JP4723699B2 - 温度履歴表示材料とその製法並びに該温度履歴表示材料を用いた温度履歴表示方法及びその装置 - Google Patents

温度履歴表示材料とその製法並びに該温度履歴表示材料を用いた温度履歴表示方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は感熱記録材料からなる発色成分と消色成分とを有する材料であり、発色成分により形成された発色部域を所望の手段で消色が開始され、経時後の消色状態によって、該材料と共に置かれた被検物の温度履歴を表示する温度履歴表示材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、食品業界、流通業界、医薬品業界等においては、物品等に製造年月日、賞味期限、有効期限、保存温度等を記載することが通常である。しかし、経時した物品は実際はどのような保持温度を経てきたかは不明である。即ち、必らずしもその指定保存温度の下に保持されてきたとは限らず、一時期それより高い温度で保持されてきているかもしれないし、逆に保存温度より低い温度(冷蔵又は冷凍温度)で保存されているかもしれない。物品は高い温度で保持されていれば腐っているかもしれないし、冷蔵されていればその分更に賞味期間が伸びるかもしれない。このためこれらの温度履歴を簡便に表示する手段が求められてきた。
【0003】
従来、色の変化又は濃度変化によって温度履歴などを表示する材料としては、(1)浸透材の毛細管現象を利用したものが知られている(例えば特開昭50−60262号、特開昭61−53531号)。特開昭50−60262号は濾紙のような浸透材と着色液体とからなり、液体状態にある着色液体溜りを加圧で破り浸透を開始せしめ所望の領域での発色を起こさせるか、又は所望の領域に付着させておいた顕色剤で発色液体中の発色体と反応させ発色させることにより表示するものである。発色液体が所定温度以上では液体となり、所定温度以下では固体又は半固体となり浸透が止まるため、所定温度以上に何時間保持されたかの温度履歴を表示することができる。
一方、特開昭61−53531号は、上記の浸透材と着色物と検知剤とからなり、液体状態にある検知剤の溜りを加圧で破り以後検知剤を浸透させ、検知剤中の消色剤により該着色物を消色するものである。消色剤は所定温度以上では液体であり、所定温度以下では固体又は半固体であり透過しないため、所定温度以上の温度履歴を表示できるのは特開昭50−60262号の例と同様である。
【0004】
また、(2)100℃前後の温度で数十時間の範囲をピンクからメタリックグリーンへの変化等で表示する共晶アセチレン系混合物を用いたもの(米国特許第4,189,399号、米国特許第4,208,186号、米国特許第4,276,190号)、(3)室温温度で数十日の範囲で無色から紫に変色する染料と酸あるいはアルカリの拡散による反応を用いたもの、(米国特許第4,212,153号)、(4)レドックス染料酸素拡散性を用いたもの(米国特許第3,786,976号)、(5)緑が退色することで表示する遊離ラジカル感受性染料と過酸化物の組成物を用いたもの(米国特許第3,966,414号)、(6)使用温度で熱的に破壊されないマイクロカプセルに発色剤と所定温度で溶融するワックスを内包し、該マイクロカプセルを外圧により破壊するとともに変色剤と接触し着色することを利用したもの(特開昭60−55235号)、(7)還元剤で脱色したトリアリールメタン染料が酸素の拡散によって着色することを利用したもの(特開昭62−190447号)、(8)酸を生成する微生物とpH表示薬を用いたもの(特開平5−61917号)、(9)ラジカル発生剤と色素あるいは色素前駆体とを接触させることによって着色することを利用したもの(特開平9−96572号)等がある。その他、融点、拡散速度、酵素活性などを利用した特許が開示されている。
【0005】
また、(10)特開平7−253482号には、発色状態の発色剤層の上に変色剤層を積層したものが提案されているが、この技術は前述の特開昭60−55235号と同様に、依拠する消色の原理が単に常温液体の変色剤のマイグレーションによるものであり、同様の欠点を有し、また本発明とは基本的に異なる。また、変色の契機が製造時または発色部材と消色部材の密着時であり、任意の時点に契機を起こすことができない。また、可塑剤を変色剤として用いることが開示されているが、常温液体の可塑剤を前提としたものであるため、変色の契機が製造時または発色部材と消色部材の密着時となり、発明者自身も明らかにしているように常温固体の可塑剤ではマイグレーションが起こらず発明を達成することができない。
【0006】
さらに、(11)特開平7−260955号には、同じく発色剤層の上にマイクロカプセルに内包した変色剤からなる変色剤層を積層したものが提案されているが、マイクロカプセルに内包されてはいるが特開平7−253482号と同様に単に常温液体の変色剤のマイグレーションに依拠したものであり同様のことが言える。また、変色の契機が製造後ではあるが爪等の加圧によるものであり、簡便に行なえない、加圧領域がブロック状となり画像様でないと言う欠点を有する。また、特開平7−253482号と同様に可塑剤を変色剤として用いることが開示されているが、常温固体の可塑剤では発明が達成できないのは同様である。
【0007】
これらをまとめると、従来の温度履歴表示材料は発色反応の反応時間によるもの、染料、顕色剤又は消色剤の溶融・非溶融現象によるものであり、過冷却現象を用いたものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、これまで色々な表示材料が提案されているにもかかわらず、これらが広く普及しない理由としては、任意の部分を選択的に消色を起こさせることができない為に、温度履歴表示材料の温度履歴をバーコードのスキャナ等による機械的又は視覚的に直接判断するのが難しいことによるものと考えられる。加えて、従来の表示材料には1)所定温度上下での液体−固体の状態変化を利用しているため、使用できる材料が限られ、自由な温度に所定温度を制御・設定できない、2)保存時所定温度以上では液体状態であり、取扱いが不便、3)液体状態にある消色成分を小袋に収納するという困難な工程を要する、4)発色・消色の契機が加圧等によるため簡便に行なえない、5)表示簡所が部域(ブロック)であり、画像様でない、6)ラジカル発生剤を用いる場合は暗所で保存・保持しなければならない、7)途中所定温度より高い又は低い温度に保持されても表示の程度が変わらない等の問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的は物品が保存された温度履歴を簡便に表示する、表示材料を提供することである。本発明によれば、ドット状又はパターン状に加熱することにより、任意の部分を選択的に消色することができ、バーコード等の電子変換情報、又は文字や絵や記号等の視覚情報を任意に加熱印字し消色させることができる。即ち、バーコード等を印字することにより温度履歴を機械的に検知し電子情報として判断することができ、また文字や絵や記号等を印字することにより、温度履歴を視覚的に直接判断することが容易となる。前記のドット状又はパターン状に加熱する手段としてはサーマルヘッドやパターン状加熱部材等が考えられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0010】
更に言えば、本発明は1)所定温度を自由に簡易に設定でき、2)保存時、仮に所定温度以上になっても固体状態を維持し取扱いが容易で、3)液体状態にある消色成分を小袋に収納するという困難な工程を必要とせずに、物品が保存された温度履歴を簡便に表示でき、4)消色開始の契機が簡便に可能で、5)表示情報を画像様(文字、画像情報)に形成することが可能で、6)暗所保存・保持する必要のない途中所定温度より高く又は低く保持されても消色の程度がそれに応じて変わる温度履歴表示材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の温度履歴表示材料は、少なくとも発色成分と消色成分からなる温度履歴表示材料において、該発色成分が少なくとも電子供与性染料と電子受容性化合物とからなり、該消色成分が少なくとも消色剤からなり、且つ該消色成分がドット状又はパターン状に加熱されることによって消色が開始されることを特徴とするものである。
【0012】
特に本発明者らは、発色成分と消色成分とから成り、消色成分が一旦溶融された後は、過冷却液体状態を保つ材料から成る表示材料により上記目的が達成されることを見出した。本発明で言う「過冷却液体状態」とは一般に知られているように、一旦単独又は他の物質と溶融した後は温度が融点以下に下がっても、依然液体状態を保つ性質を言う。また本発明で言う「過冷却物質」とは、一般に言う常温で固体の過冷却物質のことをいうが、特に、5℃/分の昇温速度でその物質の融点より20℃高い温度まで加熱し、完全に溶解した後、5℃/分の降温速度でその物質の融点より10℃低い温度まで冷却した時結晶化しない物質を過冷却物質という。過冷却物質は他の成分が存在しても単独時と同様に過冷却液体状態を取り得る。
【0013】
過冷却液体状態は過冷却物質単独又は他の物質との混合物に対して以下のようにして確認できる。すなわち、熱的物性を測定する装置で分析することにより過冷却性物質に起因する挙動が観測される。例えば、示差走査熱量分析(DSC)装置を用いて過冷却物質を分析すると、昇温過程において融点近傍で固相から液相に相変化するときの潜熱が吸熱ピークとして見られるが、昇温過程後、冷却過程において液相から固相に戻る際の潜熱に相当する発熱ピークが融点(凝固点)近傍で観察されず、室温(20℃)付近まで冷却しても液相であり続ける。すなわち過冷却物質は溶融後、再び融点で固相に戻らず、液相で準安定状態となり過冷却液体状態を有している。この準安定状態は外部からの刺激、時間的経過等の要因が加わるまで継続される。但し、昇温または冷却過程の条件を非常に緩やかな温度変化として与えた場合、前述の限りではないが、通常の一般的な測定条件であれば、過冷却現象は十分観測できる。前述の過冷却物質と他の物質との混合物であってもDSCで測定すると同様の測定結果が得られる。
【0014】
この現象を染料、顕色剤又は消色剤の溶融/非溶融現象を用いるものとの差を従来の技術▲1▼の特開昭61−53531号を例にとって説明する。
溶融/非溶融現象を利用したものは、基本的には1/0(イチゼロ)的な検知方法である。溶融/非溶融の2状態のみを取り、そのどちらにあるかだけが問題であり、温度の値には依らない。また、浸透と組み合わされるが、浸透自体は温度の影響は比較的小さいため、全体として温度の影響を受け難い検知方法である。
