JP4735263B2 - 光学活性2−アルキルシステインの製造方法、並びにその誘導体及び製造方法 - Google Patents

光学活性2−アルキルシステインの製造方法、並びにその誘導体及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、下記一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩から、下記一般式(2)及び(7)で示される光学活性2−アルキルシステイン又はその塩を製造する方法に関する。さらに詳しくは、D体及びL体の混合物からなる下記一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩に、2−アルキル−L−システインアミド又はその塩のアミド結合を立体選択的に加水分解する活性を有する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させた後、得られる2−アルキル−L−システインと2−アルキル−D−システインアミドを、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させ、一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩と、一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩に誘導することによって、一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩、或いは一般式(7)で示される2−アルキル−D−システイン又はその塩を効率的に分離取得することを特徴とする、光学活性2−アルキルシステイン又はその塩の製造方法に関する。
また、本発明は、下記一般式(8)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、下記一般式(5)及び(9)で示される光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、並びにそれらを下記一般式(10)で示される2−アルキルシステイン、又は下記一般式(2)又は(7)で示される光学活性2−アルキルシステインから製造する方法に関する。
光学活性2−アルキルシステイン又はこれらの塩、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、及び光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、各種工業薬品、農薬、及び医薬品の製造中間体として重要な物質である。
従来、光学活性2−アルキルシステインの製造方法として、光学活性システインメチルエステルを出発原料として、ピバルアルデヒドで環化、ホルムアルデヒドで保護し、リチウム試薬とヨウ化メチルでメチル化した後、塩酸で開環、脱保護して光学活性2−メチルシステインを塩酸塩として得る方法が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。また、得られた光学活性2−メチルシステインは、アルコール中にてアセチルクロライドを添加することでエステル化できる。しかし、これらの方法は出発原料が光学活性体であるため高価であり、しかも工程数が多く煩雑であり、高価な試薬を必要とするため、工業的に優れた方法とは言いがたい。
また、光学活性2−アルキルシステインの製造方法として、L−システインエチルエステルを出発原料として、ニトリル化合物で環化、ヨウ化メチルなどのメチル化剤を用いてメチル化を行って4−アルキルチアゾリン−4−カルボン酸エステルとした後、エステルの塩基性加水分解を経て4−メチルチアゾリン−4−カルボン酸のラセミ体としてからフェネチルアミン等の塩基性光学分割剤による光学分割をするか、若しくは4−アルキルチアゾリン−4−カルボン酸エステルを微生物による立体選択的加水分解により光学分割を行った後、加水分解を施すことにより光学活性2−メチルシステインを得る方法が報告されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。しかし、光学活性体を原料とするにもかかわらず、反応途中の中間体がラセミ体となり、再び光学分割を行う必要があるため、工程が煩雑となり工業的には適しているとは言いがたい。
ところで、下記一般式(5)、(8)及び(9)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、各種工業薬品、農薬、及び医薬品の製造原料として広範な活用が期待される化合物であり、産業上、非常に有用な物質である。また、これらの4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、容易にS−C−N部位で開環反応を行うことが可能で、2−アルキルシステインに誘導できる。2−アルキルシステインも各種工業薬品、農薬、及び医薬品の製造原料として有用であるが、メルカプト基やアミノ基といった反応性に富む複数の官能基を有するため、通常、これを基質として目的とする誘導体のみを得る反応を行うことは困難である。これに対して、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩を用いる場合は、目的物質を得るための誘導化反応を行った後に開環反応を行い、希望する2−アルキルシステイン誘導体へと導くことが可能であることから、2−アルキルシステイン等価体としても重要な物質である。
このように4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、有機合成用の反応原料として非常に有用な化合物であるにも拘わらず、その製造方法は知られていない。これに対して、従来より知られているチアゾリジン−4−カルボン酸誘導体としては、5,5−ジメチルチアゾリジン−4−カルボン酸があるが(例えば、非特許文献2参照)、このチアゾリジン環は強固であり開環してペニシラミン誘導体に戻すことが困難である。また、チアゾリジン環上の窒素をホルミ基で保護した4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸のエステル等が知られているが(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)、脱ホルミル化と同時にチアゾリジン環も開環してしまうため、この方法によって下記一般式(5)、(8)及び(9)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又その塩を得ることはできない。
米国特許第6,403,830号明細書 特開2003−201284号公報 欧州特許第1302467号明細書 Gerald Pattenden、Stephen M.Thom and Martin F. Jones、Tetrahedron,Vol49,No10,pp2131−2138,1993 Justus Liebigs Ann.Chem.(1966),697,140−157
本発明の目的は、従来技術における上記のような課題を解決し、各種工業薬品、農薬、及び医薬品の製造中間体として重要な光学活性2−アルキルシステイン又はその塩を高品質かつ安価に製造する方法を提供するとともに、同様に重要な4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、並びにそれらの光学活性体を高品質かつ安価に製造し提供することにある。
本発明者らは、高品質かつ安価に光学活性2−アルキルシステインを製造する方法について鋭意検討を行った結果、D体及びL体の混合物からなる下記一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩に、2−アルキル−L−システインアミド又はその塩のアミド結合を立体選択的に加水分解する活性を有する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させて、2−アルキル−L−システイン又はその塩を選択的に生成させた後、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、それぞれより一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩と、一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を誘導し、それらの混合物より一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩を分離した後、これを加水分解することによって開環し、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−L−システイン又はその塩を取得することを特徴とする、2−アルキルシステインアミド又はその塩から光学活性2−アルキル−L−システイン又はその塩を製造する方法が提供される。
