JP7474969B1 - Gsrセンサ - Google Patents
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Abstract
Description
上記アモルファスワイヤ内部の軸構造を模式的に示した斜視図を図4に示す。感磁ワイヤ4は、磁区構造の違いにより表面磁区(円周方向向きのスピン配列)41とコア磁区(磁区方向向きのスピン配列)42の2層に分かれる。表面磁区41では、スピンが一定の円周方向に右回転と左回転に向いた磁区に分かれてバンブー構造となっており、表面磁区41に180磁壁が存在している。一方、表面磁区41の内周側にあるコア磁区42では、多磁区構造を有し、多くの磁壁が存在する。
また、表面磁区41とコア磁区42の界面では、90度磁壁が存在する。このように従来の磁性ワイヤ4は、表面磁区41ではスピンが一定の円周方向を向いた左回転と右回転のスピン構造(配列)をもち、両者の間には180度磁壁を有する。コア磁区42では多磁区構造を有し、表面磁区とコア磁区との間には90度磁壁を有し、全体として磁気的複合構造となっていた。
また、酸素などの不純物を極小化すると、局所的な磁壁移動のダンピング現象を無くして低ノイズ化を実現し、センサ感度の向上が図れることを見出した。
さらに、ワイヤ径を2μm以下にした場合、ワイヤ内部の磁区構造が消滅し、特許文献2に記載されているボルテックス磁区構造が発生する。ボルテックス磁区構造では、パルス電流に起因した円周方向のスピン回転は少し抑制されセンサ感度は低下するものの、磁壁の移動に伴う磁気ノイズがほぼ消滅するために、全体としては磁界検出力が大幅に向上することを見出した。
<磁性ワイヤ>
(1)本発明の磁性ワイヤは、[at.%]のFe/Co比を0.065以下とした負磁歪で、ゼロ磁歪および弱負磁歪に比べてより厚い表面磁区とコア磁区からなる2層磁区構造を有する。またワイヤ直径が2μm以下の場合には、ボルテックススピン構造を有する。
なお、「ボルテックススピン構造」とは、ワイヤ表層部で各スピンが一定の円周方向に連続的に配列しているとともに、その表層部の内周側である内周部では各スピンがアモルファスワイヤの中心に近づくに従って徐々に円周方向から軸方向に回転していき、そのワイヤ中心部では軸方向に向いている連続的なスピン配列となる構造をいう。特許文献2に詳しく記載されている。ここでいう「スピン」とは、1原子当たりの磁気モーメントをいう。
先ず表層部11について説明する。断面Aの表層部11では、スピンが一定の円周方向へ向いている。それゆえ、スピンは全体として連続的に配列し円周方向に閉じて(循環または還流して)おり、表層部11には磁壁が全く存在しない。そして表層部11を構成する断面BのX1-X2-X3-Y1領域(図1では、代表例としてX1-X5線で示す。)に存在する各スピンは、表層部11の最表面と同じスピン配列となっている。
このように本発明に係る感磁ワイヤ1の内側部12には磁壁が存在しない。また、表層部11S内側部12の境界面でも、スピンは連続的に配列しており磁壁が存在しない。このようなスピン配列全体で本発明ではボルテックススピン構造と呼んでいる。なお、本明細書でいう「スピン配列」は、種に、各スピンの磁気モーメントの分布状況を意味するが、適宜単に「スピン配列」を「スピン」とも呼ぶ。
すべてのスピンは、印可された磁場である印可磁場の大きさに応じて、その印可磁場の方向に傾く。磁性ワイヤにパルス電流が流れると、そのパルス電流により、磁性ワイヤの円周方向に磁場が形成され、磁性ワイヤ中のスピンは円周方向に向く。この磁性ワイヤのスピンの回転による変化を、GSRセンサは、ピックアップコイルで検出する。
(1)本発明は、上述した負磁歪のCo-Fe-Si-B系合金からなる直径10μm以下の磁性ワイヤを磁気検出体とする素子でもある。
本発明のGSR素子は、従来の公知であるGSR素子に対して、その磁気検出体である磁性ワイヤのみを本発明の上述した磁性ワイヤで置き換えたものであれば足りる。GSR素子の構成自体は、特許文献1に記載されているように、基板と、上述した本発明の磁性ワイヤと、該磁性ワイヤを内包する絶縁体と、該磁性ワイヤの周囲に巻回した検出コイルと、該磁性ワイヤおよび該検出コイルから延設された電極端子とが含まれる。
(1)本発明は、上記の磁性ワイヤやGSR素子のみならず、それらを用いたGSRセンサとしても把握される。本発明のGSRセンサは、従来のGSRセンサに対して、その磁気検出体である磁性ワイヤのみを本発明の上述した磁性ワイヤで置き換えたものであれば足りる。すなわち、本発明のGSRセンサは、本発明の負磁歪の磁性ワイヤと、該磁性ワイヤの周囲に巻回した検出コイルと、該磁性ワイヤにパルス電流を通電するパルス発振回路と、該検出コイルの検出電圧から外部磁界の強度に対応する信号に変換する信号処理回路とからなる。
