JP6227830B2 - 半芳香族ポリアミド繊維、半芳香族ポリアミド不織布及びその製造方法 - Google Patents

半芳香族ポリアミド繊維、半芳香族ポリアミド不織布及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、テレフタル成分と、炭素数が偶数である直鎖状ジアミン成分とを含む半芳香族ポリアミドからなる半芳香族ポリアミド繊維および半芳香族ポリアミド不織布に関する。
従来、ポリアミド繊維および不織布としては、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維が知られており、高強力で強靱性、耐久性に優れているため、種々の産業用途に用いられてきた。しかし、これらのポリアミド系繊維および不織布は、脂肪族ポリアミドであるため、熱や吸水による寸法安定性が悪いという欠点を有している。
高融点、高結晶性ポリアミドであるナイロン46からなる繊維および不織布も提案されており、耐熱性および寸法安定性に優れた繊維および不織布として産業資材用途などへの展開が検討されているが、ナイロン46は吸湿しやすく、吸湿による物性変化が大きいという欠点を有していた。
これら脂肪族ポリアミドの耐熱性不足や、吸水による寸法安定性不良などの問題点を解決するために、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸単位を含有する半芳香族系ポリアミドが種々提案され、一部実用化に至っている。例えば、工業化された半芳香族ポリアミドとして、テレフタル酸成分と1,6−ヘキサメチレンジアミン成分からなるポリアミド6Tや、テレフタル酸成分と1,9−ノナンジアミン成分からなるポリアミド9Tが知られている。
上記半芳香族ポリアミドは、ナイロン6,ナイロン66などの脂肪族ポリアミドと比較すると、耐熱性が高く、さらに低吸水性であるため、寸法安定性においても優れ、電気・電子部品、自動車部品用成形品の分野において広く使用されている。
しかしながら、上記半芳香族ポリアミドは、融点がポリマーの熱分解温度と近接しているため、溶融加工時の熱分解による着色、製品の性能低下が問題となる場合がある。そのため、これらの半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の製造段階においても同様な問題が生じる。
例えば、ポリアミド6Tの場合、そのホモポリマーの融点が370℃と高いため、溶融加工時のポリアミド6Tの熱分解を抑制することができなくなり、目的とする耐熱性の優れた繊維および不織布を得ることが困難となる。そのため、ポリアミド6Tは、共重合成分を導入することにより、融点を下げることで、溶融成形性を向上させ、目的とする半芳香族ポリアミド繊維および不織布を得ている。しかし、共重合されたポリアミド6Tにおいては、結晶性が損なわれ、機械的物性および各種諸物性、特に耐熱性が低下する問題が生じる。
繊維用途において、テレフタル酸単位と1,6−ヘキサンジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド(以下、ポリアミド6Tと略する。)を主成分とする半芳香族ポリアミド繊維(例えば、特許文献1〜3参照。)、テレフタル酸単位と1,12−ドデカンジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド(以下、ポリアミド12Tと略する。)を主成分とする半芳香族ポリアミド繊維(例えば、特許文献4〜6参照。)、テレフタル酸単位と主鎖の炭素数が6〜8であり主鎖の2〜5位にメチル基の側鎖を1〜2個有する飽和脂肪族ジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミドとからなる半芳香族ポリアミド繊維(例えば、特許文献7参照)、テレフタル酸単位と5−メチル−1,9−ノナンジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミドからなる半芳香族ポリアミド繊維(例えば、特許文献8参照。)、テレフタル酸単位と1,9−ノナンジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミドからなる半芳香族ポリアミド繊維(例えば、特許文献9参照。)など、種々の溶融紡糸可能な半芳香族ポリアミド繊維および不織布が提案されたが、いずれも実用化には至っていない。
さらに、ジカルボン酸単位の60〜100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位からなるポリアミドからなる繊維、及び、ジカルボン酸単位の60〜100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が40:60〜99:1であるポリアミドからなる半芳香族ポリアミド繊維が提案されている(例えば、特許文献10参照。)。このポリアミド9Tは、ポリアミド6Tよりも長い炭素数のジアミンを有するため、ポリアミド6Tよりも融点が低く、溶融加工時の問題は小さい。しかしながら、ポリアミド9Tは、その構成成分であるジアミンの炭素数が奇数であるため、ポリアミドの化学構造が非対称となり結晶性が損なわれ、高結晶性が必要とされる半芳香族ポリアミドとして用いるには十分でなかった。
ポリアミド6Tやポリアミド9Tの前記問題点を解決するポリアミドとして、例えば、テレフタル酸および1,10−デカンジアミンからなるポリアミド10Tが挙げられ、ポリアミド10T樹脂が高結晶性で耐熱性に優れた成形体とされることが示されている(例えば、特許文献13参照。)。しかしながら、ポリアミド10Tを初めとする半芳香族ポリアミドにおいては、成形加工における問題として、原料であるジアミン成分が縮合して生成するトリアミンによって、ポリアミド中にゲルが生じ、物性が損なわれることが知られている。
例えば、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなる脂肪族ジアミンと、テレフタル酸とからなる半芳香族ポリアミド(例えば、ポリアミド6T)は、副生物であるトリアミンの生成によりゲル化が生じることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。さらに、このような半芳香族ポリアミドを得る場合に、水を加えずに重合すれば、ポリアミド中のトリアミン量が低減されることが開示されている。
