよびその製造方法に関する。
近年、移動電話や衛星通信等の高周波通信技術の著しい発展に伴い、誘電体共振器、フィルター等の高周波デバイス用の誘電体セラミックスに対する需要はますます増えている。通信信号の周波数および通信機の大きさは、例えば通信機内部に組み込まれたアンテナ基板の比誘電率が高くなると、より一層の高周波化および小型化が図れる。比誘電率は、誘電体内部の分極の程度を示すパラメータであり、アンテナ材料に用いられる誘電体セラミックスの比誘電率が高いほど、電子部品回路を伝播する信号の波長は短くなり、信号は高周波化する。従って、比誘電率の高い電子部品を使用できれば、高周波化ひいては回路の短縮化および通信機等の小型化が図れる。また上記のようなデバイスに用いられる誘電体セラミックスに対しては、低い誘電損失および良好な温度安定性も同時に要求される。
上記用途等に使用されるものとして、組成式が、w・Li2O−x・CaO−y・A2O3 −z・TiO2 ただし、AはSm,Ndのいずれかから選択されるものであり、また、上記各w,x,y,zが、0.0モル%<w≦25.0モル%、0.0モル%≦x≦50.0モル%、0.0モル%<y≦30.0モル%、0.0モル%<z≦80.0モル%の範囲で表せるマイクロ波用誘電体磁器組成物が知られている(特許文献1参照)。この組成物は、w・Li2O−x・CaO−y・A2 O3 −z・TiO2 100 重量部に対して、マンガン酸化物、ビスマス酸化物、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫のいずれかから選択される1つを 10 重量部以下含有せしめて得られている。
また、一般式xMO−yLa2O3−zTiO2(M=Sr、Ca;x:y:z= 1:2:4、2:2:5、1:2:5または1:4:9)の新規なセラミックス誘電体組成物および粉末状のペロブスカイトの製造、該粉末の適当な形状への成形、乾燥、焼成および最終処理からなる製造方法が知られている(特許文献2参照)。
また、一般式xMO−yLa2O3−zTiO2(M=Sr、Ca;x:y:z= 1:2:4、2:2:5、1:2:5または1:4:9)の新規なセラミックス誘電体組成物および粉末状のペロブスカイトの製造、該粉末の適当な形状への成形、乾燥、焼成および最終処理からなる製造方法が知られている(特許文献2参照)。
従来の上記のような誘電体セラミックスの合成には、1000℃から 2000℃前後に加熱できる炉を用いて長時間、外部加熱を行なわなくてはならない。このため、セラミックスの合成には、膨大なエネルギーと大型の加熱機構を必要とし、これが製造コストを高くする原因となっている。例えば、CaO−SrO−Li2O−Re2O3−TiO2系の誘電体セラミックスを製造する場合では、CaCO3と、SrCO3と、Li2Oと、Re2O3と、TiO2の各粉末をボールミルで湿式混合し、乾燥粉を1100℃×5時間の仮焼処理し、粉砕して誘電体セラミックス粉末としている。
一方、外部加熱を行なわない製造方法として、燃焼合成法(自己伝播高温合成( self propagating high temperature synthesis:SHS ))によるセラミックス粉末の合成が提案されている。該方法は、金属間化合物やセラミックスの生成時の発熱を利用するものであり、化合物の構成元素となる粉体をよく混合して圧粉体をつくり、その一部に高熱を与えると着火して、生成熱を発しながら合成反応が進行することで焼結体を得る方法である。
本発明者らは、燃焼合成方法を利用して得られるCaO−SrO−Li2O−Re2O3−TiO2系の誘電体セラミックス等について出願を行なっている(特願2005−282394)。
本発明者らは、燃焼合成方法を利用して得られるCaO−SrO−Li2O−Re2O3−TiO2系の誘電体セラミックス等について出願を行なっている(特願2005−282394)。
しかしながら、CaO−SrO−Li2O−Re2O3−TiO2系の誘電体セラミックスであっても、そのモル組成比によっては、比誘電率が上述した近年の用途に対応するためには必ずしも十分でない場合がある。また、所定温度における比誘電率を向上させるためにモル組成比を変化させると、使用温度範囲における該比誘電率の温度係数が大きくなるおそれがある。よって、良好な温度係数を維持したまま、比誘電率を向上させるような最適組成の選定が望まれている。
特開平8−109064号公報
特表2005−520773号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、燃焼合成法により得られ、良好な温度係数を維持したまま比誘電率が高い等の優れた誘電特性を有する誘電体セラミックスおよびその製造方法の提供を目的とする。
