JP4722406B2 - 印刷物の製造方法及びグラビア印刷システム - Google Patents

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Description

本発明は、印刷物の製造方法及びグラビア印刷システムに係り、さらに詳しくは、基材上に鱗片状顔料を含むインキを用いて印刷された印刷物を印字装置等で印字した場合において、サーマルヘッドの発熱部の保護層の磨耗を効果的に軽減させることができる印刷物の製造方法及びグラビア印刷システムに関する。
現在、定期券、乗車券、株券、商品券、入場券、宝くじ券、チケット等の有価証券が、流通され、使用されている。これらの有価証券は、いうまでもなく、高い経済価値を有するため、その偽造防止が強く要求され、偽造防止の観点から、例えば、緻密な地紋等が設けられている。
ところが、近年の印刷技術の高度化によって偽造が巧妙になっている。また、カラー複写機の著しい低価格化から、一般公衆が超高性能のカラー複写機を用いて有価証券を簡単に偽造することも可能となっている。さらに、パーソナルコンピュータ、カラープリンタ、デジタルカメラ、カラースキャナ及びコンピュータソフト等の飛躍的な性能の向上から、有価証券をカラースキャナで読み取った後、コンピュータソフトを使ってパーソナルコンピュータ上で色補正を行い、その色補正した内容をカラープリンタで出力することで、実物にかなり近い偽造品が製造できるようになっている。
従って、現在、有価証券には、より高度な偽造防止処理が要求されている。例えば、特許文献1には、半透明のフィルム上に形成された下地層の上に、鱗片状顔料の濃度が膜厚方向で異なるようにした塗工膜を有する偽造防止用印刷物及びその製造方法が開示されている。
ここで、鱗片状顔料を含むインキを印刷した印刷物は、角度を変えて観察することにより、2色の有彩色を鮮明に観察することができる。また、鱗片状顔料の膜厚方向の濃度が高い部分では、入射角度をもった入射光が多くの鱗片状顔料で反射されるので、入射角度の正反対の角度に多くの反射光が放出されると共に、干渉した光強度の強い干渉光も放出されるが、鱗片状顔料の膜厚方向の濃度が低い部分では、膜厚方向の鱗片状顔料の数は少ないので、光強度の弱い干渉光しか放出されない。従って、鱗片状顔料を含むインキを印刷した部分において干渉光の光強度に強弱が生じるため、角度を変えて観察することにより、鱗片状顔料を含むインキを印刷した印刷物とその複製物の差が肉眼でも観察できる程度となることから、カラー複写機などの複写による印刷物の偽造を防止することができると共に、偽造防止用の印刷物自体の偽造も防止することが可能となる。
一方、グラビア印刷装置を使用して基材上に光輝性印刷層を印刷する場合には、光輝性印刷層を印刷した後、溶媒を早く除去して乾燥した方が、印刷された光輝性印刷層により形成されたパターンや文字等が鮮明に再現された印刷物となり、印刷品質が安定した印刷物を提供することができる。
特開2002−103777号公報
グラビア印刷装置を使用した基材への光輝性印刷層の印刷は、基材上に直接、光輝性印刷層が印刷される場合もあるが、基材上に感熱発色層等が形成されている感熱紙上に光輝性印刷層が印刷される場合もある。
ここで、基材上に直接、光輝性印刷層が印刷される場合には、通常、光輝性印刷層の印刷時に光輝性印刷層に含まれる溶媒となる溶剤の抜けをよくするため、乾燥温度を高くするか、乾燥時間を長くしてゆっくり乾燥すれば、光輝性印刷層により形成されたパターンや文字等が鮮明に印刷により再現され、印刷品質が安定した印刷物を提供することができる。
しかしながら、乾燥時間の長い最後の印刷ユニットにおいて光輝性印刷層が印刷された場合には、光輝性印刷層中に含まれるアルミニウムや真鍮等の金属顔料やパール顔料等が鱗片状顔料であるため、その鱗片状顔料の光輝性印刷層内における分散配置された状態が非リーフィング状態となるだけでなく、光輝性印刷層の表面に凹凸が発生して光輝性印刷層の平滑性が低くなり、その結果、光輝性も低下するため、十分な複写防止効果が得られないという問題があった。
