以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施の形態)
以下に,本発明の第1の実施形態にかかる高圧液噴射式切断装置について説明する。なお,本実施形態にかかる高圧液噴射式切断装置は,例えば,以下に説明するように,研磨材が混入された高圧水の噴流(アブレシブジェット)によって被加工物を切断するウォータージェット切断装置として構成されているが,本発明はかかる例に限定されるものではない。
まず,図1に基づいて,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100の全体構成について概略的に説明する。なお,図1は,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100は,被加工物35に対して,研磨材を含む高圧水を噴射することにより,被加工物35を比較的自由な切断ラインで高精度に切断加工(即ち,ウォータージェット加工)することが可能な切断装置である。このウォータージェット切断装置100による切断対象である被加工物35は,例えば,シリコンウェハ,パッケージ化された半導体基板(例えばCSP基板)等の各種の半導体基板などであるが,かかる例に限定されない。
かかるウォータージェット切断装置100は,例えば,高圧液供給手段10と,研磨材混合手段20と,噴射ノズル30と,保持テーブル40と,テーブル移動手段42と,キャッチタンク50と,研磨材回収手段60とを主に備える。
高圧液供給手段10は,例えば,後述する高圧ポンプおよびモータなどで構成されており,外部から供給された水を加圧して,例えば600〜700バール(1バール=約1.02kgf/cm2)の高圧水を発生させて供給することができる。外部から供給される水は,例えば水道水であるが,かかる例に限定されず,純水等であってもよい。高圧液供給手段10によって発生された高圧水は,高圧流体を運搬するための配管である高圧管11を介して研磨材混合手段20に供給される。
研磨材混合手段20は,後述する複数の研磨材混合液貯留タンクおよび圧力調整手段などで構成され,研磨材(砥粒)と水とが混合された研磨材混合水を貯留している。この研磨材混合手段20は,高圧液供給手段10から供給された高圧水に,所定の割合で研磨材を混合し,この研磨材が混合された高圧水を噴射ノズル30に送出する。この研磨材は,例えば,ガーネット,酸化アルミナ,炭化ケイ素,ダイヤモンド等の高硬度の材質からなり,粒径が例えば数十〜数百μm程度の粒状物であり,高圧水の切断効率を高める機能を有する。本実施形態では,この研磨材として,例えば,粒径が40〜100μmの酸化アルミナが使用される。かかる研磨材が混合された高圧水(以下,「高圧の研磨材混合水」ともいう。)は,研磨材混合手段20から高圧管21を介して噴射ノズル30に供給される。
噴射ノズル30は,高圧液を噴射する高圧液噴射手段の一例として構成されており,例えば,ノズル管31と,オリフィス32とからなる。この噴射ノズル30には,上記研磨材混合手段20から高圧管21を介して,高圧の研磨材混合水が供給される。噴射ノズル30は,例えば,この高圧の研磨材混合水を,保持テーブル40に保持されている被加工物35に対して上方から高速で噴射する。
この噴射ノズル30は,例えば,ノズル固定部材(図示せず。)によって,ウォータージェット切断装置100本体に対して安定的に固定される。また,噴射ノズル30は,例えば,昇降機構(図示せず。)によって,Z軸方向(垂直方向)に上下動可能に構成されている。これにより,被加工物35の種類,厚さ,表面の凹凸等に応じて,噴射ノズル30の先端と被加工物35との距離を調整できる。
また,図1内の部分拡大図に示すように,噴射ノズル30のノズル管31の先端には,高圧水の噴出径を縮小化するためのオリフィス32が装着されている。このオリフィス32は,例えば,先端に所定の微細径の噴出口321が形成されたオリフィス本体322と,このオリフィス本体322を覆うように設けられ,ノズル管31の先端部にネジ止めされるオリフィスカバー323とを備える。このオリフィスカバー323をネジ止めすることにより,オリフィス本体322が噴射ノズル30の先端に固定される。
かかる噴射ノズル30から噴射される高圧水噴流(即ち,ウォータージェット)Jの流速は,例えば音速の約2〜3倍である。また,この噴射ノズル30の先端と被加工物35表面との距離は,例えば50μm〜1mmであり,双方が極力近くなるように調整される。このように噴射ノズル30と被加工物35を接近させることで,噴射された高圧水噴流Jの拡散を極力抑え,被加工物35の切断幅が広くなってしまうことを防止できる。また,噴射ノズル30の口径(噴出口321の径)は例えば約250μmであり,この場合,被加工物35の切断幅は,例えば300μm程度となる。
このようにして,噴射ノズル30によって,研磨材混合水の噴流であるウォータージェットJを,被加工物35に対して噴射することにより,高圧水のエネルギーによって被加工物35を切断することができる。このとき,研磨材は,高圧水とともに被加工物35に衝突して被加工物35の一部を破壊して切削するので,切断能率を向上させることができる。このように,本実施形態にかかるウォータージェットJは,アブレシブジェットとして構成されている。
保持テーブル40は,被加工物を保持する被加工物保持手段の一例として構成されている。この保持テーブル40は,例えば,ステンレス等の硬質な金属で形成された板状部材であり,被加工物である被加工物35を保持・固定する。この保持テーブル40には,被加工物35が固定される部分に,ウォータージェットJを通過させるための開口部であるテーブル窓401が形成されている。このテーブル窓401は,例えば,被加工物35に対応した形状(例えば略矩形状)を有しており,その大きさは被加工物35の外形よりも若干小さい。かかるテーブル窓401の上部に被加工物35を配置し,被加工物35の外周部をカバーまたは係止爪等(図示せず。)で固定することにより,保持テーブル40に対して被加工物35が固定される。また,上記噴射ノズル30が噴射したウォータージェットJは,このテーブル窓401の部分を通過するため,ウォータージェットJによって保持テーブル40自体が切断されてしまうことはない。
