次に、添付図面を参照して本発明に係る気化原料の供給構造、原料気化器及び反応処理装置の実施形態及び参考例について詳細に説明する。
[第1参考例]
図1は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第1参考例の構成を示す概略断面図である。この原料気化器100は、第1気化部に相当する原料気化面110B及び原料気化空間110Aを構成する原料気化室110と、原料気化空間110Aに液体原料を噴霧する原料噴霧手段120と、この原料気化室110に対して着脱可能に取り付けられた第2気化部に相当する原料ガス送出部130とを備えている。なお、配管139は原料気化空間110Aの内圧を検出するための図示しない圧力ゲージ(キャパシタンスマノメータ)を取り付ける検出用配管である。この配管139に連通する原料気化室110の開口部には、フィルタ部材139xが取り付けられている。このフィルタ部材139xは圧力ゲージへのミストや固形物の進入を防止するためのものである。フィルタ部材139xは取付部材139yによって開口縁に対して密着固定されている。
原料気化室110は、隔壁111と、この隔壁111内に設置されたヒータなどの加熱手段112を備えている。また、隔壁111は、原料噴霧手段120を装着する開口部111aを備えている。原料噴霧手段120は、有機金属原料や有機金属原料を溶媒に溶かした原料などの液体原料を供給する原料供給管121と、アルゴンガスなどの噴霧用ガス(たとえばAr、Ne、N2)を供給する噴霧用ガス供給管122と、上記の原料をミスト状に噴霧する噴霧ノズル123とを備えている。噴霧ノズル123は、原料(液体、たとえば有機金属材料)と噴霧用ガスを個々の細孔から噴出させることによって霧状に噴出させるように構成されている。
原料ガス送出部130は、原料気化空間110Aにおいて気化されてなる原料ガスを、原料ガス供給ライン141に送り出す部分である。また、原料ガス送出部130は、隔壁131と、この隔壁131の気化空間110A側に凹部状に構成された内部空間130Aと、この内部空間130A内に凸部状に突出して形成される柱状の伝熱部と、この隔壁131の内部(収容孔131a、図2参照)に配置されたヒータなどの加熱手段132とを有する。この原料ガス送出部130の内部空間130Aは、上記原料気化空間110Aと、原料ガス供給ライン141とに連通している。なお、この原料ガス送出部130は、原料気化空間110Aに面する位置であれば、原料気化空間110Aのいずれの側に配置されていてもよい。
また、内部空間130Aには、フィルタ部材133が配置されている。このフィルタ部材133としては、通気性のあるフィルタ板として構成されているものを用いることができる。たとえば、多孔質材料、細孔を多数備えたフィルタ板、繊維を押し固めた材料、網目(メッシュ)材などで構成されたフィルタ部材が挙げられる。より具体的には、高温(例えば、180℃〜350℃程度、ただし、原料の気化温度や分解温度によって適宜に設定される。)に耐えられる金属繊維(たとえばステンレス鋼繊維)を不織布状や焼結状に固めたフィルタ材料を用いることができる。たとえば、上記金属繊維の径は0.1〜3.0mm程度である。特に、熱伝導性の高い、球状その他の粒状材料を焼結してなる焼結材を用いることが好ましい。この粒状材料の構成素材としては、セラミックス、石英などの非金属材料や、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、ニッケルなどの非鉄金属材料及びこれらの合金材料などが挙げられる。
図2(a)は、上記原料ガス送出部130を原料気化空間110A側から見た様子を示す内面図である。このフィルタ部材133の外縁部は、上記内部空間130Aの流通断面を全て覆うように周囲の隔壁131に接触し接続固定されている。より具体的には、フィルタ部材133の外縁部は固定ネジ138等により隔壁131に固定されている。フィルタ部材133の上記外縁部以外の部位には、隔壁131より内側に突出する伝熱部135,137が設けられている。より具体的には、フィルタ部材133が伝熱部135,137を介して隔壁131に熱接触している。すなわち、伝熱部135,137は、フィルタ部材133を支持する支持部材としても機能している。伝熱部135,137は、熱伝導性の良い金属(たとえばステンレス鋼など)により構成される。伝熱部135は横断面が長円形の柱状に構成され、伝熱部137は横断面が円形の柱状に構成されている。これらの伝熱部135,137は、図示例では隔壁131内に配置されたヒータ等の加熱手段で加熱されている。ただし、伝熱部が加熱手段自体で構成されていてもよく、また、伝熱部の内部に加熱手段を埋め込んでも構わない。
また、フィルタ部材133の原料気化空間110A側には、遮蔽板134が配置されている。この遮蔽板134は、例えば、ステンレス鋼などの熱伝導性金属材料で構成されている。遮蔽板134は、原料気化空間110Aに面していて、噴霧ノズル123から噴霧される原料ミストなどが直接にフィルタ部材133に付着しないようにしている。これによって、フィルタ部材133の温度低下が抑制され、付着したミストを確実に気化されることが可能になるので、フィルタ部材133の目詰まりが低減される。ここで、遮蔽板134は基本的にフィルタ部材133を平面的に覆うように配置されているが、遮蔽板134の周囲には流通開口部134bが設けられ、この流通開口部134bにより原料気化空間110Aと内部空間130Aとが連通して気化された原料ガスが効率良く送出される。また、遮蔽板134には、噴霧ノズル123側に開口部134aが設けられている。この開口部134aによって上記間隙の開口面積が大きくなるため、原料気化空間110Aからフィルタ部材133の配置された内部空間130Aへ向かう原料ガスを流れやすくしてある。この開口部134aが設けられているのは、噴霧ノズル123の噴射角度範囲が実質的に限定されているために、噴霧ノズル123側においては噴霧ノズル123から噴霧されるミストが原料ガス送出部130へ直接到達しにくいからである。
なお、図2(b)に示すように、遮蔽板134′は、フィルタ部材133と重なる位置において外周に沿って連続的に、或いは、外周全体に開口部134a′を形成するように設けてもよい。また、図2(c)に示すように、フィルタ部材133の外周部に、遮蔽板134″の外周に沿って複数の開口部134a″が離散的に形成されていてもよい。また、遮蔽板134とフィルタ部材133との間には、フィルタ部材133の全面に亘って空間部(或いはガス通路部)130Dが形成されている。
遮蔽板134は、上記フィルタ部材133とともに、スペーサ136を介して伝熱部135に固定されている。スペーサ136は、伝熱性の良い部材、例えばAlやステンレス鋼等の金属、セラミックスなどで構成される。なお、固定ねじ136aは遮蔽板134及びスペーサ136を伝熱部135に固定する固定手段である。また、これと同様の固定手段がフィルタ部材133を伝熱部137に固定するためにも用いられている。フィルタ部材133及び遮蔽板134は、伝熱部135及びスペーサ136を介して熱接触する加熱手段132から放出される熱を受けるとともに、原料気化空間110Aに臨む原料気化室110の隔壁111の内面からの輻射熱を受けることにより加熱されている。
この参考例においては、原料供給管121から供給される原料は噴霧ノズル123において原料気化空間110Aに噴霧され、ここで噴霧された原料のミストは、一部が飛行中に気化するとともに、加熱手段112によって加熱されている隔壁111の内面に到達することによって加熱され、気化される。原料を気化するためには、原料気化室110、特に隔壁111の内面は、加熱手段112によって原料の分解温度より低く、原料の気化温度より高い温度範囲に加熱される。たとえば、100〜350℃程度である。
このようにして原料気化空間110Aにて生成された原料ガスは、遮蔽板134の周囲からフィルタ部材133を通過して内部空間130Aに導入される。内部空間130Aに導入された原料ガスには、原料気化空間110Aにおいて気化されない微細な残留ミストが含まれているが、これらの残留ミストは、フィルタ部材133に到達して捕捉され、ここで加熱手段132から伝熱部135,137を介してフィルタ部材133に伝えられた熱によって加熱され、再気化される。このフィルタ部材133もまた、上記原料気化室と実質的に同じ温度範囲になるように加熱されることが好ましい。
なお、上記の伝熱部135,137は、原料ガスの流路断面においてフィルタ部材133の全体に亘ってほぼ均一に分散配置されていることが好ましい。これによって、フィルタ部材133をより均一に加熱することが可能になり、残留ミストの気化効率を向上させることができ、また、フィルタ部材の目詰まりをより低減できる。
図示例では、フィルタ部材の外縁部が原料ガス送出部の内面に接触(接続固定)していることにより、当該内面からもその外縁部が熱を受け加熱されている。なお、上記伝熱部に加熱手段を設けることによりフィルタ部材を加熱するようにしてもよい。
また、遮蔽板134は、噴霧ノズル123から噴霧されるミストが直接にフィルタ部材133に到達することを防止するので、フィルタ部材133が大量のミストによって熱を奪われ、その結果、付着したミストを気化させる能力が所定箇所において部分的に低下して、当該箇所において目詰まりを起こすことにより、原料ガスの送出量が低下するといったことが防止される。
上記参考例において、原料ガス送出部130は、隔壁131を隔壁111から取り外すことによって、簡単にフィルタ部材133を取り出すことができるように構成されている。したがって、フィルタ部材133に目詰まりなどの問題が発生したときには、きわめて簡単かつ迅速にフィルタ部材133を取り外し、清掃したり、或いは、新たなフィルタ部材に交換したりすることができるので、メンテナンス時間が短縮され、装置の稼働率が向上し、歩留まりも向上する。
