JP4757378B2 - 安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液およびその利用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期にわたって安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液およびその利用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
過ホウ酸ナトリウム水溶液は、染毛剤、パーマネントウェーブ用剤の酸化剤(第2剤)として用いられる。この過ホウ酸ナトリウム水溶液は、用時に粉末状の過ホウ酸ナトリウムを水に溶解して調整される。
【0003】
粉末状の過ホウ酸ナトリウムの水への溶解は、用時に通常、アプリケータ内において行われる。溶解後の過ホウ酸ナトリウム水溶液はそのアプリケータに設けられたコームやノズルを使って、毛髪に塗布される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の過ホウ酸ナトリウム水溶液は、過ホウ酸ナトリウムが水溶液上で分解し易い性質であるため、用時に粉末状の過ホウ酸ナトリウムを水に溶解するなどして過ホウ酸ナトリウム水溶液を調整する必要があった。このため、作業工程が増えて手間がかかるという問題があった。こうしたことから用時に調整する必要のない安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液の供給が要求されるようになっているが、その要求に答える満足な方法がないまま今日に至っている。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、用時に調整する必要がなく、保存安定性に優れた安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液およびその利用方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、0.05〜20重量%の過ホウ酸ナトリウム及び0.05〜3.0重量%のヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸およびそれらの塩の中から選ばれる金属イオン封鎖剤を含有する過ホウ酸ナトリウム水溶液であって、そのpHが4.5〜5.5であることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液において、界面活性剤、毛髪保護剤、pH調整剤から選ばれる少なくとも一種を含有することを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液において、酸化染毛剤の酸化剤であることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液において、パーマネントウェーブ用剤の酸化剤であることを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液をヘアカラー処理された毛髪にパーマネントウェーブ処理する際の酸化剤として利用することを要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を酸化染毛剤の酸化剤として用いられる安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液に具体化した第1実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態における安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液には、過ホウ酸ナトリウム、安定化剤としてのヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸およびそれらの塩の中から選ばれる金属イオン封鎖剤等が配合されている。
【0014】
過ホウ酸ナトリウムの配合量は、0.05〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。この配合量が0.05重量%よりも少ないと有効酸素濃度が低くなり十分な効果が得られない。また20重量%を超えると溶解性が悪くなる。
【0015】
ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸およびそれらの塩は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸およびそれらの塩の配合量は、0.05〜3.0重量%が好ましい。この配合量が0.05重量%よりも少ないと十分な金属イオン封鎖効果が得られない。また3.0重量%を超えても効果が特に大きくは向上しないので、3.0重量%を超えて配合することは不経済である。0.05〜3.0重量%の範囲に設定した場合には、金属イオン封鎖効果と経済的な効果の両方をバランスよく発揮することができる。
【0016】
また、その他の添加成分として、界面活性剤、毛髪保護剤、pH調整剤から選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0017】
界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルカルボベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0018】
毛髪保護剤としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化デキストラン、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等のカチオン化ポリマー、ジメチコン、高重合ジメチコン、アモジメチコン等のシリコン誘導体、コラーゲン、ケラチン等の蛋白加水分解物及びその誘導体、油性成分などが挙げられる。これらの毛髪保護剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0019】
pH調整剤としては、例えば、リン酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸等の有機酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも無機酸が好ましく、さらには、リン酸が過ホウ酸ナトリウムの溶解性が良いという点で特に好ましい。そして、過ホウ酸ナトリウム水溶液のpHは、4.5〜5.5に調整される。
【0020】
さらに、その他の添加成分として、バチルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸等の天然又は合成の高分子、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等のアミド類、パラベン等の防腐剤、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸、パラベン等の安定剤、その他、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、天然色素、香料、顔料、紫外線吸収剤等、また「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0021】
以上詳述した本実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の過ホウ酸ナトリウム水溶液は保存安定性に優れている。このため、従来のように用時に粉末状の過ホウ酸ナトリウムを水に溶解して水溶液を調整する必要がなく、保存容器に入れられている過ホウ酸ナトリウム水溶液をそのまま利用することが可能であり、作業が容易である。