なお,例えば,保持テーブル40のテーブル窓401の部分に,被加工物35を下方から支持する平板状の支持部材(治具)を取り付けてもよい。この支持部材を設けることにより,切断時の高圧水の圧力による被加工物35の変形を防止して,加工精度を向上させることができる。
また,本実施形態では,上記テーブル窓401を有する保持テーブル40によって被加工物35を保持・固定しているが,かかる例に限定されず,例えば,各種の載置台,治具,保持器具などで構成された被加工物保持手段によって,被加工物35を保持・固定してもよい。
テーブル移動手段42は,例えば,電動モータ,ギヤ等の駆動機構などで構成されており,上記保持テーブル40を水平方向(X軸およびY軸方向)に移動させる。このようなテーブル移動手段42によって保持テーブル40をX軸およびY軸方向に移動させることにより,保持テーブル40によって保持されている被加工物35を噴射ノズル30に対してX軸およびY軸方向に相対移動させることができる。これにより,被加工物35に対するウォータージェットJの噴射位置(切断箇所)を変更して,被加工物35を連続的なラインで切断することができる。この切断時の被加工物35の送り速度は,切断される被加工物35の厚さや材質によって異なるが,例えば20mm/秒である。なお,テーブル移動手段42の構成は,上記例に限定されるものではなく,被加工物35を水平方向に移動可能な構成であれば,多様に設計変更可能である。
キャッチタンク50は,例えば,上面が開放された縦長の貯水槽である。このキャッチタンク50は,例えば,上記保持テーブル40の下側であって,噴射ノズル30の直下に設けられる。このキャッチタンク50は,その内部に所定の高さまで研磨材を含む水を貯留しており,この水面の高さを一定に保つために,キャッチタンク50に対する水の供給及び排出が制御されている。
かかるキャッチタンク50は,ウォータージェットJの受け水槽として機能する。即ち,キャッチタンク50は,貯留している水を緩衝材として,上記のようにして被加工物35を切断して貫通したウォータージェットJを,威力を弱めて受け止めることができる。このキャッチタンク50の底部には,上記のように受け止めた研磨材混合水に含まれる研磨材が,沈降して堆積する。また,キャッチタンク50の例えば側面底部側には,配管51が接続されており,この配管51を介して,キャッチタンク50内の研磨材および水が排出され,研磨材回収手段60に移送される。
研磨材回収手段60は,上記キャッチタンク50から配管51を介して移送された研磨材混合水から,再利用可能な所定範囲の粒径(例えば,30〜100μm)の研磨材を回収して,研磨材混合手段20に移送する。この研磨材回収手段60は,上記再利用可能な粒径の研磨材を通過させる研磨材回収フィルタ(図示せず。詳細は後述する。)を備えており,この研磨材回収フィルタを通過する研磨材を回収して貯留しておき,この回収された研磨材を含む研磨材混合水を,配管61を介して研磨材混合手段20に移送する。また,上記研磨材回収フィルタを介して回収されなかった研磨材を含む研磨材混合水は,例えば,排水管62を介して外部に排出される。
以上のような構成のウォータージェット切断装置100は,噴射ノズル30からウォータージェットJを噴射しながら,当該噴射ノズル30に対して保持テーブル40をX軸およびY軸方向に相対移動させることにより,被加工物35の切断予定ラインに沿って,研磨材入りのウォータージェットJを作用させて,被加工物35を切断加工することができる。
このように,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置では,切断加工時に,噴射ノズル30を固定して,保持テーブル40により被加工物35を移動させる切断方式を採用している。かかる切断方式を採用することにより,噴射ノズル30の位置が固定されているため,キャッチタンク50を小型化して,設置面積を小さくできるとともに,移動機構の構成を簡略化できるという利点がある。しかし,かかる例に限定されず,保持テーブル40を固定して,噴射ノズル30を移動させて切断を行ってもよい。
また,上記ウォータージェット切断装置100は,研磨材混合手段20,キャッチタンク50,研磨材回収手段60などを用いて,切断加工に適切な粒径の研磨材を装置内で循環させて自動的に再利用することができる。これにより,人手をかけずに研磨材を再利用して利用効率を高めるとともに,高圧液供給手段10を停止させることなく連続した切断加工が可能となるため,生産性を向上できる。
次に,図2に基づいて,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100において,研磨材を自動的に再利用するための循環構造について詳細に説明する。なお,図2は,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100において,研磨材を自動的に再利用するための循環構造を示す説明図である。
図2に示すように,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100では,研磨材は,基本的には,(1)研磨材混合液貯留タンク22a,22b→(2)噴射ノズル30→(3)キャッチタンク50→(4)研磨材回収手段60→(5)研磨材混合液貯留タンク22a,22bという経路で循環して再利用される。以下に,かかる研磨材再利用のための循環経路を構成する各部について詳述する。
