JP4725808B2 - 内視鏡用フック型高周波処置具 - Google Patents

Description

本発明は、内視鏡用フック型高周波処置具に関する。

生体粘膜面を切開するための最もシンプルな構成の内視鏡用フック型高周波処置具は電極が真っ直ぐな棒状のものであるが、先端が側方に曲がった形状のフック状電極棒を備えたものは、フック状の部分で繊維状筋組織を引っ掛けて移動させたり、粘膜切開を鎌状に効率よく行うことができる等の優れた特性を有している（例えば、特許文献１、２）。
特開平７−８５０３号公報 特開２００４−２６１３７２号公報

特許文献１、２等に記載されたような内視鏡用フック型高周波処置具では、フック状電極棒の表面全体が金属露出部になっていて、そこに触れる生体組織が焼灼される。そのため、組織の焼灼片が電極棒全体を囲む状態に付着して良好な切開処置を継続できなくなってしまう場合がある。
また、電極棒は機械的強度確保のため一定以上の太さに形成する必要があるため、生体組織に対する接触面積が大きいので、いわゆる切れ味が悪くて粘膜の損傷も大きくなってしまい、電極棒の太さが違えば高周波出力が同じでも切れ味が相違するので、個別に調子をみて出力調整をやり直す必要がある。

本発明はそのような問題を解決するためになされたものであり、生体組織の焼灼片がフック状電極棒全体に付着することがなくて電極棒から離脱し易く、且つ、生体組織に対する金属露出部の接触面積を小さくすることができ、その結果切れ味がよくて無用な粘膜損傷を伴わず、しかも、電極棒の太さが変わっても金属露出部の面積を揃えて常に一定の調子で切開処置を行うことができる内視鏡用フック型高周波処置具を提供することを目的とする。

電気絶縁性のシースの先端から前方に真っ直ぐ突出する軸棒部とその軸棒部の最先端部から側方に突出するフック爪部とが一体に形成されたフック状電極棒を備え、フック状電極棒に高周波電流を流すことにより、フック状電極棒の金属露出部に接触している生体組織を焼灼することができる内視鏡用フック型高周波処置具において、フック状電極棒には、軸棒部のみに長手方向に沿って細長い金属露出部が形成されて、フック状電極棒の表面の金属露出部以外の部分が全て電気絶縁性コーティングにより被覆されている。

なお、金属露出部が、フック状電極棒全体に被覆された電気絶縁性コーティングを部分的に削除して形成されていてもよく、フック状電極棒がシースの基端側からの操作によりシースの先端内に引き込み自在であってもよい。また、フック状電極棒の断面形状が円形であってもよく、偏平な板状であってもよい。
また、フック爪部が軸棒部の最先端部から斜め後方に向かって突出していてもよく、金属露出部が、軸棒部の側面であってフック爪部が突出する方向と同一方向の面に形成されていてもよい。

本発明の内視鏡用フック型高周波処置具によれば、フック状電極棒には、軸棒部のみに長手方向に沿って細長い金属露出部が形成されて、フック状電極棒の表面の金属露出部以外の部分が全て電気絶縁性コーティングにより被覆されていることにより、生体組織の焼灼片がフック状電極棒全体に付着することがなくて電極棒から離脱し易く、且つ、生体組織に対する金属露出部の接触面積を小さくすることができ、その結果切れ味がよくて無用な粘膜損傷を伴わず、しかも、電極棒の太さが変わっても金属露出部の面積を揃えて常に一定の調子で切開処置を行うことができる等の格別の効果を奏する。

以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図３は、本発明の第１の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具の全体構成を示している。１は、例えば可撓性のあるフッ素樹脂チューブ等からなる電気絶縁性のシースであり、その長さは例えば１〜２ｍ程度である。シース１の先端部分には、生体の粘膜に差し込んで組織を高周波電流により焼灼して切り裂くためのフック状電極棒２が配置されている。シース１内には、可撓性を有する導電ワイヤー３が軸方向に進退自在に挿通されていて、その導電ワイヤー３の先端がフック状電極棒２に機械的及び電気的に連結接続されている。

シース１の基端に連結された操作部１０には、導電ワイヤー３の基端が連結された操作片１２が操作部本体１１にスライド自在に取り付けられていて、操作片１２を矢印方向にスライド操作することにより導電ワイヤー３が軸方向に進退してフック状電極棒２をシース１の先端内に引き込むことができる。ただし、フック状電極棒２がシース１の先端から突出した状態に固定された構成のものであっても差し支えない。操作片１２には、図示されていない高周波電源に接続される接続端子１３が設けられていて、導電ワイヤー３を経由してフック状電極棒２に高周波電流を通電することができる。

