JP4730722B2 - 積層型ガスセンサ素子の製造方法及び積層型ガスセンサ素子 - Google Patents

積層型ガスセンサ素子の製造方法及び積層型ガスセンサ素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスといった被測定ガス中の特定成分を検出するための積層型ガスセンサ素子の製造方法と、その製造方法により得られる積層型ガスセンサ素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車エンジン等の内燃機関において、その空燃比制御等の指標となる排ガス中の特定成分の濃度を検出するガスセンサとして、酸素センサ、NOxセンサ、HCセンサ等の各種センサが開発されている。このようなガスセンサに組み込まれるガスセンサ素子としては種々の形態のものが知られているが、一対の電極を形成した板状又は薄膜状の固体電解質層と、セラミック基体とを積層した積層型ガスセンサ素子(以下、単に「素子」ともいう)が実用化されている。この種の素子では、通常、被測定ガスと接触する少なくとも一方の電極を、多孔質保護層にて覆う構造を有する。この多孔質保護層を形成する理由は、例えば被測定ガス中には電極を被毒する物質(Si、Pb、P又はそれら各々の化合物)が含有されており、電極をその被毒から保護するためである。
【0003】
ここで、このような複数のセラミック層を積層した積層タイプの素子は、一般的に下記手順により製造される。
(1)電極となる一対の電極パターンが形成される固体電解質層となる未焼成固体電解質層を、セラミック基体となる未焼成基体に積層する。
(2)昇温により昇華して気孔を形成しうる昇華性粉末を含む未焼成保護層を、未焼成固体電解質層を挟んで未焼成基体と対向するように、かつ未焼成固体電解質層に形成される未焼成電極パターンの少なくとも一方を覆うように積層することで、未焼成積層体を作製する。
(3)この未焼成積層体を同時焼成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように未焼成固体電解質層を挟むように未焼成保護層と未焼成基体とを積層した未焼成積層体を同時焼成によって素子を得るにあたり、焼成後の素子自体の反りを十分に抑制し難いといった問題があった。そして、このように素子に反りが生ずることがあると、その反りに起因して多孔質保護層にクラックが生じたり、極端なときには素子自体にクラックが生じるといった問題もあった。
【0005】
本発明は、こうした問題点を解決するものであり、未焼成固体電解質層を挟むように未焼成保護層と未焼成基体とを積層した未焼成積層体を同時焼成して積層型ガスセンサ素子を形成するにあたって、素子自体に反りがほとんど生じることなく、さらには多孔質保護層にクラック等が生じ難い、耐久性の良好な積層型ガスセンサ素子を製造することができる積層型ガスセンサ素子の製造方法、並びに積層型ガスセンサ素子を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段、及び発明の効果】
本発明者らは、未焼成固体電解質層を挟むように未焼成保護層と未焼成基体とを少なくとも積層した未焼成積層体を同時焼成するにあたり、この同時焼成時における未焼成保護層と未焼成基体との焼結挙動及び焼成収縮率の関係に着目し、検討を重ねた。そして、未焼成保護層に含有される昇華性粉末を特定して、昇華性粉末が昇華した後に形成される気孔形状を特定しつつ、さらに未焼成保護層と未焼成基体とを構成する主体のセラミック成分を同種のものとすることにより、未焼成保護層と未焼成基体との焼結挙動及び焼成収縮率の双方が略等しくなることを見出して、本発明を完成するに至った。さらに、同時焼結時における未焼成保護層(多孔質保護層)の気孔率の変化を、特定の焼成温度の範囲内にて所定割合に制限することで、耐久性に優れる素子が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
その解決手段は、一対の電極を配設した固体電解質層と、この電極の少なくとも一方を覆う多孔質保護層と、この多孔質保護層を構成する主体のセラミック成分と同種のセラミック成分を主体に構成されると共に、上記多孔質保護層と上記固体電解質層を挟んで対向するセラミック基体とを少なくとも積層してなる積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、上記電極となる一対の電極パターンが形成される上記固体電解質層となる未焼成固体電解質層を、上記セラミック基体となる未焼成基体に積層する第1工程と、真球状の昇華性粉末及びバインダを含有する上記多孔質保護層となる未焼成保護層を、上記未焼成固体電解質層を挟んで上記未焼成基体と対向するように、かつ上記未焼成固体電解質層に形成される上記未焼成電極パターンの少なくとも一方を覆うように積層することで、未焼成積層体を形成する第2工程と、この未焼成積層体を同時焼成する第3工程と、を備える積層型ガスセンサ素子の製造方法である。
【0008】
