JP4727809B2 - シリンダー面の研磨装置及びその研磨方法 - Google Patents

シリンダー面の研磨装置及びその研磨方法 Download PDF

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  • Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダー面の研磨装置及びその研磨方法及びその研磨方法に使用するおもりに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、シリンダー研磨装置には各種の構造のものが知られている。例えば、シリンダー面の曲率半径に応じて、比較的小さな曲率半径のシリンダー面を研磨により得るためにはドラム型研磨装置が用いられ、比較的大きな曲率半径のシリンダー面を研磨により得るためには縦横往復型研磨装置が用いられている。
(1)ドラム型研磨装置
諸説があるが、この研磨装置は比較的小さな曲率半径R(R≦150〜250[mm])のシリンダー面を研磨により得るために用いられている。というのは、例えば、曲率半径R=250mmのシリンダー面を得るためには、ドラムの直径φが500[mm]になるので、これ以上大きな曲率半径のシリンダー面を有する加工物(光学部品)を研磨によって製作するのには適合しにくいからである。
【0003】
このドラム型研磨装置では、凸面側曲率を有するドラムが横方向(水平方向)に延びる回転軸を中心として回転運動される。
【0004】
一方、そのドラムに対して上下いずれかに配置の凹面側曲率を有する円弧断面形状部材が回転軸の延びる方向に往復直線運動される。ドラムと円弧断面形状部材とのいずれか一方が光学部品がセットされる加工物側とされ、いずれか他方がラップ材又はポリシャ材が貼り付けられる工具側とされている。そして、加工物側と工具側とが相互に相対運動を行うことによってシリンダー面が研磨される仕組みになっている。
【0005】
また、ドラムが回転運動と往復直線運動を兼ねる場合もあり、ドラムの回転軸が縦方向の場合もある。
【0006】
加工物が凸面の場合、その曲率半径の外周を満たすように、ドラムに加工物(もしくは同一素材によるダミー材)を、ホットメルト系のワックス等の適当な接着剤で一様に貼り付けなければならない。これは、シリンダー面の曲率半径Rが小さい量産品に対して効果的な手法である。しかし、シリンダー面の曲率半径Rが大きな僅少品に対しては相対的にコストが高くなる。
一方、加工物が凹面の場合、その曲率半径の外周を満たすように、ドラムにラップ材、ポリシャ材を一様に貼り付けなければならない。
【0007】
円弧断面形状部材は、それが加工物側、工具側にかかわらず、円弧の深さが加工面との直線案内を兼ねているため、適度の幅を与えて調整される。例えば、シリンダーの母線軸の捻れやすい条件、例えば、比較的大きな曲率半径を有し、幅の小さな加工物の場合、ドラム側と同様に同一部品かダミー材で円弧を満たす必要がある。
【0008】
ドラム型研磨装置の利点は、研磨工具と加工物とのいずれか一方が回転運動するので、半径方向の断面形状の真円度が優れている点にある。
(2)縦横往復型研磨装置
諸説があるが、この型の研磨装置は曲率半径(R≧150[mm])の広い範囲で用いられている。
【0009】
一見、普通の横振り型レンズ研磨機にも似ており、光学研磨業界では、一般にシリンダー研磨機と言えば、この型を指している。
【0010】
凸面側曲率を有する円弧断面形状部材が下軸側横方向の直線案内で往復運動され、一方、凹面側曲率を有する円弧断面形状部材が上軸側縦方向の直線案内で往復運動され、両者のいずれか一方を加工物が貼り付けられる加工物側、いずれか他方をラップ材、ポリシャ材が貼り付けられる工具側として、両者が相互に相対運動を行うことによってシリンダー面を研磨する仕組みになっている。
【0011】
また、このものには、上軸側が直線案内を往復するのではなく、その加工物の曲率半径Rの中心を回転中心とし、任意の角度の範囲で往復運動を行う球心揺動機構を採り入れたものもある。その場合には、半径方向の断面形状の真円度が比較的良好である。
【0012】
上軸側は、加工物側、工具側にかかわらず必ず凹面であり、そのジグ背面部分には、通常シリンダーの母線軸が捻れないように、普通のレンズ研磨機に見られるようなカンザシを母線方向に多数挿入する複数の穴が設けられている。
【0013】
しかし、加工物をジグに接着する際、傾きがないように注意する必要があり、かつ、カンザシと穴との間にはガタがあるので、母線軸の捻れを完全に解消することは不可能である。また、単一のカンザシのみを装着する安価な装置も多く市販され、一般的には、シリンダー面の母線軸の傾きが十分に保証されないものが散見される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のドラム型のシリンダー研磨装置は、その曲率半径に応じてドラムの直径が決まるため、大きな曲率半径のシリンダー面を有する光学部材の研磨には使いにくい。また、研磨すべき光学部品としての加工物をドラム側に貼り付けた場合には、多くの同一光学部品材料、ダミー材が必要となる。
【0015】
また、本質的に加工物は、一般的なレンズ研磨で用いられる貼り付け油脂の他、ホットメルト系のワックス等の適当な接着剤を用いて、ドラム、レンズ貼り付け皿等のジグに接着するので、研磨で得られた形状精度が剥がすと同時に喪失するおそれがある。これらのジグは、加工途中でその都度行う測定の際に、測定機上での保持、調整作業等の邪魔にもなる。
【0016】
また、縦横往復型の研磨装置では加工物が凸面の場合、加工物は必ず下軸側に装着される。これは、一般のレンズ研磨でも同様で、凸面を上軸側に装着すると、加工物と工具との相対運動により界面に発生する摩擦力(F)とカンザシとの高さにより起こる転がりモーメントの向きと、加工物が工具の上を移動する際の位置関係で決まる面の傾きの向きが逆行するためであり、このレイアウトでは加工物がスムーズに運動できず、工具表面を損壊させる結果となるからである。
【0017】
ところで、一般的に工具側には以下の理由で溝が設けられている。
a:砥粒の均質的分散、案内をする。
b:粘弾性体素材のポリシャ表面の塑性変形によるツルーイング活性化に有効である。
c:ポリシャ材の減耗体、欠落部、余剰砥粒、その他異物の吸収に便利である。
【0018】
項目cは、溝が下側にある場合に特に効果的であり、溝が上側にある場合にはあまり期待できない。
【0019】
つまり、加工物が凸面で下軸側の場合、加工表面の表面あらさ、及び、表面欠陥は、加工物が凹面で上軸側の場合と比べて、界面に異物の介在が多いので相対的に悪化するからである。
【0020】
また、縦横往復型研磨装置では、加工物、工具にかかわらず、凹面の上軸側が前後に往復する際には、相手の側面から横殴りで接近し、高さ方向にカンザシの根元のレバー軸で逃げることによって凸面側との摺動を行っている。この横殴りの程度は曲率半径Rの変動に伴って変化し、結果的に圧力分布の変動を与えるため、研磨の条件設定を難しくしている要因のひとつとなっている。
【0021】
また、上記の変動要因を除去するため、加工物の曲率半径の中心を回転中心とし、任意の角度幅で揺動を行うことのできる球心揺動を導入したシリンダー研磨装置があるが、凹凸両面の球心揺動が実現されているものはなく、凹面は上軸側、凸面は下軸側とすることによって万能であるとしている。
【0022】
しかし、加工物側が凸面の場合、前述の様な欠点が現れる。