まず,高圧ポンプ15について説明する。高圧ポンプ15は,上述した高圧液供給手段10の一構成例であり,外部給水から高圧水を発生させ,この高圧水を,高圧管11,高圧マニフォールド配管1および高圧液供給用配管12a,12bを介して,研磨材混合液貯留タンク22a,22b(以下,「研磨材混合液貯留タンク22」と総称する場合もある。)に供給する。
次に,研磨材混合手段20について説明する。研磨材混合手段20は,例えば,2つの研磨材混合液貯留タンク22a,22bと,合流部23と,各研磨材混合液貯留タンク22a,22bに対応して設けられた各種配管(高圧マニフォールド配管1,高圧液供給用配管12a,12b,研磨材混合液送出管13a,13b,高圧管14a,14b等),これらの配管を開閉するバルブ3a,4a,5a,7a,8a,3b,4b,5b,7b,8bおよびオリフィス17a,18a,17b,18bと,各研磨材混合液貯留タンク22a,22bにそれぞれ対応する第1および第2の圧力調整手段70a,70b(以下,「圧力調整手段70」と総称する場合もある。)と,を備える。
研磨材混合液貯留タンク22a,22bは,外部から密閉された耐高圧容器で構成されており,研磨材が混合された水(研磨材混合水)を貯留する。この研磨材混合液貯留タンク22a,22bは,上記高圧ポンプ15から,高圧液供給用配管12a,12b等を介して高圧水が供給され,また,上記研磨材回収手段60から,配管61a,61bを介して,回収された研磨材を含む研磨材混合水が供給される。この研磨材混合液貯留タンク22の底部には,水より比重の大きい研磨材が沈降して堆積する。
合流部23は,研磨材混合液送出管13a,13bを介して2つの研磨材混合液貯留タンク22a,22bとそれぞれ接続され,高圧管21を介して噴射ノズル30と接続されている。この合流部23は,2つの研磨材混合液貯留タンク22a,22bから送出された研磨材混合水を,高圧管21を介して噴射ノズル30に供給する。
高圧マニフォールド配管1は,高圧ポンプ15から高圧管11を介して供給された高圧水を分岐させて,高圧液供給用配管12a,12b,高圧管14a,14b,および圧力調整手段70a,70bの加圧用配管71a,71bに供給する。
高圧液供給用配管12a,12bは,高圧ポンプ15と,研磨材混合液貯留タンク22a,22bとを連通し,高圧水を研磨材混合液貯留タンク22a,22bに供給するための高圧管である。具体的には,高圧液供給用配管12a,12bは,その流入口側の端部が上記高圧マニフォールド配管1に接続され,その流出口側の端部が研磨材混合液貯留タンク22a,22bの底部に配置されている。この高圧液供給用配管12a,12bの中途には,高圧液供給用配管12a,12bを開閉するバルブ3a,3bと,高圧液供給用配管12a,12b内を流れる高圧水の流量を規制するオリフィス18a,18bとが設けられている。このバルブ3a,3bの開放時には,高圧ポンプ15からの高圧水が,高圧液供給用配管12a,12bを介して研磨材混合液貯留タンク22a,22b内の底部に供給される。この結果,研磨材混合液貯留タンク22a,22bの底部の研磨材混合水が攪拌され,堆積していた研磨材が水中に浮遊した状態となる。
研磨材混合液送出管13a,13bは,研磨材混合液貯留タンク22a,22bと,噴射ノズル30とを連通し,研磨材混合液貯留タンク22a,22bに貯留されている研磨材混合水を噴射ノズル30に供給するための高圧管である。具体的には,研磨材混合液送出管13a,13bは,その流入口側の端部が研磨材混合液貯留タンク22a,22bの底部において上記高圧液供給用配管12a,12bの流出口と隣接して配置され,その流出口側の端部が上記合流部23に接続されている。この研磨材混合液送出管13a,13bの中途には,研磨材混合液送出管13a,13bを開閉するバルブ5a,5bが設けられている。このバルブ5a,5bの開放時には,上記高圧液供給用配管12a,12bを介して研磨材混合液貯留タンク22a,22b内に供給された高圧水の圧力によって,研磨材混合液貯留タンク22a,22b内の研磨材混合水が,研磨材混合液送出管13a,13bに流入して,噴射ノズル30に送出される。このとき,高圧液供給用配管12a,12bの流出口および研磨材混合液送出管13a,13bの流入口が研磨材混合液貯留タンク22a,22bの底部に隣接して配置されているため,研磨材が均等な混合密度で混合された状態の研磨剤混合液が継続的に送出される。
高圧管14a,14bは,その流入口側の端部が上記高圧マニフォールド配管1に接続され,その流出口側の端部が上記研磨材混合液送出管13a,13bの中途に連結されている。この高圧管14a,14bの中途には,高圧管14a,14bを開閉するバルブ4a,4bと,高圧管14a,14b内を流れる高圧水の流量を規制するオリフィス17a,17bとが設けられている。かかる高圧管14a,14bおよびバルブ4a,4b等を設けることによって,必要に応じて,研磨材混合液送出管13a,13b内に高圧水を流して,加工後に研磨材混合液送出管13a,13b内で乾燥して固着している研磨材を洗浄して除去できる。
配管61とこの配管61から分岐した配管61a,61bは,各研磨材混合液貯留タンク22a,22bと研磨材回収手段60とを連通する配管である。配管61の中途には,正圧ポンプ69が設けられており,また,配管61a,61bの中途にはバルブ7a,7bがそれぞれ設けられている。また,配管612とこの配管612から分岐した配管612a,612bは,各研磨材混合液貯留タンク22a,22bと研磨材回収手段60とを連通する配管である。配管612a,612bの中途にはバルブ8a,8bがそれぞれ設けられている。