さらに、一対の電極を配設した固体電解質層と、この電極の少なくとも一方を覆う多孔質保護層と、上記多孔質保護層と上記固体電解質層を挟んで対向するセラミック基体とを少なくとも積層してなる積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、上記セラミック基体となる未焼成基体と、昇華性粉末を含有する上記多孔質保護層となる未焼成保護層とを、上記固体電解質層となる未焼成固体電解質層を挟んで対向するように、かつ当該未焼成保護層が上記未焼成固体電解質層に形成される一対の未焼成電極パターンの少なくとも一方を覆うように積層して未焼成積層体を形成し、この未焼成積層体を同時焼成するにあたり、上記未焼成保護層の気孔率の変化が、焼成温度1400〜1600℃の範囲内において10%以内であるようにしてもよい。
【0009】
上記「未焼成固体電解質層」は、焼成されて酸素イオン伝導性を発揮する「固体電解質層」となるものである。この未焼成固体電解質層は、固体電解質層用原料粉末、バインダ、溶剤等を混練した混練物(ペースト又はスラリー)を成形することで得ることができる。なお、固体電解質層は板状又は薄膜状のものでもよい。具体的には、上記成形でスクリーン印刷法を用いると薄膜状(厚さ50μm未満)の未焼成固体電解質層が得られ、焼成された固体電解質層は薄膜状のものとして得ることができ、上記成形でドクターブレード法を用いるとシート状(厚さ50μm以上)の未焼成固体電解質層が得られ、焼成された固体電解質層は板状のものとして得ることができる。
【0010】
この固体電解質層としては、YないしCaOを固溶させたジルコニア(ZrO)が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrOとの固溶体を使用してもよく、ベースとなるZrOにはHfOが含有されていてもよい。なお、固体電解質層の組成は上記のものに限らず、LaGaO系焼結体を使用することもできる。また、この固体電解質層に対して積層される層(具体的には、多孔質保護層及びセラミック基体)に含有される主体の構成成分(セラミック成分)を、固体電解質層(未焼成固体電解質層)全体を100重量%とした場合に、10〜80重量%(好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%)の範囲内で含有させるようにして、未焼成固体電解質層を形成してもよい。これにより得られる素子において、固体電解質層に積層される他の層との密着性を大幅に向上させることができる。
【0011】
焼成されて一対の「電極」となる「未焼成電極パターン」は、未焼成固体電解質層の一面、或いは両面にそれぞれを形成することができる。この未焼成電極パターンは、例えばPtを主体とし、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等を含有して形成することができる。なお、一対の電極は、具体的には検知電極と基準電極を構成するものであり、検知電極は、被測定ガスに接する電極であって、他方基準電極は、基準ガスと接する電極、酸素ポンプ作用により形成された一定圧力の酸素雰囲気下におかれる電極、又は被測定ガス中の可燃性ガス成分と接触した場合に検知電極より高い電位を示す電極である。
【0012】
上記「未焼成基体」については、焼成されて「セラミック基体」となる。未焼成基体は、基体用原料粉末、バインダ、溶剤等を混練して得られた混練物を、ドクターブレード法等により成形することで得ることができる。なお、未焼成基体には、焼成されて発熱抵抗体及び発熱抵抗体用リード部となる未焼成導電パターンを埋設させた形態で形成することもできる。この場合、焼成後に得られるセラミック基体中の発熱抵抗体に電圧を印加することで、固体電解質層を早期に活性化させることができる。
【0013】
未焼成基体は、素子自体の機械的強度を補強する機能を有し、更に高い絶縁性を発揮しうるものが好ましい。特に、絶縁性は温度900℃において固体電解質層の100倍以上の絶縁性を有することが好ましい。また、セラミック基体が自身の内部に発熱抵抗体を埋設する場合には、発熱抵抗体を挟持する形態で熱膨張を緩和する緩衝層といった他の機能を有する層を配設した上で、セラミック基体中に介在させてもよい。このセラミック基体としては、アルミナ(Al)、ムライト、マグネシア・アルミナスピネル等のセラミック成分から形成することができるが、特にアルミナを主体とすることが好ましい。なお、本明細書における「主体」とは、最も重量含有率の高い成分を意味するものであって、必ずしも50重量%以上を占める成分のことを意味するものではない。
【0014】
上記「未焼成保護層」は、焼成されて「多孔質保護層」となるものである。未焼成多孔質保護層は、保護層用原料粉末、昇華性粉末、バインダ、溶剤等を混練して得られた混練物を、スクリーン印刷等(必要であれば複数回重ねて)により薄膜状に成形することができる。また、上記の混練物をドクターブレード法等により板状に成形することもできる。なお、このような未焼成保護層は、未焼成固体電解質層に形成された一対の電極パターンの少なくとも一方を覆うように積層される。
【0015】
ここで、多孔質保護層を形成するにあたり、未焼成保護層には焼成されて気孔を形成するための昇華性粉末を含有させる訳だが、本発明では、真球状をなした昇華性粉末を用いることが注目すべき点である。
【0016】