また、基材上に感熱発色層等が形成されている感熱紙上に光輝性印刷層が印刷される場合には、感熱発色層が発色しない条件を加味しながら光輝性印刷層が印刷される必要がある。
しかしながら、光輝性印刷層に含まれる溶剤により感熱発色層が発色する(以下、「溶剤アタック」という。)おそれがあり、光輝性印刷層が印刷された後、乾燥時間を長くしてゆっくり乾燥した場合であっても、乾燥時に加わる熱により感熱発色層が発色する(以下、「黒化現象」という。)おそれもあった。
また、光輝性印刷層の表面の平滑性が低下すると、サーマルヘッドにより感熱発色層に印字を行った際、光輝性印刷層の表面の凹凸によりサーマルヘッドの発熱部の保護層が磨耗しやすくなるという問題もあった。
通常、感熱発色用のサーマルヘッドは、発熱部を保護するために耐熱・耐磨耗性の高い樹脂材料や無機材料により約7マイクロメートルの保護層が設けられているが、感熱発色層上の表面に形成された光輝性印刷層に用いられている顔料は、アルミニウムや真鍮等の金属顔料やパール顔料のような鉱物顔料であり、その光輝性印刷層上に凹凸があると、30万枚の印字により、サーマルヘッドの発熱部の保護層が約5マイクロメートル磨耗することが確かめられた(比較例1である図6の3(c)参照)。
このように、サーマルヘッドの発熱部を保護する保護層の磨耗は、印字装置のメンテナンス回数の増加を招き、感熱紙を用いたシステム全体のコストアップにつながるため、その改善が求められている。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材上に鱗片状顔料を含むインキにより光輝性印刷層が印刷された場合、感熱紙の黒化現象や溶剤アタックなどの不具合の発生を完全に防止し、安定した印刷物を得ることができると共に、得られた印刷物を印字装置等により印字した場合、サーマルヘッドの発熱部の保護層における磨耗を軽減させることができる印刷物の製造方法及びグラビア印刷システムを提供することである。
通常のグラビア印刷装置で印刷された印刷物では、感熱紙上に形成された光輝性印刷層の表面は、約3〜4マイクロメートル程度の凹凸ができ、このような印刷物をサーマルヘッドを用いた印字装置で印字すると、印字の際に光輝性印刷層の凹凸によりサーマルヘッド上に設けられた保護膜が磨耗しやすくなるという欠点があった。
そこで、まず、本発明者は、グラビア印刷装置を使用し、基材の片面に感熱発色層を設けた感熱紙上に鱗片状顔料を含むインキの中にワックスを加えたインキを用いてグラビア印刷を行って光輝性印刷層を設け、光輝性印刷層を設けた感熱紙を印字装置を用いて印字テストを行ったところ、印字装置のサーマルヘッドの発熱部を保護する保護層の磨耗を抑制する効果は乏しく、若干の改善は見られるものの、サーマルヘッドの発熱部上に設けられた保護膜が磨耗しやすくなるという傾向は完全に改善されなかった。
そこで、本発明者は、現在実施されている印刷物の製造方法の見直しを行った。最も重視した点は、現在実施されている方法より乾燥性能を低下させず、平滑性を向上させることであった。本発明者は、その後、様々な条件で試験を行い、上記目的を達成するには、少なくとも2以上の印刷ユニットを備えたグラビア印刷装置を使用した印刷物の製造方法において、基材への印刷を行う最初の印刷ユニットの印刷部にて、溶媒と鱗片状顔料を含むインキを用いて基材に光輝性印刷層を印刷し、その印刷された光輝性印刷層の表面の溶媒が除去され内部の溶媒が完全に除去されない半硬化状態となるように光輝性印刷層を乾燥させることで半硬化状態の光輝性印刷層を印刷・形成し、その基材への印刷を行う最初の印刷ユニットの次印刷ユニットで半硬化状態の光輝性印刷層の平滑化処理を行うことで、課題を解決することができることを見出し、本発明をするに至った。