本発明の誘電体セラミックスは、少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含み、燃焼合成法により得られる誘電体セラミックスであって、上記誘電体セラミックスは、モル組成比で SrO:16 、Li2O:x、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63(ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )であることを特徴とする。
上記誘電体セラミックスは、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを少なくとも含む反応原料においてそれぞれの粉末を、該誘電体セラミックスが上記モル組成比となる割合で配合し、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成法により得られることを特徴とする。
また、上記反応原料であるTi粉末の一部を、TiO2 粉末に置き換えて配合することを特徴とする。
また、上記反応原料に、BaCO3と、ZrO2とが含まれることを特徴とする。
なお、各元素記号は、それぞれSr(ストロンチウム)、Li(リチウム)、Ti(チタン)、O(酸素)、Nd(ネオジム)、Zr(ジルコニウム)、Ba(バリウム)である。
また、上記反応原料であるTi粉末の一部を、TiO2 粉末に置き換えて配合することを特徴とする。
また、上記反応原料に、BaCO3と、ZrO2とが含まれることを特徴とする。
なお、各元素記号は、それぞれSr(ストロンチウム)、Li(リチウム)、Ti(チタン)、O(酸素)、Nd(ネオジム)、Zr(ジルコニウム)、Ba(バリウム)である。
本発明の誘電体セラミックスの製造方法は、少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含み、燃焼合成法により得られる誘電体セラミックスであって、反応原料粉末として少なくとも、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを、得られる誘電体セラミックスがモル組成比で SrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63 (ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )となる割合で配合する工程と、上記所定割合で配合された配合物を、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成法により反応させる工程と、上記燃焼合成反応により得られた反応生成物を粉砕する工程と、上記粉砕された粉末を水で洗浄する工程とを備えることを特徴とする。
本発明の誘電体セラミックス(少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含む)は、燃焼合成法により得られ、モル組成比で SrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63 (ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )であるので、良好な温度係数を維持しつつ比誘電率が高い等、誘電特性に優れる。
また、燃焼合成法で合成されるので、従来の外部加熱を行なう方法と比較して、短時間で製造でき、低コストである。
また、燃焼合成法で合成されるので、従来の外部加熱を行なう方法と比較して、短時間で製造でき、低コストである。
燃焼合成反応時において、Ti粉末の一部をTiO2 粉末に置き換えて配合するので、混合時に爆発や発火の危険性がなく、置き換えられたTiO2粉末が燃焼合成反応において、反応希釈剤として作用するため断熱火炎温度の制御が容易になる。
また、反応原料にBaCO3と、ZrO2とが含まれるので、Srの位置にBaが、Tiの位置にZrが一部入り込み、比誘電率は大きくなり、誘電正接は低くなる等、誘電特性が向上する。
本発明の誘電体セラミックスの製造方法は、各反応原料粉末の配合割合を、得られる誘電体セラミックスが、誘電特性に優れる所定組成となるように決定するので、不純物が少なく優れた誘電特性を有する上記の誘電体セラミックスを得ることができる。また、合成粉末を微粉化した後、水で洗浄することで十分な副生成物の除去が可能となるので、理論密度に近い焼結体が得られる。