【0022】
・ 本実施形態の過ホウ酸ナトリウム水溶液は比較的温和な酸化剤であるため、毛髪に過剰に反応することがない。よって、酸化剤による毛髪損傷を低減することができる。
【0023】
・ ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸およびそれらの塩の中から選ばれる金属イオン封鎖剤を安定化剤として0.05〜3.0重量%配合することにより過ホウ酸ナトリウム水溶液の安定性を向上させることができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明をパーマネントウェーブ用剤の酸化剤として用いられる安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液に具体化した第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0025】
本実施形態における酸化剤には、前記第1実施形態における酸化剤と同じものが用いられる。
【0026】
次に、この実施形態の過ホウ酸ナトリウム水溶液の利用方法について説明する。
さて、この安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液は、ヘアカラー処理された毛髪にパーマネントウェーブ処理する際のパーマネントウェーブ用剤の酸化剤(第2剤)として利用することができる。
【0027】
ところで、パーマネントウェーブ処理には、従来臭素酸塩又は過酸化水素等が配合された酸化剤水溶液が一般的に用いられている。これらの酸化剤水溶液は比較的ウェーブ力が強く、安定性にも優れている。しかし、臭素酸塩水溶液は放置時間の延長により、毛髪先端部への過収縮を生じる危険性があり、過酸化水素水溶液は、毛髪損傷を引き起こすという問題がある。
【0028】
更に、ヘアカラー処理された毛髪に、これらの酸化剤を用いてパーマネントウェーブ処理を行うと、臭素酸塩の場合、パーマネントウェーブ用剤の第1剤により還元された染料に対する再酸化力が弱いため、ヘアカラー処理された毛髪の色調が変化してしまうという問題があり、過酸化水素の場合、パーマネントウェーブ用剤の第1剤により還元された染料に対する再酸化力は強いが、毛髪中のメラニンを分解する作用があるため、結果として毛髪全体が明るくなってしまうという問題がある。
【0029】
ところが、本実施形態の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液でパーマネントウェーブ処理する場合、過ホウ酸ナトリウム水溶液が比較的温和にヘアカラー毛に作用するため、ヘアカラー処理により傷んだ毛髪にも過剰に反応することがない。また、パーマネントウェーブ用剤の第1剤により還元された染料に対する再酸化力も強く、メラニンを分解する作用もない。よって、ヘアカラー処理された毛髪にパーマネントウェーブ処理をした場合の色調変化、明度変化及び毛髪損傷を低減することができる。
【0030】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜5及び比較例1〜14)ポリエチレン製容器の内部にパーマネントウェーブ用剤の酸化剤として過ホウ酸ナトリウム水溶液を充填して50゜C恒温槽にて一ヶ月間保存し、保存後の容器の外観を評価した。その結果及び各例において用いた過ホウ酸ナトリウム水溶液の組成等を表1及び表2に示す。
<評価の基準>
容器の外観…◎(変化なし)、○(若干の膨張)、△(膨張)、×(破裂)
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表1の結果より、実施形態の過ホウ酸ナトリウム水溶液を使用した場合には、保存安定性が良好であることが示された。
【0034】
表2の結果より、金属イオン封鎖剤としてヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸を使用した場合に、より保存安定性が向上することが示された。
【0035】
(実施例5及び比較例13〜14)日本人黒髪の毛束を市販の酸化染毛剤(ビューティーンヘアカラー体験 ライトブラウン;ホーユー(株)製)で、商品に指定されている条件下で染色し、水洗いの後乾燥させた。乾燥後の毛束に、パーマネントウェーブ用剤を用いてパーマネントウェーブ処理を施し、処理後の毛髪の色調変化、明度変化および毛髪中のシステイン酸増加率について、測定、評価した。その結果を表5に示す。尚、各例において用いたパーマネントウェーブ用剤の第1剤及び第2剤の組成等をそれぞれ表3及び表4に示す。ちなみに、毛髪中のシステイン酸増加率は、毛髪の損傷の度合いを示しており、増加率が低いほど、毛髪の損傷が少ないことを示す。
<評価の基準>
色調変化…◎(ない)、○(ほとんどない)、△(ややある)、×(ある)
明度変化…◎(ない)、○(ほとんどない)、△(ややある)、×(ある)
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
表5の結果より、実施形態の過ホウ酸ナトリウム水溶液をヘアカラー処理された毛髪にパーマネントウェーブ処理する際の酸化剤として利用した場合に、色調変化、明度変化及び毛髪損傷が少ないことが示された。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、用時に調整する必要がなく、保存安定性に優れた過ホウ酸ナトリウム水溶液を提供することができる。
【0041】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、過ホウ酸ナトリウム水溶液の安定性をより向上させることができる。
【0042】
請求項3に記載の発明によれば、酸化染毛剤の酸化剤において請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の発明の効果を奏することができる。
【0043】
請求項4に記載の発明によれば、パーマネントウェーブ用剤の酸化剤において請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の発明の効果を奏することができる。
【0044】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、ヘアカラー処理された毛髪に対して、パーマネントウェーブ処理する際の酸化剤として利用することができるとともに、色調変化、明度変化及び毛髪損傷を低減することができる。
Claims (5)
- 0.05〜20重量%の過ホウ酸ナトリウム及び0.05〜3.0重量%のヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸およびそれらの塩の中から選ばれる金属封鎖剤を含有する過ホウ酸ナトリウム水溶液であって、そのpHが4.5〜5.5であることを特徴とする安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液。
- 界面活性剤、毛髪保護剤、pH調整剤から選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液。
- 酸化染毛剤の酸化剤である請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液。
- パーマネントウェーブ用剤の酸化剤である請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液。
- 請求項4に記載の安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液をヘアカラー処理された毛髪にパーマネントウェーブ処理する際の酸化剤として利用することを特徴とする安定な過ホウ酸ナトリウム水溶液の利用方法。
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