JP4723735B2 - 布帛及びエアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグや、タイミングベルトやコンピューターリボンなど耐久性を要求される資材用途に適したポリアミド繊維からなる布帛に関する。特に、車両に搭載され、車両衝突時に拡展し、乗員を拘束し、乗員の受ける衝撃を吸収することで乗員保護を果たすエアバッグ用の布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアバッグは、長期にわたる車両搭載後であっても破損無く展開し、乗員拘束の役目を果たすことが期待される。そのため、エアバッグを構成する布帛の耐熱耐久性が望まれる。
一般に、ポリアミド繊維やポリアミド繊維からなる布帛の耐熱性は、銅化合物を添加することにより向上することが広く知られている。特に、タイヤコード用途においては、200℃を超える接着剤処理を経た後に、さらに、タイヤに熱成型加工されるため、銅化合物は必須であった。しかし、製糸段階においては、ポリマー溶融工程で銅が析出し、これが紡糸フィルターを閉塞せしめ、フィルター交換周期が短くなったり、さらには、析出した銅成分が紡出糸に混入し、高強力糸生産時の毛羽の発生や糸切れ増加の原因となる、という課題があり、銅化合物の変性及び析出防止のためのハロゲン添加等の方法が提案されている。
【0003】
特公昭43−10368号公報では、銅化合物の熱安定助剤として、金属腐食性防止の観点から第4級塩基ハロゲン化物が用いられている。特公昭50−15885号公報では、溶融紡糸中の金属銅生成と紡孔汚れや糸切れを防ぐ観点から、沃化カルシウム又は沃化バリウムが用いられている。特公昭47−13540号公報では、銅塩のポリマー溶解性向上の観点からハロゲン化第1銅とアルカリ金属ハロゲン化物の錯体生成物が添加されている。
【0004】
特公平4−53965号公報には、銅析出防止剤としてポリアミドのカルボキシル末端基濃度をアミノ末端基濃度より30〜145meq/kg多くすることを規定した産業資材用途ポリアミド繊維の紡糸方法が開示されている。この公報の中には、ハロゲン成分と銅のグラム原子比に関して、実施例に沃素と銅のグラム原子比(I/Cu)が8程度であることのみが示されている。
特開平6−248508号公報には、銅化合物が受ける熱履歴を最少にするために、重合したポリマーを一旦冷却、切断してチップ状となした後に、銅化合物を水溶液で吸着させ、紡糸することにより、銅成分からなる異物の量を減少させた高強度ポリヘキサメチレンアジパミド繊維が開示されている。この方法では、銅を後添加するための余分な工程管理の手間が掛かり、ポリマーを再溶融する工程でポリマー劣化が一層進んでしまう。この公報の中では、ハロゲンと銅のグラム原子比に関して、実施例に沃素と銅のグラム原子比は11.5程度であることのみが示されている。
【0005】
特開平7−18176号公報には、沃素と銅のグラム原子比(I/Cu)が12以上、40以下を満足し、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度の合計量に対するカルボキシル基濃度比率が50%以上であるとともに、脂肪族カルボン酸を配したことを特徴とした、成型機内での金属銅の析出を改良したポリアミド樹脂組成物が開示されている。
以上、銅によるポリマー熱安定化に関する従来技術において、溶融紡糸の銅析出に関係した技術が開示されている。しかしながら、軽量で柔軟なエアバッグに必要な、高強力を有し、単糸繊度の細い繊維からなり、エアバッグが長期にわたって搭載車内で熱履歴を受けた後に展開し、破壊損傷することなく、また、乗員拘束の機能を発揮する、という技術については検討されていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軽量柔軟で、コンパクトで、収納性に優れ、かつ、長期耐熱安定性に優れたエアバッグ等に適した布帛、及びこの布帛からなるエアバッグを提供することを目的とする。即ち、長期熱環境後にバーストせず、また、気密性能が損なわれないエアバッグを製造するためのエアバッグ用布帛及びこれから得られるエアバッグを提供するものである。