===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
ブラックのインクを吐出する第1インク吐出部と、前記ブラック以外の他の色のインクを吐出する第2インク吐出部とを備え、
印刷データに基づき、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部のうちの少なくともいずれか一方から媒体に向けてインクを吐出して、第1の解像度およびこの第1の解像度よりも低い第2の解像度にて前記媒体に画像を印刷可能な印刷装置において、
モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、
前記第2インク吐出部から前記他の色のインクを媒体に向けて吐出して前記画像を印刷することを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置にあっては、モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、第2インク吐出部から前記他の色のインクを媒体に向けて吐出して前記画像を印刷するから、従来のようにブラックのインクのみを吐出して印刷をする場合に比べて、多くのインクを吐出することができる。これにより、第1の解像度よりも低い第2の解像度にて画像を印刷する場合であっても、印刷密度の低下を抑えて、印刷される画像の濃度が大幅に低くなるのを抑制することができる。このことから、印刷される画像の見栄えを良くすることができる。
かかる印刷装置にあっては、前記第2の解像度にて画像を印刷するときには、所定の高速印刷モードにて前記画像を印刷するときが含まれても良い。このように所定の高速印刷モードにて前記画像を印刷するときが含まれていれば、所定の高速印刷モードにて印刷される画像の見栄えを良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、所定の高速印刷モードは、ドラフト印刷モードであっても良い。このように所定の高速印刷モードがドラフト印刷モードであれば、ドラフト印刷モードにて印刷される画像の見栄えを良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、前記他の色のインクの他に、前記第1インク吐出部から前記ブラックのインクを前記媒体に向けて吐出して前記画像を印刷しても良い。このようにブラックのインクも吐出すれば、印刷される画像の濃度をより濃くすることができ、これにより、印刷される画像の見栄えをより良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記第2インク吐出部として、2以上の異なる色のインクを吐出するインク吐出部を備えても良い。このように第2インク吐出部として、2以上の異なる色のインクを吐出するインク吐出部を備えれば、印刷される画像の濃度をより濃くすることができ、これにより、印刷される画像の見栄えをより良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記第2インク吐出部として、シアン、マゼンタまたはイエロのうちの少なくともいずれか1つの色のインクを吐出するインク吐出部を備えていても良い。このようにシアン、マゼンタまたはイエロのうちの少なくともいずれか1つの色のインクを吐出するインク吐出部を備えれば、印刷される画像の濃度をより濃くすることができ、これにより、印刷される画像の見栄えを良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記第2インク吐出部として、シアンのインクを吐出するシアンインク吐出部と、マゼンタのインクを吐出するマゼンタインク吐出部と、イエロのインクを吐出するイエロインク吐出部とを備えても良い。このようにシアンインク吐出部、マゼンタインク吐出部およびイエロインク吐出部を備えれば、印刷される画像の濃度をより濃くすることができ、これにより、印刷される画像の見栄えをより良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、前記シアンインク吐出部、前記マゼンタインク吐出部および前記イエロインク吐出部から各々インクが前記媒体に向けて吐出されても良い。このようにシアンインク吐出部、マゼンタインク吐出部およびイエロインク吐出部から各々インクが吐出されれば、印刷される画像の濃度をより濃くすることができ、これにより、印刷される画像の見栄えをより良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、前記シアンインク吐出部、前記マゼンタインク吐出部および前記イエロインク吐出部から各々吐出された前記インクが前記媒体上にて相互に重なっても良い。このようにシアンインク吐出部、マゼンタインク吐出部およびイエロインク吐出部から各々吐出されたインクが相互に重なれば、ブラックを作り出すことができ、これにより、印刷される画像の濃度をより濃くして、印刷される画像の見栄えをより良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部が設けられ、前記所定の方向と交差する方向に沿って移動可能なヘッドとを備え、前記ヘッドが前記交差する方向に沿って移動したときに、前記第1インク吐出部および第2インク吐出部のうちの少なくともどちらか一方からインクを吐出する印刷動作と、前記搬送機構による前記媒体の搬送動作とを交互に実行して前記画像を前記媒体に印刷しても良い。このように印刷動作と搬送動作とを交互に実行することによって、画像をスムーズに印刷することができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部が、前記所定の方向に沿って相互にずれた位置に設けられても良い。このように第1インク吐出部および第2インク吐出部が、所定の方向に沿って相互にずれた位置に設けられれば、第1インク吐出部および第2インク吐出部からそれぞれ異なるポイントに向けてインクを吐出することができる。これにより、印刷される画像の濃度を濃くして、印刷される画像の見栄えをより良くすることができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部のうちの少なくともどちらか一方が、インクを吐出するノズルを複数有していてもよい。このようにインクを吐出するノズルを複数有していれば、より効率よく画像を媒体に印刷することができる。
また、かかる印刷装置にあっては、前記ノズルが所定の方向に沿って相互に間隔をあけて配置され、前記第2の解像度にて印刷する画像を構成する画素の間隔が、前記ノズルの前記間隔と等しくても良い。このように前記第2の解像度にて印刷する画像を構成する画素の間隔がノズルの間隔と等しいときには、印刷される画像の濃度を濃くして、印刷される画像の見栄えを良くすることができる。
ブラックのインクを吐出する第1インク吐出部と、前記ブラック以外の他の色のインクを吐出する第2インク吐出部とを備え、
印刷データに基づき、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部のうちの少なくともいずれか一方から媒体に向けて前記インクを吐出して、第1の解像度およびこの第1の解像度よりも低い第2の解像度にて前記媒体に画像を印刷可能な印刷装置において、
モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、
前記第2インク吐出部から前記他の色のインクを媒体に向けて吐出して前記画像を印刷し、
前記第2の解像度にて画像を印刷するときには、ドラフト印刷モードにて前記画像を印刷するときが含まれ、
前記モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、前記他の色のインクの他に、前記第1インク吐出部から前記ブラックのインクを前記媒体に向けて吐出して前記画像を印刷し、
前記第2インク吐出部として、シアンのインクを吐出するシアンインク吐出部と、マゼンタのインクを吐出するマゼンタインク吐出部と、イエロのインクを吐出するイエロインク吐出部とを備え、
モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、
前記シアンインク吐出部、前記マゼンタインク吐出部および前記イエロインク吐出部からそれぞれ前記インクが媒体に向けて吐出されて、前記媒体上にて相互に重なり、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部が設けられ、前記所定の方向と交差する方向に沿って移動可能なヘッドとを備え、
前記ヘッドが前記交差する方向に沿って移動したときに、前記第1インク吐出部および第2インク吐出部のうちの少なくともどちらか一方からインクを吐出する印刷動作と、
前記搬送機構による前記媒体の搬送動作とを交互に実行して前記画像を前記媒体に印刷し、
前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部が、前記所定の方向に沿って相互にずれた位置に設けられ
前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部のうちの少なくともどちらか一方が、インクを吐出するノズルを複数備え、
前記ノズルが所定の方向に沿って相互に間隔をあけて配置され、
前記第2の解像度にて印刷する画像を構成する画素の間隔が、前記ノズルの前記間隔と等しいことを特徴とする印刷装置。
ブラックのインクを吐出する第1インク吐出部と、前記ブラック以外の他の色のインクを吐出する第2インク吐出部とを備え、印刷データに基づき、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部のうちの少なくともいずれか一方から媒体に向けて前記インクを吐出して、第1の解像度およびこの第1の解像度よりも低い第2の解像度にて前記媒体に画像を印刷可能な印刷装置を用いた印刷方法であって、
モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、
前記第2インク吐出部から前記他の色のインクを媒体に向けて吐出して前記画像を印刷することを特徴とする印刷方法。
ブラックのインクを吐出する第1インク吐出部と、前記ブラック以外の他の色のインクを吐出する第2インク吐出部とを備え、印刷データに基づき、前記第1インク吐出部および前記第2インク吐出部のうちの少なくともいずれか一方から媒体に向けて前記インクを吐出して、第1の解像度およびこの第1の解像度よりも低い第2の解像度にて前記媒体に画像を印刷可能な印刷装置において実行するプログラムであって、
モノクロ印刷用の印刷データに基づき、前記第2の解像度にて画像を印刷するときに、
前記第2インク吐出部から前記他の色のインクを媒体に向けて吐出して前記画像を印刷するステップを実行することを特徴とするプログラム。
===印刷装置の概要===
本発明にかかる印刷装置の一実施形態として、インクジェットプリンタ1と、コンピュータ装置1100とを備えた印刷システムを例にとり、その概要について説明する。
図1は、その印刷システムの一例の外観構成を示した説明図である。この印刷システム1000は、インクジェットプリンタ1と、コンピュータ装置1100とを備えている。コンピュータ装置1100は、表示装置1200と、入力装置1300と、記録再生装置1400とを備えている。
コンピュータ装置1100とインクジェットプリンタ1とは、ケーブル等の有線または無線によりデータ通信可能に接続されている。コンピュータ装置1100は、インクジェットプリンタ1に印刷させようとする画像の印刷データを作成してインクジェットプリンタ1に出力するようになっている。また、表示装置1200は、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のユーザインタフェースを表示する。また、入力装置1300は、例えばキーボード1300Aやマウス1300Bからなり、表示装置1200に表示されたユーザインタフェースに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバの設定等に用いられる。記録再生装置1400は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置1400AやCD−ROMドライブ装置1400Bにより構成されている。
コンピュータ装置1100には、プリンタドライバ(図示外)がインストールされている。このプリンタドライバは、表示装置1200にユーザインタフェースを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの各種記憶媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体等)に記憶されて配布されたり、またはインターネットなど、各種通信手段を通じて配信されたりする。
===プリンタドライバ===
<プリンタドライバについて>
図2は、プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
コンピュータ装置1100では、当該コンピュータ装置1100に搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ1102やアプリケーションプログラム1104、プリンタドライバ1110などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ1102は、アプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110からの表示命令に従って、例えばユーザインターフェース等を表示装置1200に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム1104は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム1104のユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム1104により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム1104は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ1110に画像データを出力する。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをインクジェットプリンタ1に出力する。ここで、印刷データとは、インクジェットプリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと画素データとを有するデータである。また、コマンドデータとは、インクジェットプリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。また、画素データとは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素に関するデータであり、例えば、ある画素に対応する媒体S上の位置に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)である。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを印刷データに変換するために、解像度変換処理部1112と、色変換処理部1114と、ハーフトーン処理部1116と、ラスタライズ処理部1118とを備えている。以下に、プリンタドライバ1110の各処理部1112、1114、1116、1118が行う各種の処理について説明する。