本発明の誘電体セラミックスは、少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを、必要に応じて、Re(Nd以外の希土類元素)、BaおよびZrを構成元素として含む、SrO−Li2O−Nd2O3−Re2O3−TiO2系の誘電体セラミックスであり、燃焼合成法により得られる。本発明の誘電体セラミックスは、そのモル組成比をSrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63 (8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )とすることで、優れた誘電特性を有している。
燃焼合成法としては、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを少なくとも含む反応原料においてそれぞれの粉末を、該誘電体セラミックスが上記モル組成比となる割合で配合し、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成反応を行なう方法が挙げられる。
燃焼合成法としては、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを少なくとも含む反応原料においてそれぞれの粉末を、該誘電体セラミックスが上記モル組成比となる割合で配合し、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成反応を行なう方法が挙げられる。
本発明に用いるTi粉末は、微粉末であることが好ましく、比表面積が 0.01〜2 m2/g である。燃焼波が伝播し、かつ取り扱いやすい好ましい比表面積の範囲は 0.1〜0.6 m2/g である。比表面積が 0.01 m2/g 未満の場合、発熱源となる金属粉未と酸素供給源となる過酸化物との接触面積が少ないため、燃焼波が伝播せず、誘電体セラミックスが合成できない場合がある。また、比表面積が 2 m2/g をこえる金属粉未は極めて活性であり、取り扱いが困難となるため好ましくない。また、Ti粉末に代えて水素化Ti粉末を使用することもできる。本発明において、金属粉未の比表面積は、BET法により測定された値をいう。
本発明に用いるTi粉末は平均粒子径が同一であっても、比表面積が異なると反応性に差が認められた。すなわち、球状よりも比表面積が大きくなる形状の金属粉末を用いると燃焼合成反応がより速やかに進行した。比表面積が大きくなる形状としては、球状粒子表面に複数の凹凸が形成された粒子、粒子全体としていびつな形状の粒子、またはこれらの組み合わせがある。
本発明に使用できる平均粒子径としては 150μm 以下、好ましくは 0.1〜100μm である。150μm をこえると、他の原材料との混合が十分でなくなり、燃焼波が伝播しない場合が生じる。表面に凹凸が形成された粒子またはいびつな形状の平均粒子径の測定方法は、画像解析法が好ましい。
本発明に使用できる平均粒子径としては 150μm 以下、好ましくは 0.1〜100μm である。150μm をこえると、他の原材料との混合が十分でなくなり、燃焼波が伝播しない場合が生じる。表面に凹凸が形成された粒子またはいびつな形状の平均粒子径の測定方法は、画像解析法が好ましい。
また、Ti粉末の一部を置き換えて配合することができるTiO2 粉末は、燃焼合成反応において反応希釈剤として働き、TiO2 粉末の配合量を調整することで断熱火炎温度を制御できる。具体的には、TiO2 の配合割合を上げると、反応の進行速度が低下し、断熱火炎温度が下がる。
また、一般に金属単体とするためには精製が必要であり、例えば、Ti粉末はコストが高いので、該Ti粉末とTiO2 粉末とを併用することにより、コスト削減を図れるという効果も有する。
ただし、該TiO2 粉末を多量に使用すると、反応生成物への不純物の混入のおそれがあり、また、後述の実施例等に示すように所定量をこえて使用すると燃焼波が伝播しなくなるので、コスト面、反応に必要な断熱火炎温度等を考慮して、併用することが好ましい。
また、一般に金属単体とするためには精製が必要であり、例えば、Ti粉末はコストが高いので、該Ti粉末とTiO2 粉末とを併用することにより、コスト削減を図れるという効果も有する。
ただし、該TiO2 粉末を多量に使用すると、反応生成物への不純物の混入のおそれがあり、また、後述の実施例等に示すように所定量をこえて使用すると燃焼波が伝播しなくなるので、コスト面、反応に必要な断熱火炎温度等を考慮して、併用することが好ましい。