本参考例では、伝熱部135,137を介して遮蔽板134に熱が伝えられ、遮蔽板134も加熱されることから、この遮蔽板134に原料気化室110A内の原料ミストが直接当ると、遮蔽板134の表面でもミストが気化する。ただし、遮蔽板134にミストが当って気化すると、気化熱が奪われることによって遮蔽板134の温度は低下する。この遮蔽板134の温度の低下量は、噴霧される液体原料の量に応じて遮蔽板134に当るミストの量が変化することによっても変化する。通常、遮蔽板134の温度は、原料気化室110の設定温度に対して5〜15℃程度低くなる。
上記フィルタ部材133は、遮蔽板134の送出口側の近傍位置に配置されていればよい。例えば、通常、フィルタ部材133と遮蔽板134の間隔は、1〜100mmの範囲内であり、特に、1〜50mmの範囲内であることが好ましく、さらに2〜10mmの範囲内であることがより好ましい。典型的には、上記距離は約5mm程度であることが最も望ましい。これは、上記距離が上記範囲よりも小さくなると、原料ガスのコンダクタンスが低下し、また、残留ミストのフィルタ部材133に対する実質的な付着範囲も狭くなってしまうため、フィルタ部材133の一部に固形物が集中的に堆積する恐れがあり、また、上記距離が大きくなると、原料ガスのコンダクタンスが向上し、フィルタ部材133の
局部的な固形物の付着も緩和されるが、その代わりに原料気化器の大型化を招くからである。
また、遮蔽板134の外縁と、その外周側に配置された隔壁131との間隔である上記流通開口部130Bの開口幅は、原料ガスのコンダクタンスを確保する上で0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。ただし、上記開口幅が大きくなるとミストがフィルタ部材133に直接到達する危険性が増大するので、約2mm程度であることが最も望ましい。
さらに、遮蔽板134の外縁と、その内部空間130A側に配置されたフィルタ部材133との間の間隙(内部空間130A内の流路幅)は、0.5mm〜100mmの範囲内であることが好ましく、また、0.5mm〜10mmの範囲内であることがより好ましい。さらに、この間隔は、約2mm程度であることが最も望ましい。この間隔が小さくなると原料ガスのコンダクタンスが低下し、逆に間隔が大きくなると、流通開口部130Bから進入したミストが直接フィルタ部材133に到達しやすくなるからである。
また、原料気化室110Aから原料ガス送出部130までの原料ガスの流路は、上記の連通開口部134bの開口幅で規定される第1流路部と、この第1流路部に連通するフィルタ部材133と遮蔽板134との間隔で規定される第2流路部とを含む。この場合、第1流路部から進入したミストや固形物が直線的に進んで第2流路部に到達しないように構成されていることが好ましい。また、フィルタ部材133の外縁部が固定されている場合には、上記原料ガスの流路は、遮蔽板134とフィルタ部材133との間隙で規定される第3流路部を含み、この第3流路部は第1流路部と第2流路部とを連通するように設けられる。この場合、第3流路部が形成されていることにより、第1流路部から進入したミストや固形物が直線的に進んで第2流路部に到達しないように構成されていることが好ましい。
[第2参考例]
図3は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第2参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図3は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部150を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。
本参考例において、原料ガス送出部150は、隔壁151と、この隔壁151の気化空間側に凹状に構成された内部空間150Aと、この空間150Aの内部に隔壁151より凸部状に突出する伝熱部155,157と、この隔壁の内部(収容孔151a)に配置された上記と同様の加熱手段152とを有する。この内部空間150Aは送出口150Sに連通している。内部空間150Aには、上記と同様のフィルタ部材153が配置されている。このフィルタ部材153は、隔壁151の内面に設けられた第1参考例と同様の突起状の伝熱部155,157に熱接触している。伝熱部155は長円形状などの延長された断面形状を有する柱状部であり、伝熱部157は円形状の断面形状を有する柱状部である。この柱状部の形状は伝熱しやすい形状であればどのような形状でもよい。フィルタ部材153の外縁部は固定ねじ158等により隔壁151に固定されている。また、伝熱部155,157の個数や配置は、フィルタ部材153に対して均一に熱を伝えることができるように設定されている。
伝熱部155,157には、スペーサ156を介して遮蔽板154が固定ねじ156aにより取付固定されている。遮蔽板154とフィルタ部材153との間にはフィルタ部材153の全面に亘って空間部150Dが形成されている。遮蔽板154は原料ガス送出部150の原料気化室に臨む位置に配置されている。遮蔽板154は円形の平面形状を有する。遮蔽板154はフィルタ部材153を全て平面的に覆うように構成され、遮蔽板154の外縁と、その周囲の隔壁151との間に設けられた円周状の間隙が流通開口部150Bとなっている。このように、遮蔽板154がフィルタ部材153を全て平面的に覆うように構成されていることによって、フィルタ部材153の目詰まりや堆積物の局部集中を抑制し、フィルタ寿命を延ばしつつ、残留ミストやパーティクルが下流側へ送出されることを防止できる。
以上説明した各部は基本的には上記第1参考例と同様に構成されている。したがって、フィルタ部材153は、その外縁部において隔壁151から直接加熱手段152の熱を受けるだけでなく、外縁部以外の部分に熱接触する伝熱部155,157を介しても加熱手段152の熱を受けるように構成されている。また、遮蔽板154は、スペーサ156を介してフィルタ部材153及び伝熱部155,157により加熱されている。
本参考例では、原料気化室で気化された原料ガスは、流通開口部150Bを通過して原料ガス送出部150の内部空間150A内に導入され、フィルタ部材153を通過した後に送出口150Sから原料ガス供給ラインに送出されるように構成されている。
ここで、上記の流通開口部150Bは、原料気化室側から流通開口部150Bに進入する任意の仮想直線を形成したとき、いずれの仮想直線もフィルタ部材153に到達しないように構成されている。すなわち、原料気化室内の残留ミストがどのような直線状の飛行経路をもって原料ガス送出部150に進入しても、その残留ミストが直接フィルタ部材153に付着しないように構成されている。具体的には、流通開口部150Bを通過する直線状の飛行経路がフィルタ部材153のフィルタ部分に達しないように流通開口部150Bの径方向の開口幅が設定されている。例えば、流通開口部150Bの半径方向の開口幅が2mm、遮蔽板154とフィルタ部材153の外縁部の軸線方向の間隔が2mm、遮蔽板154とフィルタ部材153のフィルタ部分の軸線方向の間隔が5mm、フィルタ部材153の外縁部の半径方向の幅が4mm、遮蔽板154の外縁位置とフィルタ部材153の実質的な外縁位置(すなわち、フィルタ部分の外縁位置)との間の半径方向の距離が2mmである。これによって、フィルタ部材153上の堆積物の量を低減することができ、目詰まりや堆積物の集中を抑制できる。特に、フィルタ部材153の外周部分に堆積物が集中して付着するといったことも抑制できる。
本参考例では、延長された平面形状を有する伝熱部155の内部に、隔壁151に設けられた穴151bに導入された温度センサ(例えば熱電対)159の検出点が配置されている。これによって、伝熱部155の温度、すなわちフィルタ部材153の温度にきわめて近い温度を検出することができる。そして、この温度センサ159の出力は、図示しない温度制御回路などに接続され、この温度制御回路は、温度センサ159の出力に基づいて加熱手段152を制御するように構成されている。また、この温度制御は、温度センサ159の出力に基づいて原料気化器の他の加熱手段(原料気化室を加熱する手段)と同じ温度に制御されるのが好ましい。ただし、原料気化室に対する他の加熱手段と独立に制御されるように構成してもよい。このように構成することにより、フィルタ部材153や遮蔽板154の温度を精密に制御することができるため、フィルタ部材153の目詰まりを低減でき、また、残留ミストやパーティクルを低減することが可能になる。
本参考例では、伝熱部155の温度を検出して加熱手段152が制御されることから、第1参考例よりも遮蔽板154の温度の制御性が向上する。したがって、第1参考例の場合よりも遮蔽板154の温度低下を低減することができる。この場合、加熱手段152の設定温度は原料気化室に対する設定温度と同一とすることが好ましい。
上記フィルタ部材153は、遮蔽板154の送出口150S側の近傍位置に配置されていればよい。例えば、通常、フィルタ部材153と遮蔽板154の間隔は、1〜100mmの範囲内であり、特に、1〜50mmの範囲内であることが好ましく、さらに2〜10mmの範囲内であることがより好ましい。典型的には、上記距離は約5mm程度であることが最も望ましい。これは、上記距離が上記範囲よりも小さくなると、原料ガスのコンダクタンスが低下し、また、残留ミストのフィルタ部材153に対する実質的な付着範囲も狭くなってしまうため、フィルタ部材153の一部に固形物が集中的に堆積する恐れがあり、また、上記距離が大きくなると、原料ガスのコンダクタンスが向上し、フィルタ部材153の局部的な固形物の付着も緩和されるが、その代わりに原料気化器の大型化を招くからである。なお、以上の点は、以下に説明する各参考例及び実施形態でも同様である。