後述の図2の温度サイクルS1、S2、S3での差は小さく、温度に関係なく融点以上にあったかどうかが検出され、要は、融点(所定温度)以上にあった時間t1、t3、t5のみが積算される。所定温度は図2の融点である。特開昭61−53531号の温度履歴表示材料の特徴は、途中の温度に依らない、言い換えると所定温度の上か下かを正確に積算できることが特長である。
【0015】
一方、本発明は過冷却現象に基づいており、図1の消色曲線をスタートとしている。所定温度は図1のT1、T2である。前記の方法に比べ、途中の温度による影響が大きく、表示・積算の前提として、保存温度がほぼ一定であることを想定している。途中ガラス転移温度以下に保持された、即ち消色が止まる温度に保持された場合はその間は消色が止まっているため構わない(積算されない)。
以後、構造が凍結される過冷却物質のガラス転移温度以上に置かれれば、過冷却液体状態が復活し、消色が続行され、時間の積算が続行される。また、T1より高い温度T2に保持されると食品の痛みは早くなるが、図1でも分かるように消色限界は早くなりある程度は対応できる。但し、どのような温度に保持されても正確に食品の痛み具合に合致させられる迄には至っていない。
【0016】
従来の技術(6)特開昭60−55235号との差異は、該技術(6)が溶融/非溶融現象を使っていることと、消色の開始が、加圧による熱的には破壊されないカプセルの破壊に依っていることである。溶融/非溶融より本発明が優れる点は前述した。加圧による開始は、ブロック形状での加圧であり、画像様の加圧は困難である。
【0017】
本発明によれば、第一に、少なくとも発色成分と消色成分からなる、温度履歴表示材料において、該発色成分が少なくとも電子供与性染料と電子受容性化合物とからなり、該消色成分が主体として消色剤と過冷却物質としてのフェニルプロピオン酸エステル類とからなり、且つ該消色成分がドット状又はパターン状に加熱されることによって消色が開始されることを特徴とする温度履歴表示材料が提供される。
【0018】
第二に、過冷却物質が、それ自体は過冷却性のない消色剤と併用して過冷却性を付与するフェニルプロピオン酸エステル類である上記第一に記載の温度履歴表示材料が提供される。
【0019】
第三に、フェニルプロピオン酸エステル類が、(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル、(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、及びビス−3−(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸トリエチレングリコールから選択される少なくとも1種である上記第一又は二に記載の温度履歴表示材料が提供される。
【0020】
第四に、電子供与性染料が1種もしくは2種以上の電子供与性染料からなることを特徴とする上記第一〜三のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0021】
第五に、電子供与性染料が1種もしくは2種以上の電子供与性染料と顔料からなることを特徴とする上記第一〜四のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0022】
第六に、消色剤が常温固体の可塑剤であることを特徴とする上記第一〜五のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0023】
第七に、常温固体の可塑剤の融点が40〜150℃であることを特徴とする上記第六の温度履歴表示材料が提供される。
【0024】
第八に、支持体上に、少なくとも発色成分からなる発色層、消色成分からなる消色層を随意順序で積層したことを特徴とする上記第一〜六のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0025】
第九に、支持体上に、少なくとも発色成分からなる発色層、消色成分からなる消色層を随意順序で積層し、発色層と消色層の間にバリアー層を有することを特徴とする上記第一〜六のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0026】
第十に、支持体上に、少なくともイ)発色成分、ロ)マイクロカプセル中に包含せしめた消色成分からなる発色・消色層を有することを特徴とする上記第一〜六のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0027】
第十一に、表層に保護層を有することを特徴とする上記第一〜十のいずれかの温度履歴表示材料が提供される。
【0028】
第十二に、支持体と発色層との間にまたは支持体と消色層との間にアンダー層を有することを特徴とする上記第8又は9の温度履歴表示材料が提供される。
【0029】
第十三に、アンダー層が主成分として熱可塑性樹脂を殻とする中空率30%以上の微小中空粒子からなることを特徴とする上記第十二の温度履歴表示材料が提供される。
【0030】
第十四に、支持体の発色層、消色層とは反対面に粘着剤層を有することを特徴とする上記第8又は9の温度履歴表示材料が提供される。
【0031】
第十五に、支持体と粘着剤層の間にバック層を有することを特徴とする上記第十四の温度履歴表示材料が提供される。
【0032】
また本発明によれば、第十六に、上記第一〜十五のいずれかの温度履歴表示材料を用い、サーマルヘッドまたはパターン状加熱部材により画像様に加熱発色させると同時に、消色剤と過冷却物質としてのフェニルプロピオン酸エステル類を溶融させ該発色画像の消色を開始させた該温度履歴表示材料とともに被検物を温度環境下に置き、時間経過後の該温度履歴表示材料の消色状態により該被検物の温度履歴を表示することを特徴とする温度履歴表示方法が提供される。
【0033】
第十七に、予め所望画面域全面を発色させた上記第一〜十五のいずれかに記載の温度履歴表示材料を用い、サーマルヘッドまたはパターン状加熱部材により画像様に加熱させ、消色剤と過冷却物質としてのフェニルプロピオン酸エステル類を溶融させ該加熱画像の消色を開始させた該温度履歴表示材料とともに被検物を温度環境下に置き、時間経過後の該温度履歴表示材料の背景に対して浮かび上がった該画像の消色状態により被検物温度履歴を表示することを特徴とする温度履歴表示方法が提供される。
【0034】
第十八に、消色状態を画像濃度変化または色の変化としてスキャナーで光学的に読み取り被検物の温度履歴を管理することを特徴とする上記第十六又は第十七の温度履歴を管理することを特徴とする請求項15又は16記載の温度履歴表示方法が提供される。
【0035】
第十九に、支持体上にアンダー層を塗設し、発色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して発色層を設け、バリアー層を塗設し、消色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して消色層を塗設し、保護層を塗設することを特徴とする上記第八、九、十一又は十二の温度履歴表示材料の製造方法が提供される。
【0036】
第二十に、支持体上にアンダー層を塗設し、消色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して消色層を設け、バリアー層を塗設し、発色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して発色層を塗設し、保護層を塗設することを特徴とする上記第八、九、十一又は十二の温度履歴表示材料の製造方法が提供される。
【0037】
第二十一に、支持体上にアンダー層を塗設し、発色成分とマイクロカプセルに包含された消色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して発色・消色層を設け、保護層を塗設することを特徴とする上記第十一又は十二の温度履歴表示材料の製造方法が提供される。
【0038】
第二十二に、発色層塗設時熱乾燥することにより予め該発色層又は発色・消色層を発色させた後、以降の層を塗設することを特徴とす上記第十九〜二十一のいずれかの温度履歴表示材料の製造方法が提供される。
【0039】
第二十三に、発色層を塗設してからこれに有機溶剤を塗布することにより予め該発色層又は発色・消色層を発色させた後、以降の層を塗設することを特徴とする上記第十九〜二十一のいずれかの温度履歴表示材料の製造方法が提供される。
【0040】
第二十四に、少なくとも発色成分と消色成分からなる温度履歴表示材料と、ドット状またはパターン状に加熱して消色を開始させる加熱手段としてのサーマルヘッドとを主体としてなることを特徴とする温度履歴表示材料の消色開始装置が提供される。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は少なくとも発色成分と消色成分からなる温度履歴表示材料において、該発色成分が少なくとも電子供与性染料と電子受容性化合物とからなり、該消色成分が少なくとも消色剤からなり、且つ該消色成分がドット状またはパターン状に加熱されることによって消色が開始されることを特徴としてなるが、この温度履歴表示材料によれば、その温度履歴を機械的又は視覚的に直接判断することが容易となる。
【0042】
ここで、発色成分は主に電子供与性染料と電子受容性化合物から成り、両者の加熱発色反応又は溶媒との反応を利用した感熱発色材料の技術を利用したものから成るのが望ましい。一方、消色成分は
A)発色状態にある発色成分を消色する機能、かつ、
B)一旦溶融状態迄加熱されると加熱遮断後も過冷却液体状態を保ち、以後過冷却物質のガラス転移温度以下に保持している間は構造を凍結し、過冷却物質のガラス転移温度以上に保持すると過冷却液体状態となることを繰り返す機能を有するものからなるのが望ましい。
上記B)機能はA)機能を有する消色剤自身が兼ね備えていてもよいし、A)の消色剤とB)の過冷却物質とから成っていてもよい。
過冷却液体状態下で過冷却物質のガラス転移温度以下に保持されると構造が凍結され、アモルファス状態となり(消色作用は実質的に停止する)、再び過冷却物質のガラス転移温度以上に昇温されると過冷却液体状態に復帰する。
【0043】
本発明の温度履歴表示材料は、支持体上に主に電子供与性染料と電子受容性化合物を主成分とする発色成分から成る発色層を設け、その上に消色成分から成る消色層を設けたものである。順序は支持体−消色層−発色層の順であってもよい。また、前記層に加え、後述のようにアンダー層、保護層を有していてもよい。また、消色過程を制御するものとして、発色層と消色層との間にバリアー層を設けてもよい。図4に全ての層を有する温度履歴表示材料の構成を示した。この中には必ずしも必要でないものも含む。
【0044】
