JP4758582B2 - トリアザトリナフチリンおよびその用途 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、3種のナフチリジンサブユニットを有する大環状分子ならびにその塩および金属錯体;これらの大環状分子、それらの塩および錯体の調製方法;そして遷移金属を抽出するためのこれらの大環状分子の組成物の用途、およびこの組成物を使用して遷移金属を抽出する方法に関する。
【0002】
(関連技術)
遷移金属には、それらの代表的な例として周期表の第VIII族の9種の金属、ならびにランタニドおよびアクチニド金属が挙げられる。これらの遷移金属には、さらに、希金属、貴金属および重金属と呼ばれる金属が挙げられる。それらの特定の例には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)、水銀(Hg)、ウラン(U)およびプルトニウム(Pu)が挙げられる。これらの遷移金属は、触媒および鉄/鋼鉄だけでなく、多種多様な他の用途(例えば、ハロゲン吸収合金、電池、磁石および超電導材料)でも使用される。これらの金属は、安定供給の見地から、いわゆる二次資源から回収するのが望ましい。さらに、その中に微量で含まれる金属を除去するために、工業排水などを処理する必要がある。それゆえ、効率的な金属回収技術を確立することは、環境保護の見地からも、重要な課題である。
【0003】
遷移金属を回収し精製する基本的技術の1つは、溶媒抽出法である。溶媒抽出法は、従来、処理される溶液の組成に従って、酸性、塩基性または中性の抽出剤を使用している。単独で使用することに加えて、遷移金属は、最近では、複合材料および類似の材料(例えば、合金および混合物)として使われるようになっている。それゆえ、溶媒抽出法は、ますます利用されるようになっていると考えられる。
【0004】
より高い抽出能力、より高い抽出率およびより高い選択性を有しかつ無害で安価な抽出剤が望まれている。
【0005】
(発明の要旨)
本発明の目的は、遷移金属用のいずれの公知の抽出剤の構造とも全く異なる新規な構造を有しかつ優れた抽出性能を有する遷移金属用抽出剤を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、この抽出剤で遷移金属を抽出する方法を提供することにある。
【0007】
本発明は、特定の金属イオンの結合で使用する大環状化合物を提供することにより、従来技術のこれらの欠点および他の欠点を検討する。本発明は、トリアザトリナフチリン(triazatrinaphthyrins)と呼ばれる新規な大環状分子のクラス、ならびにそれらの金属錯体および塩に関する。一般的な意味および総合的な意味では、本発明の新規なトリアザトリナフチリン化合物には、以下の一般式Iに従う構造を有するもの、あるいはそれらの溶媒和物、水和物、エステルまたは塩が挙げられる:
【0008】
【化6】
ここで、R1〜R3ならびにRa、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、以下で定義するとおりである。
【0009】
本発明のこれらの目的および他の目的は、遷移金属を抽出する組成物により達成され、この組成物は、活性成分として、トリアザトリナフチリンまたはその塩を含有する。
【0010】
さらに、本発明のこれらの目的および他の目的は、遷移金属を抽出する方法により達成され、この方法は、遷移金属を抽出する上記組成物で遷移金属を抽出する工程を包含する。
【0011】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の新規なトリアザトリナフチリン化合物には、一般式Iに従う構造を有するもの、あるいはその溶媒和物、水和物、エステルまたは塩が挙げられる:
【0012】
【化7】
ここで:
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびホルミルから選択され、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている;
Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロシクロアルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、ニトロアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、カルボニルアミノ、スルホニルアミノまたはアラルキルから選択され、そのいずれかは、必要に応じて置換されている。
【0013】
ある基が、必要に応じて置換されている場合、その任意の置換基は、得られる化合物が安定であるという条件で、1種またはそれ以上の非水素置換基であり得る。任意の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、チオール、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ホルミルアミノ、アミノイミノメチル、アシルアミノ、アミノアシル、モノ−またはジ−アルキルアミノカルボニル、チオカルボニルアミノ、チオアシルアミノ、アミノチオカルボニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、モノ−またはジアルキルアミノカルボニルオキシ、モノ−またはジアリールアミノカルボニルオキシ、モノまたはジアラルキルアミノカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アラルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、モノまたはジ−アルキルアミノチオカルボニル、アラルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アルキルチオおよびアリールチオである。
【0014】