また、タイミングベルトの自動車エンジンルーム用途や、コンピュータリボンの高速インパクト印字用途など、機械的に高強力物性が要求され、かつ、長期熱環境安定性が要求される用途に適したポリアミド繊維からなる布帛を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶融紡糸における銅の析出防止によって高強度繊維を得るとともに、特定のポリアミド繊維性状によって、繊維表面の熱酸化劣化が軽減された布帛が得られ、こうした布帛からなるエアバッグによって、エアバッグを長期間、熱環境下で、車に搭載した後でも、展開性能を満足することを見出して本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(請求項1)銅元素を1〜100ppm及びハロゲン元素を1500〜5000ppm含有し、ここで、銅元素に対するハロゲン元素のグラム原子比は15〜200倍であり、該ハロゲン元素が臭素と沃素であり、沃素/臭素元素比が1〜100であり、かつ、フェノール系酸化防止剤を含有するポリアミド繊維であって、ポリアミド繊維の酸性成分(Ammol/kg)と塩基性成分(Bmmol/kg)との間にA−B=0〜45、A+B=80〜115の関係を有し、115℃で1200時間熱処理したときの、波長440nmの蛍光発光度(励起波長270nm)が、硫酸キニーネ相当で25ppm以下であるポリアミド繊維からなることを特徴とする布帛、
(請求項2)請求項1に記載の布帛からなるエアバッグ、
である。
【0009】
本発明における、ポリアミド繊維中の銅化合物の含有量は、銅濃度で1〜100ppm、好ましくは1〜50ppm、最も好ましくは1〜15ppmである。銅濃度が高ければ布帛の熱安定性は得られやすいが、溶融紡糸過程で銅変性物が析出して、延伸張力が析出物とポリマーの界面に集中して破断が生ずるため高延伸に耐えない。従って、高強度を備えたポリアミド繊維の紡糸が困難になり、さらには、単糸繊度が細い場合の断面積当たりの析出物の存在の影響度は甚大であり紡糸困難に陥る。ポリアミド繊維に対する銅の耐熱効果は、銅濃度1ppm以上であることが必要であり、多いほど有効である。また、銅濃度が100ppm以下であって、銅含率が少ないほど、銅析出の抑制ができ、高強度のポリアミド繊維の紡糸が可能になる。
【0010】
本発明において、ハロゲン元素は、銅に対してグラム原子比(ハロゲン/Cu)で15〜200倍量であって、好ましくは30〜150である。最も好ましくは40〜100である。ポリアミド繊維中の銅とハロゲンのグラム原子比が15以上であれば、溶融紡糸過程での銅析出が抑制され、高強度ポリアミド繊維の紡糸が可能となるとともに、ポリアミド繊維の表面における熱酸化劣化が大幅に抑制できる。銅とハロゲンのグラム原子比が大きいほどポリアミド繊維の酸化熱劣化に対する安定性が高まる。特に、銅化合物の量を減らし、銅とハロゲンのグラム原子比を高めれば、高強力紡糸及び単糸繊度の小さい紡糸が容易となり、かつ、ポリアミド繊維の熱安定性が十分確保できる。グラム原子比を高めてゆくと、その効果の程度は飽和するので、200以下にするのが経済的である。
【0011】
さらに、ハロゲン元素はポリアミド繊維に対して1500−5000ppmの濃度であることが必要で、好ましくは1700−3000ppmである。ハロゲン化合物の添加量が多ければ、銅によるポリマーの熱安定性を高めるとともに、ポリマー結晶化速度を抑制し、吐出糸条の球晶生成を防いで高強度紡糸に有利である。ハロゲン量は5000ppm以下であれば、溶融紡糸工程で金属外壁の腐食等の悪影響を及ぼすことがない。
【0012】
本発明で用いられるハロゲン化合物としては、沃化ナトリウム、沃化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムが挙げられる。これらハロゲン化合物は、単独、又は、2種以上の混合でもよい。
本発明のポリアミド繊維は、酸性成分量(Ammol/kg)と塩基性成分量(Bmmol/kg)との間に、A−B=0〜45、好ましくはA−B=5〜40の関係を有する。A−Bが0以上であれば、ポリマー溶融時に銅化合物が変性し急激に析出するようなことが防げられ、高強力ポリアミド繊維の紡糸が可能となる。また、A−Bが45以下であれば、必要な高分子量ポリマーを得るのに不都合がない。さらには、A+Bが80以上であれば溶融紡糸に有利であり、A+Bが115以下であれば、高強力繊維を得るに充分である。
【0013】
ポリアミド繊維は、溶融温度のような高温下で熱劣化し、脱炭酸、脱アンモニアを伴いながら3次元化物質を副生し、ゲル化して不溶不融となるといった劣化が進行する。一方、およそ150℃以下の熱環境下では、主に、酸素によるラジカル生成による熱酸化劣化が進行する。この場合、分子鎖切断、着色副生物の生成が起こっている。この際、特に、繊維表面では、酸素の影響を受けて異常な分子量低下、表面に接する塗膜等の異常な反応が生じてくる。
【0014】
