JP4752993B2 - ポリイミド多孔質膜およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セパレータやイオン交換膜など電池隔膜材料、ディスプレイや光導波路など光学材料、触媒の支持体に好適に利用することのできる、耐久性に優れた、空孔の規則正しく配列したポリイミド多孔質膜(ハニカム膜と呼ぶ)及びポリイミドの前駆物質であるポリアミック酸のポリイオンコンプレックスを経由するハニカム膜の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微細空孔が規則的に配列した形状を有する多孔質膜は半導体低誘電率材料、電子ディスプレイ用散乱層、磁気記録材料、細胞培養用基材など多様な用途への応用が検討されている有望な素材である。この種の多孔質膜の製造法としては、自己凝集力の強い部分と柔軟性を発現する部分とを併せ持つ特殊なポリマーを利用し、これらのポリマーを疎水性有機溶媒に溶解し、これをキャストする手法(Science 283,373,1999;Nature 369,387,1994)が開示されている。一方、本発明者らは親水性のアクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、あるいはヘパリンやデキストラン硫酸などのアニオン性多糖と4級の長鎖アルキルアンモニウム塩とのポリイオン性錯体が同様な方法でハニカム構造を有する薄膜を与えることを報告している(Supra Molecular Science 5,331,1998;Molecular Cryst.Liq.Cryst.322,305,1998)。この本発明者らの製造法は濃度調整した疎水性溶液の塗膜に高湿度の空気を吹き付ける、または高湿度下に置くだけで作成できるという、簡便で製造コストにおいて利点のある優れた手法である。
【0003】
しかしながらこれまでに知られているハニカム膜は、耐久性に劣ることが懸念されていた。特にハニカム膜が高温にさらされた場合、構成する樹脂組成物の耐熱性が低いために多孔質構造が崩れてしまうという問題点を有しており、このことがハニカム膜の用途拡大を難しくしていた。
【0004】
一方、耐久性の高い樹脂組成物としてはポリイミドが知られており、エンジニアリングプラスチックや光学材料、電子工学材料などとして広く用いられている。このように耐久性の高いポリイミドを用いてハニカム膜を作成することは、耐久性を持った多孔質膜を実現する意味において非常に有益なことであるが、ポリイミド自体は一般に種々溶媒に難溶であり、また電気的に中性な樹脂であるためイオン性錯体を形成することはなく、これをそのままハニカム膜製造に用いることはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便な手法にて作成することの出来る高耐久性ポリイミドハニカム膜、およびポリイミド前駆物質であるポリアミック酸と脂質とのポリイオン錯体を利用するポリイミドハニカム膜製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高耐久性樹脂であるポリイミドを構成樹脂成分とするハニカム膜を実現するために鋭意検討をおこない、本発明を見出した。
【0007】
即ち、本発明は、両親媒性ポリマーの疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50%以上の大気下で基板上に塗布し、該有機溶媒を蒸発させることにより生じた微小水滴を蒸発させることにより得られる多孔質膜において、該多孔質膜が式(1)
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R1はテトラカルボン酸残基、R2はジアミン残基を示す。)
で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなることを特徴とするポリイミド多孔質膜に関する。
【0010】
また、本発明は
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1はテトラカルボン酸残基、R2はジアミン残基を示し、Qは炭素数4以上の有機基を少なくとも1つ有するアンモニウムカチオン残基を示す。)
で表されるポリアミック酸と脂質とのポリイオン錯体であり、かつこれを用いて多孔質膜を形成させてからイミド化することを特徴とするポリイミド多孔質膜の製造法に関する。
【0013】
【発明の実施形態】
次に本発明によるポリイミドハニカム膜製造法を詳しく説明する。本発明のポリイミド多孔質膜の製法における反応スキームは以下で表される。
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、R1、R2及びQは前記と同じ意味を示す。)
即ち、式(1)で表されるポリイミドの前駆物質であるポリアミック酸(3)のポリイオン錯体(2)を得、脱水してイミド化して新規なポリイミドハニカム膜を得ることができる。
【0016】
