表示パネルの代表例として液晶表示パネルがある。液晶表示パネルの製造方法として、大型の基板に対して複数の液晶表示セルを形成し、後に個々の単一の液晶表示パネルに分断する多面取りによる方法がある。(液晶表示パネルの製造方法の説明において、基板分断前の各表示体を液晶表示セルと呼び、基板分断後の各表示体を液晶表示パネルと呼ぶ。)5インチ程度の中小型の大きさを有する液晶表示パネルの製造方法においては、初めに複数の液晶表示セルを含む貼り合せ基板を形成する。貼り合せ基板は、シール材によって互いに貼り合わされた2枚の大型のガラス基板を含む。この大型の貼り合せ基板を分断して、短冊状の貼り合せ基板を形成する。
次に、短冊状の貼り合せ基板に液晶の注入および封止などを行なって、単一の液晶表示パネルに分断する。次に、それぞれの単一の液晶表示パネルに対して、主表面にフィルムを貼り付ける。フィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム、保護フィルムなどから成る。フィルムの貼り付けにおいては、このような単一の液晶表示パネルの表面に1枚ずつフィルムを貼り付ける方法が一般的であった。
ところが、この方法においては、個々の液晶表示パネルに対して、個別に1枚ずつフィルムを貼り付ける必要があるため、生産効率が悪いという問題がある。たとえ、専用のフィルムの貼り付け装置を用いて貼り付けを行なっても、フィルム1枚当りの貼り付け速度は静電気によって制約を受けるため、高速化に限界がある。このため、多数のフィルム貼り付け装置を導入しなければ高い生産性を確保することができないことになる。この結果、フィルムを貼り付けるための設備投資が大幅に膨らんで、ひいては最終製品である液晶表示装置の価格上昇につながるという問題があった。
特許文献1においては、一方の大型の基板に環状に配置されたシール材の内側の領域、または、他方の大型の基板のうちシール材の内側に対応する領域に液晶を供給して基板同士を貼り合せる製造方法が開示されている。この大型の貼り合せ基板には、複数の液晶表示セルが形成されている。次に、貼り合せ基板に対して大型のフィルムを一括して貼り付け、その後に個々の液晶表示パネルに分断する方法が開示されている。
図14に、複数の液晶表示セルを含む貼り合せ基板の概略平面図を、図15に概略断面図を示す。図14および図15に示す貼り合せ基板には、20行×14列で、合計280個の液晶表示セルが形成されている。貼り合せ基板22は、互いに対向するように貼り合わされた2枚のガラス基板を備える。貼り合せ基板22の主表面には、フィルム23が貼り付けられている。貼り合せ基板22は、複数の液晶表示セル25を含む。液晶表示セル25は、平面形状がほぼ長方形になるように形成され、それぞれが規則的に配列されている。それぞれの液晶表示セル25は、互いに間隔をあけて配置されている。フィルム23は、貼り合せ基板22に形成された全ての液晶表示セル25を覆うように配置されている。
図16に示すように、複数の液晶表示セルが形成された貼り合せ基板を個々の液晶表示パネルに分断する工程において、フィルム23の一部を帯状に除去してガラス基板を帯状に露出させる。切除部24がフィルム23の一部を切除した部分である。切除部24は、貼り合せ基板22に形成された液晶表示セル同士の間に形成される。フィルム23は、それぞれの液晶表示セルに対応する形状となる。
次に、ガラススクライブ形成用のホイルカッタ(不図示)によって、切除部24に分断用の亀裂を形成する。最後に、形成された亀裂に沿って、貼り合せ基板22を分断して個々の液晶表示パネルを形成する。分断された個々の液晶表示パネルには外部駆動装置などが接続され、筐体に配置されて液晶表示装置として製造される。
貼り合せ基板に対して、液晶表示セルの周りのフィルムを切除し、その後、切除部に分断用の亀裂を形成して個々の液晶表示パネルに分断する分断装置においては、貼り合せ基板をステージに固定して、刃物によってフィルムの一部を切除し、ホイルカッタによってフィルム切除部に分断用の亀裂を形成する。たとえば、図16に示す貼り合せ基板においては、切除部24を形成するとともに、切除部24に分断用の亀裂を形成する。
基板の両側の表面にフィルムが配置された貼り合せ基板のフィルムの切除と基板への亀裂の形成においては、貼り合せ基板をステージに固定し、一方の面のフィルムの一部を切除し、ホイルカッタによってフィルム切除部に分断用の亀裂を形成する。その後、貼り合せ基板を反転して再度、ステージに固定し、同様に他方の面のフィルムの一部を切除し、ホイルカッタによってフィルム切除部に分断用の亀裂を形成する。
