JP4749611B2 - ユニット式建物およびその建築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、箱状の建物ユニットを複数連結して形成したユニット式建物およびその建築方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、工場で製造した箱状の建物ユニットを、建築現場で複数連結させて建築されるユニット式建物が利用されている。
このユニット式建物を形成する建物ユニットとしては、四隅の柱の上下端を天井梁および床梁で連結した箱状のフレームを有するものが一般的である。フレームには、天井梁に支持される天井面材、床梁に支持される床面材および部屋を仕切る間仕切壁等の内装材や、軽量気泡コンクリート等で形成された外壁等の外装材が工場で組付けられている。
このようなユニット式建物によれば、工場において箱状のフレームに内装材や外壁材の取り付け作業まで行って建物ユニットを製造した後、これら建物ユニットを現場に運搬して連結作業を行うだけで建物が完成するから、建築現場での作業が大幅に削減され、建築工事を短期間で完了できるという利点がある。
【0003】
以上のようなユニット式建物において、顧客が吹き抜け空間を希望する場合がある。吹き抜け空間は、例えば、建物ユニットを上下に積層させ、下側の建物ユニットの天井面略中央と上側の建物ユニットの床面略中央に開口部を設けることによって形成される。このようにすれば、下側建物ユニットの天井面および上側建物ユニットの床面の各々略中央に開口部を設けるだけでよいため、開口部周囲の天井梁、床梁等で構成されるフレームの強度を低下させることなく、容易に吹き抜け空間を形成することができる(特開平10−280547号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した吹き抜け空間より大きな吹き抜け空間を顧客が希望する場合、例えば、水平方向に隣接する複数の建物ユニットに各々開口部を設けることによって吹き抜け空間を形成することとなる。しかし、これら開口部同士の間には天井梁および床梁が露出するため、全体で1つの吹き抜け空間という印象を与えることが困難となり、吹き抜け空間の開放感を十分に楽しむことができない可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、開放感あふれる吹き抜け空間を備えるとともに地震等の水平力に耐えうるユニット式建物およびその建築方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のユニット式建物およびその建築方法は、次の構成を採用する。本発明を図面を参照して説明すると、請求項1に記載のユニット式建物10,14は、四隅の柱41の上下端を天井梁42および床梁43で連結して箱状に形成されたフレーム40を有する建物ユニット20の角隅部が寄せ合わされて複数配置された下側建物ユニット12Aと、この下側建物ユニットの上に積層された上側建物ユニット12Bとを備えたユニット式建物において、前記下側建物ユニットのうち少なくとも2つの互いに隣接する建物ユニットは、互いに略平行に隣接する天井梁が省略されて大空間用下側建物ユニット21とされ、これら大空間用下側建物ユニットの上の上側建物ユニットは、前記省略された天井梁に略平行に隣接する床梁が省略されて大空間用上側建物ユニット22とされ、前記大空間用下側建物ユニットの省略された天井梁の両端に位置する柱47のうち少なくとも1つと、前記大空間用上側建物ユニットの省略された床梁の両端に位置する柱47のうち少なくとも1つとは、補強材で補強され、前記補強材は、前記下側建物ユニットの柱脚部分から前記上側建物ユニットの柱頭部分まで連続して設けられ、前記補強材は、連続する2つの補強部と、前記柱の上面または下面に接合される固定部53,63とを備え、前記2つの補強部は、前記大空間用下側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間と、前記大空間用上側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間とにそれぞれ介装され、かつこれら柱の側面に当接され、前記2つの補強部は一体成形され、前記固定部は、この一体成形された補強部の側面に設けられることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、天井梁が省略された大空間用下側建物ユニットおよび床梁が省略された大空間用上側建物ユニットを用いることによって吹き抜け空間を形成したので、複数の建物ユニットに亘って吹き抜け空間を設けることができ、開放感あふれる吹き抜け空間とすることができる。この時、省略された天井梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つと、省略された床梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つとを補強材で補強したので、天井梁および床梁を省略しても、ユニット式建物全体として剛性を確保することができ、地震等の水平力に十分抵抗できる。