本発明の誘電体セラミックスの一部を構成するTiは、上記のTi金属粉末およびTiO2 粉末から供給される。合成時における、これらの粉末の配合量は、上記モル組成比に従い決定される。
本発明に用いる酸素供給源となる物質としては、加熱により酸素を発生させるイオン結合性物質が配合される。該イオン結合性物質としては、KClO3、NaClO3、NH4ClO3等の塩素酸塩類、KClO4、NaClO4、NH4ClO4等の過塩素酸塩類、NaClO2などの亜塩素酸塩類、KBrO3などの臭素酸塩類、KNO3、NaNO3、NH4NO3等の硝酸塩類、NaIO3、KIO3等のよう素酸塩類、KMnO4、NaMnO4・3H2Oの過マンガン酸塩類、K2Cr2O7、(NH4)2Cr2O7等の重クロム酸塩類、NaIO4などの過よう素酸塩類、HIO4・2H2Oなどの過よう素酸類、CrO3などのクロム酸類、NaNO2などの亜硝酸塩類等が挙げられる。
これらの中で過塩素酸塩類、塩素酸塩類、亜塩素酸塩類が好ましく、繰り返し純水で洗浄することで副生成物であるNaCl、KClを除去できるNaClO4、KClO4を用いることがより好ましい。さらにコストの面で有利なNaClO4を用いることが特に好ましい。なお、過塩素酸塩類の場合、生成する炭酸ガスがガス化するため、合成粉末には残存しない。
これらの中で過塩素酸塩類、塩素酸塩類、亜塩素酸塩類が好ましく、繰り返し純水で洗浄することで副生成物であるNaCl、KClを除去できるNaClO4、KClO4を用いることがより好ましい。さらにコストの面で有利なNaClO4を用いることが特に好ましい。なお、過塩素酸塩類の場合、生成する炭酸ガスがガス化するため、合成粉末には残存しない。
本発明において配合する上記イオン結合性物質は、分子内部から放出できる酸素原子により、酸化されていないTi金属を酸化してTiO2 にすることができる量(最低必要量)以上を配合する。
本発明の誘電体セラミックスの一部を構成するSr供給源としてはSrCO3 粉末を、Li供給源としてはLi2CO3 粉末をそれぞれ用いる。これら金属炭酸塩を用いることにより取り扱い性に優れる。
合成時におけるSrCO3 粉末の配合量は、上記モル組成比に従い決定される。すなわち、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、SrCO3 粉末を 16 モル配合する。
また、合成時におけるLi2CO3 粉末の配合量も、上記モル組成比に従い決定される。すなわち、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、Li2CO3 粉末をxモル(8 ≦x≦ 14)配合する。より好ましくは 9 ≦x≦ 13であり、最も好ましくは x=12 である。
合成時におけるSrCO3 粉末の配合量は、上記モル組成比に従い決定される。すなわち、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、SrCO3 粉末を 16 モル配合する。
また、合成時におけるLi2CO3 粉末の配合量も、上記モル組成比に従い決定される。すなわち、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、Li2CO3 粉末をxモル(8 ≦x≦ 14)配合する。より好ましくは 9 ≦x≦ 13であり、最も好ましくは x=12 である。
希土類元素であるNdおよびRe(Nd以外の希土類元素)の供給源としては、それぞれの酸化物(Nd2O3等 )粉末を使用する。Reとしては、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)が挙げられる。これらの中で工業的に特に重要となるのは、La、Pr、Sm等である。
また、本発明の誘電体セラミックスにおけるReは、Nd以外の上記希土類元素が1種単独であっても、2種以上を混合したものであってもよい。
また、本発明の誘電体セラミックスにおけるReは、Nd以外の上記希土類元素が1種単独であっても、2種以上を混合したものであってもよい。
合成時における、これらのNd2O3 粉末およびRe2O3 粉末の配合量は、上記モル組成比に従い決定される。すなわち、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、Nd2O3 粉末およびRe2O3 粉末は合わせて 12 モル配合する。
ここで、Nd2CO3粉末の配合量をyモル、Re2O3 粉末の配合量を(12-y)モルとすると、y≧10であることが好ましく、最も好ましくは y=12 である。
ここで、Nd2CO3粉末の配合量をyモル、Re2O3 粉末の配合量を(12-y)モルとすると、y≧10であることが好ましく、最も好ましくは y=12 である。