特開2004−4636号公報
図17は、従来のフィルム切断剥離装置でフィルムを切断および剥離しているときの概略斜視図である。フィルム切断剥離装置には、基板表面に貼り付けられたフィルム23を剥離する底面刃と、本底面刃の両端にフィルム23を切断する側面刃とを有するフィルム切断剥離用刃物103を備えている。一方の方向(矢印52が示す方向)にフィルム切断剥離用刃物103を移動して液晶表示セル同士の間のフィルム23を切断および剥離した後、上記方向と直交する方向(矢印51が示す方向)へフィルム切断剥離用刃物103を移動して液晶表示セル同士の間のフィルムを切断および剥離する。このとき、液晶表示セル上に形成されるフィルム23のコーナー部23bに欠けが発生する。これは、側面刃の外側面がフィルムの切断面に接触しながら切断されるため、フィルム23の切断面にフィルム23を刃物の進行方向へ押し出そうとする力が働くためであると考えられる。図18は、従来のフィルム切断剥離装置で切断および剥離したフィルムの概略平面図である。従来のフィルム切断剥離装置でフィルム23を切断および剥離すると、液晶表示セル上に形成されるフィルム23のコーナー部23bに500μm〜1mm程度の欠けが生じる。
コーナー部23bの欠けは外観上の問題にとどまらず、欠けたフィルムが破片として基板上に残存し、ホイルカッタの走行を妨げたり、また、貼り合せ基板を反転して再度、ステージに固定するとき、ステージと貼り合せ基板との間に欠けたフィルムが挟まって、液晶表示セル上に形成されたフィルム上に打痕を引き起こす。このような問題は、液晶表示パネルのみならず、主表面にフィルムを有する有機EL表示パネルの製造においても、同様に発生する。
本発明は、表示セル上に形成されるフィルムのコーナー部の欠けを軽減するフィルム切断剥離用刃物、フィルム切断剥離装置、および表示パネルの製造方法を提供することを目標とする。
上記目的を達成するため、本発明に基づくフィルム切断剥離装置は、基板表面に貼り付けられたフィルムを剥離する底面刃と、上記底面刃の両端に上記フィルムを切断する側面刃とを有するフィルム切断剥離用刃物を備えたフィルム切断剥離装置であって、上記側面刃の外側面が前記フィルムの切断面に対して逃げ角をもって接触せずに、上記フィルムが切断されるように上記刃物が固定された構造とする。この構成を採用することで、フィルムの切断面にフィルムを刃物の進行方向へ押し出そうとする力が働かなくなると考えられる。
上記発明において好ましくは、上記基板を固定するステージに平行で、且つ、刃物の進行方向に垂直となる方向から見た場合、側面刃の刃先と基板とが30°〜60°の角度を成した状態で、上記光学フィルムが切断されるように光学フィルム切断剥離用刃物が基板に対して固定されている。これは、光学フィルムを基板に固定させながら切断する上で、および光学フィルムを剥離する力が光学フィルムの切断前に働くのを防止する上では、側面刃の刃先と基板とが成す角は小さい程良いが、側面刃の刃先と基板とが成す角が小さすぎると光学フィルムに対する切削抵抗が大きくなり好ましくないので、これらを考慮した結果である。
上記発明において好ましくは、上記基板を固定するステージに平行で、且つ、刃物の進行方向に垂直となる方向から見た場合、上記底面刃の内側面と上記基板とが60°以下の角を成した状態で、上記フィルムが剥離されるようにフィルム切断剥離用刃物が基板に対して固定されている。これは、フィルムの切断および剥離時に側面刃の外側面とフィルムの切断面との間に隙間を確保する上では大きい程良いが、底面刃の内側面と基板とが成す角が大きすぎるとフィルムの切り屑を剥くって排出しにくくなり好ましくないので、これらを考慮した結果である。
上記目的を達成するため、本発明に基づくフィルム切断剥離用刃物は、基板表面に貼り付けられたフィルムを剥離する底面刃と、上記底面刃の両端に上記フィルムを切断する側面刃とを有するフィルム切断剥離用刃物であって、上記側面刃の刃先と上記底面刃の内側面とが、刃物側面側から見た場合、60°〜150°の角を成している。この形状を採用することで、基板を固定するステージに平行で、且つ、刃物の進行方向に垂直となる方向から見た場合、側面刃の刃先と基板とが30°〜60°の角度を成し、底面刃の内側面と基板とが60°以下の角度を成した状態で、フィルムを切断および剥離することができる。