即ち、本発明の印刷物の製造方法は、少なくとも2以上の印刷ユニットを備えたグラビア印刷装置を使用した印刷物の製造方法であって、前記印刷ユニットは、印刷部と乾燥部を備えており、基材への印刷を行う最初の印刷ユニットの印刷部において、少なくとも溶媒と鱗片状顔料を含むインキを用いて前記基材の表面又は裏面の何れか又は両面に光輝性印刷層を印刷し、次に該印刷ユニットの乾燥部により該印刷部により印刷した光輝性印刷層の表面の溶媒を、風を当てながら除去し内部の溶媒が完全に除去されない半硬化状態となるように乾燥させることで半硬化状態の光輝性印刷層とし、前記基材への印刷を行う最初の印刷ユニットの次印刷ユニットを通過させることにより前記半硬化状態の光輝性印刷層の平滑化処理を行う際に、前記半硬化状態の光輝性印刷層の印刷を行う印刷ユニットの乾燥部の温度が30℃〜50℃であり、オーバーコート層の印刷を行う印刷ユニットの乾燥部の温度が70℃〜85℃であり、印刷速度は、前記光輝性印刷層が半硬化状態となるように印刷・形成するために毎分100メートル〜毎分200メートルとし、前記基材の一方の面には、予め感熱発色層が設けられている感熱紙を用いることを特徴とする。
また、本発明の印刷物の製造方法は、グラビア印刷装置において、半硬化状態の光輝性印刷層を印刷するための印刷ユニットと、半硬化状態の光輝性印刷層上にオーバーコート層を印刷するための印刷ユニットとの間に、半硬化状態の光輝性印刷層の平滑化処理を行うための印刷ユニットが少なくとも1以上設けられていることを特徴とする。
本発明の好適形態においては、平滑化処理がなされた基材に乾燥処理がなされる温度が30℃〜50℃である。鱗片状顔料には、アルミニウム、真鍮又はパール顔料の何れか1つの顔料を用いることを特徴とする。
本発明のグラビア印刷システムは、印刷物の製造方法に用いる。
本発明により、感熱紙上に鱗片状顔料を含むインキを用いて光輝性印刷層が印刷された場合であっても、黒化現象や溶剤アタックなどの不具合の発生を完全に防止することができ、安定した印刷物を得ることができるという利点がある。
本発明により得られた印刷物を印字装置等で印字した場合には、印字装置等のサーマルヘッドの発熱部を保護する保護層の磨耗を約1/5程度に軽減させることができ、メンテナンス回数の削減に寄与し、メンテナンスの費用の軽減を図ることができるという利点が
ある。
本発明により、今後、感熱紙上へ厚みのある平滑な印刷層を形成するためのグラビア印刷の技術を確立することができ、他の製品への応用等も容易なものとなる。
本発明の印刷物の製造方法は、少なくとも2以上の印刷ユニットを備えたグラビア印刷装置を使用した印刷物の製造方法であって、基材への印刷を行う最初の印刷ユニットにおいて、基材の表面若しくは裏面の何れか一面又は両面に、該印刷ユニットの印刷部により鱗片状顔料を含むインキを用いて光輝性印刷層が印刷され、その後、乾燥部により乾燥処理がなされる。
グラビア印刷装置を使用して光輝性印刷層の印刷を行う利点としては、グラビア印刷用シリンダに形成するセルの深さ(版深)を制御することで、
(1)光輝性印刷層の厚みの制御が容易
(2)パール顔料のようなアスペクト比の大きい鱗片状顔料の印刷が容易
(3)グラビア印刷用シリンダは、エンドレス製版が可能で耐刷力が高いので大量生産が可能となり、コストの低い印刷物を提供することが可能
(4)表面状態の悪い凹凸のある基材上にパターンや文字等が鮮明に印刷により再現でき、印刷品質が安定した印刷物を提供可能
という効果がある。
また、グラビア印刷装置により光輝性印刷層を印刷する基材は、印刷に適しているものであれば特に限定されず、例えば、紙や感熱紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
感熱発色層は、例えば、無色透明又は白色の染料、顕色剤、バインダーなどの各成分を水若しくは有機溶剤又は希釈剤と共に均一に分散又は溶解させた後、基材上に直接塗布し又は基材上に設けられた下地コーティングを介して塗布し、その後乾燥することにより得られる。
無色透明又は白色の染料としては、トリアリールメタン系化合物(例えば、クリスタルバイオレットラクトン)、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物、又はスピロ系化合物等のいわゆるロイコ化合物を挙げることができる。
