以下、本発明の実施の形態における部品実装システムについて図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における部品実装システムの外観図である。
本実施の形態における部品実装システムは、複数の部品実装機100(図1に示す例では6台の部品実装機100)と、回路基板(以下、単に基板という)20の向きを決定する決定装置200とを備えている。
複数の部品実装機100は、上流から下流に向けて基板20を送りながら電子部品などの部品を実装していく生産ラインとして構成されている。つまり、各部品実装機100は、上流側から基板20を受け取り、その基板20に対して部品を実装し、その部品が実装された基板20を下流側に送り出す。なお、このような複数の部品実装機100からなる生産ラインによって部品が実装された基板20、または、1つの部品実装機100によって部品が実装された基板20を、以下、実装基板という。
決定装置200は、実装基板のスループットが向上するように、生産ラインまたは1つの部品実装機100に流す(搬送する)基板20の向きを決定する。そして、決定装置200は、決定した向きに基板20を向けて流すように、部品実装システムの使用、管理、または運転などを行うオペレータや、基板20を搬送する搬送装置などに対して指示する。
図2は、部品実装機100の外観図である。
部品実装機100は、複数種の部品を供給する2つの部品供給部115a,115bを備え、搬入口130から挿入される基板20を部品実装機100の内部に搬送して停止させる。そして、部品実装機100は、2つの部品供給部115a,115bから供給される部品を順次取り出し、その停止している基板20に対して、取り出した部品を実装する。
図3は、部品実装機100の内部の主要な構成を示す図である。
部品実装機100は、基板20に対して部品を実装する2つの実装ユニット110a,110bと、基板20を搬送するための2つの基板搬送レール122a,122bと、2つのメインレール140とを備えている。2つの実装ユニット110a,110bは、協調して、基板搬送レール122a,122b上にある基板20に対して交互に部品を実装する。
実装ユニット110aと実装ユニット110bはそれぞれ同様の構成を有している。つまり、実装ユニット110aは、部品供給部115a、部品認識カメラ116a、ヘッド112a、ビーム121a、およびノズルステーション119aを備えている。同様に、実装ユニット110bは、部品供給部115b、部品認識カメラ116b、ヘッド112b、ビーム121b、およびノズルステーション119bを備えている。
ここで、実装ユニット110aの詳細な構成について説明する。なお、実装ユニット110bの詳細な構成については、実装ユニット110aと同様であるため省略する。
部品供給部115aは、部品テープを収納する複数の部品カセット(フィーダ)114の配列からなる。なお、部品テープとは、例えば、同一部品種の複数の部品がテープ(キャリアテープ)上に並べられたものであり、リール等に巻かれた状態で供給される。また、部品テープに並べられる部品は、例えばチップ部品であって、具体的には0402チップ部品や1005チップ部品などである。
ヘッド112aは、例えばマルチ装着ヘッドと呼ばれるヘッドであって、最大10個の吸着ノズル(以下、単にノズルという)を備えることができ、部品供給部115aから例えば最大10個の部品を吸着して基板20に装着することができる。このようなヘッド112aは、軸状に構成されたビーム121aに対してスライド自在に取り付けられている。したがって、ヘッド112aは、例えばモータなどの駆動により、ビーム121aに沿って移動する。
ビーム121aは、基板20の搬送方向(X軸方向)と垂直な方向(Y軸方向)に沿って互いに平行に配置された2つのメインレール140上に、Y軸方向にスライド自在に取り付けられている。したがって、ビーム121aは、例えばモータなどの駆動により、2つのメインレール140上をY軸方向に沿って移動する。すなわち、ヘッド112aは、メインレール140およびビーム121aによってX軸方向およびY軸方向に移動する。
部品認識カメラ116aは、ヘッド112aに吸着された部品を撮影し、その部品の吸着状態を2次元又は3次元的に検査するために用いられる。また、部品認識カメラ116aは、部品供給部115aにおけるX軸方向に沿った中央付近に配置されている。
ノズルステーション119aは、各種形状の部品種に対応する交換用のノズルが置かれるテーブルである。
ここで、部品実装機100の搬入口130から挿入された基板20は、2つの基板搬送レール122a,122b上に沿って搬送されてストッパーなどにより停止される。また、部品実装機100には、例えばヘッド112a,112bの可動範囲などの部品実装機100の構造上の理由により、部品を実装することが可能な範囲(以下、実装可能範囲という)Maが決められている。
そこで、部品実装機100は、搬入口130から挿入された基板20の実装対象領域の全てができるだけ実装可能範囲Ma内に収まるように、基板20を部品実装機100の内部に搬送して停止させる。例えば、部品実装機100は、基板20の実装対象領域の搬送方向先端が、実装可能範囲Ma内で、その実装可能範囲Maの境界にできるだけ近づくように、基板20を搬送して停止させる。なお、実装対象領域とは、基板20の実装面のうち、部品が実装される対象となる領域である。また、本実施の形態では、基板20の実装面の全体を実装対象領域として説明する。
また、基板搬送レール122a,122bは、それぞれX軸方向に対して平行となるように配置されている。ここで、基板搬送レール122aは、部品供給部115a側に寄せて固定され、基板搬送レール122bは、搬送される基板20のサイズ(幅)に応じてY軸方向に移動する。
図4は、ヘッド112aと部品カセット114の位置関係を示す模式図である。
上述のように、ヘッド112aには、例えば最大10個のノズルnzを取り付けることが可能である。10個のノズルnzが取り付けられたヘッド112aは、最大10個の部品カセット114のそれぞれから部品を同時に(1回の上下動作で)吸着することができる。
図5は、部品を収めた部品テープ及びリールの例を示す図である。
チップ形電子部品などの部品は、図5に示すキャリアテープ424に一定間隔で複数個連続的に形成された収納凹部424aに収納されて、この上面にカバーテープ425を貼付けて包装される。そしてこのようにカバーテープ425が貼り付けられたキャリアテープ424は、リール426に所定の数量分だけ巻回されたテーピング形態でユーザに供給される。また、このようなキャリアテープ424およびカバーテープ425によって部品テープが構成される。なお、部品テープの構成は、図5に示す構成以外の他の構成であってもよい。
このような部品実装機100の実装ユニット110aは、ヘッド112aを部品供給部115aに移動させて、部品供給部115aから供給される部品をそのヘッド112aに吸着させる。そして、実装ユニット110aは、ヘッド112aを部品認識カメラ116a上に一定速度で移動させ、ヘッド112aに吸着された全ての部品の画像を部品認識カメラ116aに取り込ませ、部品の吸着位置を正確に検出させる。さらに、実装ユニット110aは、ヘッド112aを基板20に移動させて、吸着している全ての部品を基板20の実装点に順次装着させる。実装ユニット110aは、このようなヘッド112aによる吸着、移動、および装着という動作を繰り返し実行することにより、予め定められた全ての部品を基板20に実装する。