上記発明において好ましくは、上記側面刃が、上記底面刃の刃先と垂直な面に対し、30°〜60°の角を成して外側に開いている。これは、フィルムの切断面の傾斜を小さくする上では、底面刃の刃先と垂直になる面と側面刃が成す角が小さい程良いが、底面刃の刃先と垂直になる面と側面刃が成す角が小さすぎると、フィルムの切断および剥離時に側面刃の外側面とフィルムの切断面との間に隙間を確保しにくくなり好ましくないので、これらを考慮した結果である。
上記目的を達成するため、本発明に基づく表示パネルの製造方法は、基板表面に貼り付けられたフィルムを切断および剥離するフィルム切断剥離方法であって、上記フィルムの切断面に外力を作用させることなく、上記フィルムの一部を切断および剥離する工程を含む。この方法を採用することにより、液晶表示セル上に形成されるフィルムのコーナー部の欠けを軽減できると共に、フィルムの破片が基板上に残存することによる基板分断不良を軽減できる。また、貼り合せ基板を反転して再度、ステージに固定するとき、ステージと貼り合せ基板との間に欠けたフィルムが挟まって、液晶表示セル上に形成されたフィルム上に打痕が発生する打痕不良についても軽減できる。
本発明によると、液晶表示セル上に形成されるフィルムのコーナー部の欠けを軽減するフィルム切断剥離用刃物、フィルム切断剥離装置、および表示パネルの製造方法を提供できる。
13,103 フィルム切断剥離用刃物、13a 底面刃、13b,13c 側面刃、13d 外側面、13e 内側面、15 稼動部、22 貼り合せ基板、23 フィルム、23a フィルム切り屑、23b フィルムコーナー部、24 フィルム切除部、25 液晶表示セル、30 ステージ、50,51,52,53,54 刃物進行方向、α 刃先角度、β 前傾角度、γ開き角度、θ 剥離角度、ε 逃げ角、δ 刃先傾斜角、V 法線ベクトル
図1から図6および図14から図16を参照して、本発明に基づく実施の形態におけるフィルム切断剥離用刃物、フィルム切断剥離装置、および表示パネルの製造方法について説明する。
本実施の形態におけるフィルム切断剥離装置は、貼り合せ基板を個々の液晶表示パネルに分断する工程において、液晶表示セル同士の間のフィルムを帯状に除去する装置である。
図14および図15に示すように、貼り合せ基板22は、互いに対向するように2枚のガラス基板が貼り合せられている。2枚のガラス基板の間には、複数の液晶表示セル25が形成されている。液晶表示セル25は、平面形状がほぼ長方形になるように形成され、規則的に配列されている。貼り合せ基板22の両側の主表面には、フィルム23が貼り付けられている。本実施の形態におけるフィルム切断剥離装置は、図16に示すように、液晶表示セル25同士の間のフィルム23を帯状に切除するための装置である。
図1は、本実施の形態におけるフィルム切断剥離装置の稼動部15に取り付けたフィルム切断剥離用刃物13を用いて、ステージ30に載置した貼り合せ基板22からフィルム23を切断剥離する様子を示す概略断面図である。フィルム23としては、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、保護フィルムからなるものを用いることができる。各フィルムの材質としては、偏光フィルムはポリビニルアルコールとトリアセチルセルロース、位相差フィルムはポリカーボネート、保護フィルムはポリエステルが例示できる。なお、本実施の形態においては、上記のように複数層のものを用いているが、特にこれに限られない。そのため、説明においては層を区別せず一体のものとして記載している。稼動部15は、フィルム切断剥離用刃物13が貼り合せ基板22上を移動するように形成されている。フィルム切断剥離用刃物13は、貼り合せ基板22上を移動するとき、貼り合せ基板22に対して一定の押圧力がかかるように図示しない加圧手段を介して稼動部15に支持されている。この加圧手段として、たとえば、バネなどが使用できる。
図2は、フィルム切断剥離用刃物13がフィルム23を切断剥離している状態を示す斜視図である。フィルム切断剥離用刃物13は、フィルム23を剥離する底面刃13aと、底面刃13aの両端にフィルム23を切断する側面刃13bと側面刃13cとを備えている。側面刃13bと側面刃13cは、底面刃13aを中心に左右対称に形成されている(図5を参照)。底面刃13aの内側面は、刃先から所望の距離が平坦であって、その後、湾曲して刃物上部に延びるように形成されている。フィルム23は、貼り合せ基板上を移動するフィルム切断剥離用刃物13の側面刃13bと側面刃13cで切断されると共に、底面刃13aで剥離される。剥離されたフィルムの切り屑23aは、底面刃13aの内側面に沿って移動し、その後、図示しない真空排出手段により装置外部へ排出される。