本発明者らのハニカム膜製造方法は、疎水性有機溶媒に両親媒性ポリマーを溶解させたものを基板上に塗布し、相対湿度が50%以上の空気中で該有機溶媒を徐々に蒸発させて作成する方法である。
【0017】
有機溶媒の蒸散に伴い、蒸発潜熱により有機溶媒表面が結露して生成した微小水滴が該キャスト膜中で最密充填する。この微小水滴を蒸発させることで、直径5μm以下の微細孔が最密充填した構造の薄膜を作成する方法である。
【0018】
ところがポリイミド樹脂は先述のごとく一般に種々の有機溶媒に難溶であり、また両親媒性ポリマーではないため、これをそのまま上記のハニカム膜製造方法に適用することはできない。そこで本発明者らは、ポリイミドの前駆物質であるポリアミック酸が有機溶媒に可溶であり、脂質などとポリイオン性錯体を形成することができ、ハニカム膜製造に適していることに着目した。
【0019】
本発明に用いるポリアミック酸とはテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を極性溶媒中で重合させ得た樹脂組成物である。本発明にはいづれの組成のポリアミック酸でも用いることができるが、ポリアミック酸をアルカリ水溶液で鹸化する際の加水分解に対する耐久性を考慮すると、テトラカルボン酸二無水物につき望ましくは3,3′4、4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′4,4′−ビフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3、3′4、4′−ビフェニルスルフォンテトラカルボン酸、3、3′4、4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2、2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2、2−ビス(3、4ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3、4ジアルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサなどのビフェニル構造を有するテトラカルボン酸及びこれらの二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸、1、2、3、4−シクロペンタンテトラカルボン酸、2、3、4、5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1、2、4、5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3、4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3、4−ジカルボキシ−1、2、3、4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸などの脂環式テトラカルボン酸及びこれらの二無水物、ピロメリット酸、2、3、6、7−ナフタレンテトラカルボン酸、1、2、5、6−ナフタレンテトラカルボン酸、1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸、2、3、6、7−アントラセンテトラカルボン酸、1、2、5、6−アントラセンテトラカルボン酸、2、3、4、5、−ピリジンテトラカルボン酸、2、6−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物であり、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0020】
また、ジアミン化合物としてはp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2、5−ジアミノトルエン、2、6−ジアミノトルエン、4、4−ジアミノビフェニル、3、3′−ジメチル−4、4′−ジアミノビフェニル、3、3′−ジメトキシ−4、4′−ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエ−テル、2、2′−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3、5−ジエチル4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9、10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4、4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2、2′−トリフルオロメチル−4、4′−ジアミノビフェニル、4、4′−ビス(4−ジアミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン及びテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ジアミノシロキサン等が挙げられる。又、これらのジアミンの1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