あるいは、支持体上に主に電子供与性染料と電子受容性化合物から成る発色成分と熱で開包されるマイクロカプセル中に包含せしめた消色成分から成る発色・消色層を設けてもよい。また、消色成分に代えて、電子供与性染料又は電子受容性化合物のいずれかを熱で開包されるマイクロカプセルに内包させてもよい。
該熱で開包されるマイクロカプセルは加熱により破壊されてもよいし、あるいは加熱により溶融された消色成分が浸透し、拡散してもよい。
【0045】
本発明の温度履歴表示材料の次に作用を説明する。まず、上記温度履歴表示材料を作製し、サーマルヘッド等の加熱手段により、画像様に物品の表示情報、例えば、賞味可、可、OK、NG等の情報を印字記録する。この情報をもつ表示材料(形態は例えばラベル)を被検物に直接又は包装体に貼り付け任意の温度に保持する。
過冷却物質のガラス転移温度以上の環境下では、後述のように過冷却液体状態となり、消色剤はわずかずつ層方向に浸透拡散し、発色された発色成分に到達し、消色を進める。消色速度を所望の速度に合わせるため、発色層と消色層との間にバリアー層を設け制御することもできる。バリアー層存在下では、バリアー層を経て消色剤が発色層に浸透・拡散することにより消色がバリアー層がないものより遅く進む。途中、ガラス転移温度以下の温度環境下に置かれると、構造は凍結され、実質的に消色が止まる。
その後再び過冷却物質のガラス転移温度以上に保持されると、過冷却液体状態が復活し、消色が進む。これを繰り返す。くり返しは無限に続く訳でなく、準安定な過冷却状態が失われる限界期間迄続く。その前に、被検物の保存限界(消色限界)を迎えるように設定される。
【0046】
次に、所定温度の設定法、実際の使用状態について説明する。
図1は、本発明の各種表示材料について発色濃度の時間変化を模式的に示したものである。パラメーターは所定温度(この場合は一定)である。点線が消色したとみなす濃度レベル:消色レベルである。T1、T2は過冷却物質のガラス転移温度以上の温度(T1<T2)、T0は過冷却物質のガラス転移温度である。T1、T2では消色が連続的に起こり、T0では消色は止まる。
【0047】
いま、ある食品Aの保存限界が20℃48時間であるとして、規定される保存温度も20℃とする。T1=20℃とすると、消色のカーブからta=48時間となるT1のカーブを有する表示材料を設計し用いる。この場合は途中過冷却液体状態を停止させず、連続して、所定温度下に置いた場合である。48時間経過後画像は消える。(例えば「賞味可」という画像が消える。)たまたま、20℃より高いT2の温度である期間保持されたとすると、曲線T1よりより早いtbで消色するので問題はない。温度T1より高い温度では、より早く消色時間に到達する。T1を越える温度が高い程消色・時間が早まるが、その早まりの程度が食品のいたみ具合と完全に一致させることまでは困難である。
【0048】
図2のS1のような温度サイクルで保存したとすると、T0が過冷却物質のガラス転移温度で、それ以下のt2、t4の期間では構造が凍結されるため消色が止まり、図3のS1の曲線のような消色曲線となり、消色が進む実効的な時間t1+t3+t5で図1の消色曲線と同等となり実際は時間tcで消色限界を迎える。それに対し温度サイクルS2では図3のS2の曲線となり、tcより早いtdで消色限界を迎える。より高い温度で保持されているので程度は別として食品の保存限界が早くなることと対応する。
温度サイクルS1とS2の間の温度サイクルS3(点線)では図3のS1とS2の曲線の間で変わり、消色限界もtcとtdの間にくる。
【0049】
以上を先程の食品Aに当てはめてみると、T1が20℃、T0が0℃とすると、途中冷蔵庫(0℃以下とする)に保管されていた時間は賞味期限が伸び、実効的に20℃で保持されてきたtcの時点で賞味期限が切れる。途中所定温度20℃より高い温度T2で保存されると、より早く、tdで賞味期限が切れることになる。
【0050】
なお、以上は画像の濃度の変化により表示する例であったが、画像の色の変化により表示する例を説明する。
以上は発色成分の非発色時の色が白色又は透明の場合であったが、発色成分に顔料を含有させ、発色層自身に元々色を持たせてもよい。このような材料を用いて画像印字すると、顔料による色は熱に感応しないため、画像部の色は「発色層の元々の色+発色の色」となり、背景部は発色層の元々の色であり、より視認性が良くなる。画像部が背景部と同じ色になった時に消色と判断される。
【0051】
なお、以上は表示情報が消失する(例えば「賞味可」)場合について述べたが、予め全面加熱もしくは溶剤の塗布又は溶剤で分散させた塗液を塗工することにより全面を発色させておき、表示部のみ加熱し、消色を開始させ、消色限界で反転像で例えば「NG」と表示してもよい。その場合、加熱時消色と同時に印字(発色)も同時に行なわれるが、印字部(発色部)は既に発色しており目立たない。また、発色層に熱に感応しない顔料を含有させておき、「NG」が消色した時に顔料の色を呈色させ「顔料の色+発色層の色」の背景との色差により表示してもよい。また、支持体(紙)を着色させておき発色層を非発色状態で透明に発色状態で紙と別の色に発色するようにしておき、上記「NG」の画像を紙の地色に、背景を紙の地色+発色層の色に発色させその色差により表示してもよい。
【0052】
上記の説明から容易に推案されるように、本発明の表示材料は下記(1)〜(7)の利点乃至効果を有する。
1)所定温度を自由に簡単に設定できる。(従来は溶融/非溶融の融点に所定温度を合わせる必要があったが、本発明では材料処方、構成条件により、T1のカーブを作ればよいだけである。)
2)保存時仮に所定温度以上になっても固体状態を維持し、取扱いが容易である。
3)液体状態にある消色成分を小袋に収納するという困難な工程を必要としない。
4)発色、消色の契機がサーマルヘッドで簡便に行なえる。
5)画像様に形成できる。(どのような情報でも自由に形成できる。)
6)暗所での保存・保持に限定されない。
7)途中所定温度より高く又は低く保持されてもそれに応じて消色状態が変わる。
【0053】
本発明によれば、例えば供給者、品質管理者、流通者、消費者等が物品に添付した温度履歴表示材料の消色状態を見て物品の鮮度、賞味期限、有効期限を客観的に判断する、或は温度履歴表示材料に物品の品質に対する注意を喚起するような情報化された絵や文字などを適宜、任意の位置にサーマルプリンターを用いて印字し消色させることが可能であり、これらはこれまでに提案されている温度履歴表示材料との重大な相違点である。
【0054】
本発明の発色層において用いられる電子供与性染料としてはロイコ染料が単独又は2種以上混合して適用される。このようなロイコ染料としては、この種の感熱材料に適用されているものが任意に適用され、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。このようなロイコ染料の具体例としては、例えば、以下に示すようなものが挙げられる。
【0055】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、
3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、
3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、
3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、
3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、
【0056】
3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
2−〔N−(3′−トリフルオルメチルフェニル)アミノ〕−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−〔3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム〕、
【0057】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、
3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、
3−N−メチル−N−n−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、
ベンゾイルロイコメチレンブルー、
6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノースピロピラン、
6′−ブロモ−3′−メトキシ−ベンゾインドリノースピロピラン、
【0058】
3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−クロルフェニル)フタリド、
3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−ニトロフェニル)フタリド、
3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジエチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−メチルフェニル)フタリド、
3−(2′−メトキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−ヒドロキシ−4′−クロル−5′−メチルフェニル)フタリド、
3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、
3−ピロリジノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、
3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、
3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、
3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、
【0059】
2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、
3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、
3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4′−ブロモフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4′,5′−ベンゾフルオラン、