また、トリアミン量が低減された半芳香族ポリアミドの製法として、主に重合工程後半の固相重合の条件を適宜調整する方法が開示されている(例えば、特許文献11参照)。さらに、溶融状態のキシリレンジアミンとジカルボン酸固体からなるスラリーを用いることで、水を加えないでモルバランスを調整し、縮合系ポリアミドを得る製造方法が開示されている(例えば、特許文献12参照)。
特開昭44−22210号公報 特開昭46−00846号公報 特公平3−56576号公報 特開昭47−29451号公報 特開昭48−08531号公報 特開昭48−32611号公報 米国特許第2752328号 特公昭52−43757号公報 英国特許第1070416号 特開平9−13222号公報 特開2008−239908号公報 特開2001−200053号公報 特開平6−239990号公報
高分子化学 第25巻 第277号 318ページ(1968)
本発明の目的は、上記の問題を解決し、耐熱性が高く、結晶性に優れた半芳香族ポリアミドからなる耐熱性、機械強度が優れた半芳香族ポリアミド繊維および不織布を提供することにある。
本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のジアミン成分を用い、トリアミン量が十分に低減された半芳香族ポリアミドは、結晶性が高く、耐熱性に優れ、この半芳香族ポリアミドを紡糸することにより、耐熱性、機械強度が優れた繊維および不織布を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)テレフタル酸成分とジアミン成分とを含み、ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであり、ポリアミド中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とする半芳香族ポリアミドからなる半芳香族ポリアミド繊維または半芳香族ポリアミド不織布。
(2)半芳香族ポリアミドの主成分であるテレフタル酸成分およびジアミン成分以外の共重合成分が、原料モノマーの総モル数に対して、0〜5モル%の割合で含有されることを特徴とする(1)に記載の半芳香族ポリアミド繊維または半芳香族ポリアミド不織布。
(3)示差走査型熱量計を用いて測定される融点が280℃〜340℃であることを特徴とする(1)または(2)に記載の半芳香族ポリアミド繊維または半芳香族ポリアミド不織布。
(4)示差走査型熱量計を用いて測定される過冷却度ΔTが40℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド繊維または半芳香族不織布。
(5)次の(a)〜(d)の工程を順次行うことを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の半芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
(a)テレフタル酸とジアミンの合計100質量部に対し、水の配合量が5質量部以下の条件下、80℃以上150℃以下で溶融状態のジアミンと固体のテレフタル酸からなる懸濁液を攪拌混合し、混合物を得る工程。
(b)工程(a)で得られた混合物において、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、テレフタル酸とジアミンとの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る工程。
(c)工程(b)で得られた塩および低重合物の混合物を重合して、示差走査型熱量計を用いて測定される融点が280℃〜340℃である半芳香族ポリアミドを得る工程。
(d)工程(c)で得られた半芳香族ポリアミドを溶融紡糸し、得られた糸条を延伸、熱処理する工程。
(6)次の(a)〜(d)の工程を順次行うことを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の半芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
(a)テレフタル酸粉末を予めジアミンの融点以上かつテレフタル酸の融点以下の温度に加熱し、ジアミンの融点以上かつテレフタル酸の融点以下の温度において、テレフタル酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンをテレフタル酸粉末に添加する工程。
(b)工程(a)で得られた混合物において、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、テレフタル酸とジアミンとの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る工程。
(c)工程(b)で得られた塩および低重合物の混合物を重合して、示差走査型熱量計を用いて測定される融点が280℃〜340℃である半芳香族ポリアミドを得る工程。
(d)工程(c)で得られた半芳香族ポリアミドを溶融紡糸し、得られた糸条を延伸、熱処理する工程。
(7)工程(c)の重合工程が、工程(b)で得られた混合物を、生成するポリアミドの融点未満の温度を保ち固相重合する工程であることを特徴とする(5)又は(6)記載の半芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
(8)工程(d)が、半芳香族ポリアミドを該融点〜360℃で溶融後、30分以内の溶融滞留時間で、紡糸口金ノズルより溶融紡糸し、得られる糸条を冷却後、温度120℃〜250℃、延伸倍率2倍以上で延伸を施した後、120〜270℃で定長熱処理、緊張熱処理または弛緩熱処理を行うことを特徴とする(5)〜(7)いずれかに記載の半芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
本発明によれば、耐熱性が高く、高結晶性である半芳香族ポリアミドからなる耐熱性、機械強度に優れている繊維および不織布を得ることができる。そのため、エアーバッグ基布用途、耐熱フィルター用途、ラジエータホース用補強用繊維用途、ターポリン用途、ブラシ用ブリッスル用途、釣糸用途、タイヤコード用途、人工芝用途、絨毯用途、魚網用途、ロープ用途、フィルター用繊維用途、座席シート用繊維用途などの各種産業資材用途、フィルター用途などに好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド繊維である。本発明においては、高結晶性の観点から、特定の化学構造を有するジカルボン酸成分とジアミン成分とを用いることが必要である。