顕色剤としては、常温では固定であるが、加熱すると融解又は軟化し、無色透明又は白色の染料と反応して、その染料を発色させるものであれば特に限定されないが、フェノール誘導体(ビスフェノールA等)、芳香族カルボン酸誘導体等が好ましい。
バインダーは、無色透明又は白色の染料及び顕色剤を含有させると共に、保護層としての役割をも有する。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、でんぷん、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン/無水マレイン酸共重合体金属塩、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド系水溶性樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂などの水溶性樹脂を用いることができる。
鱗片状顔料を含むインキの含有成分としては、例えば、ワックス、鱗片状顔料、熱可塑性樹脂、溶剤を挙げることができる。
鱗片状顔料は、可視光を反射させた際、目視において大きな色の変化を確認することが
できるもので、例えば、アルミニウム、真鍮、銀などの金属顔料、パール顔料や金属酸化物等の無機顔料を挙げることができる。
パール顔料は、その顔料を見る角度により色相が変化するチェンジング性能を有している。パール顔料としては、例えば、オキシ塩化ビスマス、天然或いは合成雲母の表面を酸化チタン、酸化鉄、酸化スズなど高屈折率の金属酸化物で被覆した無機パール顔料等を挙げることができる。
なお、鱗片状顔料には、発色性の向上、鱗片状顔料の光沢性・チェンジング性能を視認しやすくするための市販の染料又は顔料などを混合してもよい。
本発明の印刷物の製造方法に用いることができる熱可塑性樹脂の条件としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フェノキシ系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂と塩化ビニル系樹脂の混合物などが挙げられる。ここで、鱗片状顔料と熱可塑性樹脂の配合重量比は、鱗片状顔料:熱可塑性樹脂=1:3〜1:5の範囲が、光輝性を低下させずにチェンジング性能が得られることから好ましい。
溶剤は、揮発性の高いものがよく、さらに、溶剤アタックが起きにくいものがよい。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトンとトルエンの混合物、酢酸エチル、トルエン、イソプロピルアルコール、酢酸ブチル、キシレンなどを挙げることができる。鱗片状顔料を含むインキ比重の調整は、溶剤で希釈する方法を用いることができ、光輝性印刷層22を形成するインキの粘度として、15秒〜30秒程度(「ザーンカップ#3」で計測)が好ましい。
鱗片状顔料を含むインキには、必要に応じて、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等のビヒクルとしての合成樹脂を添加することができる。また、染料や顔料等の有色色料も添加することができる。有色色料の調合を変えて複数色用意して、それぞれ印刷箇所を変えて印刷すれば、全く異なる色調を有する印刷物が得られる。
その他、鱗片状顔料を含むインキには、ワックスの他に消泡剤などを適宜混合することができる。
本発明において、光輝性印刷層が印刷された基材の乾燥処理方法は、特に限定されないが、例えば、光輝性印刷層が印刷された基材を印刷ユニットの乾燥部で低温乾燥する方法などが挙げられる。
感熱紙上に光輝性印刷層が印刷された基材を印刷ユニットの乾燥部で乾燥処理する温度は、30℃〜50℃の範囲が黒化現象を起こすことなく、光輝性印刷層が半硬化状態となることから好ましい。光輝性印刷層を印刷・形成する印刷ユニットの乾燥部の乾燥処理の温度が30℃未満となると、該光輝性印刷層の表面に溶剤が残留し、その光輝性印刷層の乾燥を行う乾燥部の送りローラや平滑化処理を行う次印刷ユニットの送りローラに光輝性印刷層が付着する可能性があり、逆に、印刷ユニットの乾燥部の乾燥処理の温度が50℃を超えると、黒化現象が起きるからである。
