図1は、本発明の一実施形態に係る仮設型枠組立体の斜視図である。また、図2は図1に示した仮設型枠組立体を構成する仮設型枠部材の平面図、図3は図2に示した仮設型枠部材の正面図、図4は図2に示した仮設型枠部材の背面図である。
まず、図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る仮設型枠組立体は、矢印Tで示す高さ方向(又は軸方向)に沿って、複数に5分割された筒状構造であって、5つの仮設型枠部材10を含んでいる。5つの仮設型枠部材10は、矢印Wで示す幅方向(又は周方向)に隣接する仮設型枠部材10において互に対面する辺が、凹凸嵌合により分解可能に結合され、全体として円筒状になっている。なお、仮設型枠組立体の平面視形状は、図1に示す略真円状のほかに、楕円形状(後述の図16参照)、四角形形状(後述の図17参照)、さらには多角形形状を採ることができる。
図1に示す仮設型枠組立体は、好ましくは、円筒の外径寸法OD1が850mm程度、内径寸法ID1が650mm程度である。この寸法例は、現在、最も普及しているマンホールの内径寸法900mmを想定したものである。この構造によると、一般的なマンホールの内部に仮設型枠組立体を配置することができるとともに、仮設型枠組立体の内部に作業員が入って作業するための空間を確保することができる。仮設型枠組立体の外径寸法OD1は、再構築工事に係る具体的なマンホールの内径寸法を念頭において、予め設定することができる。例えば、図1に示す仮設型枠組立体が、所謂2号マンホール(内径寸法1200mm)の内部に配置される場合、外径寸法OD1は1150mm程度に設定され、同仮設型枠組立体が、所謂3号マンホール(内径寸法1500mm)の内部に配置されれる場合、外径寸法OD1は1450mm程度に設定される。なお、50mmの径寸法差は、仮設型枠組立体の全外周に、後述する防食シート、及び、裏込め材の配置スペース(隙間)を確保するためものである。
次に、図1に示した仮設型枠部材10の具体的構造について、図2乃至図4を参照して説明する。図2乃至図4を参照すると、仮設型枠部材10は、基体部100と、第1の連結部15と、第2の連結部16とを含む。
基体部100は、発泡性樹脂を主成分としている。なお、本明細書において「発泡性樹脂」とは、粒子状の合成樹脂材料に発泡剤(例えば炭化水素ガス)を吸収させ、これに高温蒸気を当てて発泡させることにより得られる合成樹脂性加工素材を意味する。基体部100に用いられる発泡性樹脂の構成について、合成樹脂材料の種類や、発泡倍率などの具体的な組成は、仮設型枠部材10に必要とされる機械的強度や、製造コスト、加工容易性などの観点から適宜設定することができる。一例として、基体部100としては、EPS(発泡スチロール=expanded polystyrene)、EPP(expanded polypropylene)、EPE(expanded Polyethylene)などを用いることができる。
さらに、基体部100の具体的形状について説明すると、図2乃至図4に示す基体部100は、全体として断面円弧状となっている板状であって、板厚寸法D10が、100mm程度である。基体部100の板厚寸法D10は、仮設型枠部材10に必要とされる機械的強度(剛性)の観点から適宜設定することができる。
また、基体部100は、高さ方向Tに沿った高さ寸法T10が、300〜600mm程度である。基体部100の高さ寸法T10は、具体的な施工条件や、施工効率、などの観点から適宜設定することができる。
さらに、基体部100は、幅方向Wに沿った幅寸法W10が500mm程度である。基体部100の幅寸法W10は、マンホールの再構築工事に深く関係している。例えば、図2において一点鎖線で示す円Cは、一般的なマンホールの開口部の形状を示すものであって、最も普及しているマンホールの開口部の径寸法D210は、600mm程度である。図2に示すように仮設型枠部材10は、基体部100の幅寸法W10を、一般的なマンホールの開口部の径寸法D210よりも小さくすることにより、仮設型枠部材10をマンホール開口部から、その内部空間に搬入可能となっている。
再び、図2乃至図4を参照して説明する。基体部100は、一面11と、他面12と、湾曲端縁13と、非湾曲端縁14とを含む。一面11は、断面円弧状の基体部100において拡張された外径面(外径側の周面)であり、他面12は、断面円弧状の基体部100において縮小された内径面(内径側の周面)である。湾曲端縁13は高さ方向Tの両端において向かい合う2辺であり、非湾曲端縁14は高さ方向Tに直交する幅方向Wの両端において向かい合う2辺である。