3−N−メチル−N−イソプロピル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2′,4′−ジメチルアニリノ)フルオラン等。
【0060】
また、本発明の発色層で用いる電子受容性化合物(顕色剤)としては、前記ロイコ染料を接触時発色させる電子受容性の種々の化合物(酸化剤を含む)等が適用される。このようなものは従来公知であり、その具体例としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0061】
2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、
4,4′−イソプロピリデンジフェニール、
4,4′−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、
4,4′−セカンダリーブチリデンビスフェノール、
4,4′−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、
p−ニトロ安息香酸亜鉛、
1,3,5−トリス(4−ターシャリーブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、
2,2−(3,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、
4−〔β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ〕サリチル酸、
1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、
1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−5−オキサペンタン、
フタル酸モノベンジルエステルモノカルシウム塩、
4,4′−シクロヘキシリデンジフェノール、
4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、
2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、
4,4′−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、
【0062】
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、
4,4′−チオビス(6−ターシャリーブチル−2−メチルフェノール)、
4,4′−ジフェノールスルホン、
4−イソプロポキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、
4−ペンジロキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4′−ジフェノールスルホキシド、
p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、
p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、
プロトカテキユ酸ベンジル、
没食子酸ステアリル、
没食子酸ラウリル、
没食子酸オクチル、
1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、
N,N′−ジフェニルチオ尿素、
N,N′−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、
3,3′−ジクロロフェニルチオ尿素
サリチルアニリド、
ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、
ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、
【0063】
1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、
1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、
2,4′−ジフェノールスルホン、
2,2′−ジアリル−4,4′−ジフェノールスルホン、
3,4−ジヒドロキシフェニル−4′−メチルジフェニルスルホン、
1−アセチルオキシ−2−ナフトエ酸亜鉛、
2−アセチルオキシ−1−ナフトエ酸亜鉛、
2−アセチルオキシ−3−ナフトエ酸亜鉛、
α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、
チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、
テトラプロモビスフエノールA、
テトラプロモビスフエノールS、
4,4′−チオビス(2−メチルフェノール)、
4,4′−チオビス(2−クロロフェノール)等。
【0064】
本発明の発色層において、顕色剤の使用量は染料1重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部である。顕色剤は単独もしくは2種以上混合して適用することができ、染料についても同様に単独もしくは2種以上混合して適用することができる。2種以上の染料を用いることにより、所定温度における時間変化または温度−時間積算値をより多色で表示できるようになる。
【0065】
本発明においては、色の変化で表示する為に顔料を用いることができるが、該顔料を少なくともアンダー層、発色層、バリアー層、消色層、保護層、支持体のいずれかに添加することができる。また、本発明の顔料は有機顔料、無機顔料等があげられる。有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、ポリアゾ縮合顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクドリン系顔料、ジオキサジン顔料等をあげることができる。無機顔料としてはチタンホワイト、カドミウム系、酸化鉄系、酸化クローム系等を挙げることができる。勿論、これらに限定されるものではなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0066】
発色層に用いるバインダー樹脂として好ましいものは、分子内に水酸基又はカルボキシル基を有する樹脂である。このような樹脂としては、例えばポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール類、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂は単独又は2種以上混合して適用される。
【0067】
発色層を形成する場合には、ロイコ染料、顕色剤と共に必要に応じこの種の感熱記録材料に慣用される添加成分、例えば填料、界面活性剤、滑剤、圧力発色防止剤等を記録媒体の発色性を損なわない範囲で併用することができる。この場合、填料として例えば炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの有機系の微粉末を挙げることができ、滑剤としては、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性または石油系の各種ワックス類などが挙げられる。
【0068】
本発明において、一旦溶融状態迄加熱されると加熱遮断後も過冷却状態を保つ機能を有する過冷却物質については公知の過冷却物質が用いられる。一般に、ほとんどの過冷却物質は、一旦ガラス転移温度下に置かれても復活する繰り返し性を具備している。しかし、過冷却性の限界期間が短かいある種の過冷却物質については、繰り返しの温度サイクルを与える余裕がなく、実効的にくり返し性のないものと等価となる。
【0069】
多くの有機化合物が過冷却性を有することが知られているが、本発明において用いられる過冷却物質は本発明の温度履歴表示材料の使用する条件により選択される。すなわち対象とする被検物の保存温度、保存限界から、図1に於ける所望の曲線が選択され、それに合せた材料、構成が設計される。
【0070】
本発明において用いられる過冷却物質には、▲1▼消色機能を有する過冷却物質と、▲2▼それ自体は過冷却性のない消色剤と併用して過冷却性を付与する過冷却物質とが挙げられる。
▲1▼の消色機能を有する過冷却物質には、例えばフタル酸エステル類等が好ましく用いられる。具体的にはフタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル等が挙げられる。勿論これらに限定されるものではなく、必要に応じて2種以上を併用することができる。
▲2▼のそれ自体は過冷却性のない消色剤と併用して過冷却性を付与する過冷却物質には、消色剤に相溶性のある有機化合物が好ましい。例えばフェニルプロピオン酸エステル類等が好ましく用いられる。具体的には(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル、(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、ビス−3−(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸トリエチレングリコール等が挙げられる。勿論これらに限定されるものではなく、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0071】
他に過冷却物質として用いられるものとして固体可塑剤がある。固体可塑剤の融点は40〜150℃が好ましく、更に好ましくは融点が60〜100℃のものである。融点が40℃より低いと常温で発色層と作用する為に保存性が悪くなる。また、融点が150℃より高いとサーマルヘッドで印加したときに溶融に必要なエネルギーが不十分になる。具体的には、例えば、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、イソフタル酸ジメチル、安息香酸スクローズ、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸トリメチロールエタン、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸、トリメチロールエタン、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリトリット、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0072】