半硬化した光輝性印刷層の平滑化処理は、例えば、印刷ユニットのグラビアシリンダと圧胴の間を通過させることによって行われる。
また、必要に応じて光輝性印刷層上にオーバーコート層が印刷・形成され、その後乾燥処理がなされる。
ここで、オーバーコート層の印刷に用いられるインキの含有成分としては、例えば、樹脂、ワックス、溶剤を挙げることができる。
本発明のオーバーコート層に用いることができる樹脂としては、透明性が高く、動摩擦係数が低いことが要求される。このとき、オーバーコート層に用いる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、硝化綿樹脂、ポリエステルウレタン樹脂などを挙げることができる。
ワックスとしては、例えば、合成炭化水素ワックス、変成ワックスなどが挙げられる。ワックスの含有量は、固形分に対して、2重量%〜15重量%が望ましい。固形分に対するワックスの含有量が多くなるとオーバーコート層が白濁化し、光輝性印刷層のチェンジング特性を妨げるので好ましくない。
溶剤は、オーバーコート層を印刷・形成するインキの粘度を調整するもので、インキの膜厚をコントロールする役割を果たす。溶剤は、速乾燥性、揮発性の高いものが望ましく、オーバーコート層に残留せず溶剤アタックを起こさないものがよい。そのような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン又はメチルエチルケトンとトルエンの混合物、酢酸エチルなどを挙げることができる。
本発明の印刷物の製造方法に用いられるグラビア印刷装置は、2個以上の印刷ユニットを備えたものであればよく、光輝性印刷層及びオーバーコート層の印刷及び光輝性印刷層の平滑化処理の点から、光輝性印刷層を印刷・形成する印刷ユニットとオーバーコート層を印刷・形成する印刷ユニットの間に1以上の印刷ユニットを介するようにすればよい。
また、グラビア印刷装置における印刷速度は、光輝性印刷層を半硬化状態となるように印刷・形成するために毎分100メートル〜毎分200メートルであることが好ましい。さらに、基材に感熱紙を用いた場合、グラビア印刷装置の印刷速度が毎分100メートル未満だと、印刷ユニットの乾燥部の熱により感熱紙が発色する黒化現象が起き、毎分200メートルより早いと、光輝性印刷層の乾燥が不十分となり次印刷ユニットにおいて、光輝性印刷層が送りローラに付着する可能性があるため好ましくない。
本発明の印刷物の製造方法に用いるグラビア印刷装置として、5色機のグラビア印刷装置を一例にして以下に説明する。
図1において、本発明に用いるグラビア印刷装置1は、光輝性印刷層22が印刷・乾燥される第一印刷ユニット3、平滑化処理がなされる第二〜第四印刷ユニット4〜6、オーバーコート層23が印刷・乾燥される第五印刷ユニット7、光輝性印刷層22及びオーバーコート層23に残留している溶剤分を除去するための乾燥処理を行うアフター乾燥装置8(14m〜15m)が設けられている。
また、光輝性印刷層22を印刷・形成するための第一印刷ユニット3の構成の一例を図2に示す。
光輝性印刷層22の印刷・形成を行う印刷ユニット3は、鱗片状顔料、樹脂、ワックス及び希釈のための溶剤を含むインキ12が入ったインキパン11、ドクター13、グラビアシリンダ14、圧胴15の光輝性印刷層22の印刷・形成を行う印刷部と、印刷・形成された光輝性印刷層22を半硬化状態となるように乾燥するための乾燥部16(4m〜5m)を備えている。
次に、本発明の印刷物30の製造方法を説明する。
本発明に用いる基材10は、紙20上の一方の面に感熱発色層21及び感熱発色層21の保護を行うための保護層26が設けられている感熱紙を用いる。
図1のグラビア印刷装置1において、給紙ロール2から送り出された、感熱紙よりなる基材10は、第一印刷ユニット3内の印刷部で、基材10上に光輝性印刷層22が印刷・形成され、その後、乾燥部16において、温度が30℃〜50℃で風量が毎分200立方メートルの条件で半硬化状態の光輝性印刷層22が保護層26上に印刷・形成される。