【0023】
すなわち、ドラム型の研磨装置、及び、球心揺動機構を付加した縦横往復型研磨装置の利点は、半径方向の断面形状の真円度が優れている点にあるが、ドラム型研磨装置は曲率半径Rの大きなシリンダー面を有する光学部材の研磨に対応できず、縦横往復型研磨装置では凸面の曲率半径Rを有する加工物は必ず下軸側に装着しなければならないので、表面欠陥、表面平滑性の良好な研磨が得られないという問題が発生する。
【0024】
また、従来のいずれの研磨装置でも、シリンダー面の半径方向と直角方向の母線方向の外周稜線に対する傾きの保証が何もない。
【0025】
両者は、加工物、研磨工具をジグに貼りつけ、いずれか一方の背面にカンザシを挿入しただけの安易な保持方法を採っており、母線の傾きは加工物の曲率半径Rと幅とで決まる深さ方向の案内面(加工物と研磨工具間の案内)だけに依存している。
【0026】
このため、加工物の曲率半径Rが大きく、幅が狭い場合は多くのダミー材料で半径方向の幅を稼がなければならないので、その接着に供するジグは巨大化し、かつ、作業が困難となり、余分のダミー材料の投入はコストアップの原因ともなる。
【0027】
また、シリンダーの母線軸が捻れないように、ジグの背面部分に、複数のカンザシ穴が設けたものもあるが、加工物をジグに接着する際、傾きが無いように注意する必要があり、かつ、カンザシと穴にはガタがあるので、母線軸の捻れを完全に解消することが不可能である。
【0028】
更に、一般的に、従来の研磨装置は、可視光線の範囲を対象とした光学部品に対応できればよかった。
【0029】
しかし、今後は諸般の需要に対応するため、特に紫外線側の光線を用いる場合、散乱及び吸収効果抑制のため、表面あらさ、表面欠陥をより一層最小化する必要があり、特別に装置側に工夫が必要となる。
【0030】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は加工物を常時上側に配置することによって表面あらさ、表面欠陥を最小化することのできるシリンダー面の研磨装置を提供することにある。
【0031】
また、第2の目的は、常時下側に設ける研磨工具は、球心揺動を行わせることにより、半径方向の断面形状の真円度を良好にすると共に、研磨条件の安定化を図ることのできるシリンダー面の研磨装置を提供することにある。
【0032】
更に、第3の目的は、常時上側に配置される加工物を加工物保持容器にはめ込むことにより、加工物の着脱作業の容易化を図ると共に、接着歪みの無い状態で加工を行うことにより、部品の形状精度の確保を図ることのできるシリンダー面の研磨装置を提供することにある。
【0033】
また、加工物保持容器の保持部稜線と研磨工具の球心揺動軸方向を組立調整により保証して研磨を行うことにより、シリンダー面の母線方向の外周稜線に対する傾きを自動的に修正する利点が付加されたシリンダー面の研磨装置を提供することにある。
【0034】
加えて、第4の目的は、加工物を研磨工具と共に研磨液面に沈める研磨水槽を付加することによって、微細な砥粒の選択作用および砥粒の均質的分散作用が起こり、より表面あらさ、表面欠陥の最小化を図ることのできるシリンダー面の研磨装置を提供することにある。
【0035】
さらに、その研磨水槽には、恒温研磨液循環装置を付加することによって、加工物及び研磨工具の温度膨張による寸法変化および形状変形の最小化、研磨工具のポリシャ材が光学研磨用のピッチである場合、コンプライアンスの安定化を図り、高精度な形状精度が得られる環境が確保されるシリンダー面の研磨装置を提供することにある。
【0036】
本発明の第5の目的は、このシリンダー面の研磨装置を用いて、高い形状精度の研磨方法及びこの研磨方法に用いるおもりを提供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のシリンダー面の研磨装置は、加工物を母線方向に往復直線運動させる上部駆動系と研磨工具の曲率半径の中心を回転中心として該研磨工具を往復動させる球心揺動機構を有する下部駆動系とを備え、
前記球心揺動機構は、車輪を有しかつ前記研磨工具が載置固定された台車型基盤と、前記研磨工具の曲率半径に対して所定の曲率半径の差を有する曲率軌道面が形成された曲率半径付与部材と、該曲率半径付与部材に動力を伝達する動力伝達機構とから構成され、前記台車型基盤は前記曲率半径付与部材に摺動可能に載置され、
前記動力伝達機構は、回転動力を直線運動に変換して前記台車基盤に伝達する動力伝達棒と、該動力伝達棒に嵌合されかつ連結棒に連結された第1リニアガイドブロックと、前記連結棒に嵌合されて回転と直線運動の自由度を有する第2リニアガイドブロックとから構成され、前記第1リニアガイドブロックは前記動力伝達棒の保持点の高さ変動を吸収し、前記第2リニアガイドブロックは前記動力伝達棒の傾き変動を吸収し、前記研磨工具の揺動方向と直角方向に前記加工物が往復直線運動され、前記台車型基盤は前記曲率軌道面を往復運動することによって、前記加工物が研磨されることを特徴とする
【0038】
請求項2に記載の研磨装置は、請求項1に記載のシリンダー面の研磨装置において、前記上部駆動系は、無接着状態で前記加工物を保持する加工物保持容器を有することを特徴とする。
請求項3に記載の研磨装置は、請求項2に記載のシリンダー面の研磨装置において、前記研磨工具の球心揺動軸と前記加工物保持容器の保持稜線とが平行であることを特徴とする。
請求項4に記載の研磨装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置において、研磨液を貯留する水槽を有し、前記加工物と前記研磨工具とが研磨液中に浸漬されて、前記加工物の研磨が行われることを特徴とする。
請求項5に記載の研磨装置は、請求項4に記載のシリンダー面の研磨装置において、前記水槽に温度制御された研磨液を循環させる研磨液循環装置が設けられていることを特徴とする。
【0039】
請求項6に記載の研磨装置は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置において、短軸方向と長軸方向とのいずれか一方に曲率を有する加工物を研磨するために、前記台車型基盤が上部台車型基盤と下部台車型基盤とから構成され、前記上部台車型基盤と前記下部台車型基盤との間に前記研磨工具の球心揺動方向が前記曲率を含む面内に向くように回転調整する旋回軸が設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の研磨装置は、請求項6に記載のシリンダー面の研磨装置において、前記研磨工具の球心揺動方向と前記加工物の長軸又は短軸方向とを合致させて位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とする。
【0040】
請求項8に記載のシリンダー面の研磨装置は、加工物の研磨工具のx方向の曲率半径の中心を回転中心として該研磨工具を往復動させるx方向球心揺動機構と前記研磨工具のy方向の曲率半径の中心を回転中心として該研磨工具を往復動させるy方向球心揺動機構とx方向の駆動力を伝達する動力伝達棒y方向の駆動力を伝達する動力伝達棒とを有する駆動系を備え、
前記x方向球心揺動機構は、車輪を有しかつ前記研磨工具が載置固定された台車型基盤と、
前記研磨工具のx方向の曲率半径に対して所定の曲率半径の差を有するx方向曲率軌道が形成されかつ車輪を有する台車型基盤とから構成され、
前記y方向球心揺動機構は、前記x方向曲率軌道に対して直交する方向でかつ前記研磨工具のy方向の曲率半径に対して所定の曲率半径の差を有するy方向曲率軌道が形成された基盤とから構成され、