これにより,バルブ7a,8aまたはバルブ7b,8bの開放時には,上記正圧ポンプ69の動力によって,研磨材回収手段60から,回収された研磨材を含む研磨材混合液を,配管61,61a,61bを介して,高圧ポンプ15からの高圧水が供給されていない研磨材混合液貯留タンク22aまたは22bに移送して,研磨材を補充できる。さらに,当該研磨材混合液貯留タンク22aまたは22b内の水を,配管612a,612b,612を介して研磨材回収手段60に戻すことができる。
以上のような構成の研磨材混合手段20により,高圧ポンプ15から供給された高圧水の圧力によって,いずれか一方の研磨材混合液貯留タンク22に貯留されている研磨材混合水を高圧で押し出して,研磨材混合液送出管13a,13bおよび高圧管21を介して噴射ノズル30に送出して,切断加工に利用することができる。このとき,他方の研磨材混合液貯留タンク22では,研磨材回収手段60によって回収された研磨材が補充され,当該研磨材を貯留しておくことができる。
そして,切断加工に使用されている一方の研磨材混合液貯留タンク22内の研磨材貯留量が所定レベル以下に減少した場合には,切断加工のために研磨材混合水を送出する研磨材混合液貯留タンク22と,研磨材が補充される研磨材混合液貯留タンク22とを切り替えて,上記と同様にして,噴射ノズル30に対する研磨材混合水の供給と,研磨材回収手段60からの研磨材の補充とを同時並行で行う。これにより,高圧の研磨材混合水を,噴射ノズル30に安定して連続供給することができる。なお,3つ以上の研磨材混合液貯留タンク22を設けて,これらを切り替えて使用してもよい。
このような研磨材混合液貯留タンク22の切替を好適に行うために,各研磨材混合液貯留タンク22a,22b内の水圧を加圧/減圧する第1及び第2の圧力調整手段70a,70bが,各研磨材混合液貯留タンク22a,22bに対応してそれぞれ設けられている。この第1および第2の圧力調整手段70a,70bは,本実施形態にかかる特徴的構成要素であり,詳細については後述する。
次に,キャッチタンク50について説明する。キャッチタンク50は,上述したように,噴射ノズル30から噴射され,被加工物35を切断して貫通した高圧の研磨材混合水の噴流(ウォータージェットJ)を,貯留水を緩衝材として受け止める。このキャッチタンク50の底部に堆積した研磨材は,第1の移送手段によって,研磨材回収手段60に移送される。この第1の移送手段は,キャッチタンク50の底部と研磨材回収手段60とを連通する配管51と,この配管51の中途に設けられ,上記研磨材混合水の移送動力源となる第1の正圧ポンプ59とで構成される。
次に,研磨材回収手段60について説明する。研磨材回収手段60は,キャッチタンク50から移送された研磨材混合水から,研磨材を回収して再利用するための装置である。この研磨材回収手段60は,図2に示すように,概略的には,研磨材回収容器64と,研磨材貯留容器66と,研磨材回収容器64の底部と研磨材貯留容器66の上部とを連結する連結部65とから構成される。
研磨材回収容器64は,再利用可能な研磨材を回収するための密閉型の容器であり,その内部には,研磨材回収フィルタ67が略水平に設けられている。この研磨材回収フィルタ67は,例えば,複数の微細孔が形成されたステンレス製の金網などで構成され,所定の粒径(例えば100μm)以下の研磨材を通過させることが可能な目開き寸法を有する。また,研磨材回収容器64の上部には,研磨材回収容器64を振動させて研磨材回収フィルタ67の目詰まりを改善するための振動発生手段として,例えば振動モータ63が設置されている。
この研磨材回収容器64の上部空間(研磨材回収フィルタ67より上側の空間)は,研磨材を回収するための流路を構成しており,一側端には,上記キャッチタンク50と連通する配管51が接続され,他側端には,外部に不要な研磨材混合水を排水するための排水管62が接続されている。このため,キャッチタンク50から移送された研磨材混合液は,配管51から研磨材回収容器64の上部空間内に流入し,所定の流速(例えば8リットル/分)で研磨材回収フィルタ67上を流れて,排水管62から排出される。
かかる構成により,キャッチタンク50から移送された研磨材混合水に含まれる再利用可能な所定範囲(例えば30〜100μm)の粒径を有する研磨材のみが,研磨材回収フィルタ67を通過して,下方に落下して回収される。具体的には,研磨材回収容器64の上部を流れる研磨材混合水の流速によって,過度に小さい研磨材(粒径が例えば30μm未満)は,研磨材回収フィルタ67を通過することなく水流に乗って,排水管62から排出される。また,過度に大きい研磨材(粒径が例えば100μmより大)は,研磨材回収フィルタ67を通過できないため,排水管62から排出される。このため,粒径が切断加工に適切な所定範囲(例えば30〜100μm)にある大きさの研磨材のみが,研磨材回収フィルタ67を通過して回収される。一方,上記所定範囲外の粒径の研磨材を含む研磨材混合水は,排水管62を介して排出される。これは,過度に小さい研磨材は再利用しても研磨に寄与できず,過度に大きい研磨材は噴射ノズル30が詰まる原因となるので,再利用すべきではないからである。
また,研磨材回収容器64の下部空間(研磨材回収フィルタ67より下側の空間)は,例えば,上記研磨材回収フィルタ67を通過して回収された研磨材を集めるような漏斗形状を有している。回収された研磨材は,この下部空間から管状の連結部65を通過して研磨材貯留容器66に落下する。