Figure 0004735263
(一般式(1)、(2)、(3)、(5)及び(6)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。また、一般式(4)、(5)及び(6)中のR及びRは各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R及びRが同時に水素である場合を除く。)
好ましい実施形態によれば、前記Rはメチル基である。別の好ましい実施形態によれば、前記R及びRは共にメチル基である。
本発明の他の局面によれば、一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩に、2−アルキル−L−システインアミド又はその塩のアミド結合を立体選択的に加水分解する活性を有する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させて、一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩を生成させ、生成した2−アルキル−L−システイン又はその塩と未反応の一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩を、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、それぞれより一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩と、一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を誘導し、それらの混合物より一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を分離した後、これを加水分解することによって開環および脱アミド化し、一般式(7)で示される光学活性2−アルキル−D−システイン又はその塩を取得することを特徴とする、2−アルキルシステインアミド又はその塩から光学活性2−アルキル−D−システイン又はその塩を製造する方法が提供される。
Figure 0004735263
(一般式(1)、(2)、(3)、(5)、(6)及び(7)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。一般式(4)、(5)及び(6)中のR及びRは各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R及びRが同時に水素である場合を除く。)
好ましい実施形態によれば、前記Rはメチル基である。他の好ましい実施形態によれば、前記R及びRは共にメチル基である。
上記光学活性2−アルキルシステインの製造方法は、原料的に手当し易いD体とL体の混合物である2−アルキルシステインアミドから、各種工業薬品、農薬、医薬品等の製造中間体として重要な光学活性2−アルキルシステインを高品質で効率良く製造できる点で好都合である。また、得られた光学活性2−アルキルシステインを更にエステル化することにより、高品質かつ効率よく、各種工業薬品、農薬、医薬品等の製造中間体として重要な光学活性2−アルキルシステインエステルを製造できる点でも好都合である。
上記光学活性2−アルキルシステインの製造方法によれば、一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミドの生化学的不斉加水分解反応で生成した一般式(2)で示される2−アルキル−L−システインと未反応の一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミドを、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、それぞれ一般式(5)で示される4−アルキル−チアゾリジン−4−カルボン酸及び一般式(6)で示される4−アルキル−チアゾリジン−4−カルボン酸アミドに誘導することとしたので、両物質を簡単な固液分離手段で効率的に分離することが可能となり、それによって得られた一般式(5)で示される4−アルキル−チアゾリジン−4−カルボン酸又は一般式(6)で示される4−アルキル−チアゾリジン−4−カルボン酸アミドを加水分解することによって、それぞれ、光学活性2−アルキル−L−システイン又は光学活性2−アルキル−D−システインとなすことができる。この方法の場合、一般式(5)で示される化合物と一般式(6)で示される化合物との間には、一般式(1)で示される化合物と一般式(2)で示される化合物との間よりも、水及び各種有機溶媒に対する溶解度、並びに分配係数等の物理化学的性状に大きな差が生じるため、効率的に高い純度で分離を行うことができる。
上記一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩、上記一般式(7)で示される2−アルキル−D−システイン又はその塩、及び、これらの混合物である下記一般式(10)で示される2−アルキルシステイン又はその塩は、下記一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させることにより4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、或いはそれらの光学活性体に誘導することができる。得られる4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、或いはその光学活性体は新規化合物である。
Figure 0004735263
(一般式(2)、(5)、(7)、(8)、(9)及び(10)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。一般式(4)、(5)、(8)及び(9)中のR及びRは各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R及びRが同時に水素である場合を除く。)
好ましい実施形態によれば、上記一般式(2)、(5)、(7)、(8)、(9)及び(10)において、前記Rはメチル基である。他の好ましい実施形態によれば、上記一般式(4)、(5)、(8)及び(9)において、前記R及びRは共にメチル基である。
かくして、本発明によれば、下記一般式(5)、(8)又は(9)で示される4−アキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、或いはそれらの光学活性体を製造する方法が提供される。
Figure 0004735263
(一般式(8)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、R及びRは各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R及びRが同時に水素である場合を除く。)
Figure 0004735263
(一般式(5)、及び(9)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、R及びRは各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R及びRが同時に水素である場合を除く。)
好ましい実施形態によれば、上記一般式(5)、(8)及び(9)において、前記Rはメチル基である。他の好ましい実施形態によれば、上記一般式(5)、(8)及び(9)において、前記R及びRは共にメチル基である。
また、本発明によれば、各種工業薬品、農薬、医薬品等の製造原料として広範な活用が期待され、産業上、非常に有用な化合物である上記一般式(8)、(5)及び(9)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩が提供される。
以下、本発明の製造方法のスキームは、図1及び図2に概略的に示されており、以下、これらの図面を参照して、本発明について詳細に説明する。
(A−1)一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩
本発明において原料として用いられる一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩において、式中のRは、炭素数1〜4の低級アルキル基であればよく、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が好適であり、メチル基が特に好適である。なお、用いる2−アルキルシステインアミドは、遊離物の他、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の塩として用いることも可能である。
