JP2004179262A - 静電チャック及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】腐食性のプロセスガスを繰り返し暴露してもウェハ支持部材2とセラミック筒状支持体8との接合層6や金属筒状体を腐食し、パーティクルを発生する。
【解決手段】電極4を埋設した板状セラミック体3の一方の主面をウエハWの載置面5とする静電チャック2の上記載置面5と反対側の表面中央に凸状部3aを設け、この凸状部3aに上記電極4と電気的に接続される給電端子9を備えるとともに、上記給電端子9を包囲するようにセラミック筒状支持体8をセラミック接合層6を介して焼結により接合一体化するとともに、凸状部3aの外周面と、セラミック筒状支持体8の接合部外周面と、接合層6の外周面とが滑らかに連続した同一面となるようにして静電チャック1を構成する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD、減圧CVD、光CVD、スパッタリングなどの成膜装置や、プラズマエッチング、光エッチング等のエッチング装置において、半導体ウエハ等の試料を静電気力で保持する静電チャック及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程において、プラズマCVD、減圧CVD、光CVD、スパッタリングなどの成膜装置や、プラズマエッチング、光エッチングなどのエッチング装置では、試料となる半導体ウエハ(以下、ウエハと称す。)を静電気力で保持して各種処理を行うための静電チャックが用いられている。
【0003】
例えば、図7に従来の静電チャックを真空処理室内に取り付けた状態を示すように、20はプロセスガスを供給するためのガス供給孔21と、真空引きするための排気孔22を備えた真空処理室で、真空処理室20内にはウェハ支持部材72と金属製の筒状支持体78とからなる静電チャック71が設置されていた。
【0004】
この種のウェハ支持部材72は、円板状をなし、上下面が平滑かつ平坦に形成された板状セラミック体73からなり、板状セラミック体73中には電極74を埋設するとともに、一方の主面をウエハWを載せる載置面75とし、他方の主面77には上記電極74と電気的に接続された給電端子79が接合されていた。
【0005】
また、上記板状セラミック体73の他方の主面には、上記給電端子79を包囲するように金属製の筒状支持体78がロウ接でもって接合一体化され、給電端子79へ接続されるリード線(図示せず)を真空処理室20外へ導出するようになっていた(特許文献1、2参照)。
【0006】
そして、この静電チャック71によりウエハWに成膜やエッチング等の処理を施すには、まず、真空処理室20内を真空状態とするとともに、ウェハ支持部材72の載置面75にウエハWを載せ、給電端子79に電圧を印加して電極74とウエハW間に静電気力を発現させウェハWを吸着固定し、この状態でガス供給孔21よりデポジッション用ガスやエッチング用ガスなどのプロセスガスを真空処理室20内へ導くことで、ウエハWに各種処理を施すようになっていた。
【0007】
また、図6に示すように、ウェハ支持部材62を形成する板状セラミック体63の他方の主面中央に凸状部63aを形成し、この凸状部63aにセラミック製の筒状支持体68をセラミック製の接合層66を介して焼結により気密に接合一体化したものが提案されている(特許文献3、4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2000−219578号公報
【特許文献2】特開2002−121083号公報
【特許文献3】特開平12−21957号公報
【特許文献4】特開平4−78138号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記静電チャック71に上記のデポジッション用ガスやエッチングガスなどのプロセスガスが高温で繰り返し暴露すると、ウェハ支持部材72とロウ材からなる接合層76及び金属製の筒状支持体78とロウ材からなる接合層76との間にはそれぞれ接合界面が存在するとともに、ウェハ支持部材72と金属製の筒状支持体78との間には熱伝達特性の異なるロウ材が介在することから、これらの接合界面には熱応力が集中し易く、その結果、繰り返し加わる熱応力によって接合層76にクラックが発生して気密性が損なわれるため、真空処理室20内の真空度が低下し、その結果、成膜精度やエッチング精度に悪影響を与えるといった課題があった。
【0009】
また、成膜装置やエッチング装置では、デポジッション用ガス、エッチング用ガス、あるいはクリーニング用ガスとして腐食性の高いハロゲン系ガスが使用されているのであるが、接合層76がロウ材からなるために上記ハロゲン系ガスに曝されると腐食摩耗し易く、短期間のうちに気密性が損なわれるとともに、この腐食摩耗により発生した摩耗粉がパーティクルとしてウエハWへの処理精度に悪影響を与えるといった課題もあった。
【0010】
また、図6に示す静電チャック61は、接合層としてセラミックスを用い、板状セラミック体63及びセラミックス製の筒状支持体68と一体的に焼結することにより、各部材の熱膨張差を近似させることができるとともに、ウェハ支持部材62には凸状部63aを設け、筒状支持体68との接合部における表面積を大きくすることにより、接合部の放熱性を向上させることができるため、接合部に作用する熱応力を低減し、接合部における気密性の低下を防止できるとともに、200℃以上の温度にも対応したものとできるといった利点があった。