本発明において消色剤に用いられる物質については、例えば、脂肪族アミン類、アミド類、ピペリジン類、ピペラジン類、ピリジン類、イミダゾール類、イミダゾリン類、モルホリン類、グアニジン類、アミジン類、ポリエーテル類、グリコール類等が好ましく用いられる。具体的には、例えばビスフェノール類のアルキレン化合物、テレフタル酸の酸化エチレン付加物、長鎖1,2−グリコール、グリセリン脂肪酸エステル、尿素誘導体、直鎖グリコールの酸化アルキレン付加物、モルホリン誘導体、ポリエーテルおよびポリエチレングリコール誘導体、グアニジン誘導体アミン又は第4級アンモニウム塩、芳香族アミン誘導体、フタル酸ジオクチル、アヂピン酸ジオクチル等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0073】
本発明では発色層の、サーマルヘッドとのマッチング性を向上させるために、温度履歴表示材料の表層に保護層を設けることもできる。本発明で使用する保護層は表示材料の透明性、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性及びサーマルヘッドに対するヘッドマッチング性の向上のため、本発明の構成要素として重要である。本発明の保護層には水溶性樹脂や水性エマルジョン樹脂、疎水性樹脂を主体として形成された皮膜や、紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂を主体として形成された皮膜等が包含される。
【0074】
水溶性樹脂の具体例としては、例えばポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシセルロース等)、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0075】
水性エマルジョン用の樹脂または疎水性樹脂としては、例えばポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチルセルロース、エチレン/酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂とシリコンセグメントとの共重合体も好ましく用いられる。これらは単独もしくは混合して使用され、更に必要に応じて硬化剤を添加して樹脂を硬化させても良い。
【0076】
紫外線硬化樹脂は紫外線照射によって重合反応を起こし硬化して樹脂となるモノマー、オリゴマーあるいはプレポリマーであればその種類は特に限定されず、公知の種々のものが使用できる。電子線硬化樹脂も特に種類は限定されないが、特に好ましい電子線硬化樹脂としては、ポリエステルを骨格とする5官能以上の分枝状分子構造を有する電子線硬化樹脂及びシリコン変性電子線硬化樹脂を主成分としたものである。
【0077】
保護層にはヘッドマッチング性の向上のために無機又は有機フィラーや滑剤を表面の平滑性を落とさない範囲で添加することができる。本発明におけるフィラーの粒径としては0.3μm以下が好ましい。この場合の顔料としては吸油量30ml/100g以上、好ましくは80ml/100g以上の物が選択される。これらの無機又は/及び有機顔料としては、この種の感熱記録媒体に慣用される顔料中の1種又は2種以上を選択することができる。その具体例としては炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機顔料の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂などの有機顔料を挙げることができる。
【0078】
保護層の塗工方式は特に制限はなく、従来公知の方法で塗工することができる。好ましい保護層の厚さは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。保護層の厚さが薄すぎると、記録媒体の保存性や保護層としての機能が不充分であり、厚すぎると記録媒体の熱感度が低下するし、コスト的にも不利である。
【0079】
また本発明においては、支持体と発色層との間又は支持体と消色層との間にアンダー層を設けることによって、サーマルヘッドの熱のエネルギーの効率活用による発色感度の向上が可能となる。アンダー層としては、熱可塑性樹脂を殻としてなる、中空率30%以上の微小中空粒子又はポーラスな顔料を用いた非発泡性アンダー層及び発泡性フィラーを用いた発泡性アンダー層があげられるが、前者の非発泡性アンダー層であるのが望ましい。
【0080】
アンダー層に用いられる熱可塑性樹脂を殻としてなる中空率30%以上の微小中空粒子は、内部に空気その他の気体を含有するもので、既に発泡状態となっている微小中空粒子であり、この平均粒子径は2.0〜20μmのものが使用できるが、3〜10μmのものがより好ましい。この平均粒子径(粒子外径)が2.0μmよりも小さいものは、任意の中空率にするのが難しい等の生産上の問題があって、コストの面で問題があり、逆に20μmより大きいものは、塗布乾燥後の表面の平滑性が低下するため、サーマルヘッドとの密着性が低下し、ドット再現性が悪くなるとともに感度向上効果が低下する。従って、このような粒子分布は粒子径が前記範囲にあると同時に、バラツキの少ない分布スペクトラムの均一なものが望ましい。更に、本発明においてプラスチック球状中空粒子は、中空率が30%以上のものが使用できるが、50%以上のものがより好ましい。中空率が30%未満のものは断熱性が不十分なため、サーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて温度履歴表示材料の外へ放出され、発色感度向上がなされない。
【0081】
そして、ここでいう中空率とは、中空粒子の外径と内径の比であり、次式で表示されるものである。
中空率=(中空粒子の内径/中空粒子の外径)×100(%)
【0082】
本発明で用いる微小中空粒子は、前記したように熱可塑性樹脂を殻とするものであるが、この熱可塑性樹脂としては、特に塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
【0083】
また、本発明のアンダー層に用いられるポーラスな顔料としては、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の有機顔料やシラス土等の無機顔料等があるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0084】
本発明の非発泡性アンダー層を設けるには、前記の微小中空粒子やポーラスな顔料をバインダーと共に水に分散し、これを支持体上に塗布し、乾燥することによって得られる。この場合、微小中空粒子の塗布量は、支持体1m2当たり少なくとも1g、好ましくは2〜15g程度であり、またバインダー樹脂の塗布量は、アンダー層を支持体に強く結合させるような量でよく、通常は該微小中空粒子とバインダー樹脂との合計量に対して2〜50重量%である。
【0085】
非発泡性アンダー層を形成する際に使用されるバインダーとしては、従来公知の水溶性高分子及び/又は水性高分子エマルジョンから適宜選択される。その具体例としては、水溶性高分子として、例えばポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。また、水性高分子エマルジョンとしては、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックスや酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョン等が挙げられる。
【0086】
また、本発明において用いる発泡性フィラーは、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に低沸点溶媒の発泡剤を含有する中空状のプラスチックフィラーであり、加熱により発泡する。このような発泡プラスチックフィラーは従来公知であり、種々のものが適用されるが、その粒子直径に関しては、未発泡の状態の場合、2〜50μm、好ましくは5〜20μmであり、発泡状態では10〜100μm、好ましくは10〜50μmである。このプラスチックフィラーの殻となる熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいはそれらの共重合体が挙げられる。また、殻内に含まれる発泡剤としては、プロパンやブタン等が一般的である。
【0087】
支持体上に発泡性アンダー層を設けるには、前記した発泡性プラスチックフィラーを、結着剤と共に支持体上に塗布乾燥した後、その塗布面に熱板を密着させ、プラスチックフィラーを加熱発泡させればよい。プラスチックフィラーの塗布量は、支持体1m2に対し、未発泡フィラーとして、少なくとも1g、好ましくは2〜5g程度である。また、結着剤の使用量は、発泡性アンダー層を支持体に対し強く結着させるような量であればよく、通常は、未発泡フィラーと結着剤の合計量に対し、5〜50重量%である。また、加熱発泡温度は、フィラーの殻を構成する熱可塑性樹脂を軟化させる温度である。発泡倍率は、通常2〜4倍、好ましくは2〜3倍程度であり、所期の発泡を達成するように適宜選択される。
【0088】
前記のように、支持体上に形成された発泡性アンダー層の表面は、かなり凸凹が生じているために、発泡性アンダー層形成後(加熱発泡後)キャレンダー処理により表面を平滑にすることが好ましく、また、必要に応じて発泡性アンダー層の表面又は下面に1層又は複数層のアンダーコート層を設けることもできる。
【0089】
なお、本発明のアンダー層においては、前記微小中空粒子又はポーラスな顔料又は発泡性フィラー及びバインターと共に、必要に応じて、更にこの種の発色層に慣用される補助添加成分、例えば、熱可融性物質、界面活性剤等を併用することができる。
【0090】
本発明においては発色層と消色層の間にバリアー層を設けることによって、消色層に用いる消色機能を有する物質の透過力、あるいは消色能等を制御することが可能となり、バリアー層の厚み、材質を適当に変えることにより、所定温度における時間変化または時間積算値を色の変化又は濃度の変化として表示する際に、その変色速度或いは濃度変化速度を制御することが可能になる為、本発明の構成要素として重要である。本発明のバリアー層には水溶性高分子、有機系または無機系のフィラーを主体として形成された被膜等が包含される。
【0091】
本発明のバリアー層に用いる樹脂としては水溶性高分子を用いたものが特に良好であるが、成膜性のある樹脂であれば必ずしもこれらに限定されるものではなく、以下のような化合物が挙げられる。
スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョンやSBR、MBR、NBR等のラテックス及びポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びその誘導体、スチレン/アクリル酸共重合体及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミド及びそれらの誘導体、スチレン/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、アミノ基変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体及びその誘導体等の水溶性高分子樹脂など。
【0092】
また、フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂等の有機系の微粉末を挙げることができる。
【0093】
バリアー層の厚みは、消色層に用いる消色機能を有する物質の浸透力、あるいは消色能等に左右される為、特に限定するものではない。またバリアー層の厚み、材質を適当に変えることにより、温度履歴を色の変化又は濃度の変化として表示する際に、その変化の速度を制御することが可能である。
【0094】
本発明に利用し得るマイクロカプセルについては、公知のマイクロカプセル化法、公知のマイクロカプセル壁材を使用できる。マイクロカプセル化法としては、コアセルベーション法(米国特許第2800458号)、界面重合法(特公昭47−1763号)、インサイチュー重合法(特開昭51−9079号)等が使用できる。
マイクロカプセルの壁材としては、ポリウレタン、ポリ尿素、エポキシ樹脂、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂等が使用できる。
マイクロカプセルの保護剤としては、セルロース粉末、デンプン粒子、タルク、焼成カオリン、炭酸カルシウム等が使用できる。
【0095】
本発明の温度履歴表示材料はその支持体の発色層、消色層を積層した側の面またはその反対面に磁気記録層を有してもよい。
本発明に用いられる磁気記録層は磁性体と結着剤とを主成分とする従来公知の全てのものを使用することができる。
磁性体としては、例えばバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、Co−γ−Fe23、γ−Fe23等が好ましく用いられる。
結着剤としては、例えばポリビニルアルコール、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等の水性エマルジョン樹脂バインダーが好ましく用いられる。磁性体と結着剤とを主成分とする均一分散液を支持体上に塗布、乾燥して磁気記録層を形成する。この時、ワックス、各種添加剤等を添加してもよい。
【0096】
また本発明の温度履歴表示材料はその支持体上の発色層、消色層を積層した側の面の反対の面にバック層を有してもよい。
本発明に用いられるバック層は、従来公知の疎水性高分子エマルジョン及び(又は)水溶性高分子エマルジョン等の結合剤を主成分とする分散液を、発色層と消色層を設けた側の反対側の支持体上面に、塗布乾燥して設けることができる。具体的には、前述の保護層、アンダー層等に用いる結合剤を用いることができる。更に、無機または有機の顔料、無機または有機の発泡性または非発泡性フィラー、耐水化剤、ワックス、各種添加剤等を用いることができる。
【0097】
また、本発明の温度履歴表示材料は、その支持体上の発色層、消色層を積層した側の面の反対の面に粘着剤層を有してもよい。すなわち、本発明の粘着剤層は、従来公知の粘着剤を発色層と消色層を設けた側の反対側の支持体上面またはバック層上に塗布乾燥し、更に剥離紙を順次積層することができる。
粘着剤の具体例としてはポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸エステル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0098】
なお、本発明の温度履歴表示材料を有する表示ラベルの他のエリアに、通常の非可逆性又は可逆性の感熱発色層を構成し情報が記録されていてもよい。
【0099】
本発明で使用する支持体としては、特に限定されず、紙以外でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム或いはこれらを貼り合わせたフィルム等を使用するのが一般的である。
【0100】
ここで、サーマルヘッドによる温度履歴表示方法について説明する。
本発明における温度履歴表示方法において、従来より公知のサーマルヘッドまたはパターン状加熱部材を有するプリンターを用いて本発明における温度履歴表示材料に加熱印字することにより消色を開始できる。サーマルヘッドまたはパターン状加熱部材を有するプリンターを用いることにより、本発明における温度履歴表示材料に任意の時刻に、任意のエネルギーで、任意の画像様に加熱印字及び消色開始することができる。すなわち、任意の時刻に加熱印字することにより任意の時刻より温度履歴を計測することができる。
更に任意のエネルギーで加熱印字することにより任意の印字濃度に発色層を発色させることができる。すなわち温度履歴表示開始の印字濃度を任意に選択できるため、温度履歴表示終了の期間(消色限界)を任意に選択することができる。
【0101】
更に任意の画像様に加熱印字することにより、バーコード等の電子変換情報、または文字や絵や記号等の視覚情報を任意に加熱印字することができる。
すなわちバーコード等を印字することにより温度履歴を読み込ませて、機械的に検知し、電子情報として取り扱うことができる。また、検知できなかった時に消色限界として判断することができる。また文字や絵や記号等を印字することにより、温度履歴を視覚的に直接判断することができる。温度履歴を視覚的に判断する補助として温度履歴表示材料に印刷等の手段を用いて限度見本となるような段階濃度画像を事前に設けることができる。あるいは文字や絵や記号等の印字情報の変化に関する説明を印刷等により事前に設けることができる。例えば「絵が消えたら賞味できません」、「文字が浮かび上がったら賞味期限を過ぎています」というような説明を印字することができる。冷蔵輸送宅配便等の温度管理された物品に本発明の温度履歴表示材料を用いることにより、簡便に温度管理の状態を判断できる。
【0102】
次に、スキャナーで温度履歴を読み取る方法について説明する。
本発明におけるスキャナーで色の変化又は濃度の変化を光学的に読み取り被検物の温度履歴を管理する温度履歴表示方法として、従来より公知のスキャナーを用いることができる。スキャナーにより反射率の差を読み取ることで目的とする印字濃度に達しているか否かを判断することにより温度履歴及び消色限界を判断できる。またスキャナーによりバーコード等の電子情報を読み取ることにより、更に情報量を付加することができる。これらのスキャナーを用いた温度履歴表示方法は、電子情報を読み取ることと公知のバーコード管理システム等とを組み合わせることにより自動化できる。
【0103】
続いて、本発明における発色層の所望画面域全面を予め発色させた温度履歴表示材料の製造方法について説明する。
熱乾燥することにより発色層を予め発色させる場合、発色層の塗工後、通常の乾燥工程で発色層が発色する温度以上で乾燥することにより発色層を発色させることができる。乾燥する温度は電子供与性染料と電子受容性化合物、さらには助剤や顕色剤等の組み合わせにより適宜変化するので、特に温度を限定するものではない。乾燥は発色層を発色させる温度以上で、かつ過剰の熱により発色層の表面性が損なわれない温度以下であることが好ましい。全面発色部(背景部)を更に飽和の発色濃度以下の発色状態に制御し、画像印字部を背景部の濃度以上に発色させ、保持後背景部の濃度と等しくなったところで判定するか、又は背景部の濃度以下となったところで判定することもできる。上記熱乾燥を決める条件としては、温度以外に乾燥時間、熱風量、塗工物の固形分量、付着量、水分量等により決まる。
【0104】
発色させる工程は消色層塗工後でもよいが、消色層を塗工する前に行うことが好ましい。消色層を塗工後に熱乾燥による発色工程を設けると消色層に過剰の熱が加わることにより消色成分が溶融する恐れがあり、消色が開始してしまうおそれがある。すなわち発色させる工程は発色層の塗工直後でも、塗工後一定時間後でもよい。またバリアー層を設ける場合は、熱乾燥による発色工程はバリアー層の塗工前でも塗工後でもよい。
【0105】
消色層の塗工は熱乾燥による発色層の発色工程の後、連続でも非連続でもよい。非連続の場合はキャレンダー工程、またはバリアー層のキュア工程等を施すことができる。
【0106】
一方、溶剤を塗布することにより発色層を予め発色させる場合、発色層の塗工後、溶剤を塗工することにより、発色層を発色させることができる。本発明に用いられる溶剤は具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、エタノール、トルエン等が挙げられる。勿論これらに限定されるものではなく、発色層を発色させる溶剤であることが好ましい。塗工の方法は公知の塗工方法により任意に選択することができる。
予め全面発色させる他の方法としては、有機溶剤系の溶媒に分散させた発色層塗布液を塗布乾燥させる方法もある。
【0107】
図5、図6に本発明の温度履歴表示材料を用いた装置の一例を示す。図5はパターン状加熱部材を用いて加熱印字、消去する例であり、図6はサーマルヘッドを用いて加熱印字、消色する例である。これらの例では発色と同時に発色部分と同一の消色部分に消色が開始される。
【0108】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。ここでの「部」及び「%」は、特に断らない限りそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。また、各液はボールミルで粉砕分散し、含有粒子の平均粒子径を2.0μm以下とした。
【0109】
[塗布液の調整]
(A液)アンダー層塗布液
微小中空粒子分散体 30部
(固形分27.5%、平均粒子径5μm、中空率92%)
(塩化ビニリデン−アクリロニトリルを主成分とする共重合体樹脂)
スチレン/ブタジエン共重合ラテックス 10部
水 60部
を混合撹拌してアンダー層塗布液を得た。
【0110】
(B液)染料分散液
6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−
(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−
イソベンゾフラノン(CVL) 20部
ポリビニルアルコール(10%水溶液) 20部
水 60部
を混合撹拌しボールミルで粉砕分散して染料分散液(B液)を得た。なお、CVLは青色発色の染料である。
【0111】
(C液)顕色剤分散液
