JP4758886B2 - 固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法及び固体電解コンデンサ用陽極体 - Google Patents
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Description
図3に、固体電解コンデンサの構造を模式的に説明する断面図を示した。固体電解コンデンサ11は、アルミニウム等の金属からなる陽極層12が、酸化皮膜13と電解質層14とを介して陰極層15と対向する構造を有している。ここで、電子のやりとりは、陽極層12と接する酸化皮膜13及び電解質層14の界面を介して行われることから、より大容量のコンデンサとするためには、陽極層11と酸化皮膜13及び電解質層14との界面の表面積を大きくすることが有効である。
細孔を有する金属焼結体を製造する方法としては、例えば、アルミニウム等の弁作用金属の微粉末に、樟脳やアクリル系樹脂等を有機溶剤と混合したバインダを添加して混合し、その後、有機溶剤を揮発して除去した有機処理弁作用金属微粉末を用い、これをプレス加圧成型した後、真空中で高温加熱して焼結する方法が行われていた。しかしながら、この方法では、得られる金属焼結体の細孔の孔径が小さくなりすぎて、細孔内部にまで酸化皮膜や電解質層を形成しにくくなり、充分な表面積拡大効果が得られず、ひいては固体電解コンデンサの容量拡大効果が得られないという問題があった。
従って、充分な空隙を有しつつ、機械的強度の高い金属焼結体を得ることが可能な固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法が求められていた。
以下に本発明を詳述する。
一方、図2は、原料である焼結性金属粒子に液体のバインダを添加する従来の方法で造粒を行った場合の焼結性金属粒子とバインダとの混合状態を示す模式図である。図2に示すように、液体バインダを用いた場合は、バインダ3が焼結性金属粒子1の周囲に被膜状に存在するため、焼結性金属粒子1同士は接触しにくくなり、焼結性金属粒子1間の空隙も少なくなる。従って、得られる金属焼結体は空隙率が低く、機械的強度にも劣るものとなる。
上記工程1では、焼結性金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子を分散溶媒中に分散させたスラリーとを混合することにより、混合物を調製することが好ましい。
上記スラリーは、液状であることから、取り扱いやすく、混合工程において、焼結性金属粒子と加熱消滅性樹脂粒子とを均一に混合することができ、造粒も好適に行うことができる。また、上記スラリーを用いて、混合を行う場合、図2に示すように 樹脂が被膜状に形成されることなく、図1に示すように、焼結性金属粒子が点接触しつつ、焼結性金属粒子同士が適度な空隙を形成する状態となる。従って、上記スラリーを用いることで、液体バインダを用いる場合と固体粉末バインダを用いる場合の両者の利点を享受することができる。
上記焼結性金属粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は300μmである。
上記ポリオキシアルキレン樹脂は、非酸素又は低酸素濃度雰囲気下で所定の温度に加熱することにより、低分子量の炭化水素、エーテル等に分解された後、燃焼反応や蒸発等の相変化によって消滅し、極めて優れた加熱消滅性を発揮する。
これは、ポリオキシアルキレン樹脂が分子内に酸素原子を多く有することから、非酸素又は低酸素濃度雰囲気下で加熱した場合であっても、ポリオキシアルキレン樹脂自身が酸素供給源として働くためと考えられる。
上記架橋成分を含有することによって、上記加熱消滅性樹脂粒子の圧縮強度を向上させることができる。そのため、上記加熱消滅性樹脂粒子と無機粉末と混合して成形する際、常温において樹脂粒子の破壊を生じることなく、ハンドリング性を向上させることができる。また、上記架橋成分を含有することによって、樹脂粒子を有機溶剤に膨潤しないものとすることができる。
上記架橋成分としては特に限定されず、例えば、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーや、ジビニルベンゼン、後述する官能基を2個以上もつマクロモノマー等が挙げられる。
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーの重合体が好適に用いられる。
有機溶剤に膨潤すると、上記加熱消滅性樹脂粒子の強度が低下するため、多孔化材等として用いた場合に、所望の造孔効果が得られないことがある。
本明細書において、分解促進剤とは、所定の温度でラジカルを発生し、解重合等を含むラジカルによって引き起こされるポリマーの分解反応を促進する物質を意味する。
上記分解促進剤を含有することにより、上記ポリオキシアルキレン樹脂の分解が助長され、加熱消滅性樹脂粒子をより低温で短時間のうちに消滅させることができる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、非酸素又は低酸素雰囲気下で、低温領域であっても極めて優れた分解性を示し、90重量%以上が消滅する。