【0008】
ここで、補強の対象となる柱に互いに水平方向に隣接する柱は、前記省略された天井梁および床梁の両端に位置しない柱に限らず、前記省略された天井梁および床梁の両端に位置する柱も含まれる。つまり、補強材を補強の対象となる柱同士の間に介装してもよい。この発明によれば、補強材を、補強の対象となる柱とこの柱に互いに水平方向に隣接する柱との間に介装し、かつこれら柱の側面に当接させたので、例えば、地震等による水平力が作用した場合でも、これらの柱と補強材とが一体となって水平力を負担するから、ユニット式建物の剛性を確実に向上できる。
【0009】
この発明によれば、補強材を補強の対象となる柱の全長に亘って設けたので、地震等による水平荷重が作用した場合に、特に負担の大きい柱頭部分および柱脚部分を含んで補強できるから、ユニット式建物の剛性をさらに向上できる。
【0010】
この発明によれば、補強材を下側建物ユニットの柱間から上側建物ユニットの柱間まで連続して設けたので、補強材によって上下の建物ユニットの柱が一体となって補強されるから、ユニット式建物の剛性をより向上できる。
【0011】
この発明によれば、補強材に固定部を設けたので、固定部によって補強材の位置が建物ユニットの柱の側面に固定されて、ずれを抑えることができるから、ユニット式建物を確実に補強できる。
【0012】
請求項2に記載のユニット式建物は、請求項1に記載のユニット式建物において、前記固定部は、前記大空間用下側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱の上面に跨って接合されていることを特徴とする。
請求項3に記載のユニット式建物の建築方法は、請求項1に記載のユニット式建物を建築するユニット式建物の建築方法であって、前記大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットを工場で製造した後、これら大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットの省略された天井梁および床梁部分に仮梁を設けて現場に運搬し、大空間用下側建物ユニットをその角隅部を寄せ合わせて複数配置して前記下側建物ユニットを形成し、補強材で前記大空間用下側建物ユニットの省略された天井梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つと、前記大空間用上側建物ユニットの省略された床梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つとを補強し、前記下側建物ユニットの上に前記大空間用建物ユニットを積層して上側建物ユニットを形成した後、前記仮梁を撤去し、前記補強材は、前記下側建物ユニットの柱脚部分から前記上側建物ユニットの柱頭部分まで連続して設けられ、前記補強材は、連続する2つの補強部と、前記柱の上面または下面に接合される固定部とを備え、前記2つの補強部は、前記大空間用下側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間と、前記大空間用上側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間とにそれぞれ介装され、かつこれら柱の側面に当接され、前記2つの補強部は一体成形され、前記固定部は、この一体成形された補強部の側面に設けられることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットを現場へ運搬する際に、省略された天井梁および床梁部分に仮梁を設けたので、運搬時に多少の振動、衝撃が加わっても、大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットのフレームが変形することがないから、ユニット式建物の施工精度を確保できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1には、本実施形態に係るユニット式建物10の全体斜視図が示されている。このユニット式建物10は、基礎11と、この基礎11の上に設けられた建物本体12と、この建物本体12の上に設けられた屋根13とを備えている。
このうち、建物本体12は、下側建物ユニットとしての1階建物ユニット12Aと、この1階建物ユニット12Aの上に設けられた上側建物ユニットとしての2階建物ユニット12Bとを備え、これら各階建物ユニット12A、12Bは、複数の建物ユニット20で構成されている。
【0015】
図2には、建物ユニット20のフレーム40の全体斜視図が示されている。
建物ユニット20は、図2に示すように、四隅の柱41の上下端を連結する天井梁42および床梁43を有する箱状のフレーム40を備えている。このうち、柱41と天井梁42とは、柱41の柱頭側に配置される柱頭接合部材45を介して連結され、柱41と床梁43とは、柱41の柱脚側に配置される柱脚接合部材46を介して連結されている。