この熱酸化劣化の際、ポリアミド劣化の程度の指標となる劣化生成物は、元来ポリマー中に含有しない共役二重結合系の物質であり、ポリアミドの熱酸化劣化特有の蛍光を発する。即ち、蛍光の励起波長270nmでの発光波長が440nmである。繊維表面の熱酸化による劣化物生成の定量は困難であるが、検出感度の高い蛍光発光測定によって、ポリマー全体としての含有量を検出することができる。
【0015】
本発明のポリアミド繊維は、115℃で1200時間の熱処理を熱風乾燥機にて行った際に、励起光270nmにおける440nmの発光ピークの蛍光発光度が25ppm以下であることが好ましい。本発明における蛍光発光度は、標準蛍光物質硫酸キニーネ溶液(0.1N H2SO4)を基準とした、90wt%蟻酸溶液での発光定量値をいう。蛍光発光度が25ppm以下であれば、ポリマーの熱酸化劣化は抑制されており、エアバッグの展開性能をよく保持している。より好ましくは、蛍光発光度が15ppm以下である。蛍光発光度によって示されるポリマーの熱的損傷程度が軽度なほど、熱酸化劣化の安定化がなされている。
【0016】
本発明のポリアミド繊維は、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプラミド(ナイロン6)、及び、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)等を主成分として70%以上含むポリアミド繊維である。これら主成分のポリアミドに対して10質量%以下の共重合成分を含むコポリアミドであってもよい。
本発明で用いられる上記共重合成分として、例えば、ε−カプロアミド、テトラメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド、ヘキサメチレンイソフタラミド、テトラメチレンテレフタラミド、ヘキサメチレンアジパミド等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる銅化合物としては、臭化銅、沃化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅等が挙げられ、キレート剤に配位した銅錯塩でもよい。これら銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ハロゲン化合物としては、沃化カリ、沃化ナトリウム、沃化マグネシウム、臭化カリ、臭化ナトリウム臭化マグネシウム等が用いられる。沃素化合物と臭素化合物を併用してもよい。この場合、沃素/臭素元素比1〜100が好ましい。この元素比が1以上であればハロゲンの脱落が少なく、銅の熱安定性の効果は繊維加工工程を通じて維持されやすい。一方、100以下であれば併用によるいっそうの銅の熱安定性効果が得られる。
【0018】
こうした銅元素とハロゲン元素の含有量及びグラム原子比は、異物の混入を嫌う紡糸において重要である。エアバッグ用布帛としては、高強度繊維が好ましく、特に、7〜11cN/dtex以上、より好ましくは8〜11cN/dtexの強度を有するものがよい。また、柔軟でコンパクトに収納可能な布帛を得るために、単糸細繊度の細い繊維、即ち、0.5〜6dtexが好ましく、さらには、0.5〜4dtexの繊維との組み合わせがより好ましい。
【0019】
銅やハロゲンが添加された繊維を、さらに熱損傷無く得るためには、溶融紡糸工程で高温及び酸素接触を極力避けることが好ましい。チップ溶融紡糸においては、ポリマーチップの酸素との接触を防ぎ、できる限り低温溶融するとともに、溶融滞留時間を短くすることが好ましい。また、チップ化することなく重合工程から直接紡糸することも好ましい。
上記、銅化合物、ハロゲン化合物は、ポリマーの重合時に添加してもよく、また、チップ紡糸の際にポリマーチップブレンドして添加してもよい。一般の樹脂製品とは異なり、ポリマーチップの乾燥調湿過程や溶融紡糸過程での熱酸化劣化には注意する必要がある。 一旦チップ化することなく重合ラインから直接紡糸する場合は、重合過程でこれらの化合物を添加すれば、酸素接触を避けることがより完全に行え、熱酸化劣化回避に都合がよい。
【0020】
酸性成分、塩基性成分量を調整する方法としては、重合時に生ずるモノマーバランスの崩れを補うため、モノマー塩へのジカルボン酸又はジアミンの追加添加量を調整する方法が有利である。主モノマー以外のジカルボン酸、ジアミンの添加や、酸性又は塩基性官能基を有するカルボン酸、アミンの添加、さらには、一官能性のカルボン酸等を添加してもよく、末端封鎖反応をするものでもよい。