研磨材貯留容器66は,上記のようにして研磨材回収フィルタ67から回収された研磨材を含む研磨材混合水を貯留する密閉型の容器である。この研磨材貯留容器66の底部に堆積した研磨材を含む研磨材混合水は,第2の移送手段によって,2つの研磨材混合液貯留タンク22のうち,高圧ポンプから高圧水が供給されていない方(切断加工に使用されていない方)の研磨材混合液貯留タンク22に移送される。この第2の移送手段は,研磨材貯留容器66の底部と研磨材混合液貯留タンク22とを連通する配管61,61a,61bと,この配管61の中途に設けられ,上記研磨材混合水の移送動力源となる第2の正圧ポンプ69と,研磨材混合液貯留タンク22から研磨材貯留容器66に水を戻すための配管612,612a,612bと,バルブ7a,7b,8a,8bとで構成される。
また,研磨材貯留容器66の上部には,研磨材貯留容器66内の研磨材の堆積量(貯留量)を計測するための測定センサ,例えば超音波センサ68が取り付けられている。この超音波センサ68による計測結果によって,研磨材貯留容器66内に研磨材が十分に堆積したと判断された場合に,研磨材貯留容器66から研磨材混合液貯留タンク22に研磨材混合水が移送される。これにより,研磨材貯留容器66内で過度に多くの研磨材が堆積してしまうことや,逆に,研磨材が十分に堆積していないにもかかわらず,移送動作を行ってしまうことを防止できる。
このように,研磨材回収手段60は,キャッチタンク50から移送された研磨材混合水から,切断加工に適切な所定範囲の粒径(例えば30〜100μmの範囲)を有する研磨材のみを回収して研磨材貯留容器66に貯留し,その後,研磨材混合液貯留タンク22に,回収した研磨材を移送して補充する。
以上のように,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置10は,一度使用した研磨材を回収し,回収した研磨材を再び研磨材混合液貯留タンク22に補充するようにして,研磨材を循環させて再利用することができる。これによって,研磨材を有効利用して,生産効率の向上および生産コストの低減を図ることができる。
ところで,切断加工に使用された後の高圧状態の研磨材混合液貯留タンク22に,研磨材を補充するためには,当該研磨材混合液貯留タンク22内の圧力を減圧する必要がある。また,研磨材が補充された後の低圧状態(例えば大気圧状態)の研磨材混合液貯留タンク22に,高圧水を供給開始するためには,急激な高圧水の負荷によってバルブ3a,3b,5a,5b等が破損しないように,当該研磨材混合液貯留タンク22内の圧力を徐々に加圧する必要がある。
このため,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100では,切断加工を継続したままの状態で,高圧ポンプ15を停止させることなく,研磨材混合液貯留タンク22a,22bの使用を切り替えるため,研磨材混合液貯留タンク22内を徐々に減圧および加圧可能な圧力調整手段70が設けられている。この圧力調整手段70は,切断加工時における高圧水の供給および研磨材混合水の送出に伴って研磨材混合液貯留タンク22内を加圧/減圧する作用を奏する高圧液供給用配管12a,12bおよび研磨材混合液送出管13a,13bとは別途に,研磨材混合液貯留タンク22内を徐々に加圧/減圧するために追加設置されるものである。
以下に,この圧力調整手段70について詳述する。なお,以下では,研磨材混合液貯留タンク22aに対応して設けられている第1の圧力調整手段70aについて詳述し,研磨材混合液貯留タンク22bに対応して設けられている第2の圧力調整手段70bについては,第1の圧力調整手段70aと略同一の機能および構成を有するので,詳細説明は省略する。
図2に示すように,第1の圧力調整手段70a(以下,「圧力調整手段70a」という。)は,高圧ポンプ15からの高圧水を,流量を調整して研磨材混合液貯留タンク22aに供給することによって,研磨材混合液貯留タンク22a内を徐々に加圧する機能と,研磨材混合液貯留タンク22a内の高圧の研磨材混合水を,流量を調整して研磨材混合液貯留タンク22aから排出することによって,研磨材混合液貯留タンク22a内を徐々に減圧する機能とを有する。
この圧力調整手段70aは,加圧用配管71aと,加圧用バルブ2aと,減圧用配管72aと,減圧用バルブ6aと,連結部77aと,共通配管73a,74aと,流量調整手段80aと,圧力センサ75aと,研磨材流出防止用フィルタ76aとから構成される。
加圧用配管71aは,上述した高圧液供給用配管12aとは別途に,高圧ポンプ15と研磨材混合液貯留タンク22aとを連通させ,高圧ポンプ15からの高圧水を研磨材混合液貯留タンク22aに供給するための給水管である。具体的には,加圧用配管71aは,その流入口側の端部が上記高圧マニフォールド配管1に接続され,その流出口側の端部が後述する連結部77aに接続されている。この加圧用配管71aの中途には,加圧用配管71aを開閉するバルブ2aが設けられている。このバルブ2aの開放時には,高圧ポンプ15からの高圧水が,加圧用配管71a等を介して研磨材混合液貯留タンク22aに供給される。
減圧用配管72aは,上述した研磨材混合液送出用配管13aとは別途に,研磨材混合液貯留タンク22aと外部とを連通させ,研磨材混合液貯留タンク22a内の比較的高圧な水を外部に排出するための排水管である。具体的には,減圧用配管72aは,その流入口側の端部が後述する連結部77aに接続され,その流出口側の端部が外部の例えば排水処理装置(図示せず。)等に接続されている。この減圧用配管72aの中途には,減圧用配管72aを開閉するバルブ6aが設けられている。このバルブ6aの開放時には,研磨材混合液貯留タンク22a内の水が,減圧用配管72a等を介して外部に排出される。