前記x方向の駆動力を伝達する動力伝達棒は、前記研磨工具が固定された台車型基盤の下部に固定されると共に、該動力伝達棒にトラベリング・ナット・ブロックにより連結されたリニアガイド・ブロックが係合されてy方向に回転可能とされ、前記トラベリング・ナット・ブロックは駆動ネジによってx方向に移動可能とされ、前記研磨工具が載置固定された台車型基盤をx方向に駆動する動力伝達棒から構成され、
前記y方向の駆動力を伝達する動力伝達棒は、前記x方向曲率軌道が形成された台車型基盤の下部に固定されると共に、該動力伝達棒にトラベリング・ナット・ブロックにより連結されたリニアガイド・ブロックが係合されてx方向に回転可能とされ、前記トラベリング・ナット・ブロックは駆動ネジによってy方向に移動可能とされていることを特徴とする。
【0041】
請求項9に記載の研磨方法は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記加工物の保持高さを調整することにより前記加工物の加工面の曲率半径を修正することを特徴とする。
請求項10に記載の研磨方法は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記研磨工具が揺動中に前記加工物の稜線が前記研磨工具からはみ出すはみ出し量を調整することにより、前記加工物の加工面の曲率半径を修正することを特徴とする。
請求項11に記載の研磨方法は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記加工物の背面におもりを載せて加工物に偏荷重を与えて研磨を行い、研磨後に前記おもりを取り除くことにより、前記加工物の加工面の母線方向の真直度を修正することを特徴とする。
【0042】
請求項12に記載の研磨方法は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記加工物の往復直線運動中に該加工物の稜線が前記研磨工具からはみ出すはみ出し量を調整することにより、前記加工物の加工面の母線方向の真直度を修正することを特徴とする。
請求項13に記載のおもりは、請求項11に記載の研磨方法に用いるおもりであって、金属片の外周がシリコンゴム材により被覆されていることを特徴とする。
【0060】
【発明の実施の形態】
【0061】
【発明の実施の形態1】
図1は本発明のシリンダー研磨装置全体の構成を示す正面図である。シリンダー面の研磨装置は、装置本体1と恒温研磨液循環装置2とから大略なる。恒温研磨液循環装置2は研磨液の循環に用いる。装置本体1は上部駆動系1aと下部駆動系1bとから構成される。
(上部駆動系1a)
図2は図1に示す上部駆動系1aの正面図を示し、図3はその上部駆動系1aの側面図を示す。上部駆動系1aは加工物3(例えば、シリンダーレンズ)を保持し、その母線(長軸)方向に往復直線運動を与える役割を有する。
【0062】
加工物3は外周形状寸法より適度なギャップ寸法でくり貫いた加工物保持容器4の内部に、その凹凸の向きにかかわらず研磨工具21に対して上側でかつ無接着状態で保持されている。加工物保持容器4はその4隅の棒材5により吊り降ろされている。
【0063】
棒材5は移動基板6a(R)、6a(L)上の部材7a、7bにより挟み込まれ、かつ、その高さの調整が可能になっている。この加工物保持容器4の保持部稜線は、後述の研磨工具21の球心揺動軸の方向と平行になるように組立て調整される。
【0064】
また、移動基板6a(R)、6a(L)の側面板6bは加工物3の長軸方向の両側について左右2枚で分割されている。側面板6b、6bは連結板6cにより連結されている。連結板6cには図示を略す長穴が形成され、ボルト固定位置をずらすことによって、移動基板構造の長さ調整が可能であり、加工物3の長さに対して所定範囲内で調整が可能である。
【0065】
また、移動基板6aの側面板6bの4隅にはリニアガイドブロック8aが取り付けられている。リニアガイドブロック8aはリニアガイドレール8bにサポートされ、これによって、移動基板6a(R)、6a(L)は、加工物3の母線(長軸)方向に滑らかに移動可能とされている。この2本のリニアガイドレール8b、8bはレール用固定板8cにより、装置上部フレーム20に固定されている。
【0066】
この移動基板6a(R)の一端には、母線(長軸)方向と直角方向に長穴9aを有する自己潤滑性の樹脂材料からなる板材9が取り付けられている。この長穴9aに回転半径が調整可能なピン10が挿入されている。このピン10が回転により長穴9aの中を滑ることによって、移動基板6a(L)、6a(R)が長手方向に任意の振幅で往復直線運動がなされる。
【0067】
なお、ピン10の回転半径調整はクランク板11に設けられた長穴(図示を略す)の固定位置をずらすことによってなされる。クランク板11は、回転軸12を持つシャフト(図示せず)の下端に固定されている。このシャフトの上端にはタイミングプ−リ13が固定されている。回転動力はモータ14の出力軸に固定されているタイミングプ−リ15からタイミングベルト16を媒体として伝達される。回転軸12を持つシャフトはハウジング17に内蔵のボールベアリング(図示を略す)によりサポートされている。このハウジング17、モータ14は共通の基盤18の下面に固定されている。基盤18は両側面からブラケット19により、装置上部フレーム20に固定される。
(下部駆動系1b)
図4は図1に示す下部駆動系1bの正面図を示し、図5はその下部駆動系1bの側面図を示す。下部駆動系1bは研磨工具21の曲率半径Rの中心を回転中心として、研磨工具21を任意角度範囲内で往復運動させる役割を持つ。
【0068】
研磨工具21は、その基盤構成部21bとその表層部21aとからなる。この表層部21aは、前工程(スムージング工程)ではダイヤモンド・ペレット等を用いて、高能率の除去加工が行われ、仕上げ工程(ポリシング)ではポリウレタン、光学研磨用ピッチ等を用いて、低能率だが高精度な研磨加工が行われる。
【0069】
研磨工具21は球心揺動機構の一部を構成する台車型基盤22に載置固定されている。その台車型基板22の四隅には車輪23が設けられている。研磨工具21は、曲率半径付与部材24を往復動される。曲率半径付与部材24は研磨工具21の曲率半径Rに対してΔRの曲率半径差を有する曲率軌道面24a、24bを有する。研磨工具21は曲率軌道面24a、24aを台車型基盤22が往復することにより、任意の角度で球心揺動がなされる。
【0070】
すなわち、図4(a)に示すように、凸面の加工物3(CX)に対して、R+ΔRの凹形状曲率軌道面24a(CC)が与えられ、図4(b)に示すように、凹面の加工物3(CC)に対して、R−ΔRの凸形状曲率軌道24(CX)が与えられる。
【0071】
各種の加工物3の曲率半径Rにより、研磨工具21だけではなく、曲率半径付与部材24も交換する。その交換の際、適切なジグ(図示せず)により、軌道上の車輪23がわずかに浮き上がるように台車型基盤22は保持されている。これにより、その交換作業は容易となる。
【0072】
車輪23には、図5に示すように曲率軌道面24a、24bを移動中に脱線することがないように、内側にフランジ23aが設けられている。これらの車輪23の回転軸25を持つシャフト(図示せず)は台車型基盤22の四隅下部に固定のハウジング26に内蔵のボール・ベアリング(図示せず)によりサポートされている。
【0073】