また、2−アルキルシステインアミドの製法等に特に制限はなく、例えば、下記式(11)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩から得ることができる。
Figure 0004735263
4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩は、論文Justus Liebigs Ann.Chem.(1966),697,140−157に記載の方法等を用いることによって、以下のようにして製造することができる。
1)下記の式(12)で示されるハロゲン化メチルアルキルケトン(Xはハロゲン化メチル基を表す)と式(13)で示されるカルボニル化合物又はそのアセタール若しくはケタールを水硫化ナトリウム及びアンモニアと反応させ、式(14)で示すチアゾリン化合物となす。
2)得られた式(14)で示されるチアゾリンにHCNを付加して式(15)で示されるニトリルとなす。
3)式(15)で示されるニトリルを、酸触媒を用いて加水分解して、一般式(11)の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩が得られる(式(11')としてその塩を特に示した)。
Figure 0004735263
一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩は、一般式(11)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を部分的に加水分解することにより製造することができる。一般式(11)の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を、純水又は当量以上の水を含む極性有機溶媒に溶かして加熱すると加水分解的開環反応が進行する。この加水分解反応は酸触媒で加速させることができるが、過剰の酸が存在した場合、一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミドが更に加水分解された2−アルキルシステインが大量に副生してしまうことから好ましくない。そのため用いられる酸触媒の量は、好ましくは一般式(11)のチアゾリジンカルボン酸アミドの0.5から1.3倍当量、更に好ましくは0.8から1.1倍当量、最も好適には1倍当量である。また式(11’)で示されるチアゾリジンカルボン酸アミドと酸からなる中性塩を単離精製し、純水、又は当量以上の水を含む極性有機溶媒中で加熱還流することでも好適に目的とする一般式(1)の2−アルキルシステインアミドを得ることができる。
なお、上記式(12)、(13)、(14)、(15)、(11)及び(11’)におけるR、R及びRは、上記一般式(1)及び(4)におけるものと同様である。
触媒に用いられる酸としては、一般的に用いられる酸であれば特に限定はされず、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸等の有機酸等を用いることができるが、反応速度や精製時の操作の便の良さから、塩酸、硫酸等の無機酸が好適に用いられる。この際、加水分解することによって式(13)に示すカルボニル化合物が脱離してくるが、留去等の操作を行うことによってこのカルボニル化合物を系外に抜き出しながら反応を行なうとさらに効率よく反応を進行させることができる。反応は定量的に進み、脱離した式(13)に示すカルボニル化合物と反応溶媒を除去するだけで、目的とする一般式(1)に示す2−アルキルシステインアミド又はその塩が高収率かつ高純度で得られる。
(A−2)一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩の立体選択加水分解
本発明において、D体及びL体の混合物からなる一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩は、2−アルキル−L−システインアミド又はその塩のアミド結合を生化学的不斉加水分解する活性を有する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させることにより、2−アルキル−L−システイン又はその塩を選択的に生成させ、一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩と、一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩との混合物とされる。
ここで用いる微生物は、2−アルキル−L−システインアミド又はその塩のアミド結合を立体選択的に加水分解して2−アルキル−L−システイン又はその塩となす活性を有する微生物であればよく、このような微生物としては、例えば、キサントバクター属、プロタミノバクター属、又はミコプラナ属等に属する微生物、具体的にはキサントバクター フラバス(Xanthobacter flavus)NCIB 10071、プロタミノバクター アルボフラバス(Protaminobacter alboflavus)ATCC8458、ミコプラナ ラモサ(Mycoplana ramose)NCIB9440、ミコプラナ ディモルファ(Mycoplana dimorpha)ATCC4279が好ましい例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら微生物から人工的変異手段によって誘導される変異株、又は細胞融合若しくは遺伝子組換え法等の遺伝学的手法により誘導される組換え株等の何れの株であっても上記能力を有するものであれば、本発明に使用できる。
これらの微生物の培養は、通常資化し得る炭素源、窒素源、各微生物に必須の無機塩、栄養素等を含有させた培地を用いて行われる。培地のpHは4〜10が、培養温度は20〜50℃が取り得る一般的範囲であるが、使用する微生物の成育特性に合わせて培養条件を適宜決めればよい。培養は1日〜1週間程度好気的に行われる。このようにして培養した微生物は、生菌体又は該生菌体処理物、例えば培養液、分離菌体、菌体破砕物、さらには精製した酵素として反応に使用される。また、常法に従って菌体又は酵素を固定化して使用することもできる。
2−アルキルシステインアミド又はその塩の生化学的不斉加水分解反応の条件は以下の通りである。基質である2−アルキルシステインアミド又はその塩の濃度は、0.1〜40wt%の範囲が好ましく、0.5〜20wt%の範囲がより好ましい。基質濃度が0.1wt%を下回る場合は反応液の容量が単に増えるだけで、生産性の面から不利となる。一方、基質濃度が40wt%を超える場合は、基質阻害が生じ、菌体又は菌体処理物当たりの生産性の面から不利となるうえ、場合によっては反応生成物である2−アルキル−L−システイン又はその塩が反応途中で析出するようになるため、反応後に行う菌体又は菌体処理物を遠心分離や濾過分離する際のロスの原因ともなり不利となる。
基質である2−アルキルシステインアミド又はその塩に対する微生物の菌体又は菌体処理物の使用量は、原料として用いる微生物菌体の重量が乾燥菌体に直して重量比で0.0001〜3の範囲になるように添加することが好ましく、0.001〜1の範囲になるようにすることがより好ましい。重量比が0.0001を下回る場合には反応速度が遅いため処理に長時間を要することになり、3を超える場合には反応時間は短くなるものの、微生物菌体の利用の面から効率的とは言えず、しかも反応後の菌体又は菌体処理物の分離に労力を要することとなり工業的に不利となる。なお、原料である2−アルキルシステインアミドの反応液中における濃度が高い場合には、前記の菌体又は菌体処理物の使用量比が、好ましい範囲の上限である3以下であって、反応が好適に実施できる比率を適宜選択すればよい。
反応温度は10〜70℃の範囲が好ましく、20〜40℃の範囲がより好ましい。反応温度が10℃を下回る場合は反応速度が遅いため処理時間が長くなり不利となる。一方、反応温度が70℃を超える場合は、菌体又は菌体処理物の酵素触媒活性が失活により低下するとともに、2−アルキル−D−システインアミドの非酵素的分解も伴うようになり、反応収率及び選択性の面で不利となる。また、工程間で必要となる反応溶液の昇温・冷却に多くのエネルギーを要することとなりコスト的に不利となる。
反応溶液はpH4〜13の水溶液が好ましく、pH5〜10の範囲がより好ましい。よりさらには、pH7〜9の中性から比較的穏和な塩基性条件が特に好ましい。pH4を下回る場合は、菌体又は菌体処理物の触媒活性が低下し、pH13を上回る場合も同様に触媒活性が低下する。そのうえさらに、反応液中に含まれる2−アルキル−D−システインアミド又はその塩、2−アルキル−L−システインアミド又はその塩、生成物である2−アルキル−L−システイン又はその塩同士が、ジスルフィド結合を形成し二量化するため好ましくない。また、2−アルキル−D−システインアミド又はその塩の非酵素的な加水分解反応も起こり易くなりこれも好ましくない。反応液のpHを調整するに当たっては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基類、及びアンモニア等を用いればよい。また、その他の物質を溶解してなる緩衝液を用いてもよい。
