JP4747449B2 - リチウム2次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極電極と負極電極との間にセパレータを挟持したリチウム2次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のリチウム2次電池は、エネルギ密度が高い等の理由で、広範囲の用途で使用されている。例えば、モータを駆動源とする電気自動車や、モータと内燃機関を駆動源とするいわゆるハイブリッド車両では、モータの電力源としてリチウム2次電池が搭載されている。
【0003】
近年では、リチウム2次電池に用いる電解質についての研究が進み、例えば、特開平11−238523号公報では、特定のポリマーをリチウムイオン電解液と共に不織布に含浸させたゲル電解質が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報で提案された従来のリチウム2次電池では、次のような問題点が指摘されるに至った。
【0005】
電気自動車やハイブリッド車両では、種々変化する走行状態に併せたモータ制御に適合できるよう、車両搭載の2次電池には、高速充放電が必要とされる。この高速充放電を行うには、電池の内部抵抗が低いほど都合がよい。ところが、上記の公報で提案されたリチウム2次電池では、不織布を用いている都合上、内部抵抗の低減には限界がある。一方、不織布を除くことも考えられるが、単純に不織布を取り除いただけでは正負の電極を実用上非接触の状態に維持することが難しく、現実的な解決とはならない。
【0006】
また、充放電の際には電極界面においてリチウムイオンの挿入・離脱反応が進行するので、この反応時の抵抗(界面抵抗)を小さくすることが好ましい。ところが、上記公報で採用されたポリエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド系のゲル電解質では、界面抵抗が比較的大きく、この点からも内部抵抗の低減が阻害されていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされ、リチウム2次電池の内部抵抗の低減を図ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明のリチウム2次電池は、
正極電極と負極電極との間にセパレータを挟持したリチウム2次電池であって、
前記セパレータは、前記正負の電極を非接触状態で対峙させることが可能な硬さと、前記正負の電極間の電解質としての機能とを有するゲル電解質膜とされ、
該ゲル電解質膜のセパレータと前記正負の電極の電極面との間に、リチウムイオンに対する配位力が小さく該イオンとの相互作用が前記ゲル電解質膜のセパレータより小さい特性を有するゲル電解質を備える
ことを特徴とする。
【0009】
上記構成を有する本発明のリチウム2次電池では、セパレータをゲル電解質膜のセパレータとしたので、不織布等の内部抵抗低減阻害物を正負の電極間に置くことがない。しかも、このゲル電解質膜のセパレータは、電解質としての機能も果たすことから、セパレータを隔てた正極・負極間のリチウムイオンの動きを阻害しない。
【0010】
また、正負の電極内部のゲル電解質は、リチウムイオンに対する配位力が小さく該イオンとの相互作用がゲル電解質膜のセパレータより小さい特性を有するので、正負の各電極の電極界面およびセパレータの膜面界面において、リチウムイオンに配位した電解質物質の配位解除を容易に引き起こす。よって、電極界面におけるリチウムイオンの挿入・脱離反応をスムーズに進行させることができ、界面抵抗の低減をもたらす。これらの結果、電池全体としての内部抵抗の低減を図ることができ、これにより、2次電池の出力向上を図ることができる。
【0011】
上記の構成を有する本発明のリチウム2次電池では、セパレータとなるゲル電解質膜を、弾性率が約10kg/cm2 以上で、イオン伝導度が約1mS/cm以上の特性を有する。
【0012】
こうすれば、正負の電極を非接触状態で確実に対峙させることができると共に、正負の電極間の電解質としての機能も確実に確保できる。この場合、弾性率の上限は、電解質膜の製造手法や原材料種別、その配合等で定めればよい。イオン伝導率についても同様である。
【0013】
こうした特性のゲル電解質膜としては、リチウムイオン電解液に、アルキレンオキサイドのモノアクリレート或いはトリアクリレートを混合し、ゲル化された膜が好適であり、こうすれば、上記特性を確実に有するゲル電解質膜のセパレータとできる。
