JP4726983B2 - 欠陥検査システム、並びに、それに用いる、欠陥検査用撮影装置、欠陥検査用画像処理装置、欠陥検査用画像処理プログラム、記録媒体、および欠陥検査用画像処理方法 - Google Patents

欠陥検査システム、並びに、それに用いる、欠陥検査用撮影装置、欠陥検査用画像処理装置、欠陥検査用画像処理プログラム、記録媒体、および欠陥検査用画像処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、シート状等の被検査物の欠陥を検査する欠陥検査システム、並びに、それに用いる、欠陥検査用撮影装置、欠陥検査用画像処理装置、欠陥検査用画像処理プログラム、欠陥検査用画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、および欠陥検査用画像処理方法に関するものである。
一般に、シート状の被検査物の欠陥を検査する場合、被検査物に光を照射し、その透過光または反射光を測定・解析することによって、被検査物の欠陥を検出する方法がよく用いられている。この方法は、欠陥検査装置の光学系の配置によって、図15に示すように、大きく4つに分類される。
図15(a)に示す光学系の配置は、正透過法と呼ばれるものであり、また、図15(b)に示す光学系の配置は、透過散乱法と呼ばれるものである。一般的に、正透過法および透過散乱法のように、透過光を測定する方法は、光透過率が高い被検査物502を検査するときに用いられる。図15(c)に示す光学系の配置は、正反射法と呼ばれるものであり、また、図15(d)に示す光学系の配置は、反射散乱法と呼ばれるものである。一般的に、正反射法および反射散乱法のように、反射光を測定する方法は、光透過率が小さい被検査物502を検査するときに用いられる。
また、正透過法および正反射法のように、光源503から照射される光の光軸上にラインセンサ501を配置し、被検査物502からの非散乱光(正透過光または正反射光)をラインセンサ501で測定する方法を明視野法ともいう。一方、透過散乱法および反射散乱法のように、光源503から照射される光の光軸上からずらしてラインセンサ501を配置し、被検査物502からの非散乱光がラインセンサ501に直接入射しないように光源503と被検査物502との間に遮光体(ナイフエッジ)504を配置し、遮光体504の端部にラインセンサ501の焦点を合わせ、被検査物502からの散乱光(散乱透過光または散乱反射光)をラインセンサ501で測定する方法を暗視野法または光軸ずらし法ともいう。なお、暗視野法または光軸ずらし法では、遮光体504を省略し、被検査物502からの非散乱光がラインセンサ501に直接入射しないようにラインセンサ501を配置することもある。
明視野法では、光源503からの光が被検査物502の欠陥によって散乱することにより、ラインセンサ501が受光する非散乱光の光量が減少する。明視野法では、このラインセンサ501が受光する光の減少量(変化量)から被検査物502の欠陥の有無を判断する。明視野法は、検出感度が低いため、減少量が大きい、比較的大きな欠陥を検出する場合に適した方法である。また、暗視野法と比較して、光学系の配置が容易に行えるため、動作が安定し実用化が簡単である。
一方、暗視野法では、被検査物502の欠陥によって散乱した光をラインセンサ501が受光し、その受光量から被検査物502の欠陥の有無を判断する。暗視野法は、明視野法と比べて、欠陥の検出感度が高く、微小な凹凸(欠陥)を検出することができる。しかしながら、光学系(ラインセンサ501、光源503および遮光体504)を高精度に配置する必要があるため、実用化は限定的である。
一般的に、被検査物の大きな欠陥は目視で確認できるため、微小な欠陥を検出できることが欠陥検査装置に望まれる。そのため、欠陥検査装置に暗視野法を用いることが多い。しかしながら、暗視野法には、上述のように実用的には光学系の配置が困難であるため、被検査物の欠陥を精度良く検査することが難しいという問題がある。
この問題を解決するための技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術は、被検査物の欠陥の有無を高精度に検出するために、光学系の配置に対して適切な遮光体の大きさが規定されている。
特開2007−333563号公報(2007年12月27日公開) 特開2008−292171号公報(2008年12月4日公開)
しかしながら、被検査物の欠陥によってどのような光線経路の変化が起こるかは、欠陥の種類(サイズ等)によって異なるので、適切な光学系の配置(光源と受光装置との位置関係等)や遮光体の大きさは、実際には、欠陥の種類(サイズ等)によって異なる。特許文献1にも、光学歪みが微小な欠点を検出するためには、ライン状透過照明装置と受光手段の位置を近づける必要があることが記載されている(段落[0009])。そのため、上述のような従来技術は、欠陥によって生じる光線経路の変化が異なる様々な種類の欠陥を一度に十分な精度で検査することが難しいという問題がある。暗視野法を用いる欠陥検査装置では、上述のように光学系を高精度に配置する必要があるため、欠陥の種類に応じて光学系の配置および遮光体の大きさを変更することが実用上、困難である。そのため、従来の暗視野法を用いる欠陥検査装置では、比較的多く存在する特定の種類の欠陥を検出できる光学系の配置および遮光体の大きさを選択して使用することになり、一部の種類の欠陥を十分な精度で検出できない場合があるという問題点を有している。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、欠陥によって生じる光線経路の変化が異なる様々な種類の欠陥を一度に十分な精度で検出できる欠陥検査システム、並びに、それに用いる、欠陥検査用撮影装置、欠陥検査用画像処理装置、欠陥検査用画像処理プログラム、および欠陥検査用画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、および欠陥検査用画像処理方法を実現することにある。
本発明に係る欠陥検査用画像処理装置は、上記課題を解決するために、被検査物と撮影部とが相対的に移動させられている状態で、撮影部によって時間的に連続して撮影された上記被検査物の2次元画像の画像データを処理し、それによって上記被検査物の欠陥を検査するための欠陥検査用画像データを生成する欠陥検査用画像処理装置であって、複数の異なる画像データの中から画像データ上における位置が同一である1ラインのラインデータをそれぞれ抽出する同一ライン抽出手段と、上記同一ライン抽出手段によって抽出されたラインデータを時系列に並べて複数ラインのライン合成画像データを生成するライン合成手段とを備え、上記同一ライン抽出手段は、上記画像データ上における異なる複数の位置について上記ラインデータをそれぞれ抽出するものであり、上記ライン合成手段は、上記同一ライン抽出手段によって抽出されたラインデータを、上記画像データ上における位置ごとに、時系列に並べて異なる複数のライン合成画像データを生成するものであり、さらに、上記複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行い、1ラインまたは複数ラインの複数の強調画像データを生成するオペレータ演算手段と、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成する積算手段と、を備えることを特徴としている。
また、本発明に係る欠陥検査用画像処理方法は、上記課題を解決するために、被検査物と撮影部とが相対的に移動させられている状態で、撮影部によって時間的に連続して撮影された上記被検査物の2次元画像の画像データを処理し、それによって上記被検査物の欠陥を検査するための欠陥検査用画像データを生成する欠陥検査用画像処理方法であって、複数の異なる画像データの中から画像データ上における位置が同一である1ラインのラインデータをそれぞれ抽出する同一ライン抽出ステップと、上記同一ライン抽出ステップにおいて抽出されたラインデータを時系列に並べて複数ラインの合成画像データを生成するライン合成ステップとを含み、上記同一ライン抽出ステップは、上記画像データ上における異なる複数の位置について上記ラインデータをそれぞれ抽出するステップであり、上記ライン合成ステップは、上記同一ライン抽出ステップにおいて抽出されたラインデータを、上記画像データ上における位置ごとに、時系列に並べて異なる複数のライン合成画像データを生成するステップであり、さらに、上記複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行い、1ラインまたは複数ラインの複数の強調画像データを生成するオペレータ演算ステップと、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成する積算ステップと、を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、撮影部によって時間的に連続して撮影された上記被検査物の2次元画像における複数の異なる画像データの中から、画像データ上における位置が同一である1ラインのラインデータをそれぞれ抽出し、この抽出処理を上記画像データ上における異なる複数の位置について同様に行う。そして、抽出されたラインデータを、上記画像データ上における位置ごとに時系列に並べて、複数ラインから構成される、異なる複数のライン合成画像データを生成する。被検査物と撮影部とが相対的に移動させられているため、上記異なる複数のライン合成画像データは、上記被検査物に対して、それぞれ異なる撮影角度で撮影された画像データに相当するものである。よって、上記ライン合成画像データを生成することによって、上記被検査物に対する撮影部の撮影角度を変更することなく、上記被検査物に対して異なる撮影角度で撮影した複数の画像データを得ることができる。したがって、欠陥によって生じる光線経路の変化が異なる様々な種類の欠陥をそれぞれ検査するのに最適な複数の撮影角度で撮影されたライン合成画像データを得ることが可能となる。そのため、当該複数のライン合成画像データを参照することによって、欠陥によって生じる光線経路の変化が異なる被検査物上の様々な種類の欠陥を一度に十分な精度で検出することができるという効果を奏する。また、光学系の配置精度が高くなくても、得られる複数のライン合成画像データの何れかは、光学系を精度良く配置したときに得られる画像データと同等となるので、欠陥を精度良く検出することができる。
また、上記の構成によれば、オペレータ演算手段が、上記複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行うことにより、1ラインまたは複数ラインの強調画像データをそれぞれ生成する。そのため、上記複数のライン合成画像データの各画素における輝度変化が強調されるので、微小な欠陥、薄い欠陥、または淡い欠陥などを検出することが容易になる。
また、上記の構成によれば、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成する。積算することによって、ノイズを低減できる。
なお、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データを得る方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)上記同一ライン抽出の前に、複数の異なる画像データの中から同一箇所を示すラインデータをそれぞれ特定して、各ラインデータに対して同一箇所を示す識別子を付加し、上記オペレータ演算の後、上記積算の前に、上記識別子に基づいて上記複数の強調画像データの中から上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データを抽出する方法;(2)上記同一ライン抽出の前に、複数の異なる画像データの中から同一箇所を示すラインデータをそれぞれ特定して、各ラインデータに対して同一箇所を示す識別子を付加し、上記ライン合成の後、上記オペレータ演算の前に、上記識別子に基づいて上記複数のライン合成画像データの中から上記被検査物の同一箇所を示す上記複数のライン合成画像データを抽出し、抽出された上記被検査物の同一箇所を示す上記複数のライン合成画像データに対して上記オペレータ演算を行うことによって上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データを生成する方法;(3)上記オペレータ演算の後、上記積算の前に、複数の異なる強調画像データの中から同一箇所を示す強調画像データをそれぞれ特定および抽出する方法;(4)上記ライン合成の後、上記オペレータ演算の前に、複数の異なるライン合成画像データの中から同一箇所を示す強調画像データをそれぞれ特定および抽出し、抽出された上記被検査物の同一箇所を示す上記複数のライン合成画像データに対して上記オペレータ演算を行うことによって上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データを生成する方法;などが挙げられる。
また、本発明に係る欠陥検査用画像処理装置は、上記オペレータ演算手段は、上記複数のライン合成画像データに対して微分オペレータを用いた演算を行うことにより、上記複数のライン合成画像データの中心ラインにおける各画素での、中心ラインに直交する方向に沿った輝度値の勾配を算出し、上記複数のライン合成画像データの中心ラインにおける各画素の輝度値を各画素での輝度値の勾配の絶対値に置き換えて新たな1ラインの強調画像データを生成するものであることが好ましい。
