JP4763956B2 - バルク液から微生物を表面培養するための装置および方法 - Google Patents

バルク液から微生物を表面培養するための装置および方法 Download PDF

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Description

【0001】
[発明の背景]
本出願は、ここに引用することで本明細書の一部をなすものとする1997年12月12日に出願したJeffreyらの米国特許出願第08/989,560号、およびMareschらの米国特許出願第09/113,929号(現在は、米国特許第5,912,115号)に関連する。
【0002】
臨床検査材料中の微生物汚染の存在は、従来は栄養物の存在下で検査材料をインキュベートし、一定期間後における検査材料中または検査材料上方の空気中の変化を通して微生物活性を検出することによって決定されている。例えば、Ahnellらに付与された米国特許第4,182,656号では、サンプルは炭素13標識化発酵性基質を含有する培地を含む容器内に置かれる。容器を密封して生物学的活性を誘導する条件に検査材料が曝された後、検査材料上方のガス状空気中の炭素13対炭素12の比率が測定され、初期比と比較される。米国特許第4,152,213号では、容器内のガス圧を監視することを通して検査材料上方の空気中の酸素含量の減少を検出することによって検査材料中の酸素消費細菌の存在が測定される方法が開示されている。米国特許第4,073,691号は、一定期間後に検査材料上方のガス状空気の特徴における変化を測定することによって培地を含有する密封容器内で細菌を含む生物学的活性物質の存在を決定するための方法を提供している。
【0003】
Calandraらの米国特許第5,094,955号によって教示されている非侵襲性検出方法には、透明密封容器中の無菌液体増殖培地を用いて検査材料を培養することによって、例えば血液またはその他の体液のような臨床検査材料中および非臨床検査材料中の微生物の存在を検出するための装置が開示されている。微生物の存在は、容器の内面または容器を密封するために使用される密封手段に貼付されたセンサーを用いて検査材料のpHにおける変化または検査材料内の二酸化炭素の産生における変化を検出または測定することによって決定される。Calandraらの特許では、非放射分析的および非侵襲性手段を通して例えば高濃度の赤血球のような妨害物質の存在下で微生物を検出することができる。
【0004】
Calandraらの検出システムの短所の1つは、微生物の存在を検出するために必要な時間がサンプル内の微生物の数に関連している点にある。さらに、微生物のための増殖培地が液体であるため、培養中は容器を常に攪拌していなければならない。これには培養装置を製造する際の追加の費用、並びに機械的故障が発生する可能性の増加が関係してくる。さらに、そのようなシステムは微生物の存在を決定することはできるが、計数を行うことはできない。さらにその上、しばしば微生物の検出後には、微生物を識別するおよび/または様々な抗生物質に対するそれらの感受性を決定することが望ましい。Calandraタイプのシステムでは、感受性または識別検査を実施する前に混合種の単離を保証するために液体培地から微生物をプレートアウトすることが必要になるであろう。これには追加の時間(患者の病気が極めて重篤な場合は必ずしも利用できない時間)が関連してくる。さらに、Calandraタイプのシステムは、抗生物質感受性および/または微生物識別のためにプレートを読み取る/画像描出する追加の機能を果たすことはできないであろう。
【0005】
さらにまた、サンプルがゲル(寒天)プレート上に置かれる微生物を検出するためのよく知られた方法もある。そのような方法では、サンプルはゲルプレートの至る所に塗布または「縞状塗布」され、サンプルがゲル上に塗布された場所で増殖が発生するかどうかを判定するためにプレートを画像描出することによって微生物の増殖が決定される。このタイプの検出は、表面コロニー(抗生物質感受性および/または微生物識別について即時に検査できる)については望ましいが、例えば血液培養のような多数の手技によって必要とされる大量のサンプル量を取り扱うことができない点では望ましくない。
【0006】
同時の微生物培養およびバルク液からの単離を容易にする一部の従来型システムは、脱水顆粒状ゲル化培地、または微生物が導入された後にゲルを形成する液体ゲル化成分の使用を含んでいる。どちらの場合も、微生物は表面上だけではなく、培地全体に捕捉されている。これは、その後の検査のための微生物の採取を困難にする。
【0007】
液体サンプルからの微生物の表面培養は、例えば寒天のような標準半固形培地上で実施できる。しかし、そのような培地は実質的に膨潤させるためには硬過ぎ、さらに典型的には開始時ゲル量の5%未満の量の液体しか吸収することができない。濾過法は大量の液体から微生物を捕捉することができるが、実際所要時間の増加、高額の材料費、汚染のリスク、およびサンプルを含有する微粒子に関する困難さを含む数多くの短所を有している。
【0008】
[発明の概要]
本発明では、おそらく微生物を含有している「バルク」液サンプルがゲルマトリックスの表面へ注がれる、またはさもなければ塗布される。サンプル中の液体はゲルによって吸収されるが、それでも微生物は表面に保持される。培養後、相互に分離された微生物コロニーは、採取およびその後の検査のために培地の表面上で容易に入手することができる。これは、以前にはツーステップ・プロセスとして実施されていたバルク液からの微生物の培養および単離をシングルステップで遂行でき、臨床的に重要な結果を達成するために必要な時間を1日以上削減できるという長所を提供する。もう1つの長所は、局所的な微生物増殖とともに、微生物増殖によって惹起される培養環境における代謝変化もまた局所化され、これがこれらの変化の検出を、および従って微生物自体の検出をより容易かつ迅速にさせるという点にある。
【0009】
本発明のゲルマトリックスは、好ましくは本質的に、および/または製造方法によって一連のユニークな特性を提供するポリマー材料から構成されている。ゲルマトリックスは、サンプルから過剰な液体を引き出すために十分に吸収性であるが、表面で微生物を濾過するため、または罠にかけるために十分に小さい孔径を備えている。サンプル中の液体は、典型的には数分間から数時間の範囲内の時間尺度で、増殖中の微生物が培地の表面全体に広がるよりむしろ別々のコロニーを形成するのに十分な速度でゲルに吸収される。
【0010】
出発材料として有用である本発明のために適切な(好ましい実施形態における)ポリマーの範囲は実際的には無限であるが、本発明のために有用な物理的特性は明確に定義されている。ポリマーは、1)液体のバルク流れが試験条件下で静止されるゲルもしくは高粘性液を形成しなければならない、2)凝集力を失わずに水性溶液もしくは懸濁液から液体を吸収しなければならない、3)表面上または近くで培養されて高度に不動化される微生物を保持しなければならない、および4)当該微生物の増殖を許容しなければならない。様々なポリマー材料から製造される本発明のゲルマトリックスは、これらの特性すべてを有することが証明されており、寒天プレートを用いて可能であるよりも単位面積当たり数倍以上多いサンプル容量から微生物を単離および増殖させるであろう。