アルキル基およびシクロアルキル基上の任意の置換基の好ましい値には、クロロ、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C1〜4)アルキルアミノ、ジ(C1〜4)アルキルアミノ、ホルミルアミノ、C2〜6アシルアミノ、アミノカルボニル、C2〜8アミノアシル、C1〜6アルコキシ、C6〜14アリールオキシ、カルボキシ、カルボキシ(C1〜6)アルキル、C2〜8アルコキシカルボニル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C1〜6アルキルチオ、C6〜14アリールチオ、C1〜6アルキルスルホニルアミノ、C7〜15アラルキルスルホニルアミノ、C6〜10アリールスルホニルアミノ、モノ−またはジ(C1〜6)アルキルアミノカルボニルオキシ、モノ−またはジ−(C1〜6)アリールアミノカルボニルオキシ、モノ−またはジ(C7〜15)アラルキルカルボニルオキシ、C1〜6アルコキシカルボニルアミノ、C7〜C15アラルコキシカルボニルアミノ、およびC6〜C10アリールオキシカルボニルアミノがある。
【0015】
アリール含有基および複素環含有基上の任意の置換基の好ましい値には、クロロ、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C1〜4)アルキルアミノ、ジ(C1〜4)アルキルアミノ、ホルミルアミノ、C2〜6アシルアミノ、アミノカルボニル、C2〜8アミノアシル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C6〜14アリールオキシ、カルボキシ、カルボキシ(C1〜6)アルキル、C2〜8アルコキシカルボニル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C1〜6アルキルチオ、C6〜14アリールチオ、C6〜14アリール、フェニル(これは、必要に応じて、クロロ、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、アミノまたはカルボキシのうちの1個、2個または3個でさらに置換されている)、テトラゾリル(これは、必要に応じて、クロロ、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、アミノまたはカルボキシのうちの1個、2個または3個でさらに置換されている)、チエニル(これは、必要に応じて、クロロ、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、アミノまたはカルボキシのうちの1個、2個または3個でさらに置換されている)、3,4−メチレンジオキシ、3,4−エチレンジオキシ、3,4−プロピレンジオキシ、C1〜6アルキルスルホニルアミノ、C7〜15アラルキルスルホニルアミノ、C1〜6アリールスルホニルアミノ、C1〜6アルキルスルホニル、C6〜10アリールスルホニル、モノ−またはジ(C1〜6)アルキルアミノカルボニルオキシ、モノ−またはジ−C6〜10アリールアミノカルボニルオキシ、モノ−またはジ−(C7〜15)アラルキルカルボニルオキシ、C1〜6アルコキシカルボニルアミノ、C7〜C15アラルコキシカルボニルアミノ、C6〜C10アリールオキシカルボニルアミノ、C2〜6チオアシルアミノ、アミノチオカルボニル、およびC2〜8アミノチオアシルが挙げられる。
【0016】
R1、R2およびR3の好ましい値は、水素である。
【0017】
Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’およびRc”の好ましい値は、水素、C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、スルホニルおよびC6〜14アリールであり、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている。
【0018】
Ra、Ra’、Ra”、Rd、Rd’およびRd”の好ましい値は、水素、C1〜6アルキル、スルホニルおよびC6〜14アル(C1〜6)アルキル(C6〜14ar(C1〜6)alkyl)であり、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている。
【0019】
対応して置換されたトリアザトリナフチリンを調製する出発物質としての種々の3−、4−、5−および6−置換ナフチリジンの調製方法は、本明細書中で記述されている。これらの3−、4−、5−および6−位置の官能基操作(Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”)は、望ましい特定のトリアザトリナフチリンに依存して、大環状分子の形成後に可能であるか、または適切に置換されたナフチリジンが直接使用され得る。
【0020】
トリアザトリナフチリンそれ自体(ここで、R1〜R3およびRa、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ水素である)は、その大環状骨格内に含まれる3個の2−アミノ−1,8−ナフチリジンサブユニットの存在、およびポルフィリンのものと比較して赤方にシフトした発光バンドにより一般に特徴付けられる大環状分子である。
【0021】
トリアザトリナフチリンおよびその置換された誘導体は、金属イオンと錯体を形成する性能により特徴付けられる。
【0022】
トリアザトリナフチリンおよびその置換された誘導体は、1個またはそれ以上のナフチリジン窒素および/または架橋「メソ」窒素で容易なプロトン化を受ける能力によってさらに特徴付けられる。本発明のトリアザトリナフチリン化合物は、単一または二重のいずれかでプロトン化され得、そして特定の実施形態では、三重または四重にプロトン化されることが理解される。
【0023】
