JP4739097B2 - 柱上トランスの診断方法 - Google Patents
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Description
ところで、トランスにおいては、絶縁油を交換して再利用されることが多いが、巻線の交換は行われていない。このため、既に劣化が進行している巻線においては、再利用直後に焼損事故に至ることもあり、かかる事故を防止するために柱上トランスの劣化診断技術の確立が要請されている。
しかしながら、前記の雷電流のように定格電流を遥かに超える異常電流が流れると、その異常電流に基づく過大な電磁力のために巻線やコアが変歪し、磁束が漏洩し、外装が磁化されることを本発明者等は確認している。
而して、柱上トランスの外装の磁化状態を測定し、その測定結果を診断データとすることにより柱上トランスの劣化診断が可能であることを認識した。
請求項2に係る柱上トランスの診断方法は、請求項1の柱上トランスの診断方法において、外装の残留磁気の測定を、磁気センサの接触若しくはスキャニングにより行うことを特徴とする。
請求項3に係る柱上トランスの診断方法は、請求項2の柱上トランスの診断方法において、磁気センサに差動式を使用することを特徴とする。
請求項4に係る柱上トランスの診断方法は、請求項2または3の柱上トランスの診断方法において、磁気センサに磁気インピーダンス効果センサを使用することを特徴とする。
磁気インピーダンス効果センサには、磁気インピーダンス効果素子を備え、該素子にバイアス磁界と励磁電流を加えつつ磁気インピーダンス効果素子の出力を増幅器で増幅して検出出力を得るセンサにおいて、増幅器出力のオフセットを入力信号としてそのオフセットを打ち消すための補償用信号を発生させこの補償用信号を前記増幅器に前記オフセットを消去するための入力として加える補正回路を設けたもの、または一対の磁気インピーダンス効果素子を備え、各素子にバイアス磁界と励磁電流を加えつつ両磁気インピーダンス効果素子の出力を差動増幅器で増幅して検出出力を得るセンサにおいて、差動増幅器出力のオフセットを入力信号としてそのオフセットを打ち消すための補償用信号を発生させこの補償用信号を前記増幅器に前記オフセットを消去するための入力として加える補正回路を設けたもの、または一対の磁気インピーダンス効果素子を備え、各素子にバイアス磁界と励磁電流を加えつつ両磁気インピーダンス効果素子の出力を差動増幅器で増幅して検出出力を得るセンサにおいて、差動増幅器の両入力端子間に、差動増幅器出力のオフセットを入力信号としてそのオフセットを打ち消すための補償用信号を発生させこの補償用信号を前記増幅器の両入力端子間に前記オフセットを消去するための入力として加える補正回路を設けたものを使用でき、これらにおいて、補正回路に、増幅器または差動増幅器出力のオフセットが所定値に達したときに補償用出力を発生する手段を付設すること、更に、増幅器または差動増幅器出力のオフセットをn倍(n>1)して補正回路に入力する手段を付設することができる。
請求項5に係る柱上トランスの診断方法は、請求項2または3の柱上トランスの診断方法において、磁気センサにMR型センサ、ホール効果型センサ、フラックスゲートセンサまたはSQUIDの何れかを使用することを特徴とする。
本発明者等の鋭意試験結果によれば、雷電流や開閉サージ電流などを受けたトランスの外装の残留磁気が2.0Oe以上であることが明らかとなった。正常なトランスの外装の残留磁気は2.0Oeを充分に下回っており、一つの閾値として残留磁気2.0Oe以上を不良と診断できる。
図1は本発明において使用する磁気インピーダンス効果センサの一例の回路図を示している。
図1において、1は磁気インピーダンス効果素子であり、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向の磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが使用される。かかる零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤに高周波励磁電流を流したときに発生するワイヤ両端間出力電圧中のインダクタンス電圧分は、ワイヤの横断面内に生じる円周方向磁束によって上記の円周方向に易磁化性の外殻部が円周方向に磁化されることに起因して発生する。従って、周方向透磁率μθは同外殻部の円周方向の磁化に依存する。