(2)本発明のGSRセンサは、前出の負磁歪の磁性ワイヤを使用しているため、磁壁の移動が抑制されており、磁気ノイズが小さくなるという特性を有し、かつパルス電流の換算パルス周波数と表面磁区層の厚みを厚くして高いセンサ感度を維持することができるものである。GSRセンサの構成自体も、前述した公報等で公知であり、それらの公知の構成やその他の公知の構成を本発明のGSRセンサに利用可能である。
<構成>
(1)合金組成
感磁ワイヤは、[at.%]のFe/Co比を0.065以下とした負磁歪となるCo-Fe-Si-B系の軟磁性合金で、直径は10μm以下である。また酸素含有量は10ppm以下とすることが必要である。
本ワイヤは表面磁区とコア磁区との2層の磁区構造を有し、Fe/Co比が小さくなるほど表面磁区の厚みが大きくなる。その比が0.065を超えて0.07程度になるとゼロ磁歪となって磁壁が移動しやすくなり、磁気ノイズが増加して好ましくない。
また、CoとFeとの含有量の合計は75%から80%程度が好ましい。75%未満の場合、飽和磁化の強さが小さくなり、センサの感度が低下する。80%を超えるとアモルファス形成元素であるSiやBの含有量が少なくなり、アモルファスワイヤの製造が困難になる。
さらに、酸素含有量は10ppm以下である。10ppmを超えて増加すると局所的な磁壁移動が発生しやすくなり、磁気ノイズの原因となる。
感磁ワイヤの直径は、10μm以下で直径が細くなるほどワイヤ内部の磁区構造が減少する。また、直径が2μm以下の場合ボルテックス磁区構造が発生する。
この供試材であるアモルファスワイヤは、40~76kg/mm2の張力を付与して基板に整列させた後、40kg/mm2の張力を付与して250~350℃で張力熱処理することが好ましい。この張力熱処理によって、表面磁区の厚みを増加させて磁区ノイズを抑制すると同時にセンサ感度を増加させることができる。
本発明に係る第1実施形態のGSR素子2の構成について、図2の概念図を用いて説明する。
先ず、磁性ワイヤ21の周囲に絶縁物(図示せず)を介して配置された検出コイル22が基板20上に配設される。磁性ワイヤ21の両端には、パルス電流を印可するための電極211に接続されている。検出コイル22は、外部磁場に応じて変化する電圧を検出するための電極221に接続されている。磁性ワイヤ1の長さは0.2~2mmとし、コイルピッチを5μm以下とし、検出コイル22の巻き数は30~2,000回とした。
本発明に係るGSRセンサの電子回路について、図3を用いて説明する。GSRセンサ3はGSR素子2、パルス発振回路31、信号処理回路32からなる。
パルス発振回路31により発生した0.5~4GHz相当の換算パルス周波数をもち、50~100mAのパルス電流をGSR素子2の磁性ワイヤ21へ供給する。すると、外部磁場とパルス電流によるワイヤ円周方向の磁場との作用によって、磁性ワイヤ21中のスピンの回転に基づく電圧が検出コイル22で発生する。なお、換算パルス周波数は、先ずパルス電流波形のパルスの立ち上がり、もしくは、立下りの時間Δtを求め、次にそのΔtが、波の2分の1周期に相当するとして求めた周期から算出したものである。
ここに示した構成は一例であり、その他公知のGSRセンサの電子回路を採用してもよい。
GSR特性は、GSRセンサ6を±240A/m、10Hzの磁場中に設置し、GSR素子2の磁性ワイヤ1に換算パルス周波数2GHzの80mAのパルス電流を入力し、検出コイル22に発生した電圧信号を上記の信号処理回路32で信号処理して、検出コイル22から出力される各磁場の電圧を測定して、磁気ノイズとセンサ感度を求めて評価した。
パルス電流の立ち上がり時間、立ち下り時間は共に0.25nsであった。なお、ここでパルスの立ち下り部で検出したが、立ち上がり部でもよく、両方でもよい。
磁気ノイズ特性は、従来のゼロ磁歪ワイヤに比べて、同一コイル巻き数の素子の場合、磁気ノイズは1/10程度減少し、センサ感度は同等であった。
磁性ワイヤの直径を2μm以下としたもので、他の構成は第1実施形態と同一である。
磁性ワイヤの直径を2μm以下とすると、磁区構造はボルテックス構造となり、磁壁が消滅する。その結果、磁壁移動に伴う磁気ノイズが激減する。第1実施形態と比較して、磁気ノイズは同じコイル巻き数の場合、センサ感度は1/2程度に小さくなるが、磁気ノイズは1/2以下となる。
また、励磁パルス電流の強さは、25~50mA程度となり、第1実施形態に比べて1/2程度と小さくなる。電流が小さくなる理由は、異方性磁界は2倍程度大きくなるが、円周方向磁界はワイヤ径に反比例するため4倍程度で大きくなるためである。
実施例1を磁性ワイヤ、GSR素子、GSRセンサの順に説明する。
(1)磁性ワイヤ
改良テイラー法により作製した(Co96Fe4)76Si12B12 [at.%]の合金組成で、0.041のFe/Co比を有し、酸素含有量を5ppmとし、直径10μmのアモルファスワイヤを、本発明の実施例に係る磁性ワイヤとした。このアモルファスワイヤを76kg/mm2の張力を負荷して基板に整列させた後、50kg/mm2の張力を負荷して300℃で張力熱処理を行なった。
