JP4746203B2 - 超音波流量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は流体中の超音波の伝播時間を、上流から下流(順方向)と下流から上流(逆方向)の両方について測定して流速を算出し、さらに流量を求める超音波流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
測定原理の一例として、図4に示すように、流体中に距離Lを離して流管3の上流と下流に配置した1組の超音波送受波器の一方の送受波器1から他方の送受波器2への順方向伝播時間t1 は、静止流体中の超音波の音速をC、流体の流れの速さをVとすると、
t1 =L/(C+V)
となる。
【0003】
また、送受波器2から送受波器1への逆方向伝播時間t2 は、
t2 =L/(C−V)
となる。伝播時間t1 とt2 とから流速Vを、
V=(L/2){(1/t1 )−(1/t2 )}
として求めていた。
【0004】
上述の測定原理において、超音波が受信側の送受波器に到達する時期、つまり到達時点を特定する受信検知の方法として、特定波のゼロクロス点を検知するようにしたものがある。図5は発信のタイミングを示す発信駆動信号と受信波を示している。実際の受信波は非常に小さく、先ず増幅される。同図の受信波は増幅後の波形を示している。
【0005】
aが到達時点で、徐々に振幅が大きくなる。その後最大振幅となり徐々に小さくなる。ところが到達時点aはノイズに隠れて検知できない。そこで、次のような方法が行われている。
【0006】
ノイズより十分大きな基準電圧レベルとしてのしきい値VTHを決め、このレベルに最初に達した波、例えば同図の第3波がb点でしきい値に達した後ゼロレベルを通るゼロクロスポイントcを検知して受信検知とする方法である。
【0007】
しきい値VTHは常に何番目かのある特定の波(例えば第3波)のゼロクロスポイントを検知するように定めてあり、実際の到達時間tは、a点からc点までの時間τを予め求めて記憶しておき、測定した時間t+τに相当する値から時間τを減算することにより求めている。
【0008】
送信から受信までの順方向伝播時間や逆方向伝播時間を求めるのに、単純に測定した到達時間t+τから時間τを減ずるのではなく、伝播時間計測の精度を向上するために、受信すると同時に次の送信を同じ方向に行うことを複数回(n−1回)繰り返すことにより、一方向、例えば順方向の送受信をn回連続して繰り返して、最初(第1回目)の順方向送信から最後(第n回目)の受信までの時間n(t1 +τ)を測定し、次に他方向、例えば逆方向への送受信を同様にしてn回連続して繰り返して、最初の逆方向送信から最後の受信までの時間n(t2 +τ)を測定し、これらの各方向の複数回の送受信で得た測定値からnτを減じ、各方向の伝播時間t1 とt2 とを計算して流速更に流量を求める超音波流量計も公知である。
【0009】
ところが、受信波の大きさは測定する気体の圧力や、或いは超音波送受波器を構成する振動子の個々の特性によって異なる。その結果、個々のしきい値VTHの調整はもちろん、場合によっては流量計の設置場所毎に現地でしきい値VTHや、受信側の送受波器で得た信号を増幅する増幅器の増幅率の調整が必要となる。
【0010】
そこで、自動的に最適なしきい値VTHにできるいくつかの方法が模索されている。その1つは、ピーク値ホールド回路やオートマチックゲインコントロール回路(AGC)を用いて受信波のピーク値が常に一定の大きさになるよう増幅器のゲイン(前記増幅率)を調整して、狙った波をしきい値VTHで捉えるようにすることで、受信波の方をしきい値VTHに合わせる方法である。もう1つは、直前の受信波のピーク値をホールドし、そのピーク値の電圧に一定値を掛けた値をしきい値VTHとして使う方法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法は、消費電流の大きいアナログ回路部が大掛かりになってコスト高になる。また、ある特定電圧を一定時間ホールドしている必要があるとか、或いはしきい値VTHを決めるために、測定とは別の超音波の送受信を行う必要があるため、低消費電流にすることが難しいなどの問題点があった。
【0012】
特にピーク値等のホールド回路は低消費電力化の妨げとなる。1対の送受波器間の距離が200mm程度の気体流量計では伝播時間tが0.5ms程度であるが、繰り返し送受信を行う複数回(n回)が100回程度になるとntが50msにもなり、この長い時間の間、一定の電圧をホールドするのに大きな電力を消費するからである。