解像度変換処理部1112は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体Sに印刷する際の解像度に変換する解像度変換処理を行う。解像度変換処理とは、例えば、紙に画像を印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。以下、画像データを解像度変換処理したRGBデータをRGB画像データと呼ぶ。
色変換処理部1114は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する色変換処理を行う。なお、CMYKデータは、インクジェットプリンタ1が有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGB画像データの階調値とCMYK画像データの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ1110が参照することによって行われる。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応するCMYKデータに変換される。なお、色変換処理後のデータは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。以下、RGB画像データを色変換処理したCMYKデータをCMYK画像データと呼ぶ。
ハーフトーン処理部1116は、高階調数のデータを、インクジェットプリンタ1が形成可能な階調数のデータに変換するハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、例えば、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換する処理のことである。このハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などを利用して、インクジェットプリンタ1がドットを分散して形成できるように画素データを作成する。ハーフトーン処理部1116は、ハーフトーン処理を行うとき、ディザ法を行う場合にはディザテーブルを参照し、γ補正を行う場合にはガンマテーブルを参照し、誤差拡散法を行う場合は拡散された誤差を記憶するための誤差メモリを参照する。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば、720dpi×720dpi)を有している。ハーフトーン処理されたデータは、例えば、各画素につき1ビット又は2ビットのデータから構成される。以下、ハーフトーン処理されたデータのうち、1ビットデータのものを2値データと呼び、2ビットデータのものを多値データと呼ぶ。
ラスタライズ処理部1118は、マトリクス状の画像データを、インクジェットプリンタ1に転送すべきデータ順に変更するラスタライズ処理を行う。これによりラスタライズ処理されたデータは、インクジェットプリンタ1に出力される。
<プリンタドライバ1110の設定について>
図3は、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースの説明図である。このプリンタドライバ1110のユーザインターフェースは、ビデオドライバ1102を介して、表示装置に表示される。ユーザーは、入力装置1300を用いて、プリンタドライバ1110の各種の設定を行うことができる。
ユーザーは、この画面上から、印刷の解像度(印刷するときのドットの間隔)を選択することができる。例えば、ユーザーは、この画面上から、印刷の解像度として720dpiや360dpiを選択することができる。プリンタドライバ1110は、選択された解像度に応じて解像度変換処理を行い、画像データを印刷データに変換する。
また、ユーザーは、この画面上から、印刷に用いられる印刷用紙(媒体)を選択することができる。例えば、ユーザーは、印刷媒体として、普通紙や光沢紙を選択することができる。媒体の種類(紙種)が異なれば、インクの滲み方や乾き方も異なるため、印刷に適したインク量も異なる。そのため、プリンタドライバ1110は、選択された紙種に応じて、画像データを印刷データに変換する。
また、ユーザーは、この画面上から、印刷する画像の種類を選択することができる。ここでは、例えば、印刷する画像の種類を「カラー印刷」にするのか、「モノクロ印刷」にするのかを選択することができる。
このほかに、ユーザーは、この画面上から、印刷モードを選択することができる。プリンタドライバ1110は、ユーザーにより選択された印刷モードに応じた形式になるように、画像データを印刷データに変換する。ここで、ユーザーが選択可能な印刷モードについては、後で詳しく説明する。
このように、プリンタドライバ1110は、ユーザインターフェースを介して設定された条件に従って、画像データを印刷データに変換する。なお、ユーザーは、この画面上から、プリンタドライバ1110の各種の設定を行うことができるほか、カートリッジ内のインクの残量を知ること等もできる。
===インクジェットプリンタ1の構成===
一方、インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、背面から供給された印刷用紙等の媒体Sを前面から排出する構造を備えている。このインクジェットプリンタ1の背面部には、印刷される媒体Sがセットされる給紙部4が設けられている。この給紙部4には、媒体Sを支持するための給紙トレー8が設けられている。また、インクジェットプリンタ1の前面部には、印刷された媒体Sが排出される排紙部3が設けられている。この排紙部3には、排出された印刷済みの媒体Sを保持するための排紙トレー7が設けられている。
このインクジェットプリンタ1の内部構成について説明する。図4〜図6は、そのインクジェットプリンタ1の内部構成を説明するものである。図4は、そのインクジェットプリンタ1の印刷機構を説明するものである。図5は、そのインクジェットプリンタ1の搬送機構を説明するものである。図6は、そのインクジェットプリンタ1のシステム構成を説明するブロック構成図である。
このインクジェットプリンタ1は、図4に示すように、その内部にキャリッジ41を備えている。このキャリッジ41は、図中横方向(以下キャリッジ移動方向ともいう。本発明の「所定の方向と交差する方向」に相当)に沿って相対的に移動可能に設けられたものである。キャリッジ41の周辺には、キャリッジモータ(以下、CRモータともいう)42と、プーリ44と、タイミングベルト45と、ガイドレール46とが設けられている。キャリッジモータ42は、DCモータなどにより構成され、キャリッジ41をキャリッジ移動方向に沿って相対的に移動させるための駆動源として機能する。また、タイミングベルト45は、プーリ44を介してキャリッジモータ42に接続されるとともに、その一部がキャリッジ41に接続され、キャリッジモータ42の回転駆動によってキャリッジ41をキャリッジ移動方向に沿って相対的に移動させる。ガイドレール46は、キャリッジ41をキャリッジ移動方向に沿って案内する。
この他に、キャリッジ41の周辺には、キャリッジ41の位置を検出するリニア式エンコーダ51と、媒体Sをキャリッジ41の移動方向と交差する方向(本発明の所定の方向に相当)に沿って搬送するための搬送ローラ17Aと、この搬送ローラ17Aを回転駆動させる紙搬送モータ15とが設けられている。
一方、キャリッジ41には、各種インクを収容したインクカートリッジ48と、媒体Sに対して印刷を行うヘッド21とが設けられている。インクカートリッジ48は、例えば、イエロ(Y)やマゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)などの各色のインクを収容しており、キャリッジ41に設けられたカートリッジ装着部に着脱可能に装着されている。また、ヘッド21は、本実施形態では、媒体Sに対してインクを吐出して印刷を施す。このためにヘッド21には、インクを吐出するための多数のノズルが設けられている。このヘッド21のインクの吐出機構については、後で詳しく説明する。
この他に、このインクジェットプリンタ1の内部には、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するためのクリーニングユニット30が設けられている。このクリーニングユニット30は、ポンプ装置31と、キャッピング装置35とを有する。ポンプ装置31は、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するために、ノズルからインクを吸い出す装置であり、ポンプモータ(図示外)により作動する。一方、キャッピング装置35は、ヘッド21のノズルの目詰まりを防止するため、印刷を行わないとき(待機時など)に、ヘッド21のノズルを封止する。
次にこのインクジェットプリンタ1の搬送部の構成について説明する。この搬送部は、図5に示すように、紙挿入口11A及びロール紙挿入口11Bと、給紙モータ(不図示)と、給紙ローラ13と、プラテン14と、紙搬送モータ(以下、PFモータともいう)15と、搬送ローラ17Aと排紙ローラ17Bと、フリーローラ18Aとフリーローラ18Bとを有する。これらのうち、紙搬送モータ15や搬送ローラ17A、排紙ローラ17Bなどは、本発明の搬送機構を構成している。
紙挿入口11Aは、媒体Sを挿入するところである。給紙モータ(図示外)は、紙挿入口11Aに挿入された媒体Sをインクジェットプリンタ1内に搬送するモータであり、パルスモータ等で構成される。給紙ローラ13は、紙挿入口11Aに挿入された媒体Sを図中矢印A方向(ロール紙の場合は矢印B方向)にインクジェットプリンタ1の内部に自動的に搬送するローラであり、給紙モータによって駆動される。給紙ローラ13は、略D形の横断面形状を有している。給紙ローラ13の円周部分の周囲長さは、紙搬送モータ15までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて媒体Sを紙搬送モータ15まで搬送することができる。
給紙ローラ13により搬送された媒体Sは、紙検知センサ53に当接する。この紙検知センサ53は、給紙ローラ13と、搬送ローラ17Aとの間に設置されたもので、給紙ローラ13により給紙された媒体Sを検知するようになっている。
紙検知センサ53により検知された媒体Sは、プラテン14へと搬送される。プラテン14は、印刷中の媒体Sを支持する支持部である。紙搬送モータ15は、媒体Sである例えば紙を紙搬送方向に送り出すモータであり、DCモータで構成される。搬送ローラ17Aは、給紙ローラ13によってインクジェットプリンタ1内に搬送された媒体Sを印刷可能な領域まで送り出すローラであり、紙搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Aは、搬送ローラ17Aと対向する位置に設けられ、媒体Sを搬送ローラ17Aとの間に挟むことによって媒体Sを搬送ローラ17Aに向かって押さえる。
排紙ローラ17Bは、印刷が終了した媒体Sをインクジェットプリンタ1の外部に排出するローラである。排紙ローラ17Bは、不図示の歯車により、紙搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Bは、排紙ローラ17Bと対向する位置に設けられ、媒体Sを排紙ローラ17Bとの間に挟むことによって媒体Sを排紙ローラ17Bに向かって押さえる。
次にこのインクジェットプリンタ1のシステム構成について説明する。このインクジェットプリンタ1は、図6に示すように、バッファメモリ122と、イメージバッファ124と、コントローラ126と、メインメモリ127と、EEPROM129とを備えている。バッファメモリ122は、コンピュータ装置1100から送信された印刷データ等の各種データを受信して一時的に記憶する。また、イメージバッファ124は、受信した印刷データをバッファメモリ122より取得して格納する。また、メインメモリ127は、ROMやRAMなどにより構成される。
一方、コントローラ126は、メインメモリ127から制御用プログラムを読み出して、当該制御用プログラムに従ってインクジェットプリンタ1全体の制御を行う。本実施形態のコントローラ126は、キャリッジモータ制御部128と、搬送制御部130と、ヘッド駆動部132と、ロータリ式エンコーダ134と、リニア式エンコーダ51とを備えている。キャリッジモータ制御部128は、キャリッジモータ42の回転方向や回転数、トルクなどを駆動制御する。また、ヘッド駆動部132は、ヘッド21の駆動制御を行う。搬送制御部130は、搬送ローラ17Aを回転駆動する紙搬送モータ15など、搬送系に配置された各種駆動モータを制御する。
コンピュータ装置1100から送られてきた印刷データは、一旦、バッファメモリ122に蓄えられる。ここで蓄えられた印刷データは、その中から必要な情報がコントローラ126により読み出される。コントローラ126は、その読み出した情報に基づき、リニア式エンコーダ51やロータリ式エンコーダ134からの出力を参照しながら、制御用プログラムに従って、キャリッジモータ制御部128や搬送制御部130、ヘッド駆動部132を各々制御する。
イメージバッファ124には、バッファメモリ122に受信された複数の色成分の印刷データが格納される。ヘッド駆動部132は、コントローラ126からの制御信号に従って、イメージバッファ124から各色成分の印刷データを取得し、この印刷データに基づきヘッド21に設けられた各色のノズルを駆動制御する。
===ヘッド21===
<ヘッドの構成について>
図7は、ヘッド21の下面におけるノズルの配列を示したものである。ヘッド21の下面には、同図に示すように、異なる色のインクを吐出する複数種類のノズル群211Y、211M、211C、211Kが設けられている。本実施形態では、ノズル群として、イエロ(Y)のインクを吐出するイエロノズル群211Yと、マゼンタ(M)のインクを吐出するマゼンタノズル群211Mと、シアン(C)のインクを吐出するシアンノズル群211Cと、ブラック(K)のインクを吐出するブラックノズル群211Kとがヘッド21に設けられている。なお、ここでは、ブラックノズル群211Kは、本発明の第1インク吐出部に相当する。また、イエロノズル群211Y、シアンノズル群211Cおよびマゼンタノズル群211Mは、本発明の第2インク吐出部に相当する。すなわち、イエロノズル群211Yから吐出されるイエロ(Y)のインクと、シアンノズル群211Cから吐出されるシアン(C)のインクと、マゼンタノズル群から吐出されるマゼンタ(M)のインクとは、それぞれ本発明の「他の色のインク」に相当する。
