本発明は、画像データが存在しない画素であって予備吐出を行うべき画素の近傍にある画素に画像データが存在する場合には、近傍画素にインク吐出を実行しないようにし、しかも予備吐出を行うべき画素にはインク吐出を実行するようにしたものである。これにより、予備吐出ドットとその近傍の画像ドットとの混在を軽減し、これら両ドットが混在することで生じる画像の濃度変化を軽減するものである。以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンタIJRAを示す斜視図である。図において、キャリッジHCはインクが収納されたインクタンクITと記録用紙等の記録媒体Pに向けてインクを吐出する記録ヘッドを内蔵した一体型インクジェットカートリッジIJCとを搭載する。
記録用紙Pは、インクジェットカートリッジIJCに対向して配置された紙押さえ板5002により、回転自在に設けられたプラテン5000に押圧される。キャリッジHCは、駆動モータ5013の回転が駆動力伝達ギア5009から5011を介してリードスクリュー5005の螺旋溝に5004に対して係合さる。そして、キャリッジHCはピン(不図示)を有し、ガイドレール5003に支持されて矢印a及びb方向に往復移動する。
キャリッジHCの移動方向の一端にはレバー5006が設けられ、記録装置内に設けられた2つのフォトカプラ5007,5008によりレバー5006の存在を確認し、モータ5013の回転方向の切換え等を行うためにホームポジションを検知する。
キャリッジHCは、プリント開始時またはプリント中に必要に応じてホームポジションで停止する。このホームポジションには、インクジェット記録ヘッドの吐出口が設けられた面(吐出口面)をキャッピングするキャップ部材5022が支持部材5016で支持される。そして、キャップ内を吸引する吸引器5015でキャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。
クリーニングブレード5017は、部材5019により前後方向に移動可能であり、本体支持部材5018はこれらを支持する。
また、レバー5021は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーであり、キャリッジHCと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチの切換え等の伝達機構で移動制御される。
図2は、本実施形態における、データ処理を行うための制御構成について示したブロック図である。
200はホスト装置を、240は記録装置本体を、210はイメージコントローラを、220はプリントエンジンをそれぞれ示す。イメージコントローラ210は、ホストから送られた記録データを受信バッファとして格納し、また、後述する各種画像処理で記録データを格納するメモリ機能を含むコントローラとして使用される。記録装置本体240では、ROMα227に格納されたプログラムに基づき、キャリッジ駆動系223、搬送駆動系224、回復駆動系225、および記録ヘッド駆動系226等のそれぞれの制御がMPU221により行われる。RAM228は、MPU221の作業領域や、一時的にデータを保存する領域として使用される。各制御は、ASIC222を介して行われ、また、ASIC222を介してプリントバッファ229およびマスクバッファ230への読み書きが可能である。
プリントバッファ229は、記録ヘッドへ転送可能な形式に変換された記録データを一時的に保管するするバッファメモリであり、本実施形態では、ヘッド1スキャン分の記録データを格納する。また、マスクバッファ230には、記録モードに応じたマルチパス記録用のマスクパターンが一時的に格納される。そして、マルチパス記録を行う際に、プリントバッファ229格納された記録データと、マスクバッファ230に格納されたマスクパターンとにより、各記録走査で実際に記録ヘッドが記録を行うデータを決定する。なお、1パス記録の場合には、マスクパターンは必要でないため、このような処理は行わない。
ROMβ231には、2値化された記録データに付与される予備吐出パターンが予め格納されている。MPU221はASIC222を介してROMβに格納されたパターンデータを読み出し、予備吐出パターンの付加をすることができる。
具体的には、記録装置本体240の外部に接続されたホスト装置200からイメージコントローラ210の受信バッファに画像データが入力されることにより記録動作が開始される。画像データには、記録データの他に、記録品位、マージン情報等の記録に必要な情報も含まれている。プリントエンジン220は、受信した画像データを解析して、各種情報に対応した制御を開始する。このとき、記録データ、記録品位、メディア、マージン情報等は、ASIC222を介してMPU221で処理され、更にRAM228に保持される。この情報は、この後、必要な状況において適宜参照され、処理の切り分けに利用される。更に、記録品位、メディアの情報によって記録モードが決定され、ROMα227の中から、対応する記録モードのマスクパターンが読み出されて、マスクバッファ230への書き込みも行われる。