反応を行う際、さらにMg、Cu、Zn、Fe、Mn、Ni、Co等の金属イオンを酵素触媒の活性化剤として添加してもよい。添加する量は使用する培養菌体の菌株の種類、添加する金属イオンの種類によって異なり一概には言えないが、好ましくは1〜50ppm、より好ましくは5〜20ppmとなる濃度の金属イオンを添加することにより、不斉加水分解速度を向上させることができる。例えば、2価のMnイオンを5〜20ppm加えた場合、反応速度は、無添加の場合に比較して2〜5倍と大幅に向上する。なお、生化学的不斉加水分解反応に使用した菌体又は菌体処理物は、酵素反応に使用した後も、遠心分離若しくは濾過操作などにより回収し、不斉加水分解反応用の酵素触媒として再利用することができる。
原料の2−アルキルシステインアミド又はその塩、反応後の2−アルキル−L−システイン又はその塩や2−アルキル−D−システインアミド又はその塩は構造内にメルカプト基を有することから酸化を受けやすく、酸素存在下で放置すると2量化したジスルフィド(2,2’−ジアルキルシスチン)となる。これを防止するため、菌体又は菌体処理物を用いた不斉加水分解反応から濃縮・精製に至る一連の製造工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なうのが好ましいが、系内に2−メルカプトエタノール等の還元性物質を共存させる方法も可能である。また、反応に用いる全ての溶媒を、反応実施前に脱気すると、副生成物を生成せず好適に反応を進行させることができるようになる。
反応終了液から、例えば遠心分離又は濾過膜などの通常の固液分離手段により微生物菌体を除く。さらに限外濾過や活性炭等の吸着剤を用いて残された微生物由来の有機物を除去するとより好適である。次いで、この反応液を濃縮して水を留去し、濃縮物を次のチアゾリジン環化反応の原料に供する。
(A−3)一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩と一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩との混合物の環化反応
本発明において、一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩の生化学的不斉加水分解反応で生成した一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩と未反応の一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩は、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン、又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、それぞれ一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸及び一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドに誘導される。
ここで使用するアルデヒド又はケトンを表す一般式(4)のR1及びR2は、各々独立に、水素(但し、両者が同時に水素の場合を除く)、炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造であればよく特に制限はない。炭素数1〜4の低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が好適であり、脂環構造としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の脂環が好適であり、特にシクロペンタン環、シクロヘキサン環が好適である。このうち、R1及びR2が共にメチル基の場合が特に好適である。このような化合物として、具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、5−ノナノン、アセトアルデヒド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、特にアセトン及びシクロペンタノンが好適に使用され、アセトンが最も好適に使用される。
アルデヒド又はケトンのアセタール又はケタールとしては、下記一般式(4’)で示されるものが挙げられる。
Figure 0004735263
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素、炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R1及びR2が共に水素の場合を除く。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜3の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。)
一般式(4’)中のR1及びR2を示す炭素数1〜4の低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が好適であり、脂環構造としてはシクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等が好適であり、特にシクロペンタン環、シクロヘキサン環が好適である。これらのうち、R1及びR2が共にメチル基の場合が特に好適である。
一般式(4’)中のR及びRを示す炭素数1〜3の低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が挙げられ、脂環構造としてはエチレンアセタール、プロピレンアセタール環等が挙げられる。このような化合物としては例えば、アセトンジメチルアセタール、アセトンエチレンアセタール、シクロヘキサンノンエチレンアセタール等が挙げられ、特にアセトンジメチルアセタールが好適に使用される。
環化反応は有機溶媒中で行うことが好ましく、かかる有機溶媒としては、それ自体が反応の基質でもある一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン、又はそれらのアセタール若しくはケタールが反応系の分子種を増やさずにすむ点で好ましい。このアルデヒド若しくはケトン、又はそれらのアセタール若しくはケタールの添加量は、チアゾリジン環化する2−アルキル−L―システインと2−アルキル−D−システインアミドの合計量に対して同等モル以上あればよく、特に上限はないが、多量なほど反応は速やかに進むので、経済性の観点から均一溶液となる濃度を上限として用いるのが好ましい。また、それだけでは反応基質や生成物の溶解度が不足し反応系が均一化できない場合には、少ない添加量で均一性が保たれ反応に対する妨害作用を有さない溶媒を適宜選択して用いればよい。そのような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類が好適に用いられる。
また、環化反応は、反応に伴う生成水を除去しながら行なうと、より好適に反応を進行させることができる。脱水法としては特に限定されず、ディーンシュターク分液装置やモレキュラーシーブの様な脱水剤を用いても良く、脱水剤を用いる場合には生成水量の1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上の脱水能力を持つように用いるのが望ましい。反応温度は特に限定されないが、より高い温度で実施した方が反応が速く進行することから、通常は還流温度条件で行なうのが好ましい。
また、この環化反応は無触媒でも進行するが、少量の塩基を添加した方がより速やかに進行する。用いる塩基としては特に限定はされないが、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性物質の他、炭酸ナトリウム等の塩基性を示す塩類が使用可能である。その量が過剰であった場合、後処理の中和に必要な酸の量が増えるため好ましくなく、適当な量は原料の2−アルキルシステインアミドの5倍当量以下、好ましくは1〜3倍当量である。
(A−4)環化反応後の一般式(5)で示される光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩の分離
