JP2004073008A - セレウス菌の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維状吸水性シートに少なくとも水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分を担持してなる簡易乾燥培地に、被検試料液と同時に又は被検試料液添加後に卵黄液を添加して培養し、形成されるコロニーを検出することを特徴とするセレウス菌の検出方法。
【効果】本発明のセレウス菌検査法により、煩雑な培地調製の必要がなく、検査自体も簡便で経験と労力を必要としない検査が可能となった。
【選択図】 なし
【効果】本発明のセレウス菌検査法により、煩雑な培地調製の必要がなく、検査自体も簡便で経験と労力を必要としない検査が可能となった。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡易培地により簡便かつ正確に食品や環境中のセレウス菌を検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セレウス菌(Bacillus cereus)は、河川、土の中など、自然界に広く分布しており、食中毒の原因菌として知られている。セレウス菌は、増殖に伴って、嘔吐型毒素と下痢型毒素を産生し、セレウス菌による食中毒の症状は嘔吐及び下痢である。また、セレウス菌の毒素は熱に強く、特に嘔吐型毒素は126℃で90分加熱してもこわれにくいため集団食中毒を起こしやすい。
【0003】
このようにセレウス菌の検出は、食品衛生法に基づく検査項目として重要であり、従来、セレウス菌検出のための検査法としては、NGKG寒天培地などが一般的に使用されてきた。NGKG寒天培地はセレウス菌の選択分離培地で、培地上に発育したセレウス菌は卵黄反応陽性と特徴的なコロニーにより鑑別される。このとき卵黄反応の有無はセレウス菌を鑑別する上で重要な要素となっている。
【0004】
従来法のNGKG寒天培地は培地調製の際に卵黄を添加する必要があり、この卵黄を添加する操作は煩雑で経験を必要としていた。詳しくは、あらかじめ鶏卵から卵黄を無菌的に抽出し、滅菌した食塩水と混合しておき、培地を高圧蒸気滅菌後に45℃〜50℃に冷却したところに所定量の卵黄を加えて、シャーレに分注していた。このとき重要な点は、滅菌後の培地の温度を正確に制御しないと卵黄を添加したときに卵黄成分が変性したり、培地の寒天が固まったりする欠点があった。すなわち従来法は培地調製の操作が煩雑で経験や時間を必要としていた。また、従来の検査法では、試料を所定量培地に加えた後、コンラージ棒で培地全体に行き渡るように広げ、試料を培地に染み込ませる操作をするため、この塗沫接種は検査に労力と時間を必要とした。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題の多いNGKG寒天培地を用いない手段として、あらかじめ菌体栄養成分等を担持した吸水性シートからなる簡易乾燥培地の利用が考えられる。そこで、菌体栄養成分に加えて卵黄も担持した吸水性シートを調製すべく検討したところ、卵黄成分が変性し吸水性シートに担持できないため、簡易培地によるセレウス菌の検出はできなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、さらに検討したところ、全く意外にも、繊維状吸水性シートに水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分を担持してなる乾燥培地に、卵黄液を添加してから被検試料液を添加すると卵黄液の分散が十分でないのに対し、卵黄液を被検試料液と同時又は被検試料液添加後に添加すれば、被検試料液及び卵黄液が均一に吸水性シートに分散し、鑑別可能なコロニーが形成され、セレウス菌の検出が簡便かつ正確にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、繊維状吸水性シートに少なくとも水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分を担持してなる簡易乾燥培地に、被検試料液と同時に又は被検試料液添加後に卵黄液を添加して培養し、形成されるコロニーを検出することを特徴とするセレウス菌の検出方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のセレウス菌の検出方法に用いられる簡易乾燥培地は、繊維状吸水性シートに少なくとも水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分が担持されていればよく、例えば次の(1)〜(6)の簡易培地が挙げられる。
(1)防水性基体の上面部に、接着剤層、栄養成分を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順次積層した培地(特開昭57−502200号公報)。