第1及び第2の連結部15、16は、凹凸嵌合のための段差を有し、非湾曲端縁14のそれぞれに備えられている。より詳細に説明すると、第1の連結部15は、非湾曲端縁14の一方端面において幅方向Wに凸状に突出する段差を有し、この段差が高さ方向Tに沿って条状に伸びる凸縁となっている。第2の連結部16は、非湾曲端縁14の他方端面において幅方向Wに凹状に陥没する段差を有し、この段差が高さ方向Tに沿って条状に伸びる凹溝となっている。
第1及び第2の連結部15、16の段差は、予め、相互に凹凸嵌合が可能となる寸法、及び、形状に設定されていることが好ましい。この構成によると、同じ規格品である仮設型枠部材10の複数を必要なだけ準備し、隣接する仮設型枠部材10の第1及び第2の連結部15、16を相互に凹凸嵌合して、円筒状の組立体を構築することができるから、仮設型枠組立体を構成する部品点数を実質的に削減し、製造コストを低減することができる。
図1乃至図4を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体の構造において、基体部100は、発泡性樹脂を主成分としているから、従来の鉄製仮設型枠や、パイプサポートなどの金属製の支保工装置と比較して、大幅に軽量化することができる。従って、持ち運び時や組立時の等の取り扱いが容易な仮設型枠部材10を提供することができる。
基体部100は、発泡性樹脂を主成分としているから、従来の鉄製仮設型枠や、パイプサポートなどの金属製の支保工装置と比較して、材料コストを低減することができる。また、発泡性樹脂を主成分としているから、例えばヒートカッターなどを用いた熱線切断により、容易に成形することができる。従って、製造コストを低減することができる。
基体部100は、断面円弧状を有する板状であって、量産性に富む形状であるから、製造コストを低減することができるとともに、嵩張らない態様で容易に輸送することができる。
基体部100は、発泡性樹脂を主成分としているから、その発泡構造により優れた緩衝性、及び、機械的強度(剛性)を有している。しかも、基体部100は、板状であるから、例えば、ヒートカッターなどを用いた熱線切断時に、板厚寸法D10を適宜調節することにより、押し圧力に対する剛性を確保することができる。
さらに仮設型枠部材10は、第1及び第2の連結部15、16を有する。第1及び第2の連結部15、16は、凹凸嵌合のための段差を有し、基体部100の向かい合う非湾曲端縁14に備えられている。複数の仮設型枠部材10は、それぞれが幅方向Wに配置され、隣接する仮設型枠部材10において相対向する非湾曲端縁14−14が、第1及び第2の連結部15、16の凹凸嵌合により結合されて円筒状の仮設型枠組立体が構成される。この構成によると、本発明の一実施形態に係る仮設型枠組立体は、仮設型枠部材10の利点を全て有することができる。例えば、仮設型枠部材10の基体部100は、発泡性樹脂を主成分とし、外部からの押し圧力に対して優れた緩衝性、及び、機械的強度(剛性)を有しているから、仮設型枠組立体も外部からの押し圧力に対して優れた緩衝性、及び、機械的強度(剛性)を有している
また、仮設型枠部材10の基体部100は、発泡性樹脂を主成分とし、軽量であるから、仮設型枠組立体も軽量となる。
図1乃至図4を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体の利点について、さらに再構築工事の具体的な施工工程に沿った観点から説明する。図5乃至図15は本発明の一実施形態に係る下水道施設の再構築方法について一部を省略して示す部分断面図である。図5乃至図15において、図1乃至図4に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
まず、図5は、本発明の一実施形態に係る下水道施設の一部を省略して示す部分断面図である。図5に示す下水道施設において、コンクリート基体部2は、所謂、組立式マンホールを構成する斜壁ブロック21、直壁ブロック22、及び、底塊ブロック23を有し、これらが高さ方向Tに連結されていることにより一体的に形成される内周面20、及び、この内周面20により区画された内部空間200を有している。
さらに、斜壁ブロック21は、開口部210に蓋211を有し、この蓋211がグランドライン3に露出している。底塊ブロック23は、内部底面230上に流路231を有し、この流路231に流入管41、流出管42が接続されている。流路231は、流入管41、流出管42を接続し、流入管41から流出管42へ汚水5を流す。
図5に示すように、コンクリート基体部2がマンホールである場合、内部空間200の差し渡し寸法は、斜壁ブロック21の開口部210における径寸法D210で最小となり、直壁ブロック22、及び、底塊ブロック23における内径寸法D200で最大となる。
次に、具体的な再構築工程について説明すると、図5に示す工程において、コンクリート基体部2の内周面20に生じた腐食部分を、例えば、高圧水洗浄により除去する。内周面20は腐食部分が既に除去されており、この腐食部分を除去した後の部分が凹凸面25となっている。内周面20において、腐食部分を除去した後の凹凸面25には、予め、エポキシ樹脂や、モルタル等の補修剤を充填して補強してもよい。