【0011】
本発明の装置は、容器と、その容器内にポリマー鎖が相互に連結した網から作られた不動化層とを含んでなり、このポリマー鎖が相互に連結した網の間の間隙は培養される微生物の平均のサイズより平均して小さいサイズであるので、培養中のサンプル内の微生物のほとんど全部(または全部)が前記不動化層の表面上で不動化される。微生物コロニーを不動化層の表面上に維持しながら、不動化層の表面積1cm平方当たり少なくとも0.04mLの容量を添加して不動化層に吸収させることができる。バルク液サンプルは、全血(または一部の分画)、その他の体液、工業生産による液、食品サンプルその他であってよい。
【0012】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
図1は、少なくとも1つの面(例、底面)が透明または半透明である平らで底の浅い容器の形状を有することができるセンサープレート1を示す図である。容器は開いていてよい(または単純に基質であってもよい)が、好ましくは密封容器もしくは密封可能な容器であり、さらに好ましくはセンサープレート層の上方にヘッドスペースの空間を備えている。容器には、ストッパー3、スクリューキャップ、セプタム(隔壁)、もしくはそれらの組み合わせ(または他のシーリングデバイス)を用いて密封できるポート2を備えることができる。サンプルが容器内に収集されると、センサープレートは微生物の増殖要件に依存してガス透過性またはガス不透過性容器のどちらかとして構成することができる。この構成は、様々なプレート構成材料、ラミネート(ガス不透過性および/または疎水性ガス透過性膜)、および/または構成可能なベント(例、容器壁の開口部におけるガス透過性膜)を使用することによって達成できる。
【0013】
センサープレートデバイスの容器内では、微生物のコロニーが局所的に増殖できるようにサンプルを不動化/吸収するのに役立つ1つ以上の層があり、これが微生物のコロニーを検出する能力を増加させる。ある実施形態では、装置内の少なくとも1つの層は微生物の可視化に不都合な影響を及ぼすマトリックスを有する。図2から明らかなように、不動化層10(試験サンプルを完全に不動化する、または少なくとも局在化させるマトリックス層)およびセンサー層12が用意されている。後により十分に説明するこれらの2つの層は、さらに単一層に一緒に組み合わせることができるが、2つの層を別々に用意するのが好ましい(いずれにせよセンサー層が用意されることを想定して)。さらにまた図2には、好ましくは微生物の増殖を原因とするセンサー層における変化を視認/画像描出するために透明であるプレート底部14が示されている。
【0014】
光学センサー層12は、紫外線、可視光線および/または赤外線スペクトルにおける緊密に局在化された劇的な変化を提供することによって微生物増殖の場所を指示する目的のために用意できる。この局在化変化は、微生物増殖に近いセンサー表面の反対側であるプレート底面で検出可能である。センサー層は、好ましくは不透明であるマトリックス(支持体)上および/または中に包埋されている検出可能な特性(例、インジケーター)において変化を受ける物質を含有している。「不透明」とは、センサー層がセンサー層の反対側(例、半不透明、実質的に不透明、または完全に不透明)からの不動化層に不動化された試験サンプルおよび/または実際の微生物コロニーの視認または検出(いずれかの重要な電磁領域において)を十分に遮断することを意味する。試験サンプルもまた実質的に透明である場合(そのような場合には微生物コロニーの存在下でセンサー層は透明から不透明への局在化された変化を受ける)に透明なまたは比較的に透明なセンサー層を有することは可能であるが、センサー層は透明ではないことが好ましい。センサー層が不透明な場合には検出および計数を妨害するであろう試験サンプル中の微生物を検出する際に改良された結果が入手される。試験サンプル自体が不動化層において直接に微生物の存在または増殖を可視化/検出すること(例、裸眼または器械を用いて)を妨害する場合は、不動化層における微生物の存在/増殖に対応するセンサー層における変化を検出する代わりに、少なくとも1つの不動化層またはセンサー層(好ましくはセンサー層)が実際の試験サンプルおよび/または実際の微生物の検出/可視化を遮断することができるのが好ましい。不動化層はさらにまた不透明であってよく、さらに本発明を実行する1つの実施形態では、センサー層、不動化層、およびサンプルすべてが不透明である。
【0015】
センサーは、それの上または中に不動化されたインジケーター媒質とともに固体合成物もしくは膜を備える。センサー層は、外部からセンサー層を見ることができるように、好ましくは容器の内面に対して同一平面に、もしくは容器を密封するために使用されるシーリング手段内に配置されるか、または密封手段に取り付けられている。センサー層は、好ましくは、細胞、タンパク質、その他の固体または他の不透明もしくは着色コンポーネントがセンサー層と容器表面との間に入ってしまうことを防止するために容器に貼付される。ある実施形態では、センサー層は膜または他の固体層によって検査材料およびそれの増殖培地から分離されている。
【0016】
センサーは次の点において有用である。1)微生物代謝(例、代謝を原因とするガス構成成分における増加または減少)を原因とするセンサー層内の変化が検査材料の上方の空気中よりも固体もしくは半固体の不動化層から検出される、2)センサーがプレートの内面またはクロージャーまたはシーリング手段へ貼付されている、またはクロージャーもしくはシーリング手段の外側を通して取り付けられているので、プレートの完全性を侵害する必要なくプレートの透明な壁もしくはシーリング手段の外側から測定を行うことができる、3)外部測定を視覚的検査または反射率、蛍光その他によって、もしくは画像収集によって測定する装置を用いて行うことができる、4)検査材料中の不透明/着色もしくは蛍光成分が変化を検出する能力またはそれらの変化の測定を妨害しない、および5)変化を容易に観察もしくは検出できるように、センサー内の小容積内(例、ポリマーエマルジョンないもしくは膜上で)に高濃度のインジケーター分子を保持することができる。
【0017】
複雑な微生物媒質を作り上げる栄養成分は、微生物によって使用される代謝経路に影響を及ぼす。有機酸類、塩基類および様々なガスが利用可能な栄養素に依存する比率で産生する。これらの生成物はさらにまた微生物の種毎に相違する。不動化層内のこれらの生成物の存在はそのpHを変化させる可能性がある。本発明で使用されるセンサー層は、pH変化に反応して測定可能な変化を生じるpH感受性インジケーターを含有することができよう。または、例えばCO2のようなインジケーターのpHに影響を及ぼすガスの存在を測定することができよう。微生物増殖は、さらにまたO2および/または蛍光における変化の測定によって検出することもできる。センサー層は、微生物の代謝を原因とするO2濃度の減少に反応するように設計することができる。さらに、色もしくはその他のパラメーターにおける変化よりむしろ蛍光における変化を受けるインジケーターを選択することができよう。二酸化炭素はほとんどの微生物が産生する一般的代謝物であるので、このため微生物増殖を検出するための好ましい代謝物である。どのような機構を利用しても、ある好ましい実施形態では、センサー層はほとんどの微生物の存在/増殖に反応して検出可能な変化を受けるであろう。
