JP4721454B2 - 射出成形装置における成形条件の決定方法及び射出成形装置 - Google Patents
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そこで、樹脂自体の温度や圧力を実測して、評価を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
図7は従来の技術の基本原理を説明する図であり、特許文献1は、樹脂温度を測定することができる温度センサと、樹脂圧力を測定することができる圧力センサを備えている。 特許文献1の段落番号[0029]には「図7は成形機A及び成形機Bの比容積を比較した図である。比容積vは、温度センサで測定した樹脂温度Tと圧力センサで測定した樹脂圧力pから、p−v−T曲線を用いて求めることができる。そして、成形機Aの方が、成形不良が出る。」と説明されている。
設定した成形条件が、好ましいものであるか否かを、直接判定することができる判定法が望まれる。
温度センサと圧力センサは、先端が液状の樹脂に接触していることを前提とする。しかし、温度センサや圧力センサで冷やされて、センサの先端に凝固した樹脂膜ができることがある。
一方、圧力であれば、凝固した樹脂膜で遮断される。そのため、圧力センサは低い圧力を検出することになり、検出精度が著しく低下する。
したがって、圧力センサを使用しないで、評価ができる技術が求められる。
変動係数の計算法を説明する。先ず、第1の成形条件で得た20個の重量データから平均値(m1)を求める。また、第1の成形条件で得た20個の重量データから標準偏差(σ1)を求める。±3σの範囲に対応させるために、標準偏差(σ1)は6倍する。さらに、百分率表記するために100倍する。
変動係数は、(6・(σ1)/(m1))×100の算式で求める。以下、この変動係数を、変動係数6CVと呼ぶ。
第1の成形条件では、変動係数6CVは0.20であり、第2の成形条件では、変動係数6CVは0.16であり、第3の成形条件では、変動係数6CVは0.07であった。
そのため、作業者は、得られたモニタ値を見て判断しなければならない。温度変動をモニタ値として成形条件の判定に使用する場合、図8(a)から、第1の成形条件では良品が得られないことは理解できる。しかし、図8(b)は図8(c)と大差がないため、第2の成形条件が第3の成形条件よりも、大いに悪いことは理解できない。
樹脂温度の急変を、定量化するために、温度曲線を微小時間で微分し、得られた多数個の微分値から標準偏差を求めた。この標準偏差が小さいほど、温度は穏やかに変化するから、良品が得られると考えた。
詳細は後述するが、以上の知見に基づいてデータを整理したところ、樹脂温度の変化と成形品との良好な相関を見出すことができた。
射出機と金型との間に、樹脂の温度を測ることができる測温装置をセットする工程と、
第1の成形条件で射出成形を実施し、前記測温装置で射出時間中の第1ショットの温度を連続的に記録し、この第1ショットの温度を微小時間で区切って、微小温度差を微小時間で割ることにより多数個の微分値を得、この多数個の微分値をデータとして第1ショットの標準偏差を求める第1ショットの標準偏差取得工程と、
この第1ショットの標準偏差取得工程と同様の工程を、第2ショット〜第nショットまで実施して第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と、
得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件とは異なる第2の成形条件で、前記第1ショットの標準偏差取得工程及び前記第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と同様の工程を実施し、得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程で得た第1の成形条件における平均標準偏差と、前記第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程で得た第2の成形条件における平均標準偏差とを比較して、小さい方が好ましい成形条件であると判定する判定工程とからなり、
測定した温度を、微分処理し、複数の微分値から標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて、成形条件の良否を判断することを特徴とする。
射出機と金型との間に、樹脂の温度を測ることができる測温装置をセットする工程と、
第1の成形条件で射出成形を実施し、前記測温装置で射出時間中の第1ショットの温度を連続的に記録し、この第1ショットの温度を微小時間で区切って、微小温度差を微小時間で割ることにより多数個の微分値を得、この多数個の微分値をデータとして第1ショットの標準偏差を求める第1ショットの標準偏差取得工程と、