ポリアミドの銅の熱安定化効果を助けるために、フェノール系酸化防止剤を添加するのが好ましい。このような酸化防止剤としては、スチレン化フェノール、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトール、ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオン酸]ペンタオキシエチレン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。ポリマーに対する添加率は0.01〜1質量%が好ましい。
【0021】
上記ポリアミドには、以下の添加剤を用いてもよい。例えば、重合触媒、即ち、リン酸、次亜リン酸ソーダ等の無機リン化合物、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸等の有機リン化合物。光安定剤の乳酸マンガン、次亜リン酸マンガン等。艶消し剤の二酸化チタン、カオリン等。滑剤、可塑剤のエチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
本発明の布帛は、上記ポリアミド繊維からなるものである。こうした布帛は、繊維形成時に添加された銅やハロゲンが、水を伴う加工工程等によって抽出脱落しないように注意すべきであり、ウォータジェット製織よりもエアージェット製織が好ましく、また、無糊製織による無精練布帛が好ましい。
本発明の布帛をエアバッグ基布として用いる際、実質的に非通気とするために、高密度の織物としてそのまま用いてもよいし、本発明の布帛に樹脂コーティングを施して、エアバッグ基布となしてもよい。こうしたエアバッグ基布を、裁断、縫製してエアバッグとして用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により具体的に説明する。
本発明における酸性成分量、塩基性成分量、銅濃度、ハロゲン濃度、及び蛍光発光度の測定は、室温20℃、相対湿度60%の環境下で実施した。
(蟻酸相対粘度の測定法)
ジクロロメタンで脱脂した布帛を90%蟻酸に、8.9質量%溶解し、25℃で溶液の相対粘度を測定した。
(塩基性成分量の定量法)
ジクロロメタンで脱脂した布帛6gを小数点以下3桁まで精秤し、これを90%フェノール水溶液50cm3に溶解する。完全に溶解した後、0.05Nの塩酸水溶液で溶液のpHが3になるまで滴定する。滴定量からポリマー1kg当たりの塩基性成分量を算出する。
【0023】
(酸性成分量の定量法)
ジクロロメタンで脱脂した布帛を170℃のベンジルアルコールに溶解する。完全に溶解した後にフェノールフタレイン指示薬を添加する。その後0.1NのNaOHエチレングリコール溶液で比色滴定する。滴定量からポリマー1kg当たりの酸性成分を算出する。
(銅濃度の測定方法)
ジクロロメタンで脱脂した布帛を7NのHCl水溶液10mlに溶解する。完全に溶解した後、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛で発色させ、比色定量する。
(ハロゲン濃度測定法)
ジクロロメタンで脱脂した布帛0.05gを燃焼フラスコで燃焼し、イオンクロマトグラフィーで定量する。
(引張強伸度)
繊維及び布帛の引張強度、破断伸度は、20cmの試料に対して引っ張り速度20cm/minで測定した。
【0024】
(蛍光発光測定方法)
布帛をジクロルメタンで脱脂し、高純水で水洗し、乾燥後に約0.25gを精秤する。これを25mlの90wt%蟻酸に溶解する。JIS K0120に基づき、蛍光分光光度計RF−5300PC(島津製作所)を用い、10mm角無蛍光セル中でこの溶液についての蛍光発光スペクトルを定量分析する。この際、標準蛍光物質として硫酸キニーネ(NIST SRM936相当;FLUKA 22640)を用いて270nm励起による440nm発光の光量について検量線を作成する。硫酸キニーネ相当の定量値を蛍光発光量とし、溶解ポリマー質量に対する比としてppm単位で求める。
【0025】
【参考例1〜3、比較例1〜3】
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩(50%水溶液)に臭化銅と沃化カリウムを添加し、90%蟻酸相対粘度60のポリヘキサメチレンアジパミドポリマーを得た。ポリマーは、水冷後にチップにカットし、150℃で熱風乾燥後調湿し、窒素雰囲気下の貯留槽へ送った。貯留槽から押し出し機へ送り、押し出し温度280℃、紡糸頭温度295℃で紡出した。295℃の溶融滞留時間は80秒であった。紡出後、直接溶融紡糸延伸にてポリアミド繊維を得た。
【0026】
得られた繊維の引張強度は8.5cN/dtex、破断伸度は23%であった。繊維の巻上げチーズの外観毛羽を観察すると、紡糸時間とともに毛羽数が増加することが観察できた。また、15μmの金属不織布を内蔵する紡糸フィルターの交換で毛羽の発生が一旦改善される状況も観察できた。そこで、紡糸フィルター交換から1ヶ/チーズ以上の毛羽が、チーズで連続して出現し始める時間の平均を求めた。その結果を表1に示す。