27は動力伝達機構の一部を構成する動力伝達棒であり、この動力伝達棒27は、研磨工具21に球心揺動のための駆動力を与える。この動力伝達棒27は台車型基盤22の下部両端に固定されている。この動力伝達棒27には、連結棒29により連結されたリニアガイドブロック28が嵌合されている。
【0074】
このリニアガイドブロック28は、ストッパ27aで制限された範囲内で高さ方向に自由に移動可能である。連結棒29の中間部には、回転と直線運動の自由度を有するリニアガイドブロック30が嵌合されている。このリニアガイドブロック30の下部にはハウジング32が固定されている。このハウジング32は回転軸31を有するシャフト(図示せず)をボール・ベアリング(図示せず)でサポートしている。ハウジング32は、クランク板33に対して移動調整可能である。連結棒29は、この連結棒29に回転半径が調整可能な軸31上のリニアガイドブロック30が嵌合されることによって、車軸25と直角方向に任意の振幅で往復平行運動する。この際に、連結棒29の両端のリニアガイドブロック28は、台車型基盤22を曲率軌道面24a、24bに沿って移動させる。
【0075】
台車型基盤22の移動による動力伝達棒27の傾き変動は、変動吸収機構としての中間のリニアガイドブロック30によって吸収され、動力伝達棒27の保持点の高さ変動は変動吸収機構としての両端のリニアガイドブロック28によって吸収される。
【0076】
回転軸31の回転半径調整は、クランク板33に設けられた溝(図示せず)とハウジング32外周部の段差(図示せず)との間の固定用ナット(図示せず)を緩めて位置をずらすことによってすることができる。
【0077】
クランク板33は、回転軸34を持つシャフト(図示せず)の上端に固定されている。このシャフトの下端には、タイミングプ−リ35が固定されている。回転動力はモータ36の出力軸に固定のタイミングプ−リ37からタイミングベルト38を動力伝達媒体として伝達される。
【0078】
回転軸34を持つシャフトはハウジング39に内蔵のボールベアリング(図示せず)によりサポートされている。このハウジング39は基盤40上面に固定され、モータ36は基盤41の下面に固定されている。両基盤40、41は装置下部フレーム材45上に固定の共有基盤42に、それぞれサポート材43、44により固定される。
【0079】
図6は、図1に示す研磨水槽57と研磨液56aの恒温研磨液循環装置を示す模式図である。
【0080】
加工物3は研磨工具21と共に研磨液56aの中に沈めて研磨加工が実施される。その際に、研磨液56aを貯留する研磨水槽57は、研磨工具21の側に固定されて、研磨工具21と共に球心揺動が行われる。研磨水槽57に供給する研磨液56dは以下の処理を行ってから研磨水槽57に循環供給される。
【0081】
すなわち、研磨水槽57の戻り口57aからタンク59に戻ってきた研磨液56bはフィルタ58により濾過される。タンク59側には、研磨液の恒常性を維持するため、ヒータ60、クーラ61、撹拌機62が設けられている。これにより、タンク59内の研磨液56cは一定温度に保持される。この研磨液56cがポンプ63により循環供給される。研磨液の蒸発量の補償は、液面キーパ装置64によってなされる。液面キーパ装置64はフロートスイッチ64aを有し、これによって開閉される電磁弁(図示せず)に接続の濾過水道水65がタンク29内に適量注入され、タンク29内の液面が一定量に保持される。
【0082】
図7は、短軸側もしくは長軸側のどちらか一方に曲率が在るシリンダーレンズに対して、曲率の在る方向と球心揺動の方向を合致させる旋回軸を付加した機構を示す。
【0083】
【台車型基盤22の他の実施の形態】
ここでは、図7(a)に示すように、台車型基盤22は、上部台車型基盤22aと下部台車型基盤22bとの上下二分割構成とされている。上部台車型基盤22aの底部には旋回軸66が設けられている。下部台車型基盤22bにはその中心部に穴が設けられている。下部台車型基盤22bの底部にはハウジング73が設けられている。旋回軸66は下部台車型基盤22bの穴を貫通してハウジング73内に突出されている。ハウジング73内にはスリーブ材69が設けられ、このスリーブ材69にはボールベアリング68が設けられている。
【0084】
旋回軸66の軸端にはフランジ部66aが設けられ、ボールベアリング68の内輪はそのフランジ部66aに挟み込まれ、ボールベアリング68の外輪はスリーブ材69に保持されている。
【0085】
スリーブ材69は、ハウジング73内部でその軸方向に適度のギャップ(g=1mm程度)が開くように移動可能である。通常、両台車型基盤22a、22bは複数のネジ67により固定されている。このネジ67をはずし、ハウジング73の底部に設置の複数のネジ71をねじ込むことにより、上部台車型基盤22aを持ち上げ、上部台車型基盤22aを下部台車型基盤22bに対して旋回可能とすることができる。
【0086】
これにより、短軸円筒加工、長軸円筒加工のいずれの場合でも、研磨工具21の球心揺動方向が曲率半径を含む面内に向くように、研磨工具21を回転調整することができる。
【0087】
ここで、図7(b)に示すように両台車型基盤22a、22bの側面にネジ72aを用いて位置決め規制板72を挟み込むことにより、短軸円筒面加工の際の位置再現性が確保される。また、図7(c)に示すように、上部台車型基盤22aの底部長軸方向に短軸側面幅Wと同間隔で溝72bを設け、位置決め規制板72cを挿入することにより、直角の位置合わせが容易にでき、長軸円筒面加工の際の位置再現性も確保される。位置決め規制板72、72c加工物3の長軸方向又は短軸方向と研磨装置21の揺動方向とを合致させる位置決め機構としての役割を果たす。
【0088】
【加工物保持容器4の変形例】
図8は、凹凸両方の曲率半径Rの加工物3(シリンダーレンズ)を接着なしで適切に保持する加工物保持容器4の模式図を示す。
【0089】
加工物3は極力低い部分を保持するのが鉄則である。加工物3としてのシリンダーレンズは曲率半径Rの大きさ、凹凸の向きにより、短軸面、長軸面の外周形状、寸法が異なり、注意が必要である。
【0090】
例えば、曲率半径Rの凹面の加工物3の場合、図8(e)、図8(f)に示すように、短軸側面は長軸側面よりも、寸法sだけ高い位置で保持しなければならない。このように、凹凸双方の曲率半径Rを持つシリンダー面を有する加工物3を適格に保持するには、加工物保持容器4の両端面の保持部が上下に調整可能である構造が望ましい。
【0091】
図8(a)、(c)に示すように、符号74は加工物保持容器4の機枠で、四隅に棒材5をねじ込むネジ74aが設けられている。長軸側面を保持するためのエッジ部材75の保持部稜線75aが加工物3の幅寸法よりもわずかに大きな間隔で平行に造り込まれている。このエッジ部材75は、研磨工具21の球心揺動軸21cに対しても平行になるように、装置本体1、上部駆動系1a側の組立、調整が行われる。なお、球心揺動軸21cは紙面に対して垂直方向に延びている。
【0092】
さらに、短軸側には、図8(b)、図8(d)に示すように、短軸側面保持用エッジ部材76がネジ76aにより固定されている。ここで、ネジ76aを通す機枠74側は長穴(図示せず)となっているため、曲率半径Rの大きさと凹凸の向きにより適宜に上下に調整可能となり、適切な条件で加工物が保持できる。
【0093】
また、機枠74に対して、各種寸法の長軸・短軸方向保持部材(エッジ部材)75、76を交換、装着することによって、広範囲の寸法の加工物に柔軟に対応できる。
【0094】
【発明の実施の形態2】