本発明においては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸を用いる必要がある。その理由は、テレフタル酸は、芳香族ジカルボン酸の中でも化学構造の対称性が高く、高い結晶性を有する半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を得る上で最も好ましいからである。
本発明においては、半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を構成するジアミン成分は、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかである直鎖脂肪族ジアミンである。直鎖脂肪族ジアミンは、化学構造の対称性が高いため、高い結晶性を有する半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を得る上で好ましい。
用いられるジアミンの炭素数が、偶数であることが必要である理由について以下に述べる。一般的に、ポリアミドにおいてはいわゆる偶奇効果が発現する。すなわち、用いられるジアミン成分のモノマー単位の炭素数が偶数である場合には、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとるため、結晶性が向上するという効果が発現する。従って、高結晶性の観点から、直鎖脂肪族ジアミンの炭素数は偶数である必要がある。
ジアミンの炭素数が8未満の場合には、得られる半芳香族ポリアミドの融点が340℃を超えて分解温度を上回るため、好ましくない。一方、ジアミンの炭素数が12を超える場合には、得られる半芳香族ポリアミドの融点が280℃未満となり、実用に供する際に、耐熱性が不足してしまうため好ましくない。炭素数9、11のジアミンでは、ポリアミドの偶奇効果により、結晶性が不足するため、好ましくない。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布には、主成分となるテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分、および/または炭素数が8、10または12である直鎖脂肪族ジアミン成分以外の種類のジアミン成分(以下、「共重合成分」と称する場合がある)が共重合されていてもよい。共重合成分は、原料モノマーの総モル数(100モル%)に対し、5モル%以下とすることが好ましく、3モル%以下がより好ましく、実質的に共重合成分を含まないことがさらに好ましい。高結晶性の観点からは、化学構造の不規則な共重合体よりも、規則性の高いホモポリマーに近い構造を有することが好ましいからである。つまり、共重合成分が5モル%を超えると、結晶性が低下し融点も低下するため、高結晶性を有し且つ耐熱性を有する半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を得ることができない場合がある。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の共重合成分として用いることが可能なテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の共重合成分として用いることが可能な他のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。なお、上記に列挙された1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−オクタンジアミンのいずれかは、本発明の芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布に必須のジアミン成分である。1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかを必須のジアミン成分として用いた場合には、それ以外のジアミン成分が共重合成分として用いられる。例えば、1,8−オクタンジアミンを必須のジアミン成分として用いる場合には、1,10−デカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンが共重合成分として用いられる。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布には、必要に応じて、カプロラクタム等のラクタム類を共重合させてもよい。
本発明において、主成分であるテレフタル酸成分とジアミン成分のモル比は、テレフタル酸成分/ジアミン成分=45/55〜55/45であることが好ましく、47.5/52.5〜52.5/47.5であることがより好ましい。テレフタル酸成分とジアミン成分のモル比を45/55〜55/45の範囲とすることで、高分子量の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を得ることができる。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布は、トリアミン量が十分に低減されていることが必要である。半芳香族ポリアミドは、重合時におけるジアミン同士の縮合反応により、トリアミン構造が副生し易い。トリアミン量が多いと、分子鎖中に架橋構造が生成し、その架橋構造は分子鎖の動きや配列を束縛するため、結晶性が低下する。また、トリアミン量が多いと、ゲル状物が多く発生するため、繊維および不織布を作製する場合、フィルターでの濾過工程において、フィルターの上流圧力変化が大きくなり、連続して生産することができなくなるなどの製糸性の不良原因となったり、得られる繊維および不織布の機械的物性の低下を引き起こしたりする。
そのため、本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布中に含まれるトリアミン単位は、ジアミン単位の0.3モル%以下であることが必要であり、0.2モル%以下であることが好ましく、0.15モル%以下であることがいっそう好ましい。このような半芳香族ポリアミド繊維および不織布を得るためには、原料に用いる半芳香族ポリアミド中に含まれるトリアミン量は、ジアミン単位の0.3モル%以下であることが必要であり、0.2モル%以下であることが好ましく、0.15モル%以下であることがいっそう好ましい。原料ポリマー中に含まれるトリアミン量が、0.3モル%を超える場合には、ゲル状物が発生して連続生産性が低下したり、ポリアミドからなる繊維中のトリアミン構造がジアミン単位の0.3モル%を超える場合には、得られる繊維および不織布の結晶性が低下したり、色調が低下する、機械的物性が低下するという問題が発現する。