環化反応終了後の反応液から溶媒と揮発分を除去した後、得られた濃縮物からアルコール類などの適当な有機溶媒を用いて可溶物の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド及びその塩を抽出し、不溶分として残った4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩を濾別する。濾別した4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸は適当な有機溶媒で再結晶することにより不純物となるタンパク質、核酸及び4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド及びその塩等を取り除くことができる。この際に用いられる有機溶媒としては、熱濾過処理を施すことにより、無機塩類が濾別除去され、結晶熟成時には生化学的不斉加水分解時に混入してくるタンパク質や核酸等の溶解度が高く、且つ目的とする一般式(5)に示す4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩が溶解しにくい溶媒を適宜選択すればよい。例えばエタノールやブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフランやジオキサン等のエーテル類が好適に用いられる。
(A−5)環化反応後の一般式(6)で示される光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の分離
環化反応終了後の反応液から溶媒と揮発分を除去した後、得られた濃縮物からアルコール類などの適当な有機溶媒を用いて可溶物の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を抽出し、不溶物として残った4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸及びその塩を濾別する。抽出液として得られた4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドは、エバポレータなどにより濃縮乾固した後、適当な有機溶媒で洗浄することにより不純物となるタンパク質、核酸、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸及びその塩等を取り除くことができる。この際に用いられる有機溶媒は特に限定されないが、生化学的不斉加水分解時に混入してくるタンパク質や核酸等を溶解し、且つ目的とする一般式(6)に示す4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩が溶解しにくい溶媒を適宜選択されればよい。例えば、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類が好適に用いられる。
別法として、環化反応終了後の反応液から溶媒と揮発分を除去した後、得られた濃縮物を水に分散させると、L体である4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸及びその塩が水に溶解し、一般式(6)で示されるD体の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩が不溶分として析出するので、これを濾別回収する。この4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を適当な有機溶媒で洗浄することにより、不純物となるタンパク質、核酸、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸及びその塩等を取り除くことができる。この際に用いられる有機溶媒としては特に限定はされないが、生化学的不斉加水分解時に混入してくるタンパク質や核酸等を溶解し、且つ目的とする一般式(6)に示す4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の溶解力の低い溶媒を適宜選択すれば良い。例えば、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類が好適に用いられる。
(A−6)一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩の加水分解
上記のように濾取した一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩の結晶を水溶液となし加熱還流すると、チアゾリジン環の加水分解的開環反応が進行する。この際、生成する一般式(4)で示されるアルデヒド又はケトンを、例えば還流冷却管の上部から系外に除去するような方法を講じながら行なうと、反応が速やかに進行する。また、加水分解触媒として塩酸や硫酸等の酸を用いると、より速やかに反応が進行するが、この場合には酸との塩としてアミノ酸が得られることになる。反応時間は、反応液の組成や操作条件によって異なるので一概に言えないが、通常、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩の水溶液を、生成するアルデヒド又はケトンを系外に除去しながら加熱還流すると、1〜6時間程度で反応を完結することができる。
前記の加水分解的開環反応後の反応液を、例えば減圧濃縮する等の方法で処理することにより、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−L−システイン又はその塩を得ることができる。なお、アルデヒド又はケトンが残留し留去が困難な場合には、エーテルや塩化メチレン等の非極性有機溶媒を加えて上層に転溶し除去した後、水層を分取して濃縮すればよい。
このようにして、具体的には、例えば2−メチル−L−システイン、2−エチル−L−システイン等の光学活性2−アルキル−L−システインを製造することができる。
(A−7)一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の加水分解
上記のように濾取した一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドを水に懸濁させて加熱還流すると、加水分解的に開環反応と脱アミド反応が起こり、2―アルキル−D−システインが生成する。この際、生成する一般式(4)で示されるアルデヒド又はケトンを系外に除去しながら行なうと、反応が速やかに進行する。また、加水分解触媒として塩酸や硫酸等の酸を用いると、より速やかに反応が進行するが、この場合には酸との塩としてアミノ酸が得られることになる。
反応後の反応液は、ジエチルエーテルや塩化メチレン等の非極性有機溶媒を加えて、分液、洗浄して、残留するアルデヒド又はケトンを除去する。この水層を濃縮すると一般式(7)で示される光学活性2−アルキル−D−システイン又はその塩が得られる。なお、加水分解触媒として塩酸や硫酸等の酸を加えた場合には、加水分解したアミドがアンモニウム塩となり結晶に混入するが、これは得られた2−アルキル−D−システインを再結晶するか、イオン交換樹脂等で脱塩することにより除去することができる。
このようにして、具体的には、例えば2−メチル−D−システイン、2−エチル−D−システイン等の光学活性2−アルキル−D−システインを製造することができる。
(B−1)2−アルキルシステイン又はその塩を原料とした4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩の合成
図2に示されるように、本発明によれば、一般式(2)若しくは(7)で示される光学活性2−アルキルシステイン若しくはその塩、又は、一般式(10)で示される2−アルキルシステイン若しくはその塩を、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させることにより、一般式(5)若しくは(9)で示される光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸若しくはその塩又は一般式(8)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸若しくはその塩を製造することができる。
原料となる2−アルキルシステインを示す一般式(10)、(2)及び(7)におけるRは、炭素数1〜4の低級アルキル基であればよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルが挙げられる。本発明で使用する一般式(10)、(2)及び(7)で示される2−アルキルシステインはその製法及び品質等に特に制限はなく、例えば、Justus Liebigs Ann.Chem.(1966),697,140−157に記載の方法によって調製される該当する4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド誘導体を加水分解する方法等によって得られるラセミ体や、米国特許第6,403,830号明細書や、特開2003−201284号公報に記載されている製造方法に基づいて得られる光学活性体等を用いることができ、また、上記(A−6)又は(A−7)項に記載の方法によって得られた光学活性体を用いてもよい。一般式(10)で示される2−アルキルシステイン又はその塩は、一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩及び一般式(7)で示される2−アルキル−D−システイン又はその塩の混合物であってもよく、また、両者の等量混合物であるラセミ混合物であってもよい。
