JP4731365B2 - 加熱装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱装置、より詳しくは、半導体デバイスの製造工程で基板として用いられるウエハ又はその他の板状の被加熱材を加熱するための加熱装置及びその製造方法に関する。
半導体デバイスの製造工程においては、半導体製造装置を用いてウエハ上へ酸化膜等を形成するために加熱処理が施される。この半導体製造装置における、ウエハを加熱するための加熱装置には、加熱面を有する円盤状のセラミックス基体中に線状の抵抗発熱体が埋設されたセラミックスヒータがある。このセラミックスヒータは、半導体製造プロセスに使用される成膜装置ばかりでなく、板状の被加熱材の表面をドライエッチングする表面処理装置等に用いられても有利に適合するものである。
セラミックスヒータは、セラミックス基体と、このセラミックス基体を支持するために接合された中空棒材とを備えている。この中空棒材は、中空の円筒形状であり、一方の端面がセラミックス基体における加熱面とは反対側の面(接合面)に、固相接合又は液相接合により固着されている。
このようなセラミックス基体と中空棒材との取付構造に関して、セラミックス基体の接合面と中空棒材の外周面との間にアール部を設けたセラミックスヒータがある(例えば、特許文献1)。
特開2004−247745号公報
従来のセラミックスヒータは、セラミックス基体の接合面と中空棒材の外周面とが、両者の接合部に形成されたアール部の曲面により滑らかに接続されている。このようなセラミックスヒータにおいて、セラミックス基体と中空棒材との接合界面が、このアール部の曲面の面内に接している場合には、この加熱装置の長期間の使用後において、この接合界面がアール部と接している部分からクラックが発生し、このクラックが接合界面に沿って伝播して、セラミックス基体と中空棒材との接合剥がれを起こすことがあった。
そこで本発明は、セラミックス基体と中空棒材との接合界面にクラックが発生することを効果的に防止し、よって信頼性を向上させることのできる加熱装置を、その有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の加熱装置は、板状の加熱基体と、この加熱基体の一方の面に一端面が接合された中空棒材とをそなえ、前記加熱基体は、前記中空棒材との接合部近傍で、この中空棒材の外周面と同一面になる側面部と、この側面部に接続する凹曲面部とを有し、当該加熱基体と前記中空棒材との接合界面の端部が、この加熱基体の側面部と、中空棒材の外周面との間に位置することを特徴とする。
この凹曲面部の曲率半径Rは、1〜10mmであることが好ましい。また、前記凹曲面部は、中空棒材の中心軸線を含む断面で楕円の弧の形状とすることにより、信頼性をいっそう高めることができる。凹曲面部は、好ましくは、Raで0.8μm以下とすることができる。
また、本発明の加熱装置の製造方法は、加熱基体の一方の面に中空棒材の一端面を接合する工程と、この加熱基体と中空棒材との接合部近傍における加熱基体側に形成された凹曲面部を研削加工する工程とを有し、前記研削加工を、研削砥石の粒度を325番以上、送り速度を0.2mm/min以下の条件で行うことを特徴とする。
本発明の加熱装置によれば、加熱基体と中空棒材との接合界面を起点にしてクラックが生じることが抑制され、加熱装置の信頼性を高めることが可能となる。
以下、本発明の加熱装置の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る加熱装置の一実施例の模式的な縦断面図である。同図に示される加熱装置は、加熱基体として円盤状のセラミックス基体11を備えている。このセラミックス基体11の内部には、抵抗発熱体12が埋設されている。この抵抗発熱体12に電力が供給されることにより、抵抗発熱体12が発熱してセラミックス基体11が加熱される。このセラミックス基体11の加熱により、このセラミックス基体11にセットされた被加熱材(例えば半導体ウエハ)が加熱されることになる。この円盤状のセラミックス基体11の一方の面が、被加熱材を取り付けて加熱するための加熱面11aとなり、加熱面11aとは反対側の面は、セラミックス基体11を支持する中空棒材としてのシャフト13が接合される接合面11bとなる。この接合面11bにおける中央部近傍は、周縁部近傍よりも板厚が厚くなっていて、この中央部表面11cにシャフト13が接合される。