この第1ショットの標準偏差取得工程と同様の工程を、第2ショット〜第nショットまで実施して第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と、
得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件における平均標準偏差を、第1の成形条件に含まれる第1の射出率で割ることで、補正した第1の平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件とは異なる第2の成形条件で、前記第1ショットの標準偏差取得工程及び前記第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と同様の工程を実施し、得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第2の成形条件における平均標準偏差を、第2の成形条件に含まれる第2の射出率で割ることで、補正した第2の平均標準偏差を求める工程と、
前記補正した第1の平均標準偏差を求める工程で得た補正した第1の平均標準偏差と、前記補正した第2の平均標準偏差を求める工程で得た補正した第2の平均標準偏差とを比較して小さい方が好ましい成形条件であると判定する判定工程とからなり、
測定した温度を、微分処理し、複数の微分値から標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて、成形条件の良否を判断することを特徴とする。
射出成形装置を操作する作業者は、成形条件の良否判定が高い精度で行える。そのため、効率よく、最良の成形条件を定めることができ、量産生産前の試運転の回数や時間を大いに短縮することができる。
図1は本発明に係る射出成形装置の側面図であり、射出成形装置10は、基台11に射出機20及び型締機30を載せると共に、基台11に、制御部を兼ねる制御パネル12を備えた横型射出成形装置である。
図2は好適な成形条件を決定するまでのフロー図である。
ステップ(以下、ST)01:射出機と金型との間に測温装置をセットする(図1参照)。
ST02:図1の制御パネルに成形条件をインプットする。Mは1〜Nまでの数であり、最初はM=1であるため、成形条件は、第1の成形条件となる。
ST03:この成形条件で第1ショットの射出成形を実施する。mは1〜mまでの数であり、最初はm=1であるため、ショットは、第1ショットとなる。
ST04:測温装置により、第1ショットにおける樹脂温度を連続的に記録する。
図3は微分法の説明図であり、第1ショットの温度曲線41を、微小時間Δt(例えば、20ms)で分割し、ある分割部での前後の温度がTjとTkであったとすれば、微分値は、(Tk−Tj)/Δtで求めることができる。第1ショットでの射出時間が2s(秒)であれば、約100個の微分値データが得られる。
ST06:多数個(例えば100個)の微分値データから、標準偏差σmを算出する。標準偏差は、[((微分値データ)−(微分値データの平均値))2の和/微分値データの数]で求めることができる。最初はm=1であるから、第1ショットの標準偏差はσ1となる。
ST07:標準偏差を累積する。最初は、σ1だけが蓄積される。
ST08:次のショットを実施するか否かを決める。
ST04〜ST06を実施することで、第2ショットの標準偏差σ2を得る。ST07では、累積結果が、σ1+σ2となる。
なお、ST03で、第1ショットの次に第2ショット、第3ショット・・・第nショットを順次実施するため、ST03は第mショット(m=1,2・・・n)と記載した。
ST09:σMave=(Σσ/n)、(ただしM=1,2・・・N)の算式で、第1の成形条件における平均標準偏差σ1aveを求める。
すなわち、第1の成形条件で実施した20ショット分の標準偏差を、算術平均することで、平均標準偏差σ1aveを求めた。
ST11:成形条件を変えて、射出成形を続ける否かを決める。成形条件の良否を判定するために、少なくとも1回はST02へ戻す。
ST09:第2の成形条件で実施した20ショット分の標準偏差を、算術平均することで、平均標準偏差σ2aveを求める。
ST13:最小の平均標準偏差σxaveに対応する成形条件が、最適であると判定する。
図4は本発明の方法を制御パネルに表示した例を示す図である。
(a)に示すように、制御パネル12(図1)に、第1の成形条件として、スクリュー外径:40mm、樹脂:ポリプロピレン、加熱筒温度:210℃、サイクル時間41秒、スクリュー回転速度:200rpm(1分間当たりの回転数)、ショット数:20を、設定する。
(b)に示すように、右から2番目の欄に「16」が表示され、その右にランクを示す「1」が表示される。
(d)に示すように、右から2番目の欄に「13」が表示された。この13は、第1の成形条件から得た「16」より小さい。第2の成形条件の右端に、ランクを示す「1」を表示し、第1の成形条件のランクを示す「2」を表示する。