また、遮蔽板154の外縁と、その外周側に配置された隔壁151との間隔である上記流通開口部150Bの開口幅は、原料ガスのコンダクタンスを確保する上で0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。ただし、上記開口幅が大きくなるとミストがフィルタ部材153に直接到達する危険性が増大するので、約2mm程度であることが最も望ましい。なお、この点は、以下に説明する各参考例及び実施形態でも同様である。
さらに、遮蔽板154の外縁と、その内部空間150A側に配置されたフィルタ部材153の外縁部との間隙(内部空間150A内の流路幅)は、0.5mm〜100mmの範囲内であることが好ましく、また、0.5mm〜10mmの範囲内であることがより好ましい。さらに、この間隔は、約2mm程度であることが最も望ましい。この間隔が小さくなると原料ガスのコンダクタンスが低下し、逆に間隔が大きくなると、流通開口部150Bから進入したミストが直接フィルタ部材153に到達しやすくなるからである。なお、この点は、以下に説明する各参考例及び実施形態でも同様である。
また、原料気化室から原料ガス送出部150までの原料ガスの流路は、上記の連通開口部150Bの開口幅で規定される第1流路部と、この第1流路部に連通するフィルタ部材153と遮蔽板154との間隔で規定される第2流路部(空間部150D)とを含む。この場合、第1流路部から進入したミストや固形物が直線的に進んで第2流路部に到達しないように構成されていることが好ましい。また、フィルタ部材153の外縁部が固定されている場合には、上記原料ガスの流路は、遮蔽板154とフィルタ部材153の外縁部との間隙で規定される第3流路部を含み、この第3流路部は第1流路部と第2流路部とを連通するように設けられる。この場合、第3流路部が設けられていることにより、第1流路部から進入したミストや固形物が直線的に進んで第2流路部に到達しないように構成されていることが好ましい。なお、この点は、以下に説明する各参考例及び実施形態でも同様である。
[第3参考例]
図4は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第3参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図4は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部150′を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部150′のうち、第2参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
この参考例では、隔壁151′にその内部空間150Aを原料ガス供給ラインに連通させる送出口150Sとは別に、内部空間150Aを外部に連通させる排出口150Cが設けられている。この排出口150Cは噴霧ノズルから見て最も離間した位置、すなわち、図示下端部に設けられている。排出口150Cは、後述する反応処理装置の反応処理部を経由せずに排気されるバイパスライン(排気ライン(evacuation line))などの排出ラインに接続され、原料ガスの供給状態が安定するまで原料ガスを反応処理部に導入せずに排気するために用いられる。
本参考例において、上記排出口150Cに対応する平面位置には、フィルタ部材153′に開口部153a′が設けられている。この開口部153a′の開口縁部は、フィルタ部材153′の外縁部の一部として設けられ、フィルタ部材153′を固定する固定ねじ158′等により隙間なく排出口150Cに接続されている。
本参考例では、遮蔽板154を避けて流通開口部150Bを通過して内部空間150Aに侵入した原料ガスは、排出口150Cに接続される排出ラインに設けられた弁が開いた状態において上記開口部153a′及び排出口150Cを通って直接排出される。したがって、反応処理部に送られない原料ガスがフィルタ部材153′を通過することがなくなるので、フィルタ部材153′の寿命を延ばすことができる。
なお、排出口150Cに接続された排出ラインの弁を閉鎖し、原料ガス供給ラインの弁を開くことによって、今まで排出口150Cから排出されていた原料ガスは、フィルタ153′を通過して送出口150Sから原料ガス供給ラインへ導かれるようになる。
[第4参考例]
図5は、本発明に係る気化原料の供給構造及び原料気化器の第4参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図5は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部150″を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部150″のうち、第2参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
この参考例では、加熱手段152″の先端に伝熱部157″が接合された状態で隔壁151″の内部(収容孔151a″)に挿入され、伝熱部157″は内部空間150A内に突出して上記各参考例と同様にフィルタ部材153及び遮蔽板154に熱接触している。加熱手段152″は例えばロッド状のヒータであり、直接に伝熱部157″が接合されていることにより、伝熱部157″を介したフィルタ部材153及び遮蔽板154の加熱を効率的に行うことができるように構成されている。
本参考例にも上記各参考例と同様に延長された平面形状を有する伝熱部155″が設けられているが、その一部は上記の伝熱部157″の一つが隔壁151″から挿入されて内部空間150Aに突出した状態となっている。すなわち、伝熱部155″は伝熱部157″の一つを含む態様で構成されている。
本参考例において、伝熱部157″の先端にはねじ穴が形成され、伝熱部157″の先端にフィルタ部材153、スペーサ156及び遮蔽板154を順次に重ねて、上記のねじ穴に固定ねじ156aをねじ込むことにより、フィルタ部材153及び遮蔽板154が伝熱部157″に固定される。
図5(c)は、上記の加熱手段152″及びそれに接続される部品の異なる例を示すものである。図5(c)に示す加熱手段152S″は、ロッド状のヒータの先端部にボルトを埋め込んだものである。また、上記スペーサ156の代わりに、上記のボルトに螺合するナット152T″を用意し、また、このナット152T″に螺合する固定ねじ152U″を容易する。これによって、加熱手段152S″とナット152T″との間にフィルタ部材153を配置し、ナット152T″と固定ねじ152U″との間に遮蔽板154を配置した状態で、ナット152T″を介して加熱手段152S″と固定ねじ152U″とを固定することができる。
このように、本参考例では、伝熱部157を加熱手段152″の一部で構成することができる。これによって、フィルタ部材153や遮蔽板154をさらに効率的に加熱することができる。したがって、第1参考例の場合よりも遮蔽板154の温度低下をさらに低減することができる。この場合、加熱手段152″の設定温度は原料気化室に対する設定温度と同一とすることが好ましい。
[第5参考例]
図6は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第5参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図6は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部160を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。
この原料ガス送出部160は、隔壁161と、この隔壁161の内部(収容孔161a)に配置された加熱手段162とを有する。隔壁161には、内側(原料気化室側)から遮蔽板164が密着固定されている。内部空間160Aは、隔壁161と遮蔽板164との間に画成され、送出口160Sに連通している。内部空間160Aには、固定ねじ168等によりフィルタ部材163の外縁部が固定されている。また、このフィルタ部材163の外縁部以外の部位には、隔壁161の内面上に突設された複数の伝熱部165,167が熱接触している。また、フィルタ部材163と遮蔽板164との間にはスペーサ166が介在し、固定ねじ166aによって伝熱部165,166、フィルタ部材163及び遮蔽板164が固定されている。フィルタ部材163と遮蔽板164との間にはフィルタ部材163の全面に亘って空間部160Dが形成されている。そして、フィルタ部材163と遮蔽板164の間に、気化したガスが通過する空間が形成され、この空間を通過したガスがフィルタ163を通過した後に排出口160Sへ流れるようになっている。
なお、伝熱部165は延長された平面形状を有し、この伝熱部165の内部には、上記各参考例と同様の温度センサ169の温度検出点が配置されている。
遮蔽板164には、複数の平面形状がスリット状に構成された流通開口部164Aが形成されている。これらの流通開口部164Aは、遮蔽板164の厚さ方向に曲折(屈折若しくは湾曲)した形状を有し、原料気化室側から進入した残留ミストが直接フィルタ部材163に到達することのないように構成されている。すなわち、この流通開口部164Aは、原料気化室側から流通開口部164Aに進入する全ての仮想直線がそのままフィルタ部材163に到達しないように構成されている。これによって、残留ミストのほとんどが少なくとも1回は遮蔽板164に接触してから内部空間160A内に進入するように構成されるため、原料ガスの流通を確保しながら、遮蔽板による残留ミストの気化作用を促進することができ、フィルタ部材163の目詰まりや堆積物の集中を低減できる。上記の流通開口部164Aは、遮蔽板164の面内において平行になるように複数形成されてもよく、同心円状になるように複数形成されてもよい。