シャフト13は、中空の概略円筒形状であり、このシャフト13の内部空間に、セラミックス基体11の抵抗発熱体12に電力を供給するためのリード線や給電棒が配設される。また、セラミックス基体11が静電チャックや高周波電極を有しているときには、セラミックス基体11内に埋設された電極と接続するリード線が、このシャフト13の内部空間に配設される。
シャフト13は、セラミックス基体11と接合する側の端部に、フランジ部13aが形成されていて、このフランジ部13aの外周面13bは図示した縦断面で直線状になっている。フランジ部13aの端面13cをセラミックス基体11の中央部表面11cに突合せた状態で、固相接合又は液相接合により、シャフト13はセラミックス基体11に接合されている。
そして、シャフト13との接合部近傍で、セラミックス基体11は、接合面11bの平面と滑らかに接続する凹曲面部11dを有している。また、セラミックス基体11は、接合されたシャフト13のフランジ部13aの外周面13bと同一面になり、この外周面13b及び上記凹曲面部11dと段差なく、直線的に接続する側面部11eを有している。このため、セラミックス基体11と、シャフト13との接合界面の外周側端部は、このセラミックス基体11の側面部11eと、シャフト13のフランジ部13aの外周面13bとの間に位置することになる。すなわち、従来のセラミックス基体のように、接合界面の端部が、凹曲面部(アール部)の面内に接することはない。
従来の加熱装置であって、セラミックス基体とシャフトとの接合界面の端部が、凹曲面部(アール部)の面内に接している加熱装置に関し、この接合界面の端部からクラックが発生する原因は、加熱装置の使用時における熱応力によると考えられる。詳述すると、抵抗発熱体の発熱によりセラミックス基体は加熱面側では均一に加熱されるが、シャフトと接続している部分は、シャフトへの伝熱により他の部分よりも温度が低くなる。したがって、セラミックス基体には、この温度勾配により半径方向に熱応力が生じ、この熱応力は接合界面の外周側端部で集中するので、クラックが生じるのである。接合界面は一般に、他のバルク部分よりも強度が低いため、いったんクラックが生じると、この接合界面に沿ってクラックが伝播し、最終的にセラミックス基体とシャフトとの接合の剥がれを生じてしまう。また、接合界面は、使用時の雰囲気ガスによる腐食や酸化の影響を受け易く、次第に強度が低下するので、この点でも、接合の剥がれを招いていた。シャフトの内側空間は、通電棒やリード線が配設されるので、これらの通電棒やリード線を腐食性ガスから保護するためにも、接合の剥がれを抑制して、信頼性を高めることが要求される。
従来のセラミックス基体に凹曲面部(アール部)が形成されているのは、この熱応力の集中を緩和するためであるが、このアール部の面内に接合界面が接していた場合には、やはり、クラックが生じる場合があった。
これに対して、図1に示した実施例の加熱装置では、凹曲面部11dは、セラミックス基体側にのみ形成されている。そしてセラミックス基体11は、この凹曲面部11dばかりでなく、シャフト13のフランジ部13aの外周面13bと同一平面になる側面部11eをも有している。そのため、接合界面の端部は、互いに滑らかに接続しているセラミックス基体11の側面部11eとシャフト13の外周面13bとの間に位置している。そして、接合界面は、セラミックス基体11の側面部11e及びシャフト13の外周面13bと垂直に交わる。したがって、接合界面の端部は、接合熱応力に対する耐力が大きく、応力集中が効果的に抑制され、クラックの発生が抑制される。そのため、信頼性を向上させることができる。
凹曲面部11dの曲率半径は、1〜10mmの範囲が好ましい。曲率半径が0.5mmほど極端に小さい場合は、凹曲面部11dを設けた効果が小さくなり、この端部に集中する応力値が高くなり、クラックが発生するおそれがある。また、凹曲面部11dの曲率半径が大きいほど、接合界面の外周側端部に加わる応力値を低減することができるが、大きな曲率半径を確保するためには、セラミックス基体11の加工前の初期厚さを大きくする必要がある。セラミックス基体11の厚さを大きくすることはセラミックス基体11自体の強度の低下を招くおそれがある。なぜなら、セラミックス構造体は、その体積が大きいほど、内部欠陥を含む確率が高くなるためである。そのため、内部欠陥の観点からは、厚さを大きくするには限度がある。しかも、中心付近のみの熱容量が大きくなることから、昇温時に中心温度の上昇が遅れ、中心付近に引張応力が発生して破損しやすくなる。また、凹曲面部11dの形成は、研削加工によりセラミックス基体11の中央部近傍以外の部分を除去することによって行われるので、曲率半径が大きく、そのためセラミックス基体11の研削加工前の初期厚みが大きいほど、加工代が大きくなってコストアップを招く。したがって、凹曲面部11dの曲率半径は10mm以下とすることが好ましい。より好ましい範囲は1〜4mmである。