また、本発明の誘電体セラミックスは、その構成元素としてBaおよびZrを微量含むことが好ましい。Ba元素を微量配合することにより、骨格となるSrの位置にイオン半径の大きいBaが入り込むため、比誘電率は大きくなる。Tiよりもイオン半径の大きいZrを微量配合すると、格子間隔が広がり、比誘電率が向上する。
このBa供給源としては、BaCO3粉末を、Zr供給源としてはZrO2粉末をそれぞれ用いる。なお、BaCO3粉末に代えてBaO2粉末を用いることもできる。
合成時における、これらの微量元素源となる各粉末の配合量は、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、それぞれ 0.01〜5 モル配合する。より好ましくは、それぞれ 0.18 モル配合する。
合成時における、これらの微量元素源となる各粉末の配合量は、例えばTi金属粉末およびTiO2を合わせて 63 モル配合する場合は、それぞれ 0.01〜5 モル配合する。より好ましくは、それぞれ 0.18 モル配合する。
本発明の誘電体セラミックスの最適組成は、モル組成比でSrO:16、Li2O:12、Nd2O3:12、TiO2:63、BaO:0.18、ZrO:0.18 である。
該最適組成とする場合の各反応原料は、SrCO3:Li2CO3:Nd2O3:TiO2+Ti粉末:BaCO3:ZrO2=16:12:12:63:0.18:0.18 のモル比で配合する。なお、NaClO4等のイオン結合性物質は最低必要量以上を適量配合する。
該最適組成とする場合の各反応原料は、SrCO3:Li2CO3:Nd2O3:TiO2+Ti粉末:BaCO3:ZrO2=16:12:12:63:0.18:0.18 のモル比で配合する。なお、NaClO4等のイオン結合性物質は最低必要量以上を適量配合する。
本発明において上記の最適組成の誘電体セラミックスを得るための燃焼合成反応の一例を下記反応式(1)〜(4)に示す。
TiO2 粉末を用いない(1)式の場合、反応が急激過ぎて合成粉末の回収が困難となるおそれがある。また、(4)式のようにTi粉末に置き換えるTiO2 粉末が多すぎると、上述したように燃焼波が伝播しなくなる等のおそれがある。
上記反応原料をそれぞれ所定割合で配合する工程において、過塩素酸ナトリウム等と、Ti粉末とを直接接触させると発火、爆発等の危険がある。よって、Ti粉末は予め安定な金属炭酸塩(SrCO3 等)と予備混合して安定な中間原料とした後、過塩素酸ナトリウム等と混合することが好ましい。
上記予備混合に用いる撹拌機は、タンブラー、ヘンシェルミキサ、ボールミル、乳鉢と乳棒等を用いた混合等特に制限されることなく使用できる。また、得られた中間原料に、過塩素酸ナトリウム等を加えての混合に用いる撹拌機は、撹拌翼と撹拌機壁面とのクリアランスが十分にあり、Ti粉末と、過塩素酸ナトリウム等とに撹拌によるせん断力の加わることの少ないヘンシェルミキサや撹拌翼のないボールミル等を使用することが好ましい。
上記予備混合に用いる撹拌機は、タンブラー、ヘンシェルミキサ、ボールミル、乳鉢と乳棒等を用いた混合等特に制限されることなく使用できる。また、得られた中間原料に、過塩素酸ナトリウム等を加えての混合に用いる撹拌機は、撹拌翼と撹拌機壁面とのクリアランスが十分にあり、Ti粉末と、過塩素酸ナトリウム等とに撹拌によるせん断力の加わることの少ないヘンシェルミキサや撹拌翼のないボールミル等を使用することが好ましい。
混合粉末は、るつぼに投入して燃焼合成を行なうが、そのるつぼの材質としては好ましくは非酸化物である炭素、炭化珪素、窒化珪素等が使用できる。これらの中で炭素材が反応容器材料としての熱伝導性と形状加工性とに優れているので好ましい。
混合粉末をるつぼへ投入する方法としては、混合粉末をパウダーベット状に敷き詰めたり、敷き詰めた後圧縮したり、ペレット状に押し固めたものをるつぼへ投入する方法等が使用できる。
混合粉末をるつぼへ投入する方法としては、混合粉末をパウダーベット状に敷き詰めたり、敷き詰めた後圧縮したり、ペレット状に押し固めたものをるつぼへ投入する方法等が使用できる。
上記所定割合で配合された配合物を燃焼合成法により反応させる。燃焼合成法の条件について、反応系の断熱火炎温度は 1500℃以上である。1500℃以上であれば、燃焼波が伝播するからである。
燃焼合成はチャンバー内で行なうが、その雰囲気としては、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)等の希ガス雰囲気が好ましい。なお、反応生成物の誘電特性を劣化させなければ、窒素ガス、炭酸ガス雰囲気等を利用することも可能である。また、酸素分圧を制御可能であれば、酸素ガスを使用することも可能である。
