JP4734810B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧シートに関し、更に詳しくは、壁紙や床材、天井材などの建築物の内装材、その他家具、家電製品などの表面被覆材、レザー、ブックカバーの表面材など広範囲の用途に使用でき、その中間層などに発泡樹脂層が積層され、触感および各種の性能がよく、且つ使用後の廃棄処理などの際、焼却しても有害ガスを発生することがなく安全性にも優れた化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、壁紙や床材、天井材などの建築物の内装材、その他家具、家電製品などの表面被覆材などに使用され、中間層などに発泡樹脂層が積層された化粧シートとしては、例えばポリ塩化ビニル系樹脂に可塑剤、安定剤などと共に発泡剤を配合して形成した樹脂シートに紙、布などの裏打ち層を積層し、表面に絵柄などの印刷層を設けて加熱発泡させた化粧シートが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の化粧シートは、その主体である発泡性樹脂層がポリ塩化ビニル系樹脂を主成分としており、可塑剤の添加が必須であることから、長期の使用において可塑剤が表面に移行し、表面にべたつきを生じる結果、汚れを付着させやすくし、また、可塑剤が抜けた部分では硬くなり、低温時ひび割れを生じやすくする問題があった。
【0004】
また、このようなポリ塩化ビニル系樹脂による化粧シートは、燃焼時に塩素ガス、塩酸ガスなどの人体に対して有害なガスを発生することから、火災時にガス中毒を起こす問題があり、また長期使用後の廃棄、焼却の際にも大気汚染、環境汚染を発生させる問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、壁紙や床材、天井材などの建築物の内装材、その他家具、家電製品などの表面被覆材など広範囲の用途に使用できる化粧シートであって、その中間層などに発泡性樹脂層が積層され、その発泡性、加工性、耐カール性、耐スクラッチ性、難燃性などの性能がよく、長期間使用しても可塑剤の移行などで表面がべたつくこともなく、また、火災や使用後の焼却などで燃焼しても塩素系などの有害ガスを発生することもなく、性能と共に安全性、環境適性にも優れた化粧シートを生産性よく提供することにある。
【0006】
前記の課題は、以下の本発明により解決することができる。即ち、請求項1に記載した発明は、基材(裏打ち層)の上に少なくとも発泡性樹脂層と印刷インキ層とを積層した積層体を加熱発泡させてなる化粧シートにおいて、該発泡性樹脂層が、エチレンと一般式(1)
CH2=CR1COOR2 (1)
〔式中、R1はHまたはCH3であり、R2はアルキル基である。〕で表されるアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合してなるエチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂を主成分とし、これに少なくとも発泡剤を添加してなる樹脂組成物で形成されると共に、該エチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂のMFRが1.8以上4.5以下であり、且つそれらのエチレン系共重合樹脂におけるエチレンに対するコモノマーの含有量が17〜24重量%であることを特徴とする化粧シートからなる。
【0007】
本発明において、MFR(Melt Flow Rate)は、JIS K7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)の表1の条件4に準じて測定したものである。
上記共重合樹脂におけるコモノマーの含有量は、前記一般式CH2 =CR1 COOR2 で表される各種アクリル酸エステルもしくは各種メタクリル酸エステルのほか、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしている場合は酢酸ビニルも含むものである。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂は、例えば、柔軟性や耐カール性などの物性を向上させるためにブレンドするものである。
【0008】
上記コモノマーの各種アクリル酸エステルもしくは各種メタクリル酸エステルは、特に限定はされないが、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリルなどを好適に使用することができる。
【0009】