セラミックス基体11の中央部近傍の厚さは、2〜50mmの範囲が望ましく、5〜30mmの範囲がより好ましい。前に述べた凹曲面部11dの曲率半径は、このセラミックス基体11の厚さよりも小さい値で、このセラミックス基体11の厚さに応じ適切な値として定めることができる。
凹曲面部11dの表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.8μm以下であることが好ましい。発明者らの研究により、同一曲率半径の場合であっても、凹曲面部11dの表面粗さが大きいと、クラックが発生し易いことが判明した。これは、表面粗さが大きいと、表面の凹凸が破壊起点となり易いためと考えられる。凹曲面部11dの表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.8μm以下であることにより、クラックの発生を効果的に抑制し、いっそう信頼性を高めることが可能となる。このような中心線平均粗さRaの調整は、セラミックス基体11の作製時において、凹曲面部を研削加工する際に、研削砥石の粒度を325番以上、送り速度を0.2mm/minの条件で行うことで有利に実現できる。
セラミックス基体11の凹曲面部11dを接合界面から離隔している側面部11eの直線的な長さは、0.5〜2.0mmの範囲が好ましい。側面部11eを長くするにはセラミックス基体の加工前の厚みを大きくすることを必要ととし、加工代が大きくなる。また、側面部11eがあまりに短いと、接合界面が凹曲面部11dと近接してしまい、本発明の効果が十分には得られないおそれがある。
次に、図2を用いて本発明の加熱装置の別の実施例を説明する。
図2(a)は、本発明の加熱装置の別の実施例の模式的な縦断面図であり、同図(b)は、同図(a)のA領域の拡大図である。なお、図2では、図1と同一の部材については、同一の符号を付し、以下では重複する記載を省略する。
図2に示した実施例の加熱装置は、セラミックス基体21とシャフト13とを備えている。このセラミックス基体21は、加熱面21aと、接合面21bとを有し、この接合面21bの中央部近傍は、周縁部近傍よりも板厚が厚くなっていて、この中央部表面21cにシャフト13が接合される。
そして、シャフト13との接合部近傍で、セラミックス基体21は、接合面21bの平面と滑らかに接続する凹曲面部21dを有しているとともに、この凹曲面部21d及びシャフト23のフランジ部13aの外周面13bに、段差なく、直線的に接続する側面部21eとを有している。
この凹曲面部21dは、シャフト13の中心軸線を含む断面において、楕円の弧の形状を有していて、かつ、この楕円の長軸がセラミックス基体21の接合面21bと平行になり、短軸がセラミックス基体21の接合面21bと垂直になる。このような楕円弧状の断面形状を有する点で、図2に示した実施例は、図1に示した実施例とは異なっている。
図2に図示した実施例では、凹曲面部21dがシャフト13の中心軸線を含む断面において、楕円の弧の形状を有していることにより、図1に示した実施例に比べて、セラミックス基体の厚さ(同図(b)に示したt0)を大きくすることなく効果的に曲率半径を大きくしたのと同様の効果を得ることができる。また、凹曲面部21dは、側面部21eと接続する領域の曲率が特に緩やかな曲率の弧になるため、図1に示した実施例よりも、いっそう熱応力を緩和することが可能となる。
凹曲面部21dの弧の短軸半径Aは1〜10mm、長軸半径Bは、短軸半径Aに対する比B/Aで1.2〜10になる範囲になることが好ましい。より好ましくは、短軸半径Aが1〜4mm、長軸半径Bが、短軸半径Aに対する比B/Aで1.5〜5の範囲である。