図6に示す工程は、図5に示した工程のあとの工程であって、防食シート6を内部空間200に搬入する。防食シート6は、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分とし、可撓性を有することが好ましい。用いられる合成樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)等が好ましい。
防食シート6は、予め、内部空間200の内周長を横辺とし、底塊ブロック23の高さ寸法T23を縦辺とする四角形にカットし、さらにカットした四角形の防食シート6の縦辺を重ね合わせて接着し、無端の円筒状に加工する。この円筒状の防食シート6は、コンクリート基体部2の内径寸法D200より50mm程度小さい外径寸法となることが好ましい。例えば、コンクリート基体部2が、所謂1号マンホール(内径寸法D200=900mm)である場合、これに用いられる円筒状の防食シート6の外径寸法は、850mmとなる。この構造によると、防食シート6の外周面(60)と、内周面20との間に、両者の径寸法差による25mm程度の間隔(G)が生じ、この間隔(G)を裏込め材(7)の打設空間として用いることができる。
さらに、円筒状の防食シート6をマンホールの内部空間200に搬入する具体的な工程について、図7を参照して説明する。図7において一点鎖線で示す円Cは、マンホールの開口部210の形状を示すものであって、この円C(開口部210)の径寸法D210は、600mm程度である。防食シート6は、無端の円筒状に加工した可撓性防食シート6を、マンホールの開口部210の径寸法D210(=600mm)より小さい外径寸法となるように、例えば、中間部分で高さ方向Tに沿って内周方向に凹状に湾曲させ、全体的な外径寸法を縮径させる。この湾曲作業により、湾曲前の外径寸法が850mmである防食シート6を径寸法D210以下に縮径させ、開口部210から、内部空間200に搬入することができる。
図8に示す工程は、図6及び図7に示した工程のあとの工程であって、湾曲状態で縮径されている筒状の防食シート6は、内部空間200に搬入後、内壁面20に沿った円筒状に拡径(復元)され、且、内壁面20から間隔Gを隔てて、内部空間200に配置される。次に、仮設型枠部材10の複数を開口部210より、コンクリート基体部2の内部空間200に対して順々に搬入し、さらに防食シート6の内部において、複数の仮設型枠部材10を連結して筒状の仮設型枠組立体を構成し、防食シート6を内側から支持する。
隣接する仮設型枠部材10の連結工程について、図9を参照すると、一方の仮設型枠部材10の第1の連結部15を、他方の仮設型枠部材10の第2の連結部16に案内して、相互に凹凸嵌合する。この凹凸嵌合作業は、施工効率の観点から、高さ方向(T)からの垂直差込みではなく、幅方向(W)からの水平差込みによって行われることが好ましい。
図9に示す連結工程を順次繰り返すことにより、図10に示すように無端円筒状の仮設型枠組立体1が、同じく無端円筒状の防食シート6の内側に構築される。仮設型枠組立体1は、好ましくは、その外周面(60)が、防食シート6の内周面に圧着した状態で、底塊ブロック23の内部底面230に立設されている。
図11に示す工程は、図8乃至図10に示した工程のあとの工程であって、コンクリート基体部2の内壁面20と、防食シート6の外周面との間の間隔Gに裏込め材7を充填する。通常、裏込め材7には、モルタルコンクリートやセメント等を用いることができるが、より好ましくは速硬性コンククリートを用いる。裏込め材7に速硬性コンククリートを用いることにより、施工効率を向上し、施工期間を短縮することができる。
裏込め材7は、間隔G、及び、腐食部分を除去した後の内周面20の凹凸面25を埋める。このとき防食シート6に対して、矢印Fで示す方向に加えられる裏込め材7からの押し圧力(充填圧力)Fは、仮設型枠組立体1によって支持されており、充填圧力Fによる防食シート6の配置不良(変形、歪み、さらには剥離など)が仮設型枠組立体1によって防止されている。
底塊ブロック23の部分に充填した裏込め材7が硬化した後、一旦、仮設型枠組立体1を分解し、図12に示すように直壁ブロック22に対応する部分に再配置し、直壁ブロック22に対して図9乃至図11を参照した工程を繰り返す。
図13に示す工程は、図12に示した工程のあとの工程であって、裏込め材7の養生期間経過後に、図8乃至図10に示した工程の逆の順序に従って、仮設型枠組立体1を解体し、コンクリート基体部2の開口部210から搬出する。
