(実施形態1)
本実施形態の端子装置1は、図1(a)〜(c)に示すように、例えば単極単投の接点構成を有する片切型のスイッチ機構を備えるスイッチ装置であって、以下に、このような端子装置1について図1〜図4を参照して詳細に説明する。尚、以下の説明では、図1(b)における上方を端子装置の前方、図1(b)における下方を端子装置の後方と規定する。
端子装置1は、図1(a)〜(c)に示すように、電線挿入孔20aが設けられたボディ20を有する装置本体2と、該装置本体2のボディ20の電線挿入孔20aより挿入された電線を、導電性を有する端子板30と鎖錠ばね31の間に導入して、端子板30と鎖錠ばね31で狭持する速結端子部Tを有する端子ブロック3と、固定接点40及び可動接点41を有するスイッチブロック(スイッチ機構部)4とを備え、装置本体2のボディ20には、速結端子部Tによる電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向において、図4(b)に示すような撚線6の複数の素線60の拡散を防止する拡散防止部5が、装置本体2の内側(ボディ20の内側)における電線挿入孔20aの開口縁部と速結端子部Tの端子板30との間に介在するように装置本体2のボディ20に一体に突設されている。
まず、装置本体2について説明する。装置本体2は、図2に示すように、いずれも合成樹脂成形品からなるボディ20と、カバー21と、反転ハンドル22と、ハンドルカバー23とで構成されており、その外形寸法は、例えば、JIS規格で規格化されている大角形連用(JISC8304参照)の埋め込み配線器具の1連用の取付枠(図示せず)の開口窓の長手方向の1/3を占める寸法(言い換えれば、開口窓の長手方向に3個並べて取付枠に取付可能な寸法)に形成されている。
ボディ20は、図3に示すように、前面が開口した矩形箱状に形成されており、その底壁部の四隅部には、図1(c)に示すように、電線を装置本体2内に挿入するための電線挿入孔20aが設けられている。尚、電線挿入孔20aは、略円形状に形成されている。
また、ボディ20の内側における各電線挿入孔20aの開口縁部には、図1(b),(c)及び図3に示すように、前記開口縁部と速結端子部Tの端子板30との間に介在するように拡散防止部5が一体に突設されている。
拡散防止部5は、略矩形状に形成されるとともに、電線挿入孔20a側を向いた面に、電線挿入孔20aの内面と連続する凹面形状の内面を有する凹部5aが設けられている。
したがって、図4(b)に示すように撚線6が拡散防止部5の凹部5a内に位置した際には、凹部5aの内面によって、速結端子部Tによる電線の狭持方向(図1(c)における左右方向)と電線の挿入方向(図1(c)における紙面手前方向)にそれぞれ略直交する方向(図1(c)における上下方向)に、撚線6の複数の素線60が放射状に広がってしまうことが抑制されることになる。
また、凹部5aは、拡散防止部5の幅方向中央部(図1(c)における上下方向中央部)に近付くにつれて、徐々に深さが深くなるように形成されているから、撚線6の素線60が鎖錠ばね31により付勢されて凹部5aの内面に当接された際には、素線60が拡散防止部5の幅方向中央部側に誘い込まれることになり、これにより素線60が放射状に広がってしまうことを防止し易くしている。さらに、前記略直交する方向における凹部5aの幅寸法は、撚線6の外径寸法と略同じ大きさとなるように設定されており、これにより撚線6の素線60が、撚線6の外径寸法以上に広がらないように規制している。
一方、ボディ20の底壁部における長手方向両側には、マイナスドライバ等の治具を挿入するための治具挿入孔20bが貫設されている。この治具挿入孔20bは、速結端子部Tによる電線の鎖錠状態を解除するために用いられる。さらに、ボディ20の短手方向一端側(図2における左下側)の内側面には、後述する開閉子42の軸部42bを揺動自在に支持するための軸受け部(図示せず)が設けられている。一方、ボディ20の短手方向両外側面における長手方向両端側には、カバー21をボディ20に取り付けるために用いられる係止爪20cがそれぞれ設けられている。
カバー21は、ボディ20の前面開口を覆うようにしてボディ20に被着されるものであり、後面が開口した矩形箱状に形成されている。このカバー21の前面には、スイッチブロック4のオンオフ操作用の反転ハンドル22を揺動自在に取り付けるための略矩形状の開口部21aが形成されている。また、カバー21の前面の長手方向中央部には、開口部21aを挟んで対向する一対の支持部21b,21bが一体に突設されており、これら支持部21b,21bにおいて互いに対向する面には、反転ハンドル22を揺動自在に指示するための軸受け部21cがそれぞれ設けられている。
一方、カバー21の短手方向両側面の後端部には、その長手方向両端側にそれぞれ矩形状の係止片21dが突設されており、各係止片21dの中央部には、ボディ20の係止爪20cと嵌合する係止孔21eが設けられている。また、カバー21の長手方向両側面には、上記の取付枠(図示せず)に取り付けるための一対の取付爪21f,21fがそれぞれ設けられている。
反転ハンドル22は、上述したようにスイッチブロック4のオンオフ操作を行うために開閉子42を操作するためのものであって、図1(b)に示すように、後面が開口した矩形箱状に形成されており、その後面側には、後述する反転ばね43の前端側が嵌入される孔部22bを有する保持筒部22aが一体に突設されている。また、図2に示すように、反転ハンドル22の短手方向両外側面における長手方向中央部には、カバー21の一対の軸受け部21cに個別に支持される軸部22cがそれぞれ一体に突設されており、これにより反転ハンドル22を開口部21a内に配置した状態で、カバー21に揺動自在に取り付けることができるようになっている。さらに、反転ハンドル22の長手方向両外側面には、ハンドルカバー23を取り付けるための爪部22dが一体に突設されている。