図3は貼り合せ基板上を移動する稼動部に固定されたフィルム切断剥離用刃物を用いてフィルムを一部切断剥離している状態を示す概略断面図、図4は図3のA−A線における概略断面図、図5は底面刃の内側面であって底面刃から延びる平坦な面の部分(以後、平坦部と称する)に平行な方向から見たときのフィルム切断剥離用刃物の概略正面図、図6は図5のB−B線における概略断面図である。フィルム切断剥離用刃物13の底面刃13aおよび側面刃13bと側面刃13cは、外側面が研磨され、鋭角に形成されている。
ここで、図6に示すように側面刃13b又は側面刃13cの外側面13dと内側面13eとが交わる刃先の角を刃先角度α、図3に示すようにフィルム23の切断及び剥離時に側面刃13b又は側面刃13cの刃先と貼り合せ基板22とのなす角を前傾角度β、図5に示すように底面刃13aの刃先と垂直になる面と側面刃13bおよび側面刃13cとがなす角であって側面刃13bおよび側面刃13cの外側に開く角を開き角度γ、図3に示すようにフィルム23の切断および剥離時に底面刃13aの内側面の平坦部と貼り合せ基板22とのなす角を剥離角度θ、図4に示すようにフィルム23の切断および剥離時に側面刃13bおよび側面刃13cの外側面と切断されたフィルム23の切断面とがなす角を逃げ角εと呼ぶ。
フィルム23の切断時、側面刃13bおよび側面刃13cの外側面と切断されたフィルム23の切断面とが接触しないように形成したところコーナー部23bに生じていた500μm〜1mm程度の欠けが低減された。従って、図4に示すように逃げ角εは0°以上であることが好ましいということができる。
図3に示すように、前傾角度βは、フィルム23を貼り合せ基板22に固定させながら切断する上でも、フィルム23を剥離する力がフィルム23の切断前にはたらくのを防止する上においても小さい程良い。しかし、前傾角度βが小さすぎるとフィルム23に対する切削抵抗が大きくなり好ましくない。これらを考慮して研究を重ねた結果、前傾角度βは30〜60°が好ましいことがわかった。
図5に示すように、開き角度γは、フィルム23の切断面の傾斜を小さくする上において小さい程良い。しかし、開き角度γが小さすぎると、逃げ角εを確保しにくくなり好ましくない。これらを考慮して研究を重ねた結果、開き角度γは30〜60°が好ましいことがわかった。
図3に示すように、剥離角度θは、逃げ角εを確保する上で大きい程良い。しかし、剥離角度θが大きすぎると、フィルム23の切り屑を剥くって排出しにくくなり好ましくない。これらを考慮して研究を重ねた結果、剥離角度θは60°以下が好ましいことがわかった。
上記より、側面刃の刃先と底面刃の内側面とがなす角は、刃物側面側から見た場合(図3を参照)60°〜150°の角を成していることが好ましいといえる。
図6に示すように、刃先角度αは、小さい程切れ味が良く、また、逃げ角εを確保しやすい。しかし、小さすぎると刃こぼれが発生するため好ましくない。
図7から図13を用いて、フィルム切断剥離用刃物13の実施例について説明する。図7はフィルム切断剥離用刃物がフィルムを切断剥離している状態を示す斜視図、図8は貼り合せ基板上を移動する稼動部に固定されたフィルム切断剥離用刃物を用いてフィルムを一部切断剥離している状態を示す概略断面図、図9は図8のA−A線断面図、図10は底面刃の内側面の平坦部に平行な方向から見たときのフィルム切断剥離用刃物の概略正面図、図11は図10のB−B線における概略断面図である。また、図7から図11において、刃物の進行方向と逆の方向をy、基板を固定するステージに平行で且つ刃物の進行方向に対して右方から左方に垂直に延びる方向をx、基板を固定するステージに対して下方から上方に垂直に延びる方向をzとして、3次元ベクトルを定義した。
本実施例においては、図11に示すように側面刃13b又は側面刃13cの外側面13dと内側面13eとが交わる刃先角度αは17°、図8に示すようにフィルム23の切断及び剥離時に側面刃13b又は側面刃13cの刃先と貼り合せ基板22とのなす前傾角度βは45°、フィルム23の切断および剥離時に底面刃13aの内側面の平坦部と貼り合せ基板22とのなす剥離角度θは35°、図10に示すように底面刃13aの刃先と垂直になる面と側面刃13bおよび側面刃13cとがなす開き角度γは40°である。