上記の構成によれば、上記オペレータ演算手段が上記複数のライン合成画像データに対して微分オペレータを用いた演算を行って、上記複数のライン合成画像データの中心ラインにおける各画素での、中心ラインに直交する方向に沿った輝度値の勾配を算出し、上記複数のライン合成画像データの中心ラインにおける各画素の輝度値を各画素での輝度値の勾配の絶対値に置き換えて新たな1ラインの強調画像データを生成する。輝度値を絶対値で扱うことにより、輝度値の勾配が正であっても負であっても欠陥を示すデータとして両者を区別なく処理できる。つまり、明側に映る欠陥と暗側に映る欠陥を同様に扱うことができるため、光学系の配置精度が高くなくても欠陥を精度良く検出することができる。また、上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成することによって、欠陥を示すデータを相殺することなく、加算することができる。そのため、光学系の配置によって明側に映るか暗側に映るかが変化するような欠陥であっても検出することができる(実際にそのような欠陥が多く存在することが経験的に知られている)。
また、本発明に係る欠陥検査用画像処理装置は、上記積算手段は、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す上記複数の強調画像データを上記被検査物の箇所ごとに、当該強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを生成するものであり、さらに、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを、上記被検査物の箇所に対応させて並べて新たな欠陥検査用画像データを合成する画像生成手段を含むことが好ましい。
上記の構成によれば、画像生成手段が上記被検査物の箇所に対応させて並べて新たな欠陥検査用画像データを合成する。画像生成手段が合成した欠陥検査用画像データの位置と上記被検査物の箇所が対応しているため、被検査物全体のどの位置に欠陥があるのかを容易に検出することが可能となる。
また、本発明に係る欠陥検査用画像処理装置は、上記積算手段は、上記撮影部が撮影する毎に、上記被検査物の先頭箇所から順番に上記被検査物の箇所ごとに、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを生成することが好ましい。
上記の構成によれば、上記積算手段が、上記撮影部が撮影する毎に、上記被検査物の先頭箇所から順番に上記被検査物の箇所ごとに、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを生成する。そのため、上記撮影部が撮影する毎に、強調画像データから欠陥検査用画像データを生成することができる。よって、フレーム毎に欠陥の有無を識別するための画像を出力することができるので、リアルタイムに欠陥検査を行うことが可能となる。
また、本発明に係る欠陥検査用撮影装置は、前記欠陥検査用画像処理装置と、被検査物と撮影部とが相対的に移動させられている状態で、上記被検査物の2次元画像を時間的に連続して撮影する撮影部とを含むことを特徴としている。
上記構成によれば、前記欠陥検査用画像処理装置を含むので、欠陥によって生じる光線経路の変化が異なる様々な種類の欠陥を一度に十分な精度で検出できる欠陥検査用撮影装置を提供することができる。
また、本発明に係る欠陥検査システムは、被検査物の欠陥を検査する欠陥検査システムであって、前記欠陥検査用撮影装置と、上記被検査物と上記撮影部とを相対的に移動させる移動手段とを含むことを特徴としている。
上記構成によれば、前記欠陥検査用撮影装置を含むので、欠陥によって生じる光線経路の変化が異なる様々な種類の欠陥を一度に十分な精度で検出できる欠陥検査システムを提供することができる。
また、本発明に係る欠陥検査システムは、上記被検査物に光を照射する光源と、上記光源から上記被検査物を透過または反射して上記撮影部に入射する光を一部遮る遮光体とを含み、暗視野法を用いて被検査物の欠陥を検査することを特徴としている。
上記構成によれば、明視野の状態から暗視野の状態に移行する過程の様々な光学条件が観測領域内に含まれるので、暗視野法または明視野法を単独で用いた場合と比べて、感度良く欠陥を検出でき、また、微小な欠陥を検出することができる。さらに、上記構成によれば、光学系を高精度に配置する必要がある従来の暗視野法を用いた欠陥検査システムと異なり、光学系を高精度に配置する必要がない。
なお、上記欠陥検査用画像処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記欠陥検査用画像処理装置の各手段として動作させることにより、上記欠陥検査用画像処理装置をコンピュータにて実現させる制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に入る。
以上のように、本発明は、被検査物の同一箇所に対して異なる撮影角度で撮影した複数のデータを得ることができる。そのため、当該複数のデータを参照することによって、被検査物上の様々な種類の欠陥を検出することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る欠陥検査システムを構成する画像処理部としての画像解析装置の、主要部の構成を示す機能ブロック図である。 エリアカメラ、線状光源およびナイフエッジを含む欠陥検査用光学系の位置関係を示す図であり、(a)はその斜視図であり、(b)は、そのyz平面を示す図である。 本発明の一実施形態に係る欠陥検査システムの概要を示す模式図である。 ライン合成のプロセスを示す図であり、(a)はエリアカメラが撮影した480枚の画像が時系列に並べられていることを示す概念図であり、(b)はこの480枚の画像データ(#1〜#480)を順番に左から横並びに並べている状態を示す図であり、(c)は480枚の各画像データからN番目のラインを抜き出して並べた状態を示す図である。 (a)は、エリアカメラが撮影した画像を示す図であり、(b)は、エリアカメラが撮影した480枚の画像データからナイフエッジ近傍ラインを抜き出しライン合成した画像を示す図である。 画像処理の一例を示す図であり、(a)は、ライン合成したオリジナルの画像であり、(b)は、(a)に示す画像に対して7×7の垂直微分フィルタ処理を行った画像であり、(c)は、(b)に示す画像に対してラプラシアンヒストグラム法を用いて固定した閾値に従って2値化した画像である。 RT−LCI(Real Time Line Composition and Integration:リアルタイム・ライン合成積算;この内容については後述する)処理における画像解析装置の各部の動作フローを示す図である。 RT−LCI処理の概要を示す図であり、各記憶部に格納される画像データおよび表示部に表示される画像の状態を1フレーム毎に示す状態遷移図である。 RT−LCI処理の概要を示す図であり、エリアカメラの撮影範囲と被検査物との関係を示す模式図である。 RT−LCI処理の概要を示す図であり、最初に生成されるRT−LCIデータを生成する処理を示す図である。 第2の記憶部に格納されているラインデータ、変化量算出部が用いる微分オペレータ、変化量算出部が算出した輝度データの値の一例を示す図である。 被検査物の厚みや反りによる光軸のずれが発生する様子を模式的に示す図である。 実施例を示すものであり、(a)はエリアカメラが撮影した画像の一例を示す図であり、(b)は本発明の一実施例に係る欠陥検査システムによって得られるRT−LCI画像の一例を示す図である。 実施例を示すものであり、(a)はエリアカメラが撮影した画像の一例を示す図であり、(b)はライン合成画像の一例を示す図であり、(c)は本発明の一実施例に係る欠陥検査システムによって得られるRT−LCI画像の一例を示す図である。 実施例を示すものであり、(a)はエリアカメラが撮影した画像の一例を示す図であり、(b)はライン合成画像の一例を示す図であり、(c)は本発明の一実施例に係る欠陥検査システムによって得られるRT−LCI画像の一例を示す図である。 実施例を示すものであり、(a)はエリアカメラが撮影した画像の一例を示す図であり、(b)はライン合成画像の一例を示す図であり、(c)は本発明の一実施例に係る欠陥検査システムによって得られるRT−LCI画像の一例を示す図である。 従来技術である欠陥検査装置の光学系の配置を示すものであり、(a)は正透過法の光学系の配置であり、(b)は透過散乱法の光学系の配置であり、(c)は正反射法の光学系の配置であり、(d)は反射散乱法の光学系の配置である。
本発明の実施の一形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
本実施形態に係る欠陥検査システムは、成形シートの欠陥を検出するものである。本実施形態に係る欠陥検査システムは、光透過性の成形シート、特に、熱可塑性樹脂等の樹脂からなる成形シートの検査に適している。樹脂からなる成形シートとしては、例えば、押出機から押し出された熱可塑性樹脂をロールの隙間に通して表面に平滑さや光沢を付与する処理が施され、引取ロールにより搬送ロール上を冷却されながら引き取ることにより成形されたものが挙げられる。本実施の形態に適用可能な熱可塑性樹脂は、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロール樹脂等である。成形シートは、これら熱可塑性樹脂のうちの1つのみからなっていてもよく、これら熱可塑性樹脂の複数種類を積層したもの(積層シート)であってもよい。また、本実施形態に係る欠陥検査システムは、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルム、特にウェブ状に巻いて保管・輸送される長尺の光学フィルムの検査に適している。また、成形シートは、どのような厚みを持つものであってもよく、一般にフィルムと呼ばれるような比較的薄い厚みを持つものであっても、一般に板と呼ばれるような比較的厚い厚みを持つものであってもよい。
成形シートの欠陥の例としては、気泡(成形時に生じるもの等)、フィッシュアイ、異物、タイヤ跡、打痕、傷等の点欠陥;クニック、スジ(厚さの違いにより生じるもの等)等が挙げられる。
暗視野法において、ラインセンサを用いて、上記の様々な欠陥を検出する場合、ラインセンサの撮像ラインの変動許容値(一般的に数10〜数100μm程度)内でラインセンサを移動させることが考えられる。しかしながら、上述のように、暗視野法では、光学系を高精度に配置する必要があるため、ラインセンサの撮像ライン(撮影角度)を少しずつ変えながら同じ条件で欠陥を検出することは困難である。また、ラインセンサを複数並列させて複数の撮像ラインを同時に撮影する方法も考えられるが、ラインセンサを複数配置することにより装置系が複雑になり、光学系をより高精度に配置する必要がある。
そこで、本発明者は、以下の理由により、近軸条件下であればエリアカメラを用いることによって、ラインセンサを数10本並べたものと同等の光学条件で撮影できると考えた。近軸条件下におけるエリアカメラの特性を図2に基づいて説明する。図2は、エリアカメラ5、線状光源4およびナイフエッジ7を含む欠陥検査用光学系の位置関係を示す図である。図2(a)に示すように、線状光源4の中心が撮影範囲の中心と一致するようにエリアカメラ5を線状光源4の上部に配置し、エリアカメラ5から見て線状光源4の半分が隠れるようにナイフエッジ7を配置する。ここで、線状光源4の中心を原点とし、線状光源4の長手方向をX軸、線状光源4の短手方向をY軸、エリアカメラ5から線状光源4に向かう方向をZ軸とする。図2(b)は、図2(a)のX軸方向から見た図である。エリアカメラ5は、CCD(Charge Coupled Device)51およびレンズ52を含む。CCD51がレンズ52を介して撮影する角度の半角θが〜0.1度程度であれば、CCD51が撮影する範囲において撮影距離の差(1−cosθ)が無視できる程度となる。具体的には、レンズ52の焦点距離f=35mmの場合、レンズ52と被検査物との距離は300mm程度であり、解像度が70μm/pixelのエリアカメラ5を用いて、X軸を中心に±7画素の範囲を撮影する場合、撮影角度の半角θは、
θ=arc tan(70[μm/pixel]×10^3×7[pixel]/300[mm])≒0.09[degree]
となる。よって、撮影距離の差は10^-6のオーダーのため、無視できる程度である。従って、この場合、各々の撮影範囲が70μmである15本のラインセンサ(X軸上の1本のラインセンサと、その両側にそれぞれ配置された7本ずつのラインセンサ)が並列して撮影する場合と同等の光学条件で撮影できる。
次に、エリアカメラ5を用いた、本実施形態に係る欠陥検査システム1の構成について、図3に基づいて以下に説明する。図3は、欠陥検査システム1の概要を示す模式図である。
図3に示すように、欠陥検査システム1は、コンベア(移動手段)3、線状光源4、エリアカメラ(撮影部)5、画像解析装置(欠陥検査用画像処理装置)6、表示部30、ナイフエッジ7および照明拡散板8を含む。被検査物である成形シート2は、コンベア3上に配置されている。欠陥検査システム1は、矩形の成形シート2をコンベア3によって一定方向に搬送しながら、線状光源4により光を照射された成形シート2をエリアカメラ5が時間的に連続して撮影し、エリアカメラ5が撮影した成形シート2の2次元画像データに基づいて画像解析装置6が成形シート2の欠陥を検出するものである。
コンベア3は、成形シート2において線状光源4に照射される位置が変化するように、矩形の成形シート2を、その厚み方向に直交する方向、特にその長手方向に搬送するものである。コンベア3は、例えば、成形シート2を一定の方向に搬送する送出ローラと受取ローラとを備え、ロータリーエンコーダ等により搬送速度を計測する。搬送速度は、例えば2m〜12m/分程度に設定される。コンベア3における搬送速度は、図示しない情報処理装置等によって設定および制御される。