記録データは、ホスト装置200から送られ、イメージコントローラ210で受信した段階では、濃度情報を有する多値データである。
プリントバッファ229に1スキャン分の記録データが蓄積されると、MPU221はASIC222を介して搬送駆動系224を駆動して記録媒体の給紙動作を、キャリッジ駆動系223を駆動して必要に応じて回復動作をそれぞれ行う。キャリッジが所定の記録開始位置に到達すると、プリントバッファ229に保持されている記録データが吐出タイミングに合わせて順次読み出され、記録ヘッド駆動系226を通じて記録ヘッドに転送される。
図3は、データの流れを示すブロック図である。MPU221の制御の下、イメージコントローラ210では、R、G、Bの8ビットデータを記録装置特有のR´、G´、B´の8ビットデータに変換する(色変換処理500)。次いで、R´、G´、B´の8ビットデータをC,M,Y,Kの8ビットデータに変換する(色分解処理510)。次いで、C,M,Y,Kの8ビットデータをC,M,Y,Kの4ビットデータに量子化する(量子化処理520)。次いで、インデックスパターンを用いて、C,M,Y,Kの4ビットデータをC,M,Y,Kの1ビットデータ(2値の画像データ)に変換する(インデックス展開処理530)。さらに、この2値の画像データに、MPU221を用いて、後に詳述する紙面予備吐データを付加して、最終的に記録ヘッドに転送可能なデータ形態とし、この段階でデータはプリントバッファ229に書き込まれる。
図4は、記録ヘッド1スキャンの処理の流れを示すフローチャートである。
イメージコントローラ210において、R,G,BデータからC,M,Y,Kの2値の画像データを生成する(S110)。次いで、2値の画像データに1スキャン分の予備吐出データを付加する(S115)。予備吐出データが付加されたデータを記録ヘッドに転送し、記録ヘッドを走査させて記録を行う(S120)。
次に、本発明の第一の実施形態に係る予備吐出データの付加方法について説明する。
実際には、A4サイズの記録媒体では、1200dpiの画像密度で記録されることから、A4サイズ1ページあたり約10000×16000の画素について記録が行われるが、図示および説明を簡単にするために、16×16の画素配列として説明する。
図5(a)〜(d)は、16×16の画素配列の画像データに対して予備吐出データを付加等する過程を示す図であり、C,M,Y,Kの記録ヘッドのうち1つの記録ヘッドの予備吐出データを付加等する過程を示している。このうち、図5(a)は、2値の画像データを示す図である。ここで、「◎」は、画像データが吐出“1”であること、すなわち、その画素に画像を構成するドットが形成されることを意味している。図5(b)は、ROMβ231に予め格納されている予備吐出データのパターン(2値の予備吐出データ)を示す図である。ここで、「○」は、予備吐出データが吐出“1”であること、すなわち、その画素に予備吐出によるドットが形成されることを意味している。図5(c)は、図5(a)に示すデータと図5(b)に示すデータとの論理和データの配置、並びに、図6のデータ処理を行っていく過程について説明するための図である。このような論理和処理によれば、画像データと予備吐出データが同じ画素に存在する場合であっても、その画素には1ドットしか記録されず、画像を構成するドットと予備吐出によるドットが同じ画素で重ねることはない。つまり、画像データと予備吐出データの論理和を取るということは、画像データと予備吐出データのいずれか一方を削除することを意味している。図5(d)は、図6に示すデータ処理を行った後、実際に記録ヘッドからインクが吐出される吐出データを示す図である。
図6は、本実施形態の予備吐出データを付加等する処理を示すフローチャートである。
以下では、記録ヘッドの主走査方向をx、副走査方向(記録ヘッドのノズル配列方向)をyとするとき、図5に示す、1スキャン分の画像データ等は、x方向に0からXmax(図5では「15」)とし、y方向に0からYmax(図5では「15」)とする。また、図5(a)に示す画像データにおいて画素位置(x,y)の画像データをA(x,y)で示し、図5(b)に示す予備吐出パターンにおいて画素位置(x,y)の予備吐出データをB(x,y)で示す。この予備吐出データは、予備吐出を行う予定の画素に対応したものである。同様に、図5(c)に示す論理和データをC(x,y)で示し、図5(d)に示す吐出データをD(x,y)で示す。図6に示す処理は、x方向において、x=Xmaxからx=0に向かって1画素ずつ予備吐出データの付加等を検討して行き、y方向の処理をy=0からy=Ymaxに向かって順次1画素増やしながら、1スキャン分のデータ全体について、予備吐出データの付加等を決定して行く。