上記のトリアミン単位をジアミン単位の0.3モル%以下とするためには、テレフタル酸成分とジアミン成分とから塩を生成するに際し、水の配合量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましい。
一般的に、ポリアミドの加熱重合反応を均一的に進行させるために、水の共存下、原料を混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法が用いられている。しかしながら、このような方法においては、重合時の水の量が、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部を超えて多くなると、重合度の上昇が抑制されるという問題がある。その場合、アミン末端が多い状態での重合装置中の滞留時間が長くなり、ジアミン同士の縮合反応により副生成するトリアミン量が増加する。その結果、ポリアミドの一部が架橋構造をとり、結晶性が低下したり、ゲル化が促進されたり、色調が低下したりする。そして、非特許文献1にも示されるとおり、半芳香族ポリアミドでは、トリアミンの生成が脂肪族ポリアミドより顕著である。従って、本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布のように、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下である半芳香族ポリアミドからなる繊維を得るためには、水の配合量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下がより好ましく、実質的に水を配合させないことが最も好ましいのである。
また、本発明では高結晶性を有する半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を得ようとするものであるので、結晶性が特定の範囲に制御されていることが好ましい。本発明における結晶性の指標としては、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した過冷却度ΔTを用いることができる。この過冷却度ΔTは、ΔT≦40℃の範囲を満たすことが好ましく、ΔT≦35℃の範囲を満たすことがより好ましい。ΔTが40℃を超えると、結晶性が不十分であり、耐熱性向上の効果が不十分であったりするので好ましくない。
なお、本発明においては、下記式のように、過冷却度ΔTは、当該ポリアミドの融点(以下、Tmと略称する場合がある)と降温結晶化温度(以下、Tccと略称する場合がある)との差と定義される。
ΔT=Tm(融点)−Tcc(降温結晶化温度)
上記式においては、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下、当該ポリアミドからなる繊維を溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度を融点(Tm)と定義する。また、同様に溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した場合に現れる発熱ピークの温度を降温結晶化温度(Tcc)と定義する。この過冷却度ΔTが小さい程、ポリマー溶融状態からの結晶化が速く、高結晶性を有するポリマーであることを示す。
なお、炭素数が偶数個であるジアミン成分が用いられた半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布は、そもそも高結晶性を有するものである。さらなる高結晶性を達成するために、上述のように、本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維中の共重合成分を0〜5モル%とする手法を用いることができる。さらなる高結晶性を達成するためには、上述のように、半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布中のジアミン単位に対するトリアミン単位を0.3モル%以下とする手法を用いてもよい。
本発明は、結晶性が高く、同時に高耐熱性を有する半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布を得ようとするものである。したがって、得られる半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の融点が280℃未満の場合は耐熱性が不足する。そのため、融点は280℃以上に制御される必要がある。また、融点が340℃より高い場合は、ポリアミドの分解が促進され、溶融成形、例えば溶融紡糸が困難となる。そのため、融点は340℃以下に制御されることが必要である。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の原料ポリマーは、ポリアミドを製造する方法として従来から知られている加熱重合法や溶液重合法などの方法を用いて製造することができる。中でも、工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、溶融重合法、溶融押出法、固相重合法などが挙げられる。本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布は融点が280℃〜340℃と高く、分解温度に近い。よって、生成ポリマーの融点以上の温度で反応させる溶融重合法や溶融押出法に比べ、生成ポリマーの融点未満の温度で反応させる固相重合法が好ましい。
一般に、半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の原料ポリマーの製造は、モノマーから混合物を得る工程(a)と、このような混合物を用いて重合する工程(b)及び(c)からなることが多いが、本発明においては、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミドを得るために、工程(a)の段階を、重合系中の水分が少ない条件、すなわち、テレフタル酸とジアミンの合計100質量部に対して、水の配合量を5質量部以下として実施することが好ましい。