短軸半径Aが1mmに満たないと、凹曲面部21dを形成した効果に乏しい。また、短軸半径Aが10mmを超えるときは、セラミックス基体21の厚みt0を大きくすることを要し、セラミックス基体11の体積が増えて強度が下がるおそれがある。また、凹曲面部21dの形成は、研削加工によりセラミックス基体21の中央部近傍以外の部分を除去することによって行われるので、短軸半径が大きく、そのためセラミックス基体21の研削加工前の初期厚みが大きいほど、加工代が大きくなってコストアップを招く。したがって、短軸半径は10mm以下とすることが好ましい。より好ましい範囲は1〜4mmである。
長軸半径Bの短軸半径Aに対する比B/Aが1.5より小さいと、凹曲面部21dの断面形状が真円に近くなり、この実施例の特徴的な効果に乏しくなる。また、長軸半径Bの短軸半径Aに対する比B/Aが10を超えると、セラミックス基体21の中心部近傍の熱容量が大きくなりすぎて、均熱性が悪化する恐れや昇温に時間がかかるという恐れがある。
図2に示した実施例においても、セラミックス基体21の中心部近傍の厚さ(図2(b)に示したt0)は、2〜50mmの範囲が望ましく、5〜30mmの範囲がより好ましい。そして凹曲面部21dの曲率半径は、このセラミックス基体21の厚さよりも小さい値で、このセラミックス基体21の厚さに応じ適切な値として定めることができる。
凹曲面部21dの表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.8μm以下であることが好ましい。凹曲面部21dの表面粗さ表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.8μm以下であることにより、クラックの発生を効果的に抑制し、いっそう信頼性を高めることが可能となる。このような中心線平均粗さRaの調整は、セラミックス基体21の作製時において、凹曲面部を研削加工する際に、研削砥石の粒度を325番以上、送り速度を0.2mm/min以下の条件で行うことで有利に実現できる。
凹曲面部21dを接合界面から離隔している側面部21eの直線的な長さは、図1に示した実施例と同様に0.5〜2.0mmの範囲が好ましい。側面部21eを長くするにはセラミックス基体の加工前の厚みを大きくすることを必要ととし、加工代が大きくなる。また、側面部21eがあまりに短いと、接合界面が凹曲面部21dと近接してしまい、本発明の効果が十分には得られないおそれがある。
次に、図3及び図4を用いて、比較例の加熱装置を述べる。
図3は、比較例の加熱装置の模式的な縦断面図である。同図の加熱装置は、セラミックス基体31と、このセラミックス基体31の加熱面31aとは反対側の接合面31bに接合されたシャフト23とを備えている。また、この比較例では、セラミックス基体31とシャフト23との接合部近傍において、シャフト23のフランジ部23aに、外周面23bと、この外周面23bと滑らかにする凹曲面部23dとを有している。これにより、セラミックス基体31とシャフト23との接合界面が、凹曲面部23dの面内に接することがないので、当該接合界面の外周側端部からクラックが発生するのを抑制することは可能である。もっとも、図3に示した形状になるセラミックスのシャフト23を作製するのは、既知の製造方法では困難であるため、図1や図2に示した実施例が、実際の製造のことを考えると有利である。
図4は、別の比較例の加熱装置の模式的な縦断面図である。同図の加熱装置は、セラミックス基体101と、このセラミックス基体101に埋設された抵抗発熱体102と、このセラミックス基体101の加熱面101aとは反対側の接合面101bに接合されたシャフト103とを備えている。セラミックス基体101の接合面101bは、中央部近傍の厚さが厚くなっていて、この中央部表面101cにシャフト103が接合される。シャフト103の一方の端部には、フランジ部103aが形成され、このフランジ部103aは、外周面103bと、端面103cとを有している。
そして、このセラミックス基体101とシャフト103との接合部近傍には、凹曲面部101dが形成されているが、この凹曲面部101dの面内に、セラミックス基体101とシャフト103との接合界面が接している。この点が図1及び図2に示した実施例とは相違している。図4に示した比較例では、この凹曲面部101dの面内に接している接合界面の端部からクラックが発生するおそれがある。