図13に示す工程の後、さらに斜壁ブロック21の内壁面20に対して、別途防食シート6を貼り付けし、さらに高さ方向Tに隣接する防食シート6のオーバーラップ部分61には、エポキシ樹脂等の合成樹脂系シール剤62を貼付(塗布)するなどして硫化水素ガスに対する気密性、及び、汚水に対する水密性を確保することにより、図14及び図15に示す再構築マンホールが得られる。
図5乃至図15を参照して説明した下水道施設の再構築方法によると、図1乃至図4を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体1の利点を全て有することができる。例えば、仮設型枠部材10の基体部100は、発泡性樹脂を主成分としているから、その発泡構造により、外部からの押し圧力Fに対して優れた緩衝性、及び、機械的強度(剛性)を有している。下水道施設の再構築方法において、仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体1に加えられる押し圧力Fとは、裏込め材7の充填作業時に生じる充填圧力Fである。従って、本発明の一実施形態に係る再構築方法によると、裏込め材7の充填圧力Fに対抗することができるから、充填圧力Fによる防食シート6の配置不良(変形、歪み、さらには剥離など)を防止することができる。
また、本発明の一実施形態に係る下水道施設の再構築方法によると、複数の仮設型枠部材10を連結して仮設型枠組立体1を構成するから、予め仮設型枠部材10のそれぞれを、例えばマンホール開口部210より小さくしておくことにより、開口部210から容易に搬入することができるとともに、仮設型枠部材10の複数を筒状体への組み立て後は、マンホール内部空間200において大容量の内部空間を形成することができる。
仮設型枠部材10は、発泡性樹脂を主成分とし、軽量であるから、仮設型枠組立体1の組立作業を、容易、且、迅速に行うことができる。
仮設型枠部材10は、発泡性樹脂を主成分としているから、例えばヒートカッターなどを用いた熱線切断により、容易に成形することができる。従って、施工に係る下水道施設の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する仮設型枠組立体1を迅速、且、安価に用意することができる。
仮設型枠組立体1は、仮設型枠部材10の使用枚数、及び、組み合わせ枚数を任意に設定することにより、仮設型枠組立体1の径寸法、及び、平面視形状を容易に調整することができる。従って、本発明に係る仮設型枠組立体1の構造によると、施工対象である下水道施設の内径寸法や形状の変化に容易に追従し、且、迅速に仮設型枠組立体1を設置することができる。
さらに、仮設型枠部材10は、下水道施設の内部空間200において仮設型枠組立体1に組立した状態で、筒状であるから、仮設型枠組立体1を例えば内部底面230に自立させることができる。従って、防食シート6の内部空間200において、仮設型枠組立体1によって、防食シート6を支持固定する作業を容易に行うことができる。
図16及び図17は、本発明のもう一つの実施形態に係る仮設型枠組立体1の平面図である。図16及び図17において、図1乃至図15に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
まず、図16に示す仮設型枠組立体1は、図1乃至図15に示した実施形態とは異なり、第1に、仮設型枠組立体1の平面視形状が楕円形状である点、第2に、仮設型枠組立体1は、その楕円形を実現するために高さ方向(又は軸方向)Tに沿った分割数が増えて6分割構造となっている点に特徴がある。
仮設型枠組立体1の平面視形状が楕円形状である第1の相違点について、そもそも仮設型枠組立体1の平面視形状は、再構築工事の対象となる下水道施設の内部空間(200)の断面形状によって決定される。例えば、図1乃至図15を参照して説明したように、仮設型枠組立体1は防食シート(6)を支持するために用いられるものであって、防食シート(6)は、その可撓性によりマンホールの内壁面(20)に追従して配置される。図16に示す仮設型枠組立体1は、再構築工事に係る下水道施設の内部空間(200)の断面形状が楕円形状であって、防食シート(6)もこれに追従した場合に用いられる組立体1の実施形態を開示している。
さらに、仮設型枠組立体1が、前記楕円形を実現するために高さ方向(又は軸方向)Tに沿った分割数が増えて6分割構造となっている第2の相違点について、図16に示す仮設型枠組立体1は、図1乃至図15に示した断面円弧状の仮設型枠部材10、及び、これらを用いた円筒状の仮設型枠組立体1をベースとして、円筒の直径に沿った半割り部分に、断面平板状の仮設型枠部材10を追加して組み合わせることにより、円筒形状を所定の方向に引き伸ばした構造となっている。なお、断面平板状の仮設型枠部材10は、図1乃至図15に示した断面円弧状の仮設型枠部材10と、ほぼ同一の基本的構成を有している。