通常、昇華性粉末は、上述したようにバインダ等と組み合わせて未焼成保護層に含有されるものであり、未焼成保護層の昇温過程にてバインダの分解後に液相を経ずに昇華し、気孔を形成するものである。そして、この気孔は、その後の焼成過程において、保護層用原料粉末の粉体間の反応活性による未焼成保護層の焼成収縮を受けて収縮を生ずる。このとき、それぞれの気孔の形状が不定形にあると、気孔の収縮が不均一となるために、焼成温度によっては気孔周りに位置する粒子が気孔の収縮により接触し、未焼成保護層の焼結が過剰に進行することがある。また、同じ焼成温度でみたときに、複数の未焼成保護層の焼成収縮率にばらつきが生ずることもある。
【0017】
一方、本発明では上述したように真球状の昇華性粉末を用いており、昇華後における気孔の形状は昇華前の形状を反映して略球状となる。それより、焼結過程にて保護層原料粉末の粉体間の反応が進行して焼成収縮を生じた場合、上記気孔は略球状であるが故に均一に収縮していく。そのため、各焼成温度に対しても、それぞれの気孔は収縮を生ずるもののその形状を維持するように作用し、気孔周りに位置する粒子は気孔の収縮により接触し難くなる。それより、各焼成温度に対する焼成収縮率が安定し、同じ焼成温度でみたときの複数の未焼成保護層の焼成収縮率も安定する。
【0018】
そして、本発明では、真球状の昇華性粉末を含む多孔質保護層(未焼成保護層)が、固体電解質層(未焼成固体電解質層)を挟んで対向して積層されるセラミック基体(未焼成基体)と同種のセラミック成分を主体に構成されている点がさらに注目すべき点である。かかる構成では、未焼成保護層と未焼成基体とが同種のセラミック成分を主体に構成されることから、両者の焼結反応の進行を略等しいものとすることができ、上述した真球状の昇華性粉末がもたらす各焼成温度に対する焼成収縮率の安定化の効果と相俟って、各部焼成温度に対する未焼成保護層と未焼成基体との焼結挙動と焼成収縮率との双方を略等しいものとすることができる。その結果、未焼成積層体を同時焼成したときにも、反りの発生がなく、さらには多孔質保護層について剥がれやクラックが生じ難い耐久性の良好な積層型ガスセンサ素子を、製造効率良く得ることが可能となる。
【0019】
未焼成保護層と未焼成基体とは、同種のセラミック基体を主体に構成されると共に、未焼成保護層中の保護層用原料粉末の主体をなすセラミック成分の配合割合R2が、上記未焼成基体中の基体用原料粉末の主体をなすセラミック成分の配合割合R1の90%以上であることがより好ましい。この配合割合が90%未満となると、焼結挙動を略等しくする効果が低減するおそれがあるからである。この配合割合については、95%以上であることがより好ましい。なお、保護用原料粉末と基体用原料粉末とを構成する主体のセラミック成分は同種である他に、平均粒径、粒度分布、比表面積等をより近いものとすることが好ましい。
【0020】
また、上記「昇華性粉末」としては、球状カーボン粉末、球状黒鉛粉末、球状のテオブロミン粉末等を使用することができるが、球状カーボン粉末を用いることがハンドリング性等を考慮すると好ましい。なお、本明細書でいう「真球状」とは、球状であって、一つの粒子(球状体)における(最大直径)/(最小直径)の比が1.2以下であることをいう。
【0021】
そのうえ、本発明の真球状の昇華性粉末としては、粒度分布が2〜30μm、平均粒径が4〜15μm、一つの粒子における(最大直径)/(最小直径)の比が1.2以下の範囲内にある。平均粒径が15μmより大きいと、体積当りの真球が少なくなり、焼成後の多孔質保護層において本来ガスが通過する障壁の多くが閉気孔となりがちで、素子(ガスセンサ)の応答バラツキが大きくなることがある。一方、平均粒径が4μm未満となると、焼成後の多孔質保護層において開気孔が多くなりがちで律速が弱くなり、排ガス中のトラップ能力の低下をきたし、電極の被毒を防止できないことがある。そして、昇華性粉末の平均粒径が4〜15μmを満たしつつも、粒度分布が2〜30μmの範囲外となると、粗い粒子が未焼成保護層の断面における厚さ方向に大きく存在することになるため、焼成後の多孔質保護層の機能が低下してしまうことがあり、具体的には素子(ガスセンサ)の応答バラツキが大きくなったり、耐被毒性の保証が低下を招いてしまうおそれがある。
【0022】
また、未焼成保護層は、昇華性粉末と該昇華性粉末を除くセラミック成分を主体とする保護層用原料粉末との合計を100体積%とした場合に、この昇華性粉末を35〜65体積%の範囲内で含有していることが好ましい。昇華性粉末が35体積%未満であると、焼成(同時焼成)後に十分な気孔(即ち、開気孔)が得られ難く、被測定ガスが検知電極に到達し難くなる。一方、65体積%を超えると、得られる多孔質保護層の機械的強度が十分に得られないおそれがあり、またSi、P、Pb及びこれらの化合物により電極(検知電極)が被毒されることを十分に防止し難くなる傾向にある。
【0023】
そして、未焼成保護層、未焼成固体電解質層、未焼成基体とが積層された未焼成積層体を同時焼成する場合に、好ましい焼成条件としては1400〜1600℃(より好ましくは1425〜1550℃)の焼成温度で1〜2時間保持することである。なお、昇華性粉末を上述にように未焼成保護層に対して35〜65体積%の範囲内で含有する際には、焼成温度によって得られる多孔質保護層の気孔率は変化するものであるが、焼成後の多孔質保護層の気孔率としては25〜50%の気孔率を有することが望ましく、このような範囲内の気孔率を得るべく、焼成温度は、昇華粉末の含有量を考慮して1400〜1600℃の範囲内で適宜調整すればよい。
【0024】