本明細書中で使用する場合、用語「アルキル」は、単独で、または別の基の一部として、12個までの炭素を有する直鎖基および分枝鎖基の両方(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル)をいう。
【0024】
用語「アルケニル」は、本明細書中にて、2個〜20個の炭素原子を有する直鎖基および分枝鎖基を意味するように使用され、ここで、その鎖内の炭素原子の2個の間では、少なくとも1個の二重結合が存在しており、これらには、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このアルケニル鎖は、2個〜10個の炭素原子長、より好ましくは、2個〜8個の炭素原子長、最も好ましくは、2個〜4個の炭素原子長である。
【0025】
用語「アルキニル」は、本明細書中にて、2個〜20個の炭素原子を有する直鎖基および分枝鎖基を意味するように使用され、ここで、その鎖内の炭素原子の2個の間では、少なくとも1個の三重結合が存在しており、これらには、アセチレン、1−プロピレン、2−プロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このアルキニル鎖は、2個〜10個の炭素原子長、より好ましくは、2個〜8個の炭素原子長、最も好ましくは、2個〜4個の炭素原子長である。
【0026】
置換基としてアルケニル部分またはアルキニル部分が存在している本明細書中の全ての場合において、その不飽和結合(すなわち、そのビニレン鎖またはアセチレン鎖)は、好ましくは、窒素部分、酸素部分または硫黄部分には、直接的には結合されない。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「アルキルチオ」は、単独でまたは別の基の一部として、硫黄原子に結合した1個〜20個の炭素原子を有する直鎖基または分枝鎖基を意味し、これには、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このアルキルチオ鎖は、1個〜10個の炭素原子長、より好ましくは、1個〜8個の炭素原子長である。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「アルコキシ」は、単独でまたは別の基の一部として、酸素原子に結合した1個〜20個の炭素原子を有する直鎖基または分枝鎖基をいい、これには、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このアルコキシ鎖は、1個〜10個の炭素原子長、より好ましくは、1個〜8個の炭素原子長である。
【0029】
本明細書中で使用する場合、用語「シクロアルキル」は、単独でまたは別の基の一部として、3個〜9個の炭素原子を含有するシクロアルキル基をいう。典型的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびシクロノニルがある。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、単独でまたは別の基の一部として、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素をいい、塩素が好ましい。
【0031】
本明細書中で使用する「アシル」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、−C(O)Rg基を意味し、ここで、Rgは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アラルケニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはヘテロアリールアルケニルである。好ましいアシル基には、アルカノイル基、アラルカノイル基およびアロイル基(−C(O)R8であって、R8は、C1〜8アルキル、C6〜10アリール(C1〜4)アルキルまたはC6〜10アリールである)がある。
【0032】
本明細書中で使用する「チオアシル」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、−C(S)Rg基を意味し、ここで、Rgは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アラルケニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはヘテロアリールアルケニルであり、好ましくは、C1〜8アルキルである。
【0033】
本明細書中で使用する「チオカルボニル」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、−C(S)−基を意味する。
【0034】
本明細書中で使用する「モノアルキルアミン」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、1個〜6個の炭素原子を有する1個のアルキル基で置換されたアミノ基を意味する。
【0035】
本明細書中で使用する「ジアルキルアミン」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、2個のアルキル基で置換されたアミノ基を意味し、各アルキル基は、1個〜6個の炭素原子を有する。
【0036】
本明細書中で使用する「アリール」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、その環部分に6個〜14個の炭素原子、好ましくは、その環部分に6個〜10個の炭素原子を含有する一環式または二環式の芳香族基(例えば、フェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチル)を意味する。
【0037】
本明細書中で使用する「アラルキル」または「アリールアルキル」との用語は、単独でまたは他の基の一部として、アリール置換基を有する上述のC1〜6アルキル基(例えば、ベンジル、フェニルエチルまたは2−ナフチルメチル)を意味する。
【0038】