次に、光輝性印刷層22が印刷・形成された基材は、第二印刷ユニット4の印刷部(図示しない。)を通過(圧胴の圧力が147キロパスカルに設定されたグラビアシリンダ14と圧胴15の間)させ、温度が30℃〜50℃で風量が毎分200立方メートル条件の乾燥部(図示しない。)を通過することで、黒化現象を起こすことなく感熱紙の基材10上に印刷・形成した光輝性印刷層22の平滑化処理を行うことができる。
また、第三印刷ユニット5及び第四印刷ユニット6においても、第二印刷ユニット4と同様に光輝性印刷層22の平滑化処理がなされる。
次いで、第五印刷ユニット7内の印刷部(図示しない。)で、オーバーコート層23の印刷・形成が行われた後、乾燥部(図示しない。)で乾燥がなされ、その次に、第五印刷ユニットに連接するアフター乾燥装置8で、乾燥温度が70℃〜80℃、風量が毎分200立方メートルの条件で光輝性印刷層22及びオーバーコート層23が形成された基材10が乾燥され排紙ロール9に巻き取られる。
本発明の印刷物の製造方法により製造された印刷物は、半硬化状態となるように印刷・形成された光輝性印刷層22の平滑化処理を行い、その上にオーバーコート層23を印刷・形成するようにしているので、図3(b)に示すように、光輝性印刷層22の表面の凹凸が平滑化され、しかも、光輝性印刷層22上にオーバーコート層23を設けることで、光輝性印刷層22が形成された面がより平滑化された状態となる。
よって、本発明の印刷物の製造方法により製造された感熱紙上に光輝性印刷層22及びオーバーコート層23が印刷・形成された印刷物をサーマルヘッドを用いた印字装置等で印字した場合、該印刷物の表面の凹凸が平滑化されているため、該サーマルヘッドの発熱部の保護層の磨耗が軽減され、サーマルヘッドを用いた印字装置のメンテナンス回数を減少させることができる。
また、光輝性印刷層22上に透明性が高いオーバーコート層23を形成するようにしているので、目視により光輝性印刷層22のチェンジング効果を容易に確認することができる。
(1)印刷物の製造
(実施例1)
図1に示したグラビア印刷装置1を用い、以下の条件により、本発明の印刷物の製造方法による印刷物1を製造した。
イ)基材10:基材の表面に感熱発色層21、保護層26が形成されている市販の感熱紙
ロ)基材10の搬送速度:毎分200メートル
ハ)第一印刷ユニット3における光輝性印刷層22を形成するインキ組成及び印刷条件
・鱗片状顔料を含むインキ:
マイクロリスグリーンGK(日本チバガイギー(株)製) 1.0重量%
メチルエチルケトンとトルエン(比率、1:1)の混合物 30.0重量%
ポリエステル系樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン20SS) 58.0重量%
パール顔料(メルク(株)製、イリオジン219) 11.0重量%
・圧胴の圧力:147キロパスカル
・乾燥条件:温度が30℃〜50℃、風量が毎分200立方メートル
ニ)第二印刷ユニット4、第三印刷ユニット5及び第四印刷ユニット6における平滑化処理条件
・圧胴の圧力:147キロパスカル
・乾燥条件:温度が30℃〜50℃、風量が毎分200立方メートル
ホ)第五印刷ユニット7におけるオーバーコート層23を形成するインキ組成と印刷条件
・オーバーコート層23の印刷に用いられるインキ:
硝化綿樹脂 16.7重量%
酢酸エチル 78.7重量%
n−ブタノール 3.8重量%
ワックス 0.8重量%
・圧胴の圧力:147キロパスカル
・乾燥条件:温度が30℃〜50℃、風量が毎分200立方メートル
ヘ)アフター乾燥装置8による残留溶剤の除去条件
・乾燥条件:温度が70℃〜80℃、風量が毎分200立方メートル
得られた印刷物1は、黒化現象や溶剤アタックなどの発生が見られず、印刷物の品質も非常に良好であった。
(実施例2)
オーバーコート層23の印刷に用いられるインキを以下のものに変えた以外は実施例1と同様の印刷条件で印刷物2を製造した。
・オーバーコート層23の印刷に用いられるインキ:
アクリル樹脂 18.9重量%
トルエン 38.0重量%
メチルエチルケトン 38.0重量%
n−ブタノール 4.2重量%