【0013】
そこで、本発明はこれらの問題点を解消できる超音波流量計を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、送信側としても受信側としても働く超音波送受波器を少なくとも1対設け、流体の流れの中を上流から下流の順方向及び下流から上流の逆方向に超音波の送受信を行い、その各方向の到達時間より流速さらに流量を求める超音波流量計で、かつ、各方向毎に先ず一方の送受波器を送信側として送信し、他方の受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると再び送信側送受波器を駆動して送信し、これを複数回繰り返すように構成し、各方向毎に第1回目の送信から複数回目の受信までの時間を測定し、その結果から到達時間を求める超音波流量計において、
前記受信波検知部は、先ず受信側送受波器の信号を増幅度可変の増幅部で増幅するように構成されていて、増幅部の後段では、電圧の異なる3つの基準電圧レベルが用意されていて、各方向毎の複数回の送受信のうち、第1回目の受信は、1つの発信による増幅後の一群の受信波のうち、ある波が最初に前記3つの基準電圧レベルのうち最も低い基準電圧レベルを越え、更にそのまま、最も高い基準電圧レベルも一気に越えた時は、その波のゼロクロスポイントを受信検知ポイントとし、
第2回目以降の受信は、前記3つの基準電圧レベルのうち、真ん中の基準電圧レベルを初めて越えた波のゼロクロスポイントを受信検知ポイントとすると共に、
第1回目の受信で、最も低い基準電圧レベルを越えた波が最も高い基準電圧レベルを一気に越えなかったときは、測定を中止して、増幅部の増幅度を変えて第1回目の送信からやり直すように構成したことを特徴とする超音波流量計である。
【0015】
【作用】
1つの発信による増幅後の一群の受信波は、その先頭から第1波、第2波、第3波、第4波、第5波、第6波、第7波と次第にそのピークが大きくなる。このピークの電圧の大きくなる度合いは最初ほど大きくだんだん小さくなる傾向がある。つまり、ピークの大きさを比較すると、第1波側なら、第3波/第1波が最大で第5波/第3波、第7波/第5波と段々小さくなる。第2波側なら第4波/第2波が最大で第6波/第4波、第8波/第6波と小さくなる。
【0016】
なお、第3波/第1波と表現した比率は厳密には第3波のピーク値と第1波のピーク値との比率である(第3波のピーク/第1波のピーク)を簡略化して表現したもので、他の比率についても同様に簡略化した表現で示している。
【0017】
上記各比率は流体の圧力等で全体の振幅が変化してもほとんど変化しないことが実験等で確認されている。特に第3波/第1波および第4波/第2波は他の比率に比べ十分大きいため区別が容易である。
【0018】
仮に3つの基準電圧レベルを200mV、350mV、500mVとすると、ある波が初めて200mVを越えてそのまま一気に500mVも越えたとき、その波は直前の波の2.5倍以上あることになる。仮に第3波だけがこの条件を満たすなら、この時点で、この波が第3波と判断できる(図3(a)参照)。
【0019】
200mVを初めて越える波が500mVを越えなかったときは増幅度が適当でないと判断でき、その時点で測定を中止して、増幅度を変化させ最初の発信からやり直す。これを繰り返すことで最終的に増幅度の最適化が可能である。
【0020】
第2回目以降の受信は、200mVと500mVの中間値である350mVを初めて越えた波のゼロクロスポイントを受信検知ポイントとすることで、以後の繰り返し測定中に多少波高値が変化しても第3波を捉え続けることが可能である。
【0021】
第1波が大きくなると200mVと500mVを一気越えする可能性があるが増幅度を制限することで第1波を間違えて検知することは防ぐことができる。
【0022】
この説明では第1波側を正とし正側に基準電圧レベルを設置し第3波を捉えるようにしたが、負側に基準レベルを設置し第4波を捉えるようにすることもできるし、受信波の極性を逆にして正側で第4波或いは負側で第3波を捉えるようにすることもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に本発明の好ましい実施の形態を図面の実施例に基づいて説明する。
【0024】
図1は実施例の全体構成である。受信波検知部について図2に詳しく示して説明する。
【0025】