また、実装ユニット110bも、実装ユニット110aと同様に、ヘッド112bを部品供給部115bに移動させて、部品供給部115bから供給される部品をそのヘッド112bに吸着させる。そして、実装ユニット110bは、ヘッド112bを部品認識カメラ116b上に一定速度で移動させ、ヘッド112bに吸着された全ての部品の画像を部品認識カメラ116bに取り込ませ、部品の吸着位置を正確に検出させる。さらに、実装ユニット110bは、ヘッド112bを基板20に移動させて、吸着している全ての部品を基板20の実装点に順次装着させる。実装ユニット110bは、このようなヘッド112bによる吸着、移動、および装着という動作を繰り返し実行することにより、予め定められた全ての部品を基板20に実装する。
そして、実装ユニット110aおよび実装ユニット110bはそれぞれ、相手の実装ユニットが部品を装着しているときには、部品供給部から部品を吸着し、逆に、相手の実装ユニットが部品供給部から部品を吸着しているときには、部品を装着するにように、基板20に対する部品の装着を交互に行う。すなわち、部品実装機100はいわゆる交互打ちの部品実装機として構成されている。
図6は、本実施の形態における決定装置200の機能構成を示すブロック図である。
本実施の形態における決定装置200は、入力部201、表示部202、評価値算出部203、向き決定部205、通信部206、第1格納部207、第2格納部208、および第3格納部209を備えている。
入力部201は、例えばキーボードやマウスなどで構成されており、オペレータからの操作を受け付けて、その操作結果を向き決定部205などに通知する。
表示部202は、例えば液晶ディスプレイなどで構成されており、向き決定部205などの動作状態を表示したり、第1格納部207、第2格納部208、および第3格納部209などに格納されているデータを表示したりする。
向き決定部205は、評価値算出部203の算出結果に基づいて、所定の部品実装機100または生産ラインに対して搬送される基板20の向きを決定する。そして、向き決定部205は、決定された向きを示す決定向きデータ208aを生成し、その決定向きデータ208aを第2格納部208に格納したり、決定向きデータ208aの内容を表示部202に表示させたりする。
なお、以下、基板20の向き、すなわち基板20の搬送方向に対する向きを基板向きといい、基板20の取り得る基板向きのうち、向き決定部205によって決定される基板向きを最適基板向きという。
評価値算出部203は、基板20の配置が部品実装機100による生産効率に与える影響を示す値である評価値を算出する。具体的に、この評価値算出部203は、搬送回数算出部203aとタクト算出部203bとを備える。
評価値算出部203の搬送回数算出部203aは、向き決定部205から処理開始の指示を受けると、基板向きごとに、その基板向きで基板20が部品実装機100に搬送された場合に、基板20の実装対象領域全体に対して部品を実装するために必要とされる搬送回数を評価値として算出する。なお、搬送回数とは、基板20が搬送される回数であって、基板20が搬送されて停止するごとに1回だけ増加するような数である。
評価値算出部203のタクト算出部203bは、向き決定部205から処理開始の指示を受けると、まず、基板向きごとに、その基板向きの基板20に対して部品実装機100が部品を実装するための実装条件の最適化を行う。つまり、タクト算出部203bは、基板向きごとに、その基板向きにおいて実装基板のスループットが最大となるような実装条件を決定する。なお、実装条件は、例えば部品カセット114の配列や、部品の実装順序などを示す。そして、タクト算出部203bは、その決定した実装条件を示す実装条件データ209aを生成して第3格納部209に格納する。次に、タクト算出部203bは、基板向きごとに、決定された実装条件に基づいて、その部品実装機100が基板20に部品を実装して1枚の実装基板を生産するのに要する時間(以下、タクトという)を上述の評価値として算出する。
また、タクト算出部203bは、実装条件を決定するときには、第1格納部207に格納されているNCデータ207aおよび部品ライブラリ207bを読み出し、それらのデータに基づいて実装条件を決定する。なお、このような実装条件の決定は、例えば従来から用いられている最適化プログラムなどの実行によって行われる。
通信部206は、各部品実装機100と通信する。例えば、通信部206は、第3格納部209に格納されている実装条件データ209aを各部品実装機100に送信することにより、その実装条件データ209aの示す実装条件に従った部品の実装を各部品実装機100に対して実行させる。また、通信部206は、第2格納部208に格納されている決定向きデータ208aを各部品実装機100に送信することにより、基板搬送レール122a,122b間のレール幅がその決定向きデータ208aの示す決定向きに応じた幅となるように、基板搬送レール122bをスライドさせる。
第1格納部207は、基板20の各実装点に関する情報などを示すNCデータ207aと、各部品に関する情報を示す部品ライブラリ207bとを格納している。
図7は、NCデータ207aの一例を示す図である。
NCデータ207aは、基板20において装着の対象となる全ての部品の実装点に関する情報を示す。1つの実装点piは、部品種ci、X座標xi、Y座標yi、制御データφi、および実装角度θiからなる。ここで、部品種は、部品ライブラリ207bにおける部品名に相当し(図8参照)、X座標およびY座標は、実装点の座標(基板20上の特定位置を示す座標)であり、制御データは、その部品の装着に関する制約情報、例えば、使用可能なノズルnzのタイプや、ヘッド112a,112bの最高移動加速度等を示す。実装角度θiは、部品種ciの部品を吸着したノズルnzが回転すべき角度を示す。
また、NCデータ207aは、各実装点piの座標によって、基板20の実装対象領域を示している。つまり、本実施の形態では、基板20において部品実装機100による部品実装の対象とされる実装対象領域(作業対象領域)を示す領域情報がNCデータ207aに含まれている。
図8は、部品ライブラリ207bの一例を示す図である。
部品ライブラリ207bは、部品実装機100が扱うことができる全ての部品種のそれぞれについての固有の情報を集めたライブラリである。この部品ライブラリ207bは、図8に示すように、部品種(部品名)ごとの部品サイズ、その部品種におけるタクト、および制約情報などからなる。
なお、この部品ライブラリ207bの示すタクトは、一定条件下において部品を基板20に装着するのに要する部品種固有の時間であって、制約情報は、例えば、使用可能なノズルnzのタイプ(SXや、SAなど)や、部品認識カメラ116a,116bによる認識方式(反射など)、ヘッド112a,112bの最高加速度比などである。また、図8には、参考として、各部品種の部品の外観も併せて示されている。部品ライブラリ207bには、その他に、部品の色や形状などの情報が含まれていてもよい。