前記エチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂は、その製膜時の加工性、化粧シートに加工した際の耐カール性、発泡性、耐スクラッチ性、難燃性、触感などの点で、そのエチレンに対するコモノマーの含有量が17〜24重量%であることが好ましく、且つそのMFRは4.5以下であることが好ましい。
【0010】
前記エチレン系共重合樹脂のMFRが4.5を超える場合は、製膜時の加工性、耐カール性などが低下し、また、前記コモノマーの含有量が17重量%未満の場合は、耐カール性と共に難燃性が低下し、コモノマーの含有量が24重量%を超える場合は、製膜時の加工性、耐スクラッチ性などが低下するため好ましくない。
また、このようなエチレン系共重合樹脂に添加する発泡剤としては、熱により分解しガスを発生する公知の発泡剤を使用することができ、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジッド(TSH)、ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)などを単独または複数を組み合わせて使用することができる。
【0011】
従って、前記のような構成を採ることにより、発泡性樹脂層の主成分にエチレン系共重合樹脂を使用しているので、可塑剤を添加する必要がなく、経時的に可塑剤が表面に移行して表面を汚れやすくしたり、発泡性樹脂層を硬くし、ひび割れを発生しやすくするようなこともなくなり、長期にわたって安定した柔軟性を有し、且つ、加工性、発泡性、耐カール性、耐スクラッチ性、難燃性などの性能に優れると共に、燃焼しても塩素系などの有害ガスを発生することがなく安全性、環境適性にも優れた化粧シートを提供することができる。
【0012】
請求項2に記載した発明は、前記発泡性樹脂層のエチレン・アクリル系共重合樹脂が、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の化粧シートからなる。
【0013】
前記発泡性樹脂層のエチレン・アクリル系共重合樹脂としては、前述したように、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸ヘキシル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸ラウリル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸ステアリル共重合樹脂などを好適に使用することができるが、なかでもエチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂は、加工性がよく、適度の柔軟性と耐スクラッチ性を有し、且つ、発泡性、耐カール性など発泡性樹脂層としての総合的な性能に優れているため特に好ましく使用することができる。
【0014】
従って、前記のような構成を採ることにより、前記請求項1に記載した発明の作用効果に加えて、一層加工性がよく、且つ、柔軟性、耐スクラッチ性、発泡性、耐カール性などの性能に優れた化粧シートを得ることができる。
【0015】
請求項3に記載した発明は、前記発泡性樹脂層に難燃剤が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートからなる。
【0016】
上記難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができるが、本発明においては、化粧シートの燃焼時に塩素ガスや塩酸ガスなどの有害ガスが発生しないよう、発泡性樹脂層の樹脂に前述のようなエチレン系共重合樹脂を用いたものであり、難燃剤に関しても同様に、特に有機塩素化合物や有機臭素化合物などの有機ハロゲン化合物以外の難燃剤を用いることが好ましい。
このような難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ホウ酸アンチモン、モリブデン酸アンチモン、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、二酸化チタン、ホウ酸などの無機酸化物、そして、トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ジメチルホスフォネート、ホスフォリネート、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ポリフォスホネート、ポリフォスフェート、芳香族ポリホスフェートなどのリン酸エステルまたはリン化合物、ホスフォネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオールなどのポリオール化合物、その他、シリコーン系ポリマー、フェロセン、フマール酸、マレイン酸、トリアジン化合物、メラミンシアヌレート、イソシアヌレート、尿素、グアニジン化合物などを使用することができる。