(2)防水性基体の上面部に、空気透過性膜、栄養成分を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順次積層した培地(特開平3−15379号公報)。
(3)濾紙等に菌体栄養成分を含浸させ、その表面をカバーシートで覆ってなる検出紙(特開平2−65798号公報)。
(4)防水性平板の表面に冷水可溶性ゲル化剤と微生物培養基、繊維質吸水性シートを順次積層した培地(特開平6−181741号公報)。
(5)(a)水及びアルコールに可溶な接着剤、(b)水に可溶でアルコールに不溶なゲル化剤、及び(c)菌体栄養成分を含有する培地組成物を、該ゲル化剤より大きいメッシュを有する繊維状吸水性シートに担持させた簡易培地(特開平9−19282号公報)。
(6)(a)水及びアルコールに可溶な接着剤0.01〜0.4重量%、(b)水に可溶でアルコールに不溶なゲル化剤、及び(c)菌体栄養成分を含有するアルコール懸濁液を、防水性平板上に載置された該ゲル化剤の粒径より大きいメッシュを有する繊維質吸水性シートに含浸させ、これをアルコールの急速な蒸発を抑制しつつ乾燥して、吸水性シートを防水性平板に固着させてなる簡易培地(特開2000−325072公報)。
これらの簡易乾燥培地のうち、(5)及び(6)が好ましく、(6)が特に好ましい。
【0009】
ゲル化剤としては、水に可溶であればよいが、水に可溶でアルコールに不溶であるのが特に好ましく、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン等の天然ゲル化剤、ヒドロキシエチルセルロース等の合成ゲル化物質が挙げられるが、なかでもキサンタンガムが特に好ましい。かかるゲル化剤は、平均粒径500μm以下、特に0.5〜50μmの粉体を使用するのが好ましい。
【0010】
培地組成物に必要に応じて用いられる接着剤としては、水に可溶であるのが好ましく、水及びアルコールに可溶なものであることが特に好ましい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられるが、なかでもヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0011】
また、菌体栄養成分としては、検出しようとするセレウス菌の生育に適したものが選択される。例えば、肉エキスやペプトン等の栄養成分、糖類、及びセレウス菌以外の菌を抑制するための抗生剤を含有する培地成分が用いられる。
【0012】
更に、この培地組成物には、コロニーの観察を容易にするために、適当な発色剤を配合するのが好ましい。かかる発色剤には、コロニーを着色する色素、例えばトリフェニルテトラゾリウムクロライド、3−(p−ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロマイド等の色素;5−ブロモ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド等の酵素基質;フェノールレッド、ブロムチモールブルー、ニュートラルレッド、ブロムクレゾールパープル、メチルレッド等のpH指示薬などが含まれる。
【0013】
培地組成物を懸濁するためのアルコールとしては、例えばエタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
【0014】
上記培地組成物を担持させる繊維質吸水性シートは、接種された被検液が毛細管現象により容易に拡散し、かつ培地組成物中のゲル化剤をその網目構造中に担持できるものであることが必要である。そのためには、繊維質吸水性シートはゲル化剤の粒径よりも大きいメッシュを有し、かつ厚さも当該粒径より厚いことが必要であり、例えば、網目の大きさが15〜100メッシュ、特に20〜50メッシュで、厚さが10〜1000μm、特に50〜600μmのものが好ましい。
【0015】
このような繊維質吸水性シートとしては、レーヨン不織布に代表される合成繊維不織布、コットン不織布に代表される天然繊維不織布等が挙げられる。これらのシートの形状は特に制限されず、正方形、長方形、円形等の何れであってもよい。またその大きさも特に制限されないが、微生物の簡易検出用の場合には長径1〜15cmのものが好ましい。
【0016】
上記繊維質吸水性シートを固着させる防水性平板としては、プラスチック、ガラス等の防水性の材質のものであれば何れでもかまわないが、外部からの観察のため透明のものが好ましい。
【0017】
本発明方法においては卵黄液を、被検試料液と同時に、又は被検試料液添加後に簡易培地に添加する。ここで卵黄液としては、鳥の卵黄水溶液、特にニワトリの卵黄水溶液が好ましい。なお、当該卵黄液には、安定化剤として無機塩、特に塩化ナトリウムを含有させるのが好ましい。無機塩の濃度は、0.1〜20重量%、特に0.1〜10重量%が好ましい。
【0018】