【0011】
しかしながら、図6の静電チャック61でも室温から200℃以上の温度範囲で繰り返し熱サイクルが加わると、比較的短期間で接合部の気密性が損なわれるといった課題があった。即ち、特許文献3に開示された技術では、ウェハ支持部材72への通電のON、OFFを繰り返して室温から200℃の温度範囲で熱サイクルを与えた場合、600回の熱サイクル程度であれば耐え得ることが開示されているものの、熱サイクルが1000回以上となると気密性が低下してしまうといった課題があった。
【0012】
即ち、板状セラミック体3、セラミック筒状支持体8、及びセラミック接合層6を同種のセラミックスにより形成して熱膨張差を小さくするとともに、これらを焼結によって接合一体化したとしても各部材間には接合界面が存在する場合に熱伝達が悪く、しかも、一体焼結させる際、セラミック接合層6となるセラミックペーストの収縮や接合工程から接合後には図5に示すような鋭角を持ったくさび状の溝701が形成され、この溝701の先端に熱応力が集中するため、温度が200℃程度とすると溝701に発生する熱応力に耐えきれず、溝701の先端を起点としてクラックが発生し、このクラックが進展することにより気密性が低下するとの課題があった。
【0013】
そして、このような気密性の低下が発生すると、静電チャックを真空処理室20から取り外して交換しなければならないのであるが、この間、成膜処理やエッチング処理を停止させなければならず、生産性を高めることができなかった。
【0014】
本発明の目的は、腐食性のプロセスガスで繰り返し暴露してもウェハ支持部材72と金属製の筒状支持体78との間の気密性が低下し難い耐久性に優れた静電チャックを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、電極を埋設した板状セラミック体の一方の主面を試料を載せる載置面とし、他方の主面に上記電極と電気的に接続される給電端子を備えたウェハ支持部材と、上記給電端子を包囲するように上記ウェハ支持部材の他方の主面側に接合層を介して接合一体化されたセラミック筒状支持体とからなる静電チャックにおいて、上記ウェハ支持部材の上記セラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を備え、該凸状部の外周面と、上記接合層の外周面と、上記セラミック筒状支持体の接合部外周面とが滑らかに連続した同一面上にあることを特徴とする。
【0016】
また、上記凸状部の外周面と、上記接合層の外周面と、上記セラミック筒状支持体の接合部外周面からなる面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2μm以下であることを特徴とする。
【0017】
また、電極を埋設した板状セラミック体の一方の主面を試料を載せる載置面とし、他方の主面に上記給電端子を包囲するように接合層を成すセラミックペーストを介してセラミック筒状支持体を当接させ、焼成にて接合一体化した後、上記板状セラミック体の他方の主面周縁部に研削加工を施すことによって、上記セラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を形成するとともに、該凸状部の外周面と、上記接合層の外周面と、上記セラミック筒状支持体の接合部外周面とが滑らかに連続的した同一面となるようにしたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は本発明の静電チャック1を真空処理室20に取り付けた状態を示す断面図、図2は本発明の静電チャック1のみを示す斜視図、図3は本発明の静電チャック1の主要部を示す拡大断面図である。
【0020】
図1において、20はプロセスガスを供給するためのガス供給孔21と、真空引きするための排気孔22を備えた真空処理室20で、この真空処理室20内にはウェハ支持部材2とセラミック筒状支持体8とからなる静電チャック1を設置してある。
【0021】
このウェハ支持部材2は、図2に示すように円板状をなし、上面が平らな板状セラミック体3からなり、その大きさとしては、ウエハWのサイズにもよるが外径220〜330mm、厚み8〜25mm程度のものを用いることができる。また、板状セラミック体3中には、タングステンやモリブデンあるいは白金等の金属からなる電極4を埋設してあり、一方の主面をウエハWの載置面5とするとともに、他方の主面中央には円板状の凸状部3aを有し、この凸状部3aに上記電極4と電気的に接続される給電端子9を接合してある。なお、本発明において主面とは、板状セラミック体3のうち最も広い表面のことであり、他方の主面とは、一方の主面と反対側の表面を指す。
【0022】
また、上記板状セラミック体3の中心には熱電対等の温度検出手段10が内蔵してあり、載置面5の温度を検出するようになっている。
【0023】
そして、上記板状セラミック体3の凸状部3aには、給電端子9及び温度検出手段10を包囲するように、円筒状をしたセラミック筒状支持体8がセラミック接合層6を介して焼結によって気密に接合一体化してあり、給電端子9及び温度検出手段10のリード線(不図示)を真空処理室20外へ取り出すようになっている。