次に、フィルム23の切断および剥離時に側面刃13b、13cの外側面と切断されたフィルム23の切断面とがなす逃げ角εについて説明する。図12は、側面刃13cを側面刃13cの外側面(刃先の外側面13dに該当する部分を除く)と垂直となる方向から見たときの概略図である。図12は、13cのみを記載しており、その他の部分については、省略している。また、図12に示す点線は、側面刃13cの内側面と底面刃の内側面とが接する部分を表したものである。ここで、図12に示すように側面刃13cの内側面と底面刃の内側面とが接する部分(点線部分)に対して垂直に交わる直線と側面刃13cの刃先とが成す角であって側面刃13cの前傾する角を刃物傾斜角δと呼ぶ。すると、刃物傾斜角δは、上記3次元ベクトルを基に前傾角度β、開き角度γ、剥離角度θを用いて以下の式で表される。
上記式に各値を代入して計算すると、刃物傾斜角δは7.7°となる。
更に、フィルム23の切断および剥離時での側面刃13cの外側面の本法線ベクトルをVとすると、本法線ベクトルVは、上記3次元ベクトルを基に刃先角度α、前傾角度β、開き角度γ、剥離角度θ、刃先傾斜角δを用いて以下の式で表わされる。
上記式に各値を代入して計算すると、法線ベクトルVのx軸方向成分は0.707、y軸方向成分は0.132、z軸方向成分は−0.694となる。図9に示すように、法線ベクトルVのx軸方向成分およびy軸方向成分が正の値であることから、側面刃13cの外側面が、刃物の進行方向と垂直となる方向よりも後方を向いていることがわかる。つまり、側面刃13cの外側面とフィルム23の切断面との間に隙間が確保されることがわかる。側面刃13cと側面刃13bは、底面刃13aを中心として左右対称に形成されているため、側面刃13bの外側面とフィルム23の切断面との間にも同様に隙間が確保されることがわかる。このことから、本実施例におけるフィルム切断剥離用刃物13は、フィルム23の切断および剥離時に側面刃13b、13cの外側面がフィルム23の切断面に接触しないものであるといえる。
また、法線ベクトルVのx軸方向成分とy軸方向成分から、逃げ角εは下記の式で表わされる。
上記式に各値を代入して計算すると、逃げ角εは、7.6°となる。
上記フィルム切断剥離用刃物およびフィルム切断剥離装置を用いてフィルムを切断および剥離した実施例では、従来、液晶表示セル上に形成されるフィルムのコーナー部23bに500μm〜1mm程度の欠けが生じていたものが(図18参照)、0〜500μm程度に軽減された(図13参照)。
本実施の形態におけるフィルム切断剥離用刃物は、高速度鋼で形成されているが、この形態に限られず、フィルムの切断剥離において、刃こぼれの少ない材質で形成されていれば構わない。たとえば、刃物部材が合金鋼で形成されていても構わない。
本実施の形態におけるフィルム切断剥離用刃物は、底面刃の内側面が底面刃から所望の距離、平坦であって、その後、湾曲して刃物上部に延びるように形成されているが、この形態に限られず、底面刃の内側面は、湾曲せず、後方に延びるような形状であっても逆に平坦部を有さず刃先から徐々に湾曲するような形状であっても構わない。また、底面刃の内側面に平坦部を有さない刃物の場合の剥離角度θおよび刃物傾斜角δについては、内側面の刃先における接線を平坦部に置き換えて計算すると良い。
基板としては、液晶表示パネル用の基板に限られず、フィルムを貼り付けた任意の基板に対して本実施の形態のフィルム切断剥離装置を用いうる。たとえば、フィルムを有する有機EL表示パネルを製造する場合においても、本実施の形態のフィルム切断剥離装置を用いうる。
フィルム23としては、偏光フィルム、位相差フィルム、保護フィルムの構成に限られず、任意のフィルムを貼り付けた基板に対して本実施の形態のフィルム切断剥離装置を用いうる。たとえば、偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムを有さないフィルムを貼り付けた基板に対しても、本実施の形態のフィルム切断剥離装置を用いうる。ただし、偏光フィルムや位相差フィルムといった光学フィルムを用いた表示装置は、コーナー部23bの欠けが画質に影響を与えるおそれがあるため、より好適な切断剥離対象ということができる。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。