本明細書中で使用する「複素環式」、「ヘテロシクロ」または「複素環」との用語は、単独でまたはそれより大きい基の一部として、飽和または完全に不飽和または部分的に不飽和の3員〜7員の単環式環系または7員〜10員の二環式環系を意味し、これは、炭素原子および1個〜4個のヘテロ原子(これは、独立して、O、NおよびSからなる群から選択される)を含有し、ここで、この窒素およびイオウヘテロ原子は、必要に応じて、酸化されており、この窒素は、必要に応じて、四級化されており、これには、任意の二環式基が含まれ、ここで、上記複素環のいずれかは、ベンゼン環と縮合され、ここで、この複素環は、得られる化合物が安定である場合、炭素上または窒素原子上で置換できる。1個の酸素またはイオウ、1個〜3個の窒素原子、または1個または2個の窒素原子と組み合わせた1個の酸素またはイオウを含有する環は、特に有用である。このような複素環式基の例には、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、インダニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、フリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホンおよびオキサジアゾリルが挙げられる。モルホリノは、モルホリニルと同じである。
【0039】
「ヘテロ原子」との用語は、本明細書中にて、酸素原子(「O」)、イオウ原子(「S」)または窒素原子(「N」)を意味するように使用される。このヘテロ原子は、窒素のとき、NRyRz部分を形成し得、ここで、RyおよびRzは、互いに独立して、水素またはC1〜C8アルキルであるか、それらが結合する窒素と共に、飽和または不飽和の5員、6員または7員環を形成することが認められている。
【0040】
本明細書中で使用する「ヘテロアリール」との用語は、5個〜14個の環原子、環アレイで共有されている6個、10個または14個のπ電子を有しかつ1個、2個または3個の酸素、窒素またはイオウヘテロ原子を含有する基を意味する(ここで、ヘテロアリール基の例には、以下がある:チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアンスレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾキサゾリル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノニル、プテリジニル、4αH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナンスロジニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニルおよびフェノキサジニル基)。
【0041】
本明細書中で使用する「置換された」との用語は、指定した部分の1個またはそれ以上の水素原子が、原子の通常の原子価を超えないという条件で、また、その置換の結果、安定な化合物が得られるという条件で、指示した基で置換されることを意味する。置換基がケト(すなわち、=O)であるとき、その部分の原子に結合した2個の水素原子が置換される。
【0042】
「安定な化合物」または「安定な式」とは、本明細書中にて、ある化合物が、ある反応混合物および処方物から有効な治療薬または診断薬への有用な純度までの単離に耐えるのに十分に頑丈であることを意味する。
【0043】
本発明のトリアザトリナフチリン大環状分子は、プロトン化されて塩の形態で存在し得る。「塩」、「酸付加塩」または「薬学的に受容可能な塩」との用語は、全ての受容可能な塩を含むと解釈される。酸性塩の例には、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、メタンスルホン酸などがある。塩の形態である本発明のトリアザトリナフチリン大環状分子は、1個またはそれ以上の窒素原子のプロトン化により、特徴付けられる。その完全な塩は、一プロトン化または多プロトン化した大環状分子およびその会合したアニオンからなる。
【0044】
(大環状分子の合成)
本発明のトリアザトリナフチリン大環状分子を調製するのに好ましい出発物質は、適切に置換した2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンである。
【0045】
スキーム1は、種々の2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジン(5a)を調製する合成順序を図示している。図示しているように、これは、対応している2−アミノ−7−クロロ−1,8−ナフチリジン(4)または2,7−ジクロロ−1,8−ナフチリジン(7)と無水アンモニアまたは他のアミンとを反応させることにより、達成される。2−アミノ−7−クロロ−1,8−ナフチリジン(4)は、Carboni,S.ら(Gazz.Chim.Ital.96(11):1456〜1459(1966))の方法に従って調製でき、その内容は、本明細書中で参考として援用されており、これは、適切に置換された2,6−ジアミノピリジン(1)およびβ−ケトエステル(2)からの2−アミノ−7−ヒドロキシ−1,8−ナフチリジン(3)の形成から始める。有機合成の当業者は、スキーム1で概説した転化に影響を与える代わりの試薬および条件の利用可能性を認識している。
(スキーム1)
【0046】
【化8】
式Iの所望のRa、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”を提供するために、2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジン((5)、R”’=Riv=H)が官能化され得る。例えば、以下のスキーム2で示すように、この2−および7−アミノ基を適切な保護基でプロトン化し、引き続いて、塩基で処理すると、そのナフチリジン環上で、1個またはそれ以上の求核性の炭素原子が発生し、これは、適切な求電子試薬(例えば、ハロゲン化アルキル、エポキシド、無水物、スルホン酸エステルなど)と反応して、引き続いた大環状分子形成反応で使用する官能化した2,7−ジアミノナフチリジンに到達できる。