(a)の段階を、水分の少ない条件下で実施する方法として、たとえば、テレフタル酸粉末を予めジアミンの融点以上かつテレフタル酸の融点以下の温度に加熱し、ジアミンの融点以上かつジカルボン酸の融点以下の温度において、テレフタル酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンをテレフタル酸粉末に添加すること方法が好ましく用いられる。
あるいは、(a)の段階を水分の少ない条件化で実施する別の方法として、テレフタル酸とジアミンの合計100質量部に対して水の配合量を5質量部以下とした条件下、80℃以上150℃以下で溶融状態のジアミンと固体のテレフタル酸からなる懸濁液を攪拌混合し、混合物を得る方法が好ましく用いられる。
工程(a)は、常圧で行なわれることもあるが、ポリアミドの縮合反応により生成する水に起因する加圧状態で行われることもあり、適宜選択することができる。
本発明においては、固体のテレフタル酸と液状のジアミンとの反応効率を確保するため、テレフタル酸の体積平均粒径は、5μm〜1mmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。テレフタル酸の体積平均粒径を1mm以下とすることで、塩の反応の進行を早くすることができる。また、5μm以上とすることで、粉体の飛散が軽減し、粉体の取扱が容易になるという利点がある。
次に、工程(b)について説明する。
工程(b)は、工程(a)で得られた混合物を、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で、テレフタル酸とジアミンとの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とをおこない、塩および低重合体の混合物を得る工程である。工程(b)においては、前述の生成反応をさせながら破砕を行なってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕を行なってもよい。
次に、工程(c)について説明する。
工程(c)は、工程(b)で得られた塩や低重合体を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の原料となる半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミドを得る工程である。
工程(c)において、固相重合温度が、生成する半芳香族ポリアミドの融点以上の温度である場合、トリアミン量が多くなる。また、熱分解が促進される。そのため、半芳香族ポリアミドの色調が悪くなる場合があるので好ましくない。
固相重合温度は、180〜270℃とすることが好ましく、200〜250℃とすることがより好ましい。固相重合温度が180℃未満であると重合反応が不十分となる場合がある。一方、270℃を超えるとアミド結合の熱分解が促進されて、得られる半芳香族ポリアミド中のトリアミン量が多くなる場合がある。
工程(c)における固相重合反応の反応時間としては、最終的に到達する分子量と生産性のバランスの観点から、反応温度に達してから0.5〜10時間の範囲であることが好ましく、0.5〜8時間がより好ましい。
工程(c)における固相重合反応は、窒素などの不活性ガス気流中でおこなってもよく、減圧下でおこなってもよい。また、静置しておこなってもよく、攪拌しながらおこなってもよい。この場合においても、常に最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点以下で、反応がおこなわれる。
また、本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の原料を製造するためには、重合触媒を用いることが好ましい。本発明で使用される触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩などが挙げられる。本発明においては触媒の使用量にとくに制限はないが、通常、テレフタル酸とジアミンの総モルに対して、0〜2モル%用いられる。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の原料ポリマーは、重合度の調整、製品としたときの熱分解や着色などを抑制する目的で、末端封鎖剤を加えることが好ましい。末端封鎖剤としては、酢酸、ラウリン酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などのアミノ基との反応性を有するモノカルボン酸や、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどのカルボキシル基との反応性を有するモノアミン、その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などのうちのいずれか一種、あるいはこれらを組み合わせて用いられる。
末端封鎖剤の添加量は目的に合わせて決定すればよいため、特に制限されないが、通常、テレフタル酸とジアミンの総モルに対して0〜5モル%である。ポリアミドからなる繊維および不織布及びこれらの原料である半芳香族ポリアミドの末端基を封止することにより、紡糸性が向上し、さらに耐水性、耐黄変性により優れたポリアミド繊維および不織布が得られる。末端封止剤の使用量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル数に対して0.5〜10モル%の範囲内で使用されるのが好ましい。
本発明のポリアミドからなる繊維および不織布には、必要に応じてフィラーや安定剤などの添加剤を加えてもよい。添加の方法は、ポリアミドの重合時に添加する、または得られたポリアミドに溶融混練することが挙げられる。添加剤としては、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、グラファイトのような充填材、酸化チタン、カーボンブラックなどのような顔料、そのほか、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤など周知の添加剤が挙げられる。その他、必要に応じて銅化合物などの安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などを重縮合反応時、またはその後に添加することもできる。特に、熱安定剤としてヒンダードフェノールなどの有機系安定剤、ヨウ化銅などのハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、紡糸時の溶融滞留安定性、耐乾熱劣化性が更に向上するので好ましい。