以上のように、本参考例においては、流通開口部を遮蔽板に設けることができる。なお、上記の流通開口部は、結果的に原料気化室側から流通開口部を通してフィルタ部材に直接達する仮想直線が存在しないように構成されていればよい。したがって、上記のように曲折した孔形状でなくても、流通開口部の遮蔽板に対する貫通方向がフィルタ部材に向いていなければ、すなわちフィルタ部材から外れた方位を向いていれば、上記と同様の効果を得ることができる。
[第6参考例]
図7は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第6参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図7は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部160′を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部160′のうち、第5参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
この参考例では、遮蔽板164′には流通開口部164A′が設けられているが、この流通開口部164A′は、平面的に見てフィルタ部材163と重なる領域から外れた領域、すなわち、フィルタ部材163よりも外周側にずれた位置に設けられている。これによって、原料気化室側から流通開口部164A′に進入する全ての仮想直線がフィルタ部材163に到達することのないように構成されている。図示例では、流通開口部164A′は円弧状のスリット形状を有する。なお、複数の流通開口部164A′を同心円状に等間隔に形成してもよい。複数の流通開口部164A′を形成する場合には、千鳥状(互い違い)に形成してもよい。なお、温度センサ169の出力に基づいて加熱手段162を制御し、遮蔽板164′の温度を制御可能に構成されている点は先の参考例と同様である。
本参考例では、遮蔽板164′の内部にワイヤ状のヒータなどで構成される加熱手段164H′が挿通され、遮蔽板164′を直接に加熱している。加熱手段164H′は、遮蔽板164′を蛇行状に挿通している。図示例では、加熱手段164H′を外部から遮蔽板164′に導入しているが、加熱手段164H′を遮蔽板164′内に埋め込んでもよい。また、線状の加熱手段164H′を格子状や螺旋状となるように配設してもよい。さらに、複数本の加熱手段164H′を遮蔽板164′に導入してもよい。
また、遮蔽板164′の内部には、温度センサ164TC′の温度検出点も配置されている。この温度センサ164TC′の検出温度に基づいて、加熱手段164H′を制御することによって、遮蔽板164′を直接、独立して温度制御することができるようになっている。これにより、遮蔽板164′の温度を最適温度に精密に設定することができるため、遮蔽板164′によるミストの気化状態を安定させることができる。この場合、加熱手段164H′の設定温度は原料気化室に対する設定温度と同一とすることが好ましい。
以上のように、本参考例においては、遮蔽板の内部に加熱手段を配置することにより、遮蔽板の温度制御性が改善され、さらに効率的に原料の気化を行うことができ、残留ミストやパーティクルの低減を図ることができる。
[第7参考例]
図8は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第7参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図7は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部150Xを示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部150Xのうち、第2参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
この参考例においては、第2参考例と同様の基本構造を有するが、第2参考例と同様の伝熱部155,157、スペーサ156及び固定ねじ156aで構成される熱伝導柱がより多く設けられ、これらが内部空間150A内に分散配置されている点で異なる。これらの熱伝導柱は、第2参考例と同様にフィルタ部材153X及び遮蔽板154Xと熱接触している。熱伝導柱は、隔壁151Xの内面と遮蔽板154Xとに共に熱接触した状態となっている。
本参考例では、上記の熱伝導柱が原料ガス送出部において多数分散配置されていることにより、原料気化室から流通開口部150Bを通して原料ガスとともに進入した残留ミストが熱伝導柱に接触して加熱されて気化し、原料ガスとなるため、気化効率を向上させることができる。
[第8参考例]
図9は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第8参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図9は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部150Yを示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部150Yのうち、第2参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
本参考例では、隔壁151Yに複数の柱状の伝熱部157Yを形成し、この伝熱部157Yに固定ねじ156aにより遮蔽板154Yを固定してある。この参考例では、フィルタ部材は設けられておらず、その代わりに、多数の伝熱部157Yにて構成される熱伝導柱が隔壁151Yの内面と遮蔽板154Yとの間に分散配置されている。本参考例では、熱伝導柱がフィルタと同様の機能を有し、流通開口部150Bから内部空間150A内に進入してきた残留ミスト及びパーティクルを捕捉するように構成されている。
この参考例でも、伝熱部157Yは、流通開口部150Bから進入した残留ミストが直接送出口150Sに流出することのない態様で配列されている。すなわち、伝熱部157Yは、流通開口部150Bから至る内部空間150A内に進入する全ての仮想直線が伝熱部157Yに到達するように構成されている。特に、内部空間150A内の流通開口部150B側の外周部から送出口150S側の内周部に向けて伝熱部157Yを通過しない仮想直線を引くことができないように、複数の伝熱部157Yが配列されている。
[第9実施形態]
図10は、本発明に係る気化原料の供給構造及び原料気化器の第9実施形態の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図10は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部150Zを示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部150Zのうち、第2参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
この実施形態では、隔壁151Zに伝熱枠157Zが内側(原料気化室側)から取付固定されている。この伝熱枠157Zは、隔壁151Zに直接熱接触する外枠部と、この外枠部から内側に伸びる複数の梁部157Zaとを備えている。フィルタ部材153Zの外縁部は、外枠部に対して固定されている。また、フィルタ部材153Zの外縁部以外の部位が複数の梁部157Zaに熱接触している。フィルタ部材153Zにはスペーサ156を介して遮蔽板154Zが固定ねじ156aにより固定されている。本実施形態では、梁部157Za、スペーサ156及び固定ねじ156aにより、フィルタ部材153Z及び遮蔽板154Zが外縁部以外の部位において相互に接続固定されている。
上記の隔壁151Zの内面と梁部157Zaとの間には間隙が設けられ、これによって、流通開口部150Bを通して内部空間150A内に導入された原料ガスがフィルタ部材153Zを通過した後において、梁部157Zaに妨げられずに原料ガス供給ラインに送出されるように構成されている。
上記伝熱枠157Zの内部には加熱手段157Hが導入され、この加熱手段157Hは、梁部157Zaの内部を通過するようになっている。図示例では、ワイヤ状の加熱手段157Hが複数の梁部157Zaを順次蛇行状に通過するように構成されている。もちろん、複数の加熱手段157Hをそれぞれの梁部157Zaを挿通するように構成してもよく、各梁部157Zaの内部にそれぞれ加熱手段を内蔵してもよい。
また、伝熱枠157Zの内部、特に梁部157Zaの内部には、温度センサ157TCの温度検出点が配置されている。そして、図示しない温度制御回路は、温度センサ157TCの検出温度に基づいて、上記の加熱手段157Hの発熱量を制御する。これによって、隔壁151Zとは別に、独立して伝熱枠157Zの温度制御を行うことができる。このように、温度センサ157TCにより伝熱部157Zaの温度を検出して加熱手段157Hが制御されることから、遮蔽板154Zの温度の制御性が向上する。したがって、第1参考例の場合よりも遮蔽板154Zの温度低下を低減することができる。この場合、加熱手段157Hの設定温度は原料気化室に対する設定温度と同一とすることが好ましい。
なお、この実施形態において、上記の梁部157Zaそのものを、ロッド状ヒータなどの加熱手段で構成してもよい。また、伝熱枠157の外枠部内に加熱手段を配置するように構成してもよい。
以上のように、本発明では、伝熱部を梁状に構成してもよく、また、この伝熱部の内部に加熱手段を配置してもよく、さらには、伝熱部自体を加熱手段としてもよい。
