以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
なお,本願明細書において「A~B」とはA以上B以下であることを意味する。また,各図にはXYZの3次元空間を示す直交座標系を示しており,X軸はシート状物の流れ方向(長手方向),Y軸はシート状物の幅方向,Z軸はシート状物の厚み方向をそれぞれ示している。
図1は,本発明に係るシート状物の製造工程の一部を示している。本発明で製造可能なシート状物は特に限定されないが,光透過方式による欠陥検査を行うことができるように光透過性を有する薄葉紙を製造の対象とすることが好ましい。なお,欠陥検査は,光透過方式に限られず,後述するように光反射方式や,あるいはそれらを併用して行うこともできる。薄葉紙の例は,ティッシュペーパー,トイレットペーパー,キッチンペーパーなどの家庭用の衛生薄葉紙である。図1に示した例では,2層のシートを重ね合わせて積層シートを形成した後に,この積層シートにエンボスとミシン目が形成される。また,エンボス加工後とミシン目加工の後にそれぞれ積層シートの欠陥検査を行うこととしている。
具体的に説明すると,図1右側の装置上流から左側の装置下流に向かって長尺のシート部材が搬送される。装置上流には,第1の原反ロール11と第2の原反ロール12が位置している。第1の原反ロール11には長尺の第1のシートS1が巻回されており,第2の原反ロール12には長尺の第2のシートS2が巻回されている。第1の原反ロール11及び第2の原反ロール12からそれぞれ第1のシートS1及び第2のシートS2が繰り出されると,各シートS1,S2は駆動回転する搬送ローラや従動回転するガイドローラを介して装置下流側へと搬送され,第1の重ね合せ部20(重ね合せローラ21)において,互いに重ね合わされる。ここで,第1のシートS1及び第2のシートS2が重ね合わされた複数層のシートを積層シートと称する。積層シートは,装置下流側へと搬送される。
第1の重ね合せ部20の下流には,エンボス加工部30が位置している。図1に示された例では,積層シートはエンボス加工部30において第1のシートS1と第2のシートS2とに再度分離されて,シートごとにエンボス加工が施される。エンボス加工部30は,例えば各シートの搬送経路を挟んで対向する位置にエンボスローラ31,32と受けローラ33,34とを備える。第1のシートS1は,第1のエンボスローラ31と第1の受けローラ33の間に導入され,第2のシートS2は,第2のエンボスローラ32と第2の受けローラ34の間に導入される。各エンボスローラ31,32は,各シートS1,S2に対して付与するエンボスのパターンに応じた複数の凸部を有する。他方,各受けローラ33,34は,例えばエンボスローラ31,32の凸部のパターンと相補的な凹パターンが外周面に形成された金属製のローラや,ローラの外周面がゴムで被覆されたラバー製のローラを用いることができる。エンボス加工部30においては,エンボスローラ31,32と受けローラ33,34との間にシートS1,S2を導入し,これらを挟みこんで押圧することにより,エンボスローラ31,32の凸部に応じたパターンのエンボスを各シートS,S2の紙面に施すことができる。
エンボス加工部30の下流側には,第2の重ね合せ部40(重ね合せローラ41)が位置している。第2の重ね合せ部40では,エンボス加工部30においてそれぞれ別々にエンボス加工が施された第1のシートS1と第2のシートS2を互いに重ね合わせる。これにより,各層にエンボスが施された2層構造の積層シートが得られる。また,例えばキッチンペーパーを製造する場合など,エンボス加工後に各層の間に粘着剤を塗布して2層を接着することとしてもよい。
第2の重ね合せ部40の下流側には,ミシン目加工部50が位置している。ミシン目加工部50では,積層シートに対し,幅方向(流れ方向と平面的に直交する方向)に延びるミシン目を一定間隔で形成する。ミシン目を形成することで,積層シートを所定の長さごとに切り離しやすくなる。ミシン目加工部50は,例えば固定刃51と回転刃52とを備える。固定刃51の周面には,そのローラの軸方向に沿って複数の刃がミシン目パターンにて間欠的に設けられており,回転刃52との間で積層シートを挟み込むことで,その刃によって積層シートにミシン目が形成される。ミシン目が必要なシート状物としては,トイレットペーパーやキッチンペーパーが挙げられる。