【0018】
インジケーターは、支持体へ共有的または非共有的のどちらかで取り付けることができる。あるいはまた、インジケーターは例えば硬化する前にポリマーマトリックス内で乳化されるようにポリマーマトリックス内に封入することができる。
【0019】
pH、H2、H2S、NH3、O2もしくはCO2センサー中の活性分子種として様々な相違する蛍光および可視pHインジケーターを使用することができる。一般に、インジケーターの選択に関する制限は、それらが赤外線、蛍光、反射率および/またはイメージング技術によって検出可能である容認可能なダイナミックレンジおよび波長を有するという要件だけである。
【0020】
本発明に従った培地中のpH変化を検出するためのセンサーは、好ましくは約5.0〜約8.0のpH範囲に渡って蛍光強度または目に見える色における変化を示す。
【0021】
CO2センサーのためのインジケーターは、CO2濃度における変化を検出するために、好ましくはpH約13〜約5、および最も好ましくはpH約13〜約9の範囲内で赤外線強度、蛍光強度または目に見える色における変化を示さなければならない。
【0022】
支持体に共有的もしくは非共有的に結合してそれらのpH指示特性を維持することができるのは、一定のpHインジケーターだけである。キサンチン、フェノールフタレインおよびフェノールスルホフタレイン基に属するインジケーターが有用である。これらの例には、フルオレセイン、クマリン、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、ブロモチモールブルー、チモールブルー、キシレノールブルー、オルトクレゾールフタレイン、およびα−ナフトールベンゼインが含まれる。
【0023】
支持体は、それにpHインジケーターが有機反応を使用して共有的に付着することのできる例えばセルロースもしくは一定のシリコーン類のような基質であってよい。pHインジケーターの非共有的付着は、例えば正もしくは負のゼータ電位を有するナイロン膜のようなイオン性支持材であってよい。その他の使用できるイオン性支持材は、例えばジエチルアミノエチル(DEAE)樹脂またはDEAEセルロースのような正もしくは負荷電イオン樹脂である。インジケーター膜を微生物増殖培地と直接に接触させなければならない場合は、タンパク質を用いた支持材の前処理が必要になることがある。
【0024】
pHインジケーターセンサーは、微生物増殖培地のpH環境を原因とするpH変化を直接に検出する。しかし、これらのセンサーは微生物代謝を原因とするガス(例、二酸化炭素、アンモニア、水素、硫化水素、または酸素)に選択的に反応するように作製することができる。センサー層の上には、例えばシリコーン、ラテックス、テフロン(登録商標)またはイオンの通過を防止しながらガスの拡散を選択的に許容する能力を特徴とする様々なプラスチックのような選択的半透過性組成物もしくは膜を用意することができよう。ポリマーマトリックス内に封入されたインジケーターを備えるセンサーについては、そのマトリックスを形成するポリマーはガスの通過は許容するがイオンの通過を許容しない半透過性障壁として機能することができる。
【0025】
ある実施形態では、CO2センサーは複数のコンポーネントから構成される。第1コンポーネントは、6〜10のpH範囲で反応性である視覚的もしくは蛍光pHインジケーターである。この基準を満たすインジケーターの例は、ブロモチモールブルー、チモールブルー、キシレノールブルー、フェノールフタレイン、オルトクレゾールフタレイン、クマリンおよびフルオレセインである。必要な場合の第2コンポーネントは、選択されたpHインジケーターによるCO2の検出のための最適なpH環境を維持する酸、塩基もしくは緩衝液である。第3コンポーネントは、非硬化ポリマー内で乳化されたインジケーター液の液滴を産生することのできるグリセロールもしくは透過の乳化剤であってよい。第4コンポーネントは、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化第一鉄等のような顔料であってよい。第5コンポーネントは、インジケーターのための適正な環境を維持する例えばシリコーンのような非硬化ポリマーであってよい。それがガスにとっては透過性であるがイオンにとっては透過性ではなく、さらに滅菌処理を受けたときにこれらの特性が変化しない限り、固有の化学的もしくは物理的特性または硬化のための要件のどちらかからもインジケーターの化学的活性に余り大きな影響を及ぼさないあらゆるポリマーを使用することができる。さらに良好な結果が得られる他のシリコーンポリマーは、高温によって、触媒活性によって、または紫外線硬化によって硬化するシリコーンポリマーである。エマルジョンは様々なコンポーネントから調製され、ポリマーは不動化層からのCO2および他のガスの選択的拡散を許容し、その結果としてセンサー層における局所的に測定可能な変化を生じさせるpHインジケーターの液滴の周囲で半透過性マトリックスを形成するために硬化させられる。センサー層は、例えば金型内でのように個別に調製し、硬化させ、その後シリコーン接着剤のような適切な接着剤を用いてプレートへ取り付けることができる。あるいはまた、および好ましくは、センサーは容器の底部上で形成され、インサイツで硬化させられる。硬化後、センサーを含む容器は例えばオートクレーブまたはγ線照射によって滅菌することができる。便利なことに、滅菌前に不動化層および追加の任意の層をセンサープレート内に導入し、同様にそのプロセスによって滅菌することができる。
【0026】
さらに別の実施例では、センサー層は着色シリコーンマトリックス内に乳化されたインジケーター液を備える。インジケーター液は、0.8M水酸化カリウム(10.0ml)およびイソプロピルアルコール(10.0ml)の溶液内に溶解させたチモールブルーインジケーター(0.65g)から構成される。インジケーター液(5.0g)はその後着色シリコーンコンポーネントと混合される。着色シリコーンマトリックスは、シルガード(Sylgard)184シリコーン(コンポーネントA(50.0g)およびB(5.0g))および白色顔料(製品番号61−18000、フェロ(Ferro Corp.)社製、ニュージャージー州)(1.0g)から構成される。センサー材料はその後、薄い層(約0.2〜0.5mm)でプレート上に注入されて広げられる。
【0027】
また別の実施例では、センサー層は着色シリコーンマトリックスと混合されたインジケーター液を備える。インジケーター液はイソプロピルアルコール(5.0ml)および0.9M水酸化カリウム(5.0ml)の溶液内に溶解させたオルトクレゾールフタレインインジケーター(2.0g)から構成される。インジケーター液(2.5g)はその後着色シリコーンコンポーネントと混合される。着色シリコーンマトリックスは、シルガード(Sylgard)184シリコーン(コンポーネントA(25.0g)およびB(2.5g))および白色顔料(製品番号61−18000、フェロ(Ferro Corp.)社製、ニュージャージー州)(0.5g)から構成される。センサー材料はその後、薄い層(約0.2〜0.5mm)でプレート上に注入されて広げられる。この実施例の変形では、上記オルトクレゾールフタレインセンサー層は着色シリコーンマトリックスを備えるオーバーコート層で被覆されている。