連結部77aは,上記加圧用配管71aの研磨材混合液貯留タンク22a側の一端と,上記減圧用配管72aの研磨材混合液貯留タンク22a側の一端と,共通配管73aの研磨材混合液貯留タンク22aとは反対側の一端とを連結するT型の連結部材である。加圧用バルブ2aが開放され減圧用バルブ6aが閉鎖されているとき,高圧ポンプ15から供給され加圧用配管71a内を流れてきた高圧水は,この連結部77aを通って共通配管73aに流入する。一方,加圧用バルブ2aが閉鎖され減圧用バルブ6aが開放されているとき,研磨材混合液貯留タンク22aから排出され共通配管73a内を流れてきた水は,この連結部77aを通って減圧用配管72aに流入する。
共通配管73a,74aは,上記連結部77aと,研磨材混合液貯留タンク22aとを連通させる配管である。この共通配管73a,74aは,研磨材混合液貯留タンク22aに高圧水を供給する給水管,および研磨材混合液貯留タンク22aから水を排出する排水管の双方として機能する。この共通配管73a,74aの中途(図2の例では共通配管73aと74aとの間)には,流量調整手段80aが設けられている。
この流量調整手段80aは,加圧用バルブ2aが開放され減圧用バルブ6aが閉鎖されている時に,高圧ポンプ15から加圧用配管71aおよび共通配管73a,74aを介して研磨材混合液貯留タンク22aに供給される高圧水の流量を制限する。さらに,流量調整手段80aは,加圧用バルブ2aが閉鎖され減圧用バルブ6aが開放されている時に,研磨材混合液貯留タンク22aから共通配管73a,74aおよび減圧用配管72aを介して外部に排出される水の流量を制限する。
もし仮に,上記圧力調整手段70aに流量調整手段80aを設けることなく,単に加圧バルブ2aおよび減圧バルブ6aの開閉のみで,研磨材混合液貯留タンク22a内の圧力を調整しようとした場合には,バルブ2a,6aに高圧力が急激に加わるため,バルブ2a,6aが破損してしまう危険性がある。しかし,本実施形態のように,流量調整手段80aを設けることで,研磨材混合液貯留タンク22a内の圧力を,時間をかけて徐々に加圧/減圧できるため,バルブ2a,6aの破損を防止できる。
ここで図3に基づいて,流量調整手段80aの構成についてより詳細に説明する。図3は,本実施形態にかかる流量調整手段80aの構成を示す断面図である。
図3に示すように,流量調整手段80aは,流量調整用オリフィス85aと,上記共通管74aの端部が連結された第1のダンパ81aと,上記共通管73aの端部が連結された第2のダンパ82aとから構成される。
流量調整用オリフィス85aは,第1のダンパ81aと第2のダンパ82aの内部を連結する管86aの中央部を縮径するようにして設けられている。この流量調整用オリフィス85aは,管86a内を流れる水の流量を規制する。
また,第1のダンパ81aは,研磨材混合液貯留タンク22aの加圧時に,共通配管73aから第2のダンパ82a内に流入して流量調整用オリフィス85aを通過した高速の水流を受け止め,共通配管74aから排出させる。一方,第2のダンパ82aは,研磨材混合液貯留タンク22aの減圧時に,共通配管74aから第1のダンパ81a内に流入して流量調整用オリフィス85aを通過した高速の水流を受け止め,共通配管73aから排出させる。
かかる構成の流量調整手段80aは,研磨材混合液貯留タンク22aに供給される高圧水の流量,および研磨材混合液貯留タンク22aから排出される水の流量を,過大にならないように適正な流量に調整できる。従って,この流量調整手段80aを備えた圧力調整手段70aは,研磨材混合液貯留タンク22a内の水圧を徐々に加圧/減圧できる。
この圧力調整手段70aによる研磨材混合液貯留タンク22a内の水圧上昇速度および水圧低下速度は,上記流量調整用オリフィス85のオリフィス径で調節できる。この流量調整用オリフィス85のオリフィス径は,例えばφ0.1〜0.15mm程度であることが好ましい。
ただし,高圧水の圧力と研磨材混合液貯留タンク22a内の水圧との圧力差が,例えば70MPa程度と大きい場合(研磨材混合液貯留タンク22a内は例えば70MPaまで加圧され得る)には,流量調整用オリフィス85を通過する高圧水の流速が500m/sにも達する。このため,流量調整用オリフィス85は,サファイアなどの耐摩耗性に優れた材質で形成される。さらに,流量調整用オリフィス85を通過した高速度の水流は切削能力を有するため,当該水流を直ちに減速するための開角度θ(例えば8°)の円錐穴を有するダンパ81a,82aによって高圧水を受け止める。なお,流量調整用オリフィス85は,消耗した場合には,交換可能に構成されている。
以上,研磨材混合液貯留タンク22aに対応する第1の圧力調整手段70aに設けられた流量調整手段80aについて説明した。なお,研磨材混合液貯留タンク22bに対応する第2の圧力調整手段70bに設けられた流量調整手段80bも,上記流量調整手段80aと略同一の機能構成を有する。
また,図2に示すように,共通配管74aの中途には,研磨材混合液貯留タンク22a内の圧力を測定する圧力センサ75aが設けられている。
さらに,共通配管74aと研磨材混合液貯留タンク22aとの接続箇所(研磨材混合液貯留タンク22aの排出口)には,研磨材流出防止用フィルタ76aが設けられている。この研磨材流出防止用フィルタ76aは,例えば,上記流量調整手段80aの流量調整用オリフィス85のオリフィス径の例えば1/3程度の目開き寸法を有するステンレス製フィルタである。かかる研磨材流出防止用フィルタ76aを設置することにより,研磨材混合液貯留タンク22aの減圧時に,研磨材混合液貯留タンク22a,22bから,水とともに大粒径の研磨材が流出することを防止して,当該研磨材によって上記流量調整用オリフィス85が詰まってしまうことを防止できる。
以上,本実施形態にかかる圧力調整手段70について詳細に説明した。このような圧力調整手段70を設けることによって,高圧ポンプ15を停止しなくても,切断加工に使用された後の高圧状態の研磨材混合液貯留タンク22を徐々に減圧することができる。さらに,研磨材補充後の低圧状態の研磨材混合液貯留タンク22を徐々に加圧できるので,高圧ポンプ15の高圧水の負荷が急激に作用することによるバルブ2,6等の破損を防止できる。