90重量%以上が消滅に要する時間が2時間を超えると、金属焼結体の製造に用いる場合、金属焼結体の製造効率が低下することがある。2時間以内に消滅する部分が90重量%未満であると、発熱量を減少し、変形を抑制する効果が不充分となることがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、200〜400℃の温度領域で極めて優れた脱脂性を示し、カーボン等の樹脂成分がほとんど残留しない。
樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となるのに要する時間が1時間を超えると、製造効率が低下する。200℃未満であると、樹脂成分を充分に除去することができず、樹脂成分の残渣を0.01重量%以下とすることができないことがある。樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となる温度が400℃を超えると、製造効率を向上させるために400℃以下で脱脂を行った場合、カーボン等の樹脂成分が残留してしまうため、得られる焼結性無機材に変形やひび等の不具合が生じることがある。
なお、本明細書において、樹脂成分の残渣とは、上記加熱消滅性樹脂粒子を燃焼させた結果生じた上記加熱消滅性樹脂粒子に由来する成分であって、主に、カーボン等を意味する。
0.1μm未満であると、粒子径が小さすぎて充分な空隙を有する金属焼結体を得ることができず、5μmを超えると、同士の接触が点接触とならず、得られる金属焼結体の機械的強度が低下する。好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が1μmである。
なかでも、ポリオキシアルキレンマクロモノマー、又は、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと他の重合性モノマーとの混合モノマーを重合する工程を有する方法が好ましい。なお、本明細書において、マクロモノマーとは、分子末端にビニル基等の重合可能な官能基を有する高分子量の線状分子のことをいい、ポリオキシアルキレンマクロモノマーとは、線状部分がポリオキシアルキレンからなるマクロモノマーのことをいう。
また、ポリオキシアルキレンマクロモノマーに含まれる官能基の数は特に限定されないが、官能基を2個以上もつマクロモノマーを用いれば、架橋させることにより高い圧縮強度を有する加熱消滅性樹脂粒子を得ることができる。
ホモポリマーのガラス転移温度が30℃を超えるモノマーを用いると、(接着不足)となることがある。また、上記ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以下であるモノマーが1重量%未満であると、添加量が少なすぎて、接着性の向上効果を発揮することができず、50重量%を超えると、上記工程2において、加熱消滅性樹脂粒子が変形することがある。
上記成形の方法としては特に限定されず、例えば、円筒形や角形等の形状にプレス等で圧縮成型する方法等が挙げられる。
上記焼結の方法としては特に限定されず、例えば、減圧下で1000〜2000℃に加熱する方法等が挙げられる。
例えば、予め形成しておいた上記金属焼結体からなる陽極体から引き出した陽極用リード線の根本に、フッ素樹脂やシリコーンゴム、シリコーン樹脂等からなる円板状の絶縁板を配置する。次いで、金属焼結体を硝酸やリン酸等の化成液中に浸漬して陽極化成し、厚さ200オングストローム〜6000オングストローム程度の酸化皮膜を形成する。酸化皮膜を形成した後、二酸化マンガンや有機導電性高分子からなる固体電解質層を形成する。固体電解質層を形成した後、カーボンペーストを塗布してカーボン層を形成し、更に、該カーボン層の表面には銀ペーストを塗布して銀層を形成する。そして固体電解質層、カーボン層及び銀層を陰極層として用いる。
(実施例1)
表1に示す組成のモノマー成分100重量部、及び、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部を混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液の全量を、ポリビニルアルコール(PVA)1重量%と亜硝酸ナトリウム0.02重量%との水溶液300重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
表1に示す組成のモノマー成分100重量部を用い、PVAの代わりにポリオキシエチレンアルキルエーテル1重量%を用いた以外は実施例1と同様にしてスラリーを得た。
表1の組成に従い混合したモノマー100重量部全量を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を60℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち5重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに1時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却してスラリーを得た。