ミシン目加工部50の下流側には,ログ形成部70が位置している。ログ形成部70では,ミシン目加工後,巻取りローラによって所定の長さとなるまで積層シートを巻き取り,ログを形成する。積層シートのログは,その後に切断部(図示省略)へと搬出され,ログソー等によって所定幅に切断されて,個々のシート製品となる。このような工程では,トイレットロールやキッチンロールといったロール状のシート製品を製造することができる。ただし,本発明はティッシュペーパー等のシート製品にも適用することが可能である。
また,図1に示されるように,第2の重ね合せ部40とミシン目加工部50の間,及びミシン目加工部50とログ形成部70の間の合計2箇所に,欠陥検査装置60がそれぞれ配置されている。欠陥検査装置60は,2層のシートS1,S2を重ね合わせた積層シートを対象として,その積層シートにおける欠陥の有無を検査する。このため,欠陥検査装置60は,少なくとも,2層のシートS1,S2の重ね合わせ部の下流側に1箇所設けられていればよい。ただし,図1に示した例のように,各シートに対してエンボス加工やミシン目加工を施す場合には,各加工工程においてシートに欠陥が生じやすいため,エンボス加工部30の直後に1箇所,さらにミシン目加工部50の直後に1箇所,それぞれ欠陥検査装置60を設けることが好ましい。
欠陥検査装置60は,基本的に,カメラによって積層シートを撮影し,その撮影画像を解析することで積層シートに生じた欠陥の有無を検査する。検査対象とする欠陥の種類は特に制限されないが,例えば積層シートの各層に生じた穴や破れ,スジ,ムラ,あるいは積層シートの各層の表面に付着した汚れや異物などを検査対象とすることができる。
図2及び図3は,欠陥検査装置60の第1の実施形態を示している。図2及び図3に示されるように,欠陥検査装置60は,撮影装置61(カメラ)と,複数の光源62,63(ライト)とを備える。本実施形態において光源62は,積層シートの幅方向に6台,積層シートの長手方向に2台並べられており,6列×2行で合計12台備え付けられている。なお,光源の数はこれに限られず,例えば4~12台又は12以上用いることもできる。さらに,M列×N行の光源の集合体を1ブロックとし,このブロックを複数配置することもできる(M及びNは1以上の整数であり,MはNより大きい値であることが好ましい)。
撮影装置61は,静止画又は動画の画像データを取得するためのカメラである。撮影装置61によって取得された画像データは,画像解析装置65(図4参照)へと送信され欠陥検出のための所定の画像解析が行われる。カメラは,例えば,レンズ,メカシャッター,シャッタードライバ,CCDイメージセンサユニットやCMOSイメージセンサユニットといった光電変換素子,光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP),ICメモリなどで実現される。なお,カメラは,静止画を撮影するものであってもよいし,所定のフレームレートの動画を撮影するものであってもよい。
撮影装置61は,その撮像面(レンズ)が積層シートの紙面に対してほぼ平行に配置される。このため,撮影装置61の撮像面から垂直に直線を引くと,その直線は紙面に対してほぼ垂直に交差する。これにより,撮影装置61によって積層シートの紙面を歪みなく撮影することができる。
光源62,63は,撮影装置61によって撮影されるシート状物の領域を照明するライトである。光源62,63は,白色光を照射するものであることが好ましい。光源62,63の例としては,蛍光灯,LED(発光ダイオード),OLED(有機発光ダイオード),ランプ,アーク灯,白熱電球などが挙げられる。また,光源62,63は,スポット光源,平行光源(面光源),又は点光源を採用することができるが,その照明範囲(スッポットサイズ)や光軸を制御しやすいスポット光源を採用することが最も好ましい。スポット光源を利用すれば,光源から限定された方向と範囲に光を照射することができる。