【0028】
さらになおまた別の実施例では、センサー層は顔料液およびシリコーンマトリックスと混合されたインジケーター液を備える。インジケーター液はイソプロピルアルコール(10.0ml)および0.8M水酸化カリウム(10.0ml)の溶液内に溶解させたオルトクレゾールフタレインインジケーター(2.0g)から構成される。顔料液はシリコーン油(40.0g)、白色顔料(製品番号61−18000、フェロ(Ferro Corp.)社製、ニュージャージー州)(4.0g)から構成される。シリコーンマトリックスは、ワッカー・エラストシル(Wacker Elastosil)RT 601シリコーン(コンポーネントA(200.0g)およびB(20.0g))およびトルエン(40.0g)から構成される。インジケーター液(20.0g)はその後顔料液(40.0g)およびシリコーンコンポーネントと混合される。センサー材料はその後、薄い層(約0.1〜0.3mm)でプレート上にスプレーされる。
【0029】
上記のような酸素、二酸化炭素およびpHにおける変化に対して反応性であるインジケーターに加えて、アンモニア、酸化還元電位、水素、硫化水素、または微生物の存在もしくは増殖を原因とする変化を受ける他の基質における変化を検出するインジケーターもまた利用できよう。さらに、センサー層(または複数のセンサー層)において複数の相違するインジケーターを使用することができよう。
【0030】
センサー層は、好ましくはサンプルの特性(例、自然蛍光、不透明性等)がセンサーの反応に影響を及ぼす、または遮蔽することを防止できるように不透明である。センサー層は、その変化が画像収集および処理によって検出可能である場合に、好ましくは微生物の存在下で1つの不透明状態から別の不透明状態に変化する。1つの例として、センサー層は白色着色シリコーンのオーバーレイを伴って、白色着色シリコーンマトリックス内のオルトクレゾールフタレインインジケーターの乳化混合物であってよい。または、センサー層は例えばチモールブルーインジケーター、キシレノールブルーインジケーター、または「汎用」インジケーターのような1種以上のインジケーターと一緒に乳化された着色シリコーンマトリックスであってよい。センサー層内のマトリックスは、適切なラテックス、ポリウレタン、ナイロン膜(例、荷電ナイロン膜)またはセルロース粉末であってよい。センサー層マトリックスはさらにまた、例えばシルガード184、ワッカー601、もしくはワッカー934のようなシリコーンマトリックスであってもよい。または、センサー層は例えばインジケーター層と不透明層のような2つの層から作り上げることもできよう。
【0031】
センサープレートデバイス内のもう1つの重要な層は不動化層10である。本発明の不動化層は、単独で、または上記のセンサー層のような他の層と組み合わせて用意することができる。不動化層の目的は、マトリックスの表面上にサンプル内の微生物を不動化させることである。サンプル自体は液体であっても懸濁液であってもよい。サンプルは、ゲルの表面上に微生物を不動化できるように、既にゲル化したマトリックス上に、または脱水させたもしくは部分的に脱水させたゲルマトリックス上に塗布することができよう。ゲル化剤は、物理的支持を追加するためにサポートマトリックス内に包埋することもできよう。例には、ガラス、セルロースまたは全体が混合された、もしくは織布もしくは不織布の形状の合成ポリマー繊維が含まれる。
【0032】
センサープレートデバイスには、一緒に混合した層もしくは個別層としてのどちらかで、1種以上のゲル化剤を利用することができよう。例えば、2:1の適切な重量比で結合させたグアールゴムとキサンタンゴムの混合物を使用できよう。天然および合成ヒドロゲル粉末を含むその他のゲル化剤を単独または組み合わせて使用することができよう。ゴム、寒天、アガロース、カラゲナン、ベントナイト、アルギン酸塩、コラーゲン、ゼラチン、溶融ケイ酸塩、水溶性デンプン、ポリアクリレート、セルロース、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、酸化ポリエチレン、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリアクリルアミド、多糖類またはその他のゲル化剤もしくは増粘剤から選択した1種以上のゲル化剤を組み合わせることができよう。
【0033】
1種以上の合成もしくは天然親水性ポリマーを含む脱水させたおよび/または部分的に脱水させたゲルマトリックスは、表面コロニー単離/不動化のために使用できよう。1種以上のゲル化剤を使用する場合は、そのようなゲル化剤は一緒に混合する、または複数の層で提供することができよう。ある実施例では、上層は主として表面に微生物を捕捉するために用意でき、さらに下層は上層(例、変性セルロース、合成ポリマーまたはヒドロゲル上方の薄い寒天層)寒天層を通して液体サンプルを引き出すための強化吸収剤として用意できよう。
【0034】
センサー層が使用される場合は、不動化層はセンサー層に有害な影響を及ぼしてはならない。センサー層がpH変化を原因とする検出可能な変化を受ける場合は、極めて酸性のゲル層はセンサー層に有害な影響を及ぼすであろう(さらに一部の製造プロセスは酸性であり、センサー層に有害な影響を及ぼす可能性がある酸性残留物を残す可能性があろう)。さらにその上、この層がサンプルと混合されたときに酸性に変化しないことが確実でなければならないが、それはこれは微生物の不在下でさえセンサー層の変化を惹起する可能性があるためである。
【0035】
図2から詳細に読み取ることができるように、任意のコンディショニング層16を不動化層の上(または中もしくは下方)に用意することができる。図2においては不動化層から別個に示されてはいるが、コンディショニング層からのコンディショニング材は好ましくは不動化層自体の中に組み込まれる。不動化層の中もしくは個別の層のどちらに用意されていようと、コンディショニングコンポーネントは微生物増殖のための1つ以上の媒質、溶解剤、溶解酵素、抗菌性中和剤、界面活性剤または微生物検出および/または計数能力を改良するために有用な他の物質を含むことができる。コンディショニングコンポーネントは、さらにまた同一センサープレートデバイスにおける不動化層内および個別層の両方に用意することもできる。
【0036】
コンディショニングのための溶解剤は、ゲルをより平滑にするため、および/またはゲルのより良好な再水和を可能にするために試験サンプル中の血球を溶解させるために添加できる。可能性のある溶解剤の例には、サポニン、ジギトニン、Tweens(商標)、ポリソルビタンモノラウレート、およびその他の界面活性剤が含まれる。典型的には必ずしもタンパク質分解酵素ではない溶解酵素は、ゲルをより平滑にするため、および/またはゲルのより良好な再水和を可能にするために血液サンプル中の細胞物質を消化するために添加することができる。コンディショニングのための溶解酵素は、例えばアスペルギルスオリーゼ等に由来する酵素混合物のような1種以上のプロテアーゼを含むことができる。