使用する一般式(4)で示すアルデヒド若しくはケトン、又はそれらのアセタール若しくはケタールとしては、上記(A−3)項に記載のものと同様のものが使用できる。
一般式(4)で示すアルデヒド又はケトン、一般式(4’)で示すアセタール又はケタールと2−アルキルシステイン又はその塩との環化反応は平衡反応であることから、使用するアルデヒド、ケトン、アセタール又はケタールは、2−アルキルシステイン又はその塩より過剰すなわち1倍モル以上あることが好ましく、2倍当量以上であることが特に好ましい。上限についての限定はないが、反応の実状と経済性を鑑みて適宜使用量を決定すればよい。
一般式(10)、(2)及び(7)で示される2−アルキルシステイン又はその塩と、一般式(4)で示されるケトン若しくはアルデヒド又はそれらのアセタール若しくはケタールとの反応は、反応に用いるケトン若しくはアルデヒド又はアセタール若しくはケタールを溶媒として用いて混合し、加熱すると反応が進行する。この際の加熱温度は特に限定されないが、調製された反応混合溶液の沸点で還流しながら行うのが好適である。また、その際に発生する水分を除去しながら行うと反応が促進されより好適である。脱水する手法としては特に限定されず、ディーンシュターク分液装置やモレキュラーシーブの様な脱水剤を用いても良く、脱水剤を用いる場合には原料の2−アルキルシステインに対して1倍当量以上、好ましくは1.2倍当量以上の脱水能力を持つように用いるのが望ましい。
また、一般式(10)、(2)及び(7)で示される2−アルキルシステイン又はその塩の、一般式(4)で示されるケトン若しくはアルデヒド又はそれらのアセタール若しくはケタールへの溶解度が低い場合には、反応に不活性な有機溶媒を混在させて均一系にすることで反応を好適に行うことができる。この際に用いられる溶媒は、一般式(10)、(2)及び(7)で示される2−アルキルシステイン、及び一般式(4)で示されるケトン若しくはアルデヒド又はそれらのアセタール若しくはケタールの溶解度を考慮して適宜決めれば良く、特に限定はされないが、その溶解度からメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶媒、さらにはこれらの混合溶媒等が好適に用いられ、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類が特に好適である。
反応はpH6.5から10の範囲で行うと、より好適に進行するため、用いる2−アルキルシステインがナトリウム塩等のような塩基との塩を形成している場合には無触媒で速やかに反応が進行するが、遊離の2−メチルシステイン、又は塩酸塩等のような酸との塩を用いた場合には塩基性物質を触媒として用いるのが好適である。その際に用いる塩基性物質としては特に制限はないが、例えば炭酸ナトリウム等の無機塩基やトリエチルアミン等の有機塩基が好適に使用できる。この際に添加する塩基性物質の量は、基質が遊離の2−アルキルシステインの場合にはその0.05倍モル以上あれば良く、用いる2−アルキルシステインが酸との塩を形成している場合には、その酸の分量だけ塩基性物質をさらに多く添加すれば良い。なお、反応系のpHは10を超えないことが望ましく、また過剰な塩基使用は後工程での除去操作を要することになりコスト的に有利であるとは言えない。好ましい塩基性物質の使用量は2−アルキルシステインに対して0.5〜3倍モルである。
一般式(8)、(5)又は(9)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、反応後の反応液から晶析や抽出によって回収することができる。得られた4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、物性に合わせて再結晶等の定法によって適宜精製することができ、例えばエステル体の合成原料として使用することもできる。
一般式(8)、(5)及び(9)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩のRは、炭素数1〜4の低級アルキル基であればよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec―ブチル、tert−ブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が挙げられる。また、一般式(8)、(5)、(9)、(4)及び(4’)中のR1及びR2は、各々独立に、水素、炭素数1〜4の低級アルキル基(但し、R1とR2の両者が同時に水素の場合を除く)、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造であればよい。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルなどが挙げられ、脂環構造としてはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等が挙げられる。アルキル基としてはR1及びR2が共にメチル基の場合が、脂環構造ではシクロペンタン環構造を取る場合が特に好適である。
一般式(8)、(5)及び(9)の化合物は塩を形成することもできる。その種類は、実用上許容できる塩であれば特に制限はなく、例えば塩酸や硫酸、リン酸等の無機酸塩、ギ酸、酢酸等の有機酸塩、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウムやテトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩類等が挙げられる。
本発明の方法によって、具体的には、例えば2,2,4−トリメチル−(3)−チアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、2−エチル−2,4−ジメチル−(3)−チアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩等の、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、及びそれらの光学活性体を製造することができる。
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例I-1
次の組成を有する培地を調製し、この培地200mLを1L三角フラスコに入れ、滅菌後、キサントバクター フラバス(Xanthobacter flavus)NCIB 1007Lを接種し、30℃で48時間振とう培養を行った。次いで培養液から、遠心分離により、乾燥菌体1.0gに相当する生菌体を得た。
培地組成(pH7.0)
グルコース 10g
ポリペプトン 5g
酵母エキス 5g
KHPO 1g
MgSO・7HO 0.4g
FeSO・7HO 0.01g
MnCl・4HO 0.01g
水 1L
ラセミ体の2−メチルシステインアミド塩酸塩10.0g(0.06mol)を水300mLに溶かした後、500mLフラスコに入れ、2価のMnイオンの濃度が10ppmとなるように塩化マンガン水溶液を加え、さらに、乾燥菌体1.0gに相当する生菌体を加えて、窒素気流下、40℃で24時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、反応液から遠心分離によって菌体を除去して上清を得た。この上清をロータリーエバポレーターで濃縮した後、メタノール150mLに溶解させた。続いてアセトン200mL、炭酸ナトリウム3.6g(0.03mol)を加えて16時間、攪拌下室温で反応させた。反応液を濃縮後、50mLのイソブチルアルコールを加えて4時間還流条件で可溶物を抽出し、放冷後、不溶物として残った結晶を濾別した。得られた結晶をエタノールを用いて再結晶し、無色透明の2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸の結晶を得た。得られた2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸を100mLの純水に溶解させ、窒素気流下にて3時間還流を行った。反応液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、減圧乾燥を行い、3.1g(0.02mol)の2−メチル−L−システインを得た。反応に仕込んだラセミ混合物中の2−メチル−L−システインアミドからの単離収率は78mol%、ラセミ混合物の2−メチルシステインアミドからの単離収率は39mol%であった。また、この固体を光学異性体分離カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって分析した結果、光学純度は95%e.e.以上であった。
