JP4766859B2 - 画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

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Description

本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真方式を用いた画像形成装置、及びこれに備えられるプロセスカートリッジに関する。
従来、電子写真プロセスを採用した画像形成装置においては、被帯電体としての感光体表面を帯電させる帯電手段を有している。帯電手段で用いる帯電方式の一つとして、近接放電による帯電方式がある。これは、感光体表面に帯電部材を接触させたり非接触で近接させたりして近接放電により感光体表面の帯電を行う方式である。
近年、高画質化、装置の小型化などがますます望まれる中、帯電装置も高画質化と小型化が課題となっている。このような課題に対して、被帯電体に接触又は近接させた帯電部材を用いる近接放電方式を用いた帯電装置は、大掛かりな帯電装置を必要としないため有効である。
しかしながら、近接放電による帯電方式は感光体表面近傍に放電が集中するため、感光体表面を劣化させる。近接放電による感光体表面の劣化は機械的摺擦とは違い、被帯電体への当接部材がない場合においても発生する。
この、近接放電による感光体表面の劣化は、機械的摺擦の場合と同様、感光体膜圧の減少を引き起こす。
これまで感光体表面の膜厚減少を防止するために採られていた対策としては、次のようなものがあった。例えば、感光体をアモルファスシリコンカーバイトで表面コートして耐磨耗性を向上させたものがある。また、例えば感光体表層の電荷輸送(CTL)層にアルミナ等の無機物を分散させて耐磨耗性を向上させた有機感光体を用いるようにしたものがある(特許文献1及び2参照)。しかしながら、特許文献1及び2に記載の発明は、機械的磨耗に対する耐久性は向上させることができるが、近接放電による感光体表面の化学的劣化を防止することはできない。
またさらに、特許文献3及び4には、放電劣化防止のための手段として、被帯電体表面に潤滑剤または絶縁物質としてのステアリン酸亜鉛を塗布する手段を備えた画像形成装置が開示されている。
特開2002−207308号公報 特開2002−229227号公報 特開2002−244516号公報 特開2002−156877号公報 特開昭52−36016号公報
しかしながら、特許文献3及び4に開示の手段では、上記潤滑剤または絶縁物質としてのステアリン酸亜鉛の塗布量が多いと、この物質が水分子を吸着し、画像ボケを発生したり、あるいは画像のムラが発生するようになる。この現象を防止するため、ステアリン酸亜鉛の塗布方法や塗布量を厳密に制御する必要が生じてくる。
本発明は上記課題に鑑み、近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置において、近接放電に起因する感光体表面の劣化を防止することができ、且つ、この防止策により新たに引き起こされる、高温高湿環境下における異常画像の発生、あるいは塗布ムラに対応した異常画像のムラの発生を、前記防止策において厳密な制御をすることなく抑制し、小型化と安定な画像形成を同時に実現できる画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記問題を解決するための手段を鋭意検討したところ、放電領域において被帯電体表面に保護物質が存在する被帯電体において、さらに被帯電体の表面を、直接加熱する加熱装置により、この問題が解決できることを見いだした。
以下に、上述の問題を解決する手段である本発明の特徴を挙げる。
本発明の画像形成装置は、導電性支持体上に少なくとも感光層を積層し、かつ表面層に亜鉛が存在しない移動する被帯電体と、被帯電体に対して接触または近接して設けられた帯電部材に交流成分を含む電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電装置と、帯電装置によって帯電させられた被帯電体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、潜像形成装置によって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着させる現像装置と、前記被帯電体表面にステアリン酸亜鉛を供給させる供給手段とを有する画像形成装置において、前記画像形成装置は、放電領域において被帯電体表面にステアリン酸亜鉛を塗布したものをXPSで測定した場合の亜鉛の元素割合[%](水素を除く)が、
1.52×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]
(ただし、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。Vthの値は、被帯電体の膜圧をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離をGp[μm]、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である。また、2200≦Vpp≦3000、かつ500≦f≦4000である。)以上2.40%以下であり、かつ被帯電体が加熱装置を有することを特徴とする
2.また、本発明の画像形成装置は、1.に記載の発明において、放電領域において被帯電体表面にステアリン酸亜鉛を塗布したものをXPSで測定した場合の亜鉛の元素割合[%](水素を除く)が、2.22×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]以上であることを特徴とする。
3.また、本発明の画像形成装置は、1.または2.に記載の発明において、被帯電体と接触する部分での塗布装置の速度が被帯電体表面の移動速度とは異なっていることを特徴とする。
4.また、本発明の画像形成装置は、1.ないし3.のいずれかに記載の発明において、前記被帯電体の内面から、加熱装置により被帯電体を加熱して画像形成を行うことを特徴とする。