【0037】
抗菌性中和剤は、コンディショニングのため、特に試験サンプル中の微生物のより迅速および/またはより良好な回収のために添加することができる。1種以上のそのような中和剤は樹脂、ゴムおよび炭素を基剤とする物質(例、活性炭またはEcosorb(商標))、または特に様々な抗生物質を変性させる種々の酵素(例、βラクタマーゼ)の1つから選択することができよう。
【0038】
さらにまたコンディショニングのために媒質を(不動化層へ直接に、または個別に)添加することができる。媒質は微生物の増殖のための栄養素を提供するために添加される。種々のタイプの微生物のために数多くのタイプの媒質を使用できるが、微生物が好気性微生物である場合は、媒質は1つの例として下記を含むことができよう(各々の代表的な量は括弧内に単位g/Lで挙げられている)。トリプトン(17)、ソイトン(3)、プロテオースペプトン(5)、麦芽エキス(2.5)、デキストロース(2.5)およびMOPS(23)。微生物が嫌気性微生物である場合は、媒質はさらに好気性微生物のために上記に列挙した媒質並びにヘミン(0.005)、L−シスチン(0.2)、Na−m−二硫化物(0.2)およびメナジオン(0.0005)を含むことができよう。
【0039】
大腸菌に対しては、媒質は一例としてラクトース(5)、胆汁酸塩#3(0.8)、K2HPO4(7)、KH2PO4(3)、(NH42SO4(0.5)、MgSO4(0.1)、Na−m−二硫化物(0.4)およびSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)(0.1)を含むことができよう。酵母、糸状菌およびその他の追加の耐性微生物に対しては、媒質は1例としてデキストロース(10)、酵母エキス(10)、(NH4)クエン酸塩(2)およびpH5.5までの酒石酸を含むことができよう。
【0040】
さらにまた図2から明らかであるように、容器の壁には、それの下が疎水性ガス透過性フィルム22であり、それの上方がガス不透過性(取外し可能)フィルム24である開口部20を用意することができる。または、容器には一緒に付着して開口部を被覆しているガス不透過性フィルムおよび疎水性ガス透過性フィルムを備えた開口部を壁に用意することができよう。微生物が嫌気性である場合は、ガス不透過性フィルムはその場所に残されるであろう。しかし、微生物が好気性である場合は、ガス不透過性フィルムはセンサープレートデバイスへ試験サンプルを添加する時点に取り除かれるであろう。当然ながら、疎水性ガス透過性フィルムは少しも用意する必要はないが、それは汚染物質が容器内に侵入するのを防止するために、および潜在的感染性試験材料がデバイスの外部へ漏出するのを防止するために有益である。
【0041】
図2におけるエリアAは図3および4においてさらに詳細に示されている。図3から読み取ることができるように、センサープレートデバイスのまた別の実施形態では、単一の不動化マトリックス層の代わりに、次のうちの1つ以上を用意することができる。増殖後の表面捕捉および回収を可能にするための半硬質表面のための単離ゲル層30、接着層31、吸収性ゲル層32および追加の接着層33。吸収性ゲル層32は1つ以上のコンディショニングコンポーネント(ゲル中に)、微生物増殖のための媒質、溶解酵素および抗菌性中和剤を含むことができる。さらに図3から詳細に読み取ることができるように、単一センサー層の代わりに、次のうちの1つ以上を用意することができる。オーバーコート層34、接着層35、インジケーター層36、およびプレート底部38と接触している追加の接着層37。
【0042】
図4に示されている本発明の追加の実施形態では、下記を備えるマトリックス層40が用意されている。脱水されたゲル化層、および例えば媒質、溶解酵素および抗菌性中和剤のような乾燥コンディショニングコンポーネント。図3におけると同様に、単一センサー層の代わりに、次のうちの1つ以上を用意することができる。接着層41、オーバーコート層42、接着層43、インジケーター層44、およびプレート底部46と接触している追加の接着層45。
【0043】
センサープレートデバイスのサイズは、所望のサンプルサイズに依存して相違してよい。ある実施例では、センサープレートデバイスは74mm×117mmの寸法の不動化層を有している。不動化層がウエットタイプのゲルを備える場合は、サンプルサイズは極めて少量(例、1mL以下)にすることができよう、または例えば血液サンプルを用いる場合は、15mLまでにすることができよう。他方、不動化層が脱水されたゲルを備える場合は、サンプルサイズはゲルおよびサンプルのタイプに依存してもっと大きくてもよいであろう(例、サンプルは30mL以上であってよいであろう)。
【0044】
使用時に、液体サンプルはセンサープレートデバイス内に導入される。サンプルは、それがセンサープレートの底面全体に広がるにつれて(所望の場合は)「コンディショニング」される。サンプルは、不動化マトリックス層内へ吸収される。その後、センサープレートは微生物コロニーの増殖を促進するために培養される。センサープレートデバイスの底面に向かって配置されたセンサー層は、微生物コロニーの存在を指示できるように検出可能な変化を受ける。最後に、センサープレートデバイスは、微生物コロニーの存在および所在位置を決定するために手作業で、または自動的に検査される。
【0045】
本装置はセンサープレート上で3つの主要機能を実行する。プレート培養、画像収集/捕捉、および画像処理。本装置は周囲より高い温度で培養を行わなければならない場合(必ずしもすべての状況において高温が必要とされるわけではない)はヒーターを含むことのできる、プレートを培養するために制御された環境を提供する。液体サンプルがセンサープレートデバイスに添加され、その後センサープレートは、培養期間中に画像収集/捕捉装置(例、カメラまたはスキャナー)によって引続いて感知/観察が行われる装置内に置かれる。
【0046】
センサープレートデバイスの底部の画像は、微生物コロニーがセンサープレート上に存在するかどうかを決定するために、定期的な規定間隔で捕捉し、引続いて1種以上の画像処理技術およびアルゴリズムを用いて解析することができる。微生物を検出および計数するために実行される画像処理アルゴリズムは、1つ以上の下記のステップから構成される。
a) 外部画像データから当該領域を分離するための画像マスキング、
b) 相違する時間間隔で入手された2枚の画像間の変化の領域を分離するための画像サブトラクション、
c) サブトラクションされた画像に現れた変化の大きさを増幅するための画像均等化、
d) 均等化画像における単一画素ノイズの作用を減少させるための画像ブルーリング(低域通過フィルター)、
e) さらにフィルタリングされた画像における局所的相違を増幅させるための画像コントラストおよびブライトネス増強、
f) コロニー検出/計数アルゴリズムのために画像を準備するための画像閾値設定(必要な場合は、数種の閾値を用いて)、および/または
g) プレート上の微生物の存在を決定するため、プレート上のコロニー数を計数するためおよび/またはプレート上のコロニーを分類するためのカラー解析を実行するためのコロニー検出、計数および分類。
