JP3481729B2 - ポリアミド繊維 - Google Patents
ポリアミド繊維Info
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Description
ミドからなる繊維に関する。本発明のポリアミド繊維
は、高強力、高弾性率で、かつ耐熱性、耐水性、耐薬品
性、耐加熱黄変性、染色堅牢性などの諸性能にも優れて
おり、ゴム製品の補強用材料、重布類、ロープ類、網類
などの産業資材用途のほか、衣料用途、カーペット用途
などに好適に使用することができる。 【0002】 【従来の技術】従来、ポリアミド系繊維としては、ナイ
ロン6、ナイロン66が良く知られており、高強力で強
靱性、耐久性に優れているため、種々の産業用途に用い
られてきた。しかし、これらのポリアミド系繊維は、寸
法安定性、とりわけ熱や吸水による寸法安定性が悪いと
いう欠点を有している。そこで、融点の高いで高結晶性
ポリアミドであるナイロン46からなる繊維が提案され
ており、耐熱性および寸法安定性に優れた繊維として、
ゴム製品の補強用材料、電気絶縁材、縫糸、カンバス、
ガットなどへの展開が検討されつつある。しかし、ナイ
ロン46は吸湿しやすく、吸湿による物性変化が大きい
という欠点を有する。 【0003】一方、近年、汎用脂肪族ポリアミドの耐熱
性不足、吸水による寸法安定性不良などの問題点を解決
するために、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸単位
を含有する半芳香族系ポリアミドが種々提案され、プラ
スチック用途分野で一部実用化されいてる。繊維用途に
おいても、テレフタル酸単位と1,6−ヘキサンジアミ
ン単位とからなる半芳香族ポリアミド(以下、PA6−
Tと略称する)を主成分とするポリアミド(特開昭44
−22210号公報、特開昭46−846号公報、特公
平3−56576号公報参照)、テレフタル酸単位と
1,12−ドデカンジアミン単位とからなる半芳香族ポ
リアミドを主成分とするポリアミド(特開昭47−29
451号公報、特開昭48−8531号公報、特開昭4
8−32611号公報参照)、テレフタル酸単位と主鎖
の炭素数が6〜8であり主鎖の2〜5位にメチル基の側
鎖を1〜2個有する飽和脂肪族ジアミン単位とからなる
ポリアミド(米国特許第2752328号明細書参
照)、テレフタル酸単位と5−メチル−1,9−ノナン
ジアミン単位とからなるポリアミド(特公昭52−43
757号公報参照)、テレフタル酸単位と1,9−ノナ
ンジアミン単位とからなるポリアミド(英国特許第10
70416号明細書参照)など、種々の溶融紡糸可能な
半芳香族ポリアミドが提案されたが、いずれも実用化に
は至っていない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らの研究によ
れば、上記半芳香族ポリアミドは、溶融紡糸可能ではあ
るが、ジアミン単位として炭素数が9個より少ないジア
ミン単位を含有する半芳香族ポリアミドでは、紡糸性、
耐水性、耐薬品性などの諸物性が十分ではなく、炭素数
が10個以上のジアミン単位を含有する半芳香族ポリア
ミドでは、耐熱性、弾性率などが十分ではない。また、
英国特許第1070416号明細書に記載の方法を追試
して得られる、テレフタル酸単位と1,9−ノナンジア
ミン単位とからなり、末端が封止されていない半芳香族
ポリアミドは、紡糸時に断糸が起こりやすく、得られた
繊維は着色しており、強度も十分ではなかった。 【0005】本発明の目的は、従来の繊維では達し得な
かった、高強力、高弾性率で、かつ耐熱性、耐水性、耐
薬品性、耐加熱黄変性、染色堅牢性などの諸性能にも優
れたポリアミド繊維を提供するにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意研究した結果、テレフタル酸単
位および1,9−ノナンジアミン単位から主としてなる
半芳香族ポリアミドに、2−メチル−1,8−オクタン
ジアミンを特定量共重合したポリアミドを紡糸すること
により、上記性能に優れた繊維を得ることができること
を見出して本発明を完成した。 【0007】 本発明によれば、上記の目的は、ジカル
ボン酸単位の60〜100モル%がテレフタル酸単位か
らなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−
ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタ
ンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジアミン
単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモ
ル比が40:60〜99:1であるポリアミドであっ
て、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.6
〜2.0dl/gであるポリアミドからなる繊維を提供
することにより達成される。 【0008】 以下、本発明を具体的に説明する。 【0009】 本発明に用いられるポリアミドは、実質
的にジカルボン酸単位およびジアミン単位からなる。ジ
カルボン酸単位としては、テレフタル酸単位を60モル
%以上含有していることが必要であり、75モル%以上
含有していることが好ましく、90モル%以上含有して
いることがより好ましい。テレフタル酸単位の含有率が
60モル%未満の場合には、得られるポリアミド繊維の
耐薬品性、耐熱性などの諸物性が低下するため好ましく
ない。 【0010】テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸
単位としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、
コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、
2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチル
アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカル
ボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4
−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン
酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、
2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレン
ジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、
1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,
4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’
−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカ
ルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳
香族ジカルボン酸から誘導される単位を1種または2種
以上含ませることができる。耐熱性などの点から、上記
したジカルボン酸単位のなかでも、芳香族ジカルボン酸
単位を含ませるのが好ましい。さらに、トリメリット
酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの官能基を3個
以上有する多価カルボン酸を、溶融紡糸が可能な範囲内
で含ませることができる。 【0011】 また、ジアミン単位として、1,9−ノ
ナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタン
ジアミン単位を60〜100モル%含有していることが
必要である。 【0012】 本発明で使用するポリアミドにおいて
は、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8
−オクタンジアミン単位のモル比は40:60〜99:
1であり、50:50〜99:1であることが好まし
く、70:30〜95:5であることがより好ましい。 【0013】 1,9−ノナンジアミン単位、2−メチ
ル−1,8−オクタンジアミン単位以外の他のジアミン
単位としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレン
ジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサン
ジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカ
ンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル
−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペ
ンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘ
キサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘ
キサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン
などの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチ
ルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの
脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニ
レンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミ
ノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルス
ルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの
芳香族ジアミンから誘導される単位を1種または2種以
上含ませることができる。 【0014】 本発明に用いられるポリアミドは、その
分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止さ
れていることが好ましく、末端の40%以上が封止され
ていることがより好ましく、末端の70%以上が封止さ
れていることがさらに好ましい。ポリアミドの末端を封
止することにより、紡糸性が向上し、さらに耐水性、耐
加熱黄変性により優れたポリアミド繊維が得られる。 【0015】末端封止率を求めるにあたっては、ポリア
ミドに存在しているカルボキシル基末端、アミノ基末端
および末端封止剤によって封止された末端の数をそれぞ
れ測定し、下記の式(1)により末端封止率を求めるこ
とができる。各末端基の数は、1H−NMRにより、各
末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが
精度、簡便さの点で好ましい。 【0016】 末端封止率(%)=[(A−B)÷A]×100 ………(1) 〔式中、Aは分子鎖末端基総数(これは通常、ポリアミ
ド分子の数の2倍に等しい)を表し、Bはカルボキシル
基末端およびアミノ基末端の合計数を表す〕 【0017】末端封止剤としては、ポリアミド末端のア
ミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性
の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止
末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノ
アミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノ
カルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸など
の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化
物、モノエステル類、モノアルコール類なども使用でき
る。 【0018】末端封止剤として使用されるモノカルボン
酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば
特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪
酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ト
リデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボ
ン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカル
ボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボ
ン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカ
ルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、
あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。
これらの内、反応性、封止末端の安定性、価格などの点
から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン
酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチ
ン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好まし
い。 【0019】ポリアミドの末端基をモノカルボン酸で封
止する場合は、ポリアミドの製造に際してジカルボン酸
成分に対するジアミン成分の使用モル数をわずかに多く
して、ポリアミドの両末端がアミノ基になるようにし、
モノカルボン酸を末端封止剤として加えるのがよい。 【0020】本発明に用いられるポリアミドのアミノ基
末端は、これらのモノカルボン酸で封止されることによ
り、下記の一般式(I)で示される封止末端を形成す
る。 【0021】 【化1】 (式中、Rは上記のモノカルボン酸からカルボキシル基
を除いた残基であり、好ましくはアルキル基、シクロア
ルキル基、アリール基、アラルキル基である。) 【0022】末端封止剤として使用されるモノアミンと
しては、カルボキシル基との反応性を有するものであれ
ば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルア
ミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミ
ン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミ
ン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミ
ン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘ
キシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モ
ノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、
ナフチルアミンなどの芳香族モノアミン、あるいはこれ
らの任意の混合物を挙げることができる。これらの内、
反応性、沸点、封止末端の安定性および価格などの点か
ら、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、
デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミ
ン、アニリンが好ましい。 【0023】ポリアミドの末端基をモノアミンで封止す
る場合は、ポリアミドの製造に際してジカルボン酸成分
に対するジアミン成分の使用モル数をわずかに少なくし
て、ポリアミドの両末端がカルボキシル基になるように
し、モノアミンを末端封止剤として加えるのがよい。 【0024】本発明に用いられるポリアミドのカルボキ
シル基末端は、これらのモノアミンで封止されることに
より、下記の一般式(II)で示される封止末端を形成す
る。 【0025】 【化2】 (式中、R1は上記のモノアミンからアミノ基を除いた
残基であり、好ましくはアルキル基、シクロアルキル
基、アリール基、アラルキル基である。R2は水素原子
または上記のモノアミンからアミノ基を除いた残基であ
り、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル
基、アリール基、アラルキル基である。) 【0026】ポリアミドを製造する際に用いられる末端
封止剤の使用量は、最終的に得られるポリアミドの極限
粘度[η]および末端基の封止率が、本発明に規定する
範囲内となるように選ぶことが必要である。具体的な使
用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、