図9は、向き決定部205による基板向きの決定方法を説明するための説明図である。
向き決定部205は、例えば、所定の部品実装機100に搬送される基板20に対する基板向きの決定処理開始の指示を入力部201から受け付けると、その基板20の基板向きごとの搬送回数を評価値算出部203の搬送回数算出部203aに算出させる。ここで例えば、基板20の基板向きには基板向きD1と基板向きD2とがある。基板向きD1は、基板20の長辺(長手方向)がX軸方向に沿うような基板20の向きであり、基板向きD2は、基板20の長辺がY軸方向に沿うような基板20の向きである。
搬送回数算出部203aは、搬送回数を算出するときには、まず、第1格納部207に格納されているNCデータ207aを読み出すことによって基板20の実装対象領域を知得する。
次に、搬送回数算出部203aは、その実装対象領域と、部品実装機100の実装可能範囲Maと、その基板20が部品実装機100に搬送されて最初に停止される停止位置(初期停止位置)とに基づいて、基板向きごとの搬送回数を算出する。具体的には、搬送回数算出部203aは、実装対象領域の全てが実装可能範囲Ma内に収まるか否かを判別することにより搬送回数を算出する。
なお、搬送回数算出部203aは、部品実装機100の実装可能範囲Maの大きさを予め記憶している。また、搬送回数算出部203aは、基板20の実装対象領域の搬送方向先端が、実装可能範囲Ma内でその実装可能範囲Maの境界にできるだけ近くなるような基板20の位置を、上述の初期停止位置とする。さらに、本実施の形態では、基板20の実装面の全体を実装対象領域とする。
搬送回数算出部203aは、上述のような判別の結果、基板20の実装対象領域の全てが実装可能範囲Ma内に収まると判別すると、搬送回数を1回として算出し、実装対象領域の全てが実装可能範囲Ma内に収まらないと判別すると、搬送回数を2回として算出する。
例えば、搬送回数算出部203aは、基板向きD1の場合には、基板20の実装対象領域が実装可能範囲Ma内に収まらないと判別し、搬送回数を2回として算出する。
また、搬送回数算出部203aは、基板向きD2の場合には、基板20の実装対象領域が実装可能範囲Ma内に収まると判別し、搬送回数を1回として算出する。
その結果、向き決定部205は、基板向きD1,D2の搬送回数の中で、基板向きD2の搬送回数(1回)が最も少ないと判断し、基板向きD1,D2の中から、最も少ない搬送回数の基板向きD2を最適基板向きとして決定する。
また、向き決定部205は、基板向きD1,D2のそれぞれの搬送回数が等しい場合には、評価値算出部203のタクト算出部203bに、それぞれの基板向きにおけるタクトを算出させる。その結果、向き決定部205は、基板向きD1,D2の中から、タクトの最も短い基板向きを最適基板向きとして決定する。
図10は、本実施の形態における決定装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
決定装置200の向き決定部205は、まず、入力部201から基板向きの決定処理開始の指示を受け付けると、評価値算出部203の搬送回数算出部203aに対して搬送回数の算出を促す。その結果、搬送回数算出部203aは、第1格納部207に格納されているNCデータ207aを読み出すことによって基板20の実装対象領域を知得する(ステップS100)。そして、搬送回数算出部203aは、その実装対象領域や実装可能範囲Maなどに基づいて、基板向きごとの搬送回数を算出する(ステップS102)。
つまり、本実施の形態における基板20の向きの決定方法は、基板20において部品実装機100による部品実装(生産作業)の対象とされる実装対象領域を示す領域情報を取得する情報取得ステップ(ステップS100)と、基板向きごとに、基板20がその基板向きに向けられて部品実装機100に搬送された場合における基板20の配置が部品実装機100による生産効率に与える影響を示す評価値を算出する評価ステップ(ステップS102)とを含んでいる。そして、その評価ステップでは、基板向きごとに、基板20がその基板向きに向けられて部品実装機100に搬送された場合における領域情報の示す実装対象領域と実装可能範囲Maとの位置関係に基づいて、部品実装機100による部品実装がその実装対象領域の全てに対して行われるために必要な基板20の搬送回数を上述の評価値として算出している。さらに、この評価ステップでは、1回の搬送で、領域情報の示す全ての実装対象領域が実装可能範囲Ma内に収まるか否かを判別し、収まると判別したときには、搬送回数を1回として算出し、収まらないと判別したときには、搬送回数を2回以上として算出している。
次に、基板向きごとの搬送回数が算出されると、向き決定部205は、基板向きD1の搬送回数が1回で、且つ基板向きD2の搬送回数が2回であるか否かを判別する(ステップS104)。
ここで、向き決定部205は、基板向きD1の搬送回数が1回で、且つ基板向きD2の搬送回数が2回であると判別すると(ステップS104のY)、基板向きD1を最適基板向きとして決定する(ステップS106)。一方、向き決定部205は、基板向きD1の搬送回数が1回で、且つ基板向きD2の搬送回数が2回でないと判別すると(ステップS104のN)、さらに、基板向きD1の搬送回数が2回で、且つ基板向きD2の搬送回数が1回であるか否かを判別する(ステップS108)。
ここで、向き決定部205は、基板向きD1の搬送回数が2回で、且つ基板向きD2の搬送回数が1回であると判別すると(ステップS104のY)、基板向きD2を最適基板向きとして決定する(ステップS110)。
つまり、本実施の形態における基板20の向きの決定方法は、基板向きごとの評価値に基づいて、複数の基板向きの中から何れか1つの基板向きを、設定されるべき基板向き(最適基板向き)として決定する決定ステップ(ステップS106,S110)を含んでいる。そして、この決定ステップでは、評価値である搬送回数が最も少ない基板向きを、設定されるべき基板向きとして決定している。
また、向き決定部205は、ステップS108において、基板向きD1の搬送回数が2回で、且つ基板向きD2の搬送回数が1回でないと判別すると(ステップS108のN)、基板向きD1と基板向きD2のそれぞれの搬送回数が等しい、つまり基板向きD1と基板向きD2のそれぞれの搬送回数が共に1回または2回であると判断する。その結果、タクト算出部203bは、向き決定部205による判断結果に応じて、基板向きごとのタクトを算出する(ステップS112)。
そして、向き決定部205は、算出された基板向きごとのタクトに基づいて、最短のタクトの基板向きを最適基板向きとして決定する(ステップS114)。
このように本実施の形態では、基板20の向きごとに、生産効率に与える影響を示す搬送回数が評価値として算出され、搬送回数の最も少ない基板20の向きが最適基板向きとして決定されるため、その決定された最適基板向きに基板20を向けて部品実装機100に搬送すれば、2回搬送を防ぐことができ、実装基板のスループットの向上を図ることができる。