【0017】
このような構成を採ることにより、前記請求項1または2に記載した発明の作用効果に加えて、発泡性樹脂層のエチレン系共重合樹脂に難燃性を付与することができるので化粧シートの難燃性を向上させることができる。
【0018】
請求項4に記載した発明は、前記発泡性樹脂層と印刷インキ層の間にプライマー層が設けられ、印刷インキ層の上に保護層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧シートからなる。
【0019】
上記プライマー層は発泡性樹脂層に対する印刷インキ層の接着性を向上させるために設けるものであり、例えばアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などのエマルジョンまたはディスパージョンなどを塗布し、加熱乾燥して皮膜形成させる方法で設けることができる。
また、印刷インキ層(絵柄印刷層)の上に設ける保護層は、印刷インキ層の耐摩耗性、耐スクラッチ性などを向上させると共に、耐熱性なども向上させるために設けるものであり、特に限定はされないが、例えばアクリル系などの透明樹脂の塗布液を塗布、乾燥して設けることができる。
【0020】
このような構成を採ることにより、前記請求項1乃至3のいずれかに記載した発明の作用効果に加えて、プライマー層により印刷インキ層の接着性が一層向上し、また、保護層により印刷インキ層(絵柄印刷層)の耐摩耗性、耐スクラッチ性、耐熱性など表面物性を一層向上させることができる。
【0021】
請求項5に記載した発明は、前記化粧シートの表面にエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧シートからなる。
【0022】
上記エンボス加工は、メカニカルな方法による熱エンボスでもよく、所謂ケミカルエンボスでもよい。
このような構成を採ることにより、前記請求項1乃至4のいずれかに記載した発明の作用効果に加えて、化粧シートの意匠性を向上させることができ、特にエンボス加工のパターンを下層の印刷インキ層の絵柄に同調させることにより、化粧シートの意匠性を一層向上させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
図1、図2は、それぞれ本発明の化粧シートの一実施例の構成を示す模式断面図であり、各図において(イ)は発泡前の模式断面図で、(ロ)は加熱発泡後の模式断面図である。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの図面に限定されるものではない。
図1の(イ)、(ロ)に示した化粧シート10は、基材(裏打ち層)1の上に発泡性樹脂層2を設け、その上に印刷インキ層(絵柄印刷層)3を設けて構成したものである。
【0024】
基材(裏打ち層)1には、化粧シートの用途により紙や布などを適宜選択して使用することができる。紙を使用する場合、難燃性を付与した紙が好ましく、通常、坪量が50〜120g/m2 程度の紙が使用される。
布を使用する場合、通常の織布のほか、ガラス繊維などの無機質繊維を含む不織布または織布などを使用することができる。
【0025】
発泡性樹脂層2は、先に説明したように、エチレンと一般式「CH2 =CR1 COOR2 」〔式中、R1 はHまたはCH3 であり、R2 はアルキル基である。〕で表されるアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合してなるエチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂を主成分とし、これに少なくとも発泡剤を添加してなる樹脂組成物で形成されると共に、該エチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂のMFRが4.5以下であり、且つそれらのエチレン系共重合樹脂におけるエチレンに対するコモノマー、即ち、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルの含有量が17〜24重量%であることを特徴とするものであり、添加剤としては発泡剤のほかに必要に応じて発泡助剤、発泡セル調整剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、顔料などを適宜添加することができる。