実施例1と同様の組成のモノマー成分100重量部を用いるとともに、重合器内に乳化懸濁液を投入する際に一括ではなく、乳化懸濁液のうち40重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始し、30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した以外は実施例1と同様にしてスラリーを得た。
表1に示す組成のモノマー成分100重量部を用いた以外は実施例1と同様にしてスラリーを得た。
得られたスラリーに含まれる樹脂粒子について、示差走査熱量計(DSC−6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、昇温速度5℃/分で昇温しながら測定することにより、分解開始温度、50重量%減少温度、350℃における重量減少率、及び、400℃における樹脂成分の残渣の量を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1には、スラリーに含まれる樹脂粒子の平均粒子径、スラリーの樹脂固形分についても記載した。
(実施例5〜9、比較例3〜6)
表2の組成に従い、80℃にてタンタルの微粉末を撹拌しながら、樹脂粒子含有スラリーを滴下し、タンタル粉に樹脂粒子を混合するとともに、溶媒の水を揮発させ、タンタル粉の造粒を行った。得られた造粒タンタル粉末を角形にプレス圧縮成形した後、真空中で昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、1時間保持して樹脂粒子の脱脂を行った。その後、昇温速度40℃/h、最高温度1400℃、保持時間3時間にて焼結し、1.10mm×1.80mm×1.45mm角の焼結体を得た。
(2−1)造粒性
実施例及び比較例で得られた造粒タンタル粉末を目開き32μm(500メッシュ)の篩でふるい、篩のパス率が0.1%重量以下を○、0.1重量%を上回るものを×とした。
得られた焼結体を目視にて観察し、以下の基準で歪み、クラック、欠けの発生の有無を評価した。
○:歪み、クラックや欠けが認められなかった。
×:歪み、クラックや欠けが認められた。
示差走査熱量計(DSC−6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、焼結体中の樹脂成分の残渣の量を測定した。
2 加熱消滅性樹脂粒子
3 バインダ
11 固体電解コンデンサ
12 陽極層
13 陽極酸化皮膜
14 電解質層
15 陰極層
Claims (8)
- 焼結性金属粒子、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子及び分散溶媒を混合し、混合物を調製、乾燥する工程1、
前記混合物を成形することにより、成形体を成形する工程2、及び、
前記成形体を焼結する工程3を有する固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法であって、
前記混合物は、焼結性金属粒子に対して、固形分比で0.01〜20重量%の加熱消滅性樹脂粒子を含有し、
前記加熱消滅性樹脂粒子は、平均粒子径が0.1〜5μmである
ことを特徴とする固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。 - 混合物は、樹脂固形分が1〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。
- 加熱消滅性樹脂粒子は、酸素濃度5%以下の雰囲気下において100〜350℃の所定の温度に加熱することにより、2時間以内に90重量%以上が消滅し、90重量%以上が消滅した後、更に200〜400℃の所定の温度に加熱することにより、1時間以内に樹脂成分の残渣が0.01重量%以下となることを特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。
- 加熱消滅性樹脂粒子は、ポリオキシアルキレンマクロモノマーと、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃以下であるモノマー1〜50重量%とを含有する混合モノマーを重合してなる共重合体を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。
- ポリオキシアルキレン樹脂は、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン又はポリオキシテトラメチレンを含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。
- ポリオキシアルキレン樹脂は、ポリオキシプロピレンを5重量%以上含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。
- 分散溶媒は、水及び/又はアルコールであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の固体電解コンデンサ用陽極体の製造方法を用いて製造される固体電解コンデンサ用陽極体。
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