[第10参考例]
図11は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第10参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図11は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部170を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。
この原料ガス送出部170は、隔壁171の内側に加熱手段172が内側から嵌合固定された構造を有する。加熱手段172の内端面172aは原料気化室に臨み、上記の遮蔽板と同様の機能を有する。そして、この内端面172aとその周囲の隔壁171との間に設けられた間隙が流通開口部170Bとなっている。また、加熱手段172には、その内端面172aの反対側にある、隔壁171に対向する部分に複数の柱状の伝熱部172pが設けられている。これらの伝熱部172pは隔壁171の内面に熱接触している。
加熱手段172の内部にはヒータなどの加熱部172Hと、温度センサ172TCの温度検出部が配置されている。加熱手段172の一部は隔壁171の外側に突出し、ここに、加熱部172Hに接続された給電端子172e及び温度センサ172TCの検出端子172fが設けられている。この原料ガス送出部170の内部空間170Aは、隔壁171と加熱手段172によって囲まれた領域であり、送出口170Sに連通している。内部空間170Aは環状(リング状)に構成されている。
内部空間170Aには、多数の伝熱部172pが分散配置されており、これらの伝熱部172pによってフィルタと同様の機能、すなわち、原料気化室から進入してきた残留ミストやパーティクルを捕捉する機能を有するように構成されている。これらの伝熱部172pは、隔壁171の内面と、遮蔽板と同様の機能を有する内端面172aを構成する加熱手段172の部分との間に熱伝導柱として熱接触した状態となっている。これによって、残留ミストが伝熱部172pに接触して気化し、気化効率が向上するとともに、パーティクルの発生が抑制される。
本参考例においても、上記の伝熱部172pは、原料気化室側から流通開口部170Bに進入する全ての仮想直線が伝熱部172pを通過することなしにそのまま送出口170Sに到達するといったことのないように配置されている。また、複数の伝熱部172pは、これらが配置されている内部空間170A内の流通開口部170B側(図示外周側)から送出口170S側(内周側)に向けて伝熱部172pを通過しない仮想直線が形成されないように配列されている。これによって、残留ミストのほとんどが少なくとも1回は伝熱部172pに接触してから送出口170Sに進入するように構成されるため、原料ガスの流通を確保しながら、パーティクルの排出を防止し、しかも残留ミストの気化作用を促進することができる。
加熱手段172の温度制御は、温度センサ172TCの検出温度に基づいて、原料気化室の温度制御とは独立して行われる。したがって、第1実参考例の場合よりも遮蔽板に相当する内端面172aの温度低下を低減することができる。この場合、加熱手段172の設定温度は原料気化室に対する加熱手段の設定温度と同一とすることが好ましい。なお、隔壁171の内部にも別の加熱手段を設けても構わない。
[第11参考例]
図12は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第11参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図12は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部170′を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。また、この原料ガス送出部170′のうち、第10参考例と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明もまた省略する。
この参考例では、隔壁171′に対して内側から加熱手段172′が嵌合固定された構造を有する。加熱手段172′の内端面172aと、その周囲の隔壁171′との間には流通開口部170B′が形成されている。隔壁171′と加熱手段172′との間に上記流通開口部170B′に連通する環状(リング状)の内部空間170A′が設けられ、送出口170S′にも連通している。
この参考例において、内部空間170A′内には、環状に構成されたフィルタ部材173が配置されている。このフィルタ部材173の外縁部は、隔壁171′の内面に対して固定されている。また、フィルタ部材173の外縁部以外の部位が、隔壁171′から突出した柱状の伝熱部171p′及び加熱手段172′から突出した柱状の伝熱部172p′に熱接触している。具体的には、伝熱部171p′と172p′によってフィルタ部材173が挟持された状態となっている。
この参考例では、隔壁171′の内部(収容孔171a′)にも別の加熱手段172″が配置されている。したがって、フィルタ部材173は、加熱手段172′と加熱手段172″の双方から伝熱部171p′及び172p′をそれぞれ介して熱を受けるように構成されている。したがって、フィルタ部材173は、これらの伝熱部を介してより大きな熱量を受けることができる。
[第12参考例]
図13は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第12参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図13は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部180を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。
この参考例において、隔壁181には複数の加熱手段182が外側から挿入された状態で取り付けられている。これらの加熱手段182の先端には、隔壁181の内面から突出する柱状の伝熱部185がそれぞれ接合されている。
また、送出口180Sに連通するように構成された、隔壁181の内部に画成された内部空間180Aには、内側(原料気化室側)に開いた容器状のフィルタ部材183が配置されている。このフィルタ部材183は、その外縁部が固定ねじ188等により隔壁181の内面に固定されている。また、フィルタ部材183の外縁部以外の部分は、隔壁181に設けられた柱状の支持突起181cや上記の伝熱部185に熱接触している。
内部空間180Aの原料気化室に臨む位置(フィルタ部材183のさらに内側)には遮蔽板184が配置されている。この遮蔽板184は、フィルタ部材183に対してスペーサ186を介して熱接触した状態となっており、固定ねじ186aによって伝熱部185に対して固定されている。遮蔽板184と、その周囲にある隔壁181の部分との間には間隙が設けられ、この間隙が流通開口部180Bとなっている。
この参考例では、フィルタ部材183が軸線方向を深さ方向とする容器形状に構成されているため、フィルタ部材183には軸線方向に伸びる側面部分も存在することから、そのフィルタ面積を大きくすることができ、その結果、フィルタ部材183の寿命を延ばすことができる。また、熱伝導柱を構成する上記の伝熱部185、スペーサ186及び固定ねじ186aは、加熱手段182に直接熱接触しているため、効率的にフィルタ部材183や遮蔽板184を加熱することができる。
[第13参考例]
図14は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第13参考例の主要部を示す部分内面図(a)及び部分断面図(b)である。図14は、図1に示す原料気化器の原料ガス送出部130の代わりに用いることのできる原料ガス送出部190を示すものであり、その他の部分は第1参考例と同様であるので、同様の部分の図示及び説明は省略する。
この参考例において、隔壁191の内部(収容孔191a)には加熱手段192が配置されている。また、隔壁191には、内側(原料気化室側)に開いた内部空間190Aが構成され、これは送出口190Sに連通している。
内部空間190Aにはフィルタ部材193が配置され、その外縁部が固定ねじ198等により隔壁191に固定されている。また、フィルタ部材193の外縁部以外の部位は、隔壁191の内面から突出した柱状の複数の伝熱部197に熱接触している。また、フィルタ部材193の内側には、原料気化室に臨む遮蔽板194がスペーサ196を介して固定ねじ196aにより伝熱部197に固定されている。遮蔽板194の周囲には、隔壁191との間に間隙が設けられ、この間隙が流通開口部190Bとなっている。遮蔽板194とフィルタ部材193との間には、フィルタ部材193の全面に亘って空間部190Dが形成されている。
また、隔壁191には穴191bが設けられ、この穴191b内に温度センサ199が配置されている。温度センサ199の温度検出点は上記伝熱部197の近傍若しくはその内部に配置されている。
この参考例では、フィルタ部材193の内部に加熱手段193Hが配置されている。具体的には、加熱手段193Hはワイヤ状のヒータであり、これがフィルタ部材193の内部を蛇行状に通過している。また、フィルタ部材193の内部には温度センサ193TCもまた配置されている。そして、図示しない温度制御回路によって、温度センサ193TCの検出温度に基づいて、加熱手段193Hの発熱量が制御され、フィルタ部材193が直接独立して温度制御されるように構成されている。