燃焼合成を開始させるための混合粉末への着火方法は、金属粉が着火発熱可能となる方法であれば特に限定されない。カーボンフイルムを着火発熱させて熱源とし、混合粉末に接触させて着火発熱させる方法が取り扱いに優れているので好ましい。燃焼合成反応は、約 1〜60 秒で終了する。
燃焼合成はチャンバー内で行なうが、その雰囲気としては、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)等の希ガス雰囲気が好ましい。なお、反応生成物の誘電特性を劣化させなければ、窒素ガス、炭酸ガス雰囲気等を利用することも可能である。また、酸素分圧を制御可能であれば、酸素ガスを使用することも可能である。
燃焼合成を開始させるための混合粉末への着火方法は、金属粉が着火発熱可能となる方法であれば特に限定されない。カーボンフイルムを着火発熱させて熱源とし、混合粉末に接触させて着火発熱させる方法が取り扱いに優れているので好ましい。燃焼合成反応は、約 1〜60 秒で終了する。
反応生成物は、るつぼ中において塊状である。該反応生成物の粉砕は、平均粒径が 10μm 以下となる粉砕方法であれば特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、乳鉢と乳棒等で行なうことができる。平均粒径が 100μm をこえると、後工程の洗浄工程での洗浄が十分でなくなり、副生成物であるイオン結合性塩が残留しやすくなる。
粉砕工程後の微粉末には、副生成物であるイオン結合性塩が含まれる。例えばNaClO4 を原料に用いた場合はNaClが、KClO4 を原料に用いた場合はKClがそれぞれ生成する。これらの塩は上述のように水で洗浄することで除去できる。
塩類が燃焼合成反応後の合成粉末に存在すると焼結性が阻害される。焼結性を阻害しない程度まで塩類を減らす基準としては、洗浄液の電気伝導率が 150μS/cm 以下である。すなわち洗浄回数、洗浄量の如何にかかわらず、上記合成粉末を水で洗浄したとき洗浄後の洗浄水の電気伝導率が 150μS/cm 以下であればよい。
塩類が燃焼合成反応後の合成粉末に存在すると焼結性が阻害される。焼結性を阻害しない程度まで塩類を減らす基準としては、洗浄液の電気伝導率が 150μS/cm 以下である。すなわち洗浄回数、洗浄量の如何にかかわらず、上記合成粉末を水で洗浄したとき洗浄後の洗浄水の電気伝導率が 150μS/cm 以下であればよい。
以上の工程により誘電体セラミックス(合成粉末)が得られる。また、用途に応じて、洗浄乾燥後、該粉末を焼結してもよい。焼結するとき、ポリビニルブチラールなどの成形用粘結剤を配合できる。焼結条件としては、10〜100 MPa の圧力で成形後、大気雰囲気下、1200〜1500℃の温度で焼成する条件が挙げられる。
また、燃焼合成で得られた合成粉末の結晶構造をさらに安定させたり、微量な不純物を除去するため、900〜1100℃で仮焼することも可能である。
また、燃焼合成で得られた合成粉末の結晶構造をさらに安定させたり、微量な不純物を除去するため、900〜1100℃で仮焼することも可能である。
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例5
以下の方法で誘電体セラミックスを合成した。各反応原料を表1に示すモル配合比(モル比)でボールミルを用いて 5 時間混合することにより混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100 g )をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、アルゴン(Ar)ガスを封入し、チャンバーの内圧を 0.1 MPa とした。
なお、表1中において、Ti金属粉末は住友チタニウム社製TSP−350およびTILOP−150(分級して比表面積を 0.005 m2/g に調整)を、TiO2、SrCO3、CaCO3、Li2CO3、NaClO4、BaCO3、ZrO2は和光純薬工業社製各試薬を、Nd2O3およびSm2O3は信越化学工業社製品を、それぞれ用いた。
以下の方法で誘電体セラミックスを合成した。各反応原料を表1に示すモル配合比(モル比)でボールミルを用いて 5 時間混合することにより混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100 g )をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、アルゴン(Ar)ガスを封入し、チャンバーの内圧を 0.1 MPa とした。