なお、本実施の形態では、搬送回数算出部203aは、実装対象領域の全てが実装可能範囲Ma内に収まると判別すると、搬送回数を1回として算出し、実装対象領域の全てが実装可能範囲Ma内に収まらないと判別すると、搬送回数を2回として算出した。しかし、2回搬送しても基板20の実装対象領域の全てに対して部品を実装することができない場合には、搬送回数算出部203aは、搬送回数を3回以上として算出してもよい。つまり、搬送回数算出部203aは、基板20の実装対象領域のうち、1回目の搬送で実装可能範囲Maに収まらなかった領域が、その実装可能範囲Maに新たに収まるように2回搬送された基板20の状態を想定する。その結果、搬送回数算出部203aは、基板20の実装対象領域のうち、未だ実装可能範囲Ma内に収まっていない領域があると判別すると、搬送回数を3回として算出する。
(変形例1)
ここで、本実施の形態における第1の変形例について説明する。上記実施の形態では、搬送回数に基づいて基板向きを決定したが、本変形例では、後述する移動距離に基づいて基板向きを決定する。
具体的に、本変形例では、向き決定部205から搬送回数算出部203aではなくタクト算出部203bに対して評価値の算出が促される。その結果、タクト算出部203bは、基板向きごとに、基板20に対して部品を実装するための移動距離を評価値として算出する。そして、本変形例に係る向き決定部205は、複数の基板向きの中から、移動距離が最も短い基板向きを最適基板向きとして決定する。
ここで、移動距離とは、部品実装機100内に停止して配置された基板20に部品を実装するために、ヘッド112a,112bが移動しなければならないY軸方向の距離(ビーム121a,121bが移動しなければならない距離)のうち長い方の距離である。例えば、図11に示すような部品実装機100の状態では、基板20が部品供給部115aの近くに配置されているため、ヘッド112bが移動しなければならないY軸方向の距離(以下、ヘッド112bのY軸方向移動距離という)の方が、ヘッド112aが移動しなければならないY軸方向の距離よりも長い。したがって、このような部品実装機100の状態では、ヘッド112bのY軸方向移動距離が上述の移動距離として採用される。すなわち、移動距離は、部品実装機100内に停止して配置される基板20の実装対象領域の中心位置と、部品認識カメラ116bとの間のY軸方向の距離である。
また、このような移動距離はタクトと相関を有し、移動距離が長ければタクトも長くなり、移動距離が短ければタクトも短くなる。つまり、本変形例に係るタクト算出部203bは、タクトの代わりにそのタクトと相関を有する移動距離を簡易的な計算処理を伴って算出し、必要に応じて、複雑な計算処理を行ってタクトを算出する。
図11は、本変形例に係る基板向きの決定方法を説明するための説明図である。
向き決定部205は、例えば、所定の部品実装機100に搬送される基板20に対する基板向きの決定処理開始の指示を入力部201から受け付けると、その基板20の基板向きD1,D2ごとの移動距離を評価値算出部203のタクト算出部203bに算出させる。
タクト算出部203bは、移動距離を算出するときには、まず、第1格納部207に格納されているNCデータ207aを読み出すことによって基板20の実装対象領域を知得する。
次に、タクト算出部203bは、基板向きD1,D2ごとに、その基板向きに向けて搬送されて停止した基板20の状態を想定し、その状態における実装対象領域の中心位置のY座標を算出する。なお、本変形例では、上記実施の形態と同様、基板20の実装面の全体を実装対象領域とする。
そして、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の中心位置のY座標と、部品認識カメラ116bのY座標との差を、上述の移動距離として算出する。なお、タクト算出部203bは部品認識カメラ116bのY座標を予め記憶している。
例えば、タクト算出部203bは、基板向きD1の場合には、移動距離をy1として算出する。また、タクト算出部203bは、基板向きD2の場合には、移動距離をy2として算出する。
その結果、向き決定部205は、基板向きD1,D2の移動距離の中で、基板向きD2の移動距離y2が最も短いと判断し、基板向きD1,D2の中から、最も短い移動距離の基板向きD2を最適基板向きとして決定する。
図12は、本変形例に係る決定装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
決定装置200の向き決定部205は、まず、入力部201から基板向きの決定処理開始の指示を受け付けると、評価値算出部203のタクト算出部203bに対して移動距離の算出を促す。その結果、タクト算出部203bは、第1格納部207に格納されているNCデータ207aを読み出すことによって基板20の実装対象領域を知得する(ステップS200)。そして、タクト算出部203bは、その実装対象領域などに基づいて、基板向きごとの移動距離を算出する(ステップS202)。
基板向きごとの移動距離が算出されると、向き決定部205は、基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2よりも長いか否かを判別する(ステップS204)。
ここで、向き決定部205は、基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2よりも長いと判別すると(ステップS204のY)、基板向きD2を最適基板向きとして決定する(ステップS206)。
一方、向き決定部205は、ステップS204で、基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2よりも長くないと判別すると(ステップS204のN)、さらに、基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2と等しいか否かを判別する(ステップS208)。
ここで、向き決定部205は、基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2と等しくないと判別すると、つまり、基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2よりも短いと判別すると(ステップS208のN)、基板向きD1を最適基板向きとして決定する(ステップS210)。
つまり、本変形例における評価ステップ(ステップS202)では、基板向きごとに、基板20がその基板向きに向けられて部品実装機100に搬送された場合に、停止したその基板20に対して、部品実装機100による部品実装が行われるために必要なヘッド112bの移動距離y1,y2を評価値として算出し、決定ステップ(ステップS206,S210)では、移動距離が最も短い基板向きを、設定されるべき基板向き(最適基板向き)として決定している。また、この評価ステップでは、基板向きごとに、基板20がその基板向きに向けられて部品実装機100に搬送された場合に、停止した基板20における領域情報の示す実装対象領域の中心と、予め定められた位置との間の、基板20の搬送方向と垂直な方向の距離を移動距離として算出している。