【0024】
ここで、静電チャック2を構成する板状セラミック体3及びセラミック筒状支持体8としては、緻密で耐熱性、耐蝕性、さらには耐プラズマ性に優れたセラミックスにより形成することが必要であり、このようなセラミックスとしては窒化珪素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化硼素を主成分とする窒化物系セラミックスを用いることができる。これらの中でも特に窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスは、他のセラミックスと比較して高い熱伝導率を有することから、急速昇温が可能であるとともに、腐食性の高いハロゲン系ガスやプラズマに対して優れていることから好適である。
【0025】
また、板状セラミック体3とセラミック筒状支持体8とは、焼結によって接合一体化する観点から同種(主成分が同じ)のセラミックスにより形成することが必要であり、好ましくは同一組成のセラミックスにより形成することが良い。これにより両者の熱膨張差を極めて小さくすることができるため、接合界面に発生する熱応力を大幅に低減することができ、セラミック接合層6やその接合界面にクラックが発生するのを抑えることができる。
【0026】
なお、本発明において、焼結により接合一体化するとは、セラミック接合層6も板状セラミック体3やセラミック筒状支持体8と同種あるいは同一組成のセラミックスからなり、板状セラミック体3とセラミック接合層6及びセラミック接合層6とセラミック筒状支持体8とがいずれも焼結されていることを言う。焼結によって接合一体化する方法としては、板状セラミック体3やセラミック筒状支持体8を構成するセラミックスと同種あるいは同一組成のセラミックペーストをいずれか一方の接合面に塗布し、他方を上記接合面に当接させたあと押圧した状態で加熱して焼結させるホットプレス法により接合するか、あるいは上記セラミックペーストをいずれか一方の接合面に塗布し、他方を上記接合面に当接させたあと押圧した状態で加熱し焼結させる拡散接合法により接合することができる。
【0027】
尚、接合層6とは板状セラミックス体3とセラミックス筒状支持体8との間の層を意味するが、上記の板状セラミックス体3とセラミックス筒状支持体8とは異なる接合層6を形成することもあるし、セラミックスの拡散接合による接合層のように実質的な接合層6は板状セラミックス体3とセラミックス筒状支持体8との界面を示すこともあり、板状セラミックス体3とセラミックス筒状支持体8が全く同一組成で実質的に同一な工程で製造された場合は、接合層6を識別できない場合もある。
【0028】
このように、板状セラミック体3とセラミック筒状支持体8とを焼結によって接合一体化すれば、板状セラミック体3と接合面6との間、接合面6とセラミック筒状支持体8との間の熱膨張差を極めて小さくできるため、接合面6に集中する熱応力を大幅に低減することができる。しかも、接合面6は耐蝕性、耐プラズマ性にも優れることから腐食摩耗が少なく、摩耗粉の発生が少ないことからウエハWに悪影響を与えることもない。
【0029】
さらに、上記セラミック筒状支持体8との接合領域として、板状セラミックス体3に凸状部3aを設けてあることから、接合部近傍の表面積を大きくして冷却効果を高めることができる。
【0030】
その為、プロセスガスにより静電チャック2が加熱されて室温域から200℃以上の温度範囲で繰り返しガス暴露サイクルが加わったとしても接合部近傍に集中する熱応力を緩和してクラックの発生を防ぐことができるため、長期使用においても気密性を維持することができる。なお、このような効果を得るためには、板状セラミック体3の凸状部3aの高さhを0.1mm以上とすることが良いが、凸状部3aの高さhがあまり高くなり過ぎると、研削加工に時間がかかるだけでクラックを防止するための効果が得られない。その為、凸状部3aの高さhは0.1mm〜5mmの範囲で形成すれば良い。
【0031】
本発明の静電チャック1は、図3に示すように、板状セラミック体3の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の接合部外周面8aとが滑らかに連続した同一面上にあることを特徴とする。
【0032】
このように、板状セラミック体3の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の接合部外周面8aとが連続した同一面上とすると、従来の接合界面にあるくさび状の溝701を除いた構造となり、局部的に熱応力が集中することを防ぐことができるため、セラミック接合層6やセラミック接合層6との接合界面にクラックが発生することを効果的に防止することができるため、静電チャック2の発熱温度を200℃以上として繰り返し使用しても気密性を損なうことなく長期間にわたって使用することが可能な静電チャック1を提供することができる。また、上記の滑らかに連続した同一面上にあるとは、凸状部3aの外周面3bと接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の接合部外周面8aとが同一面にあり、この面内に90度より小さな鋭角な外表面が存在しないことを意味する。このような外周面とすると、外周面の接合部からクラックが発生することがなく好ましい。