本発明によれば、近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置において、近接放電に起因する感光体表面の劣化を防止することができるのみならず、塗布方法や塗布量を厳密に制御することなく、高温高湿環境下においても、異常画像の発生や、塗布ムラに対応した異常画像であるムラの発生を抑制し、安定した画像を、高い耐久性を以て提供することができる。
以下に、本発明の特徴を図面に基づいて説明する。
図1は、近接放電による感光体表面の劣化状態を調べるために、感光体表面の膜厚の変化を測定した結果である。ここでは、感光体表面に帯電部材のみを非接触状態で近接配置し、連続約150時間の帯電実験を行った。
実験に使用した感光体は電荷輸送層にポリカーボネートを用いた有機感光体であり、感光体に対して当接する部材を全て取り除き、DCバイアスにACバイアスを重畳した電圧が印加された非接触帯電ローラを用いて帯電を行った。
図1から、帯電時間に伴って、感光体表面の膜の削れ量が次第に多くなり、感光体の膜厚が次第に減少している事が明らかである。
膜厚が減少した感光体を分析したところ、感光体を構成するポリカーボネートが分解されたと考えられるカルボン酸などが検出された。このように近接放電によって感光体を構成する成分が分解されたと考えられる物質が検出されたことから、感光体の膜厚減少のメカニズムとしては、以下のようなことが考えられる。
図2は、近接放電によって感光体1表面が劣化する場合の感光体1表面の状態を示した説明図である。ここでは、帯電ローラ2aを感光体1表面から微小ギャップをもって対向させた状態を例にとって示している。
近接放電を行うと、感光体1表面の放電領域では放電により発生した粒子(オゾン、電子、励起分子、イオン、プラズマなど)のエネルギーが感光体1表面の電荷輸送層1aに照射される。このエネルギーが感光体1表面を構成する分子の結合エネルギーに共鳴、吸収され、図2(a)に示すように、電荷輸送層1aは、樹脂分子鎖の切断による分子量低下、高分子鎖の絡み合い度の低下、樹脂の蒸発等の化学的劣化を生じる。このような、近接放電による感光体1の化学的劣化によって、感光体1表面の電荷輸送層1aは、次第にその膜厚を減少させてしまうと考えられる。
このように、従来から対策が講じられてきた機械的摺擦による膜厚減少への対策とは別に、近接放電に起因する感光体表面の化学的劣化による膜厚減少への対策が必要であることが分かった。
なお、上記近接放電による感光体表面の膜厚減少は、放電で生じる粒子のエネルギーによって発生すると考えられるため、ポリカーボネートに限らず他の材質の感光体を用いた場合においても発生すると考えられる。
本出願人らは、こうした膜厚減少を発生させない為には、保護物質を必要量放電領域に介在させることが必要であることを見出した。以下に、保護物質が放電による感光体の劣化を抑制する作用を果たすことを示す実験結果について説明する。
図3は、本発明に係る感光体上の保護物質の、感光体劣化抑制効果を確認するための実験装置の概略構成図である。
図3(a)において、感光体上には保護物質32が存在させられている。また図3(b)は、(a)における感光体の表面を拡大して示したものであり、保護物質存在部Aと、非存在部Bとに分けた状態としている。
この実験を行うために、予め帯電ローラ2aと保護物質塗布装置30以外の部材を全て取り払い、保護物質塗布装置30は感光体1の軸方向半分の表面領域に保護物質32を塗布するよう構成した。そして、感光体1と共に帯電装置2と保護物質塗布装置30の駆動を継続して行い、感光体表面の劣化状態を調べた。実験条件は以下の通りである。
・帯電条件:
Vpp(AC電圧のピークツーピーク電圧値)=2.12[kV]
f(AC電圧の周波数)=877.2[Hz]
DC電圧値=−660[V]
・感光体表面の移動速度v=125[mm/s]
・保護物質:ステアリン酸亜鉛
・ファーブラシ31の線速=216[mm/sec]
なお、図3(b)に示すように、感光体1長手方向の半分の領域Aには表面に保護物質としてのステアリン酸亜鉛が塗布され、残り半分の領域Bは感光体1表面がそのまま露出した状態となっている。
感光体1表面劣化の指標として、感光層の膜削れ量を測定した。
図4は、図3に示す画像形成装置を作動させた際の、作動時間と膜削れ量との関係を示すグラフである。
本実験は、上述の条件下で、200時間継続して行った。
保護物質32がない領域Bでは、時間の経過とともに膜削れ量が増加していき、200時間経過後には膜厚が約2.5[μm]減少した。これに対して、保護物質32のある領域Aでは、膜厚の減少は8分の1以下に抑制されていた。さらに、200時間経過後に実験に使用した感光体表面を目視観察したところ、保護物質32のない領域Bでは、感光体表面が白く変色し変質していたのに対して、保護物質32のある領域Aでは、新品の感光体1と同様に鏡面を保っていた。
以上の実験結果から、保護物質32が存在することによって、放電による感光体表面の劣化が抑制されることが明らかである。
しかし、上述の手段においては、以下のような問題がある。即ち、前記保護物質を感光体表面に供給した場合、その量が少ないときは、放電による感光体表面の劣化が抑制できず、摩耗量が増加し耐久性が低下する。また量が多い場合には、保護物質自体が膜表面に多く残存してしまい、これが帯電により劣化し、水分子を吸着しやすくなる。即ち、高湿環境下においては水分子が吸着し、これにより画像ボケが発生したり、また高温高湿下でなくとも、帯電により発生する帯電生成物が吸着し、画像ボケを発生してしまう。また、感光体の長手方向においても、塗布量にムラが発生した場合には、摩耗量のムラや塗布ムラに対応して異常画像のムラが発生するようになる。
上記のような、保護物質による水分子の吸着を防ぐためには、保護物質を塗布する方法や、塗布量を厳密に制御することが必要となる。
本発明は、放電領域において保護物質が存在する被帯電体の表面を、加熱装置によって直接加熱することにより、保護物質の塗布量の厳密な制御をすることなく、感光体上に水分子が吸着するのを回避し、安定な画像を得ることを可能としたものである。
図5は、本発明の被帯電体の構成を示す断面図である。