上記のようにして得られた本発明の半芳香族ポリアミドからなる繊維および不織布の原料ポリマーの相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、溶融紡糸が容易なポリアミドを得ようとすれば、相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
次に、工程(d)について説明する。
工程(d)は、工程(c)で得られた半芳香族ポリアミドを溶融紡糸などにより溶融成形し、得られた糸条などを延伸、熱処理などすることにより半芳香族ポリアミド繊維を得る工程である。
工程(d)としては、溶融紡糸法、エレクトロスピニング法が挙げられ、これら各種溶融成形方法により本発明の半芳香族繊維が得られる。
溶融紡糸は、通常、溶融押出機であるスクリュー型押出機を使用するのが好ましい。本発明の半芳香族ポリアミドの溶融紡糸により得られる半芳香族ポリアミド繊維中のトリアミン単位を0.3モル%以下とするためには、該半芳香族ポリアミドの融点〜360℃にて溶融後、30分以内の溶融滞留時間で、紡糸口金ノズルより紡出することにより繊維を得ることが好ましい。さらに、紡出して得られた糸条を、引取りローラーなどにより引き取り、必要に応じて、ノズル直下に加熱または保温ゾーンを設け、また、吹き付けチャンバーなどによる冷却ゾーンを設け、更に、紡出した糸条に油剤を塗布してもよい。
該繊維中のトリアミンは、原料ジアミンの分子鎖末端基であるアミノ基間の反応で形成され、溶融紡糸などの溶融成形過程において三次元化反応を誘発し、ゲル状物や不溶融物を形成する。その結果、溶融紡糸における製糸性の悪化や糸質物性の低下などを引き起こす。よって、溶融紡糸などの溶融成形に使用する原料ポリマー中のトリアミン量を低くすることに加え、溶融紡糸などの溶融成形過程においても、トリアミン量、アミノ末端基量を抑制する条件を選択することが好ましく、具体的には、上記溶融温度及び溶融滞留時間を選択することが好ましい。
延伸は、加熱浴、加熱蒸気吹付け、ローラーヒーター、接触式プレートヒーター、非接触式プレートヒーター等を使用して、270℃以下で行うのが好ましく、120℃〜250℃で行うのが好ましい。延伸倍率は2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。また、必要に応じて、延伸に引き続き、さらに120〜270℃で定長熱処理、緊張熱処理または弛緩熱処理を行ったり、上記の2段階による紡糸延伸方法の他にも、紡糸により得られた未延伸糸を連続して延伸を行うことも可能である。上記270℃を超える温度で延伸を行うと、ポリアミド樹脂の劣化、溶融化、結晶の再組織化などが起こり、得られる繊維の強度が低下したり、耐熱性の高い繊維を得ることができない場合がある。
該繊維中のトリアミンは、三次元化反応を誘発し繊維の延伸工程における延伸性の不良を引き起こすため、耐熱性の高い繊維を得ることが困難となったり、糸質物性の低下が起こる場合がある。また、120℃よりも低い温度での延伸では、分子鎖の重なりの十分な開放が困難であったり、延伸倍率が低くなったり、ボイドや欠点が形成され繊維を得られなかったりするため、目的とする糸質物性を発現しなくなる場合がある。その為、上記の延伸温度範囲において該繊維を延伸することが好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドからなる不織布は、前述の溶融紡糸法と同様の溶融条件において得られた未延伸糸を積層などしたり、公知のスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、湿式不織布法などの製造方法により得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<原料>
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)ジカルボン酸成分
・テレフタル酸(融点:300℃以上)
・イソフタル酸(融点:343℃)
・アジピン酸(融点:153℃)
(2)ジアミン成分
・1,8−オクタンジアミン(融点:51℃)
・1,9−ノナンジアミン(融点:36℃)
・1,10−デカンジアミン(融点:62℃)
・1,12−ドデカンジアミン(融点:68℃)
<測定方法>
以下のような方法にしたがって、樹脂特性の測定の性能評価を行った。
(1)テレフタル酸の平均粒径微粒子の平均粒子径の粒度分布を測定する装置(堀場製作所社製 「LA920」)を用いて測定し、体積平均粒子径で評価した。
(2)ポリアミドの相対粘度
ウベローデ型粘度計を用い、96%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
(3)ポリアミドの降温結晶化温度、融点、過冷却度
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持した。その後、降温速度20℃/分で25℃まで降温した際の発熱ピークのトップを与える温度を降温結晶化温度(Tcc)、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点(Tm)とした。融点と降温結晶化温度の差(Tm−Tcc)を過冷却度(ΔT)とした。
(4)ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド繊維および不織布中のトリアミンの定量
ポリアミド(樹脂、繊維、不織布)10mgに47%臭化水素酸を3mL加え、130℃で16時間加熱後、室温まで放冷した。そこに20%水酸化ナトリウム水溶液を5mL加えて試料溶液をアルカリ性にした後、分液ロートに移してクロロホルムを8mL加えて撹拌した後静置し、クロロホルム層のみを試験管に移し、ガスブロー濃縮機にて濃縮した。濃縮した試料にクロロホルム1.5mLを加え、これをメンブランフィルターで濾過したものを測定試料とした。この測定試料を、質量分析計を備えたガスクロマトグラフィー装置(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent 6890N」)で分析した。ジアミンとトリアミンを標準試料として作成した検量線を用いて、ポリアミド中のジアミンとトリアミンを定量し、ジアミンに対するトリアミンのモル比を算出した。ジアミンの標準物質は、重合に用いたジアミンを用いた。また、トリアミンの標準物質は、酸化パラジウムを触媒として用いて、オートクレーブ中にて重合に用いたジアミンを240℃で3時間加熱攪拌して反応させて得たトリアミン化合物を用いた。