線状光源4は、その長手方向が成形シート2の搬送方向と交差する方向(例えば成形シート2の搬送方向と直交する方向)となるように配置されており、かつ、線状光源4から照射される光が成形シート2を透過してエリアカメラ5に入射するように、成形シート2を挟んでエリアカメラ5に対向する位置に配置されている。線状光源4は、成形シート2の組成及び性質に影響を与えない光を発光するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蛍光灯(特に高周波蛍光灯)、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライトなどである。なお、線状光源4を成形シート2に向かってエリアカメラ5と同じ側に配置し、線状光源4から照射された光が成形シート2で反射してエリアカメラ5に入射するように線状光源4を配置してもよい(図15(d)に示す反射散乱法の光学系の配置を参照)。上述したような、成形シート2で反射した光がエリアカメラ5に入射する構成は、成形シート2だけではなく、種々の形状および材質の被検査物における欠陥の検査に適用することができる。
エリアカメラ5は、成形シート2を透過した光を受光して、成形シート2の2次元画像を時間的に連続して撮影するものである。エリアカメラ5は、撮影した成形シート2の2次元画像のデータを画像解析装置6に出力する。エリアカメラ5は、2次元画像を撮像するCCDまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子で構成されるエリアセンサからなる。エリアカメラ5は、多階調の画像データを出力であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では8ビットグレースケール(256階調)の画像データを出力できるものである。
欠陥検査システム1によって検出される欠陥のサイズは、エリアカメラ5の分解能に依存するので、検出したい欠陥のサイズに合わせてエリアカメラ5の分解能を選定するとよい。なお、欠陥検査システム1によって検出される欠陥の立体形状(幅対高さの比)は、基本的にはエリアカメラ5の分解能に依存しないので、検出したい欠陥の種類によってカメラ分解能を選定する必要はない。
エリアカメラ5は、成形シート2の幅方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)の全領域が撮影できるように配置されていることが好ましい。エリアカメラ5によって成形シート2の幅方向の全領域を撮影することにより、成形シート2の全領域の欠陥を検査することができる。
エリアカメラ5の撮影間隔(フレームレート)は、固定されていてもよく、ユーザがエリアカメラ5自体を操作することによって変更可能となっていてもよく、エリアカメラ5に接続された情報処理装置(図示しない;省略可能)をユーザが操作することによって変更可能となっていてもよい。また、エリアカメラ5の撮影間隔は、デジタルスチルカメラの連続撮影の時間間隔である数分の1秒などであってもよいが、検査の効率化を向上させるために、工業用CCDカメラに通常備えられているパーシャルスキャン機能を使用して1フレームのライン数を必要最小限とすることで時間間隔を短くすることができる。例えば、有効画素数が横512×縦480画素、全画素読み出しのとき30フレーム毎秒(以後FPS)のカメラの場合、パーシャルスキャンにより横512×縦60画素とすることで240FPS程度での読み出しが可能なものがある。また、別の例として、有効画素数が横1600×縦1200画素程度、全画素読み出しのときフレームレート15FPSのカメラを使用して横1600×縦32画素のパーシャルスキャンにて駆動する場合、150FPS程度での読み出しが可能なカメラがある。カメラの有効画素数および駆動方法は、被検査物の搬送速度および検出対象欠陥のサイズ等により適宜選定することができる。
画像解析装置6は、エリアカメラ5から出力された画像データを受信し、その画像データに対して画像処理を行い、それによって上記被検査物の欠陥を検査するための欠陥検査用画像データを生成し、欠陥検査用画像データを表示部30へ出力するものである。画像解析装置6は、画像データを記憶する記憶部20と、画像データに対して画像処理を行う画像処理部10とを備える。エリアカメラ5および画像解析装置6によって欠陥検査用撮影装置が構成されている。画像解析装置6は、2次元画像データの画像処理を行うものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、画像処理ソフトウェアがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)、画像処理回路が記述されたFPGAを搭載する画像キャプチャボード、画像処理プログラムが記述されたプロセッサを備えるカメラ(インテリジェントカメラ等と呼ばれる)などが挙げられる。画像解析装置6が行う画像処理の詳細は後述する。
表示部30は、欠陥検査用画像データを表示するものである。表示部30は、画像または映像を表示するものであればよく、例えば、LC(Liquid Crystal)表示パネル、プラズマ表示パネル、EL(Electro Luminescence)表示パネルなどを表示部30として適用することができる。なお、画像解析装置6または欠陥検査用撮影装置が表示部30を備える構成であっても良い。また、表示部30を欠陥検査システム1から分離して外部の表示装置としてもよく、表示部30を他の出力装置、例えば印刷装置に置き換えてもよい。
ナイフエッジ7は、線状光源4から照射される光を遮るナイフ形状の遮光体である。
照明拡散板8は、線状光源4から照射される光の光量を均一化するために、光を拡散するものである。
次に、本実施形態で利用するアルゴリズムを開発した経緯について説明する。本実施形態で利用するアルゴリズムは、以下に説明する単純なライン合成を利用した欠陥検出方法の課題に鑑み開発されたものである。
エリアカメラ5で撮影した複数の画像から、並列に複数並べられたラインセンサが撮影した画像と同等の画像を生成するライン合成の方法を図4に基づいて説明する。ここでは、フレームレートが60FPS(Frame Per Second)のエリアカメラ5で、8秒間撮影し、480枚の画像を得たものとする。画像データにおいて、成形シート2の幅方向(成形シート2の搬送方向に直交し、かつ成形シート2の厚み方向に直交する方向)に沿った少なくとも1つの分割線によって均等に分割してなる複数の部分画像の各々をラインと称する。画像全体の高さ(成形シート2の長手方向に沿ったサイズ)がH画素(Hは自然数)、画像全体の幅(成形シート2の幅方向に沿ったサイズ)がW画素(Wは自然数)であるとすれば、ラインのサイズは、高さH/L画素(Lは2以上の整数)、幅W画素である。ラインは、典型的には、成形シート2の幅方向に沿って1直線上に並ぶ1画素×W画素の部分画像である。
図4(a)は、その480枚の画像が時系列に並べられていることを示す概念図である。図4(b)は、この480枚の画像データ(#1〜#480)を順番に左から横並びに並べている状態を示す図である。図4(b)に示す各画像データにおいて、下部の暗い部分はナイフエッジ7によって光が遮られている部分であり、中心付近の明るい部分は線状光源4からの光が透過している部分であり、上部の暗い部分は線状光源4の光が届いておらず、検査対象から外れている箇所である。また、被検査物は、図4(b)の下から上へ向かって搬送されている。
まず、480枚の各画像データに対して、画像データ上の同じ位置から1ライン(図4(b)に示す赤い線:N番目のライン)を抜き出す。このとき抜き出す1ラインの幅は、1フレーム(1/60秒)あたりに被検査物が動く距離である。抜き出した各ラインを上から順番に、#1の画像データから抜き出したライン、#2の画像データから抜き出したライン、・・・#480の画像データから抜き出したラインとなるように並べる。図4(c)は、480枚の各画像データからN番目のラインを抜き出して並べた状態を示す図である。図4(c)に示すように、抜き出したラインを並べて1枚の画像データに合成することによって、N番目のラインを撮影するラインセンサが撮影した画像と同等の画像を生成することができる。このように、エリアカメラ5が撮影した複数の画像データから同じ位置のラインを抜き出して、当該或るラインを撮影するラインセンサが撮影した画像と同等の画像を生成することをライン合成と称する。
480枚の各画像データからN番目のラインだけではなく、N+1番目、N+2番目、N−1番目などのラインを抜き出してライン合成を行うことによって、エリアカメラ5が撮影した画像データから、複数の撮影角度(撮影位置)で撮影された画像データを一度に生成することができる。つまり、エリアカメラ5が撮影した画像データに対してライン合成を行うことによって、複数のラインセンサが並列に配置されている光学系で撮影した複数の撮影角度の画像データと同等の、複数枚の画像データを生成することができる。
次に、エリアカメラ5が撮影した480枚の画像データからライン合成した画像の具体例を説明する。図5にエリアカメラ5が撮影した画像と、エリアカメラ5が撮影した480枚の画像データからライン合成した画像とを示す。図5(a)は、エリアカメラ5が撮影した画像である。図5(a)は、図4(b)と同様の画像であり、下部の暗い部分はナイフエッジ7によって光が遮られている部分であり、中心付近の明るい部分は線状光源4からの光が透過している部分であり、上部の暗い部分は線状光源4の光が届いておらず、検査対象から外れている箇所である。図5(a)の下端から上部に向かって突き出している暗い部分は、目印のために配置した物体の影である。図5(a)の白丸で囲んだ箇所に欠陥が存在するが、エリアカメラ5が撮影した画像そのままでは、欠陥を視認することができない。
図5(b)は、エリアカメラ5が撮影した480枚の画像データからナイフエッジ7近傍ラインを抜き出しライン合成した画像である。具体的には、ナイフエッジ7の上端から照明側へ210μm離れた位置のラインを抽出してライン合成した画像である。図5(a)と同様に、図5(b)の下端から上部に向かって突き出している暗い部分は、目印のために配置した物体の影である。図5(b)を見ると、わずかに洗濯板状のスジ(バンクマーク)のようなものが視認できる。このように、エリアカメラ5が撮影した画像そのままでは視認できなかった欠陥が、エリアカメラ5が撮影した画像データに対してライン合成することによって、視認できるようになる。
ただ、ライン合成した画像そのままでは、欠陥を明瞭に識別することが難しいため、ライン合成画像に対して画像処理を行う。その画像処理の例として、図6に示すような手法がある。図6(a)は、ライン合成したオリジナルの画像であり、図5(b)に示す画像と同様である。図6(b)は、図6(a)に示す画像に対して7×7の垂直微分フィルタ処理を行った画像である。図6(c)は、図6(b)に示す画像に対してラプラシアンヒストグラム法を用いて固定した閾値に従って2値化した画像である。このように、ライン合成した画像に対して画像処理を施すことによって、欠陥をより顕著に識別することができる。
このように、エリアカメラ5によって撮影した画像データに対してライン合成を施すことにより、複数の異なる光学条件下(撮影角度)でラインセンサによって撮影した画像と同等の、複数の異なる光学条件下の画像を一度に生成することができる。よって、生成した複数の画像の中から、欠陥が最も良く見える画像(最適な光学条件下の画像;例えば、図5(b)のようなナイフエッジ7近傍ラインを抜き出しライン合成した画像)を選択し、選択した画像を用いて欠陥検出を行えば、最適な光学条件下でラインセンサによって撮影した画像を用いて欠陥検出を行うのと同様の結果が得られる。そして、最適な光学条件となるようにラインセンサの位置を移動させるよりも、エリアカメラ5で撮影した画像データのライン合成によって得られる複数の画像の中から、欠陥が最も良く見える画像を選択する方が容易であるので、欠陥検査の実施が容易になり、欠陥検査の効率が向上する。さらに、生成した複数の撮影角度に相当する各ライン合成画像に対して、画像処理を行い、画像処理を施した各ライン合成画像の中から欠陥が顕著に表れている画像を選択して参照することによって、被検査物の様々な欠陥を明瞭に認識することができる。
しかしながら、各ライン合成画像の中から、あるいは画像処理した各ライン合成画像の中から、手動で画像の選択を行うことは、あまり効率的ではない。また、被検査物に欠陥がある場合、被検査物のどの部位に欠陥があるのかを把握するために、被検査物の撮影されている箇所に欠陥があるか否かをリアルタイムで識別できることが望ましい。
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、生成した複数の撮影角度に相当する各ライン合成画像を全て使って、被検査物の様々な欠陥を明瞭に、リアルタイムに識別可能な画像を生成するアルゴリズムを開発した。この開発したアルゴリズムをRT−LCI(Real Time Line Composition and Integration:リアルタイム・ライン合成積算)と称し、以下にRT−LCIを説明する。
まず、RT−LCIを行う画像解析装置6の各部の構成について図1に基づいて説明する。ここで、RT−LCIの画像処理を行う際に使用する撮影角度の種類数をk(kは2以上の整数)とする。また、後述する微分オペレータの行数をm(mは自然数)とする。なお、撮影角度の種類数kおよび微分オペレータの行数mは任意に設定でき、予め定めておくものである。また、説明を簡単にするため、エリアカメラ5が或る画像を撮影してから次の画像を撮影するまで(1フレーム期間)に被検査物2が移動する距離を移動幅とし、後述のデータ抽出部が抽出するラインデータ(1ラインの部分画像データ)の幅が示す実距離(被検査物2表面での距離)は、上記移動幅と同一であるとする。また、微分オペレータの列数は、2以上であってもよいが、ここでは、1であるものとする。