而るに、この通電中のアモルファスワイヤの軸方向に信号磁界を作用させると、上記通電による円周方向磁束と信号磁界磁束との合成により、上記円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずれ、それだけ円周方向への磁化が生じ難くなり、上記周方向透磁率μθが変化し、上記インダクタンス電圧分が変動することになる。この変動現象は磁気インダクタンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。更に、上記通電電流の周波数がMHzオ−ダになると、高周波表皮効果が大きく現れ、表皮深さδ=(2ρ/wμθ)1/2(μθは前記した通り円周方向透磁率、ρは電気抵抗率、wは角周波数をそれぞれ示す)がμθにより変化し、このμθが前記した通り、信号磁界によって変化するので、ワイヤ両端間出力電圧中の抵抗電圧分も信号磁界で変動するようになる。この変動現象は磁気インピーダンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。
また、被変調波(周波数fs)に同調させた周波数fsの方形波を被変調波に乗算して信号波をサンプリングする同調検波を使用することができる。
上記の実施例では、被変調波の復調によって被検出磁界を取り出しているが、これに限定されず、磁気インピーダンス効果素子に作用する信号磁界(信号波)で変調された高周波励磁電流波(搬送波)から信号磁界を検波し得るものであれば、適宜の検波手段を使用できる。
図3において、100は基板チップであり、例えばセラミックス板を使用できる。101は基板片の片面に設けた電極であり、磁気インピーダンス効果素子接続用突部102を備えている。この電極は導電ペースト、例えば銀ペーストの印刷・焼付けにより設けることができる。1xは電極101,101の突部102,102間にはんだ付けや溶接により接続した磁気インピーダンス効果素子であり、前記した通り零磁歪乃至負磁歪のアモルファスワイヤ、アモルファスリボン、スパッタ膜等を使用できる。103は鉄やフェライト等からなるC型鉄芯、6xはC型鉄芯に巻装した負帰還用巻線、7xは同じくバイアス磁界用巻線であり、磁気インピーダンス効果素子1xとC型鉄芯103とでループ磁気回路を構成するように、C型鉄芯103の両端を基板片100の他面に接着剤等で固定してある。鉄芯材料としては、残留磁束密度の小さい磁性体であればよく、例えば、パーマロイ、フェライト、鉄、アモルファス磁性合金の他、磁性体粉末混合プラスチック等を挙げることができる。
かかる柱上トランスにおいては、落雷時にコアや巻線の変歪と同時に雷電流による発生磁束がコアから漏れて外装が磁化されているから、この磁化に基づく残留磁気を前記接触若しくはスキャニングで測定することにより、柱上トランスの異常を検知できる。
平時の負荷電流によってコアから漏洩する磁束は充分に小さく、残留磁気を検出する支障となることは殆どない。
柱上トランスの近傍の電線等から発生する磁界は、位相の平衡で通常充分に小さく、その磁界の影響をよく排除でき、柱上トランスの異常を充分な精度で検知できる。
前記漏れ磁束は交流(商用周波数)であり、外装の残留磁気は直流であり、検出出力のうち直流分のみを取り出して残留磁気のみを検出してもよい。
実際に落雷に曝された経歴のある柱上トランスの外装の残留磁気は、2.0Oe以上である。これに対して健全柱上トランスの外装外面の磁界は無視できる程度であり、2.0Oe以上を不良と診断できる。
なお、磁気緩和の影響から、雷発生直後の方が正常なトランスと劣化したトランスとの残留磁気の大きさの差が大きく、検査しやすい。また、残留磁気の緩和の程度を調べることにより、落雷した時期の予想も可能である。
本発明により、柱上トランスを診断するには、電力供給を停止して柱上トランスの外装(鋼板製)外面に沿って前記の磁気センサを接触若しくはスキャニングさせていくこともできる。
図4において、1a,1bは一対の磁気インピーダンス効果素子であり、それぞれ負帰還用巻線6a,6b及びバイアス磁界用巻線7a,7bを備えている。
2は磁気インピーダンス効果素子に高周波励磁電流を加えるための高周波電流源回路、3a,3bは各磁気インピーダンス効果素子1a,1bの軸方向に作用する信号磁界Hex(信号波)で前記高周波励磁電流(搬送波)を変調させた被変調波を復調する検波回路、4は両検波出力を差動増幅して検出出力を得るための演算差動増幅器である。60は差動増幅器4の出力を各負帰還用巻線6a,6bに対し負帰還させるための負帰還回路である。5は検出出力端である。