図9〜図16は本発明のシリンダー研磨装置による研磨法を示す模式図である。
【0095】
一般的に、ラッピング、ポリシングに関する加工物3の減耗状態は次式により表現される。
【0096】
[Prestonの経験則]
加工物の任意の座標上の減耗量は、以下の(1)式で表される。
【0097】
Δhx,y[μm]=η・px,y・vx,y・ΔTx,y ……(1)
ここで、η:減耗率(比例定数)[μm/(J/m−2)]
px,y・vx,y・ΔTx,y:単位面積に供給された機械的エネルギー[J/m-2]
px,y:加工圧力[Pa]
vx,y:加工物‐研磨工具間の相対速度[m/sec]
ΔTx,y:加工時間[sec]
ただし、x、y:加工面積上の座標
光学的シリンダー面の精度、円筒度は以下の要素に分解できる。
(i)R(曲率)方向断面の誤差および形状精度としての真円度。
(ii)母線方向の反り(真直度)、および母線の外周稜線に対する傾き。
【0098】
上記のうち、(i)の形状精度としての真円度は研磨工具の球心揺動により良好となり、(ii)の外周稜線に対する傾きは、加工物保持容器4の保持部エッジ稜線を研磨工具21の揺動軸と合致するように調整することによって公差範囲内に自動修正される。
【0099】
ここでは、曲率半径R誤差の修正方法、及び母線の真直度修正方法について述べる。
(1)曲率半径(R)を修正する研磨方法。
【0100】
曲率半径(R)の修正研磨法には[保持点高さ法]と[はみ出し法]とがある。
[保持点高さ法]
ここでは、説明の容易化を図るため、加工物(シリンダー・レンズ)3の曲率半径R=∞とする。
【0101】
加工物3(短軸寸法を2a、長軸寸法を2bとする)は、図9に示す研磨工具21上で短軸方向(x軸方向)に相対運動を行い、研磨加工がなされる。
【0102】
図9(a)は加工物3の静止状態を示し、図9(b)はX軸方向への相対運動状態を示している。
【0103】
図9(a)に示す静止状態のときには、加工面積をAとすると、任意の位置の圧力Pは加工物の重量Nを加工面積Aで除した値であり、平均圧力(P0=N/A)であり、一様(constant)であると考えられる。
【0104】
次に、図9(b)に示すように、加工物3にx軸方向に相対運動を与えると、界面の摩擦力F[N]と、その保持点高さL[mm]によって回転モーメントMyLが生じる。
【0105】
なお、F=μ・N[N]であり、μは摩擦係数である。Lはジグのエッジ高さを調整することにより可変することができる。また、MyL=F・Lである。
【0106】
この場合、加工面積Aの圧力分布には、図9(b)に示すように直線的な勾配が発生し、任意の位置の圧力(Px)は、次式で与えられる。
【0107】
Px=P0+C・x [Pa] ……(2)
ここで、Cは比例定数であり、C=MyL/Iy [Pa/mm]である。
【0108】
また、Iyは断面2次モーメントであり、I=a2・A/3 [mm3]である。
【0109】
Pxは、図9(c)に示すように、その面積で積分すれば、加工物の重量(N=2b・∫−a+a(Px)dx)になり、中心部の圧力は平均圧力(P0)に等しい。また、上記の範囲内で、x軸方向に往復運動がなされた場合、任意の位置での圧力は、応力振幅があるが時間的平均値(P−x)は結局一様にP0になる。なお、その図9(a)において、Vxは相対運動速度である。なお、「P−」の「−」は「P」の頭の上に付されているものと了解されたい。
【0110】
次に、図10に示すように、過剰に保持高さLを大きくした場合を仮定する。(2)式より、加工面積上での最大・最小圧力比Kは次式で与えられる。
【0111】
K=(P0+C・x)/(P0−C・x)
=(1+3・(μ・L)/a)/(1−3・(μ・L)/a) ……(3)
従って、(μ・L)=(a/3)・(K−1)/(K+1)
K=∞である場合、(μ・L)=(a/3)であり、この条件では最小圧力側がゼロになる。すなわち、ある摩擦条件下、例えば、摩擦係数μ=1では、保持点高さが、L≧a/3(加工物の短軸幅の1/6)を著しく超えた場合、応力振幅の時間的平均値(P−x)は一様にならない。
【0112】
図10に示すように、上記の保持条件で加工物と研磨工具との間で左側(−x方向)へ相対速度(Vx1)で摩擦運動した時、圧力分布はPx1となり、逆の方向の運動では圧力分布はPx2となる。従って、応力振幅の時間的平均値(Px)の短軸方向分布状態は、中心部では平坦だが両端で増大する傾向が得られ、結果Prestonの経験則から、両端部に向かって減耗量の増大化が図られる。
【0113】
保持点高さLによる曲率半径Rの修正法は、この効果を利用したものであり、減耗量の分布状態は、例えば、図11(a)、(b)に符号77a、77bで示した結果となり、曲率半径Rの凸面の加工物3では曲率半径Rを小さくすることができ、曲率半径Rの凹面の加工物3では曲率半径Rを大きくすることができる。
【0114】
このような修正は、具体的には図2、図3、図8に示す加工物保持工具4の高さ調整により実施可能である。
[はみ出し法]
説明の便宜のため、加工物(シリンダー・レンズ)3の曲率半径R=∞とする。図9、図10に示した加工物3のはみ出しの無い条件のもとでは、加工面積(A)上の任意の位置の加工時間(Tx)は、時計で計測した時間(Tw)と同一であり、一様(constant)である。
【0115】
しかし、図12に示すように、実際の研磨工具21は有限の幅(短軸寸法2α、長軸寸法2β)を有する。また、研磨を行うときに、加工物3(短軸寸法2a、長軸寸法2b)には、適度のはみ出し量dを与えることができる。
【0116】
ここで、研磨工具21は、加工物3の下面を短軸方向(−x方向)に移動中(研磨中)である。往復相対運動は【発明の実施の形態1】に示したように、振幅[AMP]及び回転数(回転角速度:ω[rad/sec])が調整可能なクランク機構、直線案内機構により容易になされる。研磨工具21のx方向移動量は次式で表される。
【0117】
研磨工具21の移動量ξは、ξ=[AMP]・sin(ω・T)
ここで、ω・Tは、研磨工具の位相角度[rad]、Tは時間[sec]である。
【0118】
図12(a)は、加工物3と研磨工具21の右側稜線が合致した状態を示し、加工物3の短軸方向の任意の座標xは、いまだ研磨工具21と接触している。図12(b)は、丁度座標xが研磨工具21の稜線上にある状態を示している。従って、今後、研磨工具21の移動方向が−x方向から反転して逆向き(+x方向)になり、同位置に復帰するまでは、実際上、この座標xの加工物3の面は研磨加工が行われない。図12(c)は、研磨工具21が最大にはみ出した状態を示しており、次の瞬間より逆向き(+x方向)に移動を開始する。
【0119】
ここで、xが研磨工具21と接触した期間の研磨工具21の位相角度をΘx、今後、研磨工具21の移動方向が逆向きになるまでの研磨工具21の位相角度をΘeとすれば、両方の合計はΘw=Θx+Θe=π/2 [rad]である。
【0120】
このように、加工物3の両端部分では、一定周期で研磨加工されない空白の時間帯(Te)が現れる。
【0121】
ここで、実時間(Tw)=研磨加工時間(Tx)+空走時間(Te)=一定とすれば、
任意の位置の研磨加工時間(Tx)は次式で与えられる。
【0122】
Figure 0004727809
ただし、(Θx/Θw)は接触率である。
【0123】
接触率を加味した研磨加工時間(Tx)の短軸方向の分布状態は、中心部では平坦であるが、両端で減少する傾向が得られ、その結果Prestonの経験則から、両端部に向かって減耗量の減少化が図られる。相対的に表現すると、中心部の減耗量の増大化が図られる。