図2及び図3は,欠陥検査装置60を構成する撮影装置61と光源62,63の配置の一例として,光透過方式でシート状物の紙面を撮影する実施形態を示している。図2は,積層シートの幅方向の断面図に相当し,図3は,積層シー2トの長手方向(流れ方向)の断面図に相当する。各図では,各光源62,63の照明範囲を破線で示し,各光源62,63の光軸を一点鎖線で示している。なお,「光軸」とは,光源の発光部分の中心を通り,発光面に対して垂直な直線を意味する。また,撮影装置61の撮影範囲を破線で示している。図2及び図3に示されるように,第1のシートS1と第2のシートS2が重なり合った積層シートの裏面側(一方面側)に撮影装置61が配置され,その表面側(他方面側)に複数の光源62,63が配置されている。撮影装置61は,図2に示されるように積層シートの幅方向の全域を検査範囲としており,図3に示されるよう積層シートの長手方向の一部を検査範囲として,積層シートの紙面を撮影している。本実施形態において,光源は,図2に示されるように積層シートの幅方向に複数列並べられ,図3に示されるように長手方向に複数行並べられているが,本願明細書及び図面では便宜的に,複数の光源をある行に属する第1の光源群62と別の行に属する第2の光源群63に分けている。
光透過方式では,撮影装置61は積層シートの裏面を撮影し,各光源62,63は,撮影装置61が撮影している積層シートの表面を照明する。このため,各光源62,63から照射されて積層シートを透過した光が,撮影装置61に入射するようになっている。このようにして,撮影装置61は,光透過方式で積層シートの撮影画像を取得する。なお,各光源62,63の照明範囲は,撮影装置61の撮影範囲と完全に一致している必要はなく,各光源62,63の照明範囲の中に撮影装置61の撮影範囲が含まれていればよい。
また,本実施形態では,各光源62,63としてスポット光源が利用される。スポット光源は,特定の方向に向けて光を照射して,限定された範囲を照明する。図2等で示した例では,各光源62,63としては,光軸を中心として照明範囲(直径)がテーパー状に広がるものが採用されている。なお,スポット光源としては,照明範囲が無限遠に同一のものを用いることもできる。
図2に示されるように,光源62,63は,積層シートの幅方向に複数台並べられている。なお,図2では,第2の光源群63は図示されていないが,第1の光源群62の裏側に同数台並べられている。本実施形態では,各光源62,63の光の照射角度はすべて同一であり,また各光源62,63から積層シートの紙面までの距離(すなわち光源を設置する高さ)はすべて同じに設定されている。また,幅方向断面視において,各光源の光軸と積層シートの紙面のなす角θ1は,ほぼ直角であり,例えば80度~90度の範囲に設定されている。また,各光源のなす角θ1はすべて同一角度に設定されている。ただし,光源の照射角度や紙面までの距離は,複数の光源ですべて統一する必要はなく,照射角度の異なる光源を含めたり,光源から紙面までの距離を個別に調整したりすることも可能である。さらに,光源毎になす角θ1を変化(傾斜)させることもできる。
図3に示されるように,光源62,63は,積層シートの長手方向にも複数台ずつ並べられている。図3では図示は省略されているが,第1の光源群62と第2の光源群63にはそれぞれ6台ずつ光源が含まれる。積層シートの長手方向に並べる光源62,63の行数は特に限定されないが,例えば2行以上,3行以上,又は4行以上とし,かつ10列以下の範囲で配置してもよい。また,図3に示されるように,第1の光源群62と第2の光源群63は,積層シートの紙面上の照明範囲が重なっており,この照明範囲が重複した領域に撮影装置61の検査範囲が含まれている。このため,積層シートの長手方向において,撮影装置61は複数の光源62,63によって照明された積層シートの領域のみを検査対象とするものである。
また,長手方向断面視において,各光源の光軸と積層シートの紙面のなす角θ2は,ほぼ直角であり,例えば80度~90度の範囲に設定されている。また,各光源のなす角θ2はすべて同一角度に設定されている。ただし,光源毎になす角θ2を変化(傾斜)させることもできる。