(スキーム2)
【0047】
【化9】
式Iの特定のRa、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”置換基(これは、大環状分子形成の反応条件とは適合せず、他の基の誘導体化でも調製できない)については、大環状分子形成後、それらの位置の官能基操作が実行され得る。
【0048】
本明細書中で概説した合成方法によれば、以下であるトリアザトリナフチリンを形成できるようになる:式IのRa、Ra’、Ra”、Rd、Rd’およびRd”は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、ヘテロシクロアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ニトロアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキルまたはアラルキルであり、そのいずれかは、必要に応じて、置換されている;そして式IのRb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’およびRc”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、カルボキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、カルボニルアミノ、スルホニルアミノから選択され、そのいずれかは、必要に応じて、置換されている。
【0049】
スキーム3は、親のトリアザトリナフチリン(ここで、式IのRa、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ、水素である)の合成を図示している。この大環状分子形成反応は、垂直アブデルハルデン(vertical Abderhalden)装置(図1を参照)または管状炉で実行され、後者は、温度制御が良好である。一般に、この大環状分子形成反応は、1気圧のハロゲン化水素ガスにて、この2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンの溶融を起こすのに十分な温度で、2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンをハロゲン化水素で処理することにより、特徴付けられる。いずれの機構上の説明にも限定するつもりはないものの、この反応は、アミンの押出およびトリアザトリナフチリンの形成を起こすのに十分な温度まで2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンのヒドロハライド(hydrohalide)塩を上昇させることにより、進行すると考えられている。このアブデルハルデン装置で実行される合成の1実施形態の詳細は、実施例1で概説する。
【0050】
この大環状分子形成反応は、単一の2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンまたは2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンの混合物を使って実行できることが分かる。この大環状分子形成反応を2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンの混合物で実行するとき、生成物の混合物(種々の位置異性体を含む)が得られる。当業者は、トリアザトリナフチリンの混合物を分離しその混合物から所望の化合物を単離できる種々のクロマトグラフィー媒体および溶媒系を認識している。典型的なクロマトグラフィー媒体には、種々のメッシュサイズのシリカゲルまたはアルミナが挙げられ、また、典型的な溶媒系には、CHCl3/CH3OH、CH2Cl2/CH3OHのような極性溶媒と非極性溶媒の混合物、およびクロマトグラフィーの技術分野で公知の他のものが挙げられる。
【0051】
トリアザトリナフチリンを形成する方法の代替実施形態は、溶媒(その中に2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンが溶解される)としての単一の芳香族アミンまたは芳香族アミン混合物のヒドロハライド塩(これには、ピリジニウム塩酸塩、キノリン塩酸塩または4−(3−フェニルプロピル)ピリジン塩酸塩が挙げられるが、これらに限定されない)の使用、およびその溶媒の溶融を起こすのに十分に高い温度およびアミン押出およびトリアザトリナフチリン形成を包含する。ある種の溶媒(例えば、ピリジニウム塩酸塩)は、222℃のその沸点近くまで加熱する場合、300℃よりずっと低い温度で、1気圧の塩化水素中にて、トリアザトリナフチリンの形成を容易にする。
【0052】
十分に高い温度では、このトリアザトリナフチリンの形成を起こすには、塩化水素またはヒドロハライド塩を使用する必要がない場合がある。具体的には、スキーム2で概説したジ−n−プロピル−ジアミノナフチリジンは、密封管中にて、約340℃のその融点まで急速かつ短時間加熱したとき、良好な収率で、対応するヘキサプロピルトリアザトリナフチリンを自然に形成する。従って、本発明はまた、2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンをその融点またはそれよの高い温度で加熱して所望のトリアザトリナフチリンを生じることにより、トリアザトリナフチリンを形成する方法を包含する。
(スキーム3)
【0053】
【化10】
(放射性同位元素のメタレーション(metalation)/付加)