【0026】
このような発泡性樹脂層2は、カレンダー方式または押し出しコート方式で所望の厚さに製膜すると同時に基材(裏打ち層)1の上に熱接着させて積層することができる。また、発泡性樹脂層2の表面には、その上に設ける印刷インキ層3、即ち、絵柄印刷層の接着性を向上させるためにコロナ放電処理、オゾン処理などの易接着性処理を施すことが好ましい。
発泡性樹脂層2の厚さは、化粧シートの用途により適宜に設定できるが、発泡前の厚さで80〜200μm程度が一般的である。
【0027】
印刷インキ層(絵柄印刷層)3は、下層の発泡性樹脂層2に対して接着性がよく、耐光性、耐熱性、耐スクラッチ性、耐汚染性などを有することが必要であるが、使用するインキタイプや印刷手段などについて特に限定はされず、例えば、アクリル系樹脂などをバインダーとするインキを用いて、多色のグラビア印刷、或いはシルクスクリーン印刷、フレキソ印刷などの手段で容易に設けることができる。
【0028】
尚、前記発泡性樹脂層2製膜は、発泡剤の発泡温度よりも低い温度、通常、120〜170℃程度の温度で製膜することにより、図1の(イ)に示すような未発泡の化粧シート10が得られ、これを加熱発泡炉に通して180〜220℃に加熱することにより、発泡性樹脂層2に含有される発泡剤を分解させてガスを発生させ、図1の(ロ)に示すように発泡性樹脂層2の内部に発泡セルAを形成させて発泡済みの化粧シート10を製造することができる。
上記発泡性樹脂層2の発泡倍率は、発泡剤の種類および添加量、加熱温度などにより調節することができ、通常、2〜7倍程度の範囲に発泡させることができる。
【0029】
図2に示した化粧シート20は、前記図1に示した化粧シート10の構成において、印刷インキ層(絵柄印刷層)3の発泡性樹脂層2に対する接着性を向上させるため、発泡性樹脂層2と印刷インキ層(絵柄印刷層)3の間にプライマー層4を追加して設け、また、印刷インキ層(絵柄印刷層)3の耐摩耗性、耐スクラッチ性、耐汚染性などを向上させるため、印刷インキ層(絵柄印刷層)3の上に保護層5を追加して設け、更に、化粧シート20の意匠性を一層向上させるため、図2の(ロ)に示したように、化粧シート20の表面にエンボス加工を施してエンボス部Bを形成して構成したものである。
尚、図2の(ロ)に示したエンボス部Bの形状は、単に化粧シート20の表面にエンボス加工が施されていることを示したものであり、その凹凸パターンや深さなどは任意の形状に形成することができる。
【0030】
このようなエンボス部Bは、メカニカルエンボス法で形成してもよく、また、ケミカルエンボス法で形成してもよい。
エンボス部Bをメカニカルエンボス法で形成する場合は、例えば、図2の(イ)に示したように、基材(裏打ち層)1の上に発泡性樹脂層2、プライマー層4、印刷インキ層(絵柄印刷層)3、保護層5を順に設けて未発泡の化粧シート20を作製し、図1に示した化粧シート10と同様に、加熱発泡炉に通して180〜220℃に加熱して、発泡性樹脂層2を発泡させた後、化粧シート20の表面を加熱してエンボスロールなどで型押しすることにより、凹凸模様のエンボス部Bを形成することができる。
尚、エンボス部Bの深さは、前述したように、エンボスロールなどの凹凸形状に応じて、更に深く、例えば発泡性樹脂層2の内部に達する深さに形成することもできる。
【0031】
エンボス部Bをケミカルエンボス法で形成する場合は、例えば、図2の(イ)に示した構成の未発泡の化粧シート20を作製する際、多色で形成される印刷インキ層(絵柄印刷層)3の一部または全部に発泡抑制剤を添加しておくことにより、加熱発泡炉で発泡性樹脂層2を加熱して発泡させた時、発泡抑制剤が添加されたパターン状の印刷インキ層から発泡抑制剤が発泡性樹脂層2の内部に浸透して、その部分の発泡が抑制されるため、その部分がパターン状に凹部となり、その他の部分がパターン状に発泡して凸部を形成するため、印刷絵柄に同調した凹凸模様を容易に形成することができ、化粧シート20の意匠性を一層向上させることができる。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
壁紙に用いる化粧シートを作製することとし、基材(裏打ち層)、発泡性樹脂層、プライマー層、印刷インキ層(絵柄印刷層3色)、保護層が順に積層された構成の化粧シートを下記の材料を用いて作製した。