2,2−ビス(ヒドロキジフェニル)プロパン(BPA) 10部
ポリビニルアルコール(10%水溶液) 25部
炭酸カルシウム 15部
水 50部
を混合撹拌しボールミルで粉砕分散して顕色剤分散液(C液)を得た。
【0112】
上記(B液)と(C液)の重量比が(B液):(C液)=1:8となるように混合撹拌して発色層塗布液(D液)を得た。
【0113】
(E液)バリアー層塗布液
水酸化アルミニウム 5部
ポリビニルアルコール(10%水溶液) 50部
ポリアミドエピクロルヒドリン(10%水溶液) 20部
水 25部
を混合撹拌してバリアー層塗布液(E液)を得た。
【0114】
(F液)消色層塗布液(1)
フタル酸ジシクロヘキシル 40部
ポリビニルアルコール(10%水溶液) 12部
水 48部
を混合撹拌しボールミルで粉砕分散して消色層塗布液(1)(F液)を得た。
【0115】
(G液)消色層塗布液(2)
イソフタロイルビス(N−メチルシクロヘキシルアミド)
(消色剤) 10部
(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオン酸メチル(過冷却性物質) 20部
ポリビニルアルコール(10%水溶液) 10部
水 60部
を混合撹拌しボールミルで粉砕分散して消色層塗布液(2)(G液)を得た。
【0116】
(H液)保護層塗布液
水酸化アルミニウム 5部
ポリビニルアルコール(10%水溶液) 50部
ポリアミドエピクロルヒドリン(10%水溶液) 20部
水 25部
を混合撹拌して保護層塗布液(H液)を得た。
【0117】
(I液)顔料液
不溶性ジスアゾイェロー(35%水溶液) 15部
水 85部
を混合撹拌して顔料液(I液)を得た。
【0118】
上記顔料液(I液)と発色層塗布液(D液)とを重量比が(I液):(D液)=1:5となるように混合撹拌して発色層(含顔料)塗布液(J液)を得た。
【0119】
[塗工方法及び塗布量]
上記のようにして得られた分散液を濾過し、乾燥後の塗布量が(A液)2g/m2、(D液)5g/m2、(E液)1.5g/m2、(F液)5g/m2、(G液)5g/m2、(H液)1.5g/m2、(J液)5g/m2となるように、市販の上質紙の表面にそれぞれ任意にワイヤーバーで計量・塗布・乾燥した後、ベック平滑度が500〜1500秒以上になるようにキャレンダーがけして、温度履歴表示材料を得た。
【0120】
参考例
上質紙の表面に(D液)、(F液)をそれぞれ上記の塗布量となるように順次に塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0121】
参考例
上質紙の表面に(D液)、(E液)、(F液)をそれぞれ上記の塗布量となるように順次に塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0122】
参考例
上質紙の表面に(A液)、(D液)、(E液)、(F液)、(H液)をそれぞれ上記の塗布量となるように順次に塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0123】
実施例4
上質紙の表面に(D液)、(G液)を上記の塗布量となるように順次に塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0124】
参考例
上質紙の表面に(J液)、(F液)をそれぞれ上記の塗布量となるように順次に塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0125】
参考例
上質紙の表面に(D液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、110℃の乾燥機に2分間入れ、発色層を全面発色させ、室温に戻した。更に(F液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0126】
参考例
上質紙の表面に(D液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、メチルエチルケトンを塗工し、発色層を全面発色させた。更にその上に(F液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0127】
参考例
上質紙の表面に(J液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、110℃の乾燥機に2分間入れ、発色層を全面発色させ、室温に戻した。更にその上に(F液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0128】
比較例1
参考例1の(F液)からフタル酸ジシクロヘキシルを除いた液を塗布量5g/m2となるように塗工した以外は参考例1と同様にして温度履歴表示材料を得た。
【0129】
比較例2
実施例4の(G液)からイソフタロイルビス(N−メチルシクロヘキシルアミド)(消色剤)を除いた液を塗布量5g/m2となるように塗工し、更にその上に、(F液)を上記の塗布量となるように塗工乾燥した後、キャレンダーがけして温度履歴表示材料を得た。
【0130】
かくして得られた実施例4、参考例1〜3、参考例5〜8及び比較例1、2の温度履歴表示材料を以下の方法で評価を行った。
【0131】
実施例4、参考例1〜3、参考例5及び比較例1、2の評価方法)
温度履歴表示材料を松下電子部品(株)製の薄膜ヘッドを有する感熱記録印字実験装置にて、ヘッド電力0.45w/dot、1ライン記録時間10msec/lineの条件下で、印加パルス幅0.8msecで印字し、5℃または20℃の条件下で保管したときの印宇部の印字濃度をマクベス濃度計RD−914(マクベス社製)赤フィルター(フィルター位置の色表示:シアン)で測定した。
【0132】
参考例6〜8の評価方法)
温度履歴表示材料を松下電子部品(株)製の薄膜ヘッドを有する感熱記録印字実験装置にて、ヘッド電力0.45w/dot、1ライン記録時間10msec/lineの条件下で、印加パルス幅1.2msecで印字し、5℃または20℃の条件下で保管したときの印字部の印字濃度をマクベス濃度計RD−914(マクベス社製)赤フィルター(フィルター位置の色表示:シアン)で測定した。
【0133】
[評価結果]
参考例1で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図7に示す。5℃、20℃は図1のT1、T2に相当する温度である。いずれも速やかな消色が起っているが、20℃下の方がより速やかに消色が起っている。
【0134】
参考例2で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図8に示す。参考例1に比べ消色速度が低く、バリアー層の効果が見られた。
【0135】
参考例3で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図9に示す。濃度は僅か低下しており、消色の速度が極めて遅い。これはバリア層と保護層の両方を有するためと考えられる。また印字音が小さく、保護層の効果が見られた。
【0136】
実施例4で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図10に示す。参考例1の結果に比べ、消色効果が大きく認められる。消色剤を含まず、過冷却物質のみから成る比較例に比べ速やかな消色が認められる。
【0137】
参考例5で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図11に示す。参考例1に比べ、黄色地(顔料)に青の画像が鮮やかに現れ、視認性に優れていた。消色した後は、背景の色に近くなった。
【0138】
参考例6で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図12に示す。印字部は当初、予め全面発色された背景に近い色であったが、20℃で経時した後、例えば図22のように、青地に消色した印字部の白色(発色層の元々の色)が反転像として浮かび上がった。
【0139】
参考例7で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図13に示す。印字部は当初、予め全面発色された背景に近い色であったが、20℃で経時した後、例えば図22のように、青地に消色した印字部の白色(発色層の元々の色)が反転像として浮かび上がった。
【0140】
参考例8で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図14に示す。印字部は当初、予め全面発色された背景に近い色であったが、20℃で経時した後、例えば図22のように、青地に印字部の黄色として鮮やかな反転像として現れ、視認性に優れていた。
【0141】
続いて、参考例2で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、−20℃、20℃で一定下かもしくは、−20℃10分、20℃5分の繰り返しによる温度サイクルで該表示材料を保持し、印字濃度の変化を見たのが図15から図19までに示したものである。なお、図15から図19までの結果は図1〜3を作成した後に得られたものである。20℃は常温である。本過冷却物質のガラス転移温度は明確には把握できていないが、−20℃以上と推測される。それで−20℃を選定した。−20℃では構造は凍結され、消色は実質的に停止されると予測される。
【0142】
図15は上記温度サイクル下で保持したものである。Iでは速やかな消色が起こり、IIで消色が止まることがここで確認される。IIIで消色は再開され、本文中で詳述してきた過冷却液体状態の復活がここで証明される。あと、IV、Vと同じ消色と停止が繰り返し生起する。ここに、理論的に述べた図3が実験的に裏付けられる。図16は、図15の−20℃での消色停止期間を除外し、消色時のみの曲線をつなぎ合わせたものである。
【0143】
図17は20℃に連続して一定に保持した例であり、理論的な図1の通りの消色曲線が実証される。
【0144】
図18は、−20℃に連続して一定に保持された例であり、90分以上に渡って、全く濃度が変化していない。(消色が起っていないことが裏付けられる。)
【0145】
図19は、図15〜図18の全てを同一座標に重ねたものであり、図16と図17が良い一致を見せ、これまで述べてきた「停止期間を除けば消色の曲線は等しい曲線に乗る」ことが実験的に証明される。総括して、図19は、図2と同等となっており、総括的にも全て実験的に証明される。
【0146】