一方、向き決定部205は、ステップS208で基板向きD1の移動距離y1が基板向きD2の移動距離y2と等しいと判別すると(ステップS208のY)、タクト算出部203bに対して、基板向きごとのタクトを算出させる(ステップS212)。つまり、タクト算出部203bは、複雑な計算処理を行って、移動距離よりも厳密度が高いタクトを移動距離の代わりに算出する。例えば、タクト算出部203bは、変形例2で説明する処理によりタクトを算出する。そして、向き決定部205は、算出された基板向きごとのタクトに基づいて、最短のタクトの基板向きを最適基板向きとして決定する(ステップS214)。
このように本変形例では、上記実施の形態と同様、実装基板のスループットの向上を図ることができる。すなわち、本変形例では、基板20の向きごとに、生産効率に与える影響を示す移動距離が評価値として算出され、移動距離の最も短い基板20の向きが最適基板向きとして決定される。したがって、何れの向きに基板20を向けても部品実装機100の実装可能範囲Ma内に基板20の実装対象領域が収まるような場合であっても、つまり、何れの向きに基板20を向けても1回搬送が行われるような場合であっても、その決定された最適基板向きに基板20を向けて部品実装機100に搬送すれば、ヘッド112bの移動距離が短いため、実装基板のスループットの向上を図ることができる。
また、本変形例では、部品実装機100内に停止して配置される基板20の実装対象領域の中心位置と部品認識カメラ116bとの間のY軸方向の距離が、移動距離として算出されるため、複雑な計算を要することなく極めて簡単に移動距離をタクトの指標として算出することができる。
なお、本変形例では、部品実装機100内に停止して配置される基板20の実装対象領域の中心位置と部品認識カメラ116bとの間のY軸方向の距離を、移動距離としたが、他の距離を移動距離としてもよい。
例えば、部品実装機100内に停止して配置される基板20の各実装点と、部品認識カメラ116bとの間のそれぞれのY軸方向の距離の総和を移動距離としてもよい。
図13は、移動距離の他の例を説明するための説明図である。
タクト算出部203bは、例えば、基板向きD1に向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態を想定し、NCデータ207aの示す実装点のY座標に基づいて、その基板20の全ての実装点p1〜p4と、部品認識カメラ116bとの間のそれぞれのY軸方向の距離y1a〜y1dを算出する。そして、タクト算出部203bは、これらの距離y1a〜y1dの総和、つまり、y1=y1a+y1b+y1c+y1dを、基板向きD1の移動距離y1として算出する。
このように、実装点に基づいて移動距離を算出することによって、評価値である移動距離の精度を高め、より適切な基板向きを決定することができる。
なお、このように実装点に基づく移動距離で基板向きを決定する場合、四角形の基板20がとり得る基板向きには4つの向きがある。
つまり、搬送回数や、実装対象領域の中心位置に基づく移動距離などの評価値で基板向きを決定するような場合には、所定の基板向きに対する評価値と、その基板向きを180度回転させた基板向きに対する評価値とは一致する。したがって、このような場合には、評価値の算出対象とされる基板向きは、2つの基板向きD1,D2だけである。
しかし、実装点に基づく移動距離で基板向きを決定する場合には、一般に、4つの基板向きでそれぞれ移動距離が異なる。したがって、このような場合、タクト算出部203bは、4つの基板向きのそれぞれに対して移動距離を算出する。なお、4つの基板向きとは、例えば基板向きD1を基準にすると、その基準となる基板向きD1と、基板向きD1を90度回転させた向きと、基板向きD1を180度回転させた向きと、基板向きD1を270度回転させた向きとである。
また、上述の例では、実装点p1〜p4のそれぞれと部品認識カメラ116bとの間のY軸方向の距離の総和を移動距離y1としたが、実装点p1〜p4のうちヘッド112bが実装する実装点のそれぞれと部品認識カメラ116bとの間のY軸方向の距離の総和を移動距離y1として算出してもよい。また、実装点と部品認識カメラ116bとの間のY軸方向の距離ではなく、その間の直線距離を用いて移動距離y1を算出してもよい。
図14は、本変形例に係る決定装置200の動作の他の例を示すフローチャートである。
決定装置200の向き決定部205は、まず、入力部201から基板向きの決定処理開始の指示を受け付けると、評価値算出部203のタクト算出部203bに対して移動距離の算出を促す。その結果、タクト算出部203bは、第1格納部207に格納されているNCデータ207aを読み出す(ステップS300)。そして、タクト算出部203bは、NCデータ207aによって示される各実装点に基づいて、基板向きごとに、各実装点と部品認識カメラ116bとの間のそれぞれのY軸方向の距離を算出する(ステップS302)。
さらに、タクト算出部203bは、基板向きごとに、ステップS302で算出された各実装点の距離を加算することにより、その基板向きにおける移動距離を導出する(ステップS304)。そして、向き決定部205は、最短の移動距離の基板向きを特定する(ステップS306)。
ここで、向き決定部205は、ステップS306で特定された基板向きが2つ以上あるか否かを判別する(ステップS308)。向き決定部205は、特定された基板向きが1つだけであると判別すると(ステップS308のN)、その特定された基板向き、つまり最短の移動距離の基板向きを最適基板向きとして決定する(ステップS310)。
一方、向き決定部205は、ステップS308で特定された基板向きが2つ以上であると判別すると(ステップS308のY)、タクト算出部203bに対して、基板向きごとのタクトを算出させる(ステップS312)。そして、向き決定部205は、算出された基板向きごとのタクトに基づいて、最短のタクトの基板向きを最適基板向きとして決定する(ステップS314)。
(変形例2)
ここで、本実施の形態における第2の変形例について説明する。上記実施の形態では、搬送回数や移動距離などの評価値に基づいて基板向きを決定したが、本変形例では、タクトのみに基づいて基板向きを決定する。
図15は、本変形例に係る決定装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
決定装置200の向き決定部205は、まず、入力部201から基板向きの決定処理開始の指示を受け付けると、評価値算出部203のタクト算出部203bに対して、基板向きごとのタクトを算出させる(ステップS400)。そして、向き決定部205は、算出された基板向きごとのタクトに基づいて、最短のタクトの基板向きを最適基板向きとして決定する(ステップS402)。
つまり、本変形例に係る基板20の向きの決定方法は、基板向きごとに、その基板向きに向けて搬送された基板20を用いて部品実装機100が1つの実装基板(生産物)を生産するのに要するタクトを評価値として算出する評価ステップ(ステップS400)と、複数の基板向きの中からタクトが最も短い基板の向きを、設定されるべき基板向き(最適基板向き)として決定する決定ステップ(ステップS402)とを含んでいる。