なお、本発明の被帯電体とは、さらに導電性層や支持体をも含む、通常用いられる意味での像担持体を示しており、本発明の実施様態として、例えば感光体の内面に面状ヒーターを組み込んだ、図5のような形態が挙げられ、この形態全体を被帯電体としている。
通常、導電性層や支持体をも含めて、これを感光体と呼ぶことも行われているが、本発明においては明確に区別している。
図5において、被帯電体1の構成は、アルミニウム製の導電性支持体201の上に中間層、電荷発生層と電荷輸送層よりなる感光層205があり、一方、導電性支持体201のさらに内面には、面状加熱器をコイル状に巻き付けた加熱装置207を有する構成となっている。
本発明に係る加熱方法としては、被帯電体1表面又は被帯電体支持体ドラム内部へ強制的に熱風を吹き込む方法や、あるいは被帯電体とは別体として近傍に設置した加熱装置を用いることとしても良いが、これでは被帯電体の表面を均一に加温することが出来ない。これに対し、図5に示すように加熱装置207を組み込んで被帯電体内部から直接加熱する構成とする事により、ドラムのどの位置が帯電極直下で停止しても、均一に加熱することが可能となる。このため、被帯電体自体が加熱体を備える直接加熱が、最も有効な手法である。
これにより、被帯電体1表面の相対湿度を低減させることが可能となるため、高湿環境においても、画像全面に渡って良好な画像を得ることができる。
なお、その上に外部のヒーターを併用することによって、更にその効果を高めることができる。
また、加熱装置としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等を支持体としてニクロム線等の発熱体を挟み込んだ面状発熱体やセラミック発熱体などが用いられるが、本発明の加熱装置は、特にこれらに限定されるものではない。
またさらに、感光体の温度範囲は、通常50%RH以上の環境では30℃〜65℃が好ましく、特に70%RH以上の環境では40℃〜50℃に感光体ドラム温度を維持することが望ましい。なお、画像流れを解消するためには、電源投入時から画像形成までの間に、感光体の温度を上記温度範囲に保ちながら回転させることが有効である。
この操作を行うことで、より低い温度で画像流れを抑制することが可能となる。
以下、本発明が適用される画像形成装置について説明する。なお、本発明の態様は、これに限られるものではない。
図6は、本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、有機感光体からなる被帯電体としての感光体1を備えている。
図6において、感光体1は、図示しない駆動装置により回転駆動され、その表面が近接帯電方式の帯電装置2の帯電ローラ2aにより所定の極性に帯電される。帯電された感光体1の表面は、露光装置3によって露光され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4から感光体1の表面に供給される現像剤としてのトナーにより現像されて、トナー像として可視像化される。
一方、図示しない給紙部からは記録媒体としての転写紙が感光体1に向けて給送される。この転写紙には、感光体1に対向配置されている転写装置5によって感光体1上のトナー像が転写紙上に転写される。トナー像が転写された転写紙は、感光体1から分離した後、転写材搬送経路10に沿って定着装置6に搬送されて、トナー像が定着される。転写紙にトナー像を転写した後の感光体1上に残留している、残留トナーとしての転写残トナーは、クリーニング装置7によって感光体1上から除去される。また、転写残トナーが除去された後の感光体1表面の残留電荷は、除電装置9により除去される。このようにして、感光体1は繰り返し使用される。尚、本実施形態の画像形成装置は、塗布装置30を有しているが、これについては後ほど詳述する。
また、本実施形態の画像形成装置では、感光体1、帯電部材(帯電ローラ)2a、現像装置4、クリーニング装置7が一体に構成され、画像形成装置本体から着脱可能なプロセスカートリッジとして構成されている。かかるプロセスカートリッジは、一体に交換されるので、塗布装置30に含有される保護物質の量や、感光体1の初期膜厚などを相互に適切な量に設定する事が容易であるため、本発明に適している。
次に、本実施形態の画像形成装置に用いる帯電装置2について説明する。この帯電装置2は、近接放電を用いて感光体1を帯電する。近接放電を用いて感光体1を帯電する方法としては、回動可能なローラ状の帯電ローラ2aを感光体に接触させて配置する接触帯電方式と、帯電ローラ2aを感光体に非接触に配置する非接触帯電方式とがある。本実施形態1においては、非接触帯電方式を用いている。
本発明は接触帯電方式にも適用できるが、接触帯電方式においては、帯電ローラ2aとしては、感光体1表面との接触性を向上させ、かつ感光体1に機械的ストレスを与えないために、弾性部材を用いる事が好ましい。しかし、弾性部材を用いた場合には、帯電ニップ幅が広くなり、これによって帯電ローラ2a側に保護物質が付着しやすくなる事がある。よって、耐久性を高める為には、非接触帯電方式を採用する方が有利である。
図7は、本実施形態の画像形成装置に用いる帯電装置2の説明するための概略図である。
本実施形態では、少なくとも感光体1表面における画像形成領域に対して、所定の帯電ギャップ14をもって対向するよう帯電ローラ2aを配置した、非接触帯電方式を採用している。帯電ローラ2aは、軸部21aとローラ部21bとからなる。ローラ部21bは軸部21aの回転によって回動可能であり、感光体1表面のうち、画像が形成される画像形成領域11に対向する部分は感光体1と非接触である。帯電ローラ2aは、その長手方向(軸方向)の寸法が、画像形成領域より、若干長く設定されており、その長手方向の両端部にスペーサ22を設けている。これら2つのスペーサを感光体表面両端部の非画像形成領域12に当接させることによって、感光体1と帯電ローラ2aとの間に微小な帯電ギャップ14を形成している。この微小な帯電ギャップ14は、帯電ローラ2aと感光体1との最近接部における距離が5〜100[μm]に維持できるよう構成されている。この帯電ギャップ14のより好ましい範囲は、30〜65[μm]であり、本実施形態1の装置では、50μmに設定した。また、軸部21aをスプリングからなる加圧バネ15によって感光体1側に加圧している。これにより、微小な帯電ギャップ14を精度よく維持することができる。また帯電ローラ2aは、スペーサ22を介して、感光体1表面に連れ回って回転する。