上記のように,複数の光源62,63を配置することで,積層シートの紙面と光源62,63の間に紙粉等の浮遊物が存在している場合であっても,その浮遊物を複数の方向から照らすことができるため,紙面上に投影される浮遊物の影の色を薄くすることができる。これにより,撮影装置61によって取得した撮影画像を解析して,紙面上に付着した欠陥をより明確に検出することができる。
図4は,撮影装置61に接続された画像解析装置65の機能構成例を示している。画像解析装置65は,前述した構成によって撮影装置61によって取得されたシート状物の画像を解析して,当該シート状物の欠陥の有無を検査する。画像解析装置65には一般的なコンピュータを用いればよい。画像解析装置65は,撮影装置用のインターフェースを備えており,撮影装置61が取得した画像データが入力される。画像解析装置65は,制御演算部65a,記憶部65b,操作部65c,及び表示部65dを備える。制御演算部65aは,各要素65b~65dを制御するとともに,記憶部65bに記憶されている欠陥検査用のコンピュータプログラムに従って,撮影装置61から取得した画像データの画像解析処理を行う。制御演算部65aは,CPU又はGPUといったプロセッサにより実現できる。記憶部65bは,HDD又はSDDといった不揮発性メモリや,RAM又はDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。操作部65cは,マウス,キーボード,タッチパネル,マイクなどの入力装置により構成され,人による操作情報を受け付ける。表示部65dは,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示装置であって,撮影装置61から取得した画像データを表示することとしてもよい。なお,表示部65dは,操作部65cと一体となってタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
画像解析装置65の制御演算部65aは,基本的に,撮影装置61によって取得された撮影画像を解析して,積層シートの表面上に欠陥があるか否かを判断する。例えば,画像解析装置65は,積層シートの画像データの画素又は画素群ごとに濃度を測定し,正常な濃度範囲よりも暗い部分又は明るい部分があったときに,その画像データの積層シートに欠陥があると判断する。例えば,積層シートに異物が付着している場合,その異物部分については濃度が暗く表れる。また,撮影装置61に対して裏側の層に付着した異物は,表側の層を通して撮影装置61により撮影されることとなるが,その異物は撮影画像中に薄暗く表れることとなる。また,積層シートの内の一層に穴が開いている場合,透過方式によって取得した画像データでは,その穴部分については濃度が明るく表れる。すなわち,積層シートの一層に形成された穴は,表側の層に穴がある場合と裏側の層に穴がある場合のいずれでも,穴の部分が1層少なくなることによって透過光が明るく表れることとなる。このように,制御演算部65aは画像データの濃度に異常が発生している部位を,積層シートの欠陥部位であると判断する。
ここで,例えば積層シートが衛生用紙である場合,その製造工程において紙粉が発生するため,積層シートを撮影した撮影画像中に空中を漂う紙粉やその影が映り込むことがある。例えば,透過方式(図2,図3参照)で欠陥検査を行う場合に,撮影装置61と積層シートの間に紙粉が浮遊していると,撮影画像中には紙粉自体が黒く映り込むことがある。また,光源62,63と積層シートの間に紙粉が浮遊していると,その紙粉の影が積層シートに投影されることになるため,撮影画像中には紙粉の影が黒く映り込むことがある。紙粉自体やその影が撮影画像中に映り込んだとしても積層シートの品質上は特に問題ないが,一枚の撮影画像から画像内の黒色部分が紙粉等であるのか,それとも積層シートに付着した汚れなどの欠陥であるのかを区別することは難しい。もし画像解析装置が紙粉等を積層シート上の欠陥であると誤認し,エラー発生の警告を表示したり報知したりした場合,場合によっては製造装置の操業を停止してエラーの原因を確認しなければならず,製造計画の遅延や人的コストがかかるという問題がある。そこで,以下では,紙粉等の浮遊物によって引き起こされる画像解析装置の誤作動を低減するための処理を,図5及び図6を参照して説明する。