図1は、画像解析装置6の主要部の構成を示す機能ブロック図である。上述のように、画像解析装置6は、画像処理部10および記憶部20を備える。画像処理部10は、データ抽出部(同一ライン抽出手段)11、第1区分判定部12、データ格納部(ライン合成手段)13、全区分判定部14、変化量算出部(オペレータ演算手段)15、同一箇所判定抽出部16、積算部(積算手段)17および画像生成部(画像生成手段)18を備える。記憶部20は、第1の記憶部21、第2の記憶部22、第3の記憶部23および第4の記憶部24を備える。第2の記憶部22は、第1の領域221、第2の領域222、第kの領域22kを備える。第1の領域221〜第kの領域22kは、それぞれm個の区分に分割されている。
データ抽出部11は、第1の抽出部111、第2の抽出部112、・・・第kの抽出部11kを備える。第1の抽出部111は、第1の記憶部21に格納されている画像データから、画像データ上における所定の位置のラインデータ(例えば、1番下のラインデータ)を抽出するものである。ここで、第1の抽出部111が抽出する所定の位置のラインデータを1番目のラインデータとする。第2の抽出部112は、画像データ上における上記所定の位置のラインデータから被検査物2の移動方向側に隣接しているラインデータ(2番目のラインデータ)を抽出するものである。第kの抽出部は、画像データ上における上記所定の位置のラインデータから被検査物2の移動方向に向かってk番目のラインデータを抽出するものである。まとめると、データ抽出部11は、複数の異なる画像データの中から画像データ上における位置が同一である1ラインのラインデータをそれぞれ抽出するものであり、上記画像データ上における異なる複数の位置について上記ラインデータをそれぞれ抽出するものである。
第1区分判定部12は、第1の判定部121、第2の判定部122、・・・第kの判定部12kを備える。第1の判定部121は、第2の記憶部22における第1の領域221の第1の区分にラインデータがすでに格納されているか否かを判定するものである。第2の判定部122は、第2の記憶部22における第2の領域222の第1の区分にラインデータがすでに格納されているか否かを判定するものである。第kの判定部12kは、第2の記憶部22における第kの領域22kの第1の区分にラインデータがすでに格納されているか否かを判定するものである。
データ格納部13は、第1の格納部131、第2の格納部132、・・・第kの格納部13kを備える。第1の格納部131は、第1区分判定部12の第1の判定部121が第1の領域221の第1の区分にラインデータがないと判定した場合、第1の抽出部111が抽出したラインデータを第1の領域221の第1の区分に格納する。一方、第1区分判定部12の第1の判定部121が第1の領域221の第1の区分にラインデータがあると判定した場合、第1の格納部131は、第1の領域221の各区分に格納されているデータの格納場所をそれぞれ1区分ずつ繰り上げて移動させる。つまり、第1の区分に格納されているラインデータを第2の区分に移動させ、第m−1の区分に格納されているラインデータを第mの区分に移動させる。このとき、第mの区分にラインデータが格納されている場合は、そのラインデータを破棄もしくは不図示のバックアップ用の場所に移動させる。第1の格納部131は、各区分に格納されているラインデータの格納場所を移動させた後、第1の抽出部111が抽出したラインデータを第1の領域221の第1の区分に格納する。また、第1の格納部131は、第1の抽出部111によって画像データ上における所定の位置のラインデータが複数抽出されると、抽出された複数のラインデータを第1の領域221の連続する区分に格納させることによって、抽出された複数のラインデータを1つのライン合成画像データに合成する。
第2の格納部132は、第1の格納部131と同様に、第1区分判定部12の第2の判定部122の判定に基づいて、第2の抽出部112が抽出したラインデータを第2の領域222の第1区分に格納する。また、第2の格納部132は、第2の抽出部112によって画像データ上における同一の位置のラインデータが複数抽出されると、抽出された複数のラインデータを第2の領域222の連続する区分に格納させることによって、抽出された複数のラインデータを1つのライン合成画像データに合成する。
第kの格納部13kは、第1の格納部131と同様に、第1区分判定部12の第kの判定部12kの判定に基づいて、第kの抽出部11kが抽出したラインデータを第kの領域22kの第1区分に格納する。また、第kの格納部13kは、第kの抽出部11kによって画像データ上における同一の位置のラインデータが複数抽出されると、抽出された複数のラインデータを第kの領域22kの連続する区分に格納させることによって、抽出された複数のラインデータを1つのライン合成画像データに合成する。
まとめると、データ格納部13は、データ抽出部11によって抽出されたラインデータを時系列に並べて複数ラインのライン合成画像データを生成するものであり、データ抽出部11によって抽出されたラインデータを、画像データ上における位置ごとに、時系列に並べて異なる複数のライン合成画像データを生成するものである。
全区分判定部14は、第1の判定部141、第2の判定部142、・・・第kの判定部14kを備える。第1の判定部141は、第1の領域221の全区分(第1〜第mの区分)にラインデータが格納されているか否かを判定するものである。第2の判定部142は、第2の領域222の全区分(第1〜第mの区分)にラインデータが格納されているか否かを判定するものである。第kの判定部14kは、第kの領域22kの全区分(第1〜第mの区分)にラインデータが格納されているか否かを判定するものである。
変化量算出部15は、第1の算出部151、第2の算出部152、・・・第kの算出部15kを備える。第1の算出部151は、全区分判定部14の第1の判定部141が全区分にラインデータが格納されていると判定した場合に、第1の領域221に格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータ演算を行い、その結果として得られた強調画像データ(1ラインまたは複数ラインの画像データ)を第3の記憶部23に格納する。第2の算出部152は、全区分判定部14の第2の判定部142が全区分にラインデータが格納されていると判定した場合に、第2の領域222に格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータ演算を行い、その結果として得られた強調画像データ(1ラインまたは複数ラインの画像データ)を第3の記憶部23に格納する。第kの算出部15kは、全区分判定部14の第kの判定部14kが全区分にラインデータが格納されていると判定した場合に、第kの領域22kに格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータ演算を行い、その結果として得られた強調画像データ(1ラインまたは複数ラインの画像データ)を第3の記憶部23に格納する。なお、変化量算出部15が行う演算処理の詳細は後述する。まとめると。変化量算出部15は、複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行うことにより、1ラインまたは複数ラインの強調画像データをそれぞれ生成するものである。
同一箇所判定抽出部16は、第3記憶部23に被検査物2の同一箇所を示す全撮影角度(k種類)の強調画像データが格納されているか否かを判定する。同一箇所判定抽出部16は、同一箇所を示す全撮影角度の強調画像データが格納されていると判定した場合は、そのk種類の強調画像データをそれぞれ抽出する。
積算部17は、同一箇所判定抽出部16が抽出した、被検査物2の同一箇所を示すk種類の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して1ラインまたは複数ラインの欠陥検査用画像データ(RT−LCIデータ)を生成する。積算部17は、積算したk種類の強調画像データが示す被検査物2の位置を、積算した結果の欠陥検査用画像データに対応付けて第4の記憶部24に格納する。
画像生成部18は、第4の記憶部24に格納されている各欠陥検査用画像データに対応付けられている被検査物2の位置に基づいて、第4の記憶部24に格納されている各欠陥検査用画像データを被検査物2の位置関係と同様に並べて新たな欠陥検査用画像データ(RT−LCIデータ)を合成し、合成された欠陥検査用画像データを表示部30にて画像として表示させる。
次に、RT−LCIを行う際の画像解析装置6の各部の動作について図7に基づいて説明する。図7は、RT−LCI処理における画像解析装置6の各部の動作フローを示す図である。
まず、欠陥検査システム1は、RT−LCIの処理を開始すると、フレーム番号i=1とする(S10)。被検査物2をコンベア3で搬送しながらエリアカメラ5で撮影を開始する。エリアカメラ5は、撮影した画像データを画像解析装置6に出力し、画像解析装置6は、その画像データを第1の記憶部21に格納する(S20)。
第1の抽出部111が第1の記憶部21に格納されている画像データから所定の位置のラインデータ(例えば、下から1番目のラインデータ)を抽出する(S41)。第1の抽出部111は、抽出したラインデータが示す被検査物2の位置を当該ラインデータに対応付ける。例えば、移動幅とラインデータが示す実距離の幅とが同じ場合、第1の抽出部111は、抽出したラインデータに被検査物2の位置を示す記号として「pi」を付加する(iはフレーム番号)。なお、所定の位置のラインデータは、予め任意に設定し、どのラインからデータを抽出するかを決めておく。
第2の抽出部112は、i≧2であれば(S32でYES)、第1の抽出部111が抽出する所定の位置のラインデータから被検査物2の移動方向側に隣接しているラインデータを抽出する(S42)。第2の抽出部112は、抽出したラインデータが示す被検査物2の位置を当該ラインデータに対応付ける。例えば、移動幅とラインデータが示す実距離の幅とが同じ場合、第2の抽出部112は、抽出したラインデータに被検査物2の位置を示す記号として「p(i−1)」を付加する。S32でi=1(NO)であれば、S140に進む。
第kの抽出部11kは、i≧kであれば(S3kでYES)、第1の抽出部111が抽出する所定の位置のラインデータから被検査物2の移動方向に向かってk番目のラインデータを抽出する(S4k)。第kの抽出部11kは、抽出したラインデータが示す被検査物2の位置を当該ラインデータに対応付ける。例えば、移動幅とラインデータが示す実距離の幅とが同じ場合、第kの抽出部11kは、抽出したラインデータに被検査物2の位置を示す記号として「p(i−k+1)」を付加する。S3kでi<k(NO)であれば、S140に進む。
次に、第1区分判定部12の第1の判定部121は、第2の記憶部22の第1の領域221の第1の区分にラインデータがすでに格納されているか否かを判定する(S51)。第1の判定部121が第1の領域221の第1の区分にラインデータがあると判定した場合(S51でYES)、第1の格納部131は、第1の領域221の各区分に格納されているラインデータの格納場所をそれぞれ1区分ずつ繰り上げて移動させる(S61)。第1の格納部131は、各区分に格納されているラインデータの格納場所を移動させた後、第1の抽出部111が抽出したラインデータを第1の領域221の第1の区分に格納する(S71)。一方、第1の判定部121が第1の領域221の第1の区分にラインデータがないと判定した場合(S51でNO)、第1の格納部131は、第1の抽出部111が抽出したラインデータを第1の領域221の第1の区分に格納する(S71)。
また、第1区分判定部12の第2の判定部122は、第2の記憶部22の第2の領域222の第1の区分にラインデータがすでに格納されているか否かを判定する(S52)。第2の判定部122が第2の領域222の第1の区分にラインデータがあると判定した場合(S52でYES)、第2の格納部132は、第2の領域222の各区分に格納されているラインデータの格納場所をそれぞれ1区分ずつ繰り上げて移動させる(S62)。第2の格納部132は、各区分に格納されているラインデータの格納場所を移動させた後、第2の抽出部112が抽出したラインデータを第2の領域222の第1の区分に格納する(S72)。一方、第2の判定部122が第2の領域222の第1の区分にラインデータがないと判定した場合(S52でNO)、第2の格納部132は、第2の抽出部112が抽出したラインデータを第2の領域222の第1の区分に格納する(S72)。
また、第1区分判定部12の第kの判定部12kは、第2の記憶部22の第kの領域22kの第1の区分にデータがすでに格納されているか否かを判定する(S5k)。第kの判定部12kが第kの領域22kの第1の区分にラインデータがあると判定した場合(S5kでYES)、第kの格納部13kは、第kの領域22kの各区分に格納されているラインデータの格納場所をそれぞれ1区分ずつ繰り上げて移動させる(S6k)。第kの格納部13kは、各区分に格納されているラインデータの格納場所を移動させた後、第kの抽出部11kが抽出したラインデータを第kの領域22kの第1の区分に格納する(S7k)。一方、第kの判定部12kが第kの領域22kの第1の区分にラインデータがないと判定した場合(S5kでNO)、第kの格納部13kは、第kの抽出部11kが抽出したラインデータを第kの領域22kの第1の区分に格納する(S7k)。
次に、全区分判定部14の第1の判定部141が、第1の領域221の全区分にラインデータが格納されているか否かを判定する(S81)。全区分判定部14の第1の判定部141が全区分にラインデータが格納されていると判定した場合(S81でYES)、第1の算出部151は、第1の領域221に格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータ演算を行い、その結果として得られた強調画像データを第3の記憶部23に格納する(S91)。このとき、第1の領域221の第mの区分に格納されているラインデータに対応付けられている被検査物2の位置を示す記号を微分オペレータ演算の結果である強調画像データに対して付加する。一方、第1の判定部141が全区分にラインデータが格納されていないと判定した場合(S81でNO)、S140に進む。