各ノズル群211Y、211M、211C、211Kは、インクを吐出するための吐出口であるノズル♯1〜♯180を複数個(本実施形態では180個)備えている。また、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kは、キャリッジ41の移動方向に沿って相互に間隔をあけて並べられて設けられている。これらノズル群211Y、211M、211C、211Kは、搬送方向の位置が揃うように設けられている。すなわち、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル♯1〜♯180が、それぞれ番号が同じノズルどうし、搬送方向に沿って同じ配置に配置されている。ここでは、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)がそれぞれ「k・D」に等しく設定されている。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、媒体Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが120dpi(1/120インチ)であって、搬送方向のドットピッチが360dpi(1/360)である場合、k=3である。
各ノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル♯1〜♯180は、媒体Sの搬送方向に対して、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯180)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯180よりも搬送方向に下流側に位置している。また、紙幅センサ54は、搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯180とほぼ同じ位置にある。各ノズル♯1〜♯180には、各ノズル♯1〜♯180を駆動してインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯180から吐出される。
<ヘッドの駆動について>
図8は、各ノズル♯1〜♯180のノズル駆動回路220を示したものである。このノズル駆動回路220は、同図に示すように、原駆動信号発生部222と、駆動信号整形部224とを備えている。本実施形態では、このようなノズル駆動回路220が、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kごとにそれぞれ設けられている。すなわち、イエロインクノズル群211Y、マゼンタインクノズル群211M、シアンインクノズル群211Cおよびブラックインクノズル群211Kにそれぞれ対応して4つのノズル駆動回路220が設けられている。そして、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kごとにそれぞれ個別に各ノズル♯1〜♯180のピエゾ素子の駆動が行われるようになっている。図中に各信号名の最後に付されたかっこ内の数字は、その信号が供給されるノズルの番号を示している。
原駆動信号発生部222は、各ノズル♯1〜♯180に共通して用いられる原信号ODRVを生成する。この原信号ODRVは、一画素分の主走査期間内(キャリッジ41が一画素の間隔を横切る時間内)に複数のパルスを含む信号である。
駆動信号整形部224には、原駆動信号発生部222から原信号ODRVが入力されるとともに、印刷信号PRT(i)が入力される。この印刷信号PRT(i)は、各ノズル♯1〜♯180からのインクの吐出の有無や、吐出するインクの大きさなどを指示する信号である。この印刷信号PRT(i)は、外部のコンピュータ装置1110から送られてきた印刷データに基づき生成されたものであり、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180別にそれぞれ生成される。ここでは、各ノズル♯1〜♯180のノズル番号別にそれぞれPRT(1)〜(180)の信号がそれぞれ生成されている。
駆動信号整形部224は、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)として各ノズル♯1〜♯180別にそれぞれ各ピエゾ素子に向けて出力する。各ノズル♯1〜♯180のピエゾ素子は、駆動信号整形部224からの駆動信号DRV(1)〜(180)に基づき駆動される。
<ヘッドの駆動信号について>
図9は、各信号の説明のためのタイミングチャートである。すなわち、同図には、原信号ODRVと、印刷信号PRT(i)と、駆動信号DRV(i)の各信号のタイミングチャートが示されている。
原信号ODRVは、原駆動信号発生部222からノズル♯1〜♯180に共通に供給される信号である。本実施形態では、原信号ODRVは、一画素分の主走査期間内(キャリッジ41が一画素の間隔を横切る時間内)において、第1パルスW1と第2パルスW2の2つのパルスを含む。なお、この原信号ODRVは、原駆動信号発生部222から駆動信号整形部224に出力される。
印刷信号PRT(i)は、一画素に対して割り当てられている画素データに対応した信号である。つまり、印刷信号PRT(i)は、印刷データに含まれる画素データに応じた信号である。本実施形態では、印刷信号PRT(i)は、一画素に対して2ビットの情報を有する信号になる。なお、この印刷信号PRT(i)の信号レベルに応じて、駆動信号整形部224は、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)を出力する。
駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて原信号ODRVを遮断することによって得られる信号である。すなわち、印刷信号PRT(i)がレベル「1」のとき、駆動信号整形部224は、原信号ODRVの対応するパルスをそのまま通過させて駆動信号DRVとする。一方、印刷信号PRT(i)がレベル「0」のとき、駆動信号整形部224は、原信号ODRVのパルスを遮断する。なお、駆動信号整形部224は、ノズル♯1〜♯180毎に設けられたピエゾ素子に駆動信号DRVを出力する。そして、ピエゾ素子は、この駆動信号DRV(i)に応じて駆動される。
印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「01」に対応しているとき、第1パルスW1のみが一画素区間の前半で出力される。これにより、ノズルから小さいインク滴(以下では、小インク滴とも言う)が吐出され、媒体Sには、小さいサイズのドット(小ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「10」に対応しているとき、第2パルスW2のみが一画素区間の後半で出力される。これにより、ノズルから中サイズのインク滴(以下では、中インク滴とも言う)が吐出され、媒体Sには、中くらいのサイズのドット(中ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「11」に対応しているとき、第1パルスW1と第2パルスW2とが一画素区間で出力される。これにより、ノズルから大きいインク滴が吐出され、媒体Sには、大きいサイズのドット(大ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「00」に対応しているとき、第1パルスW1および第2パルスW2のいずれも一画素区間で出力されない。これにより、ノズルからは、いずれのサイズのインク滴も吐出されず、媒体Sにはドットが形成されない。
以上説明したとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、一画素区間における駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)の4つの異なる値に応じて互いに異なる4種類の波形を有するように整形されている。
===印刷動作===
次に前述したインクジェットプリンタ1の印刷動作について説明する。ここでは、「双方向印刷」を例にして説明する。図10は、インクジェットプリンタ1の印刷動作の処理手順の一例を示したフローチャートである。以下で説明される各処理は、コントローラ126が、メインメモリ127又はEEPROM129に格納されたプログラムを読み出して、当該プログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。
コントローラ126は、コンピュータ装置1100から印刷データを受信すると、その印刷データに基づき印刷を実行すべく、まず、給紙処理を行う(S102)。給紙処理は、印刷しようとする媒体Sをインクジェットプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)まで搬送する処理である。コントローラ126は、給紙ローラ13を回転させて、印刷しようとする媒体Sを搬送ローラ17Aまで送る。コントローラ126は、搬送ローラ17Aを回転させて、給紙ローラ13から送られてきた媒体Sを印刷開始位置に位置決めする。
次に、コントローラ126は、キャリッジ41を媒体Sに対して相対的に移動させて媒体Sに対して印刷を施す印刷処理を実行する。なお、この印刷処理により本発明の印刷動作が実行される。ここでは、まず、キャリッジ41をガイドレール46に沿って一の方向に向かって移動させながら、ヘッド21からインクを吐出する往路印刷を実行する(S104)。コントローラ126は、キャリッジモータ42を駆動してキャリッジ41を移動させるとともに、印刷データに基づきヘッド21を駆動してインクを吐出する。ヘッド21から吐出されたインクは、媒体Sに到達してドットとして形成される。
このようにして印刷を行った後、次に、媒体Sを所定量だけ搬送する搬送処理を実行する(S106)。なお、この搬送処理により本発明の搬送動作が実行される。この搬送処理では、コントローラ126は、紙搬送モータ15を駆動して搬送ローラ17Aを回転させて、媒体Sをヘッド21に対して相対的に搬送方向に所定量だけ搬送する。この搬送処理により、ヘッド21は、先ほどの印刷した領域とは異なる領域に印刷をすることが可能になる。
このようにして搬送処理を行った後、排紙すべきか否か排紙判断を実行する(S108)。ここで、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがなければ、排紙処理を実行する(S116)。一方、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがあれば、排紙処理は行わずに、復路印刷を実行する(S110)。この復路印刷は、キャリッジ41をガイドレール46に沿って先ほどの往路印刷とは反対の方向に移動させて印刷を行う。ここでも、コントローラ126は、キャリッジモータ42を先ほどとは逆に回転駆動させてキャリッジ41を移動させるとともに、印刷データに基づきヘッド21を駆動してインクを吐出し、印刷を施す。
復路印刷を実行した後、搬送処理を実行し(S112)、その後、排紙判断を行う(S114)。ここで、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがあれば、排紙処理は行わずに、ステップS104に戻って、再度往路印刷を実行する(S104)。一方、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがなければ、排紙処理を実行する(S116)。
排紙処理を行った後、次に、印刷終了か否かを判断する印刷終了判断を実行する(S118)。ここでは、次にコンピュータ装置1100から印刷データに基づき、次に印刷すべき媒体Sがないかどうかチェックする。ここで、次に印刷すべき媒体Sがある場合には、ステップS102に戻り、再び給紙処理を実行して、印刷を開始する。一方、次に印刷すべき媒体Sがない場合には、印刷処理を終了する。
===印刷モード===
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、印刷モードとして、通常印刷モードと、ドラフト印刷モードとを備えている。ここで、ドラフト印刷モードとは、印刷処理を高速で実行するためのモードである。ドラフト印刷モードでは、印刷処理を高速で実行するために、印刷すべき画像の一部を省いて印刷処理を実行するようになっている。つまり、印刷すべき画像を所定の割合で間引きすることにより、印刷処理を実行するようになっている。これによって、印刷速度を飛躍的に向上させて、印刷処理を高速で実行することができる。一方、印刷画質については、印刷すべき画像の一部を省いて間引いて印刷した分だけ落ちてしまう。このことから、ドラフト印刷モードは、試し刷り印刷やテスト印刷などに利用される。
これに対して、通常印刷モードは、ドラフト印刷モードのように、印刷画質を落とさずに、印刷処理を実行するモードのことである。通常印刷モードにおいては、ドラフト印刷モードのように印刷すべき画像を大幅に間引いて印刷することはせず、ドラフト印刷モードに比べて高い印刷品質を確保することができる。その分、通常印刷モードでは、ドラフト印刷モードほど、高速で印刷処理を実行することはできない。
図11は、印刷モードを設定するときの設定画面の一例を示したものである。ドラフト印刷モードにて印刷処理を実行したい場合には、ユーザーは、例えば、プリンタドライバの設定画面において、同図に示すような印刷品質を設定する設定画面W1を呼び出す。そして、当該設定画面にて「印刷品質(Q)」の欄U1のプルダウン式メニューにおいて、印刷品質を「ドラフト」に設定する。このような設定を実施することによって、ドラフト印刷モードにて画像を印刷することができる。
なお、ここでは、印刷品質が「ファイン」や「スーパーファイン」、「フォト」などに設定された場合が、通常印刷モードに対応する。
===通常印刷モードの印刷方式===
図12、図13および図14は、通常印刷モードにおける印刷方式を説明したものである。ここでは、通常印刷モードにおける印刷方式として、「インターレース方式」の場合と、「オーバーラップ方式」の場合とを例にして説明する。
<インターレース方式>