本発明のトリアザトリナフチリン化合物には、遷移金属錯化剤として使用するために、または単に、その化合物の便利な形態として、そのトリアザトリナフチリンがある種の金属で錯化されたものが挙げられる。適切な金属の例には、Gd、In、Eu、Dy、Pr、Pa、Cr、Co、Fe、Cu、Ni、TiおよびV(好ましくは、GdまたはEu)のような元素の常磁性イオンが挙げられる。錯体形成は、典型的には、極性溶媒中で実行され、これには、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、アセトン、DMF、DMSO、アセトニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒混合物および/または水性溶媒混合物を含む溶媒系もまた、考慮される。典型的には、この錯体形成反応では、そのハロゲン化物または酢酸塩の形態の金属イオンが使用される。代表的な錯体形成反応は、実施例2で記述する。
【0054】
(プロトン化した大環状分子)
トリアザトリナフチリンは、1個またはそれ以上のナフチリジン窒素または1個またはそれ以上のアピカル(または「メソ」)窒素において、容易なプロトン化を受ける。典型的には、トリアザトリナフチリンは、水溶液中にて、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸およびメタンスルホン酸から選択される酸と接触される。得られる単一または多プロトン化した大環状分子は、その大環状分子をプロトン化するのに使用する酸に依存して、1個またはそれ以上の負に荷電した対イオンと会合される。
【0055】
(実施例1)
(11,22,33−トリアザトリナフチリン)
a.2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジン。2−アミノ−7−クロロ−1,8−ナフチリジン(50グラム、0.28モル)(これは、Carboni,S.ら(Gazz.Chim.Ital.96(11):1456〜1459(1966))の方法により調製した)を、2リットルのParr容器(Parr bomb)に装填し、そして液体無水アンモニア(500ml)を充填した。この容器を密封し、1200 PSIの圧力にし、この圧力で、14時間維持した。次いで、この容器を室温まで冷却し、そのアンモニアを排出し、その容器内容物を、まず、1.5リットルの飽和アンモニア水で抽出し、次いで、500mlの飽和アンモニア水で抽出した。これらの透明な黄色の液状抽出物を合わせ、ロータリーエバポレーターで約250mlの容量まで濃縮して、凝集した沈殿物を得、これを集めて、乾燥して、その生成物である2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジンを得た(26g、162mmol、58%)、融点311℃(液体融点=222〜223℃;Collin,J.−P.,ら。Inorg Chim.Acta 201:29〜34(1992))。
1H NMR(DMSO−d6):δ 7.76(d,J=9Hz,2H,CH),7.14(br.s,4H,NH2),6.50(d,J=9Hz,CH),13C NMR:δ 160.7,144.4,140.2,109.9,108.6, MS m/e 160(100%),133(25%),105(9%).HRMS(C8H8N4)計算値:m/e=160.074896.実測値:m/e=160.074984.UV−可視λmax(log e)(25%EtOH水溶液):352(4.07).発光λmax(任意の単位)(25%EtOH/IPA水溶液):407(0.48),493(1.00)。
【0056】
b.11,22,33−トリアザトリナフチリン。注文製の垂直アブデルハルデン装置(図1を参照)に、2,7−ジアミノ−1,8−ナフチリジン(12グラム)を充填し、そして真空を1気圧の無水塩化水素ガスで置換できるマニホルドに通じるストッパー付き頂部をかぶせた。このジアミノナフチリジンを、硫酸(沸点=300℃)の凝縮蒸気がアブデルハルデン装置の内部チャンバの外側を濡らしてジアミノナフチリジンの色が熱で変色し始めるような時間まで、そのチャンバ内で、真空下にて、保持した。次いで、この真空を、1気圧の無水塩化水素で素早く置換した。このジアミノナフチリジンは、急速に溶融し、黒くなり、泡立ち始めた。40分後、黒くなった反応塊は、完全に再固化し、さらに20分間にわたって、加熱を継続した。この装置を冷却し、その粗生成物を容器から除去し、粉砕して粉末にした。この全工程を繰り返し、その2つのバッチを合わせて、以下のようにして洗浄した:この黒色粉末を、200mlの濃アンモニア水と共に、30分間攪拌し、次いで、濾過し、そのように得た湿った固形物を、アンモニア蒸気で飽和した500mlの温エタノールと共に1時間攪拌することにより、さらに2回洗浄した。残った固体物質(乾燥重量は19グラム)を、60℃で保持した氷酢酸250ml中にて、12時間攪拌した。得られた黒色の溶液を媒体ガラスフリット漏斗(medium glass fritted funnel)で濾過し、そしてロータリーエバポレータで乾燥状態まで濃縮した。そのように得た残留物を、真空中にて、100℃で、24時間乾燥して、黒紫色の固形物(16.5g、38.5mmol、77%)として、その生成物を得た。
1H NMR(CF3COOD):δ 7.98(d,J=9.3Hz,2H,CH),6.95(d,J=9.3Hz,CH).13C NMR(CF3COOD):δ 155.5,144.8,144.3,118.1,116.3. MS m/e 429(100%),214(10%).HRMS(C24H15N9)計算値:m/e=429.1450.実測値:m/e=429.1449.UV−可視λmax(log e)(HOAc):340(4.78),356(4.96),406(3.51),480−82sh(3.11).発光λmax(任意の単位)(sh=ショルダー)(濃HCl):535−542sh(0.275),569(1.00),615(0.29)。
【0057】
(実施例2)
(11,22,33−トリアザトリナフチリン・Gd(III)酢酸塩)