また、帯電ローラ2aには、帯電用の電源16を接続している。これにより、感光体1表面と帯電ローラ2a表面との間の微小な空隙での近接放電を行い、感光体1表面を均一に帯電する。本実施形態1においては、印加電圧は、直流成分であるDC電圧に交流成分であるAC電圧を重畳した交番電圧を用いている。帯電ローラ2aに印加する印加電圧としてDC電圧にAC電圧を重畳させた交番電圧を印加すると、微小ギャップ変動による帯電電位のばらつきなどの影響が抑制されて、均一な帯電が可能となる。
また、帯電ローラ2aは、円柱状を呈する導電性支持体としての芯金と、芯金の外周面上に形成された抵抗調整層を有する。帯電ローラ2aの表面は、硬質であることが望ましい。ローラ部21bの部材としては、ゴム部材も使用できるが、ゴム部材の場合容易に変形しやすい部材であると、感光体1との微小ギャップ14の均一な維持が困難となり、作像条件によっては帯電ローラ2aの中央部のみが感光体1表面に突発的に接触する可能性がある。帯電ローラ2aが感光体1表面に局所的/突発的に接触する事によって生じる保護物質の乱れに対応することは困難であるため、非接触帯電方式を使用する場合には、撓みが少ない硬質の部材とする事が望ましい。
表面が硬質な帯電ローラ2aの具体例としては、例えば、抵抗調整層を高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びその共重合体等)により形成し、抵抗調整層の表面を硬化剤により硬化皮膜処理されたものが挙げられる。また硬化皮膜処理は、例えば、イソシアネート含有化合物を含む処理溶液に抵抗調整層を浸漬させることにより行われるが、抵抗調整層の表面に改めて硬化処理皮膜層を形成することにより行われてもよい。
本実施形態では、帯電ローラ2aをφ10mm(直径10mm)で形成した。
本実施形態の感光体1は、導電性支持体201上に、感光層205を設けたものである(図5参照)。
<導電性支持体>
導電性支持体201としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特許文献5に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも、導電性支持体201として用いることができる。
この他、上記導電性支持体201上に、導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体201として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、これと同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、上記の導電性粉体と結着樹脂を、適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
<感光層>
次に、感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、ここでは、電荷発生層と電荷輸送層で構成される例に関して説明する。
[電荷発生層]
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層には公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。
電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
[電荷輸送層]
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から、25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上が好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
また、本発明は、感光層が単層構成の感光体にも適用できる。かかる感光体としては、上述した電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。感光層は電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤、特にヒンダードフェノール化合物又はヒンダードアミン化合物を含有させることもできる。
結着樹脂としては先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
また、本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は、一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
また、感光体の最表面層に保護層を設けることも可能であり、耐摩耗性を高める上で有効である。例えば耐磨耗性を向上させるためにアモルファスシリコンで表面コートした感光体や、電荷輸送層のさらに表面にアルミナや酸化スズ等を分散させた最表面層を設けた有機感光体などを用いる事もできる。
以上説明したように、本発明に用いることができる感光体1の構成は特定の構成に限定されるものではない。導電性支持体の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層のみを設けた1層構成や、導電性支持体の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層とが積層された構成や、導電性支持体の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層を設けて更に感光層表面に保護層を設けた構成や、導電性支持体の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層とが積層され更に電荷輸送層上に保護層が設けられた構成や、導電性支持体の上に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層と電荷発生物質を主成分とする電荷発生層とが積層され更に電荷発生層上に保護層が設けられた構成など、種々の層構成を有する感光体に適用可能である。