反応条件などによって変化するが、通常、ジカルボン酸
とジアミンの総モル数に対して0.5〜10モル%の範
囲内で使用されるのが好ましい。 【0027】ポリアミドの製造法は特に制限されず、結
晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意
の製造方法を用いることができる。例えば、酸クロライ
ドとジアミンを原料とする溶液重合法あるいは界面重合
法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、
固相重合法、溶融押出機重合法などの方法により重合可
能である。以下に、ポリアミドの製造法の一例を示す。 【0028】末端封止剤および触媒を、最初にジアミン
成分およびジカルボン酸成分に一括して添加し、ナイロ
ン塩を製造した後、いったん280℃以下の温度におい
て濃硫酸中30℃における極限粘度[η]が0.15〜
0.25dl/gのプレポリマーとし、さらに固相重合
するか、あるいは溶融押出機を用いて重合を行うことに
より、容易に本発明に用いられるポリアミドを得ること
ができる。末端封止剤および触媒を、ナイロン塩の製造
段階以降に添加した場合には、重合中にカルボキシル基
とアミノ基のモルバランスがずれたり、架橋構造が生成
するなどの問題点が生じ易くなる。またプレポリマーの
極限粘度[η]が0.15〜0.25dl/gの範囲内
であると、後重合の段階においてカルボキシル基とアミ
ノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なく、
さらに分子量分布の狭い、各種物性や成形性に優れたポ
リアミドが得られる。重合の最終段階を固相重合により
行う場合、減圧下または不活性ガス流通下に行うのが好
ましく、重合温度が200〜250℃の範囲内であれ
ば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色やゲル化を
有効に押さえることができるので好ましい。重合の最終
段階を溶融押出機により行う場合、重合温度が370℃
以下であるとポリアミドの分解がほとんどなく、劣化の
無いポリアミドが得られるので好ましい。 【0029】本発明に用いられるポリアミドの、濃硫酸
中30℃で測定した極限粘度[η]は0.6〜2.0d
l/gであり、好ましくは0.6〜1.8dl/g、よ
り好ましくは0.8〜1.6dl/gである。極限粘度
[η]がこの範囲であると、溶融紡糸性が良好であり、
さらに得られる繊維の力学的性能も優れている。 【0030】ポリアミドの製造に用いる触媒としては、
リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらのアンモニ
ウム塩、それらの金属塩(カリウム、ナトリウム、マグ
ネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、
マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、
アンチモンなどの金属塩)、それらのエステル類(エチ
ルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、
ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシル
エステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェ
ニルエステルなど)を挙げることができる。これらのな
かでも、次亜リン酸ナトリウムが入手し易さ、取扱いの
簡便さなどから好ましい。その他、必要に応じて銅化合
物などの安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、
酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結
晶化速度遅延剤などを重縮合反応時、またはその後に添
加することもできる。特に、熱安定剤としてヒンダード
フェノールなどの有機系安定剤、ヨウ化銅などのハロゲ
ン化銅化合物、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカ
リ金属化合物を添加すると、紡糸時の溶融滞留安定性、
糸の耐乾熱劣化性が更に向上するので好ましい。 【0031】溶融紡糸は、通常、溶融押出機を用いて行
うが、スクリュー型押出機を使用するのが好ましい。上
記のポリアミドを、好ましくは融点〜360℃で溶融
し、30分以内の溶融滞留時間で、口金ノズルより紡出
することにより繊維を得ることができる。溶融温度およ
び溶融滞留時間が上記条件を満たしていれば、紡糸時の
熱分解を有効に抑えることができ、高品質のポリアミド
繊維を得ることができる。 【0032】前記のごとく紡出した糸条を、引取りロー
ラーなどにより引き取る。この時、必要に応じて、ノズ
ル直下に加熱または保温ゾーンを設けたり、吹き付けチ
ャンバーなどによる冷却ゾーンを設けたり、紡出した糸
条に油剤を塗布してもよい。引き取った繊維の複屈折は
20×10-3以下であるのが好ましい。複屈折がこの範
囲内であれば、延伸工程で十分に延伸することができ、
高強度の繊維を得ることができる。 【0033】延伸は、加熱浴、加熱蒸気吹付け、ローラ
ーヒーター、接触式プレートヒーター、非接触式プレー
トヒーター等を使用して、270℃以下で行うのが好ま
しく、120℃〜250℃で行うのがより好ましい。さ
らに、延伸倍率は2倍以上が好ましく、3倍以上がより
好ましい。この時、270℃より高い温度で延伸を行う
と、ポリアミド樹脂の劣化や、結晶の再組織化などが起
こり強度が低下する。必要に応じて、延伸に引き続い
て、さらに120〜270℃で定長熱処理、緊張熱処理
または弛緩熱処理を行うことができる。上記の方法の他