まず、ステップS1およびステップS2で、y=0およびx=Xmaxとする。すなわち、最初の処理対象画素を定める。
次に、ステップS3において、処理対象となっている画素に、図5(b)に示したパターンにおける予備吐出データ(「○」印:“1”)があるか否かを判断する。すなわち、B(x,y)=0であれば、予備吐出データは対象画素にないことから、予備吐出を行う必要はなく、ステップS16に進み、次の座標の画素の処理に移動する。
一方、ステップS3においてB(x,y)=1であれば、ステップS4に進む。ステップS4では、対象となっている画素に、画像データがあるか否かを検出する。A(x,y)=1である場合、すなわち、画像データ(「◎」印:“1”)が存在する場合、ステップS16に進み、次の座標の画素の処理に移る。なお、ステップS4においてA(x,y)=1であると判断されたということは、処理対象画素に画像データと予備吐出データが存在することを意味する。この場合であっても、画像を構成するドット(画像ドット)と予備吐出によるドット(予備吐出ドット)がこの画素で重ねることはない。その理由は、画像データと予備吐出データとの論理和が実行されるからである。このように本実施形態によれば、画像ドットと予備吐出ドットが同じ画素で重なることはないので、これら両ドットが重なることで生じる濃度増加を抑制できる。
例えば、図5に示すように、(x,y)=(3,1)の画素では、画像データ及び予備吐出データが存在し、A(3,1)=1,B(3,1)=1である。かかる場合、予備吐出が必要な画素に画像データが存在するから、画像データをそのままとして、C(3,1)=1とする。この結果、吐出データD(3,1)=1となる。
ステップS4でA(x,y)=0と判断されると、ステップS5に進む。ここでは、対象となる画素の次の画素(X+1)から右方向Xmaxまでに画像データがあるか否かを判断する。
すなわち、記録ヘッドが主走査する方向においてその対象画素以降の画素に画像データがないときは、その走査では最早記録が行われないから一発目特性を考慮した紙面予備吐出をする必要がない。すなわち、その画素以降、予備吐出をせずに、後述の一発目特性が悪くなる限界の距離(時間)を超え、実際に一発目特性が悪くなることがある。しかし、一発目特性の悪化は、吐出不良という程のものではなく、比較的軽微なものである。この点から、本実施形態では、この特性の悪化に対して特別の処理は行わない。そして、この特性悪化は、次の走査における記録のために吐出ないし紙面予備吐出によって(それらの吐出自体は、一発目特性は悪化しているが)、回復する。なお、より重大な吐出不良に対応した通常の予備吐出は別途行われることは勿論である。例えば、所定数の走査毎に記録媒体外の場所に移動して通常の予備吐出を行ってもよく、特に大きい用紙に記録を行う場合にこの構成は有効である。
このようにステップS5で、A(x+1,y)からA(Xmax,y)の間に画像データがないと判断したときは、予備吐出データB(x、y)=1は削除されてC(x,y)=0(図5(c)における「○」に「×」印)となる。その結果、最終的な吐出データは、D(x,y)=0となる(S15)。
例えば、図5に示すように、(x,y)=(8,0)や(x,y)=(10,14)では、B(x,y)=1であるが、(8+1,0)から(15,0)の間や(10+1,14)から(15,14)の間には、画像データA(x,y)=1がない。かかる場合には、ステップS15で、C(x,y)=0とされて対象画素の予備吐出データが削除され、吐出データはD(x,y)=0となる。このようにステップS5は、上記予備吐出を行う予定の画素のうち、予備吐出を行う必要がない画素を除くために、この画素を画像データに基づいて判定するためのステップである。
ステップS5で、画像データがあると判断したときは、ステップS6に進む。ステップS6では、x方向における対象画素の前後の画素で画像データがある画素、すなわち、A(x,y)=1となる画素の間隔Lが一発目特性に関して予備吐出を行うことが必要な間隔Lmaxより大きいか否かを判断する。すなわち、対象画素が予備吐出を行うべき画素(B(x,y)=1の画素)であっても、主走査方向でのその画素の前後で一発目特性の悪化を生じない間隔(L<Lmax)である場合には、その後の画像データによる吐出の一発目特性は悪化しない。このため、対象画素で予備吐出を行わないようにすべく、ステップS15で予備吐出データB(x、y)=1は削除されて、C(x,y)=0とする。その結果、吐出データはD(x,y)=0となる。なお、間隔Lの検出に際して、x方向左側(前方)の画素に画像データが無い場合、x=0の画素を含めて処理対象画素までの画素数を間隔Lとする。
本実施形態では、予備吐出を行わなければならない画素数Lmax=8とする。よって、ステップS6では、対象画素の前後で画像データがない画素数Lとの関係が、L<Lmaxであれば、ステップS15でC(x,y)=0となり、吐出データはD(x,y)=0となる。このようにステップ6は、上記予備吐出を行う予定の画素のうち、予備吐出を行う必要がない画素を除くために、この画素を画像データに基づいて判定するステップである。