【0047】
本発明のある好ましい実施形態では、不動化層は大量のバルク試験サンプル液を吸収するが、それでも不動化層の表面上または近くに表面コロニーとしてバルク液サンプル中に存在する微生物を保持するように設計されている。この場合、表面コロニーは媒質に浸透することなく表面から接近できるコロニーであると定義されているが、コロニーは実質的に媒質内に包埋されていることがある。一次培養直後には、採取およびその後の検査のために分離された微生物のコロニーは入手可能であり、容易に接近可能である。その最も単純な形態では、本デバイスは容器内(例、プレートまたは単純基質上)にセンサー層の不在下で不動化層を備えている。不動化層は、大量のサンプル液を吸収することのできるマイクロポーラスの高度に膨潤性の媒質を備える。
【0048】
本発明のための調製されるように、親水性ポリマーはポリマー鎖の撚り糸間の絡み合いおよび/または架橋結合によってゲルを形成することができる(ここで使用するポリマー鎖は、ポリマーの分子鎖を意味する)。本発明では、ゲル内のポリマー鎖が連続性のマイクロポーラスおよび高度に膨潤性の網に形成されるので、バルク液からの微生物の表面捕捉が可能になる。本質的にはポリマー鎖間の間隙である孔は、当該微生物がゲル内の遠くに浸透することはできないが、例えば水、塩、タンパク質および栄養素のようなより小さな微粒子もしくは分子は至る所で自由に通過できるようなサイズであってよい。
【0049】
この実施形態における不動化層の主要コンポーネントは、その半固形もしくは高度に粘性のマイクロポーラスの性質を失わずに水性液体を実質的に吸収して膨潤することができる親水性ポリマー網もしくはヒドロゲルから構成される吸収性培地である。水性液体がそのようなポリマー網の表面に塗布されると、液体は網内に拡散し、網は結果として膨張する。ポリマー網の孔径より小さな水および分子もしくは粒子はゲル全体に自由に拡散するであろう。例えば微生物のようなゲルの孔径より大きな粒子は表面上または表面の近くに捕捉される。図6で明らかなように、微生物について検査される大量の液体サンプル60が容器62(その中にマイクロポーラスの高度に膨潤性媒質64を有する)へ添加される。図7で明らかなように、マイクロポーラスの媒質はバルク液サンプルの吸収を原因として高度に膨張するが、他方媒質のポリマー網は無傷のまま残る。
【0050】
不動化層(ゲルポリマー層)は検出すべき微生物の増殖を阻害してはならない。1つのゲル化媒質は一部の微生物の増殖を阻害する可能性があるが、同一媒質は他の微生物の増殖を促進する可能性がある。一定の微生物の選択的阻害を長所とするために使用することができるが、本発明のある好ましい実施形態では、ゲル化媒質は広範囲の微生物の増殖を増強も阻害もせず、むしろ微生物増殖のための不活性足場として機能する。ゲル化媒質を作り出すために使用されるポリマーは、好ましくは親水性である。一般に、ポリマーが親水性であればあるほど、それはサンプル液によってより迅速に膨潤するであろう。所望の特性を付与するためにマトリックスの一部として余り親水性ではない、または疎水性のポリマーを使用することができるが、ゲル化媒質の大部分は親水性でなければならない。
【0051】
ポリマーによって形成されたゲルは、使用条件下で凝集力または高度の粘性を維持しなければならない。ゲルはその使用によって要求される容量および温度の変化を通して完全性を維持しなければならない。さらにまた、微生物によって容易に変質することのないポリマーが培養されることが望ましい。さらに、ゲル化ポリマーの鎖間架橋結合または絡み合いは、ゲル化もしくは高粘度を維持するために十分に高くなければならないが、高度の膨潤を許容するのに十分に低くなければならない。より詳細には使用される材料(天然、合成、もしくは半合成ポリマー、または他の材料)とは無関係に網を崩壊させることなく液体を吸収するのに十分に柔軟性であるポリマー鎖が相互に連結した網が提供されることが好ましい。相互連結ポリマー鎖間の間隙空間は培養される微生物の平均サイズより小さい平均サイズであるので、その結果検査されるサンプル内の実質的すべての微生物がポリマーゲル(「不動化層」)の表面上で不動化させられる。相互連結しているとは、ポリマー鎖が物理的に絡み合っているおよび/または架橋結合していることを意味する。
【0052】
物理的特性に基づくと、本発明の吸収性培地の基礎として使用できる2つの主要なクラスのゲル化材料、つまり硬質ゲルおよび軟質ゲルがある。各々は相違する製造方法を必要とする。
【0053】
硬質ゲルは通例は均質に架橋結合しておリ、ゼラチン様一貫性を有している。架橋結合は共有結合、イオン結合、または水素結合、疎水性相互作用、またはこれらのいずれかもしくは全部の混合から構成することができる。このタイプのゲルは一般に硬く脆性であるが、架橋結合の量を制限することによって本発明において使用するために極めて柔軟性かつ膨潤性に製造することができる。このタイプのゲルは最終所望寸法に鋳造し、その後使用前に脱水されるであろう。あるいはまた、ゲルは、液体サンプルを用いて膨潤した後に所望の形状に到達するように脱水形で鋳造することもできよう。
【0054】
例えばアガロースおよびゼラチンのような一部の天然ゲル化材は、本発明において限定的に使用される硬質ゲルを形成するであろう。いったん形成されると、これらのゲルはバルクサンプル液を添加しても目に見えて膨潤しないであろう。乾燥させ、引続き脱水させても、それらは元の寸法には戻らないであろう。これは、ゲルを一緒に保持してゲルが脱水によって収縮するにつれてより緊密な架橋結合を形成する制御されない数の関連架橋結合(水素結合もしくはイオン結合)のために発生する。
【0055】
吸収性培地のためにより有用なゲルは、注意深く制御された架橋結合を用いて、より弱い関連結合を有する、またはそれらの関連結合が化学的修飾によって弱められるポリマーから形成することができる。このタイプのゲルは、多数のプロセスによって製造することができる。同時の遊離基重合および架橋結合、例えばエレクトロフォレーシスで使用するものに類似するポリアクリルアミドゲルを使用して本発明のために適切なゲルを製造することができる。あるいはまた、ポリマーを重合後に化学的に架橋結合させることができる。そのようなゲルの例には、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDE)と架橋結合させたデキストラン、多価カチオン類と架橋結合させたCMC、グルタールアルデヒド(GA)と架橋結合させたゼラチン、およびGAと架橋結合させたポリビニルアルコールが含まれる。
【0056】
化学的架橋結合に対する効率的な代替法は放射線を用いた架橋結合である。例えばγ線または電子ビームのような高エネルギー放射線に曝露させられたポリマー鎖は放射線により開始される遊離基を通して自然に架橋結合するであろう。ほぼあらゆるポリマーはこのプロセスによって架橋結合させることができる。例えばポリビニルピロリドン(PVP)、PEO、および線状ポリアクリルアミドのような親水性ポリマーは、微生物滅菌という本発明にとって付加利益を伴って、この方法に適用できることが証明されている。
【0057】