この参考例では、フィルタ部材193の内部に加熱手段193Hが配置されているので、フィルタ部材193が直接加熱されるとともに、フィルタ部材193を独立して温度制御することができる。したがって、フィルタ部材193の温度を精密に制御できるとともに、その温度の均一性を高めることができるので、フィルタ部材193の目詰まりや堆積物の局部集中を抑制することができ、フィルタ寿命を延ばすことができる。
[第14参考例]
図15は気化原料の供給構造及び原料気化器の第14参考例の構成を示す概略縦断面図、図16は第14参考例の構成における図15に示すA−A線に沿った断面を示す概略横断面図である。この参考例の原料気化器は、上記第1参考例と同様の原料気化面210B及び原料気化空間210Aを構成する原料気化室210と、原料気化空間210Aに液体原料を噴霧する原料噴霧手段120と、この原料気化室210に対して着脱可能に取り付けられた第2気化部に相当する原料ガス送出部220とを備えている。ここで、上記原料噴霧手段120の構成(原料供給管121、噴霧用ガス供給管122及び噴霧ノズル123)、原料気化室210の隔壁211及び加熱手段212は、上記第1参考例と同様であるので、それらの説明は省略する。また、原料ガス送出部220において、隔壁221、加熱手段222、フィルタ部材223、遮蔽板224、伝熱部225、スペーサ226及び固定ねじ226aは第1参考例と同様の機能を有するものであり、以下に説明する点を除いて第1参考例と同様であるので、同様の部分の説明は省略する。また、原料ガス送出部220に設けられた内部空間220A、遮蔽板224の周囲に設けられた流通開口部220B、送出口220Sについても第1参考例と同様である。
本参考例において、原料気化室210は、図16に示すように噴霧ノズル123の軸線周りに湾曲した内面形状を有している。具体的には、原料気化室210は円筒状に構成されている。ここで、原料気化室210の形状は、噴霧ノズル123の軸線を中心とした円錐形、或いは、噴霧ノズル123の軸線を直径の一つとする球形であっても構わない。そして、上記のフィルタ部材223及び遮蔽板224は、上記のように噴霧ノズル123の軸線周りに湾曲した内面に沿った湾曲形状を備えている。ここで、フィルタ部材223の外縁部は固定ねじ228等によって隔壁221に固定されている。また、フィルタ部材223と遮蔽板224との間には空間部220Dが形成されている。
上記のように、本参考例では、遮蔽板224が原料気化室210の内面形状に沿った形状を有しているため、フィルタ面積を大きく確保することができるとともに、気化器をコンパクトに構成できる。また、原料気化室210内のミストや原料ガスの流れが原料ガス送出部220の存在によって影響を受けにくくなり、また、図示例では原料気化室210を噴霧ノズル123の軸線周り全体にほぼ均等な形状(回転体形状)となるように構成してある。これによって、原料気化室210内の温度分布や気化面210B及び遮蔽板224の内面の温度分布を安定させることができるため、特定部位への固形物の集中的な堆積を防止することが可能になる。また、フィルタ部材223を遮蔽板224に沿った面形状を有するものとすることで、フィルタ部材223と遮蔽板224との間隔を一定に構成することができ、フィルタ部材223の全面を有効に用いて、残留ミストや固形物を効率的に捕捉することが可能になる。
本参考例では、上記のように原料気化室210が噴霧ノズル123の軸線周りに湾曲した内面を有する形状となっているが、本発明は、原料気化室の形状については何等限定されない。したがって、原料気化室の形状は、立方体(6面体)などの多面体形状であっても構わない。この場合、上記遮蔽板及び/又はフィルタ部材は、上記と同様に、多面体形状の一部を構成するように原料気化室の内面に沿った形状とすることが好ましい。この場合、遮蔽板及び/又はフィルタ部材が上記多面体形状のうちの2面以上を構成するように形成されていてもよい。さらに、原料気化室は、曲面と平坦面とが組み合わされた内面形状を備えていてもよい。
本参考例では、第1参考例と同様に、図示しない圧力ゲージを取り付ける検出用配管219に連通する開口部が原料気化室210Aに臨むように形成されている。そして、この開口部には、フィルタ部材213と、このフィルタ部材213の原料気化室210A側に配置された遮蔽板214とが設けられている。フィルタ部材213は、隔壁211の内面から突出する伝熱部215に当接している。また、この伝熱部215は、スペーサ216を介して固定ねじ216aにより固定された遮蔽板214に対してこれらのスペーサ216及び固定ねじ216aを介して熱的に接触している。この遮蔽板213と隔壁211との間には開口部が設けられ、この開口部を通して原料気化室210Aに対してフィルタ部材213の配置された空間が連通し、また、この開口部は、フィルタ部材213を通して検出用配管219の内部に連通している。
上記の遮蔽板214は、原料気化室210Aから侵入する残留ミストや固形物がフィルタ部材213に到達しにくくなるようにしているので、フィルタ部材213の目詰まりが緩和され、フィルタ部材213の長寿命化を図ることができる。また、フィルタ部材213及び遮蔽板214は伝熱部215を介してその外縁部以外の部分において熱的に隔壁211と熱的に接触しているので、原料気化室210Aの内面とほぼ同様に加熱されることから、残留ミストが付着したとき、当該残留ミストを気化させることができる。
[第15参考例]
図17(a)は、上記とは異なる気化原料の供給構造及び原料気化器の第15参考例の構成を示す部分断面図である。ここで、原料ガス送出部230以外の構成は図1に示す参考例と同様であるものとする。この原料ガス送出部230は、隔壁231と、この隔壁231と原料気化空間110Aとの間に配置されるフィルタ部材232と、このフィルタ部材232の内部に配置されたヒータなどの加熱手段233とを有する。隔壁231には、原料ガス供給ラインに原料ガスを送出する原料ガス送出口231aが設けられている。ここで、フィルタ部材232を通過した後のガスの温度低下を防止するために、隔壁231を加熱するための加熱手段を別途設けてもよい。この加熱手段は、隔壁231の内部や外面上などに設けることができる。
フィルタ部材232は、熱伝導性の良好な金属(たとえばステンレス鋼など)又はAlN,SiC等のセラミックなどで構成された板状材で構成される。フィルタ部材232の内部には、原料ガスの流路方向(図示右方向)と交差する(図示例では直交する)方向に収容孔(或いは収容穴、以下同様)232aが形成されている。この収容孔232aには上記加熱手段233が収容されている。ここで、加熱手段233はフィルタ部材232の内部全体に亘って配置されていてもよい。この場合にはさらに熱効率を高めることができる。また、フィルタ部材232には、原料ガスの流路方向とほぼ平行に貫通した微小な細孔232bが多数形成されている。これらの細孔232bは、その貫通距離(長さ)が直径に較べて大きい形状となるように構成されている。細孔232bの長さ(図示例ではフィルタ部材232の厚さに一致する。)は、原料気化空間110Aにて発生した微小な残留ミストの捕捉率が充分に高くなるように設計される。具体的には、細孔232bの直径は0.01〜1.0mm程度、貫通距離は5〜15mm程度である。
なお、加熱手段233を収容する収容孔232aと、一部の細孔232bとが交差するように構成されていてもよく、或いは、収容孔232aと交差する位置には、細孔232bが形成されていないように構成されていてもよい。
[第16参考例]
図17(b)には、上記第15参考例の一部を変更した第16参考例の構成を示す。この第16参考例では、隔壁231と、フィルタ部材232との間に、フィルタ部材234が配置されている。このフィルタ部材234は、隔壁231に対して固定部材235によって接続固定されている。フィルタ部材232とフィルタ部材234との間には、これらのフィルタ面全体に亘って空間部230Dが形成されている。これら以外の点、すなわち、フィルタ部材232及び加熱手段233については、図17(a)に示す第15参考例と同様であるので、説明は省略する。
この構成例では、フィルタ部材232の下流側にフィルタ部材234が配置されていることにより、原料ガス供給ラインに導入されるミストやパーティクルの量をさらに低減することができるという効果が得られる。なお、このフィルタ部材234は、フィルタ部材234よりも細かい残留ミストを捕捉できるように構成されていることが望ましい。たとえば、第1参考例に示すフィルタ部材133と同様のものを用いることができる。図示例では、フィルタ部材234は、隔壁231を介して、或いは、フィルタ部材232からの輻射熱によって間接的に加熱される。また、このフィルタ部材234には、図1に示す参考例のフィルタ部材133と同様に伝熱部235(スペーサ)を介して加熱手段の熱が伝達される。なお、フィルタ部材234を伝熱部235及び隔壁231に固定する固定手段235aが用いられている。ここで、第15参考例のフィルタ部材232と同様にその内部に加熱手段を配置してもよい。また、隔壁231内に加熱手段を設けてもよい。いずれの場合においても、この加熱されたフィルタ部材234は、原料気化室の気化面(内面)と同一温度に制御されることが好ましい。
この参考例では、フィルタ部材232によって比較的大きな残留ミストを捕捉して気化させることができ、フィルタ部材234によって比較的小さな残留ミストを捕捉するように構成されている。したがって、ミストの除去効率を高めることができるとともに、各フィルタ部材232,234の目詰まりを低減することができる。
[第17実施形態]
図18(a)は、本発明の第17実施形態の構成を示す部分断面図である。この第17実施形態においても、原料ガス送出部330以外の構造は上記第1参考例と同様であるので、それらの構造の説明は省略する。