上述したように図16に示した実施形態の構造によると、断面円弧状の仮設型枠部材10と、断面平板状の仮設型枠部材10との2種類を適宜組み合わせることにより、仮設型枠組立体1の平面視形状、及び、分割数のバリエーション(多様性)を確保し、もって施工効率の向上を図ることができる。なお、図16に示した仮設型枠組立体1は、図1乃至図15を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた下水道施設の構造的特徴を全て有しているから、同じく利点を全て有しうることは自明である。
次に、図17に示す仮設型枠組立体1は、図1乃至図16に示した仮設型枠組立体1とは異なり仮設型枠部材10の基体部100は、平面視した形状がL字状であり、互いに直交する第1及び第2の面部を有している点、及び、この仮設型枠部材10の複数を角筒形形状に組み合わせている点に特徴がある。なお、図17に示す仮設型枠部材10は、図1乃至図15に示した断面円弧状の仮設型枠部材10と、ほぼ同一の基本的構成を有している。
そもそも仮設型枠組立体1の具体的な分割構造(分割数)は、マンホール開口部210と、内部空間との径寸法差によって決定される。例えば、両者間の径寸法差が大きくなれば、仮設型枠部材10の幅寸法を小さくしなければ開口部210から搬入することができなくなり、仮設型枠部材10の幅寸法が小さくなれば仮設型枠組立体1の分割数が増えることは明白である。従って、仮設型枠組立体1は、仮設型枠部材10をマンホール開口部210から容易に搬入することができる範囲で、具体的な分割構造(分割数)が設定される。
図17に示す仮設型枠組立体1は、図16を参照して説明した仮設型枠組立体1の平面視形状、及び、分割数のバリエーション(多様性)を示す実施形態であって、図1乃至図16を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた下水道施設の構造的特徴を全て有しているから、同じく利点を全て有しうることは自明である。
図18は本発明の更にもう一つの実施形態に係る仮設型枠組立体1の平面図、図19は図18に示した仮設型枠組立体1の正面断面図である。図18及び図19において、図1乃至図17に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
図18及び図19に示した仮設型枠組立体1は、図1乃至図17に示した仮設型枠組立体の外径寸法OD1を調節できる構造を有することにより、組立作業の効率の向上を図るとともに、防食シート6に対する密着力を向上した点に特徴の1つがある。即ち、図18及び図19に示した仮設型枠組立体1は、複数の仮設型枠部材10のうち少なくとも1つは、筒径拡張部19を有する。
より詳細に説明すると、筒径拡張部19を有する仮設型枠部材10は、第1の基体部101、第2の基体部102と、第1の連結部15と、第2の連結部16と、筒径拡張部19とを含む。
第1の基体部101は、発泡性樹脂を主成分とする断面円弧状の板状であって、一面11と、他面12と、湾曲端縁13と、非湾曲端縁14とを含む。一湾曲端縁13は基体部100の高さ方向Tの両端において向かい合う2辺であり、非湾曲端縁14は高さ方向Tに直交する幅方向Wの両端において向かい合う2辺である。
第1の基体部101は、非湾曲端縁14の一方に、第1の連結部15を有している。この第1の連結部15は、幅方向Wに凸状に突出する段差を有し、この段差が高さ方向Tに沿って条状に伸びる凸縁となっている。
第2の基体部102は、発泡性樹脂を主成分とする断面円弧状の板状であって、一面11と、他面12と、湾曲端縁13と、非湾曲端縁14とを含む。一湾曲端縁13は基体部100の高さ方向Tの両端において向かい合う2辺であり、非湾曲端縁14は高さ方向Tに直交する幅方向Wの両端において向かい合う2辺である。
第2の基体部102は、非湾曲端縁14の他方に、第2の連結部16を有している。第2の連結部16は、幅方向Wに凹状に陥没する段差を有し、この段差が高さ方向Tに沿って条状に伸びる凹溝となっている。
筒径拡張部19は、溝部191と、楔片192とを有している。楔片192は、好ましくは、仮設型枠部材10から切り出したものであり、平面から見て、基体部100の他面12から一面11に向かって先細りに細くなる楔形状を有し、高さ方向Tに沿って柱状に伸びている。楔片192は、溝部191に打ち込まれた状態で筒状体の径寸法を拡張させ、溝部191から取り出された状態で筒状体の径寸法を縮小させる。
溝部191は、高さ方向Tに沿って設けられている。溝部191は、例えば、仮設型枠部材10から楔片192を切り出した後の空間部分に相当するものであり、第1の基体部101の非湾曲端縁14の他方端面と、第2の基体部102の非湾曲端縁14の一方端面とにより構成され、高さ方向Tに沿って伸びている。