また、全区分判定部14の第2の判定部142が、第2の領域221の全区分にラインデータが格納されているか否かを判定する(S82)。全区分判定部14の第2の判定部142が全区分にラインデータが格納されていると判定した場合(S82でYES)、第2の算出部152は、第2の領域222に格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータ演算を行い、その結果として得られた強調画像データを第3の記憶部23に格納する(S92)。このとき、第2の領域222の第mの区分に格納されているラインデータに対応付けられている被検査物2の位置を示す記号を微分オペレータ演算の結果である強調画像データに対して付加する。一方、第2の判定部142が全区分にラインデータが格納されていないと判定した場合(S82でNO)、S140に進む。
また、全区分判定部14の第kの判定部14kが、第kの領域22kの全区分にラインデータが格納されているか否かを判定する(S8k)。全区分判定部14の第kの判定部14kが全区分にラインデータが格納されていると判定した場合(S8kでYES)、第kの算出部15kは、第kの領域22kに格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータ演算を行い、その結果として得られた強調画像データを第3の記憶部23に格納する(S9k)。このとき、第kの領域22kの第mの区分に格納されているラインデータに対応付けられている被検査物2の位置を示す記号を微分オペレータ演算の結果である強調画像データに対して付加する。一方、第kの判定部14kが全区分にラインデータが格納されていないと判定した場合(S8kでNO)、S140に進む。
次に、同一箇所判定抽出部16が、第3記憶部23に格納されている強調画像データに対応付けられている被検査物2の位置を示す記号を参照して、被検査物2の同一箇所を示す全撮影角度(k種類)の強調画像データが格納されているか否かを判定する(S100)。同一箇所判定抽出部16が、被検査物2の同一箇所を示す全撮影角度の強調画像データが格納されていないと判定した場合(S100でNO)、S140に進む。一方、同一箇所判定抽出部16は、被検査物2の同一箇所を示す全撮影角度の強調画像データが格納されていると判定した場合(S100でYES)、その全撮影角度であるk種類の強調画像データを抽出する。
積算部17は、同一箇所判定抽出部16が抽出したk種類の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算する(S110)。積算部17は、積算したk種類の強調画像データに対応付けられている被検査物2の位置を示す記号を積算した結果の欠陥検査用画像データ(RT−LCIデータ)に対応付けて第4の記憶部に格納する。画像生成部18は、第4の記憶部に格納されている各RT−LCIデータに対応付けられている被検査物2の位置を示す記号に基づいて、第4の記憶部に格納されている各RT−LCIデータを被検査物2の位置関係と同様に並べて新たな欠陥検査用画像データ(RT−LCIデータ)を合成する(S120)。そして、画像生成部18は、その並べたRT−LCIデータを表示部30に表示させる(S130)。画像生成部18が表示部30にRT−LCIデータを表示させた後、フレーム番号i=i+1として、S20に戻る。
このように、エリアカメラ5が撮影した画像データに対してリアルタイム・ライン合成積算(RT−LCI)処理を行うことによって、複数の撮影角度である散乱光学系画像の積算画像を連続的に得ることができる。
次に、RT−LCIの画像処理をより具体的に説明するために、第1〜第4の記憶部に格納される画像データおよび表示部30に表示される画像について図8(a)、図8(b)および図8(c)に基づいて説明する。図8(a)は、各記憶部に格納される画像データおよび表示部30に表示される画像の状態を1フレーム毎に示す状態遷移図である。図8(a)の横軸は時間(フレーム単位の時間)を示す。なお、撮影角度の種類数k=3、微分オペレータの行数m=5と設定されているとする。また、エリアカメラ5の画素数を幅n画素(被検査物2の移動方向に直交する方向のサイズ;nは2以上の整数)×高さ(被検査物2の移動方向に沿ったサイズ)9画素とし、1ラインの幅を1画素とする。つまり1ラインの画素数をn画素×1画素とする。また、ここでも、1フレームあたりに被検査物2がコンベア3によって移動する距離(移動幅)と1ラインの幅が示す実距離は同一であるとする。つまり、1画素が示す実距離(1画素の解像度)が上記移動幅と同一であるとする。
図8(b)に示す400は、被検査物2を示すものであり、400に記載の記号(p1、p2・・・)は、被検査物2の部位を示し、各部位(p1、p2・・・)は、移動幅ごとに分割されている。図8(b)に示すように、被検査物2は、エリアカメラ5の撮影範囲401の下側から上側に向かってコンベア3によって搬送されるとする。
図8(a)に示す410は、第1の記憶部21に格納されている画像データを示す。つまり、エリアカメラ5が撮影した画像そのままの画像データである。画像データ301〜310は、それぞれフレーム番号i=1〜10の時に撮影された画像データである。画像データ301〜310は、上述のように、n画素×9画素の画素数であり、9つのラインデータを含む。ここで、各画像データ301〜310を9つのラインデータに分割し、各画像データ301〜310の下から順番に第1のライン、第2のライン、・・・第9のラインと称する。また、撮影角度の種類数k=3であるため、ここでは、第1のライン、第2のライン、第3のラインからラインデータを抽出するものとする。つまり、上述の所定の位置のラインデータを第1のラインデータ(1番下のラインデータ)とする。後の画像データの説明のために、第1のラインを撮影角度Aとし、第2のラインを撮影角度Bとし、第3のラインを撮影角度Cとする。また、各画像データ301〜310には、説明の便宜のために、ラインデータ毎に対応する被検査物2の部位(p1、p2、・・・)および撮影角度(A〜C)が付記されている。具体的には、例えば、「p1−A」とは、撮影角度A、つまり、第1のラインに対応するラインデータであって、被検査物2の部位p1に対応するラインデータであることを示す。
図8(a)に示す420は、第2の記憶部22に格納されている1ライン以上mライン(この例では5ライン)以下のラインデータを示す。また、421は第1の領域221に、422は第2の領域222に、423は第3の領域223に、それぞれ格納されている1ライン以上mライン(この例では5ライン)以下のラインデータを示す。つまり、ライン合成画像データ311〜320は、第1の領域221に格納されている1ライン以上mライン(この例では5ライン)以下のラインデータであり、ライン合成画像データ321〜330は、第2の領域222に格納されている1ライン以上mライン(この例では5ライン)以下のラインデータであり、ライン合成画像データ331〜340は、第3の領域223に格納されている1ライン以上mライン(この例では5ライン)以下のラインデータである。第1の領域221〜第3の領域223は、微分オペレータの行数m=5のため、それぞれ5つの区分に分割されている。各ライン合成画像データ311〜340は、1つ以上5つ以下のラインデータから構成されており、各ライン合成画像データ311〜340の下から順番に、各領域の第1の区分、第2の区分、・・・第5の区分に格納されているラインデータを示す。また、各ライン合成画像データ311〜340には、説明の便宜のために、ラインデータ毎に対応する被検査物2の部位(p1、p2、・・・)および撮影角度(A〜C)が付記されている。
図8(a)に示す430は、第3の記憶部23に格納されている強調画像データを示す。430の各強調画像データには、説明の便宜のために、強調画像データ毎に、対応する被検査物2の部位(p3、p4、・・・)および撮影角度(A〜C)が付記されている。また、図8(a)に示す440は、第4の記憶部24に格納されている欠陥検査用画像データ(RT−LCIデータ)を示す。そして、図8(a)に示す450は、表示部30に表示されている画像を示す。RT−LCIデータ361〜370および画像381〜384にも、説明の便宜のために、ライン毎に、対応する被検査物2の部位(p3、p4、・・・)が付記されている。
また、図8(c)は、最初に生成されるRT−LCIデータを生成する処理を示す図である。図8(c)の縦軸は時間(フレーム単位の時間)を示す。図8(a)と同様に、撮影角度の種類数k=3、微分オペレータの行数m=5と設定されているとする。図8(c)において、図8(a)に示すデータと同じデータには同じ参照符号をつけている。図8(c)に示すa,a,・・・aは、微分オペレータの1,2,・・・,m行目の要素を示す。
これらを踏まえて、以下にRT−LCIの具体的な処理を説明する。なお、RT−LCIの処理の開始時には、各記憶部には何もデータが格納されていないものとする。また、エリアカメラ5の撮影範囲401に、被検査物2の上端部p1が入ったときにRT−LCIの処理を開始するものとする。
画像データ301は、フレーム番号i=1の時に撮影されたデータであり、被検査物2の上端部p1が第1のラインに差し掛かっている状態を示す。このとき、第1の抽出部111が画像データ301の第1のライン(所定のライン)からラインデータp1−Aを抽出し、第1の格納部131が、第1の抽出部111によって抽出されたラインデータp1−Aを第1の領域221の第1の区分に格納する。ライン合成画像データ311は、その時の第1の領域221に格納されているラインデータを示す。フレーム番号i=1のため、第2の抽出部112および第3の抽出部113は、処理を行わず、また、第1の領域221の全区分にラインデータもないため、次のフレームに移行するのを待つ。
フレーム番号i=2のとき、被検査物2の上端部p1は第2のラインに位置し、p2が第1のライン上にある。このときエリアカメラ5が撮影した画像データが画像データ302である。第1の抽出部111は、画像データ302の第1のラインからラインデータp2−Aを抽出する。このとき、第1区分判定部12の第1の判定部121は、第1の領域221の第1の区分にラインデータがあると判定するため、第1の格納部131は、第1の領域221の第1の区分にあるラインデータp1−A(部位p1に対応付けられている第1のラインのラインデータ)を第1の領域221の第2の区分に移動し、第1の抽出部111が抽出したラインデータp2−A(部位p2に対応付けられているラインデータ)を第1の領域221の第1の区分に格納する。また、フレーム番号i=2であるため、第2の抽出部112が画像データ302の第2のラインからラインデータp1−Bを抽出し、第2の格納部132が、第2の抽出部112によって抽出されたラインデータp1−Bを第2の領域222の第1の区分に格納する。ここでも、第1の領域221および第2の領域222の全区分にラインデータがないため、次のフレームに移行するのを待つ。
フレーム番号i=3のとき、被検査物2の上端部p1は第3のラインに位置し、部位p3までがエリアカメラ5の撮影範囲401に入っている。このときエリアカメラ5が撮影した画像データが画像データ303である。先ほどまでと同様に、第1の抽出部111および第2の抽出部112は、それぞれ画像データ303の第1のライン、第2のラインからラインデータp3−Aおよびp2−Bを抽出し、第1の格納部131、第2の格納部132がそれぞれ、第1の領域221、第2の領域222に格納済みのラインデータを1区分ずつ上へ移動し、第1の領域221、第2の領域222の第1の区分にラインデータp3−Aおよびp2−Bを格納する。ここで、フレーム番号i=3であるため、第3の抽出部113が画像データ303の第3のラインからラインデータp1−Cを抽出し、第3の格納部が、第3の抽出部113によって抽出されたラインデータp1−Cを第3の領域223の第1の区分に格納する。ここでも、第1の領域221、第2の領域222および第3の領域223の全区分にラインデータがないため、次のフレームに移行するのを待つ。
フレーム番号i=4、5の時も同様に、第1〜第3の抽出部111〜113は、画像データ304,305の第1〜第3のラインからラインデータp4−A,p3−B,p2−Cおよびラインデータp5−A,p4−B,p3−Cをそれぞれ抽出し、第1〜第3の格納部131〜133がそれぞれ、第1〜第3の領域221〜223に格納済みのラインデータを1区分ずつ上へ移動し、第1〜第3の領域221〜223の第1の区分にラインデータp4−A,p3−B,p2−Cおよびラインデータp5−A,p4−B,p3−Cを格納する。これらにより、第1の領域221に格納されているライン合成画像データ315は、第1〜第5フレームの画像データ301〜305における第1のライン(撮影角度A)を合成したライン合成画像データとなる。フレーム番号i=5において、ライン合成画像データ315が示すように、第1の領域221の全区分にラインデータが格納されているため、全区分判定部14の第1の判定部141は、第1の領域221の全区分にラインデータがあると判定し、第1の算出部151が、ライン合成画像データ315に対して微分オペレータ演算(微分フィルタをかける演算処理)を行って、ライン合成画像データ315の中心ラインデータ、すなわち第1の領域の第3の区分に格納されているラインデータp3−Aにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ341を生成し、第3の記憶部23に格納する。なお、このとき第1の算出部151は、第1の領域の第3の区分に格納されているラインデータp3−Aに対応付けられている被検査物2の部位を示す記号p3およびライン合成画像データ315の対応している撮影角度を示す記号Aを微分オペレータ演算結果の強調画像データに対して付加する。ここで、同一箇所判定抽出部16が第3の記憶部23に被検査物2の同一箇所(部位)を示す全撮影角度(3種類)の強調画像データが格納されているか否かを判定するが、第3の記憶部23には、強調画像データ341しかないため、次のフレームに移行するのを待つ。