一方、ステップS6において、X方向における対象画素の前後の画素で画像データがある間隔L≧Lmaxであると判断されれば、ステップS7に進む。ステップS7では、処理対象画素(x、y)と隣接する所定の4画素に、画像データがあるか否かを判断する。対象画素と隣接する4画素は、それぞれ、A(x−1,y−1)、A(x,y−1)、A(x+1,y−1)、A(x+1,y)とする。かかる4画素に画像データがない場合には、ステップS14により、D(x,y)=1となる。つまり、予備吐出を行うべき画素の隣接画素に画像データが存在しない場合、前記予備吐出を行うべき画素にインク吐出が行われるようにデータ処理を行う。
例えば、対象画素(6,10)では、B(6,10)=1であるが、画素(6,10)の4つの隣接画素では、A(5,9)=0,A(6,9)=0,A(7,9)=0,A(7,10)=0で、画像データがない。したがって、この対象画素(x,y)=(6,10)に予備吐出を行うこととなり、最終的な吐出データはD(x,y)=1となる。
一方、所定の隣接する4画素に画像データがある場合には、ステップS8からステップS12で移動するデータを検出する。
ステップS8では、隣接する画像データの候補を設定する。ここで、上記4つの隣接画素のうちの移動データの候補をA(X,Y)とする。すなわち、候補データの画素が(x−1,y−1)の場合、X=x−1,Y=y−1とする。次のステップS9では、A(X+1,Y)からA(Xmax,Y)に画像データが存在するか否かを判断する。画像データがない場合には、隣接画素A(X,Y)の画像データを対象画素(x,y)に移動する。すなわち、画素(X,Y)においてC(X,Y)=0とし、最終的な吐出データをD(X,Y)=0と設定し(ステップS13)、対象画素(x,y)においてD(x,y)=1と設定する(ステップS14)。
ステップS9で、A(X+1,Y)からA(Xmax,Y)に画像データが存在する場合には、ステップS6と同様の判断を行う。すなわち、隣接画素(X,Y)を含む前後の画素で画像データが存在する画素の間隔L´が、予備吐出を行わなければならない間隔Lmaxより大きいか否かを判断する(ステップS10)。
隣接画素の前後で画像データがない画素数L´との関係が、L´<Lmaxであれば、隣接画素の画像データA(X,Y)=1を対象画素(x,y)に移動する。すなわち、隣接画素にはインク吐出が実行されないように設定し、且つ予備吐出を行うべき対象画素にはインク吐出が行われるように設定する。具体的には、C(X,Y)=D(X,Y)=0に設定し(ステップS13)、D(x,y)=1に設定する(ステップS14)。なお、本実施形態において、上述した「画像データの移動」は、「画像データの削除」と「画像データと予備吐出データとの論理和」により実現される。
例えば、対象画素(8,8)では、A(8,8)=0,B(8,8)=1であり、L≧Lmaxであることから、ステップS7に進む。そして、所定の隣接する4画素のうち、(8,7)に画像データがあることから、移動データの候補はA(8,7)となる。そして、ステップS9でA(X+1,Y)からA(Xmax,Y)に画像データが存在するか否かを判断する。その結果、A(9,7)からA(15,7)の間にある(15,7)に画像データが存在する。したがって、ステップS10に進む。ここで、L´>Lmaxか否かを判断すると、(8,7)を含む前後の画素で画像データが存在する画素の間隔が予備吐出を行わなければならない間隔Lmaxより大きいので、他の候補を検出する(ステップS11)。候補データとなる所定の隣接する他の画素には画像データがないことから、D(8,8)=1に設定し(ステップS14)、次の対象画素の処理に進む。このように予備吐出を行うべき画素の隣接画素に画像データが存在する場合、隣接画素にはインク吐出が実行されないようデータ処理を行い且つ予備吐出を行うべき画素にはインク吐出が行われるようにデータ処理を行う。
一方、L´≧Lmaxの場合には、他の移動データがある否かを検出し(S11)、データがある場合には、ステップS12を経て、ステップS9からデータを移動するか否かを判断する。このように隣接画素の画像データを予備吐出データとして移動することにより、画像データに予備吐出データを隣接して記録する場合に生じ得る濃度の局部的な変化を軽減することができる。
一方、ステップS11においてデータがない場合には、予備吐出データB(x,y)=1をそのまま反映し、D(x,y)=1とする。