また、本発明では、昇華性粉末を含有する未焼成保護層と、未焼成基体とを、未焼成固体電解質層を挟んで対向するように積層した未焼成積層体を同時焼成するにあたり、未焼成保護層の気孔率の変化を、焼成温度1400〜1600℃の範囲内にて10%以内に制御することが好ましい。つまり、未焼成積層体の同時焼成にあたっては、上述のように各焼成温度に対する未焼成保護層の焼成収縮率を安定にすることがポイントとなるが、各焼成温度に対する未焼成保護層の焼成収縮率の安定化は、各焼成温度に対する未焼成保護層の気孔率の変化を安定化させることにつながる。そこで、未焼成積層体を同時焼成する場合に、未焼成保護層の気孔率の変化を、上記焼成温度の範囲内にて10%以内とすることで、反りの発生を抑えた良好な素子を得ることが可能となる。なお、このように気孔率の変化を各焼成温度に対して10%以内に調整するには、具体的に真球状の昇華性粉末を用いることで達成可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】
1.ガスセンサの構造
図1は、本発明の積層型ガスセンサ素子Aが組み込まれたガスセンサであり、内燃機関の排気管に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度の測定に使用される酸素センサBの一例を示した断面図である。
【0026】
この酸素センサBに組み込まれる積層型ガスセンサ素子A(以下、単に「素子A」ともいう)は、その前方側が主体金具3の先端より突出するように当該主体金具3に形成された挿通孔32に挿通されると共に、挿通孔32の内周面と素子Aの外周面との間が、ガラス(例えば結晶化亜鉛シリカほう酸系ガラス)を主体に構成される封着材層41により封着されている。主体金具3の先端部外周には、素子Aの突出部分を覆う金属製の二重のプロテクタ61、62が固着されている。このプロテクタ61、62は、キャップ状を呈するもので、その先端や周囲に、排気管内を流れる排ガスをプロテクタ61、62内に導くガス導入孔61a、62aが形成されている。一方、主体金具3の後端部は外筒7の先端部内側に挿入され、その重なり部分においては、周方向にレーザー溶接等の接合が施されている。なお、主体金具3の外周部には、酸素センサB(主体金具3)を排気管にねじ込んで取り付けるための取り付けねじ部31が螺設されている。
【0027】
そして、素子Aは、第1コネクタ51、長手状金属薄板52、第二コネクタ部53及び絶縁板(図示せず)と、リード線9とを介して、図示しない外部回路と電気的に接続されている。また、都合4本のリード線9は、外筒7の後端側に位置するグロメット8を貫通して延びている。また、素子Aの長手方向(軸線方向)において、封着材層41の少なくとも一方の側に隣接する形で(本実施例では封着材層41の検出部Xに近い端面側に隣接して)、多孔質無機物質(例えばタルク滑石の無機物質粉末の圧粉成形体あるいは多孔質仮焼体)で構成された緩衝層42が形成されている。この緩衝層42は、封着材層41から軸方向に突出する素子Aを外側から包むように支持し、過度の曲げ応力や熱応力が素子Aに加わるのを抑制する役割を果たす。
【0028】
2.積層型ガスセンサ素子の製造、及び構造
次に、本発明の主である積層型ガスセンサ素子について、図2を用いて説明する。なお、図2は図1に示した酸素センサBに備えられている素子Aの分解斜視図である。なお、以下の製造方法では、分かり易さのために素子1個の大きさのシート(未焼成体)に各パターンを印刷し、積層するかのように説明する。実際の工程では、10個の素子を製造することができる大きさのグリーンシート(未焼成セラミックシート)に所要個数分の印刷を施し、積層した後、素子形状の未焼成積層体を切り出し、これらを脱脂し、焼成して素子を製造した。さらに、1回の製造工程では300個の素子を一度に製造している。
【0029】
(1)未焼成基体の作製
基体用原料粉末であるアルミナ粉末(純度99.99%以上、平均粒径0.4〜0.5μm、比表面積4〜5m/g)を1000gと、基体用バインダであるブチラール樹脂115g及びジブチルフタレート47.5gと、トルエン及びメチルエチルケトンとからなる所定量の混合溶媒とを混合し、スラリーとした後、ドクターブレード法により、第1未焼成基体と第2未焼成基体を作製した。第1未焼成基体は厚さ0.55mm、長手方向の長さ5.0cm、幅4mmであり、焼成後は第1セラミック基体11aとなる。第2未焼成基体は厚さ0.55mm、長手方向の長さ5.0cm、幅4.0mmであり、焼成後は第2セラミック基体11bとなる。
【0030】
(2)ヒータパターンの形成
アルミナ粉末(純度99.99%以上、平均粒径0.3〜0.4μm)6重量部と白金粉末100重量部を配合し、バインダと溶媒とを加えて混練した導電層用ペーストを、第1未焼成基体(焼成後、第1セラミック基体11a)の一方の面に蛇行状の発熱部パターン(焼成後、発熱部121)を印刷、乾燥させ、その後、アルミナ粉末(純度99.99%以上、平均粒径0.4〜0.5μm)2重量部と白金粉末100重量部を配合した導電層用ペーストにて、一対のヒータリードパターン(焼成後、ヒータリード部122)を印刷、乾燥させ、ヒータパターン(焼成後、発熱抵抗体12)を形成した。
【0031】