フレーム番号i=6では、第1〜第3の抽出部111〜113は、画像データ306の第1〜第3のラインからラインデータp6−A,p5−B,p4−Cをそれぞれ抽出し、第1〜第3の格納部131〜133がそれぞれ、第1〜第3の領域221〜223に格納済みのラインデータを1区分ずつ上へ移動し、第1〜第3の領域221〜223の第1の区分にラインデータp6−A,p5−B,p4−Cを格納する。これらにより、第1の領域221および第2の領域222に格納されているライン合成画像データ316およびライン合成画像データ326は、第2〜第6フレームの画像データ302〜306における第1のライン(撮影角度A)を合成したライン合成画像データ、および第2〜第6フレームの画像データ302〜306における第2のライン(撮影角度B)を合成したライン合成画像データとなる。第1の領域221、第2の領域222の全区分にラインデータが格納されているため、第1の算出部151がライン合成画像データ316に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp4−Aにおける輝度勾配の絶対値を表すライン画像データ344を生成し、第2の算出部152が部分画像データ326に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp3−Bにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ343を生成し、生成した強調画像データ344を記号p4および記号Aを付加して第3の記憶部23に格納し、生成した強調画像データ343を記号p3および記号Bを付加して第3の記憶部23に格納する。ここでも、第3の記憶部23に被検査物2の同一箇所(部位)を示す全撮影角度(3種類)の輝度データが格納されていないので、次にフレームに移行するのを待つ。
フレーム番号i=7では、第1〜第3の抽出部111〜113は、画像データ307の第1〜第3のラインからラインデータp7−A,p6−B,p5−Cをそれぞれ抽出し、第1〜第3の格納部131〜133がそれぞれ、第1〜第3の領域221〜223に格納済みのラインデータを1区分ずつ上へ移動し、第1〜第3の領域221〜223の第1の区分にラインデータp7−A,p6−B,p5−Cを格納する。これらにより、第1〜第3の領域221〜223に格納されているライン合成画像データ317,327,337は、第3〜第7フレームの画像データ303〜307における第1のライン(撮影角度A)を合成したライン合成画像データ、第3〜第7フレームの画像データ303〜307における第2のライン(撮影角度B)を合成したライン合成画像データ、および第3〜第7フレームの画像データ303〜307における第3のライン(撮影角度C)を合成したライン合成画像データとなる。第1の領域221、第2の領域222、第3の領域223の全区分にラインデータが格納されているため、第1の算出部151がライン合成画像データ317に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp5−Aにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ350を生成し、第2の算出部152がライン合成画像データ327に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp4−Bにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ349を生成し、第3の算出部153がライン合成画像データ337に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp3−Cにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ347を生成し、それぞれ生成した強調画像データ350,349,347を第3の記憶部23に格納する。このとき、第3の記憶部23に被検査物2の同一部位p3を示す全撮影角度(A、B、Cの3種類)の強調画像データ(強調画像データ345〜347)が格納されているため、積算部17が強調画像データ345、346、347の輝度値を積算して、部位p3のRT−LCIデータ361を生成し、第4の記憶部24に格納する。そして、画像生成部18は、部位p3のRT−LCIデータ361を新たな欠陥検査用画像データとして表示部30に出力し、表示部30は欠陥検査用画像381を表示する。
ここで、図8(c)に基づいて、再度、RT−LCIデータ361の生成処理について説明する。図8(c)に示すように、フレーム番号i=5(m)において、5(m)フレームの画像データ301〜305の同一ラインを合成したライン合成画像データ315に対して5(m)行1列の微分オペレータ演算を行って、ラインデータp3−Aにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ341(後続のフレームでは強調画像データ342、345等となる)を生成する。次に、フレーム番号i=6において、5フレームの画像データ302〜306の同一ラインを合成したライン合成画像データ326に対して5行1列の微分オペレータ演算を行って、ラインデータp3−Bにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ343(後続のフレームでは強調画像データ346等となる)を生成する。そして、フレーム番号i=7(=m+k−1)において、5フレームの画像データ303〜307の同一ラインを合成したライン合成画像データ337に対して5行1列の微分オペレータ演算を行って、ラインデータp3−Cにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ347を生成する。生成した3(k)フレームの同一観測位置の強調画像データ345〜347の輝度値を積算して部位p3のRT−LCIデータ361が生成される。
フレーム番号i=8では、第1〜第3の抽出部111〜113は、画像データ308の第1〜第3のラインからラインデータp8−A,p7−B,p6−Cをそれぞれ抽出し、第1〜第3の格納部131〜133がそれぞれ、第1〜第3の領域221〜223に格納済みのラインデータを1区分ずつ上へ移動し、第1〜第3の領域221〜223の第1の区分にラインデータp8−A,p7−B,p6−Cを格納する。これらにより、第1〜第3の領域221〜223に格納されているライン合成画像データ318,328,338は、第4〜第8フレームの画像データ304〜308における第1のライン(撮影角度A)、第2のライン(撮影角度B)、第3のライン(撮影角度C)を合成したライン合成画像データとなる。第1の領域221、第2の領域222、第3の領域223の全区分にラインデータが格納されているため、第1の算出部151がライン合成画像データ318に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp6−Aにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ356を生成し、第2の算出部152がライン合成画像データ328に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp5−Bにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ355を生成し、第3の算出部153がライン合成画像データ338に微分オペレータ演算を行って、ラインデータp4−Cにおける輝度勾配の絶対値を表す強調画像データ353を生成し、それぞれ生成した強調画像データ356,355,353を第3の記憶部23に格納する。このとき、第3の記憶部23に被検査物2の同一部位p4を示す全撮影角度(A、B、Cの3種類)の強調画像データ(強調画像データ351〜353)が格納されているため、積算部17が強調画像データ351〜353の輝度値を積算して、部位p4のRT−LCIデータ363を生成し、第4の記憶部24に格納する。そして、画像生成部18がRT−LCIデータ362、363を被検査物2の位置関係と対応するように上からp3、p4となるようにRT−LCIデータ362、363を並べて新たな欠陥検査用画像データを合成し、表示部30に出力する。このとき、表示部30は、部位p3、p4の欠陥検査用画像382を表示する。
以下同様にして、フレーム番号i=9では、部位p3、p4、p5のRT−LCIデータを並べて合成した欠陥検査用画像データが表示部30に出力されて、表示部30に部位p3、p4、p5の欠陥検査用画像が表示され、フレーム番号i=10では、部位p3、p4、p5、p6のRT−LCIデータを並べて合成した欠陥検査用画像データが表示部30に出力されて、表示部30に部位p3、p4、p5、p6の欠陥検査用画像が表示される。そして、例えば、被検査物2の部位が部位p1〜p478であるとすれば、最終的に、フレーム番号i=480において、部位p3〜p476のRT−LCIデータを並べて合成した欠陥検査用画像データが表示部30に出力されて、表示部30に部位p3〜p478の欠陥検査用画像が表示される。したがって、被検査物2の大部分(474/478)についての欠陥検査用画像データを得ることができる。また、被検査物2の部位p3〜p476のみを被検査物とすれば、その被検査物全体についての欠陥検査用画像データを得ることができる。
次に、変化量算出部15が行う演算処理の詳細を図9に基づいて説明する。ここでは、説明の簡略化のため、エリアカメラ5の画素数を横4画素×縦9画素(n=4)とする。これ以外は、図8(a)〜図8(c)の説明で用いた条件をそのまま適用する。図9は、第2の記憶部22に格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データ、変化量算出部15が用いる微分オペレータ、変化量算出部15が算出した強調画像データの値の一例を示す図である。
図9に示す行列461は、第2の記憶部22に格納されている5つのラインデータからなるライン合成画像データ(図8(a)および図8(c)に示すライン合成画像データ315、326、337などに相当する)の全画素の輝度値を要素とする5行4列の行列である。図9に示す行列462は、変化量算出部15が用いる5行1列の微分オペレータ(微分フィルタ)である。図9に示す行列463は、変化量算出部15が算出した縦方向の輝度勾配を要素とする5行4列の行列である。図9に示す行列464は、行列463の絶対値をとったものであり、図8(a)に示す強調画像データ341〜356の全画素の輝度値を示す。
変化量算出部15は、行列461に対して微分オペレータの行列462をかける。具体的には、まず、行列461の第1列に対して行列462をかけて行列463の第1列の値を算出する。つまり、行列461の第1列に対して以下の計算を行うことにより、行列463の第1列の値を算出する。その計算とは、98×(−2)+99×(−1)+100×0+101×1+102×2=10である。続いて、行列461の第2〜4列に対して同様に行列462をかけて行列463の第2〜4列の値を算出し、行列463をライン合成画像データの中心ラインの輝度データとして生成する。このように、変化量算出部15は、5つのラインデータからなるライン合成画像データに対して微分オペレータをかけることによって、ライン合成画像データの中心ラインデータの縦方向輝度勾配を算出し、輝度データを生成する。ライン合成画像データの輝度値の勾配を算出することによって、被検査物2上にある微小な欠陥、薄い欠陥、淡い欠陥を検出することが容易になる。
また、変化量算出部15が算出した輝度勾配は、0でなければ被検査物2のその部位に欠陥があることを示すものである(ただし、輝度勾配が0に近い場合には、欠陥でなくノイズである可能性がある)。被検査物2に欠陥がある場合、被検査物2において、線状光源4からの光がナイフエッジ7によって遮光されずに入射する領域では欠陥が暗となり、線状光源4からの光がナイフエッジ7によって遮光されて直接的に入射しない領域では欠陥が明として撮影される。そのため、輝度勾配の値の符号は欠陥の有無に影響せず、輝度勾配の大きさが欠陥の有無を判断する際に重要になる。そこで、変化量算出部15は、図9に示す行列464のように、変化量算出部15が生成した輝度勾配の行列463の絶対値をとって行列464を生成する。以上のようにして、変化量算出部15は、ライン合成画像データの中心ラインにおける各画素の輝度値を各画素での縦方向輝度勾配の絶対値に置き換えて新たな1ラインの強調画像データを生成する。このように、輝度勾配の絶対値を用いることによって、明側に映る欠陥も暗側に映る欠陥も同じようにプラスに寄与し、欠陥の有無の識別がより容易になる。さらに、明側および暗側の欠陥を同様に扱うことができるため、光学系の位置決めをする際に、エリアカメラ5の撮影範囲を、ナイフエッジ7をまたぐように配置するだけで十分となる。さらに、ナイフエッジ7の位置決めをする際に、エリアカメラ5の水平方向と厳密にあわせなくても精度良く検査を行うことができる。すなわち、従来と比較して、暗視野法における光学系の配置を高精度に行う必要がなく、簡単になる。そのため、欠陥検査システムの検査能力、および、欠陥検査システムの装置系、特に光学系のメンテナンス性が向上する。