卵黄液調製に用いる卵黄は、放射線滅菌、例えばガンマ線や電子線、特に表面線量5〜20kGyのガンマ線照射により滅菌するのが好ましい。また、卵黄液中の卵黄濃度は吸水性シートへの分散性の点から5〜30重量%、特に5〜20重量%とするのが好ましい。
【0019】
卵黄液と被検試料液を同時に添加する場合には、予め両者を混合して添加してもよいし、添加直前に両者を混合してもよい。被検試料液添加後に卵黄液を添加する場合は、被検試料液添加直後、例えば10分以内、特に5秒以内に添加するのが好ましい。被検試料液と卵黄液の添加量は、容量比で被検試料液:卵黄液=10:1〜10:5が好ましい。
【0020】
被検試料液としては、食品懸濁液、調理場や調理器具等の環境ふき取り検体あるいは増菌用培地で培養した培養液、土壌懸濁液、河川水、飲料水等が用いられる。
【0021】
これらの被検試料液及び卵黄液の接種(添加)は通常ピペット等により一定量を接種する方法が採用される。
【0022】
被検試料液及び卵黄液添加後培養し、形成されるコロニーを検出すればセレウス菌が検出できる。培養は28〜32℃で18〜24時間、静置して好気的に行うのが好ましい。
【0023】
前記の如く簡易培地に被検試料液及び卵黄液を接種すると、これらの液がメッシュ間の立体的な空洞部の毛細管現象によって容易に拡散し、それに続いて膨潤ゲル化が起こって、被検試料液中のセレウス菌は捕捉され、自由移動が抑制され、培養によって卵黄反応が生起し、セレウス菌のコロニーが形成される。従って、培地形成面を観察すれば、形成したコロニーが容易に観察できる。被検試料液及び卵黄液を定量的に簡易培地へ接種すれば、培養後出現したコロニーを計測することにより、容易に菌数を算定することができる。
【0024】
【実施例】
実施例1
(1)培地の作製
塩化ナトリウム5g、肉エキス5g、乳糖10g、ペプトン20g、グリシン10g、硫酸ポリミキシンB80万U、フェノールレッド0.05g及びキサンタンガム30gをヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1gを含有するエタノール溶液1000mLに加え、懸濁液とした。このエタノール懸濁液を1mLずつ繊維質吸水性シート(50φmm)を収納した容器(50φmm)に分注した後、乾燥させ、蓋をして簡易培地を作製した。本培地を乾燥剤とともにアルミ包材に密封包装した後、表面線量10〜20kGyのガンマ線照射を行って滅菌した。
【0025】
(2)卵黄液の調製
卵黄をポリ容器に密封し、表面線量5〜20kGyのガンマ線照射を行って滅菌した。これを121℃で15分高圧蒸気滅菌した10重量%塩化ナトリウム水溶液に終濃度13%となるように無菌的に加え、滅菌済みプラスチック容器に分注し、卵黄液とした。
【0026】
(3)菌株の供試
供試菌株をトリプトソイブイヨンで24時間前培養したものを生理食塩水で10倍段階希釈して1mLを培地に供試した。
【0027】
比較例
従来法のNGKG寒天培地を比較対照とした。
【0028】
試験例1
実施例1の培地に試験菌液1mLを加えた直後、卵黄液0.3mLを滴下した。蓋をした後30℃で24時間培養した。同様に比較対照としてNGKG寒天培地に試験菌液0.1mLを加え、コンラージ棒で塗沫接種し、30℃で24時間培養した。
その結果を表1及び2に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1及び2の結果より実施例1(1)の培地を用いた本発明検査法は簡易であるにもかかわらず従来法のNGKG寒天培地と同等の性能を有していることが確認できた。
【0032】
試験例2
試験例1において、試験菌液1mL及び卵黄液0.3mLを混合し、実施例1(1)の培地に滴下した。その後、試験例1と同様に培養し、コロニーを観察したところ、試験例1と同様の結果が得られた。
【0033】
試験例3
試験例1において、卵黄液0.3mLを添加し、その60秒後に試験菌液1mLを実施例1(1)の培地に滴下した。その後、試験例1と同様に培養したところ、卵黄液の拡散が不十分であり、卵黄液の行き渡らなかった部分に卵黄反応を生じないセレウス菌のコロニーを認めた。
【0034】
【発明の効果】
本発明のセレウス菌検査法により、煩雑な培地調製の必要がなく、検査自体も簡便で経験と労力を必要としない検査が可能となった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡易培地により簡便かつ正確に食品や環境中のセレウス菌を検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セレウス菌(Bacillus cereus)は、河川、土の中など、自然界に広く分布しており、食中毒の原因菌として知られている。セレウス菌は、増殖に伴って、嘔吐型毒素と下痢型毒素を産生し、セレウス菌による食中毒の症状は嘔吐及び下痢である。また、セレウス菌の毒素は熱に強く、特に嘔吐型毒素は126℃で90分加熱してもこわれにくいため集団食中毒を起こしやすい。
【0003】