送受波器1,2は超音波振動子で、送信にも受信にも使用できる。両送受波器は流体中を上流から下流又は下流から上流への超音波の送受を行う。
【0026】
受信波検知部4は受信側の送受波器、例えば2が接続され受信波を検知すると受信波検知信号を出力する。送波器駆動部5はコントロール部6より第1送信指令信号を受けると送信側の送受波器、例えば1をまず駆動し、その後は受信波検知部4より受信波検知信号を受ける度に駆動する。但し、第1のカウンタ7より第n受信波検知信号を受けると、それ以後は新たに第1送信指令信号を受けるまでは駆動を停止する。本実施例では無意味なn+1回目の駆動を行ってしまうようになっているが、受信側で無視するので問題はない。
【0027】
第1のカウンタ7は受信波検知部4からの受信波検知信号をカウントし、n番目の受信波検知信号(第n受信波検知信号)を出力する。このカウンタ7はコントロール部6よりの第1送信指令信号でリセットされるようになっている。第2のカウンタ8は第1送信指令信号から第n受信波検知信号までの時間n(t1 +τ)を測定する。その時間(カウント値)はコントロール部6が読み取る。実施例では第1送信指令信号でカウント値がゼロクリアされ、カウントを開始するように構成されている。
【0028】
コントロール部6は一定間隔で送受切替信号を反転させて切替スイッチ9,10を切り替えることにより2つの送受波器1,2の役割の切り替えを行う。
【0029】
各切り替え後、毎回切り替えによるノイズ等がおさまる時間をおいて、第1送信指令信号を出力する。そして、第n受信波検知信号が入力されると、カウンタ8の測定値(カウント値)、例えばn(t2 +τ)を読み取り、直前に行った反対向きでの測定値とを用いて、その間の流速更に流量を演算する。なお、この超音波流量計は電池電源で作動する。
【0030】
図2は受信波検知部の電気回路図で、切替スイッチ10を介して受信側の送受波器から入力される信号Vinは増幅度可変の増幅部11で増幅される。オペアンプ12に接続されたフィードバック抵抗R20〜R27をアナログスイッチ13で選択的に接続することで増幅度を変える。アナログスイッチ13はラインS10,S11及びS12に印加されるコントロール部6からの増幅度選択信号で8個のうちの1つのスイッチが選択的に閉じる。図示の場合、フィードバック抵抗R24と直列のスイッチが閉じているため、増幅部11の増幅度はR24/R1 である。なお、フィードバック抵抗R20〜R27の抵抗値はR20<R21<R22<…<R27と、順に大きく定めてある。
【0031】
増幅部11で増幅された受信波は、第1の比較器14、第2の比較器15及び第3の比較器16のプラス入力に印加される。各比較器14,15及び16のマイナス入力には、それぞれレベルが200mV、350mV及び500mVの基準電圧が入力されている。
【0032】
17はゼロクロス検知用比較器で、これら4個の比較器14,15,16,17の出力は、図示のように、ORゲート18、バイナリカウンタ19、ANDゲート20、第1のRSFF21、立ち上がりエッジ検知回路22、第2のRSFF23及び切替スイッチ24と図示のように接続されている。また、バイナリカウンタ19と第2のRSFF23の各R入力には前記図1のコントロール部からの第1送信指令信号が入力される。
【0033】
図3に増幅度が適切で第3波を捉えることができた場合(a)と、増幅度が不適切で第3波を捉えることができなかった場合(b)のタイミングを示す。
【0034】
バイナリカウンタ19の出力Q1は、200mVを越える波があったとき、最初の1回だけ“High”になり、2回目からは“Low”となる。その信号と比較器16の出力のANDが切替スイッチ24を介してRSFF21のR入力に入力されている。
【0035】
比較器16は波が500mVを越えたとき“High”となる。よって1回目に200mVを越えた波がそのまま500mVも越えたときのみRSFF21のR入力に“High”が入力され、RSFF21の出力Qは“Low”となり、その後S入力であるゼロクロス検知用比較器17の出力が“High”になると再びRSFF21の出力は“High”となり、その立ち上がりエッジを検知した信号が受信波検知信号となる。つまり、200mVを最初に越えた波がそのまま一気に500mVも越えたとき、その波のゼロクロスポイントで受信波検知信号が出力される。
【0036】