にも、紡糸直結延伸を行うことも可能である。このよう
にして得られたポリアミド繊維は、分散染料、酸性染料
などを用いた通常の染色方法で染色可能である。 【0034】本発明のポリアミド繊維は、高強力、高弾
性率で、かつ耐熱性、耐水性、耐薬品性、耐加熱黄変
性、染色堅牢性などの諸性能にも優れているので、タイ
ヤ類、ベルト類、ホース類、ターポリンなどのゴム製品
の補強用材料、重布類、ロープ類、網類などの産業資材
用途のほか、衣料用途、カーペット用途などに好適に使
用することができる。 【0035】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものでは
ない。なお、以下の例において、ポリアミドの末端封止
率、極限粘度[η]、紡糸性;ポリアミド繊維の複屈
折、強度、弾性率、耐薬品性、吸水率、染色堅牢度、加
熱黄変性は、下記の方法により測定または評価した。 【0036】末端封止率:1H−NMR(500MH
z,重水素化トリフルオロ酢酸中、50℃で測定)を用
い、各末端基ごとの特性シグナルの積分値よりカルボキ
シル基末端、アミノ基末端および封止末端の数をそれぞ
れ測定し、前記の式(1)から末端封止率を求めた。測
定に用いた代表的なシグナルの化学シフト値を以下に示
す。 【0037】 【表1】 【0038】極限粘度[η]:濃硫酸中、30℃にて、
0.05,0.1,0.2,0.4g/dlの濃度の試
料の固有粘度(ηinh )を測定し、これを濃度0に外挿
した値を極限粘度[η]とした。 ηinh =[ln(t1/t0)]/c 〔式中、ηinh は固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の
流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、c
は溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕 【0039】紡糸性:紡糸状態を下記の基準によって評
価した。 ○:良好に紡糸できる。 △:気泡が混入し、断糸する。 ×:巻き取りできない。 【0040】複屈折:光学顕微鏡でベレックコンペンセ
ーターを用い、589nmの単色光でレーターデーショ
ンを測定することで求めた。 【0041】強度、弾性率:JIS L 1013に準
じて測定した。 【0042】耐薬品性:延伸糸を、70℃の各種薬品
(10%塩酸、10%硫酸、10%水酸化ナトリウム水
溶液、10%アンモニア水溶液)中に、下記の表3、表
4に記載した時間浸漬した。処理前後の強度を測定し、
強度の保持率(%)を求めた。 【0043】吸水率:延伸糸約2gを真空乾燥機にて乾
燥(60℃で6時間)した後に、調湿されたデシケータ
ー(95%RH)中に1週間放置した。調湿前後の重量
変化を測定し、下式により吸水率を算出した。 吸水率(%)=[(w−w1)/w1]×100 〔式中、wは調湿後の試料重量(g)、w1は絶乾時の
試料重量(g)を表す。〕 【0044】染色堅牢度:筒編みした試験布片を、リラ
ックス処理(1g/L濃度のアクチノールR-100溶液中
20分間煮沸)し、次いでプレセット(P/S)処理
(PA9T、PA9MT、PA66IT、PETの場合
は180℃で1分間処理、PA66の場合は170℃で
1分間処理、PA6の場合は160℃で1分間処理)
し、分散染料または酸性染料で染色した後に、ファイナ
ルセット(F/S)処理(PA9T、PA9MT、PA
66IT、PETの場合は170℃で1分間処理、PA
66、PA6の場合は160℃で1分間処理)を行っ
た。染色条件は以下の通り。 (分散染料を使用する場合) 染色組成:Sumikaron Red S-BL(住友化学社製) 3%owf Disper TL(明成化学工業製) 1g/L 酢酸 0.5cc/L 染色処理:130℃で40分間 (酸性染料を使用する場合) 染色組成:Kayanol Milling Blue GW(日本化薬製) 3%owf 酢酸アンモニウム 5%owf 酢酸 1%owf 染色処理:100℃で40分間 上記の染色条件に染色した繊維の染色堅牢度を、洗濯堅
牢度および耐光堅牢度により評価した。洗濯堅牢度はJ
IS L 0844のA−2法に従って50℃の条件で
評価した。耐光堅牢度はJIS L 0842に従っ
て、耐光カーボンフェード、ブラックパネル温度63℃
の条件で評価した。 【0045】加熱黄変性:上記、プレセット(P/S)
処理後の試料布片を使用して、乾熱処理(200℃、5
分間)における色調変化を、黄色度(b値)を測定する
ことによって評価した。黄色度(b値)は、カラーコン
ピューター(スガ試験機(株)製、SMカラーコンピュ
ーター、SM3型)により反射法で測定した。 【0046】参考例1〜9 下記の表2に記載した量のテレフタル酸、1,9−ノナ
ンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、
安息香酸、次亜リン酸ナトリウム一水和物(原料に対し
て0.1重量%)および蒸留水2.2リットルを内容積
20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。
100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を2
10℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg
/cm2まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた
後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度
を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2