このようにセレウス菌の検出は、食品衛生法に基づく検査項目として重要であり、従来、セレウス菌検出のための検査法としては、NGKG寒天培地などが一般的に使用されてきた。NGKG寒天培地はセレウス菌の選択分離培地で、培地上に発育したセレウス菌は卵黄反応陽性と特徴的なコロニーにより鑑別される。このとき卵黄反応の有無はセレウス菌を鑑別する上で重要な要素となっている。
【0004】
従来法のNGKG寒天培地は培地調製の際に卵黄を添加する必要があり、この卵黄を添加する操作は煩雑で経験を必要としていた。詳しくは、あらかじめ鶏卵から卵黄を無菌的に抽出し、滅菌した食塩水と混合しておき、培地を高圧蒸気滅菌後に45℃〜50℃に冷却したところに所定量の卵黄を加えて、シャーレに分注していた。このとき重要な点は、滅菌後の培地の温度を正確に制御しないと卵黄を添加したときに卵黄成分が変性したり、培地の寒天が固まったりする欠点があった。すなわち従来法は培地調製の操作が煩雑で経験や時間を必要としていた。また、従来の検査法では、試料を所定量培地に加えた後、コンラージ棒で培地全体に行き渡るように広げ、試料を培地に染み込ませる操作をするため、この塗沫接種は検査に労力と時間を必要とした。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題の多いNGKG寒天培地を用いない手段として、あらかじめ菌体栄養成分等を担持した吸水性シートからなる簡易乾燥培地の利用が考えられる。そこで、菌体栄養成分に加えて卵黄も担持した吸水性シートを調製すべく検討したところ、卵黄成分が変性し吸水性シートに担持できないため、簡易培地によるセレウス菌の検出はできなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、さらに検討したところ、全く意外にも、繊維状吸水性シートに水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分を担持してなる乾燥培地に、卵黄液を添加してから被検試料液を添加すると卵黄液の分散が十分でないのに対し、卵黄液を被検試料液と同時又は被検試料液添加後に添加すれば、被検試料液及び卵黄液が均一に吸水性シートに分散し、鑑別可能なコロニーが形成され、セレウス菌の検出が簡便かつ正確にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、繊維状吸水性シートに少なくとも水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分を担持してなる簡易乾燥培地に、被検試料液と同時に又は被検試料液添加後に卵黄液を添加して培養し、形成されるコロニーを検出することを特徴とするセレウス菌の検出方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のセレウス菌の検出方法に用いられる簡易乾燥培地は、繊維状吸水性シートに少なくとも水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分が担持されていればよく、例えば次の(1)〜(6)の簡易培地が挙げられる。
(1)防水性基体の上面部に、接着剤層、栄養成分を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順次積層した培地(特開昭57−502200号公報)。
(2)防水性基体の上面部に、空気透過性膜、栄養成分を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順次積層した培地(特開平3−15379号公報)。
(3)濾紙等に菌体栄養成分を含浸させ、その表面をカバーシートで覆ってなる検出紙(特開平2−65798号公報)。
(4)防水性平板の表面に冷水可溶性ゲル化剤と微生物培養基、繊維質吸水性シートを順次積層した培地(特開平6−181741号公報)。
(5)(a)水及びアルコールに可溶な接着剤、(b)水に可溶でアルコールに不溶なゲル化剤、及び(c)菌体栄養成分を含有する培地組成物を、該ゲル化剤より大きいメッシュを有する繊維状吸水性シートに担持させた簡易培地(特開平9−19282号公報)。
(6)(a)水及びアルコールに可溶な接着剤0.01〜0.4重量%、(b)水に可溶でアルコールに不溶なゲル化剤、及び(c)菌体栄養成分を含有するアルコール懸濁液を、防水性平板上に載置された該ゲル化剤の粒径より大きいメッシュを有する繊維質吸水性シートに含浸させ、これをアルコールの急速な蒸発を抑制しつつ乾燥して、吸水性シートを防水性平板に固着させてなる簡易培地(特開2000−325072公報)。
これらの簡易乾燥培地のうち、(5)及び(6)が好ましく、(6)が特に好ましい。
【0009】