(5)ノズル昇圧
エクストルーダー型単軸押出機を使用し、表1に記載の条件にて、溶融紡糸した。ブレーカープレートとその背面に有する68mmφの濾過面積を有する金属不織布フィルター(ナスロンNF−12)で濾過後、孔径0.35mmφ24個の孔を有する口金から1.45g/min・holeの条件で、溶融押出し、その後、400m/minの速度のローラーにて引取り、巻き取った。ノズルパック内滞留時間は、7分であった。その際、フィルターの単位時間当たりの圧力変化を測定した。
(6)紡糸・延伸性
溶融紡糸工程において、ノズル昇圧が小さく、フィラメント中に含有される気泡やゲル化物など異物がなく、引き取り工程において、糸切れない状況であり、加熱延伸工程においても糸切れのない状態を良好な状況と判断し、○として示した。溶融紡糸工程でのノズル昇圧が顕著である、引き取り工程における糸切れが頻発する、加熱延伸工程において糸切れが頻発するなど、繊維の製造工程において障害となる状況を不良と判断し、×として示した。不良ではないが、ノズル昇圧や糸切れなどの現象が起こった条件を、問題ありとして、△で示した。
実施例1
[工程a]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、体積平均粒径80μmのテレフタル酸粉末(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。原料モノマーのモル比は、1,10−デカンジアミン:テレフタル酸=50:50であった。
[工程b]
工程aで得られた混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応と破砕を同時に行った。反応により生じた水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程c]
工程bで得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミドを得た。得られたポリアミドの特性値を表1に示した。
[工程d]
工程cで得られたポリアミドをエクストルーダー型単軸押出機に投入し、表1に記載の条件にて、溶融紡糸した。ブレーカープレートとその背面に有する68mmφの濾過面積を有する金属不織布フィルター(ナスロンNF−12)で濾過後、孔径0.35mmφ24個の孔を有する口金から1.45g/min・holeの条件で、溶融押出し、その後、400m/minの速度のローラーにて引取り、巻き取った。ノズルパック内滞留時間は、7分であった。引き続き、表1に記載の延伸温度と延伸倍率にて延伸を施し、ポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド繊維の特性値を表2に示した。
実施例2
[工程a及び工程b]
体積平均粒径80μmのテレフタル酸粉末(4870質量部)、重合触媒としての次亜リン酸ナトリウム(6質量部)、末端封鎖剤としての安息香酸(72質量部)からなる混合物を、リボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したデカンジアミン(50質量部、100質量%)を、28質量部/分の速度で、3時間かけて連続的(連続液注方式)にテレフタル酸粉末に添加し反応物を得た。
[工程c]
工程a及び工程bで得られた反応物を、引き続き工程a及び工程bで用いたリボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合し半芳香族ポリアミドを得た。得られた半芳香族ポリアミドの特性値を表1に示した。
[工程d]
工程cで得られた半芳香族ポリアミドをエクストルーダー型単軸押出機を使用し、表1に記載の条件にて、溶融紡糸、加熱延伸を施し、半芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた半芳香族ポリアミド繊維の特性値を表1に示した。
実施例3〜6、および9〜10、比較例1
使用するモノマーの種類、製造条件を表1のように変更する以外は、実施例2と同様にして、半芳香族ポリアミドを得た後に溶融紡糸及び加熱延伸法により半芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた半芳香族ポリアミド繊維の特性値を表2に示した。
実施例7
[工程a]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、体積平均粒径80μmのテレフタル酸粉末(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)、蒸留水400質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、4質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。
[工程b]
工程aで得られた混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応を行ないながら、得られた固形物を破砕した。水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程c]
工程bで得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合し半芳香族ポリアミドを得た。得られた半芳香族ポリアミドの特性値を表1に示した。
[工程d]
工程cにより得られた半芳香族ポリアミドを用いて、表1に示した条件で、実施例1と同様な方法により半芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた半芳香族ポリアミド繊維の特性値を表2に示した。
実施例8
[工程a及び工程b]
実施例1と同様の方法にて反応物を得た。
[工程c]
工程a及び工程bで得られた反応物を、二軸押出機(30mmφ、L/D=45、2ベント)に供給して溶融重合に付し、ペレット状の半芳香族ポリアミドを得た。二軸押出機のシリンダー温度を330℃に設定し、樹脂温度を335℃に調節した。平均滞留時間は3分に設定した。ホッパーは酸素含有量が50ppm以下の窒素ガスでシールした。また、第1ベントは開放し、前記の窒素ガスでシールし、第2ベントは真空ポンプを使用して50mmHgの減圧度を保った。スクリュー回転数は40rpmに設定し、ホッパーからの低重合体の供給量は1kg/時間とした。得られた半芳香族ポリアミドの特性値を表1に示した。