このように本変形例では、基板20の向きごとに、タクトが算出され、タクトの最も短い基板20の向きが最適基板向きとして決定されるため、その決定された最適基板向きに基板20を向けて部品実装機100に搬送すれば、実装基板のスループットの向上を図ることができる。
なお、本変形例においても上述と同様、四角形の基板20がとり得る基板向きには4つの向きがあるため、タクト算出部203bは、その4つの基板向きのそれぞれに対してタクトを算出する。
ここで、上述のようなタクトの算出には、部品配列などの実装条件の最適化を行う必要があり、さらにその最適化された実装条件を用いた複雑な演算が必要となる。その結果、タクトの算出には、決定装置200に多くの処理負担がかかり、長い算出時間を要することがある。
そこで、実装条件の最適化を行わず、実装条件を用いずに簡易的にタクトを算出してもよい。以下、このように簡易的に算出されるタクトを仮想タクトという。
図16は、仮想タクトの算出方法を説明するための説明図である。
タクト算出部203bは、例えば図16に示すように、基板向きD1に向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態を想定する。その結果、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の全体が実装可能範囲Ma内に収まるため、搬送回数が1回であると判断する。このとき、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の全体を実装可能対象領域として特定する。
なお、本変形例においても、上記実施の形態と同様、基板20の実装面の全てを実装対象領域とする。また、実装可能対象領域とは、基板20の実装対象領域のうち、上述のように想定された基板20の状態において実装可能範囲Ma内に含まれる領域である。
次に、タクト算出部203bは、部品認識カメラ116aから実装可能対象領域にある各実装点p1〜p4までヘッド112aが移動する時間(第1ヘッド移動時間)と、部品認識カメラ116bから実装可能対象領域にある各実装点p1〜p4までヘッド112bが移動する時間(第2ヘッド移動時間)と、基板20の搬送に要する予め設定された基板搬送時間と、停止した基板20の位置を認識するのに要する予め設定された基板認識時間との合計時間を仮想タクトとして算出する。なお、基板20の位置の認識は、基板20の実装点に部品を正確に実装するために部品実装機100において行われる。
具体的に、タクト算出部203bは、まず、第1格納部207のNCデータ207aを読み出す。そして、タクト算出部203bは、NCデータ207aによって示される各実装点p1〜p4の座標と、予め記憶している部品認識カメラ116a,116bの座標とのそれぞれの間の距離La〜Lhを算出する。次に、タクト算出部203bは、それらの距離La〜Lhを加算することにより、総距離L=La+Lb+Lc+Ld+Le+Lf+Lg+Lhを算出する。その後、タクト算出部203bは、総距離Lをヘッド112a,112bの移動速度Vで除算することにより、上述の第1ヘッド移動時間と第2ヘッド移動時間との和であるヘッド移動時間Th=L/Vを算出する。そして、タクト算出部203bは、ヘッド移動時間Thと基板搬送時間Tcと基板認識時間Tdとを合計することにより、仮想タクトTCv=Th+Tc+Tdを算出する。
なお、上述の例では、ヘッド112a,112bのそれぞれの移動速度を等しく扱うことで、上述の第1ヘッド移動時間と第2ヘッド移動時間とを個別に算出することなく、それらの和であるヘッド移動時間Thを算出したが、第1ヘッド移動時間と第2ヘッド移動時間とを個別に算出してもよい。
この場合、タクト算出部203bは、距離L1=La+Lb+Lc+Ldを算出するとともに、距離L2=Le+Lf+Lg+Lhを算出する。そして、タクト算出部203bは、距離L1をヘッド112aの移動速度V1で除算することにより、第1ヘッド移動時間Tha=L1/V1を算出し、距離L2をヘッド112bの移動速度V2で除算することにより、第2ヘッド移動時間Thb=L2/V2を算出する。その後、タクト算出部203bは、第1ヘッド移動時間Thaと第2ヘッド移動時間Thbと基板搬送時間Tcと基板認識時間Tdとを合計することにより、仮想タクトTCv=Tha+Thb+Tc+Tdを算出する。
なお、タクト算出部203bは、例えば、基板向きD1に向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態を想定した結果、基板20の実装対象領域の全体が実装可能範囲Ma内に収まらなければ、搬送回数が2回であると判断する。つまり、この場合には、タクト算出部203bはさらに、2回目の搬送によって停止した基板20の状態を想定し、この基板20の状態における実装可能対象領域を特定する。そして、タクト算出部203bは、その実装可能対象領域のうち未処理の実装点に対して、上述のような仮想タクトの算出を再び行う。そして、タクト算出部203bは、1回目の仮想タクトに2回目の仮想タクトを加算することにより、その仮想タクトを更新する。
また、タクト算出部203bは、部品ライブラリ207bによって示される最高加速度比などを用いてヘッド112a,112bの移動速度V1,V2を部品種ごとに調整してもよい。
さらに、基板搬送時間Tcと基板認識時間Tdのタクトに対する寄与が少ない場合には、タクト算出部203bは、基板搬送時間Tcと基板認識時間Tdとを用いずに、第1ヘッド移動時間Thaと第2ヘッド移動時間Thbとを合計することにより、仮想タクトTCv=Tha+Thbを算出してもよい。つまり、本変形例の評価ステップでは、基板向きごとに、基板20がその基板向きに向けられて部品実装機100に搬送された場合に、停止したその基板20の各実装点と、予め定められた位置との間をヘッドが移動する総移動時間を仮想タクトとして算出する。
このように、仮想タクトを算出する場合には、部品実装機100に備えられた部品の配列や部品の実装順序などを考慮してタクトを算出する場合と比べて、処理負担を抑えて簡単にタクトを算出することができる。
ところで、ヘッド112aに取り付けられているノズルnzの何れもが実装点p1および実装点p4に対して部品を実装することはできず、実装点p1および実装点p4に部品実装可能なノズルnzは制限されている。つまり、ヘッド112aがX軸方向に実装可能範囲Maの境界まで移動しても、その境界から遠いノズルnzは、その境界付近にある実装点に対して部品を実装することができない。同様に、ヘッド112bに取り付けられているノズルnzの何れもが実装点p1および実装点p4に対して部品を実装することはできず、実装点p1および実装点p4に部品実装可能なノズルnzは制限されている。つまり、ヘッド112bがX軸方向に実装可能範囲Maの境界まで移動しても、その境界から遠いノズルnzは、その境界付近にある実装点に対して部品を実装することができない。
このように、実装点に対して実装可能なノズルnzが制限されているということは、そのような実装点の数や、制限の程度(実装可能なノズルnzの数)に応じてタクトは長くなる傾向にある。
そこで、タクト算出部203bは、実装点に対するノズルnzの制限を考慮して仮想タクトを算出してもよい。