次いで、第1未焼成基体の一端近傍に、発熱抵抗体12との導通を図るためのスルーホール(焼成後、スルーホール111a)を基体の厚み方向に貫通するように2個形成し、それぞれのスルーホールの内壁面にヒータリードパターンと同様の導電層用ペーストを印刷、乾燥させた。さらに、第2未焼成基体の第1未焼成基体のヒータパターンに面する側とは反対側の面のスルーホールに対応する位置に、同じ導電層用ペーストを用いて発熱抵抗体用端子パターン(焼成後、発熱抵抗体用端子19a)を2個印刷、乾燥させた。その後、第1未焼成基体のヒータパターンが形成された面上に、第2未焼成基体(焼成後、第2セラミック基体11b)を積層して、圧着接合し、未焼成基体(焼成されて、セラミック基体(詳細にはセラミックヒータ)11)を得た。
【0032】
(3)緩衝層パターンの形成
(2)で作製した未焼成基体における第2未焼成基体上に、アルミナ粉末80重量部、ジルコニア粉末20重量部を配合した緩衝用ペーストを用いて、緩衝層パターン(焼成後、緩衝層13)を40±10μmの厚さに印刷、乾燥させた。
【0033】
(4)基準電極パターンの形成
(3)で形成した緩衝層パターン上に、白金粉末87重量部と共沈イットリア含有ジルコニア粉末13重量部とを含有し、バインダと溶媒とを加えて混練した導電層用ペーストを用いて、基準電極部パターン(焼成後、基準電極部141a)及び基準電極リード部パターン(焼成後、基準電極リード部142a)からなる基準電極パターン(焼成後、基準電極14a)を20±10μmの厚さに印刷、乾燥させた。
【0034】
(5)未焼成固体電解質層の形成
ジルコニア粉末(純度99.9%以上、平均粒径0.3〜0.4μm)50重量部とアルミナ粉末(純度99.9%以上、平均粒径0.4〜0.5μm)50重量部を分散剤0.5重量部と共に所定量のアセトンの中に混合し、樹脂製のポットにて3時間混練してスラリーを用意した。一方、バインダ15重量部とブチルカルビトール33.3重量部、ジブチルフタレート0.8重量部を所定のアセトンの中に混合したバインダ溶液を用意した。このバインダ溶液をスラリーに加えて、混練しながらアセトンを蒸発させて、固体電解質層用ペーストを調合した。なお、調合後のペーストに適宜ブチルカルビトールをさらに加えてペーストの粘土を調整した。そして、この固体電解質層用ペーストを、緩衝層用パターン上の基準電極部パターンを少なくとも覆うように、厚さ45±10μm、長手方向の長さ7.0mm、幅4.0mmに印刷、乾燥させて、未焼成固体電解質層(焼成後、固体電解質層15)を形成した。
【0035】
(6)絶縁層パターンの形成
(1)に手順に沿ってだ第1未焼成基体を別途作製し、この基体にブチルカルビドール45重量部及び所定量のアセトンを加えて溶解させ、4時間混合した後、アセトンを蒸発させて、絶縁層用ペーストを調合した。この絶縁層用ペーストを、緩衝層パターン上であって、未焼成固体電解質層が形成されていない部分に45±10μmの厚さで印刷、乾燥させて、絶縁層パターン(焼成後、絶縁層16)を形成した。但し、この絶縁層パターンは、スルーホール(焼成後、スルーホール161)を設ける形態で形成した。
【0036】
(7)検知電極パターンの形成
(5)及び(6)で形成した未焼成固体電解質層と絶縁層パターンの上に、(4)で調合した導電層用ペーストを用いて、検知電極部パターン(焼成後、検知電極部141b)及び検知電極リード部パターン(焼成後、検知電極リード部142b)からなる検知電極パターン(焼成後、検知電極14b)を20±5μmの厚さで印刷、乾燥させた。
【0037】
(8)補強層用未焼成体の作製
(1)で調合したスラリーを用いてドクターブレード法により、第1未焼成補強層及び第2未焼成補強層を作製した。第1未焼成補強層は厚さ0.55mm、長手方向の長さ4.0cm、幅4.0mmであり、焼成後第1補強層18aとなる。なお、この第1未焼成補強層の一端近傍には、基準電極14a及び検知電極14bとの導通を図るためのスルーホール(焼成後、スルーホール181a)を基体の厚み方向に貫通するようにそれぞれ形成した。また、第2未焼成補強層は厚さ0.55mm、長さ4.0cm、幅4.0mmであり、焼成後、第2補強層18bとなる。なお、この第2未焼成補強層の一端近傍についても、基準電極14a及び検知電極14bとの導通を図るためのスルーホール(焼成後、スルーホール182a)を、未焼成第1補強層のスルーホール(焼成後、スルーホール181a)と同軸上になるように、かつ基体の厚み方向を貫通する形でそれぞれ形成した。
【0038】
その後、第1未焼成補強層を(7)で形成した検知電極パターンの検知電極リード部パターンを覆うように、かつスルーホール(焼成後、スルーホール181a)のうちの1つが絶縁層パターンに設けたスルーホールと同軸上になるように積層した。ついで、第2未焼成補強層を、第1未焼成補強層の検知電極リード部パターンが形成された面とは反対側の面上に、スルーホール(焼成後、スルーホール181b)の両者が第1未焼成補強層に設けたスルーホールと同軸上になるように積層した。
【0039】
(9)電極端子用パターンの形成
(2)にてヒータリードパターンを形成するために調合した導電性ペーストを使って、第1未焼成補強層、第2未焼成補強層、緩衝層パターンの各々に形成されたスルーホールの内壁面を印刷、乾燥させた。さらに、ヒータリードパターンと同様の導電層用ペーストを用いて、未焼成第2補強層の未焼成第1補強層と面する側とは反対側の面のスルーホールに対応する位置に、基準電極14a及び検知電極14bの各々と信号の入出力を行うための電極端子用パターン(焼成後、電極端子19b)を、2個印刷、乾燥させた。