図5は,画像解析装置による欠陥検出処理のフローの一例を示している。また,図6は,検出された欠陥候補を紙粉等の非欠陥と汚れなどの真の欠陥とに区別するための処理を模式的に示している。まず,画像解析装置65は,撮影装置61から積層シートの撮影画像を取得する(ステップS1)。撮影装置61は,所定のフレームレートで連続的に積層シートを撮影しており,連続した撮影画像が画像解析装置65に随時入力される。例えば,図6に示されるように,積層シートの流れ方向における撮影装置61の撮影範囲の長さをTとし,連続する2つのフレーム(第1フレーム及び第2フレーム)の間に積層シートが進む距離をVとしたときに,V/Tの値が0.1~0.95,0.2~0.9,又は0.3~0.85,0.5~0.8となるように,撮影装置61のフレームレートを設定すればよい。特に,本発明はV/Tの値が0.5以上であっても,紙粉等を非欠陥とみなして検出対象から除外できる点で有利である。V/Tの値が0.5以上であれば,フレームレートが低速な撮影装置61を使用できたり,あるいは積層シートの搬送速度を高速化できることとなるため,装置コスト面や積層シートの製造速度向上の観点から有利である。
次に,画像解析装置65は,撮影画像の第1フレーム中に欠陥候補が存在するか否かを確認するために,当該第1フレームを画像解析する(ステップS2)。画像解析処理は,前述したように,積層シートの画像データの画素又は画素群ごとに濃度を測定すればよい。正常な濃度範囲よりも暗い部分又は明るい部分があったときには,その画像データの積層シートに欠陥候補が存在すると判断できる。画像解析結果に基づいて,画像解析装置65は,第1フレーム内に欠陥候補が存在するか否かを判断し(ステップS3),欠陥候補が存在しない場合には正常と判断する(ステップS4)。他方で,画像解析装置65は,第1フレーム内に欠陥候補が存在すると判断した場合には,その欠陥候補の大きさや,形状,色調,濃淡などの特徴情報を記憶する(ステップS5)。ここで記憶された特徴情報は,第1フレーム内の欠陥候補と第2フレーム内の欠陥候補が同一のものであるか否かを識別するために利用される。その後,欠陥候補を検出した第1フレーム内の位置(検出原点)を特定する(ステップS6)。図6において,欠陥候補の検出原点は符号P0で示されている。なお,図6において,黒色の点は第1フレームで検出された欠陥候補を示し,白色の点は第2フレームで検出された欠陥候補を示している。検出原点は,例えば第1フレーム内の2次元の座標情報(x,y)として記憶される。なお,欠陥候補が複数検出された場合には,各欠陥候補について特徴情報と検出原点を関連付けて記憶すればよい。
次に,画像解析装置65は,第1フレーム内から検出された欠陥候補が積層シート上に発生した真の欠陥であるかどうかを判断するために,第1フレームに続く第2フレームを画像解析する(ステップS7)。画像解析処理は,前述したように,積層シートの画像データの画素又は画素群ごとに濃度を測定すればよい。具体的には,上記した各欠陥候補の特徴情報を参照して,第1フレームから検出された欠陥候補と同じものが,第2フレーム内にも映り込んでいるかどうかを確認し,映り込んでいる場合には,その欠陥候補が第2フレーム内の「非欠陥領域」内に位置しているか否かを判断する(ステップS8)。
「非欠陥領域」は,図6において矩形状の点線の枠で示されてる。非欠陥領域は,第1フレームから検出された欠陥候補と同じものが第2フレームからも検出された場合に,その欠陥候補を第1フレーム及び第2フレームにおいて例えば紙粉などの非欠陥とみなすための領域である。非欠陥領域の範囲は,欠陥候補の検出原点P0を基準として設定される。図6において,符号LFは,検出原点P0から積層シートの流れ方向に向かう非欠陥領域の長さ範囲を示し,符号LBは,検出原点P0から積層シートの流れ方向と反対方向に向かう非欠陥領域の長さ範囲を示し,符号Wは,検出原点P0から積層シートの幅方向に向かう非欠陥領域の幅範囲を示している。これらの,LF,LB,Wの値から矩形状の非欠陥領域を設定する。なお,非欠陥領域は必ずしも矩形である必要はなく,例えば上記LF,LB,Wの値に基づいて設定できる楕円形や菱形,その他の多角形状とすることも可能である。