ワックス 0.9重量%
得られた印刷物2は、黒化現象や溶剤アタックなどの発生が見られず、印刷物の品質も非常に良好であった。
(比較例1)
比較例1は、オーバーコート層を設けず、光輝性印刷層22の平滑化処理を行うための印刷ユニットを介さずに第五印刷ユニット7により印刷・形成した。以下に説明する。
なお、光輝性印刷層22の印刷・形成に用いるインキ及び印刷・形成条件は、実施例1と同一条件により製造し、印刷物3を得た。
得られた印刷物3は、黒化現象や溶剤アタックなどの発生が見られず、印刷物3の品質も非常に良好であった。
(試験例1)印字装置による印字試験
印刷物1、印刷物2、印刷物3のそれぞれについて、印字前、6万枚印字後、10万枚印字後におけるサーマルヘッドの保護層の表面状態を表面粗さ計により測定した。
印刷物1、印刷物2、印刷物3のそれぞれについて、印字前、6万枚印字後、10万枚印字後におけるサーマルヘッドの発熱部の保護層の表面状態を測定した結果を図4〜図6に示す。
図4〜図6から明らかなように、印刷物1と印刷物2については、10万枚印字後であっても、図4の1(c)及び図5の2(c)のサーマルヘッドの発熱部の保護層の表面状態を示す波形から分かるように、サーマルヘッドの発熱部の保護層の表面状態に変化が見られないことから、該保護層の磨耗が少ないことが分かる。
特に、印刷物2については、図5に示すように図5の2(a)の印字前と図5の2(c)の10万枚印字後について、サーマルヘッドの発熱部の保護層の表面状態を測定した波形を比較すると、図5の2(a)に比して図5の2(c)の波形に歪みがほとんど見られないことから、該保護層の磨耗が非常に少ないことが分かる。
それに対し、印刷物3については、図6の3(b)に見られるように6万枚印字後に波形の左頂に変化が見られ、この時点でサーマルヘッドの発熱部の保護層が磨耗していることが分かり、図6の3(c)に見られるように、10万枚印字後には、波形の左頂がより平坦化し、サーマルヘッドの発熱部の保護層が、顕著に磨耗していることが分かる。
なお、本発明の印刷物の製造方法は、基材に感熱紙を用いたものに限られず、基材上に厚みがあり平滑な印刷層を形成するものであれば、何れにも適応することができる。
また、図3(b)に、感熱発色層上に保護層を介して光輝性印刷層及びオーバーコート層を印刷・形成した印刷物2と、図3の(a)に、感熱発色層上に保護層を介して光輝性印刷層を印刷・形成した印刷物3の電子顕微鏡写真を示す。
印刷物2は、光輝性印刷層を第一印刷ユニットで印刷・形成し、第二〜第四印刷ユニットでの平滑化処理を経て、第五印刷ユニットでオーバーコート層を印刷・形成したものであり、その印刷物2の電子顕微鏡写真である図3の(b)からは、光輝性印刷層とオーバーコート層が一体化され、平滑化されていることが分かる。
一方、印刷物3は、光輝性印刷層を第五印刷ユニットで印刷・形成したもので、平滑化処理を行わず、また、オーバーコート層も印刷・形成されていないものであり、その印刷物3の電子顕微鏡写真である図3の(a)からは、光輝性印刷層の表面に凹凸があり、平滑となっていないことが分かる。
本発明の印刷物の製造方法に用いるグラビア印刷装置の一例の概略を示す図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いるグラビア印刷装置における第一印刷ユニットの構成の一例を示す図である。 (a)は従来の印刷物の製造方法により製造された印刷物3の部分拡大断面を示す電子顕微鏡写真である。(b)は本発明の印刷物の製造方法により製造された印刷物2の部分拡大断面を示す電子顕微鏡写真である。 1(a)は印刷物1についての印字前のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。1(b)は印刷物1についての6万枚印字後のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。1(c)は印刷物1についての10万枚印字後の印字装置のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。 