この実施形態では、原料ガス送出部330には、外壁331と、この外壁331の内側において原料気化空間110Aに臨む内壁332とを有する。外壁331には、原料ガス送出口331aが設けられている。内壁332には、原料気化空間110Aと、原料ガス送出部330の内部空間330Aとを連通させる連通孔332aが設けられている。また、内壁332の内部には、ヒータなどの加熱手段333が配置されている。
内部空間330Aは、外壁331と内壁332によって画成されている。この内部空間330Aには、フィルタ部材334が配置されている。フィルタ部材334は、その外縁部以外の部位において伝熱部335を介して熱接触した状態にある。この伝熱部335は、加熱部材333により発生した熱を内壁332から受けてフィルタ部材334の外縁部以外の部位に伝えるように構成されている。また、フィルタ部材334は、伝熱部335を介して内壁332にそれぞれ接続固定されている。より具体的には、固定手段335aによってフィルタ部材334は伝熱部335及び内壁332に固定されている。すなわち、伝熱部335は、フィルタ部材334を支持する支持部材としても機能している。
この実施形態では、原料気化空間110Aで生成された原料ガスが連通孔332aを通して内部空間330Aに導入される。内部空間330Aに導入された原料ガスは、フィルタ部材334を通過して、原料ガス送出口331aから送り出される。ここで、フィルタ部材334は、伝熱部335を介して加熱手段333により加熱されているため、原料ガス中に存在する微細な残留ミストが付着しても、確実に気化させることができる。図示例では、フィルタ部材334には、複数の伝熱部335が外縁部以外の分散配置された部位に熱接触しているため、フィルタ部材334全体がより均一に加熱されることにより、温度のばらつきが少なくなり、局部的な目詰まりなどを防止できる。この場合においても、この加熱されたフィルタ部材334は、原料気化室の気化面(内面)と同一温度に制御されることが好ましい。
また、この実施形態では、原料ガス送出部330の内壁332が原料気化室110の原料気化空間110Aに臨むように配置され、しかも、この内壁332の内部に加熱手段333が配置されているので、この加熱手段333は、原料気化空間110A内の原料の気化作用にも寄与するものとなっている。
なお、内壁332に設けられた上記連通孔332aは、図示しない原料噴霧手段(噴霧ノズル)側に偏った位置に形成されている。これによって、原料気化空間110A内に噴霧されたミストが直接連通孔332aを通ってフィルタ部材334に捕捉されるといったことが低減される。
[第18参考例]
図18(b)は、第18参考例の構成を示す部分断面図である。この参考例の原料ガス送出部430は、隔壁431の内部に加熱手段432が収容配置されている。そして、この隔壁431の内側に、フィルタ部材433が配置されている。このフィルタ部材433は、その外縁部以外の部位が隔壁431に突出して形成した伝熱部434(スペーサ)に熱接触した状態にある。また、伝熱部434は、フィルタ部材433と隔壁431とにそれぞれ接続固定されている。より具体的には、固定手段434aによりフィルタ部材433は伝熱部434及び隔壁431に固定されている。すなわち、この伝熱部434は、フィルタ部材433を支持する支持部材としても機能している。この場合においても、この加熱されたフィルタ部材434は、原料気化室の気化面(内面)と同一温度に制御されることが好ましい。
[第19参考例]
図19は、気化原料の供給構造及び原料気化器の第19参考例の構造を示す概略断面図である。この参考例の原料気化器500は、原料気化部510と、原料噴霧手段520と、原料ガス送出部530とを有する。原料気化部510は、隔壁511と、この隔壁510の内面を形成する気化面511Aとその内部に配置されたヒータなどの加熱手段512とを備えている。また、原料噴霧手段520には、原料供給管521と、噴霧用ガス供給管522と、噴霧ノズル523とが設けられている。
噴霧ノズル523は、原料を噴霧用ガスの圧力で噴霧するものである。この噴霧ノズル523では、その内部に原料と噴霧用ガスとがそれぞれ導入され、その原料が複数(図示例では3つ)の噴霧口523aから噴霧用ガスにより噴霧されるように構成されている。より具体的には、導入された原料は原料拡散室523sを介して複数の原料供給路523vに分流される。これらの原料供給路523vは上記噴霧口523aに連通している。また、噴霧用ガスは噴霧用ガス拡散室523tを介して原料供給路523vと同軸に形成された経路に分流され、各原料供給路523vにより供給された原料を噴霧口523aにて噴霧するようになっている。このように複数の噴霧口523aによって原料を噴霧することによって、原料供給量を増やしてミスト量を増大させることができ、また、噴霧量を増やしても均一な径のミストを噴霧できるようになる。したがって、原料の気化効率を高めることができるとともに、残留ミストやパーティクルを低減できる。
なお、図示例では、この噴霧ノズル523に原料を供給する原料供給管521は一本だけ描かれているが、必要に応じて複数の原料供給管521を設け、これらの原料供給管521により供給される複数種類の原料を噴霧ノズル523内で噴霧直前にて混合し、この混合物を噴霧用ガスとともに複数の噴霧口523aにて分担して噴霧(マトリクス噴霧)するように構成してもよい。
上記の噴霧ノズル523の噴霧方向に配置される上記隔壁511の内面である気化面511Aは、略球面(半球)状に構成されている。これによって、噴霧口523aから気化面511Aまでの距離がミストの噴霧方向如何に拘らずほぼ一定になる、当該気化面511Aに吹き付けられるミスト量が球面上においてほぼ均一化されるなどの理由により、噴霧ノズル523から噴霧されたミストを効率的に気化させることができる。
本参考例の原料ガス送出部530においては、隔壁531と、この隔壁531の内側に配置されたフィルタ部材532とが設けられている。隔壁531には、原料ガス送出口531aが設けられている。フィルタ部材532には、原料ガスの流路方向と交差する方向に形成された収容孔(又は収容穴、以下同様)532aが設けられ、この収容孔532aにはヒータなどで構成される加熱手段533が外周側に配置されている。また、フィルタ部材532には、原料ガスの流路方向に貫通した多数の細孔532bが設けられている。これらの細孔532bは、原料気化空間510Aと、原料ガス送出部530の内部空間530Aとを連通している。
本参考例において、フィルタ部材532は、原料気化空間510Aに対して噴霧ノズル523側に設けられている。より具体的には、気化面511Aと対向して噴霧ノズル523を取り囲むように、噴霧ノズル523の周囲にフィルタ部材532が配置され、噴霧ノズル523の噴霧方向とは反対側(背後)に原料ガス送出部530の内部空間530Aが画成されている。また、原料ガス送出口531aはさらにその背後に設けられている。このように構成されていることによって、噴霧ノズル523から噴霧されたミストが直接にフィルタ部材523に付着することが防止される。この場合、第1参考例のように遮蔽板134を設ける必要もない。
フィルタ部材532は、その内部に配置された加熱手段533によってほぼ一様に加熱されている。したがって、気化面511Aによって原料気化空間510A内に生成された原料ガスとともに流れる微細な残留ミストは、フィルタ部材532に付着し、ここで再気化される。原料ガスは細孔532bを通過して内部空間530Aに導かれ、最終的に原料ガス送出口531aを通過して送出されていく。フィルタ部材532に設けられる細孔532bは、第2参考例と同様にその寸法が設計される。
本参考例において、内部空間530A(フィルタ部材532と原料ガス送出口531aとの間)に、図示破線で示すフィルタ部材534を設けることが好ましい。このフィルタ部材534は、第1参考例或いは第15参考例のフィルタ部材と同様のものを用いることができる。また、第1参考例と同様に、フィルタ部材534の外縁部以外の部位を熱接触して隔壁531より突出して形成される伝熱部に固定されるのが好ましい。この場合、この伝熱部は、フィルタ部材532からフィルタ部材534へと熱を伝えるように構成される。なお、加熱手段を隔壁531に内蔵し、隔壁531に対して伝熱部を取り付け、この伝熱部をフィルタ部材534に熱接触させるようにしてもよい。
図20(a)は、原料気化器の原料噴霧手段の他の構成例について示す概略正面図及び概略側面図である。この原料噴霧手段620には、複数(図示例では3つ)の原料供給管621と、噴霧用ガス供給管622と、噴霧ノズル623とが設けられている。これらの複数の原料供給管621から供給される各原料は、それぞれ個々に噴霧ノズル623内で事前に混合され、複数の噴霧口623aのそれぞれからそれぞれに対応する噴霧用ガスとともに噴霧されるように構成されている。たとえば、3種の原料ガス(Pb、Zr及びTiの誘導体(有機金属化合物))を供給してPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)する場合には、これら3種の原料を上記原料噴霧手段620に導入することによって、それぞれの原料が個々に噴霧ノズル623内で混合され、それぞれの専用の噴霧口623aからそれぞれの噴霧口623aに対応する噴霧用ガスとともに噴霧される。
この原料噴霧手段620においては、上記第19参考例の原料噴霧手段520と同様の効果を有するとともに、原料毎に専用の噴霧口623aが設けられていることにより、原料別に噴霧態様(原料の噴霧量、混合する噴霧用ガスの量、噴霧圧力など)を調整することができるといった利点を有する。
図20(b)には、別の原料噴霧手段720の構成を示す。この原料噴霧手段720には、複数の原料供給管721と、噴霧用ガス供給管722と、噴霧ノズル723とが設けられている。噴霧ノズル723には、複数の原料供給管721に対応して連通する原料ガス導入ブロック723B〜Dが設けられる。複数の原料供給管721からそれぞれ供給される原料は、噴霧ノズル723の内部において原料ガス導入ブロック723D、723C、723Bにおいて順次に噴霧口723aに連通する管路に導入されて混合され、噴霧用ガス拡散室723Aを介して同軸に導入された噴霧用ガスとともに噴霧口723aから噴霧されるように構成されている。