まず,検出原点P0から積層シートの流れ方向に向かう非欠陥領域の長さ範囲LFは,第1フレーム及び第2フレームの間に積層シートが進む距離V未満とする必要がある。非欠陥領域の長さ範囲LFが距離V以上である場合,真の欠陥を非欠陥と認定してしまう恐れがあるためである。非欠陥領域の長さ範囲LFは,距離Vに対して100%未満であって,例えば60~99%,70%~98%,80~95%に設定すればよい。他方で,検出原点P0から積層シートの幅方向に向かう非欠陥領域の幅範囲Wは,距離Vを超える値に設定される。検出原点P0から幅方方向に移動する欠陥候補はほぼ全てが紙粉などの非欠陥であり,これを欠陥として誤検出しないようにするためである。非欠陥領域の幅範囲Wは,距離Vに対して100%超える値であって,例えば101%以上,105%以上,110%以上,又は150%以上とすればよい。幅範囲Wの上限は特に制限されないが,例えば距離Vに対して200%,300%,又は400%を上限値とすればよい。また,検出原点P0から積層シートの流れ方向と反対方向に向かう非欠陥領域の長さ範囲LBも同様に,距離Vを超える値に設定される。検出原点P0から流れ方向と反対方向に移動する欠陥候補もほぼ全てが紙粉などの非欠陥と認められるためである。非欠陥領域の長さ範囲LBは,距離Vに対して100%超える値であって,例えば101%以上,105%以上,110%以上,又は150%以上とすればよい。長さ範囲LBの上限は特に制限されないが,例えば距離Vに対して200%,300%,又は400%を上限値とすればよい。なお,幅範囲Wと長さ範囲LBの値は,上記距離Vに依存しない固定値として設定することもできる。その場合,積層シートの幅や紙粉の移動速度などを考慮して,幅範囲Wと長さ範囲LBの値を定めればよい。
図6では,第1フレームにおいて発見された欠陥候補が,第2フレームにおいて検出原点P0からP1~P4の各点に移動した場合を模式的に表している。欠陥候補がP0からP1に移動するものである場合,当該欠陥候補は非欠陥領域に属さないものであるため,真の欠陥であると判断される。他方で,欠陥候補がP0からP2,P3,又はP4に移動するものである場合,当該欠陥候補は非欠陥領域に属さないものであるため,非欠陥であると判断される。このようにして,第1フレームで検出された欠陥候補が,積層シート上に存在する真の欠陥であるか,あるいは紙粉などの非欠陥であるかを判別する。
上記のように,画像解析装置65は,第1フレームで検出された各欠陥候補について第2フレーム内の非欠陥領域の属否を判断し,非欠陥領域に属している欠陥候補については非欠陥であると判断し(ステップS9),非欠陥領域に属していない欠陥候補については真の欠陥であると判断する(ステップS10)。非欠陥であると判断された欠陥候補については,第1フレーム及び第2フレームにおいて検出対象から除外される。また,真の欠陥と発見した場合,画像解析装置65は,表示部65dに警告画面を表示したり,あるいは警告音を出力したりすることによって,作業員に対して積層シート上に欠陥が生じていることを報知すればよい。
図7は,欠陥検査装置60を構成する撮影装置61と光源62,63,64の配置の別例として,光反射方式でシート状物の紙面を撮影する実施形態を示している。図7に示した実施形態では,第1のシートS1と第2のシートS2が重なり合った積層シートの表面側(一方面側)に撮影装置61と複数の光源62,63,64が配置されている。図7の光反射方式でも,上述した図2及び図3の光透過方式と同様に,各光源としてスポット光源が利用される。図7の実施形態では,光源62と光源63が,積層シートの表面上における撮影装置61の撮影範囲を照明する「主光源」として機能し,光源64が,撮影装置61の撮影空間のうち主光源によって照明されていない空間を照明する「補助光源」として機能する。