に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧を10
kg/cm2まで下げ、更に1時間反応させてプレポリ
マーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥
し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230
℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合すること
によりポリアミドを得た。得られたポリアミドの末端封
止率、極限粘度[η]を併せて下記の表2に示す。 【0047】 【表2】【0048】実施例1〜5、比較例1〜2および参考例
10〜11 (株)島津製作所製フローテスター(CFT―500
型)(口金:0.3mmφ)を用いて、参考例1〜9で
得られたポリアミドを、下記の表3に示す紡糸温度で、
吐出速度と巻取速度の比(ドラフト比)が15前後とな
るような条件下で紡糸することにより、モノフィラメン
トを製造した。これを引き続き、200℃で最大延伸倍
率の0.9〜0.95倍で延伸を行った。ここで、最大
延伸倍率とは、第1ローラー速度を50m/minに固
定し、第2ローラー速度を調節して5分間断糸しなかっ
た場合の、糸の延伸倍率のことである。得られた繊維に
ついて評価した結果を下記の表3に示す。 【0049】 【表3】【0050】実施例6〜7および参考例12 参考例1、2、4で得られたポリアミドを、押出機を用
いて下記の表4に示す紡糸温度で溶融押出し、0.2m
mφ×24ホールの丸孔ノズルから吐出し、吐出速度と
巻取速度の比(ドラフト比)が10〜50の間になるよ
うに、吐出速度及び巻取速度を調節し、巻取速度500
〜2000m/分の範囲で巻取った。ついで、130℃
のホットローラー、200℃のホットプレートを用い、
75デニール/24フィラメントのマルチフィラメント
を得た。延伸倍率は最大延伸倍率の0.8倍で行った。
得られた繊維について、評価した結果を下記の表4に示
す。 【0051】比較例3 ポリアミドの原料として、テレフタル酸2159.8g
(13.0モル)、イソフタル酸830.7g(5.0
モル)、アジピン酸292.3g(2.0モル)、1,
6−ヘキサンジアミン2324.2g(20.0モ
ル)、安息香酸24.43g(0.2モル)、次亜リン
酸ナトリウム一水和物6.5g、蒸留水6リットルを使
用する以外は参考例1〜9と同様にしてポリアミドを製
造し、末端封止率40%、極限粘度[η]が1.0dl
/gのポリアミド(PA66ITと称する)が得られ
た。得られたPA66ITを用いて、実施例8〜10と
同様にしてマルチフィラメントを製造した。得られた繊
維について評価した結果を下記の表4に併せて示す。 【0052】比較例4 ナイロン6(濃硫酸中、30℃での極限粘度[η]:
1.3dl/g)を用いて、実施例8〜10と同様にし
てマルチフィラメントを製造した。得られた繊維につい
て評価した結果を下記の表4に併せて示す。 【0053】比較例5 ナイロン66(濃硫酸中、30℃での極限粘度[η]:
1.4dl/g)を用いて、実施例8〜10と同様にし
てマルチフィラメントを製造した。得られた繊維につい
て評価した結果を下記の表4に併せて示す。 【0054】比較例6 ポリエチレンテレフタレート樹脂(フェノール/テトラ
クロロエタン=1/1の混合溶媒中、30℃での極限粘
度[η]:0.65dl/g)を使用して、押出機によ
り溶融押出し、295℃で0.25φ×24ホールの丸
孔ノズルから吐出し、100m/minで巻取った。つ
いで、80℃のホットローラー、120℃のホットプレ
ートを用い500m/minの速度で延伸を行い、75
デニール/24フィラメントのマルチフィラメントを得
た。得られた繊維について評価した結果を下記の表4に
併せて示す。 【0055】 【表4】【0056】 【発明の効果】本発明のポリアミド繊維は、高強力、高
モジュラスで、かつ耐熱性、耐水性、耐薬品性、耐加熱
黄変性、染色堅牢性などの諸特性にも優れており、タイ
ヤ類、ベルト類、ホース類、ターポリンなどのゴム製品
の補強用材料、重布類、ロープ類、網類などの産業資材
用途のほか、衣料用途、カーペット用途などに好適に使
用することができる。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ジカルボン酸単位の60〜100モル%
がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜1
00モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2−メ
チル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ
1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オ
クタンジアミン単位のモル比が40:60〜99:1で
あるポリアミドであって、濃硫酸中30℃で測定した極
限粘度[η]が0.6〜2.0dl/gであるポリアミ
ドからなる繊維。
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JP15772795A JP3481729B2 (ja) | 1995-06-23 | 1995-06-23 | ポリアミド繊維 |
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- 1995-06-23 JP JP15772795A patent/JP3481729B2/ja not_active Expired - Lifetime
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