この原料噴霧手段720においては、複数種類の原料を均一に混合することができることから、気化空間内において混合原料が気化されて成膜室内に供給されることにより、膜の組成比の再現性が向上するといった効果を有する。
図21は、上記原料気化器や気化原料の供給構造を含む反応処理装置の全体構成を模式的に示す概略構成図である。この反応処理装置は、たとえば、原料ガスを用いて薄膜を形成するためのCVD装置である。この反応処理装置は、原料供給部200と、原料供給部200により供給された原料を気化する原料気化器100(500)と、原料気化器により生成された原料ガスを用いて処理を行う反応処理部300とを有する。
原料供給部200には、図22に示すように原料A〜Cを収容する原料容器202A〜202Cが設けられ、この原料容器202A〜202Cから送液ライン204A〜204Cを通して原料A〜Cが原料気化器100(500)へと制御された流量で供給される。原料容器202A〜202Cには、例えば強誘電体薄膜を成膜するのであればPb、Zr、Tiなどが、高誘電体薄膜を成膜するのであればBa,Sr,Tiなどが、さらに超伝導薄膜を成膜するのであればBi,Sr,Cuなどがそれぞれ用いられる。ここで、原料及び原料容器の数は図示例には限定されず必要に応じて任意数設置される。また、溶剤容器202Dが設けられ、この容器内に用意された溶剤が送液ライン204Dを通して供給される。さらに、各原料容器202A〜202C及び溶剤容器202Dの各送液ライン204A〜204Dに接続されたドレインライン203が設けられ、このドレインライン203に接続されたドレイン容器202Eが設けられている。
送液ライン204A〜204Dは、一端を各原料容器202A〜202C及び溶剤容器202Dの液中に浸漬する位置に配設し、それぞれ下流側に伸びる途中に流体流量調節手段(例えばマスフローメータなどの流量制御計)205A〜205Dを介在させ、そこからさらに下流側に伸びて、気化器100(500)に各原料を送液するように構成されている。これらの流体流量調節手段205A〜205Dは、それぞれ図示しないコントローラから制御信号を受けて流量を調整するようになっている。
この原料供給部200では、不活性ガスなどを導入するガス導入ライン206から分岐したガス供給ライン206A〜206Dを有し、これらのガス供給ライン206A〜206Dによるガス供給により生じた圧力によって原料A〜C及び溶剤をそれぞれの送液ライン204A〜204Dに送り出すように構成されている。また、溶剤を供給する送液ライン204Dと、原料を供給する各送液ライン202A〜202C及びガス供給ライン206A〜206Cとの間には溶剤供給ライン207が接続されている。さらに、図示しない排気装置に接続されたバキュームライン208がドレイン容器202Eに接続されている。
なお、ガス供給ライン206A〜206Dには逆止弁CHが介挿され、また、全てのラインには図示のように適所に開閉弁DV(ダイヤフラムバルブ)が介挿されている。さらに、原料供給ラインの液体流量調整手段205A〜205Dの上流位置には図示しないセパレータ(脱気器)が介挿されることが好ましい。
再び図21に戻って説明を続ける。原料気化器100(500)においては、原料気化室110(510)において気化された原料が、原料ガス送出部130(150,150′,150″,160,160′,150X,150Y,150Z,170,170′,180,190,230,330,430,530)を介して原料供給ライン140に送出される。
原料供給ライン140には、原料供給経路141と、排気系(たとえば真空ポンプ)に接続された排気経路143,144とが設けられている。また、原料供給経路141には、上記フィルタ部材(133,153,153′,163,153X,153Z,173,183,193,232,334,433,532)を備えた原料ガス再気化フィルタ142が設けられている。これらの再気化フィルタ142は、上記原料ガス送出部(130,150,150′,150″,160,160′,150X,150Y,150Z,170,170′,180,190,230,330,430,530)と同様の構造を備えている。すなわち、上記原料ガス供給部がいずれも原料気化器の一部として設けられているのに対して、この再気化フィルタ142は、上記の原料ガス送出部と同じ構成を有するにも拘らず、原料気化器とは別体に設けられている点で異なる。ここで、気化原料の供給構造としては、上記原料ガス送出部と、再気化フィルタ142とは、いずれか一方のみが設けられていても構わない。
処理部300には、反応室301と、原料気化器100(500)から供給された原料ガス(適宜のキャリアガスとともに導入される。)と、別途のガス導入管305から供給された反応ガス(たとえば酸素ガスなどの酸化性ガス)とを反応室301内に導入するガス導入部(シャワーヘッド)303と、半導体ウエハなどの被処理物を載置するサセプタ304とが設けられている。また、この反応室301には、排気管306が接続されて、反応室301内を排気するようになっている。
上記の反応処理装置においては、本発明に係る原料ガス送出部(130,150,150′,150″,160,160′,150X,150Y,150Z,170,170′,180,190,230,330,430,530)又は再気化フィルタ142によって反応室301に導入されるミストやパーティクルの量を大幅に低減することができるため、反応室301内にて行われる処理(たとえば成膜処理)の品位を高めることができる。また、上記原料ガス送出部や再気化フィルタにおいては、その内部に配置されるフィルタ部材がより均一に加熱されることによって、気化効率が高められ、目詰まりが防止されるため、原料ガス供給ラインのコンダクタンスを維持しつつ、メンテナンス頻度を低減できる。
図23は、反応処理装置の別の構成例を示すものである。この構成例において、先に説明した部分と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。この構成例では、原料供給部200から原料気化器100(500)に原料が供給され、この原料気化器100(500)から原料供給経路141に原料ガスが供給され、処理部300に供給される点では上記と同様である。ただし、この原料供給経路141にはArガスなどの不活性ガスを供給するパージライン145が導入されている点で異なる。また、この構成例では、再気化フィルタ142及び排気経路143は設けられていない。
この構成例では、気化器100(500)から反応室301までの距離(原料供給経路141の長さ)を可能な限り短くすることで、原料供給経路内の在留気化ガス量を小さくしている。これにより、原料供給系におけるパーティクルの発生を抑止することができることから、反応室301で成膜される膜の品位を向上させることができる。
図24には、原料気化器の原料ガス送出部内に単にフィルタ部材を従来方法で設置した場合と、上記第2参考例の原料気化器を用いた場合とについて、原料気化室の内圧変化(内圧の原料供給時間依存性)を示すグラフを示す。従来の原料気化器では、図示破線で示すように、急激に内圧が増加し、原料供給時間が100時間前後で上限圧力を越えている。これは、フィルタ部材に固形物が大量に付着し、コンダクタンスを低下させたためと思われる。
これに対して、第2参考例では、図示実線で示すように、原料供給時間が600時間を越えても上限圧力にははるかに届かず、従来構造の場合に較べてコンダクタンスの低下が大幅に抑制されていることがわかる。なお、第2参考例では、上記のようにコンダクタンスの低下がほとんど発生していないが、フィルタ部材が機能していないわけではなく、却って従来構造に較べて反応室に流れるパーティクルの量が半分以下に低減されていることが実験的に確かめられた。特に、従来構造の場合には下流側に接続されたインラインフィルタによって反応室に流れるパーティクル量が大きく減少するが、第2参考例の場合には、下流側に接続されたインラインフィルタを取り外しても、反応室に到達するパーティクルの量がほとんど変化しないことが判明した。このことは、インラインフィルタの有無による変化がほとんど現れない程度に第2参考例の原料気化器において発生するパーティクルの量が少ないことを示していると思われる。このため、図24に示す内圧変化の測定では、原料供給時間が約170時間となった時点(図示点線)で、下流側に接続されたインラインフィルタを取り外して測定を行った。その結果、グラフの内圧値は170時間以降においてはやや低下している。このように、第2参考例では、フィルタ部材の詰まりによるコンダクタンスの低下が大幅に抑制されるとともに、下流側へ流れるパーティクルを格段に低減することができることが実証された。
尚、本発明の気化原料の供給構造、原料気化器及び反応処理装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各参考例及び実施形態のいずれかに示した隔壁、内部空間、加熱手段、フィルタ部材、遮蔽板、伝熱部(熱伝導柱)、流通開口部のそれぞれの特徴点は、それぞれ独立して他の参考例及び実施形態にも適用可能であり、それぞれの参考例及び実施形態に示す他の構成との組合せに限定されるものではない。
100…原料気化器、110…原料気化室、110A…原料気化空間、111…隔壁、112…加熱手段、120…原料噴霧手段、123…噴霧ノズル、130…原料ガス送出部、130A…内部空間、131…隔壁、132…加熱手段、133…フィルタ部材、134…遮蔽板、135,137…伝熱部、136…スペーサ