【0033】
なお、本発明において、板状セラミック体3の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の接合部外周面8aとが滑らかに連続した同一面上とするには、セラミック筒状支持体8をセラミック接合層6を介して板状セラミック体3の凸状部3aに焼結によって接合一体化した後、板状セラミック体3の他方の主面周縁部を研削加工によって削ることにより、他方の主面中央に凸状部3aを形成するとともに、この凸状部3aの外周面3b、セラミック接合層6の外周面6a、及びセラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aをも同時に研削加工を施し、セラミック接合層6やセラミック接合層6との接合界面にできるくさび状の溝を除去して滑らかに連続した同一面とすれば良い。ただし、このように研削加工を施したとしても大きな研削加工傷があると、この研削傷を起点としてクラックが発生する恐れがあることから、研削傷はできるだけ小さくすることが好ましく、例えば研削加工用のダイヤモンド砥粒に#200番以上の細かい砥粒を用いて連続的につながった同一表面の表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で2μm以下、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とすることが良い。
【0034】
かくして、本発明の静電チャック1を用いてウエハWに成膜やエッチング等の処理を施せば、室温域から200℃以上のプロセスガスにより繰り返しガス暴露サイクルが加わったとしても板状セラミック体3とセラミック筒状支持体8との接合部における気密性を損なうことがなく、しかも金属部材や接合層の腐食を除去できることから、腐食によるパーティクルの発生を防止できることから、長期間にわたって精度の高い成膜やエッチングを安定して施すことができる。その為、静電チャック1の交換サイクルを長くすることができるため、成膜処理やエッチング処理を止める回数を少なくすることができ、生産性を向上させることができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0036】
図4は本発明の静電チャック1の他の例を示す主要部の拡大断面図であり、静電チャック2を構成する板状セラミック体3の凸状部3aの形状を円錐台とするとともに、凸状部3aの外周面3b、セラミック接合層6の外周面6a、及びセラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aを滑らかに連続した同一面として円錐台状の同一面としたもので、このように円錐台状としても凸状部3aの外周面3b、セラミック接合層6の外周面6a、及びセラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aが滑らかに連続した同一面であれば、局所的な熱応力の発生を防ぎ、静電チャック2の発熱温度を200℃以上として繰り返し使用しても気密性を損なうことなく長期間にわたって使用することが可能な静電チャック1を提供することができる。しかも、円錐台状とすることで図3に比較して表面積を大きくすることができるため、放熱効果をさらに高めることができ、より破損し難い構造とすることができる。
【0037】
ただし、この実施形態においても凸状部3aの外周面3b、セラミック接合層6の外周面6a、及びセラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aが連続的につながった同一表面の表面粗さは算術平均粗さ(Ra)で2μm以下、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とするとともに、凸状部3aの高さhは1mm〜5mmとすることが良い。
【0038】
以上、本発明の実施形態について示したが、本発明のこれらの実施形態だけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、改良や変更したものにも適用することができることは言う迄もない。
【0039】
【実施例】
(実施例1)
ここで、板状セラミック体3の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aとが滑らかに連続した同一面とすることによる効果を確認するため、本発明の静電チャック1(試料No.1)、凸状部の外周部に研磨加工を施していない従来の静電チャック61(試料No.2)、及び凸状部3aを備えていない従来の静電チャック71(試料No.3)をそれぞれ用意し、真空処理装置に設置して真空排気後、静電チャックを200℃のプロセスガスを曝し、再び空気置換し真空暴露を繰り返す暴露サイクル試験を行い、Heリークディテクターにより接合部の気密性について調べる実験を行った。
【0040】