図１は、シース１の先端に配置されたフック状電極棒２を示している。フック状電極棒２は、シース１の先端から前方に真っ直ぐ突出する軸棒部４とその軸棒部４の最先端部から略直角に側方に突出するフック爪部５とが、断面形状が円形で直径が例えば０．３〜１．５ｍｍ程度のステンレス棒等のような導電性金属棒により一体に形成されたものであり、側方に向いているフック爪部５はシース１内に引き込まれない大きさになっている。

フック状電極棒２の表面には、例えばフッ素樹脂又はセラミック等のような電気絶縁材からなる電気絶縁性コーティング６が施されていて、フック状電極棒２の一部に電気絶縁性コーティング６の被覆がない金属露出部７が形成されている。この実施の形態では、金属露出部７が軸棒部４の長手方向に沿って真っ直ぐに細長く一本だけ形成されており、Ａ−Ａ線で切断された断面を図示する図２に示されるように、金属露出部７が軸棒部４の側面であってフック爪部５が突出する方向と同一方向の面のみに形成されている。軸棒部４の周方向における金属露出部７の幅は、例えば軸棒部４の外周長に対して１／４〜１／２程度の範囲である。

このような構成により、フック状電極棒２に高周波電流を流せば、金属露出部７に接触している生体組織を焼灼して切り裂くことができる。そして、生体組織の焼灼片はフック状電極棒２の表面の一部である金属露出部７部分にだけ発生するので、焼灼片がフック状電極棒２全体に付着することがなくてフック状電極棒２から離脱し易い。また、生体組織に対する金属露出部７の接触面積を小さくすることができるので、切れ味がよくて無用な粘膜損傷を伴わず、しかも、フック状電極棒２の太さが変わっても金属露出部７の面積を揃えて常に一定の調子で切開処置を行うことができる。また、フック爪部５は、切開処置の邪魔になる繊維状筋組織等に引っ掛けて移動させたり、フック状電極棒２の先端が粘膜下層まで潜り込むのを防止するのに役立つ。

なお、この実施の形態の金属露出部７は、フック状電極棒２の外表面全面に電気絶縁性コーティング６が被覆された後、金属露出部７になる部分だけフック状電極棒２の表面から電気絶縁性コーティング６をカッター等で削り取って形成されている。したがって、金属露出部７の幅が極細であっても容易かつ正確に形成することができる。
図４は、本発明の第２の実施の形態のフック状電極棒２部分を示しており、フック爪部５を軸棒部４の最先端部から斜め後方に向かって突出させたものである。その他の構成は前記の第１の実施の形態と同じである。このようにすることにより、繊維状筋組織等に対するフック爪部５の引っ掛かりがよくなり、また、金属露出部７で組織を切り裂く際にフック爪部５が組織に突き刺さったり潜ったりし難くなって、ケースによっては使い勝手がよくなる。

図５は、本発明の第３の実施の形態のフック状電極棒２部分を示しており、フック爪部５の後面部（即ち、前方から見た場合のフック爪部５の裏面部）にも金属露出部７′を形成したものである。その他の構成は前記の第１の実施の形態と同じであり、軸棒部４の側面に形成された金属露出部７とフック爪部５の後面部に形成された金属露出部７′とが一続きに形成されている。このように構成することにより、用途によって切開効率を高めることができる。

図６は、本発明の第４の実施の形態のフック状電極棒２部分を示しており、金属露出部７″をフック爪部５の前面部にも形成したものであり、その他の構成は前記の第１の実施の形態と同じである。このように構成することにより、図７に示されるように、フック爪部５の前面の金属露出部７″を切開部に押し当てて生体組織を切り開くような使い方をすることもできるようになる。

図８は、本発明の第５の実施の形態のフック状電極棒２部分を示しており、金属露出部７を、軸棒部４の側面であってフック爪部５が突出する方向に対して略９０°偏向する方向の一面のみに形成したものであり、金属露出部７がフック爪部５の側面まで延長されている。図８に示される例では金属露出部７がフック状電極棒２の左側面のみに形成されているが、使い勝手により右側面のみに形成してもよい。図９は、その使用状態を示しており、金属露出部７を粘膜表面側に位置させて粘膜切開を行うことにより、粘膜下層側の組織が焼灼熱による損傷を受けないように、より安全に切開することができる。