次に,図4に基づいて,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100において,研磨材混合液貯留タンク22a,22bを切り替えながら,継続的に切断加工を実行する動作について説明する。なお,図4は,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100による切断加工時において,2つの研磨材混合液貯留タンク22a,22b内の水圧および研磨材貯留量の経時変化を示すタイミングチャートである。
図4に示すように,まず,期間(1)では,研磨材混合液貯留タンク22aが切断加工に使用されている。即ち,研磨材混合液貯留タンク22aには,高圧ポンプ15から高圧水が供給され,この高圧水の水圧によって研磨材混合液が噴射ノズル30に送出される。このとき,研磨材混合液貯留タンク22a内の水圧は所定の高圧に維持されており,研磨材混合液貯留タンク22a内の研磨材貯留量は時間の経過とともに減少する。
一方,この期間(1)では,研磨材混合液貯留タンク22bには,研磨材回収手段60から研磨材が補充される。このため,研磨材混合液貯留タンク22b内の水圧は,所定の低圧(例えば大気圧)に維持されており,研磨材混合液貯留タンク22b内の研磨材貯留量は時間の経過とともに増加している。
次いで,研磨材混合液貯留タンク22aの研磨材貯留量が減少した場合には,切断加工に使用される研磨材混合液貯留タンクを22aから22bに切り替えて(期間(2)〜(3)),研磨材混合液貯留タンク22bから噴射ノズル30に研磨材混合水を送出し,研磨材混合液貯留タンク22aには研磨材回収手段60から研磨材が補充されるようにする。
このように研磨材混合液貯留タンク22a,22bを切り替えるときには,まず,研磨材混合液貯留タンク22bを圧力調整手段70bにより加圧して(期間(2)),次いで,研磨材混合液貯留タンク22aのみならず研磨材混合液貯留タンク22bからも研磨材混合液を噴射ノズル30に送出した状態にした後に,バルブ3aを閉めて,研磨材混合液貯留タンク22aから噴射ノズル30への研磨材混合水の供給を停止する。これは,バルブ3aの閉鎖時に,バルブ3aに急激な負荷をかけないようにして,バルブ3aの破損を防止するためである。
この研磨材混合液貯留タンク22bから噴射ノズル30に研磨材混合水を供給する動作,および研磨材混合液貯留タンク22aからの研磨材混合水の供給を停止して研磨材を補充する動作は,より具体的には,次のような手順で行なわれる。
まず,バルブ2b〜8bが閉じている状態から,圧力調整手段70bの加圧用バルブ2bを開ける。これにより,高圧ポンプ15からの高圧水が圧力調整手段70bにより研磨材混合液貯留タンク22bに供給されて,研磨材混合液貯留タンク22b内の水圧が徐々に上昇する(期間(2))。
次いで,圧力センサ75bが所定の水圧を示した時点で,加圧用バルブ2bを閉じて圧力調整手段70bによる加圧を中止する。なお,加圧用バルブ2bを開放したままにしておいても,研磨材混合液貯留タンク22bを用いて切断加工を実行することは可能である。次いで,バルブ4bを開け,さらに,バルブ5bを開ける。これにより,高圧ポンプ15→バルブ4b→バルブ5bの経路で噴射ノズル30に向かって水が流れる。なお,バルブ4b,5bは同時に開けても良い。
このように加圧するのは,いきなりバルブ3bおよび5bを開放すると,急激に高圧な負荷がかかるために,バルブ3b,5bが破損してしまうからである。また,最初に水を流すのは,前回の切断加工時にバルブ5b付近に残留して乾燥・堆積した研磨材を,水によって押し流してしまうためである。
その後,バルブ3bを開けると,高圧液供給用配管12bから研磨材混合液貯留タンク22b内に高圧水が供給され,この圧力によって,研磨材混合液送出用配管13bを介して噴射ノズル30に研磨材混合液が送出される。
一方,研磨材が補充される研磨材混合液貯留タンク22a側では,上記のように研磨材混合液貯留タンク22bから研磨材混合水が噴射ノズル30に送出される状態になってから,バルブ3aを閉じる。
しかし,バルブ4aが開いているので,高圧ポンプ15→バルブ4a→バルブ5aの経路で噴射ノズル30に向かって水が流れており,この経路で所定時間(例えば数秒間)水を流してから,バルブ4aを閉じる。これはバルブ5a付近に堆積した研磨材を,水によって押し流すためである。
その後,バルブ5aを閉じてから,減圧用バルブ6aを開ける。これにより,圧力調整手段70aにより研磨材混合液貯留タンク22a内の水が外部に排出されて,研磨材混合液貯留タンク22a内の水圧が徐々に減少する(期間(3))。
さらに,このように減圧される研磨材混合液貯留タンク22aでは,圧力センサ75aが所定の低圧(例えば大気圧)の水圧を示した時点で,バルブ6aを閉めて,圧力調整手段70aによる減圧を中止する。
その後,研磨材混合液貯留タンク22aには,研磨材回収手段60から研磨材が補充される(期間(4))。具体的には,バルブ7aを開けて,研磨材回収手段60から研磨材混合液貯留タンク22aに研磨材混合水を移送するとともに,バルブ8aを開けて,研磨材混合液貯留タンク22a内の水を研磨材回収手段60に移送する。これによって,研磨材回収手段60の研磨材貯留容器66に負圧がかからないようにして,研磨材混合液貯留タンク22aに研磨材を補充できる。よって,研磨材貯留容器66に負圧がかかることにより,研磨材回収フィルタ67が研磨材で目詰まりしてしまうことを防止できる。
このようにして,期間(4)では,研磨材混合液貯留タンク22aに研磨材を補充することで,研磨材混合液貯留タンク22a内の研磨材貯留量は時間の経過とともに増加し,十分な貯留量が得られた時点で,バルブ7a,8aを閉めて補充動作は終了される。