【0014】
また、ゲル電解質は、リチウムイオン電解液に、ポリ弗化ビニリデンを混合し、ゲル化されたゲル電解質であることが好ましく、こうすれば、低配位力・低相互作用の特性を確実に有する電解質とできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るリチウム2次電池の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は実施例のリチウム2次電池10の構造を模式的に説明するための説明図である。
【0016】
図示するように、リチウム2次電池10は、正極電極12と負極電極14との間にセパレータ16を配置し、これを正極・セパレータ・負極の繰り返しで積層させた構造を有する。また、正負の各電極内部には、リチウムイオン移動のためのゲル電解質17を介在させている。それぞれの正極電極12は正極配線18に接続され、負極電極14は負極配線20に接続されており、正負の端子から電池起電力が出力される。
【0017】
セパレータ16は、後述するように作成されたゲル電解質膜であり、その弾性率は約10kg/cm2 とされている。よって、このセパレータ16により、正極電極12と負極電極14とを対峙させても、両電極を非接触の状態とできる。また、セパレータ16は、約1mS/cmのイオン伝導度を有するので、正極・負極間のリチウムイオンの動きを阻害することはなく、正極電極12と負極電極14との間の電解質としても機能する。なお、図においては各電極間スペースは誇張して描かれている。
【0018】
ゲル電解質17は、後述するようにゲル化されたゲル電解質であり、リチウムイオンに対する配位力が小さく該イオンとの相互作用がゲル電解質膜のセパレータ16より小さい特性を有する。よって、このゲル電解質17は、正極電極12および負極電極14の各電極の電極界面において、リチウムイオンに配位した電解質物質の配位解除を容易に引き起こす。このため、電極界面におけるリチウムイオンの挿入・脱離反応をスムーズに進行させることができ、界面抵抗の低減をもたらす。この界面抵抗の低減効果については後述する。
【0019】
次に、上記したリチウム2次電池の製造工程について説明する。正負の電極は、次のように作成した。
【0020】
A)正極作成;
正極活物質としてのコバルト酸リチウムと、導電化材としてのカーボンプラックと、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(略号:PVDF)とを準備する。カーボンプラックは、適宜な粒径、例えば約1μm程度の平均粒径に調整済みである。こうして準備したコバルト酸リチウムとカーボンプラックとPVDFを、nメチルピロリドン(略号:NMP)等の溶媒に混入して、マグネットスターラ等の混合機で混合させ、ペースト状にする。このペーストを、電池電極形状に形成されたアルミニウム集電箔に塗布し、溶媒を蒸発除去する。こうすることで、表裏の電極面に正極活物質層を有する正極電極12を作成した。
【0021】
B)負極作成;
負極についても同様の手順を採り、負極活物質としての天然黒鉛と、結着材としてのPVDFとを準備し、これらをNMPの溶媒に混入して、ペースト状にする。このペーストを、電池電極形状に形成された銅集電箔に塗布し、溶媒を蒸発除去する。こうすることで、表裏の電極面に負極活物質層を有する負極電極14を作成した。
【0022】
C)セパレータ作成
セパレータ作成に当たっては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合してこれを有機溶媒とする。この有機溶媒中に、リチウム塩(本実施例では、LiN(CF3SO2)2の化学式のリチウム塩)を1mol/リットルの濃度で溶解させてこれを電解液とする。そして、この電解液に、エチレンオキサイド(略号:PEO)のトリアクリレートと、重合開始剤としての過酸化ベンゾイルとを混入して、これらを混合した溶液を得る。この溶液とする際のLiN(CF3SO2)2の電解液と、PEOのトリアクリレートと、重合開始剤(過酸化ベンゾイル)の混合割合は、上記した弾性率とイオン導電度が得られるものであれば適宜のものとでき、本実施例では、重量比で50:50:1とした。次いで、こうして得た溶液を樹脂フィルム上にドクターブレード法等の薄膜形成手法で塗布し、80℃×60分の条件で乾燥させた後に室温まで冷却してゲル化し(PEOゲル)、樹脂フィルムを取り除いて膜厚約25μmのゲル電解質フィルムを得た。このゲル電解質フィルムを電池電極形状に倣って切り出し、これをセパレータ16とした。