なお、表1中において、Ti金属粉末は住友チタニウム社製TSP−350およびTILOP−150(分級して比表面積を 0.005 m2/g に調整)を、TiO2、SrCO3、CaCO3、Li2CO3、NaClO4、BaCO3、ZrO2は和光純薬工業社製各試薬を、Nd2O3およびSm2O3は信越化学工業社製品を、それぞれ用いた。
実施例1〜6および比較例1、4、5の組成物について燃焼波が伝播し、燃焼合成法により合成粉末と副生成物(NaCl)が得られた。アルミナ製乳鉢を用いて合成粉末を粉砕し、未洗浄誘電体セラミックス粉末を得た。
得られた未洗浄誘電体セラミックス粉末を十分水洗し、この粉末に付着したNaClを除去して誘電体セラミックスを得た。
得られた誘電体セラミックスについて、容量法により 400MHzの周波数帯において、−10℃〜70℃の温度範囲で、25℃を基準とする比誘電率およびその温度係数τεr、ならびに誘電正接を測定した。容量法に用いた測定装置はインピーダンスアナライザー:E4991A(アジレント・テクノロジー社製)、電極は16453A(アジレント・テクノロジー社製)をそれぞれ用いた。
得られた未洗浄誘電体セラミックス粉末を十分水洗し、この粉末に付着したNaClを除去して誘電体セラミックスを得た。
得られた誘電体セラミックスについて、容量法により 400MHzの周波数帯において、−10℃〜70℃の温度範囲で、25℃を基準とする比誘電率およびその温度係数τεr、ならびに誘電正接を測定した。容量法に用いた測定装置はインピーダンスアナライザー:E4991A(アジレント・テクノロジー社製)、電極は16453A(アジレント・テクノロジー社製)をそれぞれ用いた。
本発明の誘電体セラミックスは、理論密度に近く緻密化され優れた誘電特性を有するので、誘電体アンテナ、コンデンサ、誘電体共振器、フィルター、圧力センサ、超音波モータ等に使用できる。
Claims (5)
- 少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含み、燃焼合成法により得られる誘電体セラミックスであって、
前記誘電体セラミックスは、モル組成比で SrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63 (ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )であることを特徴とする誘電体セラミックス。 - 前記誘電体セラミックスは、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを少なくとも含む反応原料においてそれぞれの粉末を、該誘電体セラミックスが前記モル組成比となる割合で配合し、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成法により得られることを特徴とする請求項1記載の誘電体セラミックス。
- 前記反応原料であるTi粉末の一部を、TiO2 粉末に置き換えて配合することを特徴とする請求項2記載の誘電体セラミックス。
- 前記反応原料に、BaCO3と、ZrO2とが含まれることを特徴とする請求項2または請求項3記載の誘電体セラミックス。
- 少なくともSr、Li、Ti、O、Ndを構成元素として含み、燃焼合成法により得られる誘電体セラミックスであって、
反応原料粉末として少なくとも、比表面積が 0.01〜2 m2/g のTi粉末と、酸素供給源となるイオン結合性物質と、SrCO3と、Li2CO3と、Nd2O3とを、得られる誘電体セラミックスがモル組成比で SrO:16 、Li2O:x 、Nd2O3:y 、Re2O3:(12-y)、TiO2:63(ReはNd以外の希土類元素、8 ≦x≦ 14、 10 ≦y≦ 12 )となる割合で配合する工程と、
前記所定割合で配合された配合物を、断熱火炎温度が 1500℃以上である燃焼合成法により反応させる工程と、
前記燃焼合成反応により得られた反応生成物を粉砕する工程と、
前記粉砕された粉末を水で洗浄する工程とを備えることを特徴とする誘電体セラミックスの製造方法。
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-
2006
- 2006-08-31 JP JP2006235191A patent/JP2008056530A/ja not_active Withdrawn
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