【0027】
次に、エアジェット製織機を用い、経糸に整経油剤のみを用いて無糊で製織した。精練すること無しに、150℃で40秒間熱セットしてエアバッグ用布帛を得た。織り密度は、経緯それぞれ92本/2.54cm、91本/2.54cmであった。布帛における、銅元素とハロゲンの繊維に対する含有量、酸性成分量、塩基性成分量、引張強度を表1に示す。
この布帛から、60リットルの運転席用エアバッグを作成した。円形布を直径648mmで2枚分とバッグ取り付け部の補強布として直径230mmの円形布を裁断、外周及び補強部を、ミシン糸#20で14針/2.54cmの二重環縫いで縫製した。
【0028】
バッグを蛇腹に折り畳んで収納し、熱風乾燥機にて115℃で1200時間経過させた。このときの布帛の蛍光発光量を表1に示す。また、インフレーター(オートリブ社製 運転席用パイロタイプ)を装着して、85℃で展開を行った際、10回の展開試験の内、破袋となった数を表1に示す。
一方、エアジェット製織後、150℃で熱セットした布帛にシリコーンコーティングを施して、コーティング布を得た。シリコーン樹脂は、旭化成ワッカーシリコーン(株)製「LR6200A/B(50/50)」100質量部、旭化成ワッカーシリコーン(株)製「FL Red」0.5質量部の混合物であり、ナイフコーターで片面にシリコーン樹脂13g/m2をコーティングした上で、180℃、3分間熱処理してコーティング布とした。これから上記のエアバッグと同様の熱処理を行い、高圧通気度を測定した。
【0029】
高圧通気は、JIS L1096(8.27.1 A フラジール型法)の装置を用い、空気圧力を100KPa/5minで100KPaに昇圧して流量計で布帛の通気量を読み取り、最終的に100KPaの値を得た。試料の布帛は1回測定毎に交換してN=5回測定して平均値を求めた。このとき、一旦、高圧試験で検出限界以上の通気性を示した試料は、10KPa以下の低圧通気の再測定でも初回の通気量測定値を大きく上回っていた。
【0030】
【実施例4】
臭化銅と沃化カリウム、及び、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール)0.1質量%の粉末を、重合したポリマーチップにまぶして、乾燥後に押し出し機の貯留槽に投入する以外は参考例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0031】
【比較例4】
臭化銅と沃化カリウムの熱水溶液を、重合したポリマーチップにまぶして、乾燥後に押し出し機の貯留槽に投入する以外は参考例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0032】
【比較例5】
製織後に、界面活性剤を含有する95℃湯浴槽で120秒間精練し、さらに150℃で40秒間セットして基布とした以外は参考例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
本発明の布帛を用いると、高強度繊維による軽量柔軟なエアバッグが生産性よく得られ、さらに、エアバッグに要求される長期耐熱性が充分確保される。特に、総繊度が細く、軽量であって、単糸繊度が細いコンパクト性の良好なエアバッグにおいて、115℃の耐熱で1200時間の長期間でも展開バーストしないという信頼性に優れ、コーティングしたエアバッグの場合は、非通気性能の維持に優れており、車載信頼性の高いエアバッグが得られる。
また、タイミングベルトの自動車エンジンルーム用途や、コンピュータリボンの高速インパクト印字用途など、機械的に高強力物性が要求され、かつ、長期熱環境安定性が要求される用途に適した布帛が得られる。
Claims (2)
- 銅元素を1〜100ppm及びハロゲン元素を1500〜5000ppm含有し、ここで、銅元素に対するハロゲン元素のグラム原子比は15〜200倍であり、該ハロゲン元素が臭素と沃素であり、沃素/臭素元素比が1〜100であり、かつ、フェノール系酸化防止剤を含有するポリアミド繊維であって、ポリアミド繊維の酸性成分(Ammol/kg)と塩基性成分(Bmmol/kg)との間にA−B=0〜45、A+B=80〜115の関係を有し、115℃で1200時間熱処理したときの、波長440nmの蛍光発光度(励起波長270nm)が、硫酸キニーネ相当で25ppm以下であるポリアミド繊維からなることを特徴とする布帛。
- 請求項1に記載の布帛からなるエアバッグ。
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