なお、静電チャックを構成する板状セラミック体及びセラミック筒状支持体はいずれも25℃における熱伝導率が64W/(m・K)でかつ200℃における熱伝導率が55W/(m・K)である高純度窒化アルミニウム質セラミックスにより形成するとともに、静電チャックを形成する板状セラミック体の寸法は、外径330mm、厚み15mmの円盤状体とし、また、セラミック筒状支持体の寸法は、外径230mm、肉厚3mm、長さ40mmの筒状体の両端に外径240mm、厚み5mmのフランジ部を有する形状とした。また、静電チャックに凸状部を有するものは、その外径を240mm、高さを0.3mmとするとともに、本発明にあっては、静電チャックの凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aとが連続的につながった同一表面の表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で0.8μmとした。
【0041】
また、板状セラミック体とセラミック筒状支持体との接合にあたっては、両者の間に、窒化アルミニウムに助剤成分として炭酸カルシウムを添加したスラリーを塗布して貼り合わせた後、両者を押圧しながら窒素雰囲気下で1900℃の温度で焼成することにより一体的に焼結させるようにした。
【0042】
そして、各静電チャックを真空処理室内20に設置し、真空処理室内20を減圧した後、200℃のプロセスガスに1時間曝し、減圧後、内部を空気と置換し、再び減圧するガス暴露サイクルを繰り返した。セラミック筒状支持体内にHeガスを供給し、その外側に漏れるHeガス量をHeリークディテクターにより測定し、この漏れ量が10−8SCCM以上になった時、気密性が損なわれたとしてその時のガス暴露サイクル回数を測定した。
【0043】
結果は表1に示す通りである。なお、表中No.1は本発明の静電チャック、No.2は凸状部の外周部に研磨加工を施していない従来の静電チャック、No.3は凸状部を備えていない従来の静電チャックをそれぞれ示す。
【0044】
【表1】
Figure 2004179262
【0045】
この結果、No.3の凸状部を備えていない従来の静電チャックは、51回のガス暴露サイクルで接合部にクラックが発生し、気密性が低下した。
【0046】
また、No.2の凸状部を有するものの、その外周部に研磨加工を施していない従来の静電チャックは、No.3のものに比較して寿命を大幅に向上させることができたものの、612回のガス暴露サイクルで接合部が腐食し、気密性が損なわれた。
【0047】
これに対し、静電チャックのセラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を設けるとともに、静電チャックの凸状部の外周面と、セラミック接合層の外周面と、セラミック筒状支持体の凸状部との接合部外周面とが滑らかに連続した同一面としたNo.1の本発明の静電チャックは、接合部にはくさび状の溝がなく、熱応力が集中し難く腐食し難い構造であることから、凸状部を設けたことによる効果との相乗効果により、3000回のガス暴露サイクルを与えたとしても接合部に腐食の発生は見られず、気密性を維持することができ、優れていた。
【0048】
また、試料No.1はガス暴露サイクル3000回後の1μm以上のパーティクル数は1000個以下と非常に少なく好ましいことが分った。
(実施例2)
ここで、次に、本発明の静電チャック1において、静電チャック2の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aとが滑らかに連続した同一面とし、この面の表面粗さを異ならせた時の耐久性を調べるため、実施例1と同様に実験を行った。なお、本実験に使用する静電チャック1の寸法は実施例1と同じ寸法とし、板状セラミック体3の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aとが滑らかに連続した同一面として表面粗さだけを異ならせるようにした。
【0049】
結果は表2に示す通りである。
【0050】
【表2】
Figure 2004179262
【0051】
この結果、板状セラミック体3の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面6aとが滑らかに連続した同一面として、その表面粗さが粗くなるにしたがって耐久性が落ちることが判る。そして、算術平均粗さ(Ra)が3μmとなると、平面の凹凸が大きくなりすぎるために凹部が起点となり1247回のガス暴露サイクルで接合部にクラックが発生した。
【0052】
その為、2000回のガス暴露サイクルに耐え得るようにするためには、静電チャックの凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aとが滑らかに連続した同一面とし、その表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で2μm以下とすることが良く、さらに3000回のガス暴露サイクルに耐え得るようにするためには、静電チャック2の凸状部3aの外周面3bと、セラミック接合層6の外周面6aと、セラミック筒状支持体8の凸状部3aとの接合部外周面8aとが連続的につながった同一表面の表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で0.8μm以下とすることが良いことが判る。