本発明に用いる脂質とはポリアミック酸とポリイオン錯体を形成しうる物質群であり、炭素数4以上の脂肪族アンモニウム塩化合物又は脂環式アンモニウム塩化合物があげられる。これらアンモニウム塩化合物に限定されるものではないが、炭素数の範囲は通常4〜34であり、脂環式アンモニウム塩の炭素数は5〜6である。例示すればオクチルアミン、デシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、ドコシルアミン、シクロヘキシルアミン等の第一アミン類の塩、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジステアリルアミン、ジドコシルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチル−n−デシルアミン、N−メチル−n−テトラデシルアミン、N−メチル−n−ヘキサデシルアミン、N−メチル−n−オクタデシルアミン、N−メチル−n−エイコシルアミン、N−メチル−n−ドコシルアミン、N−メチル−n−シクロヘキシルアミン等の第2アミン類の塩、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル−n−デシルアミン、N,N−ジメチル−n−テトラデシルアミン、N,N−ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン、N,N−ジメチル−n−シクロヘキシルアミン等の第3アミン類の塩、ジメチルジオクチルアミン、ジメチルジデシルアミン、ジメチルジテトラデシルアミン、ジメチルジヘキサデシルアミン、ジメチルジオクタデシルアミン、ジメチルジエイコシルアミン、ジメチルジドコシルアミン、ジメチルジシクロヘキシルアミン等の第4アミン類の塩を挙げることができる。上記脂肪族アンモニウム塩は1種単独でも2種以上でも用いることができる。これらの中で第4級アンモニウム塩類が好ましい。第4級アンモニウム塩のカウンターアニオンとしてはカルボン酸アニオン、アルキルスルホン酸アニオン、アルキルリン酸アニオンなど有機アニオン、または無機酸のアニオンを問わず用いることができる。好ましくは塩化物や臭化物などハロゲン化物塩が用いられる。
【0022】
本発明によるポリイオン錯体は、ポリアミック酸を塩基により中和したものを含む溶液に上記脂質をそのまま、または前記ポリアミック酸の重合に用いることができる有機溶媒に溶解させた脂質の溶液を混合することにより、行なうことができる。この反応は通常、0〜60℃、好ましくは室温で行なうことができる。この反応において、上記脂質化合物の使用量は、通常、ポリアミック酸分子における繰り返し単位1モルに対して0.5〜5モル、好ましくは0.5〜3モルである。脂質の使用量が、ポリアミック酸分子における繰り返し単位に対して少なすぎたり、多すぎたりすると、ポリイオン錯体のハニカム膜とした場合の孔径規則性、形状が悪くなる。
【0023】
ポリイオン錯体を用いてハニカム膜を製造するが、このままではポリイミドではないため耐久性に乏しい。そこで構築したハニカム構造を維持したままポリアミック酸イオン錯体をポリイミドにイミド化しなければならない。ポリアミック酸イオン錯体は加熱や有機溶媒への耐久性に乏しく、イミド化反応を慎重におこなう必要がある。
【0024】
次に本発明の実施手順を解説する。本発明を実施するにあたり、用意すべきポリアミック酸は周知の手法によって製造し、精製される。具体的には該テトラカルボン酸2無水物及びその誘導体と前記ジアミンを反応、重合させて得ることができる。この際用いるテトラカルボン酸2無水物のモル数とジアミンと一般ジアミンの総モル数との比は0.8から1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。このときに注意すべきはポリアミック酸の分子量であり、分子量が大きすぎるとハニカム膜を製造した際に、脆い膜になったり着色したりする恐れがあり、ハニカム膜の作成に困難をきたすこともある。また分子量が小さすぎると製造したハニカム膜の耐久性が落ちたりハニカム膜の製造が難しくなるといった恐れがある。このため用いるべきポリアミック酸の分子量は数平均分子量で3,000から300,000に制御する必要があり、さらに好ましくは10,000から200,000に制御する必要がある。
【0025】
また、アミン末端の封止剤として無水マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ノルボルネンジカルボン酸無水物などの無水物、酸二無水物末端の封止剤としてはアニリンなどのモノアミンをポリイミド前駆体の重合時、もしくは重合終了後に末端濃度に応じて加え反応させても良い。
【0026】