図18及び図19を参照して説明した仮設型枠組立体1の利点について、さらに具体的な使用方法の観点から説明する。図20及び図21は、図18及び図19に示した仮設型枠組立体の結合方法について、一部を省略して示す部分断面図である。図20及び図21において、図1及び図19に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
図20は、溝部191に楔片192を打ち込む前の状態を示している。図18に示す状態では、仮設型枠組立体1は、楔片192がない分だけ、外径寸法(OD1)が縮小されているから、例えば、5分割された仮設型枠組立体1において、5つ目(最後)の仮設型枠部材10を、先に立設されている仮設型枠部材10の間に凹凸嵌合させるにあたり、高さ方向(T)からの垂直差込みではなく、幅方向(W)からの水平差込みによって行うことができる。従って、図8及び図10に示した仮設型枠部材10の連結工程が容易になる。
図21に示す工程は、図18に示した工程のあとの工程であって、溝部191に楔片192が打ち込まれるにしたがって、対面する溝部191の端面が離間し、外径寸法(OD1)が、楔片192の幅寸法D192の分だけ、矢印で示す幅方向に拡張される。
図18及び図21に示したように、仮設型枠組立体1は、複数の仮設型枠部材10のうち少なくとも1つに、筒径拡張部19を有する。筒径拡張部19は、溝部191と、楔片192とを有しており、楔片192は、溝部191に打ち込まれた状態で外径寸法(OD1)を拡張させ、溝部191から取り出された状態で外径寸法(OD1)を縮小させることが可能な構造によると、図1乃至図17を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体1の利点を全て有することができる。
さらに、図18及び図21を参照して説明した構造によると、外径寸法(OD1)を調節できる構造を有することにより、組立作業の効率を向上するとともに、防食シート6に対する密着力を向上することができる。例えば、図9及び図11に示した仮設型枠部材10の連結工程において、内部空間200の内径D200が900mmの場合、このマンホール内に外径寸法(OD1)が850mmの組立体1を構築する場合、最後の仮設型枠部材10を差し込む際に、窮屈になる場合がある。この問題に対し、本実施形態では、組立工程の最後に結合される仮設型枠部材10に溝部191を設け、楔片192を打ち込むことにより外径寸法(OD1)を拡張させることが可能であるから、楔片192の幅寸法D192の分だけ、スペースに余裕が生まれる。従って、組立体1の組立作業を効率的に行うことができる。
さらに、楔片192を打ち込むことにより、組立体1の外径寸法(OD1)を、幅寸法D192の分だけ拡張することができるから、防食シート6に対する密着性が向上し、支保工装置としての信頼性が向上する。
図22は本発明の更にもう一つの実施形態に係る仮設型枠組立体1の正面断面図である。また、図23は図22に示した仮設型枠組立体1の結合方法について、一部を省略して示す部分断面図、図24は図23に示した工程のあと状態を示す部分断面図である。図22乃至図24において、図1乃至図21に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参 照符号を付す。
図22乃至図24に示す仮設型枠組立体1の筒径拡張部19は、図18乃至図21に示す楔片(主楔片)192が高さ方向Tに半割りにされている点、及び、この主楔片192の半割りの界面において、複数の副楔片193が高さ方向Tに間隔を隔てて配置されている点に特徴がある。即ち、図22乃至図24に示した仮設型枠組立体1は、図18乃至図21に示した筒径拡張部19による外径寸法(OD1)の調節機能について、さらなる向上を図った実施形態である。以下、筒径拡張部19に焦点を絞って説明する。
まず、図22を参照すると、筒径拡張部19は、溝部191と、主楔片192と、副主楔片193を有している。主楔片192は、平面で見た楔形状の中央部分で2つに分割されている以外は、図18乃至図21に示した楔片192と同様の基本的構成を有する。
副主楔片193は、平面から見て、基体部100の他面12から一面11に向かって先細りに細くなる楔形状を有している。複数の副楔片193は、主楔片192の半割りの界面に沿って、高さ方向Tに間隔を隔てて配置されている。副楔片193は、主楔片192の半割りの界面に打ち込まれた状態で外径寸法(OD1)を拡張させ、主楔片192の半割りの界面から取り出された状態で外径寸法(OD1)を縮小させる。副楔片193が複数用いられている利点は、施工効率の観点から、必要に応じて設置数、及び、設置箇所を調節することができるようにしたものである。副主楔片193は、主楔片192と同様に高さ方向Tに沿って柱状に伸びている構造であってもよい。