以上、図面を用いて本発明に係る加熱装置の実施例を説明したが、本発明に係る加熱装置において、セラミックス基体11、セラミックス基体21の構成は図示した例に限定されない。また、セラミックス基体2の材料としては、好ましくは、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ムライト、サイアロンなどの窒化物セラミックス、アルミナ−炭化ケイ素複合材料などがあり、またこれらに限らず公知のセラミックス材料であってもよい。加熱装置の使用時の雰囲気中に含まれるハロゲン系ガスなどの腐食性ガスに対して高い耐腐食性を付与するためには、窒化アルミニウムやアルミナが特に好ましい。また、セラミックス基体に限られず、耐熱金属(耐熱ステンレス鋼やインコネルなどのNi基合金)を基体に用いた加熱装置においても本発明の構成を適用することができる。
シャフトは、熱応力をできるだけ緩和する観点から、セラミックス基体と同一の材料であることが好ましい。
本発明の加熱装置は、セラミックス基体の作製工程、シャフトの作製工程、セラミックス基体とシャフトとの接合工程の各工程を経て製造される。これらの各工程については、常法に従って行うことができる。
本発明の加熱装置に特徴的なセラミックス基体の凹曲面部の形成は、セラミックス基体の作製工程時及び/又はセラミックス基体とシャフトとの接合工程後に、研削加工を施すことにより行うことができる。この研削加工の仕上加工時には、研削砥石の粒度を325番以上、送り速度を0.2mm/min以下の条件で行うことが、より好ましい。この条件で研削加工を施すことにより、クラックの発生をより効果的に抑制することができるからである。
詳述すると、通常の研削方法では、研削砥石の粒度や送り速度を変えても凹曲面部の表面粗さは中心線平均粗さRaで0.8μm程度が限界であり、中心線平均粗さRに関して0.8μm程度よりも小さい値とすることは困難である。ところが、発明者らの研究によれば、研削砥石の粒度を細かくし、送り速度を小さくすることによって、凹曲面部の表面粗さの変化は現れないとしても、接合強度が一層向上することが判明した。これは、加工時の研削砥石の粒度を細かくし、送り速度を小さくすることにより、凹曲面部の加工ダメージ、すなわち、マイクロクラックが低減するためであると考えられる。したがって、この研削加工の仕上加工時には、研削砥石の粒度を325番以上、送り速度を0.2mm/min以下の条件で行うことが、より好ましい。
[実施例1]
セラミックス基体とシャフトとの接合部近傍の凹曲面部の位置及び形状を種々に変えた複数の加熱装置を製造した。この加熱装置は、セラミックス基体及びシャフトをAlN粉末を原料としてプレス成形−焼結によりそれぞれ作製したのち、両者を固相接合により接合することにより製造したものである。
セラミックス基体の外径は348mm、外周部での厚さ(図2(b)のt1)は25mmと一定とし、凹曲面部の曲率半径及びセラミックス基体の中央部での厚さ(図2(b)のt0)を種々に変えた加熱装置を用意した。これらの加熱装置のシャフトは、フランジ部の外径が75mm、内径が52mm、フランジ部の厚さ(外周部の軸線方向長さ)が5mmであった。なお、凹曲面部の加工にあたっては、砥石の番手を#200、砥石の回転数を6000(rpm)、砥石の送り速度を0.2mm/minとし、凹曲面部の表面粗さはRa0.9μmであった。これらの加熱装置のそれぞれを、NFガス、400Torrの雰囲気になるチャンバ内に設けて、700℃で加熱する。24時間の連続運転を行った後、一旦、200℃まで降温し、再び、700℃まで昇温する。このような熱試験を所定の期間行った後、クラックの発生の有無を調べた。
その結果を表1に示す。
Figure 0004731365
表1から分かるように、比較例1〜5は、接合部近傍の凹曲面部が、セラミックス基体とシャフトとの接合界面に接して位置しているため、一日経過後でクラックが発生した。なお、比較例1〜5のなかでも曲率半径が大きい比較例5は、半年後になるまで異常が見られず、曲率半径を3mm程度に大きくすることがクラックの抑制に有効であることが分かる。