【0124】
はみ出し量dによる曲率半径Rの修正法は、この効果を利用したものであり、減耗量の分布状態は、例えば、図13に符号78a、78bで示した結果となり、曲率半径Rの凸面の加工物3では曲率半径Rを大きくすることができ、曲率半径Rの凹面の加工物3では曲率半径Rを小さくすることができる。
【0125】
このような修正は、具体的には、図5に示すクランクの振幅調整等により実施可能である。
(2)母線の真直度を修正する研磨方法
母線の反りδ(長軸方向真直度)の修正研磨法には、[偏荷重法]と[はみ出し法]とがある。
[偏荷重法]
図14は偏荷重の付加による母線の反りδ(長軸方向真直度)の修正法を説明するための図である。
【0126】
図14(a)に示すように、一様な断面形状の材料の加工物3の自重のみでの研磨を行う加工状態では、加工面積Aの任意の位置yの圧力Pyは、加工物の重量Nを断面積Aで除した値、すなわち、平均圧力P0=N/Aであり、一様(constant)である。
【0127】
図14(b)は、加工物3の長軸方向の両端部の背面に偏荷重を与えるため、おもり79を載せたときに生じる長軸方向(y軸方向)の圧力Pyの分布変化を示している。
【0128】
加工物3の両端部では、自重による等分布荷重におもり79による集中荷重が加わり、長軸方向の圧力Pyの分布状態は中心部は平坦であるが、両端で増大する傾向が得られる。
【0129】
偏荷重の付加による母線方向の真直度δ修正法は、この圧力分布に変化を与える効果を利用したものであり、その結果Prestonの経験則から、図16(a)に符号80aに示したように、両端部に向かって減耗量の増大化が図られる。
【0130】
その後、おもり79を加工物3から取り去れば、おもり79による加工物3の変形が解除されて、加工物3の母線方向の真直度δが修正される。
【0131】
図14(c)は、加工物3の長軸方向の中心部の背面に偏荷重を与えるため、おもり79を載せたときに生じる長軸方向(y軸方向)の圧力Pyの分布変化を示している。
【0132】
加工物3の中心部では自重による等分布荷重におもり79による集中荷重が加わり、長軸方向の圧力Pyの分布状態は中心部に向かって増大する傾向が得られる。偏荷重の付加による母線方向の真直度δ修正法は、この圧力分布に変化を与える効果を利用したものであり、その結果Prestonの経験則から、図16(b)に符号80bに示したように、中心部に向かって減耗量の増大化が図られる。
【0133】
その後、おもり79を加工物3から取り去れば、おもり79による加工物3の変形が解除されて、加工物3の母線方向の真直度δが修正される。
【0134】
ここで用いるおもり79は、図15に示すように、金属片79aの周囲をシリコンゴム79bで被覆したものである。このおもり79は、研磨液中で用いる際、金属片79aの腐食を避ける効果と、加工物3の背面形状による異常な圧力分布の発生を抑制する効果がある。
[はみ出し法]
短軸方向のはみ出し調整法を長軸方向に置き換えることにより、母線方向の真直度δの修正を行うことができる。すなわち、図2に示すクランクの振幅調整により、長軸方向の両端に適宜はみ出し量を与え、両端部に向かって減耗量の減少化を図ることができる。
【0135】
はみ出し量による母線方向の真直度δの修正法は、母線方向の研磨工具21と加工物3との間の接触率を加味した研磨加工時間に変化を与える効果を利用したものであり、その結果Prestonの経験則から、図16(b)に符号80bで示したように中心部に向かって減耗量の増大化が図られる。
【0136】
【発明の実施の形態3】
図17は、本発明のシリンダー研磨装置の応用例の主要部を示している。
【0137】
加工物99の表面形状は、x、y方向に異なる曲率Rx、Ryを有するトーリック面、もしくは自由曲面を除くその他の曲面(Rx、Ry のいずれか一方にのみ曲率を有するシリンダー面、もしくはRx=Ryの曲率を有する球面、Rx=Ry=∞の平面)である。
【0138】
研磨工具100はその基盤構成部100aとその表層部100bからなる。前工程(スムージング)では、この表層部100aには、ダイヤモンド・ペレット等が用いられ、この表層部100aによって、加工物3の表面の除去加工が高能率で行われる。また、仕上げ工程(ポリシング)では、この表層部100aには、ポリウレタン、光学研磨用ピッチ等が用いられ、低能率であるが、加工物3の表面の高精度な研磨加工が行われる。また、研磨工具100の表面形状は、加工物99の表面形状に対して正負(凹凸)が反転した形状である。
【0139】
研磨工具100は台車型基盤101上に固定されている。その台車型基板101の四隅には車輪102が設けられている。その車輪102は研磨工具100の曲率Rxに対してΔRxの差を有する曲率軌道103上を往復する。これによって、研磨工具100は任意の角度でx方向の球心揺動がなされる。
【0140】
すなわち、凸の曲率面の加工物99に対してはRx+ΔRxの凹形状曲率軌道103aが与えられ、凹の曲率面の加工物99に対してはRx‐ΔRxの凸形状曲率軌道103bが与えられる。車輪102には曲率軌道103を移動中に脱線することがないように、内側にフランジ102aが設けられている。これらの車輪102aの回転軸102bを持つシャフト(図示せず)は基盤101の四隅下部に固定のハウジング104に内蔵のボール・ベアリング(図示せず)によりサポートされている。
【0141】
x方向の球心揺動機構は、台車型基盤105上に固定されている。その台車型基盤105の四隅には車輪106が設けられている。その車輪106は研磨工具100の曲率半径Ryに対してΔRyの差を有する曲率軌道107上を往復する。これによって、研磨工具100は任意の角度でy方向の球心揺動がなされる。
【0142】
すなわち、凸の曲率面の加工物99に対してはRy+ΔRyの凹形状曲率軌道107aが与えられ、凹の曲率面の加工物99に対してはRy−ΔRyの凸形状曲率軌道107bが与えられる。このy軸方向の曲率軌道107は、x方向の曲率軌道103に対して直交配置される。車輪106には、曲率軌道107を移動中に脱線することがないように内側にフランジ107aが設けられており、これらの回転軸107bを持つシャフト(図示せず)は基盤105の四隅下部に固定のハウジング108に内蔵のボール・ベアリング(図示せず)によりサポートされている。x方向と直交するy方向の球心揺動機構は基盤109上に構成される。
【0143】
研磨工具100のy方向への球心揺動のための駆動力は、基盤105の下部両端に固定の動力伝達棒110によって与えられる。この動力伝達棒110には、トラベリング・ナット・ブロック111により連結されたリニアガイド・ブロック112が係合している。動力伝達棒110はストッパ110aで制限された範囲内で高さ方向に自由に移動可能である。なお、トラベリング・ナット・ブロック111の両サイドにはシャフト(図示せず)が付き出し、リニアガイド・ブロック112の片面内部に収容のボールベアリング(図示せず)がこれらをサポートすることによって三体が連結され、動力伝達棒110はx’−x ’方向に回転可能である。トラベリング・ナット・ブロック111は駆動ネジ113によってy’−y ’方向に移動可能である。トラベリング・ナット・ブロック111は、往復回転角度(±Θy)の入力により、任意の振幅で往復平行運動がなされる。駆動ネジ113は両端支持もしくは片持ち式の適切な構造によりボールベアリング(図示せず)でサポートされており、適切な動力伝達機構により駆動用モータ(図示せず)から動力の供給を受けている。この際に、両端のガイド・ブロック112は台車105を軌道107に沿って移動させる。台車105の移動による動力伝達棒110の傾きはブロック間の回転機構が吸収し、また、同時に起こる動力伝達棒110の保持点高さの変動は両端のリニアガイド・ブロック112が吸収する。