本発明に係る検討から、帯電装置として近接放電を用いた場合、感光体表面の劣化が生じることが分かった。この劣化は、感光体表面を近接放電に直接さらすために生じるものであって、感光体表面への当接部材がない場合においても生じるものである。即ち、近接放電による感光体表面の劣化は、機械的摺擦とは別のメカニズムで発生するものである。
そこで、本発明においては、その特徴として、近接放電による感光体表面の劣化を防止するための放電劣化防止手段を設けている。以下に、その具体的な構成について説明する。
本発明の画像形成装置には、図6に示すように、保護物質32を感光体表面に供給するための保護物質供給手段として、保護物質塗布装置30を設けている。この保護物質塗布装置30は、塗布部材としてのファーブラシ31、保護物質32、保護物質をファーブラシ方向に押圧するための加圧バネ33を有している。保護物質32はバー状に成型された固体保護物質32である。ファーブラシ31は、感光体1表面にブラシ先端が当接しており、軸を中心に回転することによって、保護物質32を一端ブラシに汲み上げ、感光体1表面との当接位置までブラシ上に担持搬送して、感光体1表面に塗布するものである。
また、経時で保護物質32がファーブラシ31に掻き削られて減少しても、ファーブラシ31に接触しなくならないように、加圧バネ33によって所定の圧力で保護物質32がファーブラシ31側に押圧されている。これによって、微量の保護物質32でも、常に均一にファーブラシ31に汲み上げられる。
尚、保護物質32をトナーに内添、外添するなどして、感光体1表面に移行させる方法もあるが、その場合には画像濃度や画像パターンによって感光体表面上の保護物質32の存在量にムラが生じやすくなり、これを補うために、必要以上の保護物質32を塗布する必要が生じる。これに対し、本実施形態のように感光体1表面に保護物質32を直接塗布することにより、画像濃度や画像パターンなど、種々の条件によっても、変化することなく、感光体1表面に安定して保護物質32を分布させることができる。
尚、保護物質32を感光体1表面に移行させる手段は塗布に限るものではない。
また、保護物質32を感光体1表面に適切な状態で存在させるためには、保護物質32を感光体1表面に移行させる手段に加え、その塗布量を規定する事が重要である。
ここで、感光体1表面を保護するために必要とされる保護物質32の量について、本出願人が検討した結果について述べる。
感光体1表面の近接放電による劣化から保護するための条件は、帯電条件と密接な関係があることが、本願発明に係る検討から明らかになった。帯電ローラと感光体のみから構成される実験系を用いて3つの実験を行い、感光体表面の劣化状態を調べた。いずれの実験も感光体1、帯電ローラ2a、塗布装置30のみから構成される実験系で実施した。
以下に、本実験で使用した感光体の作成方法を示す。
<感光体1>
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布、乾燥し、膜厚4.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成したものを感光体1として使用した。
[下引き層塗工液]
二酸化チタン粉末400部
メラミン樹脂65部
アルキッド樹脂120部
2−ブタノン400部
[電荷発生層用塗工液]
Y型オキソチタニウムフタロシアニン顔料2部
ポリビニルブチラール(エスレックBM−2:積水化学製)2部
テトラヒドロフラン50部
[電荷輸送層塗工液]
ビスフェノールZポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成製)10部
下記(1)式に示す構造の低分子電荷輸送物質6部
テトラヒドロフラン100部
Figure 0004766859
上述の方法により作成した感光体を用い、以下に示す実験により、帯電条件と感光体表面の劣化状態との相関性を調べた。
以下に、その詳細について述べる。
<実験1>
帯電ローラに印加するAC電圧のピークツーピーク電圧値Vppを2.2[kV]、2.6[kV]、3.0[kV]と変化させ、AC電圧の周波数fは1350[Hz]に固定し、DC電圧は−600[V]とした。また感光体表面の移動速度vは113[mm/s]とした。
図8は、実験1において、Vppの変化に対する感光体の膜厚減少量を示したグラフである。
図8から、感光体膜厚の減少量がVppに比例している事が明らかである。
また、Vppが約1.9[kV]のときに膜厚減少が0となっている。この点について、以下に説明する。
AC電圧を印加した時、帯電部材表面と感光体表面との間での放電が開始されるのは、帯電部材に印加する電圧が一定値以上となってからである事は周知である。
非接触帯電の場合、帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離をGp[μm]としたときに、帯電部材に印加する電圧が以下に示す値以上となると、帯電部材表面と感光体表面との間で放電が開始される。
以下、この値を放電開始電圧Vthと記す。
Vth=312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)[V]
ここで、感光体の膜厚をd[μm]、感光体の比誘電率をεopc、感光体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairと記している。
AC電圧のVppが上記Vthの2倍以上となったときに帯電部材と感光体との間で双方向に放電が発生する。
尚、上記関係式は、本願発明の出願人が、従来行った検討により得たものである。
実験1においては、帯電ローラと感光体との間のギャップは50μm、感光体の比誘電率は約3、膜厚は30μm、感光体と帯電部材の間の空間における比誘電率は約1であり、これらの条件を上記の関係式に適用すると、Vth=962[V]となる。
即ち、上記関係式から、帯電部材に印加する電圧が962[V]以上となると、帯電部材表面と感光体表面との間で放電が開始され、またVppが約1924[V]を越えると、AC電圧による放電が開始されると考えられる。