例えば、(x,y)=(11,9)において、A(11,9)=0,B(11,9)=1である。そして、所定の隣接する4画素A(10,8)=0,A(11,8)=0,A(12,8)=1,A(12,9)=1である。ここで、A(12,8)=1,A(12,9)=1であるが、データの検索順により先に検索された(12,8)の画像データを優先して移動データを決定している。(12,8)の画像データを(11,9)に移動し、D(12,8)=0に設定し(ステップS13)、D(11,9)=1に設定する(ステップS14)。
なお、所定の隣接する4画素に、複数の画像データがある場合、データの決定方法は上記方法に限定されない。例えば、他の周辺の画素の量等により移動データを決定してもよく、データの決定手段は他の方法を用いてもよい。
上のステップS3からステップS15までの工程を、x方向に全ての画素について行い(S16)、x方向に画素がなくなると(S17)、y方向に1画素進む(S18)。y方向に関して全ての画素について終了すると(S19)、予備吐出データを付加する工程を終了する。なお、図6では、予備吐出位置にインク吐出を行い且つ予備吐出位置の近傍にはインク吐出を行わないようにするために、近傍画素の画像データを予備吐出位置へ移動している。しかし、本実施形態では、予備吐出データが予め用意されているので、近傍画素の画像データをわざわざ移動させなくとも、その画像データを削除するだけで、予備吐出位置にインク吐出を行い且つ予備吐出位置の近傍にはインク吐出を行わないことを実現できる。従って、このような構成も本実施形態に含まれる。この場合、「画像データの移動」を実行する代わりに、「近傍画素の画像データの削除」と「画像データと予備吐出データとの論理和処理」を実行すればよい。
以上の工程により生成された吐出データは、プリントバッファ229に送られる。
図7は、プリントバッファの内容を示すブロック図である。図に示すように、プリントバッファはヘッド1スキャン分の容量を有しており、プリントバッファの容量202の内部はブロック203から212の10ブロックに分割されている。プリントバッファの内部の容量に一定のデータが蓄積されると、MPU221はASIC222を介して搬送駆動系224により記録媒体の給紙動作を開始する。そして、キャリッジ駆動系223によりキャリッジが移動し、必要に応じて回復駆動系225により回復駆動して記録前に必要な回復動作を行う。そして、ASIC222に対して画像の出力位置等の設定を行い、記録動作を開始する。キャリッジが移動して、記録開始位置に到達すると、プリントバッファに格納された記録データが、吐出タイミングに合わせて順次読み出され、記録ヘッドに吐出データを転送することにより、記録が行われる。
以上の一連の動作を繰り返すことにより、記録媒体上に順次画像が形成されることとなる。
以上説明したように、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍にある画素に画像データが存在する場合には、その近傍画素にインク吐出が実行されないようにデータ処理を行う。例えば、近傍画素の画像データを削除するのである。一方、近傍画素に画像データが存在するか否かに関わらず、予備吐出位置にはインク吐出が実行されるようにデータ処理を行う。これによれば、必要な予備吐出を実行しつつも、予備吐出ドットとその近傍の画像ドットが混合することを抑制できる.その結果、画像ドットと予備吐出ドットが混在することによって生じる濃度変化を軽減することができる。
なお、本実施形態は、図6に示した全ての処理(ステップS1〜S19)を実行する形態に限られるものではなく、一部の処理を省略することも可能である。例えば、上述した通り、本実施形態の特徴は、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍の画素に画像データが存在する場合に、その近傍画素の画像データを削除(移動)することにある。従って、この特徴事項そのものに対応しない処理、例えば、ステップS5、S6、S15等の処理は省略しても構わない。但し、ステップS5、S6を実行しない場合、予備吐出を行う予定の画素が「予備吐出を行うべき画素」になり、予備吐出ドットが比較的多くなる。一方、ステップS5、S6を実行する場合、予備吐出を行う予定の画素のうち、画像データに基づいて予備吐出を行う必要がないと判定された画素を除いたものが「予備吐出を行うべき画素」になり、予備吐出ドットを少なくできる。
また、本実施形態は、図6に示した処理(ステップS1〜S19)の一部を他の処理に置き換えることも可能である。例えば、ステップS7では、移動(削除)するデータ候補を予備吐出位置に隣接した画素の中から選択しているが、この形態に限られるものではない。移動(削除)するデータ候補を選択するにあたり、予備吐出位置には隣接していないが、予備吐出位置から数画素以内に存在する画素(近接画素)の中から選択する構成であってもよい。
(実施形態2)