一旦、受信波検知信号が出力されるとRSFF23の出力Qは反転して“Low”となり、切替スイッチ24は図示の状態から切り替わり、比較器15の出力がRSFF21のR入力となる。よって以後は350mVを最初に越えた波のゼロクロスポイントで受信波検知信号が出力される。
【0037】
また、200mVを越えた波が500mVを越えない場合、次の波が500mVを越えても受信波検知信号は出力されない(図3(b)参照)。この場合は第1送信指令信号出力から一定時間たっても受信波検知信号がないことにより、増幅度不適合とコントロール部6が判断して増幅度を変更し、再び第1送信指令信号を出力するように構成されていて、この繰り返しにより最適増幅度を見つけることができる。バイナリカウンタ19と2つのRSFF21,23はコントロール部6からの第1送信指令信号で毎回リセットされるようになっている。
【0038】
上記実施例では、基準電圧レベルを200,350,500mVの1組だけとしたが、前記200,350,500mVの組だけでなく、例えば300,525,750mVのように同じ比率で複数組もち、200,500mVを一気越え、あるいは300,750mVを一気越えを第3波検知の条件とし、200,500mVの一気越えの時は以降は350mVを最初に越えた波のゼロクロスポイント、300,750mVの一気越えの時は以降は525mVを最初に越えた波のゼロクロスポイントを受信波検知ポイントすることも可能で、この場合、増幅度の適合範囲が広くなり最適増幅度を見つけやすくなる利点がある。
【0039】
【発明の効果】
本発明の超音波流量計は上述のように構成されているので、従来技術のような消費電流の多い長時間作動のピーク値ホールド回路を用いなくて良く、受信波検知部のアナログ回路が増幅部と比較器のみで構成でき、しかも受信時の一瞬だけ機能させればよいため、容易に低消費電力化できる。また、受信波検知部のデジタル回路の構成が簡単で低コストの流量計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の全体のブロック図。
【図2】本発明の実施例の受信波検知部の電気回路図。
【図3】本発明の実施例のタイミング図で、(a)は増幅部の増幅度が適切で、第3波を捉えて受信波検知信号を出力するときの図、(b)は増幅度が不適合で、受信波検知信号が出力されないときの図。
【図4】超音波流量計の原理を説明する略図。
【図5】従来の超音波流量計の受信波検知部の動作を説明する電気信号波形を示す図。
【符号の説明】
1,2 超音波送受波器
3 流管
4 受信波検知部
5 送波器駆動部
6 コントロール部
7 第1のカウンタ
8 第2のカウンタ
11 増幅部
12 オペアンプ
13 アナログスイッチ
14,15,16 比較器
17 ゼロクロス検知用比較器
19 バイナリカウンタ
21,23 RSFF
22 立ち上がりエッジ検知回路
Claims (1)
- 送信側としても受信側としても働く超音波送受波器を少なくとも1対設け、流体の流れの中を上流から下流の順方向及び下流から上流の逆方向に超音波の送受信を行い、その各方向の到達時間より流速さらに流量を求める超音波流量計で、かつ、各方向毎に先ず一方の送受波器を送信側として送信し、他方の受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると再び送信側送受波器を駆動して送信し、これを複数回繰り返すように構成し、各方向毎に第1回目の送信から複数回目の受信までの時間を測定し、その結果から到達時間を求める超音波流量計において、
前記受信波検知部は、先ず受信側送受波器の信号を増幅度可変の増幅部で増幅するように構成されていて、増幅部の後段では、電圧の異なる3つの基準電圧レベルが用意されていて、各方向毎の複数回の送受信のうち、第1回目の受信は、1つの発信による増幅後の一群の受信波のうち、ある波が最初に前記3つの基準電圧レベルのうち最も低い基準電圧レベルを越え、更にそのまま、最も高い基準電圧レベルも一気に越えた時は、その波のゼロクロスポイントを受信検知ポイントとし、
第2回目以降の受信は、前記3つの基準電圧レベルのうち、真ん中の基準電圧レベルを初めて越えた波のゼロクロスポイントを受信検知ポイントとすると共に、
第1回目の受信で、最も低い基準電圧レベルを越えた波が最も高い基準電圧レベルを一気に越えなかったときは、測定を中止して、増幅部の増幅度を変えて第1回目の送信からやり直すように構成したことを特徴とする超音波流量計。
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