また、実施例1〜5は、本発明に従い、凹曲面部がセラミックス基体側に位置し、かつ、この凹曲面部に接続する側面部が0.5〜2mmの長さで形成されている例である。実施例1〜5から、凹曲面部の曲率半径が1〜10mmの範囲にある場合は、半年後になるまで異常が見られず、優れた信頼性を示した。なかでも、凹曲面部の曲率半径が1〜4mmの範囲にある場合は、1年経過後も異常が見られず、特に優れた信頼性を示した。なお、比較例6では、凹曲面部の曲率半径が0.5mmと小さすぎて、本発明の効果が有効でなかった。また、比較例7では凹曲面部が12mmと大きすぎるため、中心部の熱容量が大きくなりすぎ、昇温中に破損した。
また、実施例6及び実施例7は、本発明に従い、凹曲面部がセラミックス基体側に位置し、この凹曲面部が楕円断面形状を有し、かつ、凹曲面部に接続する側面部が1〜2mmの長さで形成されている例である。実施例6及び実施例7から、楕円断面形状を有している場合には、1年経過後も異常が見られず、特に優れた信頼性を示した。この実施例6を、この実施例6の短軸半径と同じ曲率半径を有している比較例6と対比し、また、実施例7を、この実施例7の短軸半径と同じ曲率半径を有している実施例1と対比することにより、凹曲面部を楕円断面形状とすることで、セラミックス基体の中央部の厚みが同じでもより信頼性を高くできることが分かった。
[実施例2]
セラミックス基体の凹曲面部の表面粗さと接合強度との関係を調べた。用いた加熱装置は、実施例1に用いた加熱装置と同一の材料、サイズを有するものである。
凹曲面部は断面が真円の弧形状であり、曲率半径は2mm、セラミックス基体の中央部近傍の厚さは28mm、外周部近傍の厚さは25mmのものを用いた。
凹曲面部の仕上研削加工時に研削砥石の砥粒の大きさと、砥石の回転速度と、砥石の送り速度を種々に変更して、加工を行った結果を、接合界面の強度と接合界面の表面粗さとともに表2に示す。なお、接合界面の強度は、テストピースを切り出し、片持ち曲げ試験により求めた。
Figure 0004731365
表2から、砥粒の大きさ(砥石の番手)を325以上とし、送り速度を0.2mm/min以下にすることにより、劇的に強度が向上することが分かる。
凹曲面部を加工するにあたり、砥石の番手を#325とし、砥石の回転数を6000(rpm)、送り速度を0.2mm/minとして、表1の実施例4と同じ形状の加熱装置を作製し、[実施例1]に示すのと同じ条件で加熱腐食試験をおこなった。結果、二年後でもクラックは発生しなかった。このことから、砥粒の大きさ(砥石の番手)を325以上とし、送り速度を0.2mm/min以下にすることにより、加熱装置の信頼性をさらに高めることができることがわかった。
本発明に係る加熱装置の一実施例の模式的な縦断面図である。 本発明に係る加熱装置の一実施例の模式的な縦断面図である。 比較例の加熱装置の模式的な縦断面図でである。 比較例の加熱装置の模式的な縦断面図である。
符号の説明
11 セラミックス基体(加熱基体)
11d 凹曲面部
11e 側面部
12 抵抗発熱体
13 シャフト(中空棒材)

Claims (3)

  1. 板状の加熱基体と、この加熱基体の一方の面に一端面が接合された中空棒材とをそなえ、
    前記加熱基体は、前記中空棒材との接合部近傍で、この中空棒材の外周面と同一面になる側面部と、この側面部に接続する凹曲面部とを有し、当該加熱基体と前記中空棒材との接合界面の端部が、この加熱基体の側面部と、中空棒材の外周面との間に位置し、前記凹曲面部は、前記中空棒材の中心軸線を含む断面で前記接合界面に平行な長軸と該接合界面に垂直な短軸とを有する楕円の弧の形状であることを特徴とする加熱装置。
  2. 前記凹曲面部の表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.8μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  3. 加熱基体の一方の面に中空棒材の一端面を接合する工程と、この加熱基体と中空棒材との接合部近傍における加熱基体側に形成され、前記中空棒材の中心軸線を含む断面で前記加熱基体と前記中空棒剤との接合面に平行な長軸と該接合面に垂直な短軸とを有する楕円の弧の形状である凹曲面部を研削加工する工程とを有する加熱装置の製造方法において、
    前記研削加工を、研削砥石の粒度を325番以上、送り速度を0.2mm/min以下の条件で行うことを特徴とする加熱装置の製造方法。

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