さらに、エリアカメラ5が撮影した画像データに対してRT−LCI処理を行うことによって、被検査物2の厚みおよび反りの影響を受けずに、精度良く欠陥を検出することができる。従来の透過散乱法では、図10(a)および(b)に示すように、被検査物2が比較的厚い、もしくは、被検査物2が反っている場合、線状光源4から照射された光が被検査物2を透過する際に、屈折してエリアカメラ5の光軸からずれて入射することがある。また、従来の反射散乱法では、図10(c)に示すように、被検査物2が比較的厚い、もしくは、被検査物2が反っている場合、線状光源4から照射された光が被検査物2を反射する際に、光学系の設計において意図した反射角とは異なる角度で反射することがあり、エリアカメラ5の光軸からずれて入射することがある。このように、被検査物2の厚みおよび反りの影響を受けて、線状光源4からの光が意図せずに光軸がずれてエリアカメラ5に入射することによって、被検査物2上の欠陥による光軸のずれとの区別がつかず、被検査物2上に欠陥があると誤認してしまう虞がある。
透過散乱法では、図10(a)に示すように、被検査物2が比較的薄い、被検査物2の曲率が比較的小さい、もしくは、入射角(図2に示すZ軸とエリアカメラ5への入射光の光軸との角度)が比較的小さい場合、光軸のずれが僅かであるため、エリアカメラ5が撮影した画像への影響は比較的小さい。一方、図10(b)に示すように、被検査物2が比較的厚い、被検査物2の曲率が比較的大きい、もしくは、入射角が比較的大きい場合、光軸のずれが大きくなり、エリアカメラ5が撮影した画像への影響が無視できなくなる。また、反射散乱法では、それに加えて、反射角が僅かに異なる場合であっても、被検査物2とエリアカメラ5との距離に比例して光軸のずれが大きくなる。
本実施形態においても、従来と同様に、被検査物2の厚みや反りによって光軸がずれることがある。しかしながら、エリアカメラ5が撮影した画像データの輝度値の勾配を算出して、複数の撮影角度における勾配の絶対値を積算することによって、被検査物2の厚みや反りによる光軸のずれの影響を抑えることができる。
なお、本実施形態では、エリアカメラ5が或る画像を撮影してから次の画像を撮影するまで(1フレーム期間)に被検査物2が移動する距離を移動幅と、データ抽出部11が抽出するラインデータの幅が示す実距離とが同一であるとしているが、これに限るものではない。例えば、コンベア3の搬送速度が5倍であって、被検査物2が1フレーム期間に5画素分移動する場合、データ抽出部11が抽出するラインデータの幅を5画素に設定すれば、同様のRT−LCI処理を行うことができる。逆に、コンベアの搬送速度が1/5倍であって、被検査物2が1フレーム間に1/5画素分移動する場合、5フレームごとにデータ抽出部11がラインデータ(n×1画素)を抽出すれば、同様のRT−LCI処理を行うことができる。その他、データ抽出部11が抽出するラインデータの幅が示す実距離と移動幅とが厳密に合わせられない場合(例えば、エリアカメラ5の1画素あたりの解像度と移動幅との比が1:1.05といった半端な値になる場合)、パターンマッチング技術を使用してラインデータの位置を補正すれば、同様のRT−LCI処理を行うことができる。なお、上記パターンマッチング技術は、ハード化が容易であり、様々な手法が公知であるため、RT−LCI処理に適合するものを用いればよい。
また、本実施形態の画像解析装置6は、データ抽出部11で抽出された第1〜第kのラインのラインデータを格納するための手段として、第1〜第kの領域221〜22k、第1〜第kの判定部121〜12k、および第1〜第kの格納部131〜13kを備えていたが、これらに代えて、データ抽出部11で抽出された第1〜第kのラインのラインデータをそれぞれ格納するk個のFIFO(First In, First Out)メモリを用いてもよい。この場合、各FIFOメモリは、1ラインのラインデータをそれぞれ格納する第1〜第5の区分を備え、新たなラインデータを受け取る毎に、受け取ったラインデータを第1の区分に格納し、第2〜第4の区分に格納されたデータを第3〜第5の区分に移動させ、第5の区分に格納されたデータを破棄する。
また、本実施形態では、エリアカメラ5を固定し、コンベア3を用いて被検査物2を移動させたが、これに限るものではなく、エリアカメラ5と被検査物2とが相対的に移動していればよい。
また、本実施形態では、RT−LCI処理に関係のないもしくは使用済みのデータ(画像データ、ラインデータ等)は、その都度破棄しても良いし、バックアップ用として同じ記憶部もしくは別の記憶部に保存しておいてもよい。例えば、図8(a)に示す画像データ301〜310は、ラインデータが抽出された後はRT−LCI処理では使用されないが、第1の記憶部21等に保存しておいてもよい。
また、変化量算出部15がライン合成画像データの輝度値の勾配を算出する前後において、平滑化の処理を行ってもよい。また、ライン合成画像データの輝度値の勾配を算出する変化量算出部15に代えて、第1〜第kの領域221〜22kの各々に格納されている複数のラインデータからなるライン合成画像データに対して、m行1列の平滑化オペレータを用いた平滑化の処理を行って強調画像データを生成する平滑化処理部も設けてもよい。平滑化の処理を行うことによって、ノイズに埋もれてしまう小さな(淡い、薄い)欠陥を検出することができる。このとき、上記平滑化オペレータとしては、例えば、7行1列の行列(1,1,1,1,1,1,1)などの平滑化オペレータを用いることができる。また、ライン合成画像データの輝度値の勾配を算出する変化量算出部15に代えて、ライン合成画像データに対して、輝度変化を強調する他のオペレータ(鮮鋭化オペレータなど)を用いた演算を行うオペレータ演算処理部を設けてもよい。
また、画像生成部18で合成された欠陥検査用画像データを、輝度値を適当な閾値で2値化してから出力するようにしてもよい。これにより、ノイズが除去され、欠陥をより明瞭かつ正確に示す欠陥検査用画像データを出力および表示できる。また、2値化を行う場合において、2値化後の画像データにおける欠陥領域に相当する領域(本実施形態では明領域)のうちで、所定サイズ以下の領域をノイズとして除去してもよい。これにより、欠陥をより正確に示す欠陥検査用画像データを出力および表示できる。さらに、2値化を行う場合において、2値化後の画像データにおいて各画素の輝度値が欠陥を表す輝度(本実施形態では明輝度)であるか否かに基づいて欠陥検査を行ってもよい。
本実施形態において、ナイフエッジ7を用いて被検査物の2次元画像を撮影し、欠陥検査用の画像データにおける暗視野(線状光源4からの光がナイフエッジ7によって遮られて直線的に入射しない部分)中の明部(被検査物2の欠陥で散乱された光に起因する)として欠陥を検出する暗視野法を用いて、被検査物の欠陥を検査している。しかしながら、これに限るものではなく、ナイフエッジ7を省いて被検査物の2次元画像を撮影し、欠陥検査用の画像データにおける明視野(線状光源4で照明されている部分)中の暗部(被検査物2の欠陥による光の散乱に起因する)として欠陥を検出する明視野法を用いて、被検査物の欠陥を検査してもよい。
また、本実施形態では、1フレーム期間ごとにRT−LCI処理を行っているが、これに限るものではなく、例えば、所定のフレーム期間ごとにRT−LCI処理を行ってもよいし、撮影した後に、撮影した画像データをまとめて、RT−LCI処理と同様の、ライン合成積算の画像処理を行ってもよい。具体的には、エリアカメラ5として、ハイスピードカメラを用いた場合、リアルタイムに(1フレーム期間ごとに)RT−LCI処理を行うことが困難であるため、ハイスピードカメラで撮影した画像を一度ハードディスク等の記憶装置に画像データとして保存し、保存した画像データを時系列に読み出しながら、RT−LCI処理と同様の、ライン合成積算の画像処理を行ってもよい。このように、リアルタイムに行わないライン合成積算の処理をソフトウェアLCI処理と称する。
また、本実施形態では、画像解析装置6を画像処理ソフトウェアがインストールされたPCとしているが、これに限るものではなく、例えば、エリアカメラ5が画像解析装置6を内蔵していても良いし、PCではなく、エリアカメラ5から画像データを取り込むキャプチャボード(PCの拡張カード)が画像解析装置6を内蔵していても良い。
また、本実施形態では、変化量算出部15は、第2の記憶部22の各領域に格納されている部分画像データに対して全て同じ微分オペレータを用いて微分オペレータ演算を行っているが、これに限るものではない。例えば、変化量算出部15の第1の算出部は、第1の領域に格納されているライン合成画像データ(315等)に対しては、或る微分オペレータAを用いて微分オペレータ演算を行い、第2の算出部は、第2の領域に格納されているライン合成画像データ(326等)に対しては、微分オペレータAとは異なる微分オペレータBを用いて微分オペレータ演算を行い、第3の算出部は、第3の領域に格納されているライン合成画像データ(337等)に対しては、微分オペレータAおよびBとは異なる微分オペレータCを用いて微分オペレータ演算を行ってもよい。加えて、微分オペレータ演算を行う代わりに、平滑化オペレータなどの、輝度変化を強調する他のオペレータを用いた演算を行ってもよい。
例えば、明視野法を用いて被検査物を撮影した場合、撮影した各画像データから抽出されたライン合成画像データが実質的に同じになる場合がある。このとき、実質的に同一の複数のライン合成画像データに対して、それぞれ異なる微分オペレータ演算を用いて強調画像データを生成してもよい。この異なる微分オペレータ演算を用いて生成された複数の強調画像データを積算することにより、種々の欠陥を検出することができる。
また、本実施形態では、変化量算出部15がオペレータ演算を行って強調画像データを生成した後、同一箇所判定抽出部16が、被検査物2の同一箇所を示す強調画像データを抽出しているが、この順序に限るものではない。例えば、同一箇所判定抽出部16が、被検査物2の同一箇所を示すライン合成画像データを抽出した後に、変化量算出部15が同一箇所判定抽出部16が抽出したライン合成画像データに対して、オペレータ演算を行って強調画像データを生成してもよい。
換言すると、変化量算出部15は、データ格納部13によって合成された複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行うことにより、1ラインまたは複数ラインの複数の強調画像データをそれぞれ生成し、同一箇所判定抽出部16は、変化量算出部15が生成した複数の強調画像データの中から被検査物2の同一箇所を示す複数の強調画像データを抽出し、積算部17は、同一箇所判定抽出部16が抽出した複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成してもよい。また、同一箇所判定抽出部16は、データ格納部13によって合成された複数のライン合成画像データの中から被検査物2の同一箇所を示す複数のライン合成画像データを抽出し、変化量算出部15は、同一箇所判定抽出部16が抽出した複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行うことにより、1ラインまたは複数ラインの複数の強調画像データをそれぞれ生成し、積算部17は、変化量算出部15が生成した複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成してもよい。
また、本実施形態では、データ抽出部11が撮影した画像データからラインデータを抽出した際に、抽出したラインデータに対して、被検査物2上での位置を特定する(識別する)記号(識別子)を付加しているが、これに限るものではない。同一箇所判定抽出部16が被検査物2の同一箇所を示すライン合成画像データ(または強調画像データ)を抽出する処理を行う前までに、画像データ(撮影された画像データ、ラインデータ、ライン合成画像データ、強調画像データなど)に被検査物2上での位置を特定する記号が付加してあればよい。また、画像データに被検査物2上での位置を特定する記号を付加せず、同一箇所判定抽出部16が、被検査物2の同一箇所を示すライン合成画像データ(または強調画像データ)を特定および抽出してもよい。
〔実施例〕
以下に、図3に示す欠陥検査システム1において、エリアカメラ5で撮影した画像データに対してRT−LCI処理を施した実施例について説明する。エリアカメラ5の本体として、倍速プログレッシブスキャン白黒カメラモジュール(ソニー株式会社製のXC−HR50)を使用した。また、エリアカメラ5のレンズには、株式会社タムロン製レンズ(焦点距離f=35mm)に5mm接写リングを取り付けたものを使用した。エリアカメラ5の画素数は、512×480画素であり、1画素あたりの解像度は70μm/pixelである。エリアカメラ5の焦点は被検査物の表面上に合わせた。エリアカメラ5のフレームレートは60FPSであり、通常のTVフォーマットで撮影した。エリアカメラで8秒間撮影し、480枚の画像に対してRT−LCI処理を行った。コンベア3の搬送速度は4.2mm/秒に設定した。つまり、1フレームあたりに被検査物2が70μm移動するように設定した。線状光源4として22kHzの高周波蛍光灯を使用した。照明拡散板8として、厚さ3mmで乳白色のPMMA(ポリメチルメタクリレート)シートを使用した。ナイフエッジ7としてNTカッターを使用した。被検査物2には、バンクマークやアバタなどの欠陥を有する透明のPMMAシートを用いた。
RT−LCI処理における画像処理の設定として、k=15、m=5または7とした。データ抽出部11が抽出するラインデータの画素数を512×1画素とし、移動幅とラインデータの幅が示す実距離とが一致するように設定した。