図12は、インターレース方式により媒体Sにドットを形成して画像Gを印刷する方法について概略的に説明するものである。なお、ここでは、説明の便宜上、インクを吐出するノズル群211(本実施形態のノズル群211Y、211M、211C,211Kに相当)が媒体Sに対して移動しているように描かれているが、同図はノズル群211と媒体Sとの相対的な位置関係を示すものであって、実際には、媒体Sが搬送方向に沿って移動している。また、同図において、黒丸で示されたノズルは、インクを吐出するノズルであり、白丸で示されたノズルは、インクを吐出しないノズルである。図12Aは、パス1〜パス4におけるノズル群211(ヘッド21)の位置と、ドットの形成の様子を示し、図12Bは、パス1〜パス6におけるノズル群211(ヘッド21)の位置とドットの形成の様子を示している。
ここで、『パス』とは、ノズル群211を有するヘッド21がキャリッジ41の移動によりその移動方向に沿って1回移動する動作のことをいう。『インターレース方式』では、このような『パス』を繰り返し実行することによって、各パス毎にキャリッジ41の移動方向に沿ってドットを並べて形成して、印刷する画像Gを構成するラスタラインを順次形成して、画像Gを印刷する。なお、『ラスタライン』とは、キャリッジ41の移動方向に並ぶ画素の列であり、走査ラインともいう。また、『画素』とは、インク滴を着弾させてドットを記録する位置を規定するために、媒体S上に仮想的に定められた方眼状の桝目である。
インターレース方式では、媒体Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあり、搬送量FはN・Dに設定される。
ここでは、ノズル群211のノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯4を使って画像Gが形成される様子を示す。なお、ノズル群211のノズルピッチは4Dなので、インターレース方式で行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、ここでは、簡略的に3つのノズル♯1〜♯3を用いてインターレース方式で画像Gの形成を行う場合について説明する。また、3つのノズルが用いられるため、媒体Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル群211を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて紙にドットが形成される。
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス1では、ノズル♯3のみがインクを吐出し、パス2では、ノズル♯2とノズル♯3のみがインクを吐出している。これは、パス1及びパス2において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを媒体Sに形成できないためである。なお、パス3以降では、3つのノズル(♯1〜♯3)がインクを吐出し、紙が一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。これにより、各パスごとにラスタラインが順次形成されて画像Gが印刷される。
図13は、インターレース方式の他の方法を説明するものである。ここでは、使用するノズル数が異なっている。ノズルピッチ等は、前述の説明図の場合と同様であるので、説明を省略する。図13Aは、パス1〜パス4におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示し、図13Bは、パス1〜パス9におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示している。
同図では、ノズル群211のノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯8を使って媒体Sに画像Gを印刷する例を説明する。ここで、ノズル群211のノズルピッチは4Dなので、インターレース方式で行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、ここでは、簡略的に7つのノズル♯1〜♯7を用いてインターレース方式で行う場合について説明する。媒体Sの搬送量は、7つのノズル♯1〜♯7が用いられることから「7・D」に設定される。
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯2が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯4が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯6が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス3以降では、7つのノズル(♯1〜♯7)がインクを吐出し、媒体Sが一定の搬送量F(=7・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
前述のインターレース方式と比較すると、インクの吐出に用いられるノズルの数が多くなっている。このため、インクを吐出するノズル数Nが多くなるので、1回の搬送量Fが大きくなり、印刷速度が速くなる。このように、インターレース方式で行う際に、インクを吐出可能なノズル数が増えると、印刷速度が速くなるので、有利になる。
<オーバーラップ方式>
図14は、オーバーラップ方式により媒体Sに画像Gを印刷する方法を概略的に説明するものである。図14Aは、パス1〜パス8におけるノズル群211(本実施形態のノズル群211Y、211M、211C,211Kに相当)の位置とドットの形成の様子を示し、図14Bは、パス1〜パス12におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示している。前述のインターレース方式では、一つのラスタラインは一つのノズルにより形成されていた。一方、オーバーラップ方式では、例えば、一つのラスタラインが、二つ以上のノズルにより形成されている。
オーバーラップ方式では、媒体Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、数ドットおきに間欠的にドットを形成する。そして、他のパスにおいて、他のノズルが既に形成されている間欠的なドットを補完するようにドットを形成することにより、1つラスタラインが複数のノズルにより完成する。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが完成する場合、オーバーラップ数Mと定義する。同図では、各ノズルは、1ドットおきに間欠的にドットを形成するので、パス毎に奇数番目の画素又は偶数番目の画素にドットが形成される。そして、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、オーバーラップ数M=2になる。なお、前述のインターレース方式の場合、オーバーラップ数M=1になる。
オーバーラップ方式において、搬送量を一定にして記録を行うためには、次の(1)〜(3)の条件が必要となる。
(1)N/Mが整数である。
(2)N/Mはkと互いに素の関係にある。
(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定される。
同図では、ノズル群211のノズル数は180である。しかし、ノズル群211のノズルピッチは4D(k=4)なので、オーバーラップ方式により印刷を実施するための条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、ここでは、簡略的に、ノズル群211のノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯6を使って画像Gが印刷される例について説明する。6つのノズルが用いられることから、媒体Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル群を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて媒体Sにドットが形成される。また、1つのパスにおいて、各ノズルは走査方向に1ドットおきに間欠的にドットを形成する。図中において、キャリッジ移動方向に2つのドットが描かれているラスタラインは既に完成されている。例えば、図14Aにおいて、最初のラスタラインから6番目のラスタラインまでは、既に完成されている。1つのドットが描かれているラスタラインは、1ドットおきに間欠的にドットが形成されているラスタラインである。例えば、7番目や10番目のラスタラインは、1ドットおきに間欠的にドットが形成されている。なお、1ドットおきに間欠的にドットが形成された7番目のラスタラインは、パス9のノズル♯1が補完するようにドットを形成することによって、完成される。
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯4及びパス7のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯5及びパス6のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯6及びパス5のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯4及びパス8のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス1〜パス6において、ノズル♯1〜ノズル♯6のなかにインクを吐出しないノズルが存在する。これは、パス1〜パス6において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを媒体Sに形成できないためである。なお、パス7以降では、6つのノズル(♯1〜♯6)がインクを吐出し、媒体Sが一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
以下に、それぞれのパスにおいて形成されるドットの走査方向の形成位置をまとめて示す。
ここで、「奇数」とは、キャリッジ移動方向に並ぶ画素(ラスタラインの画素)のうちの奇数番目の画素にドットを形成することを意味する。また、表中の「偶数」とは、走査方向に並ぶ画素のうちの偶数番目の画素にドットを形成することを意味する。例えば、パス3では、各ノズルは、奇数番目の画素にドットを形成する。1つのラスタラインがM個のノズルにより形成される場合、ノズルピッチ分のラスタラインが完成するためには、k×M回のパスが必要となる。例えば、本実施形態では、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、4つのラスタラインが完成するためには、8回(4×2)のパスが必要となる。表1から分かるとおり、前半の4回のパスは、奇数−偶数−奇数−偶数の順にドットが形成される。この結果、前半の4回のパスが終了すると、奇数番目の画素にドットが形成されたラスタラインの隣のラスタラインには、偶数番目の画素にドットが形成されている。後半の4回のパスは、偶数−奇数−偶数−奇数の順にドットが形成される。つまり、後半の4回のパスは、前半の4回のパスと逆の順にドットが形成される。この結果、前半のパスにより形成されたドットの隙間を補完するように、ドットが形成される。
オーバーラップ方式も前述のインターレース方式と同様に、インクを吐出可能なノズル数Nが多くなると、1回の搬送量Fが大きくなり、印刷速度が速くなる。そのため、オーバーラップ方式で行う際に、インクを吐出可能なノズル数が増えると、印刷速度が速くなるので、有利になる。
===ドラフト印刷モードの印刷方式===
次にドラフト印刷モードにおける印刷方式について詳しく説明する。図15は、ドラフト印刷モードにおける印刷方式の一例を説明したものである。前述した通常印刷モードにおける『インターレース方式』や『オーバーラップ方式』では、全てのノズルを用いて印刷を行っていなかったが、このドラフト印刷においては、使用可能なノズルを全て用いて印刷処理を実行する。なお、ここでは、簡略的に、ノズル群211が4つのノズル♯1〜♯4を有している場合を例にして説明する。また、インクを吐出するノズルは、黒丸で示している。
このドラフト印刷モードにおいても、先に説明した2つの印刷方式、即ち「インターレース方式」や「オーバーラップ方式」と同様に、ヘッド21がキャリッジ41の移動方向に沿って移動したときに、各ノズル♯1〜♯4からそれぞれインクを吐出して、媒体S上にドットとして形成される。媒体S上に形成されたドットは、キャリッジの移動方向に沿って並んでドット列をなし、印刷する画像GのラスタラインL1〜L4となる。ただし、このドラフト印刷モードにおいては、1回のパスが終了した後、次のパスを実行しようとするときに、搬送される媒体Sの搬送量が、「インターレース方式」や「オーバーラップ方式」と異なる。つまり、画像Gを高速で印刷するために、ドラフト印刷モードにおいては、媒体Sの搬送量が、「インターレース方式」や「オーバーラップ方式」などの通常印刷モードに比べて非常に大きく設定されている。
ここでは、図15に示すように、1回のパスで印刷される領域PRと、次のパスで印刷される領域PRとが相互に重ならないように、各パス間の媒体Sの搬送量が設定されている。すなわち、媒体Sの搬送量がノズル群211の搬送方向の長さ分に対応するように設定されている。つまり、ここでは、「インターレース方式」や「オーバーラップ方式」などの場合に比べて、あるパスでラスタラインを形成した後、その形成したラスタラインの間に、別のパスで別のラスタラインを形成して、ラスタライン間を順次埋めていき、画像Gを形成していくような処理は実施しないのである。
ここで形成されるラスタラインL1〜L20は、ノズル群211の各ノズル♯1〜♯4によって、各パスごとに4本ずつ形成される。各ラスタラインL1〜L20は、同図に示すように、ノズル♯1〜♯4の各ノズル間隔(ノズルピッチ)に相当する間隔をあけて形成される。ノズル♯1〜♯4の各ノズル間隔(ノズルピッチ)は非常に大きいことから、「インターレース方式」や「オーバーラップ方式」などに比べて、印刷する画像Gの解像度は低下してしまう。一方、各パス1〜5間における媒体Sの搬送量は、非常に大きいことから、ドラフト印刷モードでは、印刷速度を飛躍的に向上させることができ、画像Gを高速で印刷することができる。
===プリンタドライバの処理===
前述したように、「インターレース方式」や「オーバーラップ方式」などの印刷方式により印刷処理を実行する通常印刷モードと、ドラフト印刷モードとでは、形成するラスタラインの本数が異なり、印刷される画像の解像度も異なる。このため、印刷処理を実行する際に、ドラフト印刷モードに設定された場合と、それ以外の通常印刷モードに設定された場合とでは、プリンタドライバ1110が実行する処理が異なる。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、解像度変換処理部1112により、媒体Sに印刷する際の解像度に変換する解像度変換処理を行う際に、設定されている印刷モードに応じて解像度変換処理を行う。すなわち、印刷モードが通常印刷モードに設定されていた場合には、その通常印刷モードに対応した解像度(本発明の第1の解像度に相当)に画像データを変換する解像度変換処理を解像度変換処理部1112により実行する。また、印刷モードがドラフト印刷モードに設定されていた場合には、そのドラフト印刷モードに対応した解像度(本発明の第2の解像度に相当)に画像データを変換する解像度変換処理を解像度変換処理部1112により実行する。また、印刷モードが他の印刷モードに設定されていた場合には、その他の印刷モードに各々対応した解像度に画像データを変換する解像度変換処理を解像度変換処理部1112により実行する。
