JP4739490B2 - 擬似接着用接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な接着剤組成物に関するもので、特に軟質紙同志の擬似接着に好適に使用されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トイレットペーパー、タオルペーパーのような家庭紙、レシート、チャート紙のような各種記録紙等のロール製品を製造する場合には、ロ−ルの巻き終わり時に通常テールシールもしくはエンドグルーと呼ばれる接着剤を使用して端部をシ−ルしている。
【0003】
この接着剤の塗布には種々の方法が用いられており、例えば、スプレーノズルから線状もしくは帯状に吐出させる方法、プレートに付着させてから転写する方法、糸に付着させて転写する方法等があるが、何れの方法においても接着剤の粘度と初期接着力が安定していることが重要である。
上記粘度が安定しなければ塗布量が大きく変動するし、初期接着力が低下すればコンベアーやコアアキームレーター上で発生する衝撃やログカッターで切断される際にシール部が剥離してしまう。
【0004】
こうした接着剤を使用する場合の生産性に関する問題と共に、この接着剤に要求される重要な性能は、トイレットペーパー等を使い始める時にシール部が破けることなく簡単に剥離することができ、また外観上、長期間の保存によっても変色したり、風合いが変化したりしないことである。
もし、シール部の接着力が強過ぎて剥がしにくかったり、黄変や褐変等によって変色すれば、品質等に関して消費者の信頼性を損なうことになる。
【0005】
従来、こうした用途に使用する接着剤の原料としては、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、でん粉、各種ワックス類等を、単独で若しくは混合したものを0.5〜5%程度の水溶液として使用している。
しかしながら、上記ポリエチレンオキサイドを主成分とする接着剤は、保存安定性が悪く、僅か数週間の間に粘度も接着力も低下し、劣化、腐敗してしまう。その上、温度による粘度の変化も極めて大きいので安定した作業条件が得られない。また、溶解し難く、攪拌やポンプ移送時に生ずる剪断力によって粘度が大きく変化してしまうので安定した製造が困難である。
【0006】
また、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、でん粉等を主成分とする接着剤は、1%未満の濃度でも充分な接着力が得られて経済的ではあるが、こうした濃度では好適な粘性と初期接着力を得ることが難しく、また、水分蒸発等の僅かな濃度変化で接着力が大きく変化するために、一定の剥離力を有する製品の生産が極めて難かしい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、家庭紙等のロール製品の端末を軽く、かつ確実に接着することができ、ロール製品の使用時には容易に剥離して使用することができると共に、保存中の変色や風合を損なう心配がない接着剤を得ようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、現在使用されている上記の如き接着剤が有する問題の解決について鋭意研究の結果、粘着性を有しない1種または数種のアクリル系水溶性ポリマーの水溶液に、1種または数種の無機酸塩を混合したものは、良好な初期接着力と接着力、並びに剥離性を有しており、また保存安定性と粘度安定性に優れていることを見出し、こうした知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
上記したアクリル系の水溶性ポリマーは接着剤としての歴史が古く、様々な用途の接着や粘度調整剤として使用されている。
しかしながら、上記軟質紙の内でも特にトイレットペ−パ−やタオルペ−パ−等の家庭紙の分野では全く使用されることがなかった。それは先ず本用途で一番嫌われる臭気の問題があり、一般にアクリル臭とよばれる残存モノマーや樹脂自体に起因する不快臭を有しており、次に、経時的に接着力が変化してしまい、更に白い紙に使用された場合、塗布部が黄変又は褐変してしまうことによる。
そして、一般にアクリル系の水溶性ポリマーには粘着力を向上させる効果があって、適当な接着力を付与できるような濃度にすると非常に高粘度になり、粘着力も高くなって、塗布することが困難になっていた。
【0010】
また、近年、アクリル系の微粘着性で再剥離性の粘着剤がインデックスなどの文房具等の用途に用いられているが、これを上記の如き用途に用いると使用時のノズル詰まり、ガムアップ、泡沫凝固、コンベアー類等への付着、ベタツキ等を誘発し、物理的な支障が多く発生して実際上使用することが不可能である。
【0011】
このような重大な欠点を有するアクリル系ポリマーの水溶液であるが、これに従来考えられもしなかった無機塩類を混合するという極めて簡単な方法によって、この樹脂が有する上記の如き欠点を解決することができ、低粘度で良好な軽い接着性と剥離性を有するものを得ることができることを発見した。
すなわち、本発明はポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ共重合体から選ばれる1種または数種のアクリル系水溶性ポリマー100重量部に対して亜硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダから選ばれる1種または2種の無機酸塩の1〜50重量部未満を配合すると共に、上記アクリル系水溶性ポリマーが0.1〜5重量%の濃度となるような水溶液に形成して擬似接着用の接着剤組成物を調製することにより、無臭化し、経時的接着力変化を抑制し、塗布部の変色を防止し、更には粘度を低い状態に自由に調整することができるようにしたものである。