放電現象としては、AC電圧によって生じる双方向放電が支配的であるため、本実験において膜圧減少が開始したVppの値は、上記関係式により得られる感光体膜圧減少のVpp値に一致したものであると言える。
<実験2>
帯電ローラに印加するAC電圧の周波数fを500[Hz]、900[Hz]、1400[Hz]、2000[Hz]、4000[Hz]と変化させ、AC電圧のピークツーピーク電圧値Vppは2.2[kV]に固定し、DC電圧は−600[V]とした。また感光体表面の移動速度vは104[mm/s]とした。
図9は、周波数fの変化に対する、感光体の膜厚減少量を示したグラフである。
図9から、感光体膜厚の減少は、明らかに周波数fに比例している。
即ち、実験1及び実験2の結果から、感光体膜厚の減少は帯電条件に依存しており、具体的にはVpp及びfに比例している。
上記実験により得られたグラフから、感光体の膜厚減少量は、Vpp−2×Vthに比例し、またさらに、周波数fに比例する。
また、感光体の移動速度が遅いときは、同じ帯電条件であっても、単位面積あたりに照射される放電エネルギーが大きくなる。このため、感光体の膜厚減少量は、感光体表面の移動速度vに反比例するものとして規定する。
<実験3>
感光体表面の、放電による劣化を防止するために必要な保護物質の量を求める事を目的とし、Vpp、周波数f、及び保護物質の量を変化させ、これに伴う感光体表面の劣化の有無を、常温常湿下で調べた。
この結果を表1に示す。
Figure 0004766859
但し、X={Vpp−2×Vth}×f/vである。
表1において、保護物質の量はステアリン酸亜鉛の元素割合[%]によって表している。
感光体表面に存在する微量の保護物質の量を測定する事は、通常困難である。しかしながら、本願発明においては、保護物質中の特徴的な元素(Zn)を測定する事により、感光体表面に存在する保護物質の量に関する知見を得る事を可能としている。
ステアリン酸亜鉛の元素割合[%]は、PHI社製Quantum2000型走査型X線電子分光装置(XPS)を用いて、X線源AlKα、分析領域100μmφの条件で測定した。
Znの測定値(元素割合)は、帯電部材への電圧印加をせずに、ステアリン酸亜鉛を塗布しつづけ、5時間経過した段階で、感光体表面を測定した場合の値である。即ち、帯電部材へ電圧を印加した状態での実験をまず実施して、白濁の有無及び膜厚減少量を調べ、その後、帯電部材への電圧印加を行わないことを除き、同一条件下において、5時間画像形成装置を動作させ、亜鉛の存在量を測定した。
図10は、表1に示したXとZnの関係をプロットしたグラフである。
図10のグラフから、白濁の有無の境界を表す直線を求めると、放電による感光表面の劣化(白濁)を防止するために必要なステアリン酸亜鉛の量は、元素割合で
1.52×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]
以上であることが分かる。ここでVpp[V]は帯電部材に印加するAC電圧のピークツーピーク電圧(AC電圧の最高値と最低値との差)、f[Hz]は帯電部材に印加するAC電圧の周波数、v[mm/s]は感光体表面の移動速度である。
さらに、図10のグラフから、膜厚減少の有無の境界を表す直線を求めると、ステアリン酸亜鉛の量が、元素割合で
2.22×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]
以上であると、膜厚の減少がほとんど発生しないことが分かる。
本実施形態で使用した感光体1では、表面層(電荷輸送層)に亜鉛が存在しないものを使用しているため、測定によって得られたZnは、全て保護物質であるステアリン酸亜鉛に由来したものである。つまり、ここでは、Znは保護物質の量を規定する特徴的な元素としてみなすことができる。
なお、ステアリン酸亜鉛以外の保護物質を使用した場合であっても、感光体には存在しない特徴的な元素が保護物質中に含まれていれば、その元素により、保護物質の量に関する知見を得ることが可能である。
また、ステアリン酸亜鉛の分子式が[CH(CH16COO]Znであり、さらにHはXPSでは検出されないことを考慮すると、XPSにより検出される保護物質の元素割合は、Znの元素割合の41倍となる。
従って、上記のような考察から、亜鉛元素の含有割合に基づいて、XPSで測定される保護物質全体の元素割合を算出すると、元素割合で
6.23×10−3×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]
であれば感光体の劣化(白濁)が防止でき、また
9.10×10−3×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]
以上であると、膜厚の減少がほぼ抑制される。
ステアリン酸亜鉛の塗布により、感光体表面を、近接放電による劣化から保護することができる理由については、次のように考えられる。
近接放電により感光体1の帯電を行う場合、感光体表面の放電領域では放電により発生した粒子(電子、励起分子、イオン、プラズマなど)のエネルギーが感光体表面層に照射される。このエネルギーが感光体表面を構成する分子の結合エネルギーに共鳴、吸収され、電荷輸送層は樹脂分子鎖の切断による分子量低下、高分子鎖の絡み合い度の低下等の、化学的劣化を生じ、膜厚を減少が起こる。
一方、感光体表面に保護物質が存在すると、放電によって発生した粒子のエネルギーの直接照射を受けるのは保護物質となるため、感光体自身は、放電によって発生した粒子の直接照射を免れることになる。即ち、保護物質は、放電により発生した粒子のエネルギーを吸収し、感光体表面の化学的劣化を緩和する働きをする。
図3に示す実験においても、感光体1の保護物質が存在しない領域Bの感光体1表面は、感光体1を構成する分子の残骸が分析から検出されているのに対して、保護物質の存在する領域Aでは、感光体1を構成する分子の残骸が検出されておらず、保護物質の下に存在する感光体1表面は、劣化していなかった。さらに、この領域Aにおいては、保護物質として供給したステアリン酸亜鉛が化学的に変化、分解した物質が検出された。