一方,この期間(4)では,研磨材混合液貯留タンク22bから,噴射ノズル30に研磨材混合水が送出されて,切断加工が継続される。かかる研磨材混合水の送出によって,研磨材混合液貯留タンク22b内の研磨材貯留量は時間の経過とともに減少する。
その後,研磨材混合液貯留タンク22bの研磨材貯留量が所定レベル以下に減少した場合には,切断加工に使用される研磨材混合液貯留タンクを22bから22aに再び切り替えて(期間(5)および(6)),研磨材混合液貯留タンク22aから研磨材混合水を送出し,研磨材混合液貯留タンク22bには研磨材が補充されるようにする。この期間(5)および(6)における動作は,研磨材混合液貯留タンク22aと22bが逆になる点を除いては,上述した期間(2)および(3)における動作と同様であるので,詳細説明は省略する。
以上のような,期間(1)〜(6)における動作を繰り返すことで,2つの研磨材混合液貯留タンク22a,22bを切り替えながら,噴射ノズル30に研磨材混合水を連続供給して,切断加工を継続的に実行できる。
なお,高圧ポンプ15の起動を伴う場合には,いずれかの研磨材混合液貯留タンク22aまたは22bのバルブ2a,4a,5aまたは2b,4b,5bを開けてから高圧ポンプ15を起動させるようにする。
また,高圧ポンプ15の停止を伴う場合には,双方の研磨材混合液貯留タンク22aおよび22bのバルブ3aおよび3bを閉じた後に,高圧ポンプ15を停止し,双方の研磨材混合液貯留タンク22aおよび22bを,圧力調整手段70a,70bを用いて上記と同じ手順で減圧する。なお,この際,一方の研磨材混合液貯留タンク22aが既に減圧されている状態であれば,他方の研磨材混合液貯留タンク22bを減圧するだけでよい。
以上,本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100の構成および動作について詳細に説明した。本実施形態にかかるウォータージェット切断装置100では,噴射ノズル30に研磨材混合液を供給するための高圧液供給用配管12および研磨材混合液送出用配管13とは別途に,各研磨材混合液貯留タンク22内の水圧を加圧および減圧できる圧力調整手段70が設けられている。このため,噴研磨材混合液貯留タンク22の使用(切断加工のための使用,或いは研磨材の補充のための使用)を切り替える際に,高圧ポンプ15を停止しなくても,研磨材を補充しようとする研磨材混合液貯留タンク22内を徐々に減圧でき,切断加工に使用しようとする研磨材混合液貯留タンク22内を徐々に加圧できる。従って,一方の研磨材混合液貯留タンク22を用いた切断加工を連続的に実行しながら,他方の研磨材混合液貯留タンク22に研磨材を補充することが可能となる。
また,上記圧力調整手段70に,流量調整手段80を設けることによって,研磨材混合液貯留タンク22に供給/排出される水の流量を制御して,加圧/減圧するための高圧水の流速を調整できる。このため,圧力調整手段80の加圧用バルブ2や減圧用バルブ6に作用する高圧水の負荷を低減させ,加圧用バルブ2や減圧用バルブ6の破損を防止できる。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態および実施例について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば,被加工物35は,各種の半導体ウェハ,CSP基板,GPS基板,BGA基板等のパッケージ基板等の半導体基板などであってよい。また,被加工物は,サファイア基板,ガラス材,セラミックス材,金属材,プラスチック等の合成樹脂材,或いは,磁気ヘッド,レーザダイオードヘッド等を形成するための電子材料基板,などであってもよい。また,被加工物35の形状は,略矩形板形状,略円盤形状など任意の形状であってよい。
また,上記実施形態では,高圧液噴射式切断装置として,ウォータージェット切断装置100を採用した例について説明したが,本発明は,かかる例に限定されない。高圧液噴射式切断装置は,高圧液を噴射する高圧液噴射手段を備え,高圧液の噴射によって被加工物を切断加工できる装置であれば,多様に設計変更可能である。例えば,噴射および貯留する液体は,上記水の例に限定されず,アルコール,油などの任意の液体であっても良いし,或いは,各種の化学物質等を各種溶媒に溶解させた液体などであってもよい。また,研磨材混合液も,上記研磨材混合水の例に限定されない。
また,1台の高圧液噴射式切断装置に,高圧液噴射手段(噴射ノズル30等)とキャッチタンク50とを複数組設けることによって,1つの被加工物35のうちの複数箇所,或いは,複数の被加工物35を同時に切断加工できるように構成してもよい。この構成は,例えば,1つの金属フレーム上に複数のパッケージ部分が形成されているパッケージ基板などを切断する際に適用できる。
また,上記実施形態にかかる圧力調整手段70は,切断加工に使用される高圧ポンプ15からの高圧水を研磨材混合液貯留タンク22に供給することにより加圧したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,圧力調整手段70は,切断加工に使用される高圧ポンプ15とは別途に設けられた高圧液供給手段(例えば他の高圧ポンプ)からの高圧液を研磨材混合液貯留タンク22に供給して加圧してもよい。
また,上記実施形態にかかる流量調整手段80は,オリフィス85と,ダンパ81,82とから構成されたが,本発明はかかる例に限定されない。流量調整手段80は,研磨材混合液貯留タンク22に供給/排出される液体の流量を制御可能であれば,多様に設計変更可能である。
また,高圧ポンプ15,研磨材混合液貯留タンク22,噴射ノズル30および研磨材回収手段60を接続する各種の配管およびバルブの構成は,上記図2の例に限定されない。