【0012】
上記したアクリル系水溶性ポリマーの水溶液は非粘着性のものであって、その具体例としては上記の如くポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ共重合体等があり、これらは単独で使用してもよく、2種類以上の混合物の状態で使用することもできる。こうした水溶液は、通例、樹脂固形分の含有量を約0.1〜10重量%程度にして用いるが、特に好ましくは0.1〜5重量%で用いるとよい。
【0013】
本発明のアクリル系共重合体に使用される主モノマ−は、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等であり、アルキル基としてはメチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等があげられ、これらのエステルモノマ−は単独もしくは併用して使用される。
また、共重合モノマ−としては、アクリル酸,メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸,フマ−ル酸等の多価カルボン酸等のカルボキシル基含有モノマ−及びこれらの無水物やエステル類等があげられるが、共重合体としての前提条件は乾燥時に非粘着性である事が必要である。
【0014】
上記無機塩類としては、例えば、亜硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダ等があり、これらは単独で使用してもよく、2種類の混合物の状態で使用することもできる。また、接着剤の調製過程において、水やアクリル系水溶性ポリマーの水溶液に酸とアルカリの形で添加して無機酸塩を生成させることもできる。
この無機酸塩は、上記アクリル系水溶性ポリマーの樹脂固形分100重量部に対して、その混合量が約1重量部未満の場合や約50重量部以上の場合は余り実用的ではなく、特に好ましくは約1〜20重量部程度混合するとよい。
【0015】
また必要に応じて、防腐剤、防黴剤、凍結防止剤、可塑剤、pH調整剤、消泡剤等を適宜使用することができる。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
水98重量部に、ポリアクリル酸ソーダを1重量部と亜硫酸ソーダ0.2重量部を常温で混合、溶解し、有機窒素系防腐剤0.1重量部を添加して接着剤組成物を得た。
【0017】
(実施例2)
実施例1における亜硫酸ソーダを0.4重量部として接着剤組成物を得た。
(実施例3)
実施例1におけるポリアクリル酸ソーダに代えてポリアクリル酸を使用して接着剤組成物を得た。
(実施例4)
実施例3における亜硫酸ソーダに代えて重亜硫酸ソーダを使用して接着剤組成物を得た。
【0018】
(比較例1)
実施例1における亜硫酸ソーダを除いて接着剤組成物を得た。
(比較例2)
実施例3における亜硫酸ソーダを除いて接着剤組成物を得た。
(比較例3)
ポリエチレンオキサイドを主成分とするテールシール用接着剤。
【0019】
(試験)
上記実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の各接着剤組成物について、下記(1)〜(5)に示す事項について、試験、測定を行った。
(1)粘度:JIS K6838 に準じ、ビスコテスター(リオン株式会社製)により測定した。
(2)pH:JIS K6837 により測定した。
(3)不揮発分:JIS K6839 により測定した。
(4)臭気:各接着剤組成物の臭いを確認した。
(5)シール部の変色:テールシーラーで各接着剤組成物を塗布することにより生産されたトイレットペーパーのテールシール部を目視により観察した。(6)接着力:JIS K6839 に準じ、上記トイレットペーパーのテールシール部の接着力を測定した。
【0020】
(結果)
上記各試験の結果を表1に示す。
尚、各実施例の接着剤組成物では90日保存経過後においても品質の変化は見られなかった。
【0021】
【表1】
【0022】
(考察)
実施例の接着剤組成物には、不快臭がなく、経時的に接着力が変化することもないし、塗布部に変色も見られず、更には所望の粘度に調整できることが判る。尚、無機酸類を配合しない比較例1、2の接着剤組成物には、不快臭があり、経時的に接着力が変化し、塗布部が黄変し、粘度が高くテールシーラーで塗布する場合には口径を直径1.35mmから2mmへと大きなものに変更しなければ塗布することができなかった。
Claims (4)
- ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ共重合体から選ばれる1種または数種のアクリル系水溶性ポリマー100重量部に対して亜硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダから選ばれる1種または2種の無機酸塩を1〜50重量部未満で配合すると共に、上記アクリル系水溶性ポリマーが0.1〜5重量%の濃度となるような水溶液に形成したことを特徴とする擬似接着用接着剤組成物。
- ポリアクリル酸ソーダ1重量部と亜硫酸ソーダ0.2重量部が、水98重量部中に含有溶解されている請求項1に記載の擬似接着用接着剤組成物。
- ポリアクリル酸ソーダ1重量部と亜硫酸ソーダ0.4重量部が、水98重量部中に含有溶解されている請求項1に記載の擬似接着用接着剤組成物。
- 防腐剤が更に含有されている請求項1〜3のいずれかに記載の擬似接着用接着剤組成物。
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