【0040】
(10)未焼成保護層の作製
保護層原料粉末として(1)の第1、第2未焼成基体と同様のアルミナ粉末(純度99.99%以上、平均粒径0.4〜0.5μm、比表面積4〜5m/g)780gと、真球状の昇華性粉末である球状カーボン粉末(平均粒径5μm、粒度分布2.27〜17.38μm)220gと、分散剤と、トルエン及びメチルエチルケトンとからなる混合溶媒とを混合し、ついで保護層用バインダであるブチラール樹脂97g及びジブチルフタレート47gを加えて混合して、スラリーとした。なお、このとき球状カーボン粉末を除く保護層原料粉末を35〜65体積%とした場合に、球状カーボン粉末はその逆の65〜35体積%の割合で含有されている(即ち、球状カーボン粉末と保護層原料粉末の合計で100体積%となる)。そして、上記スラリーを、ドクターブレード法により、厚さ270μm、長手方向の長さ10.0mm、幅4.0mmの未焼成保護層(焼成後、多孔質保護層17)を成形した。そして、得られたこの未焼成保護層を(7)で形成した検知電極パターンの検知電極部パターン(焼成後、検知電極部141b)を覆うように、かつ未焼成固体電解質層上に第1補強層と重ならないように積層して、未焼成積層体(焼成後、積層型ガスセンサ素子A)を得た。
【0041】
(11)脱脂及び焼成
(1)〜(10)で得られた未焼成積層体を、大気雰囲気下において、室温から420℃まで昇温速度10℃/時間で昇温させ、2時間保持し、脱脂処理(脱バインダ処理)を行った。その後、大気雰囲気下において、1100℃まで昇温速度100℃/時間で昇温させ、さらには1520℃まで昇温速度60℃/時間で昇温させ、その温度で1時間保持し焼成行い、積層型ガスセンサ素子Aを得た。そして、得られた積層型ガスセンサ素子Aには反りの発生は認められず、多孔質保護層17にクラック及び剥離も確認されなかった。
【0042】
【実験例】
▲1▼焼成挙動と焼成収縮の関係
まず、図2に示す多孔質保護層17となる未焼成保護層と、セラミック基体11となる未焼成基体との各々の焼成収縮率がどのような傾向を示すかを、以下に示す手順にて作製したテストピースを用いて観察した。なお、未焼成保護層と未焼成基体を構成する保護用原料粉末と基体用原料粉末の主体をなすセラミック成分としては、焼成挙動を略等しいものとするために、同一のアルミナ粉末のみを使用して行った。
【0043】
テストピースは、原料粉末としてアルミナ粉末(純度99.99%以上、平均粒径0.4〜0.5μm、比表面積4〜5m/g)780gと、昇華性粉末であるカーボン粉末と、分散剤と、トルエン及びメチルエチルケトンとからなる混合溶媒とを混合し、ついでバインダであるブチラール樹脂97g及びジブチルフタレート47gを加えて混合して、スラリーとした後、ドクターブレード法により、厚さ0.27mm、長手方向の長さ50mm、幅4.0mmのもの(未焼成セラミックシート)を作製することで得た。なお、このテストピースについては3種類のものを9個ずつ準備し、試料番号1のものは昇華性粉末として、真球状をなした球状カーボン粉末(平均粒径5μm、粒度分布2.27〜17.38μm)を45体積%として55体積%、試料番号2のものは昇華性粉末として、真球状をなした球状カーボン粉末(平均粒径10μm、粒度分布6.72〜29.91μm)を上記原料粉末を55体積%として45体積%、試料番号3のものは昇華性粉末として、不定形のカーボン粉末(平均粒径3μm、粒度分布0.9〜12.0μm)を上記原料粉末を45体積%として55体積%の割合で含有させて、それぞれ作製した。
【0044】
また、これら試料番号1〜3のテストピースについては、いずれも多孔質保護層を想定したものであるが、これら多孔質保護層を想定したテストピースとの焼成収縮率の違いを観察すべく、試料番号4として、図2に示すセラミック基体11を想定したテストピースを以下の手順で作製した。この試料番号4のテストピースとしては、アルミナ粉末(純度99.99%以上、平均粒径0.4〜0.5μm、比表面積4〜5m/g)を1000gと、バインダであるブチラール樹脂115g及びジブチルフタレート47.5gと、トルエン及びメチルエチルケトンとからなる所定量の混合溶媒とを混合し、スラリーとした後、ドクターブレード法により、厚さ0.55mm、長手方向の長さ50mm、幅4.0mmのもの(未焼成セラミックシート)を9個作製した。なお、多孔質保護層を想定した試料番号1〜3と、セラミック基体を想定した試料番号4は焼成挙動を等しくするため、互いに原料粉末としてはアルミナ粉末を主体にして(詳細には、アルミナ粉末100重量%)として作製した。
【0045】
ついで、これら試料番号1〜4の各焼成温度における焼成収縮率を測定すべく、各試料番号にあたるテストピースの長手方向の長さをL1とし、各々炉に入れて、1100℃まで毎時100℃ずつ昇温させ、この1100℃からは毎時60℃で所定温度(1100℃、1200℃、1300℃、1350℃、1400℃、1450℃、1500℃、1550℃、1600℃)まで昇温させた後、この所定温度で1時間保持し、ついで炉冷してから取り出した各テストピースの長手方向の長さをL2とした場合に、下記式〔1〕で示される割合S(%)を焼成収縮率とする。
S(%)=(L1−L2)/L1×100 〔1〕