テトラカルボン酸2無水物と上記ジアミンとを反応、重合させる方法は、特に限定されないがN−メチルピロリドンなどの極性溶媒に上記ジアミンを溶解し、その溶液中に上記テトラカルボン酸二無水物添加、反応させて、ポリアミック酸を合成する。その際の反応温度は好ましくは−20℃〜150℃、好ましくは−5℃〜100℃の任意の温度を選択することができる。
【0027】
更にポリアミック酸の重合法としては通常の溶液法が好適である。溶液重合法に使用される溶剤の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、及びブチルラクトン等を挙げることができる。これらは単独でも、また混合して使用してもよい。
【0028】
得られたポリアミック酸溶液はメタノール、エタノール等の貧溶媒に沈殿単離させポリアミック酸を粉末として使用することが出来る。
【0029】
このポリアミック酸を熱アルカリ水溶液に溶解させる。アルカリ水溶液は無機物でも有機物でも本発明に適用されうるが、注意すべきは、アルカリ水溶液のpHが高すぎるとポリアミック酸が加水分解をおこし分子量が低下する恐れがあり、pHが低すぎるとポリアミック酸を溶解させるのに非常に長くの時間を必要とすることである。またアルカリ水溶液の温度が高すぎても低すぎても同様の問題が生ずる懸念がある。したがって好ましくは水酸化ナトリウム水溶液をpH7.5からpH9に調製して50℃から90℃にて用いる。ここで脂質を用いて溶解させることや超音波処理その他溶解促進効果を施すことも有用である。
【0030】
この溶液に、脂質を超音波処理などして水に分散させたものを加え、温度を室温に戻して数時間静置する。ここに有機溶媒を加え、分液漏斗等で有機相を分取する。ここで用いられる有機溶媒は水とよく分離し、さらにポリアミック酸と脂質とのポリイオン錯体をよく溶解する溶媒を使用する必要がある。例示すればベンゼンなど芳香族、クロロホルムなどハロゲン化物、酢酸エチルなどエステル類、テトラヒドロフランなどエーテル類溶媒が用いられる。
【0031】
次にこの有機相をエバポレータ等で濃縮し、有機溶媒で再沈処理する。ここで使用する有機溶媒は再沈処理の効率を高めるため、分取してきた有機相の有機溶媒と水をよく溶解し、さらにイオン錯体を形成していない脂質やポリマーが加水分解して生成したモノマーをよく溶解するものが適用される。例示すればメタノールなどアルコール類、アセトンなどケトン類、アセトニトリルなどニトリル類が好適である。
【0032】
次にこの分散液から、遠心分離またはろ過などの手法を用いてポリイオン錯体を分離する。こうして精製したポリイオン錯体を有機溶媒に再び溶解させ、定法にしたがって高湿度空気中でハニカム膜を作成する。ここで使用される溶媒は水とよく分離し、さらにポリアミック酸と脂質とのポリイオン錯体をよく溶解する溶媒を使用する必要がある。例示すればベンゼンなど芳香族、クロロホルムなどハロゲン化物、酢酸エチルなどエステル類、テトラヒドロフランなどエーテル類溶媒が用いられる。
【0033】
作成されたハニカム膜はいまだポリアミック酸の脂質とのポリイオン錯体であり、このままでは耐久性が高いとは言えない。したがってこのハニカム膜をイミド化処理し、ポリイミドハニカム膜として発明が完成する。イミド化の方法は既知の手法が適用できるが、好ましくはハニカム膜を有機溶媒と無水酢酸とピリジンの混合溶液に浸漬する手法がとられる。ここで用いられる有機溶媒はポリイオン錯体を溶解せず、無水酢酸およびピリジンをよく溶解するものが好適に用いられる。例示すればベンゼンなど芳香族溶媒があげられる。
【0034】
イミド化処理をおこなった後、残留する脂質をハニカム膜より除去することが望ましい。この目的のためには作成したポリイミドハニカム膜を有機溶媒で洗浄する。ここで使用する有機溶媒はポリイミドハニカム膜を溶解せず、脂質をよく溶解するものが望ましく、例示すればベンゼンなど芳香族、クロロホルムなどハロゲン化物、酢酸エチルなどエステル類、テトラヒドロフランなどエーテル類、エタノールなどアルコール類の溶媒が用いられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。
実施例1
ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)29.4g(0.1mol)とジアミノジフェニルエーテル(DDE)20.0g(0.1mol)のポリアミック酸をNMP278g中、23℃にて24時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このとき溶液の一部を採取しGPC(センシュウ科学、SSC−7200、RIディテクタ使用)により数平均分子量を測定し、156,000であることがわかった。この溶液を酢酸エチル2Lにゆっくりと投入し再沈殿させ、ろ過、乾燥処理をしてポリアミック酸粉末35.0gを得た。このポリアミック酸100mgをpH8の水に熱をかけて溶解させた。一方、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド 200mgを200mLの水に超音波をかけて分散させた。