天井梁42としては、長さの異なる短辺天井梁42Aおよび長辺天井梁42Bの二種類が設けられ、床梁43としては、長さの異なる短辺床梁43Aおよび長辺床梁43Bの二種類が設けられている。また、対向する長辺天井梁42Bの間には、天井面材を支持するための天井小梁が架け渡され(図示省略)、また、対向する長辺床梁43Bの間には、床を形成するパーチクルボード等の床面材を支持するための複数の根太が架け渡されている(図示省略)。
【0016】
図3には、ユニット式建物10の1階概略平面図が示され、図4には、ユニット式建物10の断面図が示されている。
建物ユニット20は、その角隅部が寄せ合わされて、その梁間方向に3個、桁行方向に2個の計6個配置されてユニット式建物10の各階建物ユニット12A、12Bを形成している。
【0017】
ユニット式建物10の図3中上端には、1階から2階への吹き抜け空間S1が形成されており、この吹き抜け空間S1は、2つの大空間用下側建物ユニットとしての大空間用1階建物ユニット21と、2つの大空間用上側建物ユニットとしての大空間用2階建物ユニット22とを含んで構成されている。
【0018】
大空間用1階建物ユニット21は、1階建物ユニット12Aの建物ユニット20において、2つの互いに略平行に隣接する短辺天井梁42Aが省略されて形成されている。
大空間用2階建物ユニット22は、大空間用1階建物ユニット21の上に設けられ、2階建物ユニット12Bの建物ユニット20において、前記省略された短辺天井梁42Aに略平行に隣接する短辺床梁43Aが省略されて形成されている。
【0019】
ここで、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の柱41のうち、省略された短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43Aの両端に位置する8本の柱47は、補強材30Bによって補強されている。
【0020】
図5には、補強材30Bの全体斜視図が示されている。
補強材30Bは、同一軸線上に設けられて連続する2つの補強部61および補強部62と、これら補強部61および補強部62の互いに対向する一端面同士の間に設けられた平板状の固定部53または固定部63とを備えている。
【0021】
補強部61,62は、長さ寸法L、厚みWを有する平板状の長尺材で形成され、その表裏面に当接面64Aを備えている。
固定部63は、略長方形であって、4個の位置決め孔63Aと2個の挿通孔63Bとを備えている。固定部53は、図5中点線で示されるように、固定部53を2つ繋ぎ合わせた略長方形であって、8個の位置決め孔53Aと2個の挿通孔53Bとを備えている。
【0022】
図6および図7には、建物ユニット20の連結部分の分解斜視図および断面図が示されている。
補強材30Bの補強部61および補強部62は、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の柱47を含む互いに隣接する柱41間、ここでは2本の柱47間に介装され、かつこれら柱47の側面に当接面64Aで当接している。
つまり、補強部61および補強部62の厚みWは、柱47同士の間に形成される隙間とほぼ同一となっている。
また、補強部61および補強部62の長さ寸法Lは、1階建物ユニット12Aおよび2階建物ユニット12Bの柱41の高さ寸法にほぼ等しくなっている。
【0023】
補強材30Bの固定部53は、1階建物ユニット12Aの大空間用1階建物ユニット21の柱47を含む水平方向に隣接する4本の柱41の上面としての柱頭接合部材45に跨って接合され、これにより、水平方向に隣接する大空間用1階建物ユニット21を含む4つの建物ユニット20が連結されている。
補強材30Bの固定部63は、固定部53と同様に、柱41の上面または下面としての柱頭接合部材45および柱脚接合部材46に接合されて、水平方向に隣接する大空間用1階建物ユニット21を含む2つの建物ユニット20を連結している。
また、固定部53および固定部63は、1階建物ユニット12Aの柱頭接合部材45と、これら柱頭接合部材45の上に配置される2階建物ユニット12Bの4本の柱41の下面としての柱脚接合部材46との間に介装され、これにより、上下方向に隣接する建物ユニット20同士が連結されている。
【0024】
具体的には、1階建物ユニット12Aの各柱頭接合部材45の上面には、2個の位置決めピン45Aと、1個の挿通孔45Bとが設けられている。また、2階建物ユニット12Bの各柱脚接合部材46の下面には、図示しない2個の位置決め孔と、1個の挿通孔46Bとが設けられている。
【0025】
1階建物ユニット12Aの柱頭接合部材45の位置決めピン45Aが、補強材30Bの固定部53,63の位置決め孔53A、63Aに挿通されて、2階建物ユニット12Bの柱脚接合部材46の位置決め孔に嵌合されることにより、各階建物ユニット12A、12B同士の位置が決定される。
さらに、1階建物ユニット12Aの柱頭接合部材45の挿通孔45B、46B、固定部53,63の挿通孔53B、63Bおよび2階建物ユニット12Bの柱脚接合部材46の挿通孔46Bにボルト81Aが挿通され、このボルト81Aにナット81Bが螺合されて締め付けられることにより、各階建物ユニット12A、12B同士が連結される。