【0144】
なお、トラベリング・ナット・ブロック111の往復距離及び往復速度調整は駆動用モータのコントロール用ドライバ(図示せず)により往復回転角度(±Θy[deg])、回転数(ωy、[rpm])を設定、入力することによってなされる。
【0145】
また、研磨工具100のx方向への球心搖動のための動力伝達機構は、基盤101の下部に同様の構成要素をy方向への球心揺動のための動力伝達機構に対して直交配置することにより与えられる。
【0146】
なお、本装置においては、研磨工具100側が2次元(x、y方向)的な運動を行うため、加工物99は、図8に示すようにジグ中に静止状態で保持される。また、加工物99を研磨工具100と共に研磨液中に沈めるための水槽114を付加しても良いし、さらに、この水槽中に温度制御された研磨液を循環供給する装置を付加しても良い。
【0147】
【その他の発明の実施の形態】
発明の実施の形態では、加工物3を長軸方向に往復動させる構成としたが、加工物3を静止状態とし、研磨工具21が求球心揺動されると共に、研磨工具21がその揺動方向と直角方向に往復直線運動することによって加工物3の研磨が実施されるようにしてもよい。
【0148】
発明の実施の形態では、研磨工具21を台車型基盤22に載置し、この台車型基盤22を曲率半径付与部材24に摺動させる構成としたが、研磨工具21を曲率半径付与部材24に固定し、その曲率軌道面24を車輪に摺接させ、曲率半径付与部材24が車輪に対して往復運動させることにより、研磨工具21が球心搖動されるようにしてもよい。この場合、車輪側を動力源として、曲率半径付与部材24を車輪に対して相対移動させることにより、研磨工具21が球心揺動されるようにしてもよいし、曲率半径付与部材24に動力伝達機構を介して動力を伝達することによって、研磨工具21が球心揺動されるようにしてもよい。
【0149】
発明の実施の形態では、動力伝達機構を介して台車型基盤22を揺動させる構成としたが、台車型基盤22に動力源を内蔵し、この台車型基盤22を曲率軌道面24aに沿って自走させることによって、研磨工具21が球心揺動されるようにしてもよい。
【0150】
動力伝達機構を介して台車型基盤22又は曲率半径付与部材24を駆動する場合には、高さ変動を吸収する変動吸収機構を設けるのが望ましい。
【0151】
【発明の効果】
請求項1〜8に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、凹凸両方の曲率に対して、研磨工具の球心搖動が可能であり、加工物の曲率半径、幅により変動する横殴り現象を解消でき、研磨条件の安定化が図られると共に、曲率半径方向断面の真円度が良好となる。
また、加工物に対して、常に下側に研磨工具が配置され、研磨工具の減耗体・欠落部、余剰砥粒、その他異物等が研磨工具の溝に吸収されるので、表面あらさ、表面欠陥の最小化が図られる。
請求項2に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、加工物を加工物保持容器に接着することなく適切保持して往復運動を与えるので、加工物の着脱作業が容易となり、接着歪みを起因とする加工面形状精度の喪失から回避される。
【0152】
請求項3に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、加工物母線の外周稜線に対する傾きが自動的に修正される。
請求項4に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、加工物を研磨工具(磨き皿)と共に研磨液中に沈める水槽を付加することにより、より一層微細な研磨砥粒の選択作用と均質的分散作用が現れ、加工表面の表面あらさ、表面欠陥の最小化が図られる。
請求項5に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、温度制御された研磨液を水槽側に循環供給するための装置を付加することにより、加工物および研磨工具の温度膨張による寸法変化および形状変形の最小化、さらに研磨工具のポリシャ材が光学研磨用のピッチである場合は粘弾性の安定化が図られ、高精度な形状精度が得られる環境が確保される。
【0153】
請求項6、7に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、短軸側および長軸側のどちらか一方に曲率が在るシリンダー・レンズに対して、曲率の在る方向と求心搖動の方向を正確に合致させる旋回軸および位置合わせ機構を付加することにより、短軸側・長軸側にかかわらず、シリンダー面の研磨が実施できる。
請求項8に記載のシリンダー面の研磨装置によれば、球心揺動機構を直交配置して設けることにより、シリンダー面の他、トーリック面および球面等の研磨も可能となる。
請求項9〜請求項12に記載のシリンダー面の研磨方法及び請求項13に記載のおもりを用いれば、この発明のシリンダー面の研磨装置を利用してシリンダー面の曲率半径の精度、母線真直度を修正できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリンダー研磨装置全体の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す上部駆動系(母線方向の往復運動)の構造を拡大して示す正面図である。
【図3】図1に示す上部駆動系(母線方向の往復運動)の構造を拡大して示す側面図である。
【図4】図1に示す下部駆動系(曲率半径R方向の球心揺動)の構造を示す側面図であって、(a)は加工物が凸面形状の場合を示し、(b)は加工物が凹面形状の場合を示す。
【図5】図1に示す下部駆動系(R方向の球心揺動)の構造を拡大して示す正面図である。
【図6】図1に示す研磨水槽と研磨液循環装置の構造を示す模式図である。
【図7】 短軸側及び長軸側のどちらか一方に曲率があるシリンダーレンズに対して、曲率のある方向と球心揺動の方向とを合致させる旋回軸を付加した研磨工具の模式図であり、(a)はその内部構造を示し、(b)は短軸側に曲率がある加工物を研磨工具にセットした状態を示し、(c)は長軸側に曲率がある加工物を研磨工具にセットした状態を示す。
【図8】凹凸の向きが逆向きの加工物を接着することなしに保持することのできる加工物保持具の模式図であり、(a)は加工物が凹面の場合の加工物の保持状態を示す平面図を示し、(b)はその(a)に示す加工物保持具の縦断面図を示し、(c)は加工物が凸面の場合の加工物の保持状態を示す平面図を示し、(d)はその(c)に示す加工物保持具の縦断面図を示し、(e)は(a)に示す加工物保持具の横断面図を示し、(f)は(c)に示す加工物保持具の横断面図を示す。
【図9】 本発明のシリンダー研磨装置による研磨法を説明するための模式図であり、(a)は加工物の加工面の曲率の修正方法の説明に使用する説明であって、加工物が静止状態にあるときの加工面に加わる圧力分布の説明図、(b)は加工物が相対運動をしている状態にあるときの加工面に加わる圧力分布の説明図、(c)は(b)に示す加工物の平面図である。