なお、ドラフト印刷モードでは、前述したように、通常印刷モードに比べて、形成するラスタラインの本数が少ないことから、ドラフト印刷モードにて設定される解像度は、通常印刷モードに対応する解像度に比べて低いことになる。
図16は、印刷処理におけるプリンタドライバ1110の処理手順を簡略的に説明するフローチャートである。
プリンタドライバ1110は、ユーザー等により印刷命令を受け取ると(S202)、まず、設定された印刷モードが、「ドラフト印刷モード」か否かをチェックする(S204)。ここで、設定された印刷モードが、「ドラフト印刷モード」である場合には、ステップS206へと進み、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データをドラフト印刷モードに対応した解像度へと変換する処理を解像度変換処理部1112により実行する。すなわち、例えば、ドラフト印刷モードが対応した解像度が、「120dpi(縦)×360dpi(横)」であれば、この解像度へと画像データを変換する処理を実行する(S206)。
一方、プリンタドライバ1110は、設定された印刷モードが、「ドラフト印刷モード」ではなかった場合には、次にステップS208へと進み、設定された印刷モードが、通常印刷モードであるか否かをチェックする。ここで、設定された印刷モードが通常印刷モードであった場合には、次にステップS210へと進み、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを通常印刷モードに対応した解像度へと変換する処理を解像度変換処理部1112により実行する。すなわち、例えば、通常印刷モードで対応している解像度が、「360dpi(縦)×360dpi(横)」であれば、この解像度へと画像データを変換する処理を実行する(S210)。
一方、設定された印刷モードが「通常印刷モード」ではなかった場合には、次にプリンタドライバ1110は、ステップS212へと進んで、他の印刷モードであると判断して、その他の印刷モードに対応した解像度へと画像データを変換する処理を解像度変換処理部1112により実行する。すなわち、例えば、他の印刷モードで対応している解像度が、「720dpi(縦)×720dpi(横)」であれば、この解像度へと画像データを変換する処理を実行する(S212)。
このようにして各印刷モードごとにそれぞれ適した解像度へと画像データを変換する処理を行った後、次にプリンタドライバ1110は、その変換により生成された画像データ(RGB画像データ)を色変換処理部1114によりCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する色変換処理を行う(S214)。
次にプリンタドライバ1110は、色変換処理により得られた画像データ(CMYK画像データ)をインクジェットプリンタ1が形成可能な階調数のデータに変換するハーフトーン処理をハーフトーン処理部1116により行う(S216)。
そして、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理により得られたデータをインクジェットプリンタ1に転送すべきデータ順に変更するラスタライズ処理をラスタライズ処理部1118により行う(S218)。そして、プリンタドライバ1110は、これによりラスタライズ処理されたデータをインクジェットプリンタ1に出力する。
===従来の問題点===
このようなドラフト印刷モードにおいて、モノクロ印刷を実行しようとした場合に、次のような問題が発生した。すなわち、従来のドラフト印刷モードにおいては、モノクロ印刷を実行しようとした場合に、通常印刷モードにてモノクロ印刷を実行する場合と同様に、ブラックノズル群211Kのみを使用して、ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯180からブラック(K)のインクを媒体Sに吐出して、画像Gを印刷していた。このようにインクが吐出されるのは、ブラックノズル群211Kのノズル♯1〜♯180のみであったため、媒体S上に形成されるラスタライン間に、大きな隙間が生じてしまった。この隙間が「空白」として、印刷される画像G中に形成されてしまうことから、印刷される画像Gがかすれてしまったり、また全体的に色が薄く見えてしまうなどの問題が発生していた。
なお、ドラフト印刷モードにてカラー印刷を実行しようとした場合には、シアンノズル群211C、マゼンタノズル群211Mおよびイエロノズル群211Yの3つのノズル群を用いて印刷が実行されるから、モノクロ印刷を実行する場合に比べて、印刷される画像Gの色を全体的に濃くすることができ、見栄えの向上を図ることができる。
図17は、従来のインクジェットプリンタにてドラフト印刷モードによりモノクロ印刷を実行したときの印刷画像の一例を示したものである。ドラフト印刷モードにてモノクロ印刷された画像は、画像を構成するラスタライン間に大きな隙間が生じることがあるため、同図に示すように、キャリッジ41の移動方向に沿って白スジのようなものが、搬送方向に沿って多数発生する。これにより、印刷される画像全体に縞模様が出来、このため、印刷される画像がかすれたり、また全体的に色が薄くなるなどの見栄え上の問題が発生した。そこで、ドラフト印刷モードにおいて、従来と遜色のない印刷速度で印刷処理を実行することができ、かつ印刷される画像の見栄えの向上が望まれていた。
===本実施形態の印刷方法===
本実施形態のインクジェットプリンタ1にあっては、このような問題点を克服するために、ドラフト印刷モードにてモノクロ印刷を実行しようとするときに、従来のようにブラックノズル群211Kのみからインクを吐出して画像を形成するのではなく、ブラックノズル群211K以外の他のノズル群、即ち、ここでは、シアンノズル群211Cやマゼンタノズル群211M、イエロノズル群211Yの各ノズル♯1〜♯180から各々インクを吐出して、画像を印刷する。その処理の内容について以下に詳しく説明する。
<色変換テーブル>
本実施形態では、ブラックノズル群211Kの他に、シアンノズル群211Cやマゼンタノズル群211M、イエロノズル群から各々インクを吐出してモノクロ印刷を実行するために、プリンタドライバ1110は、色変換処理を実行する際に使用する従来の色変換テーブルに加え、別の新しい色変換テーブルを備えている。
図18は、本実施形態のプリンタドライバ1110が備える色変換テーブルの一例について説明したものである。ここでは、プリンタドライバ1110は、色変換テーブルLUTとして、カラー色変換テーブル502と、ブラック色変換テーブル504と、コンポジットブラック色変換テーブル506との3種類の色変換テーブルを備えている。ここで、カラー色変換テーブル502と、ブラック色変換テーブル504とは、プリンタドライバ1110が従来より備えている色変換テーブルである。一方、コンポジットブラック色変換テーブル506は、本実施形態のプリンタドライバ1110が、ドラフト印刷モードにて本実施形態のモノクロ印刷を実行するために備えた色変換テーブルである。
カラー色変換テーブル502は、解像度変換処理部1112により解像度変換処理して得られた所定の解像度(例えば、120dpi(縦)×360dpi(横)など)のRGB画像データをCMYK色空間により表されるカラーCMYKデータに変換するための色変換テーブルである。このカラー色変換テーブル502は、同図に示すように、変換元となるRGBデータと、変換先のCMYKデータとが相互に対応付けられたリストとして構成されている。RGBデータは、RGBの各要素色、即ち、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各値により規定されている。ここでは、RGBの各要素色の各値がそれぞれ、256階調(8ビット)、即ち、0〜255の値により表示されている。また、CMYKデータについても同様に、CMYKの各要素色、即ち、C(シアン)、M(マゼンタ)、イエロ(イエロ)、K(ブラック)の各値により規定されている。ここでは、CMYKの各要素の各値が、RGBと同様に、256階調(8ビット)、即ち、0〜255の値により表示されている。
色変換時には、プリンタドライバ1110は、解像度変換処理により得られたRGB画像データを構成する各画素のRGBデータを変換元データとして、これに対応するCMYKデータをカラー色変換テーブル502から探し出して、その探し出したCMYKデータをその画素に対応するCMYKデータとして取得する。プリンタドライバ1110は、このような変換処理をRGB画像データの各画素のRGBデータについてそれぞれ個別に実行して、最終的には、RGB画像データ全体をCMYK画像データに変換処理する。
また、ブラック色変換テーブル504は、解像度変換処理により得られたRGB画像データを、ブラックのみにより表されるKデータに変換するための色変換テーブルである。このブラック色変換テーブル504は、同図に示すように、変換元となるRGBデータと、変換先のKデータとが相互に対応付けられたリストとして構成されている。RGBデータは、RGBの各要素色の各値により規定されている。RGBの各要素色の各値は、カラー色変換テーブルの場合と同様に、256階調(8ビット)、即ち、0〜255の値により表示されている。一方、Kデータは、要素色K(ブラック)の値により規定されている。ここでは、要素色Kの値が、RGBと同様に、256階調(8ビット)、即ち、0〜255の値により表示されている。
色変換時には、プリンタドライバ1110は、解像度変換処理により得られたRGB画像データを構成する各画素のRGBデータを変換元データとして、これに対応するKデータをブラック色変換テーブルから探し出して、その探し出したKデータをその画素に対応するKデータとして取得する。プリンタドライバ1110は、このような変換処理をRGB画像データの各画素のRGBデータについてそれぞれ個別に実行して、最終的には、RGB画像データ全体をK画像データに変換処理する。
また、コンポジットブラック色変換テーブル506は、解像度変換処理により得られたRGB画像データを、CMYK色空間により表されるモノクロCMYKデータに変換するための色変換テーブルである。すなわち、このコンポジットブラック色変換テーブル506は、RGB画像データを、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロ(Y)の各色を合成することによりブラック(K)を表現する、いわゆるコンポジットブラックを出力するためのデータ(モノクロCMYKデータ)に変換する。なお、ここでは、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロ(Y)以外に、ブラック(K)も併用して、コンポジットブラックを出力するようになっている。
このコンポジットブラック色変換テーブル506は、同図に示すように、変換元のRGBデータと、変換先のCMYKデータとが相互に対応付けられたリストとして構成されている。RGBデータは、RGBの各要素色、即ち、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各値により規定されている。RGBの各要素色の各値がそれぞれ、256階調(8ビット)、即ち、0〜255の値により表示されている。一方、CMYKデータについても同様に、CMYKの各要素色、即ち、C(シアン)、M(マゼンタ)、イエロ(イエロ)、K(ブラック)の各値により規定されている。ここでは、CMYKの各要素の各値が、RGBと同様に、256階調(8ビット)、即ち、0〜255の値により表示されている。
色変換時には、プリンタドライバ1110は、解像度変換処理により得られたRGB画像データを構成する各画素のRGBデータを変換元データとして、これに対応するCMYKデータをコンポジットブラック色変換テーブルから探し出して、その探し出したCMYKデータをその画素に対応するCMYKデータとして取得する。プリンタドライバ1110は、このような変換処理をRGB画像データの各画素のRGBデータについてそれぞれ個別に実行して、最終的には、RGB画像データ全体をCMYK画像データに変換処理する。
<参照する色変換テーブル>
図19は、本実施形態のプリンタドライバ1110が参照する色変換テーブル502、504、506を印刷モード別にまとめたものである。プリンタドライバ1110は、印刷モードが通常印刷モードに設定され、印刷方式としてカラー印刷が選択されていた場合には、参照する色変換テーブルLUTとしてカラー色変換テーブル502を選択する。これにより、色変換処理部1114は、カラー色変換テーブル502を参照して色変換処理を行う。また、プリンタドライバ1110は、印刷モードが通常印刷モードに設定され、印刷方法としてモノクロ印刷が選択されている場合には、参照する色変換テーブルLUTとして、ブラック色変換テーブル504を選択する。これにより、色変換処理部1114は、色変換処理を行う際に、ブラック色変換テーブル504を参照して色変換処理を行う。
一方、印刷モードがドラフト印刷モードに設定され、印刷方式としてカラー印刷が選択されていた場合には、プリンタドライバ1110は、参照する色変換テーブルLUTとして、通常印刷モードの場合と同様に、カラー色変換テーブル502を選択する。これにより、色変換処理部1114は、カラー色変換テーブル502を参照して色変換処理を行う。また、印刷モードがドラフト印刷モードに設定され、印刷方式としてモノクロ印刷が選択されていた場合には、プリンタドライバ1110は、参照する色変換テーブルLUTとして、コンポジットブラック色変換テーブル506を選択する。これにより、色変換処理部1114は、コンポジットブラック色変換テーブル506を参照して色変換処理を行う。
なお、画像の印刷方式の設定、即ち、印刷方式をカラー印刷にするのかモノクロ印刷にするのかを選択する設定は、例えば、図11に示す、インクの欄U2を、「カラー(C)」または「黒(K)」のいずれか1つを選択することなどにより行う。
<プリンタドライバの処理手順>
図20は、プリンタドライバ1110の処理手順の一例を説明したものである。