【0026】
次に、ユニット式建物の組み立て手順を説明する。
まず、建物ユニット20、大空間用1階建物ユニット21、大空間用2階建物ユニット22、および補強材30Bを工場で製造した後、建築現場に運搬する。
この時、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の省略された短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43A部分に仮梁を設けておく。
建築現場では、基礎11を施工し、この基礎11上に建物ユニット20および大空間用1階建物ユニット21をその角隅部を寄せ合わせて隣接配置し、1階建物ユニット12Aを形成する。
【0027】
次に、大空間用1階建物ユニット21の柱47同士の間に補強材30Bを設置して、水平方向に隣接する建物ユニット20および大空間用1階建物ユニット21の位置決めを行なう。
続いて、建物ユニット20および大空間用2階建物ユニット21を1階建物ユニット12Aの上に載置し、1階建物ユニット12A、2階建物ユニット12B、および補強材30Bをボルト81A、ナット81Bで連結して一体化させた後、前記仮梁を撤去する。
その後、2階建物ユニット12Bの上に屋根13を施工する。
【0028】
したがって、本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)短辺天井梁42Aが省略された大空間用1階建物ユニット21および短辺床梁43Aが省略された大空間用2階建物ユニット22を用いることによって吹き抜け空間S1を形成したので、複数の建物ユニット20に亘って吹き抜け空間を設けることができ、開放感あふれる吹き抜け空間とすることができる。
この時、省略された短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43Aの両端に位置する8本の柱47を補強材30Bで補強したので、短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43Aを省略しても、ユニット式建物10全体として剛性を確保することができ、地震等の水平力に十分抵抗できる。
【0029】
(2)補強材30Bを、補強の対象となる柱47同士の間に介装し、かつこれら柱47の側面に当接面64Aを当接させたので、例えば、地震等による水平力が作用した場合でも、これらの柱47と補強材30Bとが一体となって水平力を負担するから、ユニット式建物10の剛性を確実に向上できる。
【0030】
(3)補強材30Bを補強の対象となる柱47の全長に亘って設けたので、地震等による水平荷重が作用した場合に、特に負担の大きい柱頭部分および柱脚部分を含んで補強できるから、ユニット式建物10の剛性をさらに向上できる。
【0031】
(4)補強材30Bを1階建物ユニット12Aの柱47間から2階建物ユニット12Bの柱47間まで連続して設けたので、補強材30Bによって大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の柱47が一体となって補強されるから、ユニット式建物10の剛性をより向上できる。
【0032】
(5)補強材30Bに固定部53,63を設けたので、固定部53,63によって補強材30Bの位置が大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の柱47の側面に固定されて、ずれを抑えることができるから、ユニット式建物10を確実に補強できる。
【0033】
(6)大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22を現場へ運搬する際に、省略された短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43A部分に仮梁を設けたので、運搬時に多少の振動、衝撃が加わっても、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22のフレームが変形することがないから、ユニット式建物10の施工精度を確保できる。
【0034】
〔第2実施形態〕
図3には、本実施形態に係るユニット式建物14の1階概略平面図が示されている。
【0035】
ユニット式建物14の図8中上端には、1階から2階への吹き抜け空間S2が形成されており、この吹き抜け空間S2は、4つの大空間用1階建物ユニット21と4つの大空間用2階建物ユニット22とを含んで構成されている。
【0036】
ここで、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の柱41のうち、省略された短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43Aの両端に位置する8本の柱47は、補強材30Aおよび補強材30Bによって補強されている。
すなわち、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の柱47が4本寄せ合わされた部分、つまり各柱47が独立柱となっている部分には、補強材30Aが設置され、柱47が2本寄せ合わされた部分には、補強材30Bが設置されている。
