JP4745475B2 - 熱可塑性樹脂組成物、製造法および成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な衝撃強度かつ耐熱性を有する成形体を与える熱可塑性樹脂組成物、その製造法、および該組成物からなる成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリサルホン樹脂は優れた耐熱性、機械的強度を有し、エンジニアリング部品として幅広い分野に使用されているが、ノッチ存在下における衝撃強度が低いという欠点を有している。この点を改善するために、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を添加する方法が特公平2−381号公報、特開昭59−11360号公報に開示されている。例えば、特公平2−381号公報の実施例には、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を10wt%および30wt%添加した系で、ノッチ付きアイゾット衝撃強度がそれぞれ14.6(kg・cm/cm)および19.3(kg・cm/cm)であることが記載されている。また、特開昭59−11360号公報の実施例には、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を10〜35wt%添加した系でノッチ付きアイゾット衝撃強度が25〜34(kg・cm/cm)になることが開示されている。
しかしながら、上記した例では、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体添加によるノッチ付きアイゾット衝撃強度の改良効果が充分でなく、高いレベルの衝撃強度の改良効果を得ようとすると、その共重合体の添加量を増やさなければならず、そうすると熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下するなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高度にノッチ付きアイゾット衝撃強度の改良された、芳香族ポリサルホン樹脂をベースとする熱可塑性樹脂組成物、その製造法および成形体を提供することである。
また、芳香族ポリサルホン樹脂をベースとする熱可塑性樹脂組成物において、芳香族ポリサルホン樹脂含量の多い領域において、高度にノッチ付きアイゾット衝撃強度が改良されるとともに、耐熱性も優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造法および成形体を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ある量以上の水酸基を含有する芳香族ポリサルホン樹脂とグリシジル基を有するオレフィン系共重合体を配合すると、著しく耐衝撃性等が改善された熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は次のとおりである。
[1] (A)水酸基を有し、水酸基当量が430000(g/eq)以下であり、下記に示す繰り返し単位を80mol%有する芳香族ポリサルホン樹脂90〜80重量%、ならびに(B)オレフィン類とグリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートとの共重合体10〜20重量%[ただし、(A)と(B)の合計を100重量%とする。]を必須成分とする熱可塑性樹脂組成物。
【0005】
【化3】
[2] (A)水酸基を有し、水酸基当量が430000(g/eq)以下であり、上記式で表される繰り返し単位を80mol%以上有する芳香族ポリサルホン樹脂90〜80重量%、ならびに(B)オレフィン類とグリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートとの共重合体10〜20重量%[ただし、(A)と(B)の合計を100重量%とする。]を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造法。
[3] [1]記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明で使用される(A)成分である芳香族ポリサルホン樹脂は、アリーレン単位、エーテル結合およびスルホン結合の三者が必須の構成単位であって、アリーレン単位がエーテルおよびスルホン結合とともに無秩序にまたは秩序正しく位置するポリアリーレン化合物として定義されるものであり、本発明の(A)成分である芳香族ポリサルホン樹脂は、以下の繰り返し単位を80mol%以上有するものである。
【0007】
【化4】
【0008】
【化5】
この化合物はランダム共重合体を含む。式中、R1は炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数3ないし10のアルケニル基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、pは0ないし4の正数である。q、m、nは平均の繰り返し単位数を示し、qは1〜3の正数を示し、(m/m+n)は0.8以上である。同一または異なる核上の各R1は相互に異なっていても良い。各pは相互に異なっていても良い。
また、(III’)の構造単位中のqは1であることが好ましい。本発明においては、芳香族ポリサルホン樹脂中の水酸基含量が重要となるが、水酸基はその末端に存在するものが好ましい。また、その含有量は水酸基当量(OH当量)にして430000g/eq以下であれば特に限定されないが、好ましくは5000g/eq以上430000g/eq以下であり、より好ましくは200000g/eq以上420000g/eq以下である。水酸基当量が430000g/eqより大きい場合、オレフィン系共重合体の分散が悪く、十分な衝撃強度が得られない。また、5000g/eqより小さい場合は滞留時の熱安定性が悪くなるため好ましくない。末端に水酸基を導入する方法としては、その製造工程にて、二価フェノラート(例えば、4,4'−ジヒドロキシジフェニルサルホンやビスフェノールAなどの二価フェノールを炭酸カリウムや水酸化ナトリウムなどど反応させて得られるもの)とジクロル化合物(例えば、4,4'−ジクロルジフェニルサルホン)を脱塩重縮合する際に、二価フェノラートを過剰に仕込み、末端基をフェノラートにしたものを、例えば、塩酸などの酸によって中和し、末端基を水酸基とする方法が挙げられるが、特に限定されない。また、水酸基当量は、上記した方法等を用いて芳香族ポリサルホン樹脂を製造する際、条件によって調節できるが、水酸基当量の異なる2種以上の芳香族ポリサルホン樹脂をを混合して調整しても良い。これらの芳香族ポリサルホン樹脂の市販品の例としては、住友化学工業株式会社の商品名スミカエクセルPES5003P、3600P、4100Pなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0009】