プリンタドライバ1110は、ユーザー等から印刷命令を受け取ると(S302)、次に、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを媒体Sに印刷する際の解像度に変換する解像度変換処理を行う(S304)。ここでは、図16で説明したように、設定されている印刷モードに応じた解像度変換処理を行う。つまり、印刷モードが通常印刷モードに設定されていた場合には、解像度変換処理部1112により、その通常印刷モードに対応した解像度に画像データを解像度変換する処理を実行する。また、印刷モードがドラフト印刷モードに設定されていた場合には、そのドラフト印刷モードに対応した解像度に画像データを解像度変換する処理を実行する。
このような解像度変換処理を行った後、プリンタドライバ1110は、この解像度変換処理により得られた所定の解像度の画像データ(RGB画像データ)を色変換処理部1114により色変換処理する。この際に、プリンタドライバ1110は、まず、印刷方式が、カラー印刷か否かをチェックする(S308)。ここで、印刷方式がカラー印刷である場合には、色変換処理を行う際に色変換処理部1114が参照する色変換テーブルLUTとして、カラー色変換テーブル502を設定する(S310)。その後、プリンタドライバ1110は、ステップS318へと進み、カラー色変換テーブル502を参照先テーブルとして色変換処理部1114により色変換処理を行う。
一方、印刷方式がカラー印刷ではない場合には、印刷方式がモノクロ印刷であると判断して、次にステップS312へと進み、設定された印刷モードがドラフト印刷モードか否かをチェックする(S312)。ここで、設定された印刷モードがドラフト印刷モードではない場合には、ここでは、通常印刷モードであると判断して、色変換処理の際に色変換処理部1114が参照する色変換テーブルLUTとして、ブラック色変換テーブル504を設定する(S314)。その後、プリンタドライバ1110は、ステップS318へと進み、ブラック色変換テーブル504を参照先テーブルLUTとして色変換処理部1114により色変換処理を行う。
他方、設定された印刷モードがドラフト印刷モードであった場合には、変換処理の際に色変換処理部1114が参照する色変換テーブルLUTとして、コンポジットブラック色変換テーブル506を設定する(S316)。その後、プリンタドライバ1110は、ステップS318へと進み、コンポジットブラック色変換テーブル506を参照先テーブルとして色変換処理部1114により色変換処理を行う(S318)。
このようにして各々異なる色変換テーブル502、504、506を参照して色変換処理部1114により色変換処理を行った後、次に、プリンタドライバ1110は、色変換処理により得られた画像データ(カラーCMYK画像データ、モノクロCMYK画像データまたはK画像データ)をインクジェットプリンタ1が形成可能な階調数のデータに変換するハーフトーン処理をハーフトーン処理部1116により行う(S320)。
そして、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理により得られたデータをインクジェットプリンタ1に転送すべきデータ順に変更するラスタライズ処理をラスタライズ処理部1118により行う(S322)。そして、プリンタドライバ1110は、これによりラスタライズ処理されたデータをインクジェットプリンタ1に出力する。
<実際の印刷動作>
本実施形態では、先に説明したように、ドラフト印刷モードにてモノクロ印刷を実行するときには、コンポジットブラック色変換テーブル506に基づき色変換処理されて生成されたモノクロCMYKデータに基づき印刷処理が行われることから、実際の印刷動作では、シアンノズル群211C、マゼンタノズル群211M、イエロノズル群211Yおよびブラックノズル群211Kの4つのノズル群の各ノズル♯1〜♯180からそれぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)およびブラック(K)の4色のインクが各々媒体Sに向けて吐出されて印刷が実行される。
図21は、本実施形態のインクジェットプリンタ1にてドラフト印刷モードによりモノクロ印刷を実行したときの印刷状況を簡単に説明するための図である。なお、ここでは、簡略的に、ノズル群211C、211M、211Y、211Kが4つのノズル♯1〜♯4を有している場合を例にして説明する。また、インクを吐出するノズル♯1〜♯4は、黒丸で示している。
キャリッジ41がキャリッジ移動方向に沿って移動すると、各ノズル群、即ちシアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mと、イエロノズル群211Yと、ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4からそれぞれインクが吐出される。各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクは、各ノズル♯1〜♯4ごとに、図21に示すように、それぞれ同一のラインL1〜L4上に向けて吐出される。つまり、イエロノズル群211Yの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクと、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクと、ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクとが、それぞれ各ノズル♯1〜♯4ごとに、同一のラインL1〜L4上に向けて吐出される。
各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクは、各ノズル♯1〜♯4ごとに、それぞれ媒体S上にて相互に重なって、同図に示すようなドット列をそれぞれ形成する。ここで形成される各ドットは、イエロノズル群211Yの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクと、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクと、ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクとが相互に重なって形成され、非常に大きいドットである。つまり、従来のように、ブラックノズル群211Kのみを使用して当該ブラックノズル群211Kから吐出されたブラック(K)のインクのみによって形成されるドットに比べて、本実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)およびブラック(K)の各色のインクが相互に重なってドットが形成されているから、非常に大きなものとなる。このような大きいドットが、キャリッジ移動方向に沿って並んで形成されてドット列をなし、印刷する画像GのラスタラインL1〜L4を構成している。
このようにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)およびブラック(K)の各色のインクが相互に重なって大きなドットが形成されて、印刷する画像GのラスタラインL1〜L4を構成するから、ラスタラインL1〜L4の各間に生じる隙間を小さくすることができる。これによって、印刷される画像Gに「空白部」が生じてしまうのを可及的に抑制することができる。これにより、印刷される画像Gがかすれてしまったり、また全体的に色が薄く見えてしまうなどの問題が発生するのを防止することができる。
図22Aは、本実施形態のインクジェットプリンタ1のドラフト印刷モードにてモノクロ印刷を実行した場合に印刷される画像Gの構成を詳しく説明したものである。図22Bは、従来のインクジェットプリンタ1のドラフト印刷モードにてモノクロ印刷を実行した場合に印刷される画像Gの構成を詳しく説明したものである。
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、図22Aに示すように、イエロノズル群211Yの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたイエロ(Y)のインクと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたマゼンタ(M)のインクと、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたシアン(C)のインクと、ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたブラック(K)のインクとが相互に重なるため、非常に多きなドットが形成される。このような非常に大きいドットが、キャリッジ移動方向に沿って一直線上に並んで形成されてドット列をなし、印刷する画像GのラスタラインL1、L2を形成する。このため、ラスタラインL1、L2の間に生じる隙間H1が、同図に示すように、非常に小さなものとなる。
一方、従来のインクジェットプリンタ1では、図22Bに示すように、ブラックノズル群211Kのみを用いて、当該ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯180から吐出されたブラック(K)のインクのみによって媒体S上にドットが形成されて、当該ドットのみによって画像が印刷される。ここで形成されるドットは、ブラック(K)のインクのみによって形成されるから非常に小さいから、印刷される画像Gを構成するラスタラインL1、L2の間には、同図に示すように、大きな隙間H2が空白部として生じてしまう。このため、印刷密度の低下を招き、印刷した画像Gがかすれたり、薄くなったりするのを防止することはきわめて難しい。
これに対して、本実施形態では、印刷される画像Gを構成するラスタラインL1、L2の間に生じる隙間を小さくすることができるから、印刷される画像Gに空白部が生じるのを大幅に減らすことができ、これによって、印刷される画像Gの濃度を高めて、印刷した画像Gがかすれたり、薄くなったりするのを防止して、印刷画像Gの見栄えの向上を図ることができる。
1回のパスが終了して、次のパスを実行したときにも、図21に示すように、イエロノズル群211Y、マゼンタノズル群211M、シアンノズル群211Cおよびブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4からそれぞれインクが吐出されて、同図に示すように、各ノズル♯1〜♯4ごとに、媒体S上の同一のラインL5〜L8に向けて吐出される。各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクは、各ノズル♯1〜♯4ごとに、それぞれ媒体S上にて相互に重なって、同図に示すようなドット列をそれぞれ形成する。ここで形成されるドットも、前述した場合と同様に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)およびブラック(K)の各色のインクが相互に重なって形成されたものであるから、非常に大きいドットとなる。このようなドットがキャリッジ移動方向に沿って並んで形成されてドット列をなし、印刷する画像GのラスタラインL5〜L8を構成している。このことから、ラスタラインL5〜L8の各間に生じる隙間を小さくすることができ、これにより、印刷される画像Gに「空白部」が生じてしまうのを抑制することができる。
さらにパスを繰り返し実行することによって、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4からそれぞれ吐出されたインクが、各ノズル♯1〜♯4ごとに、媒体S上にて相互に重なって、同図に示すようにドット列を形成する。これによって、印刷する画像Gを構成するラスタラインL9〜L12が形成される。このことから、ラスタラインL9〜L12の各間に生じる隙間を小さくすることができ、これにより、印刷される画像Gに「空白部」が生じてしまうのを抑制することができる。
<作用・効果>
以上本実施形態にあっては、ドラフト印刷モードにてモノクロ印刷を実行するときに、ブラックノズル群211Kの他に、シアンノズル群211Cやマゼンタノズル群211M、イエロノズル群211Yの各ノズル♯1〜♯180から各々インクを吐出して、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロ(Y)の各色を合成することによりブラック(K)を表現する、いわゆるコンポジットブラックにより画像を印刷する。このことから、従来のように、ブラックノズル群211Kのみからインクを吐出して画像を印刷する場合に比べて、シアン(C)のインクと、マゼンタ(M)のインクと、イエロ(Y)のインクと、ブラック(K)のインクとが相互に重なり、より大きなドットを形成することができる。これによって、印刷される画像Gに「空白部」が生じてしまうのを可及的に抑制することができ、印刷される画像がかすれてしまったり、また全体的に色が薄く見えてしまうのを防止することができる。
===他の構成例===
図23〜図27は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の他の構成例を説明するための図である。図23は、そのインクジェットプリンタ1のヘッド21のノズル群を説明する説明図である。図24は、そのインクジェットプリンタ1のヘッド21のノズル群の配置を詳しく説明する説明図である。図25は、そのインクジェットプリンタ1のドラフト印刷モードにて印刷される画像を説明するための説明図である。図26は、そのインクジェットプリンタ1のドラフト印刷モードにて印刷される画像の構成について詳しく説明するための説明図である。図27は、印刷される画像を構成する画素について詳しく説明した説明図である。
<ノズル配列>
このインクジェットプリンタ1は、図23に示すように、ヘッド21に設けられたすべてのノズル群211Y、211M、211C、211Kが、搬送方向に沿って同じ位置に設けられているわけではなく、ノズル群211Y、211M、211C、211Kが搬送方向に沿ってずれた位置に設けられている。
本実施形態では、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kとが、それぞれ搬送方向に沿ってずれた位置に設けられている。イエロノズル群211Yとブラックノズル群211Kとが搬送方向に沿って同じ位置に設けられている。
図24は、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kのズレ幅について説明したものである。各ノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)は、「3・D」に設定されている。なお、ここで、「D」とは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、媒体Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)のことである。つまり、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)は、搬送方向における最小のドットピッチDの3倍に設定されている。
シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kとは、それぞれ1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に設けられている。つまり、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mとの間のズレ幅は、1D(ドットピッチ)に設定され、また、マゼンタノズル群211Mとイエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kとの間のズレ幅は、1D(ドットピッチ)に設定されている。なお、シアンノズル群211Cと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kとの間のズレ幅は、2D(ドットピッチ)である。
これにより、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kの各ノズル♯1〜♯180についても、同じ番号のノズルどうしがそれぞれ搬送方向に沿ってずれて設けられている。つまり、シアンノズル群211Cのノズル♯1〜♯180と、マゼンタノズル群211Mのノズル♯1〜♯180と、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kのノズル♯1〜♯180とが、同じ番号のノズルどうし、それぞれ搬送方向に沿ってずれて配置されている。なお、イエロノズル群211Yのノズル♯1〜♯180とブラックノズル群211Kのノズル♯1〜♯180とは、同じ番号のノズルどうし、搬送方向に沿って同じ位置に設けられている。
シアンノズル群211Cのノズル♯1〜♯180と、マゼンタノズル群211Mのノズル♯1〜♯180との同じ番号のノズルどうしのズレ幅は、1D(ドットピッチ)に設定されている。また、マゼンタノズル群211Mのノズル♯1〜♯180とイエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kのノズル♯1〜♯180との同じ番号のノズルどうしのズレ幅は、1D(ドットピッチ)に設定されている。なお、シアンノズル群211Cのノズル♯1〜♯180と、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kのノズル♯1〜♯180との同じ番号のノズルどうしのズレ幅は、2D(ドットピッチ)である。
<印刷方法>
このような配列のノズル群211Y、211M、211C、211Kを有するヘッド21により、ドラフト印刷モードにて画像を印刷する場合について説明する。
図25は、本実施形態のヘッド21により、ドラフト印刷モードにて画像Gを印刷したときの画像Gの形成状況を説明したものである。なお、ここでも、簡略的に、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kが4つのノズル♯1〜♯4を有している場合を例にして説明する。また、インクを吐出するノズルは、黒丸で示している。
各ノズル群211Y、211M、211C、211Kは、すべて搬送方向に沿って同じ位置に設けられておらず、ずれた位置に設けられているから、ヘッド21がキャリッジ移動方向に沿って1回移動したときに、同図に示すように、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4からそれぞれ異なるラインに沿ってインクを吐出することができる。
つまり、ここでは、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4と、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4と、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4とが、それぞれ搬送方向に沿ってずれた位置に設けられているから、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクとをそれぞれ異なるラインに沿って吐出することができる。
これによって、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4によって、それぞれ異なるラインに沿ってドット列を形成することができる。つまり、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成される各ドット列と、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクによって形成される各ドット列と、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成される各ドット列とをそれぞれ異なるラインに沿って形成される。
図26は、印刷される画像Gの構成を拡大して詳しく示したものである。同図に示すように、シアンノズル群211Cとマゼンタノズル群211Mとは、1D(ドットピッチ)ずれて設けられているから、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成されるシアンドット列512Cと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成されるマゼンタドット列512Mとは、それぞれ相互に1D(ドットピッチ)ずつずれて形成される。また、マゼンタノズル群211Mとイエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kとは、1D(ドットピッチ)ずれて設けられているから、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成されるマゼンタドット列512Mと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成されるイエロドット列512Yまたはブラックドット列512Kとは、それぞれ相互に1D(ドットピッチ)ずつずれて形成される。なお、シアンドット列512Cと、イエロドット列512Yまたはブラックドット列512Kとは、それぞれ相互に2D(ドットピッチ)ずつずれて形成される。
これらのことから各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4からそれぞれ吐出されるインクによって形成されるドット列512C、512M、512Y、512Kは、図26にも示すように、それぞれ相互に1D(ドットピッチ)ずつずれて形成されることになる。これによって、4本のラスタラインL1〜L4が形成される。
1回のパスが終了して、次のパスを実行したときに、図25に示すように、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kとが、それぞれ搬送方向に沿って1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に設けられているから、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成される各ドット列512Cと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯4から吐出されたインクによって形成される各ドット列512Mと、イエロノズル群211Yまたはブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯4から吐出されるインクによって形成される各ドット列512Y、512Kとは、それぞれ1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に形成される。これによって、さらに4本のラスタラインL5〜L8が形成される。
さらにパスを繰り返し実行することによって、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯4からそれぞれ吐出されるインクによって形成されるドット列512C、512M、512Y、512Kについても、それぞれ1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に形成することができる。これによって、さらに8本のラスタラインL9〜L16を形成することができる。
このことから、ドラフト印刷モードであっても、各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180から吐出したインクによってそれぞれ異なる位置にドット列を形成することができるから、形成されるドット列間に隙間が生じて空白部が出来てしまうのをより確実に防ぐことができる。これによって、印刷される画像がかれてしまったり、また全体的に薄くなってしまうのをより一層防止することができ、このことから、印刷される画像の見栄えをより一層向上させることができる。
<印刷される画像の構成>
このようにして印刷される画像Gの構成について説明する。印刷される画像Gを構成する1つの画素は、シアンノズル群211Cの各ノズル♯1〜♯180から吐出されたインクによって形成されるシアン(C)のドットと、マゼンタノズル群211Mの各ノズル♯1〜♯180から吐出されたインクによって形成されるマゼンタ(M)のドットと、イエロノズル群211Yの各ノズル♯1〜♯180から吐出されるインクによって形成されたイエロ(Y)のドットと、ブラックノズル群211Kの各ノズル♯1〜♯180から吐出されたインクによって形成されるブラック(K)のドットとにより構成される。
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1では、ドラフト印刷モードにより画像を印刷した場合に、シアン(C)のドットと、マゼンタ(M)のドットと、イエロ(Y)のドットおよびブラック(K)のドットとが、それぞれ搬送方向に沿って1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に形成される。このため、このようなドラフト印刷モードにおいて印刷される画像Gは、これら相互に1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に形成される4種類の異なる色のドットにより1つの画素を構成して印刷される。
図27は、ここで印刷される画像Gの構成について詳しく説明するものである。ここでは、シアン(C)のドットと、マゼンタ(M)のドットと、イエロ(Y)のドットおよびブラック(K)のドットとが、それぞれ搬送方向に沿って1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に形成されることから、これら4種類の異なる色のドットにより1つの画素Pixを構成して画像を印刷する。
<他のノズル配列(その1)>
前述した実施の形態では、ブラックノズル群211Kが、全ノズル群211C、211M、211Y、211Kのうち一方の端に配置されていたが、このような配置に限らず、ブラックノズル群211Kが、全ノズル群211C、211M、211Y、211Kのうち搬送方向の中央に配置されていても良い。図28は、ブラックノズル群211Kが全ノズル群211C、211M、211Y、211Kのうち、搬送方向の中央に配置されたときの一例を示したものである。このようにブラックノズル群211Kが、全ノズル群211C、211M、211Y、211Kのうち、搬送方向の中央に配置されれば、ブラック(K)のインクにより形成されるドットが、他の色のインク、ここでは、シアン(C)およびマゼンタ(M)ののインクにより形成されるドットの間に挟まれて形成されることになり、これによって、ブラックをより濃く表現することができる。
図29は、ブラックノズル群211Kを全ノズル群211C、211M、211Y、211Kのうち、搬送方向の中央に配置した場合に、ドラフト印刷モードにおいて形成されるドットの様子を示したものである。同図に示すように、ブラック(K)のドットが、シアン(C)のドットと、マゼンタ(M)のドットとの間に挟み込まれて形成される。このため、ブラック(K)のドットが、他の色のドットに比べて大きく目立ち、ブラック(K)をより濃く表現することができる。
なお、ここで。イエロノズル群211Yとブラックノズル群211Kとは、搬送方向に沿って相互に同じ位置に配置されている。もちろん、イエロノズル群211Yについては、必ずしもブラックノズル群211Kと搬送方向に沿って同じ位置に配置する必要はない。すなわち、イエロノズル群211Yについては、シアンノズル群211Cまたはマゼンタノズル群211Mと搬送方向に沿って同じ位置に配置しても良い。
<他のノズル配列例(その2)>
前述した実施形態では、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)が「3・D」に設定されていたことから、全ノズル群のうち1つのノズル群が、どれか1つのノズル群と搬送方向に沿って同じ位置に設けられていたが、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)が、「3・D」以外に設定されていた場合には、この限りではない。
図30は、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)が「4・D」に設定されていた場合の各ノズル群211C、211M、211Y、211Kの配置の一例を示したものである。ここでは、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mと、イエロノズル群211Yと、ブラックノズル群211Kとが、それぞれ搬送方向に沿って1D(ドットピッチ)ずつずれた位置に設けられている。このように各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)が「4・D」に設定されていた場合には、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kをそれぞれ1D(ドットピッチ)ずつ搬送方向に沿ってずれた位置に設けると良い。このように配置すれば、ドラフト印刷モードであっても、ドット列間に隙間が生じるのを防ぐことができ、これによって、印刷される画像がかれてしまったり、また全体的に薄くなってしまうのを防止することができる。このことから、印刷される画像の見栄えの向上を図ることができる。
なお、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)が「4・D」に設定されていた場合、ノズル群の順序は必ずしもこのような順次にする必要はなく、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mと、イエロノズル群211Yと、ブラックノズル群211Kとの順序が、異なっていてもよい。また、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)が「4・D」に設定されていた場合であっても、必ずしも各ノズル群211C、211M、211Y、211Kを1D(ドットピッチ)ずつ搬送方向に沿ってずれた位置に設ける必要はない。すなわち、先に説明した実施形態のように、どれか2つのノズル群が搬送方向に沿って同じ位置に設けられていても良い。