【0037】
図9には、補強材30Aの全体斜視図が示されている。
補強材30Aは、補強材30Bと同様に、同一軸線上に設けられて長さ寸法Lを有する2つの補強部51および補強部52と、これら補強部51および補強部52の互いに対向する一端面同士の間に設けられた平板状の固定部53とを備えている。
【0038】
補強部51,52は、各々4つの補強片54を備え、各補強片54は、厚みWを有する平板状の長尺材で形成され、その表裏面に当接面54Aを備えている。各補強片54は、平面略十字形に配置されることによって、互いに水平方向に隣接する補強片54の当接面54A同士が互いに交差している。
【0039】
補強材30Aの補強部51および補強部52の各補強片54は、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の互いに水平方向に隣接する4本の柱47間に介装され、かつこれら柱47の側面に当接面54Aで当接されている。
したがって、本実施形態によれば、上述した(1)〜(6)の効果と同様の効果がある。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、補強部51,61と補強部52,62とを別体としたが、これらを一体成形し、補強部の側面に固定部を設けてもよい。このようにすれば、補強材30A、30Bの剛性をより向上できるから、水平力に対するユニット式建物の剛性をより向上できる。
【0041】
また、第1実施形態では、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の角隅部を2つ、建物ユニット20の角隅部を2つの計4つの角隅部が寄せ合わされた部分には、補強材30Bを設置したが、これに限らず、補強材30Aを設置してもよい。
【0042】
また、各実施形態では、補強材30Bを、大空間用1階建物ユニット21および大空間用2階建物ユニット22の2本の柱47同士の間に介装したが、これに限らず、柱47と、省略された短辺天井梁42Aおよび短辺床梁43Aの両端に位置しない柱41との間に介装してもよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明のユニット式建物およびその建築方法によれば、次のような効果が得られる。
請求項1に記載のユニット式建物によれば、天井梁が省略された大空間用下側建物ユニットおよび床梁が省略された大空間用上側建物ユニットを用いることによって吹き抜け空間を形成したので、複数の建物ユニットに亘って吹き抜け空間を設けることができ、開放感あふれる吹き抜け空間とすることができる。
この時、省略された天井梁および床梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つを補強材で補強したので、天井梁および床梁を省略しても、ユニット式建物全体として剛性を確保することができ、地震等の水平力に十分抵抗できる。
【0044】
請求項1に記載のユニット式建物によれば、補強材を、補強の対象となる柱とこの柱に互いに水平方向に隣接する柱との間に介装し、かつこれら柱の側面に当接させたので、例えば、地震等による水平力が作用した場合でも、これらの柱と補強材とが一体となって水平力を負担するから、ユニット式建物の剛性を確実に向上できる。
【0045】
請求項1に記載のユニット式建物によれば、補強材を補強の対象となる柱の全長に亘って設けたので、地震等による水平荷重が作用した場合に、特に負担の大きい柱頭部分および柱脚部分を含んで補強できるから、ユニット式建物の剛性をさらに向上できる。
【0046】
請求項1に記載のユニット式建物によれば、補強材を下側建物ユニットの柱間から上側建物ユニットの柱間まで連続して設けたので、補強材によって上下の建物ユニットの柱が一体となって補強されるから、ユニット式建物の剛性をより向上できる。
【0047】
請求項1に記載のユニット式建物によれば、補強材に固定部を設けたので、固定部によって補強材の位置が建物ユニットの柱の側面に固定されて、ずれを抑えることができるから、ユニット式建物を確実に補強できる。
【0048】
請求項3に記載のユニット式建物の建築方法によれば、大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットを現場へ運搬する際に、省略された天井梁および床梁部分に仮梁を設けたので、運搬時に多少の振動、衝撃が加わっても、大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットのフレームが変形することがないから、ユニット式建物の施工精度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るユニット式建物を示す全体斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る建物ユニットのフレームを示す全体斜視図である。
【図3】前記実施形態に係るユニット式建物の1階概略平面図である。