図17は、実装点に対するノズルnzの制限を考慮した仮想タクトの算出方法を説明するための説明図である。
タクト算出部203bは、例えば図17の(a)に示すように、基板向きD1に向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態を想定する。その結果、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の全体が実装可能範囲Ma内に収まるため、搬送回数は1回であると判断する。このとき、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の全体を実装可能対象領域として特定する。
そして、タクト算出部203bは、実装可能範囲Ma内に予め設定された非制限範囲Mbを用い、基板20の実装可能対象領域内にある実装点のそれぞれに対して、その実装点がノズルnzの制限を受ける実装点(制限実装点)であるか否かを判別する。非制限範囲Mbとは、ノズルnzの制限なしに部品実装可能な範囲であって、実装点がその範囲内にあればヘッド112a,112bの何れのノズルnzであってもその実装点に対して部品実装可能であることを示す。
例えば、タクト算出部203bは、実装可能対象領域内にある実装点p1〜p4のうち、実装点p2,p3が非制限範囲Mb内にあるため、実装点p2,p3は制限実装点でない、つまり非制限実装点であると判別する。また、タクト算出部203bは、実装点p1,p4が非制限範囲Mb外にあるため、実装点p1,p4は制限実装点であると判別する。このように、タクト算出部203bは、基板20の実装可能対象領域内にある実装点の中から、制限実装点と非制限実装点とを特定する。
そして、タクト算出部203bは、上述と同様、各実装点p1〜p4と部品認識カメラ116a,116bとのそれぞれの間の距離La〜Lhを算出する。次に、タクト算出部203bは、それらの距離La〜Lhのうち、非制限実装点p2,p3を基点とする距離Lb,Lc,Lf,Lgを特定する。さらに、タクト算出部203bは、その特定された距離Lb,Lc,Lf,Lgを用いて、ヘッド112aが距離Lb,Lcだけ移動するのに要する移動時間Ta1=(Lb+Lc)/V1を算出し、ヘッド112bが距離Lf,Lgだけ移動するのに要する移動時間Ta2=(Lf+Lg)/V2を算出する。
その結果、タクト算出部203bは、移動時間Ta1と移動時間Ta2とを加算することにより、非制限実装点p2,p3に基づくヘッド112a,112bの移動時間Ta=Ta1+Ta2を算出する。
次に、タクト算出部203bは、制限実装点p1に対する重み係数K1と、制限実装点p4に対する重み係数K2とを決定する。ここで、重み係数K1,K2は、それぞれ1以上の整数であって、制限実装点に対して部品実装可能なノズルnzの数が少ないほど大きな値に決定される。
そして、タクト算出部203bは、ヘッド112aが制限実装点p1を基点とする距離Laを移動するのに要する移動時間Tb1を、上述の重み係数K1を用いて、Tb1=La/V1×K1として算出する。同様に、タクト算出部203bは、ヘッド112aが制限実装点p4を基点とする距離Ldを移動するのに要する移動時間Tb2を、上述の重み係数K2を用いて、Tb2=Ld/V1×K2として算出する。
さらに同様に、タクト算出部203bは、ヘッド112bが制限実装点p1を基点とする距離Leを移動するのに要する移動時間Tb3を、上述の重み係数K1を用いて、Tb3=Le/V2×K1として算出する。同様に、タクト算出部203bは、ヘッド112bが制限実装点p4を基点とする距離Lhを移動するのに要する移動時間Tb4を、上述の重み係数K2を用いて、Tb4=Lh/V2×K2として算出する。
その結果、タクト算出部203bは、移動時間Tb1〜Tb4を加算することにより、制限実装点p1,p4に基づくヘッド112a,112bの移動時間Tb=Tb1+Tb2+Tb3+Tb4を算出する。
そして、タクト算出部203bは、非制限実装点に対するヘッドの移動時間Taと、制限実装点に対するヘッドの移動時間Tbと、基板20の1回の搬送に要する基板搬送時間Tcと、停止した基板20の位置を1回だけ認識するのに要する基板認識時間Tdとを合計することにより、仮想タクトTCv=Ta+Tb+Tc+Tdを算出する。
なお、タクト算出部203bは、上述と同様に、例えば、基板向きD1に向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態を想定した結果、基板20の実装対象領域の全体が実装可能範囲Ma内に収まらなければ、搬送回数が2回であると判断する。つまり、この場合には、タクト算出部203bはさらに、2回目の搬送によって停止した基板20の状態を想定し、この基板20の状態における実装可能対象領域を特定する。そして、タクト算出部203bは、その実装可能対象領域のうち未処理の実装点に対して、上述のような仮想タクトの算出を再び行う。そして、タクト算出部203bは、1回目の仮想タクトに2回目の仮想タクトを加算することにより、その仮想タクトを更新する。
一方、タクト算出部203bは、例えば図17の(b)に示すように、基板向きD2に向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態を想定する。その結果、タクト算出部203bは、基板向きD1の場合と同様、基板20の実装対象領域の全体が実装可能範囲Ma内に収まるため、搬送回数は1回であると判断する。また、このとき、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の全体を実装可能対象領域として特定する。
そして、タクト算出部203bは、実装可能範囲Ma内に予め設定された非制限範囲Mbを用い、基板20の実装可能対象領域内にある実装点のそれぞれに対して、その実装点がノズルnzの制限を受ける実装点(制限実装点)であるか否かを判別する。
ここで、タクト算出部203bは、実装可能対象領域内にある実装点p1〜p4の全てが非制限範囲Mb内にあるため、実装点p1〜p4の全ては制限実装点でない、つまり非制限実装点であると判別する。
したがって、タクト算出部203bは、上述と同様、距離L1=La+Lb+Lc+Ldを算出するとともに、距離L2=Le+Lf+Lg+Lhを算出する。そして、タクト算出部203bは、距離L1をヘッド112aの移動速度V1で除算することにより、第1ヘッド移動時間Tha=L1/V1を算出し、距離L2をヘッド112bの移動速度V2で除算することにより、第2ヘッド移動時間Thb=L2/V2を算出する。その後、タクト算出部203bは、第1ヘッド移動時間Thaと第2ヘッド移動時間Thbと基板搬送時間Tcと基板認識時間Tdとを加算することにより、仮想タクトTCv=Tha+Thb+Tc+Tdを算出する。
図18は、本変形例に係るタクト算出部203bがノズルnzの制限を考慮して仮想タクトを算出する動作の一例を示すフローチャートである。
決定装置200の向き決定部205は、まず、入力部201から基板向きの決定処理開始の指示を受け付けると、タクト算出部203bに対して仮想タクトの算出を促す。その結果、タクト算出部203bは、第1格納部207に格納されているNCデータ207aを読み出すことによって、基板20の実装対象領域および各実装点の座標を知得する(ステップS500)。