実施形態1では、予備吐出データをROMに予め格納しておき、ROMから読み出した予備吐出データと画像データに基づいて2値の吐出データを作成した。しかしながら、この実施形態2では、予め予備吐出データを有さず、画像データを参照しながら、予備吐出データを付加することにより、吐出データを作成する。なお、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍にある画素に画像データが存在する場合には、当該近傍画素にはインク吐出が実行されないようデータ処理を行う点はこの実施形態2でも同様である。
図8は、本実施形態における、画像処理を行うための制御構成について示したブロック図である。実施形態1で説明した図2に示す制御構成と、紙面予備吐出データを予め格納するROMβを有していない点を除くと、同一の構成になっている。
ここで、本発明の第二の本実施形態に係る予備吐出データの付加方法について説明する。
以下、実施形態1と同様に、図示および説明を簡単にするために、16×16の画素配列として説明する。
図9(a)〜(c)は、16×16の画素配列の画像データに対して予備吐出データを付加等する過程を示す図であり、C,M,Y,Kの記録ヘッドのうち1つの記録ヘッドの予備吐出データを付加等する過程を示している。このうち、図9(a)は、画像データを示す図である。ここで、「◎」は、画像データが吐出“1”であること、すなわち、その画素にドットが形成されることを意味している。図9(b)は、図9(a)に予備吐出データを付加したデータの配置、並びに図10のデータ処理を行っていく過程について説明する図である。図9(c)は、図10に示すデータ処理を行った後、実際に記録ヘッドからインクが吐出される吐出データを示す図である。
図10は、本実施形態の予備吐出データを付加等する処理を示すフローチャートである。
以下では実施形態1と同様に、記録ヘッドの主走査方向をx、副走査方向(記録ヘッドのノズル配列方向)をyとするとき、図9に示す、1スキャン分の画像データ等は、x方向に0からXmax(図9では「15」)とし、y方向に0からYmax(図9では「15」)とする。また、図9(a)に示す画像データにおいて画素位置(x,y)の画像データをA(x,y)で示し、図9(b)に示すデータをC(x,y)で示す。さらに、図9(c)に示す吐出データをD(x,y)で示す。
図10に示す処理は、x方向において、x=0からx=Xmaxに向かって1画素ずつ予備吐出データの付加等を検討して行き、y方向の処理をy=0からy=Ymaxに向かって順次1画素増やしながら、1スキャン分のデータ全体について、予備吐出データの付加等を決定して行く。
まず、ステップS201で、y=0、x=0およびL=0とする。すなわち、最初の処理対象画像を定める。
次に、処理対象となる画素に画像データ(「◎」印:“1”)があるか否かを判断する(S202)。画像データが存在する場合には、D(x,y)=1とし、ステップS212によりL=0として、次の座標の画素処理に移動する。対象画素に画像データが存在しない場合には、L≧Lmaxか否かを判断する(S203)。
本実施形態では、X方向における対象画素の前後の画素で画像データが存在する間隔をLとし、予備吐出を行わなければならない画素数Lmax=8とする。よって、ステップS203では、L≧Lmaxであれば、ステップS204に進む。一方、一発目特性の悪化を生じない間隔L<Lmaxであれば、ステップS215によりL=L+1とし、次の座標の画素処理に移動する。
ステップS204では、対象となる画素から右方向Xmaxまでに画像データがあるか否かを判断する。画像データがある場合には、その処理対象画素に予備吐出を行う必要があるのでステップS205へ進む。一方、ステップS204において画像データがないと判断されれば、その画素ラインでは予備吐出を行う必要がないので、処理対象のラインが他に存在するか否かを判断する(ステップS214)。処理対象のラインが他に存在するかと判断されれば、処理対象を次の画素ラインに移動する(ステップS217)。例えば、対象画素(11,1)では、L=Lmax=8であるが、主走査方向に(12,1)から(Xmax,1)の画素には、画像データがないため、D(11,1)=0となり、S217を経て、処理対象を次の画素ラインへ移すの。
ステップS205では、処理対象画素の近傍の画素に、画像データがあるか否かを判断する。ここで、ステップS204で説明した通り、このステップS205における処理対象画素は予備吐出を行う必要がある画素である。従って、このステップS205では、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍にある画素に画像データが存在するか否かを判断していることになる。なお、本実施形態では、対象画素の近傍の画素を、主走査方向に(x−L,y−1)から(x,y−1)としている。これらの近傍画素に画像データがない場合には、近傍画素からのデータ移動が不可であるため、ステップS211においてD(x,y)=1とし、この処理対象画素に予備吐出データを付加する。一方、(x−L,y−1)から(x,y−1)に画像データがある場合にはステップS206からステップ209で移動するデータを検出する。