【図4】前記実施形態に係るユニット式建物の断面図である。
【図5】前記実施形態に係る大空間用下側建物ユニットおよび大空間用上側建物ユニットの省略された天井梁および床梁の両端に位置する柱が2本寄せ合わされた部分に介装される補強材を示す全体斜視図である。
【図6】前記実施形態に係る建物ユニットの連結部分の分解斜視図である。
【図7】前記実施形態に係る建物ユニットの連結部分の断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るユニット式建物を示す概略平面図である。
【図9】前記実施形態に係る大空間用下側建物ユニットおよび大空間用上側建物ユニットの省略された天井梁および床梁の両端に位置する柱が4本寄せ合わされた部分に介装される補強材を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
10,14 ユニット式建物
12A 下側建物ユニットとしての1階建物ユニット
12B 上側建物ユニットとしての2階建物ユニット
20 建物ユニット
21 大空間用下側建物ユニットとしての大空間用1階建物ユニット
22 大空間用上側建物ユニットとしての大空間用2階建物ユニット
30A、30B 補強材
40 フレーム
41 柱
42 天井梁
43 床梁
47 省略された天井梁および床梁の両端に位置する柱
53,63 固定部
Claims (3)
- 四隅の柱の上下端を天井梁および床梁で連結して箱状に形成されたフレームを有する建物ユニットの角隅部が寄せ合わされて複数配置された下側建物ユニットと、この下側建物ユニットの上に積層された上側建物ユニットとを備えたユニット式建物において、
前記下側建物ユニットのうち少なくとも2つの互いに隣接する建物ユニットは、互いに略平行に隣接する天井梁が省略されて大空間用下側建物ユニットとされ、
これら大空間用下側建物ユニットの上の上側建物ユニットは、前記省略された天井梁に略平行に隣接する床梁が省略されて大空間用上側建物ユニットとされ、
前記大空間用下側建物ユニットの省略された天井梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つと、前記大空間用上側建物ユニットの省略された床梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つとは、補強材で補強され、
前記補強材は、前記下側建物ユニットの柱脚部分から前記上側建物ユニットの柱頭部分まで連続して設けられ、
前記補強材は、連続する2つの補強部と、前記柱の上面または下面に接合される固定部とを備え、
前記2つの補強部は、前記大空間用下側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間と、前記大空間用上側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間とにそれぞれ介装され、かつこれら柱の側面に当接され、
前記2つの補強部は一体成形され、前記固定部は、この一体成形された補強部の側面に設けられることを特徴とするユニット式建物。 - 請求項1に記載のユニット式建物において、
前記固定部は、前記大空間用下側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱の上面に跨って接合されていることを特徴とするユニット式建物。 - 請求項1に記載のユニット式建物を建築するユニット式建物の建築方法であって、
前記大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットを工場で製造した後、これら大空間用上側建物ユニットおよび大空間用下側建物ユニットの省略された天井梁および床梁部分に仮梁を設けて現場に運搬し、大空間用下側建物ユニットをその角隅部を寄せ合わせて複数配置して前記下側建物ユニットを形成し、補強材で前記大空間用下側建物ユニットの省略された天井梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つと、前記大空間用上側建物ユニットの省略された床梁の両端に位置する柱のうち少なくとも1つとを補強し、前記下側建物ユニットの上に前記大空間用建物ユニットを積層して上側建物ユニットを形成した後、前記仮梁を撤去し、
前記補強材は、前記下側建物ユニットの柱脚部分から前記上側建物ユニットの柱頭部分まで連続して設けられ、前記補強材は、連続する2つの補強部と、前記柱の上面または下面に接合される固定部とを備え、前記2つの補強部は、前記大空間用下側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間と、前記大空間用上側建物ユニットの柱を含む互いに水平方向に隣接する柱間とにそれぞれ介装され、かつこれら柱の側面に当接され、前記2つの補強部は一体成形され、前記固定部は、この一体成形された補強部の側面に設けられることを特徴とするユニット式建物の建築方法。
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