ゲル化剤としては、水に可溶であればよいが、水に可溶でアルコールに不溶であるのが特に好ましく、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン等の天然ゲル化剤、ヒドロキシエチルセルロース等の合成ゲル化物質が挙げられるが、なかでもキサンタンガムが特に好ましい。かかるゲル化剤は、平均粒径500μm以下、特に0.5〜50μmの粉体を使用するのが好ましい。
【0010】
培地組成物に必要に応じて用いられる接着剤としては、水に可溶であるのが好ましく、水及びアルコールに可溶なものであることが特に好ましい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられるが、なかでもヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0011】
また、菌体栄養成分としては、検出しようとするセレウス菌の生育に適したものが選択される。例えば、肉エキスやペプトン等の栄養成分、糖類、及びセレウス菌以外の菌を抑制するための抗生剤を含有する培地成分が用いられる。
【0012】
更に、この培地組成物には、コロニーの観察を容易にするために、適当な発色剤を配合するのが好ましい。かかる発色剤には、コロニーを着色する色素、例えばトリフェニルテトラゾリウムクロライド、3−(p−ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロマイド等の色素;5−ブロモ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド等の酵素基質;フェノールレッド、ブロムチモールブルー、ニュートラルレッド、ブロムクレゾールパープル、メチルレッド等のpH指示薬などが含まれる。
【0013】
培地組成物を懸濁するためのアルコールとしては、例えばエタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
【0014】
上記培地組成物を担持させる繊維質吸水性シートは、接種された被検液が毛細管現象により容易に拡散し、かつ培地組成物中のゲル化剤をその網目構造中に担持できるものであることが必要である。そのためには、繊維質吸水性シートはゲル化剤の粒径よりも大きいメッシュを有し、かつ厚さも当該粒径より厚いことが必要であり、例えば、網目の大きさが15〜100メッシュ、特に20〜50メッシュで、厚さが10〜1000μm、特に50〜600μmのものが好ましい。
【0015】
このような繊維質吸水性シートとしては、レーヨン不織布に代表される合成繊維不織布、コットン不織布に代表される天然繊維不織布等が挙げられる。これらのシートの形状は特に制限されず、正方形、長方形、円形等の何れであってもよい。またその大きさも特に制限されないが、微生物の簡易検出用の場合には長径1〜15cmのものが好ましい。
【0016】
上記繊維質吸水性シートを固着させる防水性平板としては、プラスチック、ガラス等の防水性の材質のものであれば何れでもかまわないが、外部からの観察のため透明のものが好ましい。
【0017】
本発明方法においては卵黄液を、被検試料液と同時に、又は被検試料液添加後に簡易培地に添加する。ここで卵黄液としては、鳥の卵黄水溶液、特にニワトリの卵黄水溶液が好ましい。なお、当該卵黄液には、安定化剤として無機塩、特に塩化ナトリウムを含有させるのが好ましい。無機塩の濃度は、0.1〜20重量%、特に0.1〜10重量%が好ましい。
【0018】
卵黄液調製に用いる卵黄は、放射線滅菌、例えばガンマ線や電子線、特に表面線量5〜20kGyのガンマ線照射により滅菌するのが好ましい。また、卵黄液中の卵黄濃度は吸水性シートへの分散性の点から5〜30重量%、特に5〜20重量%とするのが好ましい。
【0019】
卵黄液と被検試料液を同時に添加する場合には、予め両者を混合して添加してもよいし、添加直前に両者を混合してもよい。被検試料液添加後に卵黄液を添加する場合は、被検試料液添加直後、例えば10分以内、特に5秒以内に添加するのが好ましい。被検試料液と卵黄液の添加量は、容量比で被検試料液:卵黄液=10:1〜10:5が好ましい。
【0020】
被検試料液としては、食品懸濁液、調理場や調理器具等の環境ふき取り検体あるいは増菌用培地で培養した培養液、土壌懸濁液、河川水、飲料水等が用いられる。
【0021】
これらの被検試料液及び卵黄液の接種(添加)は通常ピペット等により一定量を接種する方法が採用される。
【0022】
被検試料液及び卵黄液添加後培養し、形成されるコロニーを検出すればセレウス菌が検出できる。培養は28〜32℃で18〜24時間、静置して好気的に行うのが好ましい。
【0023】
前記の如く簡易培地に被検試料液及び卵黄液を接種すると、これらの液がメッシュ間の立体的な空洞部の毛細管現象によって容易に拡散し、それに続いて膨潤ゲル化が起こって、被検試料液中のセレウス菌は捕捉され、自由移動が抑制され、培養によって卵黄反応が生起し、セレウス菌のコロニーが形成される。従って、培地形成面を観察すれば、形成したコロニーが容易に観察できる。被検試料液及び卵黄液を定量的に簡易培地へ接種すれば、培養後出現したコロニーを計測することにより、容易に菌数を算定することができる。