比較例1で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図20に示す。画像濃度はいずれも直後が1.48であり、1,440分後も1.48で全く変わらなかった。消色、過冷却機能を有するフタル酸ジシクロヘキシルなしでは消色は起こらない。
【0147】
比較例2で得られた温度履歴表示材料を上記の方法で印字し、5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を図21に示す。いずれの温度でも、印字濃度は保持されたままであった。過冷却機能を有する過冷却物質のみでは消色は起こらない。
【0148】
【発明の効果】
本発明は、少なくとも発色成分と消色成分からなる温度履歴表示材料において、該発色成分が少なくとも電子供与性染料と電子受容性化合物とからなり、該消色成分が少なくとも消色剤からなり、且つ該消色成分がドット状またはパターン状に加熱されることによって消色が開始される温度履歴表示材料により、下記1)〜7)のような効果がもたらされる。
1)所定温度を自由に簡単に設定できる。(従来は溶融/非溶融の融点に所定温度を合わせる必要があったが、本発明では材料処方、構成条件により、T1のカーブを作ればよいだけである。)
2)保存時仮に所定温度以上になっても固体状態を維持し、取扱いが容易である。
3)液体状態にある消色成分を小袋に収納するという困難な工程を必要としない。
4)発色、消色の契機がサーマルヘッドで簡便に行なえる。
5)画像様に形成できる。(どのような情報でも自由に形成できる。)
6)暗所での保存・保持に限定されない。
7)途中所定温度より高く又は低く保持されてもそれに応じて消色状態が変わる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の温度履歴表示材料を所定温度で用いたときの濃度と時間との関係を表した図である。
【図2】本発明の温度履歴表示材料を温度サイクルを変えて用いたときの温度と時間との関係を表した図である。
【図3】本発明の温度履歴表示材料を温度サイクルを変えて用いたときの濃度と時間との関係を表した図である。
【図4】本発明の温度履歴表示材料の一例の層構成を示した図である。
【図5】(a)は本発明の温度履歴表示材料にパターン状加熱部材を用いて加熱印字・消去する様子を表わした図であり、(b)はパターン状加熱部材の加熱パターン部を示した図である。
【図6】本発明の温度履歴表示材料にサーマルヘッドを用いて加熱印字・消去する様子を表わした図である。
【図7】実施例1の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図8】実施例2の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図9】実施例3の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図10】実施例4の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図11】実施例5の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図12】実施例6の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図13】実施例7の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図14】実施例8の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図15】(a)は実施例2の温度履歴表示材料を用い、印字後、−20℃で一定時間、20℃で一定時間の繰り返しによる温度サイクルを表わした図、(b)はこの温度サイクルで保持したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図16】図15の消色停止時間を除外して、消色時のみの曲線をつなぎ合わせた図である。
【図17】実施例2の温度履歴表示材料を用い、20℃で連続して一定に保持したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図18】実施例2の温度履歴表示材料を用い、−20℃で連続して一定に保持したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図19】図15から図18すべてを同一座標軸に重ねた図である。
【図20】比較例1の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図21】比較例2の温度履歴表示材料を5℃及び20℃で保管したときの印字濃度の変化を表わした図である。
【図22】(a)、(b)、(c)は印字部が当初全面背景に近い色であったが、経時とともに反転像として現れてくる様子を表わした図である。

Claims (21)

  1. 少なくとも発色成分と消色成分からなる、温度履歴表示材料において、該発色成分が少なくとも電子供与性染料と電子受容性化合物とからなり、該消色成分が主体として消色剤と過冷却物質としてのフェニルプロピオン酸エステル類からなり、且つ該消色成分がドット状又はパターン状に加熱されることによって消色が開始されることを特徴とする温度履歴表示材料。
  2. 過冷却物質が、それ自体は過冷却性のない消色剤と併用して過冷却性を付与するフェニルプロピオン酸エステル類である請求項1に記載の温度履歴表示材料。
  3. フェニルプロピオン酸エステル類が、(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル、(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、及びビス−3−(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸トリエチレングリコールから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の温度履歴表示材料。
  4. 電子供与性染料が1種もしくは2種以上の電子供与性染料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  5. 電子供与性染料が1種もしくは2種以上の電子供与性染料と顔料からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  6. 消色剤が常温固体の可塑剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  7. 常温固体の可塑剤の融点が40〜150℃であることを特徴とする請求項6記載の温度履歴表示材料。
  8. 支持体上に、少なくとも発色成分からなる発色層、消色成分からなる消色層を随意順序で積層したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  9. 支持体上に、少なくとも発色成分からなる発色層、消色成分からなる消色層を随意順序で積層し、発色層と消色層の間にバリアー層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  10. 支持体上に、少なくともイ)発色成分、ロ)マイクロカプセル中に包含せしめた消色成分からなる発色・消色層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  11. 表層に保護層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の温度履歴表示材料。
  12. 支持体と発色層との間にまたは支持体と消色層との間にアンダー層を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の温度履歴表示材料。
  13. アンダー層が主成分として熱可塑性樹脂を殻とする中空率30%以上の微小中空粒子からなることを特徴とする請求項12記載の温度履歴表示材料。
  14. 支持体の発色層、消色層とは反対面に粘着剤層を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の温度履歴表示材料。
  15. 支持体と粘着剤層の間にバック層を有することを特徴とする請求項14記載の温度履歴表示材料。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の温度履歴表示材料を用い、サーマルヘッドまたはパターン状加熱部材により画像様に加熱発色させ、消色剤と過冷却物質としてのフェニルプロピオン酸エステル類を溶融させ該加熱画像の消色を開始させた該温度履歴表示材料とともに被検物を温度環境下に置き、時間経過後の該温度履歴表示材料の消色状態により該被検物の温度履歴を表示することを特徴とする温度履歴表示方法。
  17. 予め所望画面域全面を発色させた請求項1〜15のいずれかに記載の温度履歴表示材料を用い、サーマルヘッドまたはパターン状加熱部材により画像様に加熱させ、消色剤と過冷却物質としてのフェニルプロピオン酸エステル類を溶融させ該加熱画像の消色を開始させた該温度履歴表示材料とともに被検物を温度環境下に置き、時間経過後の該温度履歴表示材料の背景に対して浮かび上がった該画像の消色状態により被検物温度履歴を表示することを特徴とする温度履歴表示方法。
  18. 消色状態を画像濃度変化または色の変化としてスキャナーで光学的に読み取り被検物の温度履歴を管理することを特徴とする請求項16又は17記載の温度履歴表示方法。
  19. 支持体上にアンダー層を塗設し、発色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して発色層を設け、バリアー層を塗設し、消色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して消色層を塗設し、保護層を塗設することを特徴とする請求項8、9、又は12記載の温度履歴表示材料の製造方法。
  20. 支持体上にアンダー層を塗設し、消色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して消色層を設け、バリアー層を塗設し、発色成分を含有する塗布液を塗布乾燥して発色層を塗設し、保護層を塗設することを特徴とする請求項8、9、又は12記載の温度履歴表示材料の製造方法。
  21. 少なくとも発色成分と消色成分からなる温度履歴表示材料と、ドット状またはパターン状に加熱して消色を開始させる加熱手段としてのサーマルヘッドとを主体としてなることを特徴とする温度履歴表示材料の消色開始装置。
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