【0023】
D)ゲル電解質作成
まず、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合した有機溶媒中に、リチウム塩(本実施例では、LiN(CF3SO2)2の化学式のリチウム塩)を1mol/リットルの濃度で溶解させてこれを電解液とする。そして、この電解液を約80℃に過熱した状態で、当該電解液にポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(略号;PVDF−HFP)を混入して、これらを混合した溶液を得る。この溶液とする際のLiN(CF3SO2)2の電解液とPVDF−HFPの混合割合は、上記した特性(低配位力・低相互作用)が得られるものであれば適宜のものとでき、本実施例では、重量比で7:1とした。次いで、こうして得た溶液(約80℃)に、A)、B)で作成した正極電極12と負極電極14とを浸漬して所定時間放置し、各電極を溶液から取り出した後に室温放置する。これにより、電解液がゲル化して(PVDF−HFPゲル)、ゲル電解質17が生成される。こうして生成したゲル電解質と既述した集電箔を含むものが正・負の電極として機能する。
【0024】
E)電池作成
こうして作成した正極電極12と負極電極14とを、セパレータ16を介在させて密着し、これを正極・セパレータ・負極の繰り返しで積層させてリチウム2次電池10とする。各電極は既述したように正負の配線に接続される。
【0025】
次に、実施例のリチウム2次電池10の評価について説明する。評価に当たっては、次の比較例1〜3を用意した。
【0026】
比較例1は、ゲル電解質17の特性において本実施例と相違する。また、比較例1は、上記の本実施例のリチウム2次電池10におけるセパレータ16と同質の特性の電解液をゲル化したゲル電解質を有し、電解質が1種類である点でも相違する。この比較例1の作成は、上記のD)ゲル電解質作成の際に、セパレータ16作成で用いたものと同じ電解液(炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合した有機溶媒中に、LiN(CF3SO2)2を1mol/リットルの濃度で溶解させた電解液)を用いる。そして、この電解液(約80℃に加熱)とPEOのトリアクリレートと重合開始剤(過酸化ベンゾイル)とを、50:50:1の重量比で混合した溶液を得て、こうして得た溶液(約80℃加熱下)に、A)、B)で作成した正極電極12と負極電極14とを浸漬して所定時間放置し、各電極を溶液から取り出した後に室温放置する。これにより、セパレータ16と同質の特性を有するゲル電解質(PEOゲル)が生成される。セパレータ作成と電池作成は、上記のC)、E)の通りである。
【0027】
比較例2は、セパレータ16の特性において本実施例と相違する。また、比較例2は、上記の本実施例のリチウム2次電池10におけるゲル電解質17と同質の特性の電解液をゲル化したゲル電解質のセパレータを有し、電解質が1種類である点でも相違する。この比較例2の作成は、上記のC)セパレータ作成の際に、ゲル電解質17作成で用いたものと同じ電解液(炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合した有機溶媒中に、LiN(CF3SO2)2を1mol/リットルの濃度で溶解させた電解液)を用いる。そして、この電解液(約80℃に加熱)とPVDF−HFPとを、7:1の重量比で混合した溶液を得て、こうして得た溶液を樹脂フィルム上に塗布し、その後、室温まで冷却(徐冷)してゲル化し(PVDF−HFPゲル)、樹脂フィルム除去・切り出しを行って膜厚約25μmのゲル電解質フィルムを得た。これにより、ゲル電解質17と同質の特性を有するセパレータが生成される。次いで、A)、B)で作成した正極電極12と負極電極14とをD)ゲル電解質作成で得た溶液(電解液)に浸漬して所定時間放置し、各電極を溶液から取り出した後に室温放置する。電池作成は上記E)の通りである。
【0028】