【0024】
【実施例】
実施例1
(1)培地の作製
塩化ナトリウム5g、肉エキス5g、乳糖10g、ペプトン20g、グリシン10g、硫酸ポリミキシンB80万U、フェノールレッド0.05g及びキサンタンガム30gをヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1gを含有するエタノール溶液1000mLに加え、懸濁液とした。このエタノール懸濁液を1mLずつ繊維質吸水性シート(50φmm)を収納した容器(50φmm)に分注した後、乾燥させ、蓋をして簡易培地を作製した。本培地を乾燥剤とともにアルミ包材に密封包装した後、表面線量10〜20kGyのガンマ線照射を行って滅菌した。
【0025】
(2)卵黄液の調製
卵黄をポリ容器に密封し、表面線量5〜20kGyのガンマ線照射を行って滅菌した。これを121℃で15分高圧蒸気滅菌した10重量%塩化ナトリウム水溶液に終濃度13%となるように無菌的に加え、滅菌済みプラスチック容器に分注し、卵黄液とした。
【0026】
(3)菌株の供試
供試菌株をトリプトソイブイヨンで24時間前培養したものを生理食塩水で10倍段階希釈して1mLを培地に供試した。
【0027】
比較例
従来法のNGKG寒天培地を比較対照とした。
【0028】
試験例1
実施例1の培地に試験菌液1mLを加えた直後、卵黄液0.3mLを滴下した。蓋をした後30℃で24時間培養した。同様に比較対照としてNGKG寒天培地に試験菌液0.1mLを加え、コンラージ棒で塗沫接種し、30℃で24時間培養した。
その結果を表1及び2に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1及び2の結果より実施例1(1)の培地を用いた本発明検査法は簡易であるにもかかわらず従来法のNGKG寒天培地と同等の性能を有していることが確認できた。
【0032】
試験例2
試験例1において、試験菌液1mL及び卵黄液0.3mLを混合し、実施例1(1)の培地に滴下した。その後、試験例1と同様に培養し、コロニーを観察したところ、試験例1と同様の結果が得られた。
【0033】
試験例3
試験例1において、卵黄液0.3mLを添加し、その60秒後に試験菌液1mLを実施例1(1)の培地に滴下した。その後、試験例1と同様に培養したところ、卵黄液の拡散が不十分であり、卵黄液の行き渡らなかった部分に卵黄反応を生じないセレウス菌のコロニーを認めた。
【0034】
【発明の効果】
本発明のセレウス菌検査法により、煩雑な培地調製の必要がなく、検査自体も簡便で経験と労力を必要としない検査が可能となった。
Claims (4)
- 繊維状吸水性シートに少なくとも水可溶性ゲル化剤及び菌体栄養成分を担持してなる簡易乾燥培地に、被検試料液と同時に又は被検試料液添加後に卵黄液を添加して培養し、形成されるコロニーを検出することを特徴とするセレウス菌の検出方法。
- 簡易乾燥培地が、(a)水及びアルコールに可溶な接着剤、(b)水に可溶でアルコールに不溶なゲル化剤、及び(c)菌体栄養成分を含有する培地組成物を、該ゲル化剤より大きいメッシュを有する繊維状吸水性シートに担持させた簡易培地である請求項1記載のセレウス菌の検出方法。
- 簡易乾燥培地が、(a)水及びアルコールに可溶な接着剤0.01〜0.4重量%、(b)水に可溶でアルコールに不溶なゲル化剤、及び(c)菌体栄養成分を含有するアルコール懸濁液を、防水性平板上に載置された該ゲル化剤の粒径より大きいメッシュを有する繊維質吸水性シートに含浸させ、これをアルコールの急速な蒸発を抑制しつつ乾燥して、吸水性シートを防水性平板に固着させてなる簡易培地である請求項1記載のセレウス菌の検出方法。
- 卵黄液が、放射線滅菌された卵黄から得られた卵黄液である請求項1〜3のいずれか1項記載のセレウス菌の検出方法。
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---|---|---|---|
JP2002233673A JP2004073008A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | セレウス菌の検出方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015126756A (ja) * | 2015-04-10 | 2015-07-09 | 栄研化学株式会社 | 卵黄液による発色反応および/または蛍光発色反応増強作用 |
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2002
- 2002-08-09 JP JP2002233673A patent/JP2004073008A/ja active Pending
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