図１０と図１１は、本発明の第６と第７の実施の形態のフック状電極棒２部分を示しており、フック状電極棒２の軸棒部４とフック爪部５の断面形状を各々偏平な矩形の板状にしたものである。図１０の実施の形態では、第１の実施の形態と同様に軸棒部４の側面であってフック爪部５が突出する方向と同一方向の面のみに金属露出部７が形成され、図１１の実施の形態では、フック爪部５の後面部にも金属露出部７′が形成されている。これらのように形成すると、金属露出部７が平面になるので、電気絶縁性コーティング６を削除して金属露出部７を形成する工程が容易になる。また、図１１の実施の形態では軸棒部４の厚み寸法Ｅに比べてフック爪部５の厚み寸法Ｆを小さくしてあり、このように構成することにより、フック爪部５で粘膜面を直接穿刺し易くなって、いきなり鎌状に切開する処置等を行い易くなる。

図１２は、本発明の第８の実施の形態のフック状電極棒２部分を示しており、フック爪部５を軸棒部４の最先端部から相反する二方向に突出形成して、フック状電極棒２を全体としてＴ字状に形成したものである。金属露出部７，７′は、軸棒部４の側面であって二つのフック爪部５が突出する各々の方向と同一方向の面とフック爪部５の後面部とに連続して形成されている。このように形成することにより、図１３に示されるように、粘膜切開を相反する方向のどちら側に向かってでも効率よく行うことができる。また、図１４に示される変形例のように、フック爪部５の前面部にも金属露出部７″を形成すれば、切開部に押し当てて生体組織を切り開く処置も効率よく行うことができる。

本発明の第１の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具の図１におけるＡ−Ａ線で切断した断面の断面図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具の全体構成を示す側面図。 本発明の第２の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第３の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第４の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第４の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具の使用状態の斜視図。 本発明の第５の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第５の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具の使用状態の斜視図。 本発明の第６の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第７の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第８の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の斜視図。 本発明の第８の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具の使用状態の斜視図。 本発明の第８の実施の形態の内視鏡用フック型高周波処置具のフック状電極棒部分の変形例の斜視図。

符号の説明

１…シース
２…フック状電極棒
４…軸棒部
５…フック爪部
６…電気絶縁性コーティング
７，７′，７″…金属露出部

Claims (7)

1. 電気絶縁性のシースの先端から前方に真っ直ぐ突出する軸棒部とその軸棒部の最先端部から側方に突出するフック爪部とが一体に形成されたフック状電極棒を備え、前記フック状電極棒に高周波電流を流すことにより、前記フック状電極棒の金属露出部に接触している生体組織を焼灼することができる内視鏡用フック型高周波処置具において、
   前記フック状電極棒には、前記軸棒部のみに長手方向に沿って細長い金属露出部が形成されて、前記フック状電極棒の表面の前記金属露出部以外の部分が全て電気絶縁性コーティングにより被覆されていることを特徴とする内視鏡用フック型高周波処置具。
2. 請求項１に記載された内視鏡用フック型高周波処置具において、前記金属露出部が、前記フック状電極棒全体に被覆された電気絶縁性コーティングを部分的に削除して形成されている内視鏡用フック型高周波処置具。
3. 請求項１又は２に記載された内視鏡用フック型高周波処置具において、前記フック状電極棒が前記シースの基端側からの操作により前記シースの先端内に引き込み自在である内視鏡用フック型高周波処置具。
4. 請求項１から３の何れかに記載された内視鏡用フック型高周波処置具において、前記フック状電極棒の断面形状が円形である内視鏡用フック型高周波処置具。
5. 請求項１から３の何れかに記載された内視鏡用フック型高周波処置具において、前記フック状電極棒の断面形状が偏平な板状である内視鏡用フック型高周波処置具。
6. 請求項１から５の何れかに記載された内視鏡用フック型高周波処置具において、前記フック爪部が前記軸棒部の最先端部から斜め後方に向かって突出している内視鏡用フック型高周波処置具。
7. 請求項１から６の何れかに記載された内視鏡用フック型高周波処置具において、前記金属露出部が、前記軸棒部の側面であって前記フック爪部が突出する方向と同一方向の面に形成されている内視鏡用フック型高周波処置具。

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