本発明に使用できるもう1つのタイプのゲル(物理的特性に基づく)は軟質ゲルである。軟質ゲルは、ゲル化媒質の組成およびその濃度に依存して粘性液体から柔軟な固体にまで及ぶ連続体において所見されるプディング様一貫性を有している。そのようなゲルは低い剪断作用下で流れに抵抗するが、充分な圧力下ではあらゆる形状に成形できるという望ましい特性を有している。軟質ゲルの特性は、主として長い、しばしば分岐状のポリマー鎖の絡み合いを通して発生する。
【0058】
ほとんどの天然ゴムおよび多数の非架橋結合、または最小架橋結合合成ポリマーは軟質ゲルを作り上げるであろう。これらのゲルの製造プロセスは、フィルムを形成するためのポリマーの溶液もしくは懸濁液を乾燥させるステップ、または部分的に脱水されたポリマーペーストを所望の形状にする押出し加工、打抜き加工または圧延加工をのいずれかを含むであろう。
【0059】
本発明に使用できるポリマー材料の特定タイプ、およびそれが硬質ゲルもしくは軟質ゲルであるのか、またはそれが天然、合成、もしくは半合成であるのかは余り重要ではない。より重要なのは、本発明に利用される材料の特定の物理的特性である。本発明に有用な可能性があるポリマーには下記のものが含まれるが、それらに限定されない。例えばキサンタンゴム、グアールゴム、イナゴマメゴム、ペクチン、デンプン、トラガカントゴム、デキストラン、寒天、アガロース、カラゲナン、アルギン酸塩、およびその他の天然ゴムのような多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシエチルセルロースおよびその他のセルロース、デンプン、グアール、アルギン酸塩、キチンおよびデキストラン誘導体のような半合成ポリマー類、アクリル酸、アクリルアミド、ビニル−ピロリドン、ビニル−アルコール、ヒドロキシエチルメタクリレートおよび多数の他のアクリル、ビニルもしくはスチレンを基剤とするモノマー類を含むモノマー類のいずれかもしくは組み合わせ並びにポリエチレングリコール、酸化ポリエチレン、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、および上記のいずれかのコポリマー類もしくは混合物から製造された合成ポリマー類。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、不動化層は相互に連結した網を崩壊させることなく大量の液体サンプルを吸収するために十分に柔軟性であるポリマー鎖が相互に連結した網から作られており、このとき相互連結ポリマー鎖間の間隙空間のサイズは培養/検出される微生物の平均サイズより平均して小さい。このため、サンプル内の微生物の全部または大部分は、サンプル量が大量である場合にさえ不動化層の上面で不動化されるであろう。多くの微生物は、直径がおよそ0.1〜1マイクロメーターである。このため、本発明のある好ましい実施形態では、相互連結ポリマー鎖間の間隙空間は1マイクロメーター未満であり(例、0.1〜1マイクロメーター)、より好ましくは0.5マイクロメーター未満であり、さらに一層0.1マイクロメーター以下と小さい場合さえある。
【0061】
微生物を培養するために使用される典型的な寒天プレートは、その上に添加される約0.02mL/cm2以下のサンプル液を吸収する。本発明では、ポリマー鎖が相互に連結した網はポリマー網の初期容積の50%〜400%の液体サンプルを吸収することができる。本発明では、0.04mL/cm2より多量(例、0.04〜1.0mL/cm2、または標準寒天プレートの容積の2〜50倍)の液体容量を吸収することができる。ある好ましい実施形態では、0.05mL/cm2より多量の、または例えば0.1mL/cm2〜0.7mL/cm2の(標準プレートの容積の5〜35倍)ような0.1mL/cm2より多量さえの液体容量を吸収することができる。また別の好ましい実施形態では、例えば0.2mL/cm2〜0.4mL/cm2(標準寒天プレートの容積の10〜20倍)のような0.2mL/cm2より多量の液体容量を吸収することができる。そのような容量の液体は、20時間以内、好ましくは10時間以内、または4時間未満以内でさえ前記不動化層によって吸収することができる(一部の実施形態では、バルク液は15分間以内に吸収される)。
【0062】
表面上に微生物をまだ保持しながらそのような大量のサンプル液を吸収するこの能力は、直接にプレート上での血液のプレーティング(例、患者からの直接吸引)を含む広範囲の領域における培養/検出デバイスの使用を可能にする。溶解剤および/または溶解酵素は血液サンプル中の開放気泡を破壊させるために不動化層上および/または中に分散させることができる。さらに、サンプル(例、食品サンプル、製造液または飲料水)が極めて低濃度である場合は、プレートへ添加されるサンプル内に微生物が存在する機会はプレーティングされたサンプル容量が増加するにつれて増加するので、従って検査の効率が改善される。
【0063】
不動化層は、(ゲルマトリックスに追加して)培地、抗生物質、抗菌性中和剤、インジケーター(指示薬)、洗浄剤、溶解剤、または1種以上のサポートマトリックス(デバイスの最終的使用に依存して)を含むことができる。サポートマトリックスは、ゲル層に物理的強度を追加するため、またはデバイスの製造において役立つように追加することができる。サポートは、それが液体を通過させるために十分に多孔性である限りは、織布もしくは不織布、フィルター膜もしくは個別ファイバーであってよい(サポートがその上にバルク液サンプルが添加される不動化/ゲルマトリックス層の上部に配置される場合は、液体通路が必要である)。サポートはさらにまた不動化層とセンサー層(一方が用意される場合)の間に配置する、または不動化層全体に分散させることもできよう。図8から明らかなように、1つの例としてトップサポート層80は、第2サポート層84の上に置かれている不動化層82の上に配置されており、第2サポート層84は順にセンサー層86の上に置かれており、それらは全部が容器88の中にある。
【0064】
現在までに本発明の数種の実施例が試験され、実現可能性が証明されている。様々な方法が、このコンセプトを広範囲の適用のためにどのように調整できるかを証明している。
【0065】
[実施例1]
CMC乾燥フィルム
1.5%(w/v)カルボキシメチルセルロース(CMC、オールドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)社製、平均分子量:700,000)を15分間、121℃での液体サイクルでオートクレーブ滅菌した。冷却後、この溶液を10mLずつ径60mm(内径52mm、21.2cm2)のペトリ皿へ添加し、50℃で一晩かけて乾燥させた。その後汚染からの細菌負荷を減少させるために1時間に渡り80℃へ温度を上昇させた。
【0066】
ヒツジ血に約10CFU/mLの濃度で黄色ブドウ球菌(ATCC#25923)をスパイクし、最終濃度0.5%(w/v)となるまでサポニンを添加することにより溶解させた。乾燥CMCフィルムに2.5mLの溶解血液溶液を接種し、被覆し、35℃で一晩インキュベートした。
【0067】
一晩のインキュベーション後、全部の液体はゲル内に吸収されており、相互に分離された黄色ブドウ球菌のコロニーがゲルの表面上で容易に観察され、さらにそこから採取された。ゲル内への細菌の目に見える浸透はなく、さらにゲルのバルク内に捕捉されているコロニーも見られなかった。この実施例では、単位表面積当たりの吸収された液体量は0.12mL/cm2であった。