ステップS206では、上述した近傍の画像データの中から画像データの候補を設定する。移動データの候補をA(X,Y)とする。次のステップS207では、近傍画素の画像データA(X,Y)を含む前後の画素で画像データが存在する画素の間隔が、予備吐出を行わなければならない間隔Lより大きいか否かを判断する。画素の間隔がL未満であれば、近傍画素の画像データA(X,Y)を対象画素(x,y)に移動する。すなわち、C(X,Y)=D(X,Y)=0と設定し(S210)、D(x,y)=1と設定する(S211)。このように近傍画素の画像データを処理対象画素に移動することで、処理対象画素に予備吐出を行うことを可能としている。そして、S212でL=0となり、次の座標の画素処理に移動する。
一方、S207において画素の間隔がL以上であれば、他の移動データの候補があるか否かを検出し(S208)、データがあればS209を経て、次の移動データの候補についても同様の処理を行う。以上のようにステップS207〜S209によれば、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍画素の画像データを予備吐出位置に移動することで、必要な位置での予備吐出を可能としている。なお、この「画像データの移動」は、画像データの削除と予備吐出データの付加により実現される。
例えば、(x,y)=(10,5)において、A(10,5)=0であり、L=8である。そして、処理対象画素の近傍にある画素(x,y)=(2,4)から(10,4)において、A(6,4)=A(7,4)=A(8,4)=A(9,4)=A(10,4)=1である。そして、xの値が処理対象画素のxの値と最も近い(10,4)の画像データを優先的に移動データの候補と決定する。そして、移動候補である画像データA(10,4)を含む前後の画素の画像データが存在する画素の間隔は0であることから、(10,4)の画像データを(10,5)に移動する。そして、D(10,4)=0と設定し(S210)、D(10,4)から移動した画像データD(10,5)=1と設定する(S211)。
なお、近傍画素に複数の画像データがある場合、どの画像データを優先的に処理するかは、特に限定されるものではない。
以上のステップS210からステップS212までの工程を、x方向に全ての画素について行い(S216)、x方向に画素がなくなると(S213)、y方向に1画素進む(S217)。y方向に関して全ての画素について終了すると(S214)、予備吐出データを付加する工程を終了する。
以上説明したように本実施形態では、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍にある画素に画像データが存在する場合、その近傍画素にインクが吐出されないようにデータ処理を行う。一方、予備吐出位置には、近傍画素に画像データが存在するか否かに関わらず、インクが吐出されるようにデータ処理を行う。これにより、必要な予備吐出を実行しつつも、予備吐出ドットと画像ドットとの重なりを軽減し、これら両ドットが混在することで生じる画像の濃度変化を軽減することができる。
(実施形態3)
実施形態1および実施形態2では、プリンタバッファ229は1スキャン分のメモリ容量を有していたが、プリンタバッファ229は、1スキャン未満のメモリ容量、例えば、1スキャンの半分のメモリ容量を有していてもよい。
図11は、本実施形態のプリントバッファの内容を示すブロック図である。図に示すように、プリントバッファの容量202の内部はブロック203から207の5ブロックに分割されている。プリントバッファの内部の容量に一定のデータが蓄積されると、MPU221はASIC222を介して搬送駆動系224により記録媒体の給紙動作を開始する。そして、読み出しが終了するごとに、次のブロックのデータを保存して、メモリをトグル式に使用する。また、イメージコントローラについても、メモリ容量が1スキャン分より少ないため、1スキャン分のデータを分割して順次データ処理をする。
本実施形態では、1走査開始時に、1走査終了までの画像データを参照できないことから、限られたブロック内で画像データを参照して、画像データに予備吐出データを付加して、記録データを作成する。
ここで、本実施形態に係る予備吐出データの付加方法について説明する。この実施形態3においても、上記実施形態1、2と同様、画像データが存在しない予備吐出位置の近傍にある画素に画像データが存在する場合、その近傍画素にある画像データを予備吐出位置に移動する。
以下、実施形態1および実施形態2と同様に、図示および説明を簡単にするために、16×16の画素配列として説明する。