比較例3は、セパレータに不織布を用いた従来のタイプの電池であり、セパレータ構成で相違し、電極間のゲル電解質が総てゲル電解質17と同質の特性を有し、電解質が1種類である点でも相違する。この比較例3の作成は、上記のC)セパレータ作成の際に、ゲル電解質17作成で用いたものと同じ電解液(炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合した有機溶媒中に、LiN(CF3SO2)2を1mol/リットルの濃度で溶解させた電解液)を用いる。そして、この電解液(約80℃に加熱)とPVDF−HFPとを、7:1の重量比で混合した溶液を得て、こうして得た溶液(約80℃)に、膜厚約25μmのポリエステル製不織布を浸漬し、この不織布を取り出した後に、乾燥(80℃×60分)・室温冷却を経て、不織布を含みゲル電解質17と同質の特性のゲル電解質(PVDF−HFPゲル)を含浸させたセパレータが生成される。次いで、A)、B)で作成した正極電極12と負極電極14とをD)ゲル電解質作成で得た溶液(電解液)に浸漬して所定時間放置し、各電極を溶液から取り出した後に室温放置する。電池作成は上記E)の通りである。
【0029】
上記した本実施例のリチウム2次電池10と比較例1〜3について、電池全体としての内部抵抗を測定した。その結果を図2に示す。
【0030】
この図2から明らかなように、本実施例によれば、内部抵抗を比較例に比べて低減することができた。この結果、本実施例のリチウム2次電池10によれば、2次電池の出力向上を図ることができる。
【0031】
なお、比較例1において内部抵抗が大きくなる理由は、次のように考えられる。この比較例1では、セパレータを形成するゲル電解質と電極間のゲル電解質とが共にPEOゲルであり、そのイオン伝導度は約1mS/cm程度である。従って、本実施例のように電極間を低配位力・低相互作用のゲル電解質17(PVDF−HFPゲル)とした場合とは異なり、リチウムイオンには電解質物質が強く配位するので、電極界面での界面抵抗が大きいことによると考えられる。
【0032】
比較例2において電極ショートの現象が見られた理由は、次のように考えられる。この比較例2では、セパレータを形成するゲル電解質がPVDF−HFPゲルであるために、その弾性率が低くてゲルの硬さが不十分となり、正負の電極を非接触状態に維持するというセパレータとしての機能を果たせなかったためと考えられる。
【0033】
比較例3では、セパレータに含まれるゲル電解質と電極間のゲル電解質とを低配位力・低相互作用のゲル電解質(PVDF−HFPゲル)としたので、電極界面におけるリチウムイオンの挿入・脱離反応をスムーズに進行させることも可能である。また、セパレータに含ませたゲル電解質に限ればリチウムイオン移動を阻害しない。これにも拘わらずこの比較例3で内部抵抗が大きくなっているのは、リチウムイオンの移動を阻害する不織布を用いてことによる考えられる。
【0034】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のリチウム2次電池10の構造を模式的に説明するための説明図である。
【図2】本実施例のリチウム2次電池10と比較例1〜3について、電池全体としての内部抵抗を測定した結果を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…リチウム2次電池
12…正極電極
14…負極電極
16…セパレータ
17…ゲル電解質
18…正極配線
20…負極配線
Claims (3)
- 正極電極と負極電極との間にセパレータを挟持したリチウム2次電池であって、
前記セパレータは、前記正負の電極を非接触状態で対峙させることが可能な硬さと、前記正負の電極間の電解質としての機能とを有するゲル電解質膜とされ、
該ゲル電解質膜のセパレータと前記正負の電極の電極面との間に、リチウムイオンに対する配位力が小さく該イオンとの相互作用が前記ゲル電解質膜のセパレータより小さい特性を有するゲル電解質を備え、
前記ゲル電解質膜は、弾性率が約10kg/cm 2 以上で、イオン伝導度が約1mS/cm以上の特性を有する
ことを特徴とするリチウム2次電池。 - 請求項1記載のリチウム2次電池であって、
前記ゲル電解質膜は、リチウムイオン電解液に、アルキレンオキサイドのモノアクリレート或いはトリアクリレートを混合し、ゲル化された膜であるリチウム2次電池。 - 請求項1または請求項2に記載のリチウム2次電池であって、
前記ゲル電解質は、リチウムイオン電解液に、ポリ弗化ビニリデンを混合し、ゲル化されたゲル電解質であるリチウム2次電池。
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