【図10】 本発明のシリンダー研磨装置による研磨法を説明するための模式図であり、加工物の保持高さを変更した場合の圧力分布の説明図である。
【図11】 本発明のシリンダー研磨装置による加工面の曲率半径の修正方法を説明するための模式図であって、(a)は加工物が凸の曲面の場合の摩耗の状態を示し、(b)は加工物が凹の曲面の場合の摩耗の状態を示す。
【図12】 本発明のシリンダー研磨装置による加工面の曲率半径の修正方法を説明するための模式図であって、(a)は研磨工具の稜線が加工物の稜線に一致している状態を示し、(b)は加工物が研磨工具に対してはみ出した瞬間を示し、(c)は加工物が研磨工具に対して最大量はみ出して移動方向を変える瞬間を示している。
【図13】 図12に示すはみ出し法による加工物の加工面の曲率半径の修正方法の説明図で、(a)は加工物が凸の曲面の場合の摩耗の状態を示し、(b)は加工物が凹の曲面の場合の摩耗の状態を示す。
【図14】 加工物の母線の真直度の修正方法の説明図であって、(a)は偏荷重を加工物に加えない状態での圧力分布状態の説明図であり、(b)は加工物の両端に偏荷重を加えたときの圧力分布状態の説明図であり、(c)は中央に偏荷重を加えたときの圧力分布状態を示す。
【図15】 加工物の母線の真直度の修正に使用するおもりの断面図である。
【図16】 加工物の母線の真直度の修正方法の説明図であって、(a)は周辺部の摩耗量が増加した状態を示し、(b)は中心部の摩耗量が増加した状態を示す。
本発明のシリンダー研磨装置による研磨法を示す模式図
【図17】 球心揺動機構を直交配置したシリンダー面研磨装置の概略構成を示す斜視図である。

Claims (13)

  1. 加工物を母線方向に往復直線運動させる上部駆動系と研磨工具の曲率半径の中心を回転中心として該研磨工具を往復動させる球心揺動機構を有する下部駆動系とを備え、
    前記球心揺動機構は、車輪を有しかつ前記研磨工具が載置固定された台車型基盤と、前記研磨工具の曲率半径に対して所定の曲率半径の差を有する曲率軌道面が形成された曲率半径付与部材と、該曲率半径付与部材に動力を伝達する動力伝達機構とから構成され、前記台車型基盤は前記曲率半径付与部材に摺動可能に載置され、
    前記動力伝達機構は、回転動力を直線運動に変換して前記台車基盤に伝達する動力伝達棒と、該動力伝達棒に嵌合されかつ連結棒に連結された第1リニアガイドブロックと、前記連結棒に嵌合されて回転と直線運動の自由度を有する第2リニアガイドブロックとから構成され、前記第1リニアガイドブロックは前記動力伝達棒の保持点の高さ変動を吸収し、前記第2リニアガイドブロックは前記動力伝達棒の傾き変動を吸収し、前記研磨工具の揺動方向と直角方向に前記加工物が往復直線運動され、前記台車型基盤は前記曲率軌道面を往復運動することによって、前記加工物が研磨されることを特徴とするシリンダー面の研磨装置。
  2. 前記上部駆動系は、無接着状態で前記加工物を保持する加工物保持容器を有することを特徴とする請求項1に記載のシリンダー面の研磨装置。
  3. 前記研磨工具の球心揺動軸と前記加工物保持容器の保持稜線とが平行であることを特徴とする請求項2に記載のシリンダー面の研磨装置。
  4. 研磨液を貯留する水槽を有し、前記加工物と前記研磨工具とが研磨液中に浸漬されて、前記加工物の研磨が行われることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置。
  5. 前記水槽に温度制御された研磨液を循環させる研磨液循環装置が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のシリンダー面の研磨装置。
  6. 短軸方向と長軸方向とのいずれか一方に曲率を有する加工物を研磨するために、前記台車型基盤が上部台車型基盤と下部台車型基盤とから構成され、前記上部台車型基盤と前記下部台車型基盤との間に前記研磨工具の球心揺動方向が前記曲率を含む面内に向くように回転調整する旋回軸が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置。
  7. 前記研磨工具の球心揺動方向と前記加工物の長軸又は短軸方向とを合致させて位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のシリンダー面の研磨装置。
  8. 加工物の研磨工具のx方向の曲率半径の中心を回転中心として該研磨工具を往復動させるx方向球心揺動機構と前記研磨工具のy方向の曲率半径の中心を回転中心として該研磨工具を往復動させるy方向球心揺動機構とx方向の駆動力を伝達する動力伝達棒y方向の駆動力を伝達する動力伝達棒とを有する駆動系を備え、
    前記x方向球心揺動機構は、車輪を有しかつ前記研磨工具が載置固定された台車型基盤と、
    前記研磨工具のx方向の曲率半径に対して所定の曲率半径の差を有するx方向曲率軌道が形成されかつ車輪を有する台車型基盤とから構成され、
    前記y方向球心揺動機構は、前記x方向曲率軌道に対して直交する方向でかつ前記研磨工具のy方向の曲率半径に対して所定の曲率半径の差を有するy方向曲率軌道が形成された基盤とから構成され、
    前記x方向の駆動力を伝達する動力伝達棒は、前記研磨工具が固定された台車型基盤の下部に固定されると共に、該動力伝達棒にトラベリング・ナット・ブロックにより連結されたリニアガイド・ブロックが係合されてy方向に回転可能とされ、前記トラベリング・ナット・ブロックは駆動ネジによってx方向に移動可能とされ、前記研磨工具が載置固定された台車型基盤をx方向に駆動する動力伝達棒から構成され、
    前記y方向の駆動力を伝達する動力伝達棒は、前記x方向曲率軌道が形成された台車型基盤の下部に固定されると共に、該動力伝達棒にトラベリング・ナット・ブロックにより連結されたリニアガイド・ブロックが係合されてx方向に回転可能とされ、前記トラベリング・ナット・ブロックは駆動ネジによってy方向に移動可能とされていることを特徴とするシリンダー面の研磨装置。
  9. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記加工物の保持高さを調整することにより前記加工物の加工面の曲率半径を修正することを特徴とする研磨方法。
  10. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記研磨工具が揺動中に前記加工物の稜線が前記研磨工具からはみ出すはみ出し量を調整することにより、前記加工物の加工面の曲率半径を修正することを特徴とする研磨方法。
  11. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記加工物の背面におもりを載せて加工物に偏荷重を与えて研磨を行い、研磨後に前記おもりを取り除くことにより、前記加工物の加工面の母線方向の真直度を修正することを特徴とする研磨方法。
  12. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のシリンダー面の研磨装置を用いて、前記加工物の往復直線運動中に該加工物の稜線が前記研磨工具からはみ出すはみ出し量を調整することにより、前記加工物の加工面の母線方向の真直度を修正することを特徴とする研磨方法。
  13. 請求項11に記載の方法に用いるおもりであって、金属片の外周がシリコンゴム材により被覆されていることを特徴とするおもり。
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