図22を参照して説明した仮設型枠組立体1の利点について、さらに具体的な使用方法の観点から説明する。図23及び図24は、図22に示した仮設型枠組立体の結合方法について、一部を省略して示す部分断面図である。図23及び図24において、図1及び図22に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
図23は、主楔片192の半割りの界面に副楔片193を打ち込む前の状態を示している。図23に示す状態では、既に溝部191に主楔片192が打ち込まれている状態であり、主楔片192の分だけ外径寸法(OD1)が拡張されている。副楔片193は、図21に示す状態から、さらに外径寸法(OD1)を広げる方向に調整したい場合に、主楔片192の半割りの界面に打ち込まれるものである。ここで、図21に示す主楔片192は、予め界面の内径面側に切欠194を有していることが好ましい。主楔片192が切欠194を有している構成によると、副楔片193を界面に打設する際の位置ズレを切欠194によって防止し、界面の内部に円滑に誘導することができる。
図24に示す工程は、図23に示した工程のあとの工程であって、主楔片192の半割りの界面に副楔片193が打ち込まれるにしたがって、界面が離間し、図18乃至図21に示した主楔片192の幅寸法D192が、さらに副楔片193の分だけ、矢印で示す幅方向に拡張される。図24に示す状態において、外径寸法(OD1)は、主楔片192と、副楔片193との組み合わせによる幅寸法D193の分だけ拡張される(D192<D193)。
図22乃至図24に示した仮設型枠組立体1は、図1乃至図21を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体1の利点を全て有することができる。
さらに、図22乃至図24を参照して説明した構造によると、主楔片192に副楔片193を打ち込むことにより、外径寸法(OD1)を、主楔片192の幅寸法D192以上に拡張することができる。したがって、防食シート6に対する密着性が向上し、支保工装置としての信頼性が向上する。
図22乃至図24に示す構成によっても、図18乃至図21を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた下水道施設の構造的特徴を全て有しているから、同じく利点を全て有しうることは自明である。
図25は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る仮設型枠組立体1の斜視図である。図25において、図1乃至図24に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
図25に示す仮設型枠組立体1は、湾曲端縁13のそれぞれに、第3及び第4の連結部17、18を有している点に特長がある。
第3及び第4の連結部17、18は、凹凸嵌合のための段差を有し、湾曲端縁13のそれぞれに備えられている。より具体的に、第3の連結部17は、湾曲端縁13の一方端面において凸状に突出する段差であり、幅方向Wに沿って条状に伸びる凸縁となっている。第4の連結部18は、湾曲端縁13の他方端面において凹状に陥没する段差であり、幅方向Wに沿って条状に伸びる凹溝となっている。第3及び第4の連結部17、18の段差は、予め、相互に凹凸嵌合に対応した段差となっている。
仮設型枠部材10の向かい合う2辺のそれぞれに凹凸嵌合可能な第3及び第4の連結部17、18が配置されている構成によると、同じ規格品である仮設型枠組立体1の複数を高さ方向Tに積層する場合に、隣接する仮設型枠部材10において、向かい合う第3及び第4の連結部17、18を連続して凹凸嵌合することができる。従って、仮設型枠組立体1を構成する部品点数を実質的に削減し、製造コストを低減することができる。
図25を参照して説明した仮設型枠部材10の利点について、図26乃至図29を参照してさらに具体的な使用方法(再構築工事)の観点から説明する。図26は本発明のもう一つの実施形態に係る下水道施設の再構築方法について一部を省略して示す部分断面図である。図26乃至図29において、図1乃至図25に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
図26に示す下水道施設は、所謂、組立式マンホールであって、コンクリート基体部2を含む。コンクリート基体部2は、組立式マンホールの各部を構成する斜壁ブロック21、直壁ブロック22、及び、底塊ブロック23の連結構造を有し、内周面20により区画された一体的な内部空間200を有している。
図26に示す工程において、防食シート6を内部空間200に搬入する。コンクリート基体部2は、予め、内周面20に生じた腐食部分を、例えば、高圧水洗浄により除去する。内周面20は腐食部分が既に除去されており、この腐食部分を除去した後の部分が凹凸面25となっている。