而して、図4の差動式センサにおいては、各磁気インピーダンス効果素子1a、1bが所定の間隔で離隔されており、スキャニング時に各磁気インピーダンス効果素子に作用する残留磁気強度が前記方向性のために異なり、その強度をH,H’とすると、H−H’が検出される。
この差動式によれば、地磁気等の外部磁界や差動各サイドの温度変化等に起因するノイズ等が差動増幅器に同相で入力されるから、ノイズを良好に排除できる。
図5−1に示す磁気インピーダンス効果センサおいて、40は出力補正回路を示し、他の構成は図1に同じである。出力補正回路40は、演算増幅器の出力のオフセットを入力信号としてそのオフセットを打ち消すための補償用信号を発生させこの補償用信号を前記増幅器に前記オフセットを消去するための入力として加えるものである。
演算増幅器の出力のオフセットを所定の範囲、例えば−1v〜+1vの範囲に納めるようにしてもよく、この場合、増幅器出力のオフセットが1vを越えると、電子ボリュームが操作される。
更に、ゲインが1以上、例えば2倍のバッファを制御ICに組み込んで増幅器出力のオフセットが±0.5vを越えると電子ボリュームが操作されるようにして演算増幅器の出力のオフセットを−0.5v〜+0.5vの範囲に納めるようにすることもできる。
40は出力補正回路であり、演算差動増幅器4のオフセットを入力信号としてそのオフセットを打ち消すための補償用信号を発生させこの補償用信号を前記増幅器に前記オフセットを消去するための入力として加えるものである。
この出力補正回路には前記と同様図6−1に示すものを使用でき、演算差動増幅器の出力と入力とを比較してオフセットを検出し、オフセットが正(負)であると、電子ボリュームのスイッチSW−1、SW−2、……(SW+1、SW+2、……)が制御ICで順次にオン・オフされて負(正)の出力信号が演算差動増幅器のオフセット調整端子に送入されて差動増幅器出力のオフセットが減じられ、そのオフセットが0になると、その時のスイッチ状態が保持される。
演算差動増幅器の出力のオフセットを所定の範囲、例えば−1v〜+1vの範囲に納めるようにしてもよく、この場合、差動増幅器出力のオフセットが1vを越えると、電子ボリュームが操作される。
更に、ゲインが1以上、例えば2倍のバッファを制御ICに組み込んで差動増幅器出力のオフセットが±0.5vを越えると電子ボリュームが操作されるようにして演算差動増幅器の出力のオフセットを−0.5v〜+0.5vの範囲に納めるようにすることもできる。
40は演算差動増幅器4の両入力端子間に接続した出力補正回路であり、差動増幅器出力のオフセットを入力信号としてそのオフセットを打ち消すための補償用信号を発生させこの補償用信号を前記増幅器に前記オフセットを消去するための入力として加えるものである。
前記と同様に演算差動増幅器の出力のオフセットを所定の範囲、例えば−1v〜+1vの範囲に納めるようにしてもよく、この場合は、演算差動増幅器の出力のオフセットが−1vまたは+1vを越えると、電子ボリュームが操作される。この場合、ゲインが1以上、例えば2倍のバッファを制御ICに組み込んで±0.5vを越えると電子ボリュームが操作されるようにして演算差動増幅器の出力のオフセットを−0.5v〜+0.5vの範囲に納めるようにすることもできる。
2 高周波電流源回路
3 検波回路
4 増幅回路
5 検出出力端
6 負帰還用巻線
7 バイアス磁界用巻線
Claims (5)
- 柱上トランスの外装の残留磁気を測定し、その測定結果を診断データとすることを特徴とする柱上トランスの診断方法。
- 外装の残留磁気の測定を、外装への磁気センサの接触若しくはスキャニングにより行うことを特徴とする請求項1記載の柱上トランスの診断方法。
- 磁気センサに差動式を使用することを特徴とする請求項2記載の柱上トランスの診断方法。
- 磁気センサに磁気インピーダンス効果センサを使用することを特徴とする請求項2または3記載の柱上トランスの診断方法。
- 磁気センサにMR型センサ、ホール効果型センサ、フラックスゲートセンサまたはSQUIDの何れかを使用することを特徴とする請求項2または3記載の柱上トランスの診断方法。
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