次に、タクト算出部203bは、基板20の複数の基板向きのうち何れか1つの基板向きを選択し(ステップS502)、仮想タクトTCvをTCv=0に初期設定する。
さらに、タクト算出部203bは、その選択された基板向きに向けて部品実装機100内に搬送されて停止した基板20の状態(停止状態)を想定し、その停止状態における基板20の実装可能対象領域を、ステップS500で知得した実装対象領域および実装可能範囲Maに基づいて特定する(ステップS506)。
そして、タクト算出部203bは、その実装可能対象領域にある各実装点が非制限実装点であるか否かを判別する。つまり、タクト算出部203bは、実装可能対象領域にある複数の実装点の中から、非制限実装点と制限実装点とを特定する(ステップS508)。
次に、タクト算出部203bは、非制限実装点に基づくヘッド112a,112bの移動時間Taと、制限実装点に基づくヘッド112a,112bの移動時間Tbとをそれぞれ算出して仮想タクトTCvに加算することにより、その仮想タクトTCvを更新する(ステップS510)。
このように本変形例に係る基板20の向きの決定方法は、基板20の実装点ごとに、その実装点に対する部品実装機100による部品の実装に制約があるか否かを判別する制約判別ステップ(ステップS508)を含み、評価ステップ(ステップS510)では、制約があると判別された実装点(制限実装点)と、予め定められた位置との間をヘッド112a,112bが移動する移動時間に重みを加えて、仮想タクトを算出している。
さらに、タクト算出部203bは、基板20を上述の停止状態にするまでに要する基板搬送時間Tcと、その停止状態の基板20の位置の認識に要する基板認識時間Tdとを仮想タクトTCvに加算することにより、その仮想タクトTCvを更新する。
ここで、タクト算出部203bは、基板20に対して次の搬送が必要か否かを判別する(ステップS514)。すなわち、タクト算出部203bは、基板20の実装対象領域の全てが実装可能対象領域とされたか否かを判別する。具体的には、タクト算出部203bは、上述の停止状態にある基板20の実装対象領域が実装可能範囲Maからはみ出していれば、そのはみ出している部分が実装可能対象領域とされていないため、次の搬送が必要であると判別する。
タクト算出部203bは、次の搬送が必要であると判別すると(ステップS514のY)、上述の停止状態にある基板20がさらに搬送されて停止した停止状態を想定し、ステップS506からの処理を繰り返して実行する。一方、タクト算出部203bは、次の搬送は不要であると判別すると(ステップS514のN)、直近のステップS512で更新された仮想タクトTCvを、ステップS502で選択された基板向きに対する仮想タクトTCvとして決定する(ステップS516)。
ステップS516の後、タクト算出部203bは、仮想タクトTCvが決定されていない他の基板向きがあるか否かを判別し(ステップS518)、他の基板向きがあると判別すると(ステップS518のY)、ステップS502からの処理を繰り返して実行する。この場合のステップS502では、タクト算出部203bは、未だ選択されていない基板向きを選択する。
なお、本変形例では、1つの部品実装機100のタクトを算出し、そのタクトに基づいて基板20の向きを決定したが、生産ラインのタクト(ラインタクト)を算出し、そのラインタクトに基づいて基板20の向きを決定してもよい。この場合、タクト算出部203bは、生産ラインを構成する複数の部品実装機100のそれぞれについてタクトを算出し、最も長いタクトをラインタクトとする。また、ラインタクトを算出するときに用いる部品実装機100のタクトを上述の仮想タクトとして算出してもよい。
また、本変形例では図16または図17に示すように、タクト算出部203bは、部品認識カメラ116aから実装可能対象領域にある各実装点p1〜p4までヘッド112aが移動する時間と、部品認識カメラ116bから実装可能対象領域にある各実装点p1〜p4までヘッド112bが移動する時間とを、それぞれ第1ヘッド移動時間と第2ヘッド移動時間として算出した。しかし、例えば、ヘッド112aが実装点p1,p2に対して部品を実装し、ヘッド112bが実装点p3,p4に対して部品を実装することが分かっていれば、部品認識カメラ116aから実装点p1,p2までヘッド112aが移動する時間と、部品認識カメラ116bから実装点p3,p4までヘッド112bが移動する時間とを、それぞれ第1ヘッド移動時間と第2ヘッド移動時間として算出してもよい。
また、本変形例では図16または図17に示すように、タクト算出部203bは、仮想タクトを算出するために、部品認識カメラと各実装点との間の直線距離La〜Lhを用いたが、変形例1のように、部品認識カメラと各実装点との間のY軸方向の距離、つまりビーム121a,121bの移動距離を用いてもよい。
以上、本発明に係る基板の向きの決定方法および決定装置について、上記実施の形態およびその変形例を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本実施の形態およびその変形例では、搬送回数や、移動距離、タクト(仮想タクト)などの評価値を算出したが、これらを算出することなく、基板20の長手方向が基板20の搬送方向に対して垂直となるような基板20の向きを最適基板向きとして決定してもよい。
また、本発明における基板の向きの決定方法は、基板20において部品実装機100による部品実装の対象とされる実装対象領域を示すNCデータ207aを取得する情報取得ステップと、基板20の向きごとに、基板20がその向きに向けられて部品実装機100に搬送された場合におけるそのNCデータ207aの示す全ての実装対象領域が実装可能範囲Maに収まるか否かを判別する判別ステップと、その判別ステップで全ての実装対象領域が実装可能範囲Maに収まると判別された基板20の向きを、最適基板向きとして決定する決定ステップとを含んでもよい。
これにより、上述と同様、搬送回数や、移動距離、タクト(仮想タクト)などの評価値を算出することなく、実装基板などの生産物のスループットの向上を図ることができる。
また、本実施の形態およびその変形例1では、1つの部品実装機100に対して搬送される基板20の向きを決定したが、生産ラインに対して搬送される基板20の向きを決定してもよい。つまり、決定装置200は、生産ラインを構成する複数の部品実装機100のそれぞれについて基板20の向きを決定し、例えば、決定された向きの中で最も多い向きを最適基板向きとして決定する。
また、本実施の形態およびその変形例では、部品実装機100に対して搬送される基板20の向きを決定したが、部品実装機100以外の他の生産設備に対して搬送される基板20の向きを決定してもよい。
また、部品実装機100は決定装置200を備えていてもよい。
また、本実施の形態およびその変形例1では、複数の基板向きの搬送回数または移動距離が等しい場合には、それぞれの基板向きのタクトを算出したが、このときも、変形例2と同様、それぞれの基板向きの仮想タクトを算出して、仮想タクトが最も短い基板向きを最適基板向きとして決定してもよい。