【0036】
上記の2液を混合し、温度を室温に戻して一晩撹拌した。この後クロロホルムを加え、分液漏斗でクロロホルム相を分取した。エバポレータでクロロホルムを濃縮し、アセトンで再沈した。遠心分離機で2600rpm,30分遠心分離し、溶媒を乾燥させた(52.5mg,収率22.5%)。このポリイオン錯体溶液を希釈し、5g/Lの濃度のクロロホルム溶液を調製した。この溶液を5mL取りガラスシャーレ上に滴下し、飽和水蒸気を2L/分の流量にて吹き付けてハニカム膜を作成した。光学顕微鏡による観察から直径2μm程度の微細孔が最密充填された構造のハニカム膜が生成していることを確認した(図1)。
【0037】
このハニカム膜をベンゼン:無水酢酸:ピリジン=3:1:1の溶液中に一晩浸漬し、ポリイオン錯体をイミド化処理をしてポリイミドハニカム膜を作成した。脂質はエタノールでリンスすることによって除去した。光学顕微鏡による観察から、イミド化処理後もハニカム膜構造が保持されていることを確認した(図2)。 耐熱性試験はハニカム膜をエタノール中でガラス基板から剥離させ、カバーガラス上に乗せ、ホットステージ上で毎分10℃の昇温で加熱して顕微鏡観察することでおこなった。この結果、作成したポリイミドハニカム膜は約300℃までそのハニカム構造を保持することが確認された。
【0038】
実施例2
同様の手法で、基板を金イオンをスパッタしたITO電極付きガラスに変えてポリイミドハニカム膜を作成した。この試料を用いて、ポリイオン錯体とポリイミドハニカム膜についてFT-IRによる測定をおこない比較した(図3)。
【0039】
この結果、ポリイオン錯体のスペクトルで観察された脂質のアルキル鎖に由来する2900cm-1前後のピークとアミドに特徴的な1600cm-1程度のピークがポリイミドでは観察されなくなり、代わってイミドに特徴的な1720cm-1と1780cm-1に新たなピークが観察されたことから、ポリイミドが形成され、脂質は洗い流されていることが確認された。
【0040】
実施例3
シクロブタンテトラカルボン酸無水物(CBDA) 19.6g(0.1mol)とジアミノジフェニルエーテル(DDE)20.0g(0.1mol)のポリアミック酸をNMP222g中、23℃にて24時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。このとき溶液の一部を採取しGPC(センシュウ科学、SSC−7200、RIディテクタ使用)により数平均分子量を測定し、75,000であることがわかった。この溶液を酢酸エチル2Lにゆっくりと投入し再沈殿させ、ろ過、乾燥処理をしてポリアミック酸粉末30.0gを得た。このポリアミック酸470mgをpH8の水に熱をかけて溶解させた。一方、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド 1.90gを200mLの水に超音波をかけて分散させた。上記の2液を混合し、温度を室温に戻して一晩撹拌した。この後クロロホルムを加え、分液漏斗でクロロホルム相を分取した。エバポレータでクロロホルムを濃縮し、アセトニトリルで2回再沈した。これを乾燥させた(873mg,収率77.6%)。
【0041】
このポリイオン錯体溶液の5g/Lの濃度のクロロホルム溶液を調製した。この溶液を5mL取りガラスシャーレ上に滴下し、飽和水蒸気を2L/分の流量にて吹き付けてハニカム膜を作成した。光学顕微鏡による観察から直径2μm程度の微細孔が最密充填された構造のハニカム膜が生成していることを確認した。このハニカム膜をベンゼン:無水酢酸:ピリジン=3:1:1の溶液中に一晩浸漬し、ポリイオン錯体をイミド化処理をしてポリイミドハニカム膜を作成した。脂質はエタノールでリンスすることによって除去した。光学顕微鏡による観察から、イミド化処理後もハニカム膜構造が保持されていることを確認した。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、ポリイミド前駆物質であるポリアミック酸にてハニカム膜を作成した後イミド化処理し、ポリイミドハニカム膜を作成することによって耐久性に優れたハニカム膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に基づき作成したポリアミック酸ハニカム膜の顕微鏡写真。
【図2】実施例1に基づき作成したポリイミドハニカム膜の顕微鏡写真。
【図3】実施例2に基づき作成したポリアミック酸ハニカム膜とポリイミドハニカム膜のFT−IRスペクトルによる比較。
Claims (1)
- 両親媒性ポリマーの疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50%以上の大気下で基板上に塗布し、該有機溶媒を蒸発させることにより生じた微小水滴を蒸発させることにより得られる多孔質膜の製造法において、該多孔質膜が式(2)
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