なお、比較例として、(Co93.7Fe6.3)76Si12B12 [at.%]の合金組成で、0.067のFe/Co比を有し、酸素含有量を30ppmとした直径10μmで、一定の円周方向のスピン構造を表面磁区に有し、内部にコア磁区を有するアモルファスワイヤを準備した。
本発明に係る実施例1であるGSR素子2の構成について、図2の概念図を用いて説明する。
先ず、磁性ワイヤ1の周囲には絶縁物(図示せず)を介して配置された検出コイル3が基板10上に配設される。磁性ワイヤ1の両端には、パルス電流を印可するための電極51に接続されている。検出コイル3は、外部磁場に応じて変化する電圧を検出するための電極52に接続されている。磁性ワイヤの長さは2mmとし、コイルピッチを3μmとして、検出コイル30の巻き数は560ターンとした。
本発明に係る実施例であるGSRセンサ3の電子回路を、図3を用いて説明する。GSRセンサ3は、GSR素子2、パルス発振回路31、信号処理回路32からなる。センサの動作は以下のとおりである。
パルス発振回路31により発生した2GHz相当の換算パルス周波数をもつパルス電流をGSR素子2中の磁性ワイヤ21に供給する。すると、外部磁場とパルス電流によるワイヤ円周方向の磁場との作用によって、磁性ワイヤ1中のスピンの回転に基づく電圧が検出コイル22で発生する。
次に、パルス電流が立ち上がった後、サンプルタイミング調整回路321によって、所定のタイミングでアナログスイッチ322が短時間のスイッチング(オン-オフ)をする。これにより、アナログスイッチ322は、検出コイルに発生した外部磁場に対応した電圧をバッファー回路320を介し、サンプリングして増幅器323に伝える。パルス電流を遮断するとき(立ち下がりのとき)も同様である。
本実施例に関するGSR特性は、GSRセンサ6を±240A/m、10Hzの磁場中に設置し、GSR素子2の磁性ワイヤ1に換算パルス周波数2GHzの80mAのパルス電流を入力し、検出コイル22に発生した電圧信号を上記の信号処理回路32で信号処理して、検出コイル3~出力される各磁場の電圧を測定して、磁気ノイズとセンサ感度を求めて評価した。
パルス電流の立ち上がり時間、立ち下り時間は共に0.25nsであった。なお、ここでパルスの立ち下り部で検出したが、立ち上がり部でもよく、両方でもよい。
実施例2は、実施例1において磁性ワイヤを(Co98Fe2)76Si12B12 [at.%]の合金組成で、0.02のFe/Co比を有し、酸素含有量を5ppmとした直径10μmのアモルファスワイヤに変更したものである。
その結果、磁気ノイズ特性は0.08nTで1/10程度に減少し、ンサ感度は380mV/Gで同等であった。
実施例3は、実施例1において、磁性ワイヤの直径を1μmのボルテックス磁区構造を有するアモルファスワイヤに変更したものである。
その結果、磁気ノイズ特性は0.05nTで1/20程度に減少し、センサ感度は600mV/Gと向上した。
11:表層部
12;内側部
2;GSR素子
20;基板
21;磁性ワイヤ
211;電極
22;検出コイル
221;電極
3;GSRセンサ
31;パルス発振回路
32;信号処理回路
320;バッファー回路
321;サンプルタイミング調整回路
322;アナログスイッチ
323;増幅器
4;従来の磁性ワイヤ
41;表面磁区
42;コア磁区
Claims (3)
- 負磁歪のCo-Si系アモルファスワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)と前記磁性ワイヤにコイルを巻きつけた磁界検出素子と前記磁界検出素子が生み出す磁界信号に対応した電圧を処理する信号処理回路からなるGSRセンサにおいて、
前記磁性ワイヤは、[at.%]のFe/Co比を0.065以下としたCo-Fe-B-Si系の負磁歪軟磁性合金で10ppm以下の酸素含有量からなり、
前記磁性ワイヤは、直径は10μm以下にて、磁区構造は表面磁区とコア磁区の2層構造からなることを特徴するGSRセンサ。 - 請求項1において、
前記磁性ワイヤの直径は、2μm以下にて、
前記磁区構造は、表層部で各スピンが一定の円周方向に連続的に配列しているとともに、その表層部の内周側である内側部ではスピンが前記磁性ワイヤの中心に近づくに従って徐々に円周方向から軸方向に回転していき前記磁性ワイヤ中心では軸方向に向く、連続的なスピン配列となるボルテックススピン構造を有していることを特徴とするGSRセンサ。 - 請求項1または2において、
パルス電流は、0.5GHz~4GHzの換算パルス周波数を有し、前記磁性ワイヤの異方性磁界の1.5倍以上の表面円周磁界を生み出すパルス電流の強さを有することを特徴とするGSRセンサ。
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