2(a)は印刷物2についての印字前の印字装置のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。2(b)は印刷物2についての6万枚印字後のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。2(c)は印刷物2についての10万枚印字後のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。 3(a)は印刷物3についての印字前のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。3(b)は印刷物3についての6万枚印字後のサーマルヘッドの保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。3(c)は印刷物3についての10万枚印字後のサーマルヘッド上の保護層の表面状態を測定した結果を示す図である。 本発明の印刷物の製造方法により製造された印刷物30の断面を示す模式図である。
符号の説明
1 グラビア印刷装置
2 給紙ロール
3 第一印刷ユニット
4 第二印刷ユニット
5 第三印刷ユニット
6 第四印刷ユニット
7 第五印刷ユニット
8 アフター乾燥装置
9 排紙ロール
10 基材
11 インキパン
12 鱗片状顔料を含むインキ
13 ドクター
14 グラビアシリンダ
15 圧胴
16 乾燥部
20 基材
21 感熱発色層
22 光輝性印刷層
23 オーバーコート層
1a、1b、2、30 印刷物

Claims (5)

  1. 少なくとも2以上の印刷ユニットを備えたグラビア印刷装置を使用した印刷物の製造方法であって、
    前記印刷ユニットは、印刷部と乾燥部を備えており、
    基材への印刷を行う最初の印刷ユニットの印刷部において、少なくとも溶媒と鱗片状顔料を含むインキを用いて前記基材の表面又は裏面の何れか又は両面に光輝性印刷層を印刷し、次に該印刷ユニットの乾燥部により該印刷部により印刷した光輝性印刷層の表面の溶媒を、風を当てながら除去し内部の溶媒が完全に除去されない半硬化状態となるように乾燥させることで半硬化状態の光輝性印刷層とし、
    前記基材への印刷を行う最初の印刷ユニットの次印刷ユニットを通過させることにより前記半硬化状態の光輝性印刷層の平滑化処理を行う際に、前記半硬化状態の光輝性印刷層の印刷を行う印刷ユニットの乾燥部の温度が30℃〜50℃であり、オーバーコート層の印刷を行う印刷ユニットの乾燥部の温度が70℃〜85℃であり、印刷速度は、前記光輝性印刷層が半硬化状態となるように印刷・形成するために毎分100メートル〜毎分200メートルとし、前記基材の一方の面には、予め感熱発色層が設けられている感熱紙を用いることを特徴とする印刷物の製造方法。
  2. 前記グラビア印刷装置において、前記半硬化状態の光輝性印刷層を印刷するための印刷ユニットと、
    前記半硬化状態の光輝性印刷層上にオーバーコート層を印刷するための印刷ユニットとの間に、前記半硬化状態の光輝性印刷層の平滑化処理を行うための印刷ユニットが少なくとも1以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物の製造方法。
  3. 前記グラビア印刷装置において、前記半硬化状態の光輝性印刷層の平滑化処理を行うための1以上の印刷ユニットの乾燥部の温度が30℃〜50℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物の製造方法。
  4. 前記鱗片状顔料には、アルミニウム、真鍮又はパール顔料の何れか1つの顔料を用いることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の印刷物の製造方法。
  5. 請求項1乃至の何れか1項に記載の印刷物の製造方法に用いるグラビア印刷システム。
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