50mlフラスコに、11,22,33−トリアザトリナフチリン(100mg、0.23mol)および33%酢酸水溶液15mLを充填する。その透明な黒色溶液を室温で攪拌し、水2mL中の塩化Gd(III)六水和物(75mg、0.20mol)を一度に添加する。錯体の形成は、UV−可視吸収の特徴的な変化を観察することによりモニターし得るが、錯体の形成は、事実上、1分以内に完結する。得られた溶液を減圧下でエバポレートし、氷酢酸で洗浄して、錯化していないトリアザトリナフチリンを除去する。得られた錯体は、最初の塩化Gd(III)六水和物の量に基づいて、定量収率で得られる。
【0058】
(金属の抽出)
周期表の第VIII族の9種の元素のほかに、これらの遷移金属には、第3A〜7A族および第1Bおよび2B族の元素、すなわち、スカンジウム(これは、原子番号21を有する)から亜鉛(これは、原子番号30を有する)までの範囲の元素、イットリウム(これは、原子番号39を有する)からカドミウム(これは、原子番号48を有する)までの範囲の元素、ランタン(これは、原子番号57を有する)から水銀(これは、原子番号80を有する)までの範囲の元素、およびアクチニウム(これは、原子番号89を有する)からローレンシウム(これは、原子番号103を有する)までの範囲の元素が挙げられる。具体的には、これらの遷移金属には、第VIII族の元素、すなわち、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、および白金(Pt)が挙げられ、そしてさらにチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)、水銀(Hg)、ウラン(U)およびプルトニウム(Pu)が挙げられる。
【0059】
抽出する溶液は、その中に溶解された遷移金属の濃度で特に限定されない。この溶液は、約1.0×10−5M程度に低い遷移金属濃度を有していたとしても、十分に抽出されると予想される。
【0060】
この遷移金属水溶液は、pHで特に限定されないものの、好ましくは、6より低いpHを有する。この溶液のpHを変えるにつれて、その抽出率は、低下する傾向にあり得る。この場合、当該技術分野で公知であるように、より長い抽出時間が必要である。
【0061】
その抽出温度は、使用する溶媒の沸点よりも高くない限り、特に限定されない。一般に、室温付近の温度が使用され得る。
【0062】
その抽出操作は、このトリアザトリナフチリンの溶液をその中に遷移金属を溶解した溶液と接触することにより、行われる。この接触は、振盪、攪拌などにより、達成される。振盪または攪拌の条件は、特に限定されないものの、激しく振盪または攪拌すると、効率的な抽出には有効となる。振盪は、通常、1分間あたり約100回〜400回の頻度で行われ得る。
【0063】
この抽出を促進する添加剤(抽出促進剤)もまた、使用できる。
【0064】
この抽出促進剤の例には、塩基性窒素含有複素環式化合物および芳香族アミノ酸が挙げられる。その具体的な例には、窒素含有複素環式化合物(例えば、ピリジン、アルキルピリジン(例えば、メチルピリジン、エチルピリジン))およびキノリン;および芳香環を含むアミノ酸(例えば、トリプトファンおよびフェニルアラニン)が挙げられる。この抽出促進剤の例には、さらに、遷移金属イオンと配位してそのイオンがトリアザトリナフチリンと会合するのを助ける(それゆえ、遷移金属イオンとの錯体形成速度を速くする機能がある)化合物が挙げられる。しかしながら、ピリジンおよびトリプトファンが好ましい。
【0065】
この抽出促進剤の濃度は、特に限定されないものの、その量は、好ましくは、抽出する遷移金属1グラム当量あたり、1〜1,000グラム当量である。
【0066】
この抽出促進剤の量が少なすぎる場合、抽出を促進する効果は得られない。逆に、その量が多すぎる場合、その促進剤は、有機相で使用する溶媒の特性を変え得るおそれがある。
【0067】
本発明の遷移金属抽出組成物は、遷移金属(特に、ランタニド(特に、ガドリニウム))を効率的に抽出するのに有用である。
【0068】
(抽出例)
本発明のトリアザトリナフチリンによる遷移金属の抽出は、以下のようにして実行され得る:
抽出実験において、トリアザトリナフチリン酢酸塩(または他のトリアザトリナフチリン大環状分子、塩または錯体)を5.0×104Mの濃度でクロロホルムに溶解し、それを酢酸相10ml(これは、1.0×10−4Mの量で、遷移金属塩化物を含有する)と共に、30mlのスクリューバイアル(screw vial)に入れることにより、10mlの有機相を調製し、その内容物を24時間振盪する。各金属の抽出率を決定する際に、振盪後の酢酸相を原子吸収光度計で分析して、その中に残留している金属のイオンの濃度を決定する。この抽出率は、以下の等式を使用して計算するが、ここで、M+ totalとは、この金属イオンの初期濃度を意味し、そしてM+ solutionとは、その抽出操作後に酢酸相で見られた金属イオン濃度を意味する。
【0069】
抽出率%=(M+ total−M+ solution)/(M+ total+M+ solution)
今ここで、本発明を詳細に記述したが、本発明またはその任意の等価物の範囲に影響を与えることなく、広範囲の等価な条件、処方物および他のパラメータ内で、同じことを実行できることは、当業者に認識されている。本明細書中で引用した全ての特許および文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のトリアザトリナフチリン大環状分子の合成で使用する垂直アブデルハルデン装置を示す。
Claims (12)
- 次式の化合物あるいはその溶媒和物、水和物、または塩:
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびホルミルから選択され、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている;
Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロシクロアルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、ニトロアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、またはアラルキルから選択され、そのいずれかは、必要に応じて置換されている、化合物。 - R1、R2、R3、Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”が、それぞれ、水素である、請求項1に記載の化合物。
- 前記任意の置換基が、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、チオール、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ホルミルアミノ、アミノイミノメチル、アシルアミノ、アミノアシル、モノ−またはジ−アルキルアミノカルボニル、チオカルボニルアミノ、チオアシルアミノ、アミノチオカルボニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、モノ−またはジアルキルアミノカルボニルオキシ、モノ−またはジアリールアミノカルボニルオキシ、モノまたはジアラルキルアミノカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アラルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、モノまたはジ−アルキルアミノチオカルボニル、アラルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アルキルチオおよびアリールチオから選択される、請求項1に記載の化合物。
- 単一プロトン化または多プロトン化した酸付加塩の形状であり、前記酸が、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸およびメタンスルホン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
- 単一プロトン化または多プロトン化された請求項1に記載の化合物と少なくとも1種の負に荷電した対イオンとからなる、塩。
- 請求項1に記載の化合物と金属イオンとからなる、金属錯体。
- 前記金属が、Tc、In、Ga、Gd、Eu、Dy、Pr、Pa、Cr、Co、Fe、Cu、Ni、TiおよびVからなる群から選択される、請求項6に記載の金属錯体。
- 前記金属が常磁性である、請求項6に記載の錯体。
- 前記金属が、Gd(III)またはEu(III)である、請求項8に記載の金属錯体。
- 以下の式Iの化合物あるいはその溶媒和物、水和物、または塩を形成する方法であって、
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびホルミルから選択され、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている;
Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロシクロアルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、ニトロアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、またはアラルキルから選択され、そのいずれかは、必要に応じて置換されており、該方法は、以下:
(a)式IIの化合物を塩化水素ガスで処理する工程を包含し、
方法。 - 遷移金属を抽出する方法であって、該方法は、該遷移金属を含有する物質を、活性抽出成分として次式の化合物あるいはその溶媒和物、水和物、または塩を含有する組成物と接触させて、該物質から該遷移金属を抽出する工程を包含し:
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびホルミルから選択され、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている;
Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロシクロアルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、ニトロアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、またはアラルキルから選択され、そのいずれかは、必要に応じて置換されている、方法。 - 遷移金属を抽出するための組成物であって、該組成物は、活性成分として、次式の化合物あるいはその溶媒和物、水和物、または塩:
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルおよびホルミルから選択され、それらのいずれかは、必要に応じて置換されている;
Ra、Ra’、Ra”、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rc’、Rc”、Rd、Rd’およびRd”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロシクロアルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、ニトロアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノカルボニルオキシ、またはアラルキルから選択され、そのいずれかは、必要に応じて置換されている、
ならびに、塩基性窒素を含有する複素環式化合物および芳香族アミノ酸からなる群から選択される抽出促進剤、を含有する、組成物。
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