まず、RT−LCI処理を行った一例を図11に基づいて説明する。図11(a)に示す画像は、原画像であり、エリアカメラ5が撮影した動画の最後のフレーム(480コマ目)の画像である。この原画像は、図5(a)に示す画像と同種のものである。図5(a)と同様に、図11(a)に示す原画像において、下部の暗い部分はナイフエッジ7によって光が遮られている部分であり、中心付近の明るい部分は線状光源4からの光が透過している部分であり、上部の暗い部分は線状光源4の光が届いておらず、検査対象から外れている箇所である。図11(a)に示す原画像の下端から上部に向かって突き出している暗い部分は、目印のために配置した物体の影である。また、図11(b)に示す画像は、原画像のナイフエッジ7付近の画像データに対してRT−LCI処理を行い、RT−LCIデータを原画像に合わせて並べたRT−LCI画像である。RT−LCI画像における明るい部分の箇所に欠陥があることを示す。RT−LCI画像を見ると、スジ状のバンクマークや点状のアバタなどの欠陥が被検査物2上にあることがわかる。さらに、被検査物2の位置と画像の位置とが対応しているので、RT−LCI画像を見ることによって、被検査物2上のどの位置にどのような欠陥があるのかを容易に識別することができる。
次に、変化量算出部15において、異なる微分オペレータを用いた場合のRT−LCI画像の例を図11に基づいて説明する。図11(a)は、エリアカメラ5が撮影した画像(480コマ目)である。図11(b)は、m=7とし、原画像に対して、微分オペレータとして7行1列の行列(−3,−2,−1,0,1,2,3)を用いてRT−LCI処理を行うことによって得られたRT−LCI画像の例を示す図である。図11(b)に示すRT−LCI画像は、原画像の画像データの縦方向の輝度勾配を強調するように処理したものである。この微分オペレータは、非常に淡い凹凸である欠陥を検出する際に適した演算処理である。また、図11(c)は、m=7とし、原画像に対して、微分オペレータとして7行1列の行列(−1,−1,−1,6,−1,−1,−1)を用いてRT−LCI処理を行うことによって得られたRT−LCI画像の例を示す図である。この微分オペレータは、中程度の点欠陥のみ強調することに適した演算処理である。
また、別の微分オペレータを用いた例を図12に示す。図12(a)は、エリアカメラ5が撮影した原画像である。図12(b)は、原画像のエッジ近傍における或る撮影角度のライン合成画像である。また、図12(c)は、m=7とし、原画像に対して、微分オペレータとして5行1列の行列(−2,−1,0,1,2)を用いたRT−LCI処理を行うことによって得られたRT−LCI画像である。
次に、エリアカメラの水平方向に対してナイフエッジが傾斜している状態で撮影された実施例を図13に示す。図13(a)は、エリアカメラ5が撮影した原画像である。図13(b)は、従来のラインセンサを用いた欠陥検査システムによって得られる画像と同等である、原画像のエッジ近傍における或る撮影角度のライン合成画像である。図13(b)を見ると、画像の左側が明るく、右側が暗くなっているのがわかる。このように、従来のラインセンサを用いた欠陥検査システムでは、ラインセンサとナイフエッジとの配置関係によって撮影される画像に大きな影響があった。つまり、従来は、ラインセンサおよびナイフエッジを含む光学系の配置を高精度に位置決めしなければ精度の良い検査結果が得られなかった。図13(c)は、m=5とし、原画像に対して、微分オペレータとして5行1列の行列(−2,−1,0,1,2)を用いたRT−LCI処理を行うことによって得られたRT−LCI画像である。図13(c)を見ると、図13(b)と異なり、RT−LCI画像では、ナイフエッジ7が傾斜していることによる影響を受けないことがわかる。すなわち、本願発明の欠陥検査システム1は、ナイフエッジ7がエリアカメラ5の水平方向に対して傾斜している場合であっても、精度良く欠陥を検出することができる。
次に、RT−LCI処理に平滑化オペレータを用いた例を図14に基づいて説明する。図14(a)は、エリアカメラが撮影した原画像である。図14(b)は、原画像のエッジ近傍における或る撮影角度のライン合成画像である。図14(c)は、m=7とし、原画像に対して、微分オペレータに代えて平滑化オペレータとしての7行1列の行列(1,1,1,1,1,1,1)を用いたRT−LCI処理を行うことによって得られたRT−LCI画像である。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、画像解析装置6の各ブロック、特にデータ抽出部11、第1区分判定部12、データ格納部13、全区分判定部14、変化量算出部15、同一箇所判定抽出部16、積算部17および画像生成部18は、FPGA(Field Programmable Gate Array)回路等のハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、画像解析装置6は、例えば、m行1列の微分オペレータ演算を実現するFPGA回路に対して、ライン抜き出しのための演算器、エリアFIFOメモリ、二値化のための比較器などを追加することによって実現できる。m行1列の微分オペレータ演算を実現するFPGA回路は、各行の画像データを格納するm個のラインFIFOメモリ、微分オペレータの係数(フィルタ係数)をそれぞれ格納するm個のイネーブル端子付きDフリップフロップ(DFFE)、各行の画像データと微分オペレータの係数とを乗算するm個の乗算器、乗算結果を加算する加算回路等によって実現できる。
〔変形例〕
変化量算出部15は、第2の記憶部22に格納されているライン合成画像データのライン数に合わせて、使用する微分オペレータの行数および列数を適宜設定すればよい。また、変化量算出部15が算出した結果生成される強調画像データは、上述のように、1ラインで構成されるものだけに限らず、算出した結果、複数のラインからなるものであってもよい。
また、上述の実施形態および実施例では、変化量算出部15が縦方向の輝度勾配を算出していたが、これに限るものではなく、横方向の輝度勾配を算出しても良い。
また、上述の実施形態および実施例では、エリアカメラ5が撮影した画像データの大きさ(画素数)に合わせて欠陥検査用画像データを生成していたが、これに限るものではなく、1つ以上のRT−LCIデータを欠陥検査用の画像データとして生成して、それを元に被検査物上の欠陥を検出しても良い。
また、画像解析装置6は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである画像解析装置6の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記画像解析装置6に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、画像解析装置6を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は、シート状等の被検査物の欠陥を検査する欠陥検査システム、並びに、それに用いる、欠陥検査用撮影装置、欠陥検査用画像処理装置、欠陥検査用画像処理プログラム、欠陥検査用画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、および欠陥検査用画像処理方法に利用することができる。
1 欠陥検査システム
2 被検査物
3 コンベア(移動手段)
4 線状光源
5 エリアカメラ(撮影部、欠陥検査用撮影装置の一部)
6 画像解析装置(欠陥検査用画像処理装置)
7 ナイフエッジ
8 照明拡散板
10 画像処理部(欠陥検査用画像処理装置の一部、欠陥検査用撮影装置の一部)
11 データ抽出部(同一ライン抽出手段)
12 第1区分判定部
13 データ格納部(ライン合成手段)
14 全区分判定部
15 変化量算出部(オペレータ演算手段)
16 同一箇所判定抽出部
17 積算部(積算手段)
18 画像生成部(画像生成手段)
20 記憶部(欠陥検査用画像処理装置の一部、欠陥検査用撮影装置の一部)
21 第1の記憶部
22 第2の記憶部
23 第3の記憶部
24 第4の記憶部
30 表示部

Claims (10)

  1. 被検査物と撮影部とが相対的に移動させられている状態で、撮影部によって時間的に連続して撮影された上記被検査物の2次元画像の画像データを処理し、それによって上記被検査物の欠陥を検査するための欠陥検査用画像データを生成する欠陥検査用画像処理装置であって、
    複数の異なる画像データの中から画像データ上における位置が同一である1ラインのラインデータをそれぞれ抽出する同一ライン抽出手段と、
    上記同一ライン抽出手段によって抽出されたラインデータを時系列に並べて複数ラインのライン合成画像データを生成するライン合成手段とを備え、
    上記同一ライン抽出手段は、上記画像データ上における異なる複数の位置について上記ラインデータをそれぞれ抽出するものであり、
    上記ライン合成手段は、上記同一ライン抽出手段によって抽出されたラインデータを、上記画像データ上における位置ごとに時系列に並べて、異なる複数のライン合成画像データを生成するものであり、
    さらに、上記複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行い、1ラインまたは複数ラインの複数の強調画像データを生成するオペレータ演算手段と、
    上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成する積算手段と、を備えることを特徴とする欠陥検査用画像処理装置。
  2. 上記オペレータ演算手段は、上記複数のライン合成画像データに対して微分オペレータを用いた演算を行うことにより、上記複数のライン合成画像データの中心ラインにおける各画素での、中心ラインに直交する方向に沿った輝度値の勾配を算出し、上記複数のライン合成画像データの中心ラインにおける各画素の輝度値を各画素での輝度値の勾配の絶対値に置き換えて新たな1ラインの強調画像データを生成するものであることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査用画像処理装置。
  3. 上記積算手段は、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す上記複数の強調画像データを上記被検査物の箇所ごとに、当該強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを生成するものであり、
    さらに、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを、上記被検査物の箇所に対応させて並べて新たな欠陥検査用画像データを合成する画像生成手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の欠陥検査用画像処理装置。
  4. 上記積算手段は、上記撮影部が撮影する毎に、上記被検査物の先頭箇所から順番に上記被検査物の箇所ごとに、上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して、上記被検査物の複数の箇所をそれぞれ示す複数の欠陥検査用画像データを生成することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の欠陥検査用画像処理装置。
  5. 請求項1ないし4の何れか1項に記載の欠陥検査用画像処理装置と、
    被検査物と撮影部とが相対的に移動させられている状態で、上記被検査物の2次元画像を時間的に連続して撮影する撮影部とを含むことを特徴とする欠陥検査用撮影装置。
  6. 被検査物の欠陥を検査する欠陥検査システムであって、
    請求項5に記載の欠陥検査用撮影装置と、
    上記被検査物と上記撮影部とを相対的に移動させる移動手段とを含むことを特徴とする欠陥検査システム。
  7. 上記被検査物に光を照射する光源と、
    上記光源から上記被検査物を透過または反射して上記撮影部に入射する光を一部遮る遮光体とを含み、
    暗視野法を用いて被検査物の欠陥を検査することを特徴とする請求項6に記載の欠陥検査システム。
  8. 請求項1から4の何れか1項に記載の欠陥検査用画像処理装置を動作させるための欠陥検査用画像処理プログラムであって、コンピュータを上記手段の全てとして機能させるための欠陥検査用画像処理プログラム。
  9. 請求項8に記載の欠陥検査用画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  10. 被検査物と撮影部とが相対的に移動させられている状態で、撮影部によって時間的に連続して撮影された上記被検査物の2次元画像の画像データを処理し、それによって上記被検査物の欠陥を検査するための欠陥検査用画像データを生成する欠陥検査用画像処理方法であって、
    複数の異なる画像データの中から画像データ上における位置が同一である1ラインのラインデータをそれぞれ抽出する同一ライン抽出ステップと、
    上記同一ライン抽出ステップにおいて抽出されたラインデータを時系列に並べて複数ラインの合成画像データを生成するライン合成ステップとを含み、
    上記同一ライン抽出ステップは、上記画像データ上における異なる複数の位置について上記ラインデータをそれぞれ抽出するステップであり、
    上記ライン合成ステップは、上記同一ライン抽出ステップにおいて抽出されたラインデータを、上記画像データ上における位置ごとに時系列に並べて、異なる複数のライン合成画像データを生成するステップであり、
    さらに、上記複数のライン合成画像データに対してそれぞれ、輝度変化を強調するオペレータを用いた演算を行い、1ラインまたは複数ラインの複数の強調画像データを生成するオペレータ演算ステップと、
    上記被検査物の同一箇所を示す上記複数の強調画像データの輝度値を画素ごとに積算して欠陥検査用画像データを生成する積算ステップと、を含むことを特徴とする欠陥検査用画像処理方法。
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