尚、実施例と比較例は、上記の構成のうち、基材(裏打ち層)、プライマー層、印刷インキ層(絵柄印刷層3色)、保護層には共通の材料を用い、発泡性樹脂層に用いたエチレン系共重合樹脂と添加剤の配合のうち、エチレン系共重合樹脂の配合のみを表1に示したように変更して、実施例1〜4および比較例1〜5の化粧シートを作製したものである。
また、発泡性樹脂層の形成はカレンダー法により、ロール温度150℃で厚さが130μmとなるように製膜し、基材(裏打ち層)に熱接着させて積層したものである。
発泡性樹脂層の発泡は、それぞれの未発泡の化粧シートを180℃、約10秒間の条件で加熱発泡炉に通して発泡させたものである。
【0033】
▲1▼基材(裏打ち層)には、坪量70g/m2 の半難燃紙を使用した。
▲2▼プライマー層には、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂のエマルジョンを使用し、乾燥時の厚さが2μmとなるように塗布、加熱乾燥して皮膜を形成させた。
▲3▼印刷インキ層(絵柄印刷層3色)は、アクリル系バインダーのインキを使用してグラビア印刷により木目柄の印刷を行った。
▲4▼保護層は、透明なアクリル系樹脂溶液(スリップ剤添加)をグラビア印刷により乾燥時の厚さが3μmとなるように全面に印刷して形成した。
▲5▼発泡性樹脂層には、下記の表1に示した配合のエチレン系共重合樹脂および添加剤からなる樹脂組成物を用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
尚、表1において、発泡剤のADCAはアゾジカルボンアミドであり、OBSHは4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である。
また、発泡セル調整剤の亜鉛化合物は、発泡性樹脂層の発泡性、発泡の均一性などを向上させるものである。また、発泡助剤のZnO(亜鉛華)を用いた場合は、発泡剤の発泡温度、即ち、分解開始温度を下げ、発泡性樹脂層の発泡性を向上させると共に、発泡温度の低下により化粧シート材料の熱劣化を防止し、化粧シートの品質、性能を向上させることができる。
無機充填剤の水酸化アルミニウムおよび酸化チタンは、白色の着色剤であると同時に難燃剤としての作用も有している。
滑剤のステアリン酸亜鉛は、滑剤であると同時に発泡助剤としての作用も有している。
シリコーン系難燃剤は、エチレン系共重合樹脂に難燃性を付与すると共に、樹脂の溶融張力を調節し、発泡セルを緻密にする作用も有するものである。
【0036】
以上のように作製した実施例1〜4および比較例1〜5の化粧シートについて、下記項目の測定および性能評価を行い、その結果を表2にまとめて示した。
(1)発泡性樹脂層のエチレン系共重合樹脂中のコモノマー(MMA、VA)の含有量を重量%で示した。
(2)発泡性樹脂層のエチレン系共重合樹脂のMFRを測定し、その数値を示した。単位〔g/10min〕
(3)難燃性:難燃性のレベルを相対比較し、難燃性レベルの高いものは○、中程度のものは△、レベルの低いものは×として示した。
(4)耐カール性:カールの大小とその強さについて、カールが小さく反発力も弱いものは○、カールが多少あり、反発力も若干あるものは△、カールが大きく反発力も大きいものは×として示した。
(5)加工性:主に発泡性樹脂層の樹脂組成物のカレンダー成形による製膜などの加工性について、良好なものは○、やや劣るものは△、劣るものは×として示した。
(6)発泡性:発泡性樹脂層の発泡倍率と発泡セルの緻密性について、発泡倍率が4倍以上で、発泡セルが緻密性に優れているものは○、やや劣るものは△、劣るものは×として示した。
(7)耐スクラッチ性:化粧シート表面の同じ位置を爪で30回擦って、傷が殆どつかないものは○、僅かに傷がつくものは△、傷が多くつくものは×として示した。
【0037】
【表2】
尚、表2には記載していないが、本発明の化粧シートでは、発泡性樹脂層の樹脂にエチレン系共重合樹脂を使用し、ポリ塩化ビニル系樹脂を使用しておらず、また、難燃剤などその他の構成材料にも塩素や臭素などのハロゲン元素を含む化合物の使用を止めたので、化粧シートを燃焼させた場合でも塩酸ガスや塩素ガスなどの有害ガスの発生はなく、安全性の点でも優れていた。
【0038】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜4の化粧シートは、発泡性樹脂層のエチレン系共重合樹脂中のコモノマー(MMA、VA)の含有量が17〜24重量%であり、且つ、そのエチレン系共重合樹脂のMFRが4.5以下であり、また、これらのエチレン系共重合樹脂に発泡剤のほか、難燃剤、滑剤など必要な添加剤を適宜に添加した樹脂組成物で発泡性樹脂層を形成しているので、前記(3)〜(7)に記載した難燃性、耐カール性、カレンダー成形における加工性、発泡性、耐スクラッチ性など総ての項目で良好な結果が得られた。