[工程d]
工程cにより得られた半芳香族ポリアミドを用いて、表1に示した条件にて、実施例1と同様な方法により、半芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた半芳香族ポリアミド繊維の特性値を表2に示した。
比較例2
[工程a、工程b及び工程c]
工程aにおいて、蒸留水400質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、4質量部)に代えて、蒸留水9200質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、92質量部)とした以外は、実施例7と同様にして半芳香族ポリアミドを得た。得られた半芳香族ポリアミドの特性値を表1に示した。
[工程d]
工程a、工程b及び工程cにより得られた半芳香族ポリアミドを用いて、表1に示した条件にて、実施例1と同様な方法により、半芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた半芳香族ポリアミド繊維の特性値を表2に示した。
比較例3
[工程a、工程b及び工程c]
工程aにおいて、蒸留水400質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、4質量部)に代えて、蒸留水600質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、6質量部)とした以外は、実施例7と同様にして半芳香族ポリアミドを得た。得られた半芳香族ポリアミドの特性値を表1に示した。
[工程d]
工程a、工程b及び工程cにより得られた半芳香族ポリアミドを用いて、表1に示した条件にて、実施例1と同様な方法により、半芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた半芳香族ポリアミド繊維の特性値を表2に示した。
実施例1、2、4、6〜8で得られた共重合成分を含まない半芳香族ポリアミド繊維の原料ポリマーは、過冷却度が本発明における好ましい範囲(ΔTが35℃以下)であり高い結晶性を有するため、得られる半芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性、成形性にも優れていた。さらに、半芳香族ポリアミド中のトリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下と少ないものであったため、ゲル化が抑制されており、溶融紡糸時におけるノズル昇圧がなく、得られるポリアミド繊維は優れた特性を示していた。実施例3および5で得られた半芳香族ポリアミドは、共重合成分としてイソフタル酸が共重合されていたが、その割合が5モル%以下であったため、過冷却度が本発明に定める範囲(ΔTが40℃以下)となり、耐熱性、結晶性にも優れたものであった。さらに、半芳香族ポリアミド中のトリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下と少ないものであった。そのため、ゲル化が抑制されており、溶融紡糸時におけるノズル昇圧がなく、得られるポリアミド繊維は優れた特性を示していた。実施例7はテレフタル酸とジアミンの合計100質量部に対して、5質量部以下の水の存在下で重合したため、半芳香族ポリアミド中のトリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下でゲル化が抑制されており、溶融紡糸時におけるノズル昇圧がなく、得られるポリアミド繊維は優れた特性を示していた。実施例9および10は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の総モル数に対して、テレフタル酸以外のジカルボン酸が5%を超えて共重合されていた。そのため、実施例9および10にて得られたポリアミド繊維は、機械的物性の改善の余地が見られたが、十分に実用に耐えうるものであった。
一方、比較例1においては、ジアミン成分として、奇数個の炭素数を有する1,9−ノナンジアミンを用いたため、過冷却度が高く、得られた半芳香族ポリアミドは、結晶性が低いものとなり、得られる繊維の機械的物性の低下が見られた。比較例2、3は、テレフタル酸とジアミンの合計100質量部に対して、5質量部を超えた水の存在下、ポリアミドを重合した。そのため、ポリアミド中のトリアミン含有量が0.3モル%を超えており、ポリアミド中にゲルが多く含まれており、ノズル昇圧が顕著であり、実用には適さないと推測される。

Claims (6)

  1. テレフタル酸成分とジアミン成分とを含み、前記ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであり、前記半芳香族ポリアミドの主成分であるテレフタル酸成分およびジアミン成分以外の共重合成分が、原料モノマーの総モル数に対して0〜5モル%の割合で含有されており、前記半芳香族ポリアミド中の前記ジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下である半芳香族ポリアミド。
  2. 前記半芳香族ポリアミドが、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分を含まない半芳香族ポリアミドである請求項1に記載の半芳香族ポリアミド。
  3. 示差走査型熱量計を用いて測定される融点が280℃〜340℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド。
  4. 示差走査型熱量計を用いて測定される過冷却度ΔTが40℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド。
  5. 前記ジアミン成分が、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかである請求項1〜4いずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド。
  6. 前記半芳香族ポリアミド中の前記ジアミン単位に対するトリアミン単位が0.25モル%以下である請求項1〜5いずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド。
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