なお、上記検討によれば、前記保護物質32としては種々の物質を用いることが可能である。本実施形態の画像形成装置においては、ステアリン酸亜鉛を保護物質32として用いているが、ステアリン酸亜鉛は保護物質32の一例であり、各種の脂肪酸塩、ワックス、シリコ−ンオイル等他の物質を保護物質32として用いることも可能である。
なお、脂肪酸塩のうちでも脂肪酸金属塩は、金属元素がXPSによって測定される特徴的な元素となりやすく、塗布量などの条件を設定する上で測定が行いやすい。したがって本実施形態のように、帯電条件に応じて最適な量の保護物質を感光体表面に供給する装置を設計する上で好適である。
脂肪酸としてはウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンダデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、アラキドン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸などが挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの金属との塩が挙げられる。
保護物質としては、ステアリン酸亜鉛のようなラメラ結晶紛体を使用すると好適である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。この作用が低摩擦係数化に効果があるのであるが、放電からの感光体表面保護の観点から見た場合にも、せん断力を受けて均一に感光体表面を覆っていくラメラ結晶の特性は、少量の保護物質によって効果的に感光体表面を覆うことが出来るので、保護物質として望ましい。
ラメラ結晶の性質を充分に利用して放電から感光体表面を保護するためには、保護物質塗布装置30は感光体表面との間で線速差を有し、せん断力を作用させつつ保護物質を塗布する事が望ましい。
また、本発明のように、放電による劣化から感光体表面を保護する事を目的とした時には、保護物質塗布装置30はクリーニング装置と帯電装置との中間に設ける事が望ましい。
放電領域に到達する前にクリーニング装置によって保護物質が除去されてしまうことを防止するためである。
ここで本実施形態の画像形成装置では、帯電ローラ周囲の環境を検出するための温湿度検出器を有している。さらに本実施形態の画像形成装置は、図示せぬコントローラ中に、ファーブラシの回転速度と感光体表面に供給される保護物質の量とを対応させた第一のテーブルと、温湿度検出器によって検出された帯電ローラ周囲の環境と帯電条件とを対応させた第二のテーブルと、ファーブラシの回転速度を制御する塗布制御部と、帯電条件を制御する帯電制御部と、帯電条件に応じて必要な保護部材の量を算出するコンピュータを有している。
より具体的には、第一のテーブルとして、ファーブラシの回転速度と、上記XPSの測定により得られるZnの元素割合とが対応させられたテーブルを有している。また第二のテーブルは、温湿度値と、放電に必要なVppの値とを対応させたテーブルとなっている。これは、帯電ローラ周囲の環境が変化する事によって放電開始電圧が変化した場合でも、確実にAC電圧による放電を発生させることを目的としたものである。
さらに、帯電条件に応じて必要な保護部材の量を算出するために、コンピュータは、帯電条件から1.52×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]、または2.22×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]の式に従って必要なステアリン酸亜鉛の元素割合を算出する。
かかる構成において、本実施形態の画像形成装置は、画像形成開始指令が入力されるとまず温湿度検出器によって温度および湿度(環境条件)を検出し、検出された温度および湿度から第二のテーブルによって帯電条件(Vpp値)を求め、帯電条件に基づいてコンピュータを用いて必要なZnの元素割合を算出し、算出されたZnの元素割合に基づいて第一のテーブルからファーブラシの回転速度を求める。こうして得られた帯電条件(Vpp値)に応じて塗布制御部が最適な回転速度でファーブラシを回転させ、また帯電制御部は帯電部材に印加する電圧を制御しつつ帯電を開始させる。
このような制御によって、環境に応じて帯電条件が変化した場合においても、最適な保護物質を感光体表面に供給して感光体の劣化を防止させる事が可能となる。
なお、1.52×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]の式に従って必要なステアリン酸亜鉛の元素割合を算出する場合には、感光体の膜厚が減少していることを加味して、Vthを算出する必要がある。そこで、コントローラはさらに、累積放電時間を記憶するための記憶手段と、累積放電時間から感光体の膜厚を導くための第3のテーブルを持ち、第3のテーブルによって累積放電時間に対応した感光体膜厚を導き出してVthを計算する。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施形態の画像形成装置は、基本的には図6に示す構成のものであり、具体的には、感光体1を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源波長が655nmの半導体レーザーを搭載した、リコー製フルカラープリンタIPSiO8100改造機にセットした。
保護物質塗布装置30を備えたプロセスカートリッジは、図6に示すように、保護物質塗布部材としてのファーブラシ31を、ブラシ端が感光体1表面に接触するように固定し、さらにステアリン酸亜鉛を、感光体1の長さに適合するように、バー状に溶融固化した保護物質32固形物を、これもファーブラシ31のブラシ端に接触するように固定した。このような構成とすることにより、ファーブラシ31が回転することで保護物質32が感光体1表面に供給され得る。この際、ファーブラシ31と保護物質32固形物との接触の有無を任意に制御できるようにし、これによって、保護物質32塗布量を制御可能とした。
本実施例における、各設定条件を表2に示す。帯電部材(帯電ローラ)2aに印加する、交流電圧のピークツーピーク電圧Vpp、周波数fは、下記表2に示すように設定した。また、DC電圧は−750[V]、現像バイアスを−500[V]、感光体の移動速度は125[mm/sec]または185[mm/sec]に設定した。