また、各ノズル群211C、211M、211Y、211Kのノズル間隔(ノズルピッチ)は、「k・D」の「k」は、2または5以上に設定されても良い。
また、これらシアンノズル群211C、マゼンタノズル群211M、イエロノズル群211Yおよびブラックノズル群211K以外の他の色のインクを吐出するノズル群、例えば、ライトシアンのインクを吐出するノズル群や、ライトマゼンタのインクを吐出するノズル群、ダークイエロのインクを吐出するノズル群、バイオレットのインクを吐出するノズル群などを備えていても構わない。これらのノズル群についても、他のノズル群と搬送方向に沿ってずれた位置に設けても良く、また搬送方向に沿って同じ位置に設けても良い。
また、これらシアンノズル群211C、マゼンタノズル群211M、イエロノズル群211Yおよびブラックノズル群211Kのすべてのノズル群を必ずしも備える必要はない。
===その他の実施の形態===
以上、一実施形態に基づき、本発明に係るプリンタ等の印刷装置について説明したが、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更または改良され得るとともに、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に係る印刷装置に含まれるものである。
また、本実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部又は全部をソフトウェアによって置き換えてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアによって置き換えてもよい。
また、インクジェットプリンタ1側にて行っていた処理の一部をコンピュータ装置1100側にて行ってよく、またインクジェットプリンタ1とコンピュータ装置1100の間に専用の処理装置を介設して、この処理装置にて処理の一部を行わせるようにしてもよい。
<インク吐出部について>
前述した実施形態では、本発明のインク吐出部(第1インク吐出部および第2インク吐出部)について、図7や図23に示すような多数のノズル♯1〜♯180を備えたノズル群211C、211M、211Y、211Kを例にして説明していたが、本発明のインク吐出部にあっては、このような多数のノズル♯1〜♯180を有するノズル群211C、211M、211Y、211Kに限らず、インクを吐出するのであれば、どのようなタイプのインク吐出部であっても構わない。
また、前述した実施形態では、本発明のインク吐出部(第1インク吐出部および第2インク吐出部)が、所定の方向(搬送方向)に沿って相互に間隔をあけて直線状に配列されたノズル♯1〜♯180を備えたノズル群211C、211M、211Y、211Kを例にして説明していたが、本発明のインク吐出部にあっては、このようなノズル配列を有するノズル群に限らず、インクを吐出するのであれば、どのようなタイプのインク吐出部であっても構わない。
<インクの吐出機構について>
前述の実施形態では、圧電素子としてピエゾ素子を用いてインクを吐出する機構が紹介されていたが、本発明のインクを吐出する機構にあっては、このような方式によりインクを吐出する機構に限られず、インクを吐出する機構であれば、例えば、熱等によりノズル内に泡を発生させることによってインクを吐出する方式や、その他各種方式、インクを吐出する機構であれば、どのような方式を採用していても構わない。
<第1インク吐出部について>
本発明のブラックのインクを吐出する第1インク吐出部とは、黒色のインクを吐出するインク吐出部のことである。ここで、第1インク吐出部が吐出する黒色のインクとしては、その色の濃度については、特に問わない。すなわち、本発明の第1インク吐出部が吐出する黒色のインクとしては、濃度の薄い、淡い黒色のインクや、濃度の濃い黒色のインクであっても良い。なお、インクジェットプリンタ1が、濃度の異なる2種類以上のブラックインク、例えば、濃度の薄い淡ブラックインクおよび、濃度の濃い濃ブラックインクとの双方を吐出可能な場合には、これら淡ブラックインクおよび濃ブラックインクの双方が、本発明の第1インク吐出部であっても良く、また、少なくともどれか一方が、本発明の第1インク吐出部であっても良い。
<第2インク吐出部について>
前述した実施の形態では、本発明の第2インク吐出部として、イエロノズル群211Yと、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mとを備えていたが、本発明の第2インク吐出部にあっては必ずしもこれらのノズル群211C、211Y、211M、211Kを備えている必要はない。すなわち、本発明の第2インク吐出部としては、第1インク吐出部(ブラックノズル群211K)の他に、イエロノズル群211Yのみを有していたり、またシアンノズル群211Cのみを有していたり、マゼンタノズル群211Mのみを有していても良い。
また、このほかに、本発明の第2インク吐出部としては、これらの色のノズル群211C、211M、211Y以外に、別の色のインクを吐出するノズル群を備えていても良い。例えば、ライトシアン(LC)のインクを吐出するノズル群や、ライトマゼンタ(LM)のインクを吐出するノズル群、ダークイエロ(DY)のインクを吐出するノズル群、その他、各色のインクを吐出するノズル群を備えていても良い。
すなわち、本発明にあっては、第2インク吐出部として、必ずしもイエロ(Y)のインクを吐出するイエロノズル群211Yと、シアン(C)のインクを吐出するシアンノズル群211Cと、マゼンタ(M)のインクを吐出するマゼンタノズル群211Mとをすべて備えている必要はない。つまり、前述した実施の形態では、ドラフト印刷モードにてモノクロ印刷を実行するときに、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロ(Y)の各色を合成することによりブラック(K)を表現する、いわゆるコンポジットブラックを出力するために、イエロノズル群211Yと、シアンノズル群211Cと、マゼンタノズル群211Mとを備えていたが、本発明にあっては、ブラックノズル群から吐出されるインクに、別の色のインクを重ねてより大きなドットを媒体S上に形成できればよい。したがって、本発明にあっては、必ずしもシアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロ(Y)の各色のインクを合成してブラック(K)を表現するコンポジットブラックにより印刷を行う必要はなく、ブラック(K)のインク以外の別の色のインクを吐出するインク吐出部を本発明の第2インク吐出部として備えていればよい。
<印刷データについて>
前述した実施の形態では、印刷データがコンピュータ装置1100に搭載されたプリンタドライバ1110により生成されていたが、本発明の印刷データにあっては、このような場合に限らず、印刷データを生成するのは、プリンタドライバ1110以外であっても構わない。
また、前述した実施の形態では、印刷データが外部のコンピュータ装置1100にて生成されて当該コンピュータ装置1100からインクジェットプリンタ1へと送信されていが、本発明にあってはこのような場合に限らず、印刷データは、インクジェットプリンタ1内部で生成されても良い。
また、前述した実施の形態では、印刷データは、プリンタドライバ1110のラスタライズ処理部1118により生成されたデータであったが、本発明にあってはこのようなデータである必要はなく、インクジェットプリンタ1が印刷をするために生成されるデータであれば、どのようなデータであっても構わない。
<モノクロ印刷用の印刷データについて>
前述した実施の形態では、本発明のモノクロ印刷用の印刷データとして、ブラック色変換テーブル504を参照して色変換処理されて生成された印刷データや、コンポジットブラック色変換テーブル506を参照して色変換処理されて生成された印刷データを例にして説明したが、本発明のモノクロ印刷用の印刷データにあっては、このような印刷データに限らず、インクジェットプリンタ1がモノクロ印刷を実行するために用いられる印刷データであれば、どのような印刷データであっても、本発明のモノクロ印刷用の印刷データに該当する。
<第1の解像度及び第2の解像度について>
前述した実施の形態では、第1の解像度として、通常印刷モードに対応する解像度を例に、また、第2の解像度として、ドラフト印刷モードに対応する解像度を例にして説明したが、本発明の「第1の解像度」および「第2の解像度」にあっては、これらの解像度に限らない。すなわち、本発明の「第1の解像度」としては、前述した通常印刷モード以外の他の印刷モードに対応する解像度を適用してもよい。また、本発明の「第2の解像度」としては、前述した「ドラフト印刷モード」に対応する解像度以外の他の印刷モードに対応する解像度を適用しても良い。すなわち、「第2の解像度」が「第1の解像度」よりも低い解像度であれば、どのような解像度も適用することができる。
つまり、前述した実施の形態では、第1の解像度、即ち通常印刷モードに対応する解像度を「360dpi(縦)×360dpi(横)」や「720dpi(縦)×720dpi(横)」以外の他の解像度であっても構わない。また、第2の解像度についても同様に、ドラフト印刷モードに対応する解像度以外の他の解像度、例えば、「120dpi(縦)×360dpi(横)」以外の他の解像度に設定されていても良い。
また、本発明の「第2の解像度にて画像を印刷するとき」とは、前述したような「ドラフト印刷モード」にて画像を印刷するときだけに限らず、前述したように所定の解像度(第1の解像度)に比べて低い解像度にて画像を印刷するときも含む。
<印刷する画像について>
本発明の「印刷する画像」としては、シアン(C)やマゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)などの色により印刷される画像の他に、例えばライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)、ダークイエロ(DY)などの他の色により印刷される画像であっても良い。
<所定の高速印刷モードについて>
前述した実施の形態では、所定の高速印刷モードとして、ドラフト印刷モードを例にして説明したが、本発明の所定の高速印刷モードとしては、このようなドラフト印刷モードに限らず、前述した「第1の解像度」よりも低い「第2の解像度」にて印刷するのであれば、他の印刷モードも含む。
<ドラフト印刷モードについて>
前述した実施の形態では、ドラフト印刷モードとして、1回のパスで印刷される領域PRと、次のパスで印刷される領域PRとが相互に重ならないように、各パス間の媒体Sの搬送量が設定されるモードに限らず、各パス間の媒体Sの搬送量が他の形態にて設定されるモードであっても良い。すなわち、本発明のドラフト印刷モードとは、印刷処理を高速で実行するために、印刷すべき画像の一部を省いて印刷処理を実行するようなモードであれば、どのようなモードも含む。
<印刷装置について>
前述した実施の形態では、本発明に係る印刷装置として、インクジェットプリンタ1とコンピュータ装置1100とを備えた印刷システムを例にして説明したが、本発明に係る印刷装置にあっては、このような印刷システムに限らず、媒体Sに対してドットを形成して画像を印刷する印刷装置であれば、例えば、バブルジェット方式のプリンタなどのインクを吐出して印刷するのでは、どのような装置であっても構わない。
<媒体について>
媒体Sについては、普通紙やマット紙、カット紙、光沢紙、ロール紙、用紙、写真用紙、ロールタイプ写真用紙等をはじめ、これらの他に、OHPフィルムや光沢フィルム等のフィルム材や布材、金属板材などであっても構わない。すなわち、インクの吐出対象となり得るものであれば、どのような媒体であっても構わない。
<インクについて>
使用するインクについては、顔料インクであっても良く、また染料インクであっても良い。
インクの色については、前述したイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の他に、ライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)、ダークイエロ(DY)をはじめ、例えば、レッドやバイオレット、ブルー、グリーンなど、その他の色のインクを使用しても良い。
<搬送機構について>
前述した実施の形態では、本発明の搬送機構として、本発明の搬送機構として、紙搬送モータ15や搬送ローラ17A、排紙ローラ17Bなどを備えた構成が開示されていたが、本発明の搬送機構にあってはこのような機構に限らず、媒体Sを搬送可能な機構であれば、どのような機構であっても構わない。
<所定の方向について>
前述した実施の形態では、本発明の「所定の方向」として、図4〜図24で示すような搬送方向が例示されていたが、本発明の「所定の方向」にあっては、このような方向に限らず、搬送機構により媒体Sが搬送される方向であれば、どのような方向であっても構わない。
<所定の方向と交差する方向について>
前述した実施の形態では、本発明の「所定の方向と交差する方向」について、図4〜図24で示すように、所定の方向(搬送方向)と直交する、キャリッジ41の移動方向を例にして説明したが、本発明の「所定の方向と交差する方向」にあっては、このような方向に限らず、媒体Sに対して画像を印刷する印刷部(ヘッド21等)が移動する方向であれば、必ずしもこのように所定の方向(搬送方向)に対して直交している必要はない。
<ドットについて>
前述した実施形態では、形成されるドットとして、略円形状のドットが形成されていたが、楕円形状をなしていたり、またその他の形状をなしていても構わない。すなわち、印刷する画像の画素を構成するものであれば、どのような形状や形態のドットであっても構わない。
<プリンタドライバについて>
前述した実施の形態では、プリンタドライバ1110が、インクジェットプリンタ1と通信可能なコンピュータ装置1100に搭載されていたが、本発明にあってはこのような場合に限らず、プリンタドライバ1110がインクジェットプリンタ1に搭載されていても良い。
また、前述した実施の形態では、プリンタドライバ1110が、解像度変換処理部1112と、色変換処理部1114と、ハーフトーン処理部1116と、ラスタライズ処理部1118とを備えていたが、必ずしもこれらの処理部1112、1114、1116、1118を備えている必要はない。すなわち、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データをインクジェットプリンタ1が解釈できる印刷データに変換する機能を備えていれば、プリンタドライバに相当する。