(B)成分である、オレフィン類とグリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートとの共重合体における、オレフィン類の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ドデセン−1、4ーメチル−ペンテン−1などが挙げられる。これらは一種、または二種以上用いることも可能である。この中で特に好ましいものはエチレン、プロピレンである。(B)成分の共重合体におけるオレフィン類単位の含有量は、1〜99重量%の範囲内で変えることは可能であるが、好ましい範囲としては50〜97重量%である。また、(B)成分の共重合体には、他のビニル化合物の共重合成分を含んでいてもよく、その具体例としては、スチレン、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸、エチルアクリレート、塩化ビニル、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、テトラフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(B)成分の共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物における(B)成分の混合比率は10〜20重量%である。(B)成分の混合比率が少ないと耐衝撃性の改善効果に乏しく、また、(B)成分の混合比率が過大であると耐熱性の低下を引き起こすため好ましくない。本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されなく、通常の公知方法を用いることができる。例えば、各成分を溶媒にて均一に混合した後、溶媒を除去する方法や、各成分をヘンシェルミキサー等でドライブレンドした後、溶融混練する方法などが挙げられる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物では、(A)成分である芳香族ポリサルホン樹脂中の水酸基の一部または全部と、(B)成分であるオレフィン系共重合体中のグリシジル基の一部または全部が反応して、物性の改善に寄与している可能性がある。この反応を促進させるためには、後者の溶融混練する方法が好ましい。この方法としては溶融粘性体を取扱い得る方法であれば如何なる方法でもよいが、例示するとバンバリーミキサー、ロール、押し出し機、ニーダー等が挙げられる。また、混練においてこの反応を促進するために、有機ホスフィン類、アミン類、塩基類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性物質を添加することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲でガラスファイバー、ガラスビーズ、カーボンファイバーなどの補強材;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを1種以上添加することも可能である。さらに、少量の熱可塑性樹脂、たとえばポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミドなど、少量の熱硬化性樹脂、たとえばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂などを一種または二種以上添加することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物および成形体は、自動車、航空機等の部品、産業用機器、家電製品、水周り部品、食器や医療機器、OA、AV機器、電子、電子部品などの用途に有効なものである。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の物性は次の方法で測定した。
・水酸基当量
芳香族ポリサルホン樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、滴定試薬として0.05mol/lのカリウムメトキシド/トルエン・メタノール溶液を用いて電位差滴定装置にて水酸基の量を測定し、水酸基当量を算出した。
また、水酸基当量が既知である芳香族ポリサルホン樹脂を二種以上混合して水酸基当量を調整した実施例に関しては、両者の水酸基当量、混合比より算出した値を用いた。
・アイゾット衝撃強度
熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機を用いて長さ64mm、幅12.7mm、厚み6.4mm、中央部に先端半径0.25mm、深さ2.7mmのノッチを有する試験片を成形し、ASTM D256に準拠して測定した。
・曲げ強度、弾性率
熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機を用いて長さ127mm、幅12.7mm、厚み6.4mmの試験片を成形し、ASTM D790に準拠して測定した。
・荷重たわみ温度
曲げ強度、弾性率測定に用いたものと同形状の試験片を用い、ASTM D648に準拠し、18.6kg/cm2の荷重で測定した。
【0011】
実施例2〜7、比較例1〜2、参考例1
表1および2に示す組成物をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30)を用いてシリンダー温度320℃で造粒し、熱可塑性樹脂組成物を得た。該熱可塑性樹脂組成物を340℃の成形温度にて射出成形し、各種試験片を作製し、試験に供した。結果を表1および2に示す。表1および2の通り、水酸基当量が430000g/eq以下である芳香族ポリサルホン樹脂、エチレン/グリシジルメタクリレートの共重合体より得られた組成物は、エチレン/グリシジルメタクリレートの共重合体の添加量が7.5wt%でノッチ付きアイゾット衝撃強度が19(kg cm/cm)、10wt%で30(kg cm/cm)と、添加量が低いにもかかわらず、著しく耐衝撃性を改善できることが明らかとなった。これらはエチレン/グリシジルメタクリレートの共重合体の添加量が少ないために耐熱性の低下はほとんど見られず、バランスの取れた有効な材料となりうる。
【0012】
【表1】
1) 住友化学工業(株)製 芳香族ポリサルホン樹脂OH当量(滴定値) 432000 g/eq
2) 住友化学工業(株)製 芳香族ポリサルホン樹脂OH当量(滴定値) 9000 g/eq
3) 住友化学工業(株)製 エチレン/ク゛ルシシ゛ルメタクリレート(=88/12重量比)共重合体
【0013】
【表2】
【0014】
【発明の効果】
本発明により耐衝撃性、耐熱性、機械的特性に優れた熱可塑性樹脂組成物および成形体が得られ、工業的に有益な材料を提供することができる。
Claims (3)
- 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
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