そして、試料番号1〜4の各焼成温度における上記〔1〕の式にて算出された焼成収縮率を、図3のグラフにて示す。
【0046】
この図3から分かるように、真球状の球状カーボン粉末を昇華性粉末として使用した試料番号1及び2については、同種の原料粉末を主体とし、昇華性粉末を含有していない試料番号4と比較して、各焼成温度に対する焼成収縮率が略同等に推移している。一方、不定形のカーボン粉末を昇華性粉末として使用した試料番号3は、1450℃以降の焼成温度における焼成収縮率が試料番号4と異なる推移を示している。このことから、未焼成固体電解質層を挟んで対向して積層される未焼成基体と同種のセラミック成分を主体に未焼成保護層を構成し、かつこの未焼成保護層に、真球状をなす昇華性粉末(球状カーボン粉末)を含有させることにより、未焼成保護層と未焼成基体との焼成収縮及び焼成挙動の双方を略同等なものにすることができることが分かる。
【0047】
▲2▼多孔質保護層の気孔率
上記▲1▼にて得られた試料番号1〜3のテストピースのうち、焼成温度1400℃、1450℃、1500℃、1550℃、1600℃の各焼成温度における気孔率を測定した。なお、気孔率は、各テストピースの見掛け体積(気孔体積を含む)Vと、空気中における重量m1と、水中に浸漬しただけの重量m2と、水中に浸漬後十分に気孔に水を含有させた(真空脱泡、沸騰脱泡等による)重量m3とを用いて、下記式〔2〕にて算出される割合P(%)とする。
P(%)={(m3−m1)/(m3−m2)}×100 〔2〕
そして、試料番号1〜3の各焼成温度における上記〔2〕の式にて算出された気孔率を、図4のグラフにて示す。
【0048】
この図4から分かるように、真球状の球状カーボン粉末を昇華性粉末として使用した試料番号1及び2については、焼成温度1400〜1600℃の範囲内にて10%以内で変化している。一方、不定形のカーボン粉末を昇華性粉末として使用した試料番号3は、上記焼成温度の範囲内にて30%近くも変化している。このことから、真球状の昇華性粉末(球状カーボン粉末)を含有させた未焼成保護層では、各焼成温度におけるそれぞれの気孔は収縮を生ずるもののその形状を維持するように作用しているものと考えられ、各焼成温度に対する気孔率の変化が制御されると共に、安定することが分かる。
【0049】
▲3▼電子顕微鏡写真
上述した(1)〜(11)の工程に沿って、2種類の積層型ガスセンサ素子を作製した。ここで、上記(10)の工程にて用いられる昇華性粉末として、一方の素子(以下、実施例素子という)では球状カーボン粉末(平均粒径5μm、粒度分布2.27〜17.38μm)を、他方の素子(以下、比較例素子という)では不定形のカーボン粉末(平均粒径3μm、粒度分布0.9〜12.0μm)を使用した。なお、いずれの昇華性粉末も、保護層原料粉末を45体積%として55体積%の割合で含有させた。また、上記(11)の工程では、未焼成積層体の焼成温度を1520℃としたが、この2種類の素子を作製するにあたっては、焼成温度を1450℃とした。
【0050】
そして、焼成後を経て得られた実施例素子と比較例素子について、多孔質保護層を含む形で素子の積層方向に対し直交する断面をとり、それぞれの多孔質保護層の表面を、電子顕微鏡(JEOL社(日本電子データム(株))製、型式JSM−5410)により500倍及び5000倍に拡大し、撮影した写真を図5〜図8に示す。図5は実施例素子の多孔質保護層表面を500倍に拡大した写真、図6は実施例素子の多孔質保護層表面を5000倍に拡大した写真、図7は比較例素子の多孔質保護層表面を500倍に拡大した写真、図8は比較例素子の多孔質保護層表面を500倍に拡大した写真である。
【0051】
図5及び図6では、真球状の球状カーボン粉末を用いたことに反映して、略球状の気孔がそれぞれ形成されており、気孔同士が隣接した場合には、多孔質保護層を構成する骨材の壁の一部に孔が開き、連通孔を形成している。一方、図7及び図8では、不定形カーボンを使用したために元のカーボン粉末の形状は分かり難く、無数の隙間が存在している断面組織であって、球状カーボン粉末を用いた場合とでは、気孔径や気孔形状が明らかに異なる断面組織を示すことが分かる。
【0052】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば積層型ガスセンサ素子の構成としては、ICP(基準酸素生成)方式にて使用できるもの、及び基準ガス導入方式にて使用できるもの等、あらゆる構成の素子に適用可能である。また、多孔質保護層を形成するにあたり、上記実施例のように1枚の未焼成保護層を用いて形成せずに、球状カーボン粉末の含有量が異なる2つの未焼成保護層を成形し、それらを積層した上で素子を製造することで、得られる多孔質保護層の気孔率を層状に変化させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の積層型酸素センサ素子が組み込まれた酸素センサの断面を示す模式図である。
【図2】 本発明の製造方法により得られる素子の分解斜視図である。
【図3】 真球状の球状カーボン粉末を含有した未焼成セラミックシート(本発明の未焼成保護層を想定)にあたる試料番号1及び2、不定形のカーボン粉末を含有した未焼成セラミックシートにあたる試料番号3、これら未焼成セラミックシートを構成する主体のセラミック成分を主体とする未焼成セラミックシートにあたる試料番号4それぞれに対して、各焼成温度における焼成収縮率の変化を示したグラフである。