【0039】
これに対して比較例1の化粧シートは、前記エチレン系共重合樹脂中のコモノマーの含有量が25重量%で多く、且つ、エチレン系共重合樹脂のMFRが7と大きいため、加工性と発泡性の点でやや劣り、比較例2の化粧シートは、前記コモノマーの含有量が16重量%で少なく、且つ前記MFRが7と大きいため、難燃性と耐カール性に劣り、加工性、耐スクラッチ性でもやや劣っている。
また、比較例3の化粧シートは、前記MFRが5でやや大きいため、加工性と発泡性の点でやや劣り、比較例4の化粧シートは、前記コモノマーの含有量が26重量%と大きいため、加工性、発泡性に劣り、耐スクラッチ性もやや劣っている。そして、比較例5の化粧シートは、前記コモノマーの含有量が16重量%と少ないため、難燃性、耐カール性、加工性に劣り、耐スクラッチ性にもやや劣っていた。
以上のように比較例1〜5の化粧シートは、いずれも前記(3)〜(7)に記載した項目のうち、少なくとも二つの項目で劣っており、実施例1〜4の化粧シートは明らかに性能に優れていた。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、壁紙や床材、天井材などの建築物の内装材、その他家具、家電製品などの表面被覆材、レザー、ブックカバーの表面材など広範囲の用途に使用できる化粧シートであって、その中間層などにエチレン系共重合樹脂を用いた樹脂組成物による発泡性樹脂層が積層され、その加工性、発泡性、耐カール性、耐スクラッチ性、難燃性などの性能に優れると共に、柔軟性、触感もよく、且つ、その構成材料にポリ塩化ビニル系樹脂や塩素、臭素などのハロゲン元素を含む化合物を使用していないので、火災や使用後の焼却などで燃焼させた際にも塩酸ガスや塩素ガスなどの有害ガスを発生することがなく、安全性、環境適性にも優れた化粧シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の構成を示す模式断面図であり、(イ)は発泡前の模式断面図、(ロ)は加熱発泡後の模式断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの別の一実施例の構成を示す模式断面図であり、(イ)は発泡前の模式断面図、(ロ)は加熱発泡させ、更にエンボス加工を施した後の模式断面図である。
【符号の説明】
1 基材(裏打ち層)
2 発泡性樹脂層
3 印刷インキ層(絵柄印刷層)
4 プライマー層
5 保護層
A 発泡セル
B エンボス部
10、20 化粧シート
Claims (5)
- 基材(裏打ち層)の上に少なくとも発泡性樹脂層と印刷インキ層とを積層した積層体を加熱発泡させてなる化粧シートにおいて、該発泡性樹脂層が、エチレンと一般式(1)
CH2=CR1COOR2 (1)
〔式中、R1はHまたはCH3であり、R2はアルキル基である。〕で表されるアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合してなるエチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂を主成分とし、これに少なくとも発泡剤を添加してなる樹脂組成物で形成されると共に、該エチレン・アクリル系共重合樹脂もしくはこれらの混合樹脂、またはこれらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしたエチレン系共重合樹脂のMFRが1.8以上4.5以下であり、且つそれらのエチレン系共重合樹脂におけるエチレンに対するコモノマーの含有量が17〜24重量%であることを特徴とする化粧シート。 - 前記発泡性樹脂層のエチレン・アクリル系共重合樹脂が、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
- 前記発泡性樹脂層に難燃剤が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
- 前記発泡性樹脂層と印刷インキ層の間にプライマー層が設けられ、印刷インキ層の上に保護層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧シート。
- 前記化粧シートの表面にエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧シート。
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