図12(a)〜(c)は、16×16の画素配列の画像データに対して予備吐出データを付加等する過程を示す図であり、C,M,Y,Kの記録ヘッドのうち1つの記録ヘッドの予備吐出データを付加等する過程を示している。このうち、図12(a)は、画像データを示す図である。ここで、「◎」は、画像データが吐出“1”であること、すなわち、その画素にドットが形成されることを意味している。図12(b)は、図12(a)に予備吐出データを付加したデータの配置、並びに図13のデータ処理を行っていく過程について説明するための図である。図12(c)は、図13に示すデータ処理を行った後、実際に記録ヘッドからインクが吐出される吐出データを示す図である。
図13は、本実施形態の予備吐出データを付加等する処理を示すフローチャートである。
以下では実施形態1および実施形態2と同様に、記録ヘッドの主走査方向をx、副走査方向(記録ヘッドのノズル配列方向)をyとする。そして、図12に示す1スキャン分の画像データ等は、x方向に0からXmax(図12では「15」)とし、y方向に0からYmaxとする。また、図12(a)に示す画像データにおいて画素位置(x,y)の画像データをA(x,y)で示し、図12(b)に示すデータをC(x,y)で示す。さらに、図12(c)に示す吐出データをD(x,y)で示す。
図13に示す処理は、x方向において、x=0からx=Xmaxに向かって1画素ずつ予備吐出データの付加等を検討して行き、X方向の処理をy=0からy=Ymaxに向かって順次1画素増やしながら、1スキャン分のデータ全体について、予備吐出データの付加等を決定して行く。
本実施形態では、実施形態2とほぼ同様の処理を行うが、ステップS205の処理を行わない。すなわち、記録ヘッドが主走査する方向においてその対象画素以降画像データがないときであっても、C(x,y)=D(x,y)=0とはせず、移動データの候補を検出する(S304)。
そして、処理対象画素と隣接する所定の4画素に、画像データがあるか否かを判断し(S304)、移動が可能である画像データを移動する(S305からS310)。ここで、所定の4画素としては、実施形態1で説明した4画素と同様である。
図14は、記録ヘッド1走査の処理の流れを示すフローチャートである。分割されたプリントバッファの内部はブロック203から207の画像データに予備吐出データを付加し、それにより作成された記録データ(吐出データ)を入力する。そして、かかるデータを記録ヘッドに送ることにより、記録ヘッドを走査する。出力が終了したブロックがあれば、次のブロックデータの処理へと移る。全てのブロックの処理が終了したら、記録ヘッド1スキャンの処理が終了する。
以上の構成により、プリントバッファ229のメモリ容量が少ない場合であっても、本発明を適用することができる。したがって、メモリ容量の大小にかかわらず、紙面予備吐出の必要な位置と近接した画素の画像データを移動することにより、画像劣化を最小限に抑えることができる。
(他の実施形態)
上述した実施形態1から3は、いわゆる一発目特性に対応した紙面予備吐出の例について説明した。このため上述の各実施形態では、1走査ごとに説明した本発明の実施形態に係る紙面予備吐出とは別に、吐出不良を防止するための通常の予備吐出を行う等のものとした。本発明の適用は、このような形態に限られないことはもちろんである。記録直前や記録途中に定期的な間隔で記録用紙外においてインク吐出を行う通常の予備吐出の代わりに、あるいはこれと併せて、一般的な吐出不良を防止する目的で紙面予備吐出を行う構成であってもよい。
かかる場合には、図6の処理では、基本的にステップS5、S9の処理を省くことにより実現することができる。また、この場合、ステップS6、S10の判断で用いるパラメータL、L´は、次およびそれ以降の主走査で記録する画素列も含んで求められるものである。
これにより、記録用紙外に予備吐出を行わないような構成であっても、紙面予備吐出の必要な位置と近接した画素の画像データを移動することにより、画像劣化を最小限に抑えることができる。
上述した実施形態1〜3では、紙面予備吐出を行うためのデータ処理を記録装置内で行う場合について説明した。しかし、本発明はこの形態に限られず、例えば、上記データ処理を記録装置に接続されるホスト装置で行う形態であってもよい。この場合、ホスト装置にインストールされたプリンタドライバとホスト装置のCPUによって、上記データ処理が実行されることになる。このように紙面予備吐出を行うためのデータ処理を行う装置は記録装置であってもよいし、ホスト装置であってもよい。
上述した実施形態1〜3では、記録ヘッドを記録媒体に対して移動(走査)させながら記録を行うシリアル型プリンタを用いる場合について説明したが、本発明が適用可能なプリンタはシリアル型プリンタに限られるものではない。記録媒体の全幅に亘る長さのラインヘッドを用い、このラインヘッドに対して記録媒体を移動(搬送)させながら記録を行うライン型プリンタにも本発明は適用可能である。このように本発明は、記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させながら記録を行うプリンタにおいて適用可能である。