【図4】 真球状の球状カーボン粉末を含有した未焼成セラミックシート(本発明の未焼成保護層を想定)にあたる試料番号1及び2、不定形のカーボン粉末を含有した未焼成セラミックシートにあたる試料番号3、これら未焼成セラミックシートを構成する主体のセラミック成分を主体とする未焼成セラミックシートにあたる試料番号4それぞれに対して、各焼成温度における気孔率の変化を示したグラフである。
【図5】 球状カーボン粉末を含む未焼成多孔質層を用いて焼成された積層型ガスセンサ素子において、多孔質保護層の断面を倍率500倍にて拡大した電子顕微鏡写真である。
【図6】 球状カーボン粉末を含む未焼成多孔質層を用いて焼成された積層型ガスセンサ素子において、多孔質保護層の断面を倍率5000倍にて拡大した電子顕微鏡写真である。
【図7】 不定形のカーボン粉末を含む未焼成多孔質層を用いて焼成された積層型ガスセンサ素子において、多孔質保護層の断面を倍率500倍にて拡大した電子顕微鏡写真である。
【図8】 不定形のカーボン粉末を含む未焼成多孔質層を用いて焼成された積層型ガスセンサ素子において、多孔質保護層の断面を倍率5000倍にて拡大した電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
A;積層型ガスセンサ素子、11、セラミック基体(セラミックヒータ)、11a;第1セラミック基体、11b;第2セラミック基体、111a、161、181a、181b;スルーホール、12;発熱抵抗体、121;発熱部、122;ヒータリード部、13;緩衝層、14a;基準電極、14b;検知電極、15;固体電解質層、16;絶縁層、17;多孔質保護層、18a;第1補強層、18b;第2補強層、B;酸素センサ(ガスセンサ)

Claims (7)

  1. 一対の電極を配設した固体電解質層と、この電極の少なくとも一方を覆う多孔質保護層と、この多孔質保護層を構成する主体のセラミック成分と同種のセラミック成分を主体に構成されると共に、上記多孔質保護層と上記固体電解質層を挟んで対向するセラミック基体とを少なくとも積層してなる積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、
    上記電極となる一対の電極パターンが形成される上記固体電解質層となる未焼成固体電解質層を、上記セラミック基体となる未焼成基体に積層する第1工程と、
    真球状の昇華性粉末及びバインダを含有する上記多孔質保護層となる未焼成保護層を、上記未焼成固体電解質層を挟んで上記未焼成基体と対向するように、かつ上記未焼成固体電解質層に形成される上記未焼成電極パターンの少なくとも一方を覆うように積層することで、未焼成積層体を形成する第2工程と、
    この未焼成積層体を同時焼成する第3工程と、を備えることを特徴とする積層型ガスセンサ素子の製造方法において、
    上記昇華性粉末は、粒度分布が2〜30μm、平均粒径が4〜15μm、一つの粒子における(最大直径)/(最小直径)の比が1.2以下の範囲内にある積層型ガスセンサ素子の製造方法。
  2. 上記昇華性粉末は、球状カーボン粉末である請求項1に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
  3. 上記未焼成保護層は、上記昇華性粉末と該昇華性粉末を除くセラミック成分を主体とする保護層用原料粉末との合計を100体積%とした場合に、該昇華性粉末を35〜65体積%の範囲内で含有している請求項1又は2に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
  4. 記未焼成保護層中の保護層用原料粉末の主体をなすセラミック成分の配合割合R2は、上記未焼成基体中の基体用原料粉末の主体をなすセラミック成分の配合割合R1の90%以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
  5. 上記セラミック成分は、アルミナである請求項1〜のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
  6. 一対の電極を配設した固体電解質層と、この電極の少なくとも一方を覆う多孔質保護層と、上記多孔質保護層と上記固体電解質層を挟んで対向するセラミック基体とを少なくとも積層してなる積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、上記セラミック基体となる未焼成基体と、昇華性粉末を含有する上記多孔質保護層となる未焼成保護層とを、上記固体電解質層となる未焼成固体電解質層を挟んで対向するように、かつ当該未焼成保護層が上記未焼成固体電解質層に形成される一対の未焼成電極パターンの少なくとも一方を覆うように積層して未焼成積層体を形成し、この未焼成積層体を同時焼成するにあたり、上記未焼成保護層の気孔率の変化が、焼成温度1400〜1600
    ℃の範囲内において10%以内にあることを特徴とする請求項1に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法により得られる積層型ガスセンサ素子。
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