防食シート6を内部空間200に搬入するあたり、予め内部空間200の内周長を横辺とし、底塊ブロック23の高さ寸法T23と直壁ブロック22の高さ寸法T22とを足した寸法(高さ寸法T22+T23)を縦辺とする四角形形状にカットし、さらに、カットした防食シート6を、マンホールの開口部210の径寸法D210より小巻に縮径した筒状にして、開口部210から、その内部空間200に搬入する。
図27に示す工程は、図26に示した工程のあとの工程であって、縮径した筒状の防食シート6は、内部空間200に搬入後、内壁面20に沿った筒状に拡径し、さらに内壁面20から間隔Gを隔てて、内部空間200に配置される。筒状の防食シート6において、端縁がオーバーラップする部分には、好ましくは、エポキシ樹脂等の合成樹脂系シール剤を塗布し、防食シート6を無端円筒状とする。これにより硫化水素ガスに対する気密性、及び、汚水に対する水密性を確保することができる。
さらに、仮設型枠部材10の複数を開口部210より、コンクリート基体部2の内部空間200に対して順々に搬入し、筒状になった防食シート6の内部において、複数の仮設型枠部材10を連結して筒状の仮設型枠組立体を構成し、防食シート6を内側から支持する。
高さ方向Tに隣接する仮設型枠部材10の連結工程について、図28を参照すると、一方の仮設型枠部材10の第3の連結部17を、向かい合う他方仮設型枠部材10の第4の連結部18に案内して、相互に凹凸嵌合する。この凹凸嵌合作業は、施工効率の観点から、高さ方向Tからの差込みではなく、幅方向Wからの差込みによって行われることが好ましい。図28に示す連結工程を更に繰り返すことにより、図29に示すように無端円筒状の仮設型枠組立体1が、筒状の防食シート6の内側に構築される。この仮設型枠組立体1は、底塊ブロック23の内部底面230に立設されている。
さらに、コンクリート基体部2の内壁面20と、筒状になった防食シート6の外周面との間の間隔Gに裏込め材7を充填し、コンクリート基体部2の内壁面20と、筒状になった防食シート6の外周面との間に、裏込め材7を充填する。
裏込め材7は、間隔G、及び、腐食部分を除去した後の内周面20の凹凸面25を埋める。このとき防食シート6に対して、矢印Fで示す方向に加えられる裏込め材7からの押し圧力(充填圧力)Fは、仮設型枠組立体1によって支持される。裏込め材7の養生期間経過後に、図27乃至図28に示した工程の逆の順序に従って、仮設型枠組立体1を分解し、コンクリート基体部2の開口部210から搬出する。
図26乃至図29を参照して説明した下水道施設の再構築方法によると、図1乃至図4を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた仮設型枠組立体1の利点を全て有することができる。
さらに、底塊ブロック23と直壁ブロック22とに対して一工程で防食シート6を貼り付けることができるから、施工効率を向上し、施工期間を短縮することができる。
また、少なくとも縦方向に隣接する防食シート6の端縁がオーバーラップする部分がなくなる分、硫化水素ガスに対する気密性、及び、汚水に対する水密性が向上する。
図30は、本発明のもう一つの実施形態に係る下水道施設の再構築方法について一部を省略して示す部分断面図である。図30において、図1乃至図29に図示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
図30に示す再構築工程において、下水道施設は、マンホールとともに下水道施設を構成する排水管41又は42(図29ほか参照)であって、複数の仮設型枠組立体1と、防食シート6と、コンクリート基体部2と、裏込め材7とを含む。
複数の仮設型枠組立体1は、コンクリート基体部2の内部空間200において、防食シート6に沿った形状(筒状または管状)に組み立てられ、防食シート6の外周面60と、内周面20との間に充填される裏込め材7の充填圧力を支持する。
図1乃至図29を参照して説明したように、本発明に係る仮設型枠部材10の特徴の一つは、基体部100を発泡性樹脂で構成することにより製造コストの削減と、軽量化を図った点にある。さらに仮設型枠部材10を用いた仮設型枠組立体1の特徴の1つは、高さ方向(又は軸方向)Tに分割構造とすることにより、狭いスペースに対しても仮設型枠部材10の複数を搬入して筒状とし、再構築工事後は分解して搬出することができる点にある。
したがって、図30に示した仮設型枠組立体1は、図1乃至図29を参照して説明した仮設型枠部材10、及び、これを用いた下水道施設の構造的特徴を全て有しているから、同じく利点を全て有しうることは自明である。
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。