実施例I-2
実施例I-1において、塩化マンガン水溶液を加えずに生化学的不斉加水分解反応を行ったところ、40℃48時間反応させることにより実施例I-1と同様の3.1g(0.02mol)の2−メチル−L−システインが得られた。2−メチル−L−システインアミドからの単離収率は78mol%、2−メチルシステインアミドからの単離収率は39mol%、光学純度は95%e.e.以上であった。
実施例II-1
以下の組成を有する培地を調製し、この培地200mLを1L三角フラスコに入れ、滅菌後、キサントバクター フラバス(Xanthobacter flavus)NCIB 10071を接種し、30℃で48時間振とう培養を行った。次いで培養液から、遠心分離により、乾燥菌体1.0gに相当する生菌体を得た。
培地組成(pH7.0)
グルコース 10g
ポリペプトン 5g
酵母エキス 5g
KHPO 1g
MgSO・7HO 0.4g
FeSO・7HO 0.01g
MnCl・4HO 0.01g
水 1L
ラセミ体の2−メチルシステインアミド塩酸塩10.0g(0.06mol)を水300mLに溶かした後、500mLフラスコに入れ、2価のMnイオン濃度が10ppmとなるように塩化マンガン水溶液を加え、さらに、乾燥菌体1.0gに相当する生菌体を加えて、窒素気流下、40℃で24時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、反応液から遠心分離によって菌体を除去して上清を得た。この上清をロータリーエバポレーターで濃縮した後、メタノール150mLに溶解させた。続いてアセトン200mL、炭酸ナトリウム3.6g(0.03mol)を加えて16時間、攪拌下室温で反応させた。反応液を濃縮した後、50mLのイソブチルアルコールを加えて4時間還流条件で可溶物を抽出し、放冷後、不溶物として残った結晶を濾別した。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、この濃縮物を50mLのヘキサンで洗浄した後、再度乾固させることにより白色固体の2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドを得た。得られた2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドを100mLの純水に懸濁させ、3時間、加熱還流を行った。反応液を、50mLのジエチルエーテルで2回洗浄した後、水層を濃縮乾固、減圧乾燥することにより、3.3g(0.02mol)の2−メチル−D−システインを得た。反応に仕込んだラセミ混合物中の2−メチル−D−システインアミドからの単離収率は84mol%、2−メチルシステインアミドのラセミ混合物からの単離収率は42mol%であった。また、この固体を光学異性体分離カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって分析した結果、光学純度は95%e.e.以上であった。
実施例II-2
実施例II-1において、塩化マンガン水溶液を加えずに生化学的不斉加水分解反応を行ったところ、40℃48時間反応させることにより実施例II-1と同様に3.3g(0.02mol)の2−メチル−D−システインが得られた。2−メチル−D−システインアミドからの単離収率は84mol%、2−メチルシステインアミドからの単離収率は42mol%、光学純度は95%e.e.以上であった。
実施例III-1
Justus Liebigs Ann.Chem.(1966),697,140−157.に記載の方法にて調製した2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド塩酸塩 2.00gを36%濃塩酸10mLに溶解し、105℃で1時間加熱還流した後に濃縮乾固して得られる白色固体をイソプロパノールにて洗浄し、1.62gの2−メチルシステイン塩酸塩を得た。これを水溶液にした後、陰イオン交換樹脂に通し脱塩してから蒸発乾固して1.27gの2−メチルシステインを得た。得られた2−メチルシステイン全量を5mLのメタノールに溶解し、次いで5mLのアセトンを加えて56℃で加熱還流した。4時間後に加熱を止め、濃縮乾固して得られた白色固体を、アセトンで洗浄して1.32gの2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸を得た。原料の2−メチルシステイン塩酸塩に対する収率は、80モル%であり、得られた2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸の物性は以下の通りであった。
2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−L−カルボン酸
白色針状晶
H−NMR(90MHz,DO)δ[ppm] 3.70(1H,d,J13.0Hz),3.30(1H,d,J13.0Hz),1.83(3H,s),1.81(3H,s),1.71(3H,s)
元素分析C13NOS(測定値)C;47.74,H;7.51,N;7.89,S;18.28,(計算値)C;47.98,H;7.48,N;7.99,O;18.26,S;18.30
実施例III-2
米国特許第6,403,830号明細書に記載の方法にて2−メチル−L−システイン塩酸塩0.7gを調製した。これを3mLのメタノールに溶解し、無水炭酸ナトリウム0.3gを懸濁させた後、次いで2mLのアセトンを加えて56℃で加熱還流した。2時間後に加熱を止め、濃縮乾固して得られた白色固体1.1gを、エタノールより再結晶して0.58gの2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−L−カルボン酸を得た。原料の2−メチルシステイン塩酸塩に対する収率は、81モル%であり、得られた2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸の物性は以下の通りであった。
2,2,4−トリメチルチアゾリジン−4−L−カルボン酸
白色針状晶
H−NMR(90MHz,DO)δ[ppm] 3.70(1H,d,J13.0Hz),3.30(1H,d,J13.0Hz),1.83(3H,s),1.81(3H,s),1.71(3H,s)
実施例III-3
米国特許第6,403,830号明細書に記載の方法にて2−メチル−L−システイン塩酸塩0.7gを調製した。これを5mLのシクロペンタノンに分散させ、さらにトリエチルアミン0.45gを添加して、モレキュラーシーブ4Aを1g充填した塔を設置して、1時間、130℃で加熱還流した。反応液を濃縮乾固して得られた黄色固体を、エタノールより再結晶して0.53gの3−メチル−1−チア−4−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−カルボン酸を得た。原料の2−メチルシステイン塩酸塩に対する収率は、64.6モル%であり、得られた3−メチル−1−チア−4−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−カルボン酸の物性は以下の通りであった。
3−メチル−1−チア−4−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−カルボン酸
白色結晶
H−NMR(90MHz,CDCl)δ[ppm] 9.53(1H,broad−s),3.73(1H,d,J12.8Hz),3.24(1H,d,J12.8Hz),3.00〜1.45(14H,m)
元素分析C15NOS(測定値)C;53.51,H;7.65,N;6.87,S;15.88,(計算値)C;53.70,H;7.51,N;6.96,O;15.90,S;15.93
本発明の光学活性2−アルキルシステイン又はその塩の製造方法は、各種工業薬品、農薬、医薬品等の製造中間体として重要な物質である光学活性2−アルキルシステイン及びこれらの塩を高品質かつ安価に製造するために有用である。
本発明の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩は、各種工業薬品、農薬、医薬品等の製造中間体として重要な物質であるため有用であり、その製造方法は、この物質を高品質かつ安価に製造するために有用である。
本発明の光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法は、各種工業薬品、農薬、医薬品等の製造中間体として重要な物質である光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を高品質かつ安価に製造するために有用である。
本発明による2−アルキルシステインアミドを原料とした光学活性2−アルキルシステインアミドを合成するスキームを示す概略図である。 本発明による2−アルキルシステインを原料とした4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸を合成するスキームを示す概略図である。