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、電極を埋設した板状セラミック体の一方の主面を試料を載せる載置面とし、他方の主面に上記電極と電気的に接続される給電端子を備えた静電チャックと、上記給電端子を包囲するように上記静電チャックの他方の主面側に接合層を介して気密に接合一体化されたセラミック筒状支持体とからなる静電チャックにおいて、上記静電チャックの上記セラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を形成するとともに、上記凸状部の外周面と、上記セラミック筒状支持体の上記凸状部との接合部外周面と、上記接合層の外周面とが滑らかな連続した同一面とすることによって、板状セラミック体とセラミック筒状支持体との接合部における温度勾配を小さくするとともに、接合部に作用する局部的な熱応力の集中を防ぐことができるため、200℃以上のプロセスガスに曝されても接合部が腐食することが無く、優れた気密性を長期間にわたって維持することがきる。しかも、板状セラミック体、接合層、及びセラミック筒状支持体は、いずれも緻密で耐熱性、耐食性、耐プラズマ性に優れたセラミックスからなるため、長寿命であるとともに、パーティクルを発生することもなくウエハ等の試料に悪影響を与えることがなく、さらに成膜精度やエッチング精度を劣化させることがない。
【0054】
また、上記凸状部の外周面と、上記セラミック筒状支持体の上記凸状部との接合部外周面と、上記接合層の外周面とで形成される平面の表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で2μm以下とすることにより、寿命をさらに向上させることができる。
【0055】
また、本発明は上記静電チャックを形成するため、静電チャックの他方の主面に、給電端子を包囲するように接合層を介してセラミック筒状支持体を接合した後、上記板状セラミック体の他方の主面に研削加工を施すようにしたことから、上記セラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を形成するとともに、上記凸状部の外周面と、上記セラミック筒状支持体の上記凸状部との接合部外周面と、上記接合層の外周面とが滑らかに連続した同一面とすることができ、長寿命の静電チャックを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電チャックを真空処理室に取り付けた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の静電チャックを示す斜視図である。
【図3】本発明の静電チャックの主要部を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の静電チャックの他の実施形態の主要部を示す拡大断面図である。
【図5】従来の静電チャックの主要部を示す拡大断面図である。
【図6】従来の静電チャックを真空処理室に取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】従来の他の静電チャックを真空処理室に取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1,61,71・・・静電チャック
2,62,72・・・ウェハ支持部材
3,63,73・・・板状セラミック体
3a,63a,73a・・・凸状部
3b・・・・・・・・外表面
4,64,74・・・電極
5,65,75・・・載置面
6,66,76・・・接合層
7,67,77・・・裏面
8,68,・・・セラミック筒状支持体
78・・・・金属製の筒状支持体
9,69,79・・・給電端子
10,80・・・・・温度検出手段
W・・・・・・ウエハ

Claims (3)

  1. 電極を埋設した板状セラミック体の一方の主面を試料を載せる載置面とし、他方の主面に上記電極と電気的に接続される給電端子を備えたウェハ支持部材と、上記給電端子を包囲するように上記ウェハ支持部材の他方の主面側に接合層を介して接合一体化されたセラミック筒状支持体とからなる静電チャックにおいて、上記ウェハ支持部材の上記セラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を備え、該凸状部の外周面と、上記接合層の外周面と、上記セラミック筒状支持体の接合部外周面とが滑らかに連続した同一面上にあることを特徴とする静電チャック。
  2. 上記凸状部の外周面と、上記接合層の外周面と、上記セラミック筒状支持体の接合部外周面からなる面の表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
  3. 電極を埋設した板状セラミック体の一方の主面を試料を載せる載置面とし、他方の主面に上記給電端子を包囲するように接合層を成すセラミックペーストを介してセラミック筒状支持体を当接させ、焼成にて接合一体化した後、上記板状セラミック体の他方の主面周縁部に研削加工を施すことによって、上記セラミック筒状支持体との接合領域に凸状部を形成するとともに、該凸状部の外周面と、上記接合層の外周面と、上記セラミック筒状支持体の接合部外周面とが滑らかに連続的した同一面となるようにしたことを特徴とする静電チャックの製造方法。
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