【0068】
[実施例2]
ポリアクリルアミド
光開始ポリアクリルアミドゲルを形成するための前重合液は下記の組成物を用いて作成した。アクリルアミド/ビスアクリルアミド(10%T、0.4%CO、TEMED(0.04%v/v)、リン酸リボフラビン(0.0025%、w/v)、およびリン酸ナトリウム(10mm pH6.5、最終濃度)。この溶液を20mLずつ径90mm(内径86mm、58.1cm2)のペトリ皿へ添加した。ペトリ皿を積み重ね、嫌気性大気発生器パックを用いて嫌気性培養ビン中に密封した。嫌気性ビンはその後、重合前に酸素が除去されるように暗所に30分間置いた。
【0069】
ビンの中のプレートをその後、約23℃で一晩かけて、約10cmの距離から15W卓上用蛍光灯スタンド下で照明した。重合後、各ゲルの上部に5mLの10%グリセロールを添加し、その後ゲルを35℃で一晩乾燥させ、細菌汚染を減少させるために65℃で1時間焼成した。
【0070】
これらのゲルは10mLのトリプシンソイブロス(TSB)を用いて部分的に再水和させた。TSBを吸収させた後、ゲルに約10CFU/mLの密度で大腸菌(ATCC#25922)をスパイクした5mLのTSBの添加によって接種した。接種されたゲルを被覆し、35℃で一晩インキュベートした。
【0071】
一晩のインキュベーション後、全部の液体はゲル内に吸収されており、相互に分離された大腸菌のコロニーがゲルの表面上で容易に観察され、さらにそこから採取された。この実施例では、単位表面積当たりの吸収された液体量は0.26mL/cm2であった。
【0072】
[実施例3]
サポートを含むキサンタン/グアールペースト
ペーストは、10gの前水和キサンタンゴムおよび2.5gの前水和グアールゴムを50mLのトリプシンソイブロス(TSB)と一緒に結合することによって作製した。ペースト部分を2層の織られたナイロンサポートメッシュの間に挟み、1.5gのペーストが約60mm径の円を形成するまでプラスチック板の間に挟んでプレスした。51mm径のパンチを使用してペースト・サンドイッチの円を切り抜き、これをポリカーボネートシートへ移し、オートクレーブにより滅菌した。冷却後、ペーストを部分的に水和させてディスクの配置に役立つようにペースト円を0.5mLのTSBと一緒に径60mm(内径52mm)のペトリ皿へ移した。
【0073】
抗凝固剤としてSPSを用いてヒト血液を採取し、約25CFU/mLの濃度で黄色ブドウ球菌(ATCC#25923)または大腸菌(ATCC#25922)を用いてスパイクした。スパイク血は2.0%サポニン(w/v)と等量のTSBの添加によって溶解させた。ガムペーストディスクに5.0mLの溶解血液溶液を接種し、被覆し、35℃で一晩インキュベートした。
【0074】
一晩のインキュベーション後、全部の液体はゲル内に吸収されており、相互に分離された黄色ブドウ球菌および大腸菌のコロニーがゲルの表面上で容易に観察され、さらにそこから採取された。ゲル内への細菌の目に見える浸透はなく、さらにゲルのバルク内に捕捉されているコロニーも見られなかった。この実施例では、単位表面積当たりの吸収された液体量は0.24mL/cm2であった。
【0075】
[実施例4]
炭を含むキサンタン/グアールペースト
ペーストは、10gの薬用粉炭(抗菌性中和剤)を混合物に添加すること以外は、実施例3に従って調製した。この調製物のペーストディスクを製造し、実施例3と同様に接種した。液体の吸収および微生物の増殖は実施例3と比較して顕著に影響を受けなかった。
【0076】
[実施例5]
膜フィルター、サポートを含むキサンタン/グアールペースト
ペーストディスクは、上を向いているサポートが膜フィルター(Gelman Supor−450)であること以外は、実施例3と同様に製造かつ接種した。液体の吸収は実施例3と比較して顕著な影響を受けなかったが、増殖培地の表面はより平滑な外観を有しており、細菌コロニーをより容易に視認することができた。
【0077】
[実施例6]
キサンタン/グアールペースト対寒天
ペーストは、ペーストを20gの前水和キサンタンゴム、5gの前水和グアールゴムおよび50mLのトリプシンソイブロス(TSB)から構成したこと以外は、実施例3に従って調製した。この調製物のペーストディスクは実施例3と同様に製造し、TSB中の約25CFU/mLの濃度の大腸菌(ATCC#25922)を用いて接種した。接種量の範囲は10.6mLまで試験した。同時に、市販で入手可能な90mm血液寒天プレート(内径86mm、58.1cm2)を同様に2.0mLまでの用量で接種した。どちらのセットの接種プレートも穿孔したプラスチックバッグ内に封入し、35℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートを取り出し、液体取り込みおよび細菌コロニーについて試験した。
【0078】
全部のペーストディスクが10.6mLまでの接種液を全部吸収しており、さらに細菌コロニーを表面上で視認できた。血液寒天プレート上では、吸収最高量は1.0mLであった。この実施例では、ペーストディスクは0.50mL/cm2を吸収していたが、寒天プレートは0.02mL/cm2未満しか吸収しなかった。
【0079】
上記の説明を読めば、当業者であれば十分に本発明を実践することができる。ここに記載した実施例は決してクレームの範囲を限定するものであると解釈されてはならない。実際に、ここに図示かつ記載したものに加えて本発明の様々な変形は、上記の説明を読めば当業者には明白となり、添付のクレームの範囲内に含まれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 微生物の表面培養を実施するための装置の一実施形態を示す図である。
【図2】 図1の装置の断面図である。
【図3】 表面培養装置の別の実施形態を示す断面図である。
【図4】 表面培養装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図5】 大腸菌に対して陽性の3つの表面培養装置の底部を示す図である。
【図6】 微生物の表面培養を実施するための装置へのバルク液サンプルの添加を示す図である。
【図7】 バルク液サンプルが微生物を表面上に留まらせたまま吸収されている本発明の装置を示す図である。
【図8】 本発明のさらに別の実施形態を示す横断面である。

Claims (1)

  1. サンプル中の微生物を培養する装置であって、この装置が、容器と、この容器内に、ポリマー鎖が相互に連結した網から作られている不動化層とを備えており、培養中に、サンプル中の微生物の実質的に全部が前記不動化層の表面上で不動化されるように、前記相互に連結したポリマー鎖の間の間隙の平均のサイズが、培養対象であるサンプル中の微生物の平均のサイズより小さい装置であって、前記ポリマー鎖が相互に連結した網が、前記不動化層の表面積1cm 当たり0.04mLより多量のサンプルを吸収することができる、装置。
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