作業者は、現在、第3の成形条件がベストであると認識することができる。さらに、第4の成形条件〜第Nの成形条件を試し、第4の成形条件〜第Nの成形条件のうちから、ランク「1」、すなわち平均標準偏差が最も小さなものを見出せば、それが最適な成形条件となる。
現在の平均標準偏差と、次の射出成形で得た平均標準偏差を比較して、小さい方を好適と判断する。すなわち、その時点での好適な平均標準偏差と次の標準偏差とを比較して、小さい方をランク「1」とする。
次表は、上述の表2に、図4(e)に示した平均標準偏差を合成して作成した。
図5は平均標準偏差と変動係数6CVとの関係を示すグラフである。縦軸の変動係数6CVは、成形品の重量のばらつきを示す指標であり、小さいほどよく、「0」が理想である。そこで、原点を通る理想直線を、想像線で示すように引くことができる。
第1の条件でのσ1aveと第2の条件でのσ2aveは、理想直線に載っている。第3の条件でのσ3aveは、理想直線から若干は外れているが、実験値から求めたものであるから、この程度の外れは起こりうる。
図1の射出成形装置の制御部12に設定する成形条件を変えながら運転を繰り返して、成形条件の最適化を図る成形条件の決定方法であって、
射出機20と金型37との間に、樹脂の温度を測ることができる測温装置40をセットする工程(ST01)と、
第1の成形条件で射出成形を実施し(ST03)、前記測温装置で射出時間中の第1ショットの温度を連続的に記録し(ST04)、この第1ショットの温度を微小時間で区切って、微小温度差を微小時間で割ることにより多数個の微分値を得(ST05)、この多数個の微分値をデータとして第1ショットの標準偏差を求める第1ショットの標準偏差取得工程(ST03〜ST06)と、
この第1ショットの標準偏差取得工程と同様の工程を、第2ショット〜第nショットまで実施して第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程(ST03〜ST06)と、
得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程(ST09)と、
前記第1の成形条件とは異なる第2の成形条件で、前記第1ショットの標準偏差取得工程及び前記第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と同様の工程を実施し、得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程(ST02〜ST09)と、
前記第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程で得た第1の成形条件における平均標準偏差と、前記第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程で得た第2の成形条件における平均標準偏差とを比較して、小さい方が好ましい成形条件であると判定する判定工程(ST12、ST13)とからなり、
測定した温度を、微分処理し、複数の微分値から標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて、成形条件の良否を判断することを特徴とする射出成形装置における成形条件の決定方法。
上述した平均標準偏差を射出率で割ることにより、補正した平均標準偏差とすることができ、この補正した平均標準偏差に基づいて成形条件の良否の判定を行えばよい。
補正した平均標準偏差に基づくフローを次図で説明する。
ST22:制御パネルに成形条件をインプットする。
ST23:この成形条件で第1ショットの射出成形を実施する。
ST24:第1ショットにおける樹脂温度を連続的に記録する。
ST26:多数個(例えば100個)の微分値データから、標準偏差σmを算出する。
ST27:標準偏差を累積する。
ST28:次のショットを実施するか否かを決める。
ST24〜ST26を実施することで、第2ショットの標準偏差σ2を得る。ST27では、累積結果が、σ1+σ2となる。
ST29:σ’Mave=(Σσ/n)/射出率、(ただしM=1,2・・・N)の算式で、第1の成形条件における補正した平均標準偏差σ’1aveを求める。
ST31:成形条件を変えて、射出成形を続ける否かを決める。成形条件の良否を判定するために、少なくとも1回はST22へ戻す。
ST29:第2の成形条件で実施した20ショット分の標準偏差を、算術平均し、射出率で割ることで、補正した平均標準偏差σ’2aveを求める。
ST33:最小の平均標準偏差σ’xaveに対応する成形条件が、最適であると判定する。
第2の発明は、第1の発明を前提とし、第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程の次に、第1の成形条件における平均標準偏差を、第1の成形条件に含まれる第1の射出率で割ることで、補正した第1の平均標準偏差を求める工程を加え(ST29)、