なお、帯電ローラ2aの両端には、下記の表2に示すX値となるように、所定膜厚のギャップテープ(スペーサ)22(図7参照。)を貼り付け、帯電ローラ2aと感光体1とが接触しないようにし、DC電圧にAC電圧を重畳させた交番電圧を印加した。
また、感光体1の加熱装置については、感光体ドラムの導電性支持体201の内側に、ニクロム線の発熱体を挟み込んだ面状発熱体(加熱装置)207を挿入し、内面から加熱可能な状態とし、加熱時は感光体表面温度を40℃となるようにした(図5参照。)。
Figure 0004766859
(評価方法)
評価は、感光体サンプルを、保護物質塗布装置30を具備したプロセスカートリッジに搭載し、同一の現像剤を充填した上で、シアンステーションにセットし、30℃/90%RHの環境下で3万枚の通紙試験を実施した。3万枚印刷後に摩耗量測定及び画像評価を行い、さらに感光体の表面観察を行った。
Figure 0004766859
表2から、明らかなように、高温高湿の環境下においても、本発明の画像形成装置は解像度低下、画像ボケすることなく、また摩耗量も極めて少なく、劣悪な環境下においても高耐久・高安定な画像形成装置であることが分かる。また、上記結果から分かるようにヒーターを装着することによる効果は、従来の水分吸着を防止することに依るものだけでなく、保護剤を極めて効率よく均一に感光体表面上に塗布することに対しても効果を有することが明らかであり、塗布ムラによる画像ボケや摩耗量不均一性、を防止していることが分かる。この理由としては、感光体表面の保護物質が熱により軟化し、延展性が増すことによる効果であるであると推察される。
近接放電による感光体表面の劣化状態を調べるために、感光体表面の膜厚の変化を測定した結果である。 近接放電によって感光体1表面が劣化する場合の感光体表面の状態を示した説明図である。 本発明に係る感光体上の保護物質の、感光体劣化抑制効果を確認するための実験装置の概略構成図である。 図3に示す画像形成装置を作動させた際の、作動時間と膜削れ量との関係を示すグラフである。 本発明の被帯電体の構成を示す断面図である。 本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。 本発明の画像形成装置に用いる帯電装置2の説明するための概略図である。 実験1において、Vppの変化に対する感光体の膜厚減少量を示したグラフである。 周波数fの変化に対する、感光体1の膜厚減少量を示したグラフである。 表1に示したXとZnの関係をプロットしたグラフである。
符号の説明
1 感光体(被帯電体)
1a 電荷輸送層
2 帯電装置
2a 帯電ローラ(帯電部材)
21a 軸部
21b ローラ部
22 スペーサ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 定着装置
7 クリーニング装置
9 除電装置
10 転写材搬送経路
11 画像形成領域
12 非画像形成領域
14 帯電ギャップ
15 加圧バネ
16 帯電用の電源
30 保護物質塗布装置
31 ファーブラシ
32 保護物質
33 加圧バネ
201 導電性支持体
205 感光層
207 加熱装置

Claims (4)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層を積層し、かつ表面層に亜鉛が存在しない
    移動する被帯電体と、
    被帯電体に対して接触または近接して設けられた帯電部材に交流成分を含む電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電装置と、
    帯電装置によって帯電させられた被帯電体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
    潜像形成装置によって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着させる現像装置と、
    前記被帯電体表面にステアリン酸亜鉛を供給させる供給手段と を有する画像形成装置において、
    前記画像形成装置は、
    放電領域において被帯電体表面にステアリン酸亜鉛を塗布したものをXPSで測定した場合の亜鉛の元素割合[%](水素を除く)が、
    1.52×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]
    (ただし、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。Vthの値は、被帯電体の膜圧をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離をGp[μm]、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である。また、2200≦Vpp≦3000、かつ500≦f≦4000である。)以上2.40%以下であり、かつ被帯電体が加熱装置を有する
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1に記載の画像形成装置において、
    前記画像形成装置は、
    放電領域において被帯電体表面にステアリン酸亜鉛を塗布したものをXPSで測定した場合の亜鉛の元素割合[%](水素を除く)が、
    2.22×10−4×{Vpp−2×Vth}×f/v[%]以上2.40%以下である
    ことを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1または2に記載の画像形成装置において
    帯電体と接触する部分での塗布装置の速度が被帯電体表面の移動速度とは異なっている
    ことを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、
    前記被帯電体の内面から、加熱装置により被帯電体を加熱して画像形成を行う
    ことを特徴とする画像形成装置。
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