撮影装置61は,その撮像面(レンズ)が積層シートの紙面に対してほぼ平行に配置される。このため,撮影装置61の撮像面から垂直に直線を引くと,その直線は紙面に対して垂直に交差する。各主光源62,63は,撮影装置61の撮影範囲を含む範囲を照明するように配置されている。すなわち,本実施形態において,撮影装置61は,積層シートの表面を撮影し,各主光源62,63は,撮影装置61が撮影している積層シートの部分の表面を照明する。このため,各主光源62,63から照射されて積層シートの表面で反射した光が撮影装置61に入射するようになっている。このようにして,撮影装置61は,光反射方式で積層シートの撮影画像を取得する。なお,本実施形態においても,図2に示した光透過方式と同様に,各主光源62,63を,積層シートの幅方向に複数台並べるようにすればよい。
また,図7に示されるように,積層シートの長手方向断面視において,各主光源62,63から射出された光の光軸は,積層シートの紙面に対して所定角度θ2で傾斜している。主光源62,63の光軸の傾斜角度θ2は,例えば30度~85度,35度~80度,又は45度~80度であることが好ましい。なお,図7に示した例では,第1の主光源62と第2の主光源63の光軸の傾斜角度を等角としているが,それぞれの光源の光軸の傾斜角度は異なっていてもよい。
また,長手方向断面視において,第1の主光源62と第2の主光源63は,撮影装置61を挟むように配置されている。すなわち,撮影装置61は,第1の主光源62と第2の主光源63の間に位置している。また,撮影装置61は,各主光源62,63よりも高い位置に設置される。すなわち,撮影装置61から積層シートの紙面までの距離は,各主光源62,63から積層シートの紙面までの距離よりも離れていることとなる。
光反射方式で撮影を行う場合,上記のように主光源62,63を配置することで,積層シートの紙面と主光源62,63の間に存在する浮遊物を複数の方向から照らすことができるため,紙面上に投影される浮遊物の影の色を薄くすることができる。これにより,撮影装置61によって取得した撮影画像を解析して,紙面上に付着した欠陥をより明確に検出することができる。
このように,第1の主光源62と第2の主光源63は,積層シートの紙面上の撮影装置61による撮影範囲を照明することを目的として配置されている。他方,補助光源64は,撮影装置61による撮影空間のうち,第1の主光源62及び第2の主光源63によって照明されていない空間(非照明空間)を照明することを目的として配置されている。このため,補助光源64は,通常,第1の主光源62及び第2の主光源63よりも積層シートの紙面から離れた位置に配置される。光反射方式の場合,撮影装置61の撮影空間の中に光源によって照明されていない空間(非照明空間)が存在すると,その非照明空間に入り込んだ紙粉等の浮遊物が黒い点として撮像されることとなるため,この浮遊物をシート状物の紙面上に発生した欠陥であると誤認識しやすくなる。そこで,上記の非照明空間を減らすために,シート状物の紙面を照明することを目的とした主光源62,63に加えて,この非照明空間を照明することを目的とした補助光源64を配置することが好ましい。特に補助光源64は,そこから射出される光が撮影装置61による検査範囲外に照射されるように,設置位置や照射角度が調整されていることが好ましい。
図8は,図7に示した実施形態の変形例を示している。図8の変形例では,各主光源62,63から白色光を照射するのに対して,補助光源64からは有色光を照射するようにしている。このように,補助光源64から有色光を照射する場合には,この補助光源64から射出される光が撮影装置61による検査範囲外のみに照射されるように,補助光源64の傾きやスポット径が設定されている。有色光が,撮影装置の撮影範囲に照射されると積層シートの表面上の欠陥を適切に検出することができなくなる恐れがあるため,有色光は,撮影装置61による検査範囲外のみに到達するように調整する必要がある。
図8の実施形態のように,補助光源64から非照明空間に向けて有色光を照射することで,この非照明空間に存在する紙粉などの浮遊物に対して色を付与することができる。この場合には,画像解析装置65は,撮影装置61からの撮影画像中に着色された物体が映り込んでいるときには,その物体を非照明空間の浮遊物とみなすことができる。このように,画像解析装置65は,有色の物体を浮遊物とみなして検査対象から除外することとすればよい。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。