第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程の次に、第2の成形条件における平均標準偏差を、第2の成形条件に含まれる第2の射出率で割ることで、補正した第2の平均標準偏差を求める工程を加え(ST29)、
判定工程(ST31、ST32)では、補正した第1の平均標準偏差と、補正した第2の平均標準偏差とを比較することを特徴とする。
また、射出率にはスクリューの断面積の要素を含むため、射出率で補正することにより、スクリューの径の影響を排除することができる。すなわち、複数の成形条件間で、スクリューの径に差異があっても、射出率で補正することにより、信頼性の高い良否判定が可能となる。
Claims (3)
- 射出成形装置に設定する成形条件を変えながら運転を繰り返して、成形条件の最適化を図る成形条件の決定方法であって、
射出機と金型との間に、樹脂の温度を測ることができる測温装置をセットする工程と、
第1の成形条件で射出成形を実施し、前記測温装置で射出時間中の第1ショットの温度を連続的に記録し、この第1ショットの温度を微小時間で区切って、微小温度差を微小時間で割ることにより多数個の微分値を得、この多数個の微分値をデータとして第1ショットの標準偏差を求める第1ショットの標準偏差取得工程と、
この第1ショットの標準偏差取得工程と同様の工程を、第2ショット〜第nショットまで実施して第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と、
得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件とは異なる第2の成形条件で、前記第1ショットの標準偏差取得工程及び前記第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と同様の工程を実施し、得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程で得た第1の成形条件における平均標準偏差と、前記第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程で得た第2の成形条件における平均標準偏差とを比較して、小さい方が好ましい成形条件であると判定する判定工程とからなり、
測定した温度を、微分処理し、複数の微分値から標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて、成形条件の良否を判断することを特徴とする射出成形装置における成形条件の決定方法。 - 射出成形装置に設定する成形条件を変えながら運転を繰り返して、成形条件の最適化を図る成形条件の決定方法であって、
射出機と金型との間に、樹脂の温度を測ることができる測温装置をセットする工程と、
第1の成形条件で射出成形を実施し、前記測温装置で射出時間中の第1ショットの温度を連続的に記録し、この第1ショットの温度を微小時間で区切って、微小温度差を微小時間で割ることにより多数個の微分値を得、この多数個の微分値をデータとして第1ショットの標準偏差を求める第1ショットの標準偏差取得工程と、
この第1ショットの標準偏差取得工程と同様の工程を、第2ショット〜第nショットまで実施して第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と、
得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第1の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件における平均標準偏差を、第1の成形条件に含まれる第1の射出率で割ることで、補正した第1の平均標準偏差を求める工程と、
前記第1の成形条件とは異なる第2の成形条件で、前記第1ショットの標準偏差取得工程及び前記第2ショット〜第nショットまでの標準偏差を取得する工程と同様の工程を実施し、得られた第1〜第nまでの標準偏差を算術平均処理して、第2の成形条件における平均標準偏差を求める工程と、
前記第2の成形条件における平均標準偏差を、第2の成形条件に含まれる第2の射出率で割ることで、補正した第2の平均標準偏差を求める工程と、
前記補正した第1の平均標準偏差を求める工程で得た補正した第1の平均標準偏差と、前記補正した第2の平均標準偏差を求める工程で得た補正した第2の平均標準偏差とを比較して小さい方が好ましい成形条件であると判定する判定工程とからなり、
測定した温度を、微分処理し、複数の微分値から標準偏差を求め、この標準偏差に基づいて、成形条件の良否を判断することを特徴とする射出成形装置における成形条件の決定方法。 - 請求項1又は請求項2記載の射出成形装置における成形条件の決定方法を実施する制御部を備えていることを特徴とする射出成形装置。
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