Claims (11)

  1. 一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩に、
    キサントバクター属に属する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させて、
    一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩を生成させ、
    生成した2−アルキル−L−システイン又はその塩と未反応の一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩を、
    一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、
    それぞれより一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩と、一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を誘導し、
    それらの混合物より一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩を分離した後、これを加水分解することによって開環し、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−L−システイン又はその塩を取得することを特徴とする、
    2−アルキルシステインアミド又はその塩から光学活性2−アルキル−L−システイン又はその塩を製造する方法。
    Figure 0004735263
    (一般式(1)、(2)、(3)、(5)及び(6)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。また、一般式(4)、(5)及び(6)中のR1及びR2は各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R1及びR2が同時に水素である場合を除く。)
  2. 一般式(1)で示される2−アルキルシステインアミド又はその塩に、キサントバクター属に属する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させて、一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩を生成させ、生成した2−アルキル−L−システイン又はその塩と未反応の一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩を、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、それぞれより一般式(5)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩と、一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を誘導し、それらの混合物より一般式(6)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を分離した後、これを加水分解することによって開環及び脱アミド化し、一般式(7)で示される光学活性2−アルキル−D−システイン又はその塩を取得することを特徴とする、2−アルキルシステインアミド又はその塩から光学活性2−アルキル−D−システイン又はその塩を製造する方法。
    Figure 0004735263
    (一般式(1)、(2)、(3)、(5)、(6)及び(7)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。一般式(4)、(5)及び(6)中のR1及びR2は各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R1及びR2が同時に水素である場合を除く。)
  3. 一般式(10)で示される2−アルキルシステイン又はその塩、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−L−システイン又はその塩、又は一般式(7)で示される光学活性2−アルキル−D−システイン若しくはその塩を、メタノール、エタノール又はブタノールのいずれか存在下にて一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させて、一般式(8)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、或いは一般式(5)又は(9)で示される光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸若しくはその塩を誘導することを特徴とする、4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩、又は光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸若しくはその塩を製造する方法。
    Figure 0004735263
    (一般式(2)、(5)、(7)、(8)、(9)及び(10)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。一般式(4)、(5)、(8)及び(9)中のR1及びR2は各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R1及びR2が同時に水素である場合を除く。)
  4. 前記Rがメチル基である、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  5. 前記R1及びR2が共にメチル基である、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  6. 一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩、一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩、一般式(7)で示されると2−アルキル−D−システイン又はその塩、又は一般式(10)で示される2−アルキルシステイン若しくはその塩を、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させる際に、塩基性触媒を用いる、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  7. 一般式(2)で示される2−アルキル−L−システイン又はその塩、一般式(3)で示される2−アルキル−D−システインアミド又はその塩、一般式(7)で示されると2−アルキル−D−システイン又はその塩、又は一般式(10)で示される2−アルキルシステイン若しくはその塩を、一般式(4)で示されるアルデヒド若しくはケトン又はそれらのアセタール若しくはケタールと反応させる際に、脱水剤を用いる、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  8. 一般式(8)で示される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩。
    Figure 0004735263
    (一般式(8)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、R1及びR2は各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R1及びR2が同時に水素である場合を除く。)
  9. 一般式(5)又は(9)で示される光学活性4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸又はその塩。
    Figure 0004735263
    (一般式(5)、及び(9)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、R1及びR2は各々独立に水素若しくは炭素数1〜4の低級アルキル基、又は互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但し、R1及びR2が同時に水素である場合を除く。)
  10. 前記Rがメチル基である、請求項又はに記載の化合物。
  11. 前記R1及びR2が共にメチル基である、請求項又はに記載の化合物。
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