ハンドルカバー23は、反転ハンドル22の前面を覆うことができる大きさの略矩形板状に形成されており、後面側には、図1(b)に示すように、反転ハンドル22の爪部22dに係止される係止部23aが一体に突設されている。
以上述べた装置本体2には、図2に示すように、一対の端子板30,30を備える電源用端子部32と、同様に一対の端子板30,30を備える負荷用端子部33と、4個の鎖錠ばね31と、2個の解除釦34とで構成される端子ブロック3が収納されるとともに、固定接点40と、可動接点41を有する開閉子42と、反転ばね43とで構成されるスイッチブロック4が収納される。
まず、スイッチブロック4を構成する各部材について説明する。固定接点40は、後述する負荷用端子部33に設けられている。開閉子42は、銅板等の導電性を有する金属板からなり、その一面側に固定接点40と接離する可動接点41が固着されている。また、開閉子43の先端部(前端部)には、反転ばね43の後端部と係合される係合突起42aが設けられており、開閉子42の基端部(後端部)における幅方向の一側部(図2における左下側の側部)には、ボディ20の上記軸受け部に揺動自在に支持される軸部42bが突設されている。
反転ばね43は、例えばコイルスプリングであって、反転ハンドル22と開閉子42とを連結するために用いられる。そして、この反転ばね43は、反転ハンドル22の揺動中心において最も圧縮された状態となるように、反転ハンドル22と開閉子42との間に介在されている。
次に、端子ブロック3を構成する各部材について説明する。電源用端子部32は、図2に示すように、銅板等の導電性を有する金属板から曲成されており、略矩形状に形成されボディ20の電線挿入孔20aからボディ20内に挿入された電線が個別に接触される一対の端子板30,30と、開閉子42を基端部(後端部)で揺動自在に支持する支持片32aと、各端子板30との間で鎖錠ばね31を狭持する押さえ片32bとを一体に備えている。
負荷用端子部33は、図2に示すように、上記電源用端子部32と同様に銅板等の導電性を有する金属板から曲成されており、略矩形状に形成されてボディ20の電線挿入孔20aからボディ20内に挿入された電線が個別に接触される一対の端子板30,30と、固定接点40が固着される接点板33aと、各端子板30との間で鎖錠ばね31を狭持する押さえ片33bとを一体に備えている。
鎖錠ばね31は、端子板30とともに速結端子部Tを構成するためのものであって、図2に示すように、弾性を有する金属板から曲成され、端子板30に対向配置される平板部31aと、平板部31aの前端部に設けられて電線を端子板30に弾接させる略S字状の弾接片31bと、平板部31aの後端部に設けられ、電線に食い込んで電線がその引抜方向へ移動することを防止する(すなわち電線の抜けを防止する)ための鎖錠片31cとを一体に備えている。ここで、鎖錠片31cは、電線挿入孔20aから離れるほど端子板30に近付くようにして平板部31aの後端部に設けられており、これにより電線の先端部で鎖錠片31cを押圧して撓ませることで、電線を鎖錠ばね31と端子板30との間に導入することができるようになっている。
解除釦34は、合成樹脂成形品であって、ボディ20の治具挿入孔20bからボディ20の外部に臨む操作部34aと、両側に鎖錠ばね31の鎖錠片31cを押圧するための押圧片34bとを有している。したがって、治具挿入孔20bからボディ20内に差し込んだ治具(図示せず)の先部で操作部34aを押し操作することで、押圧片34bによって鎖錠ばね31の鎖錠片31cを押圧することができ、これにより速結端子部Tによる電線の鎖錠を解除することができるようになっている。
以上述べた部材により端子装置1は構成されており、次にその組み立て方法について説明する。まず、2個の解除釦34を、操作部34aがボディ20の各治具挿入孔20bからボディ20の外部に臨むようにしてボディ20にそれぞれ収納する。
この後に、電源用端子部32を、2つの鎖錠ばね31,31とともにボディ20に次のようにして収納する。すなわち、図1(b)及び図4(a)に示すように、一対の端子板30を鎖錠ばね31の弾接片31b及び鎖錠片31cに対向させるとともに、押さえ片32bを鎖錠ばね31の平板部31aに接触させ、且つ一対の鎖錠ばね31の鎖錠片31c,31cをボディ20の長手方向一端側(図1(b)における右端側)の一対の電線挿入孔20a,20aにそれぞれ対向させた状態で、電源用端子部32をボディ20に収納する。
電源用端子部32の収納に並行して、負荷用端子部33を、2つの鎖錠ばね31,31とともにボディ20に収納する。負荷用端子部33の収納作業は、図1(b)に示すように、一対の端子板30を鎖錠ばね31の弾接片31b及び鎖錠片31cに対向させるとともに、押さえ片33bを鎖錠ばね31の平板部31aに接触させ、且つ一対の鎖錠ばね31の鎖錠片31c,31cをボディ20の長手方向他端側(図1(b)における左端側)の一対の電線挿入孔20a,20aにそれぞれ対向させた状態で、ボディ20に収納することで行う。
また、電源用端子部32及び負荷用端子部33とともに、鎖錠ばね31を収納する際には、鎖錠片31cを解除釦34の押圧片34bに対向させるようにして鎖錠ばね31をボディ20に収納する。
このようにしてボディ20に収納された電源用端子部32の一対の端子板30,30、及び負荷用端子部33の一対の端子板30,30と、各端子板30(合計4つの端子板30)にそれぞれ対応する4つの鎖錠ばね31とによって合計4つの速結端子部Tが構成されている。また、各速結端子部Tの端子板30と装置本体2の電線挿入孔20aとの間には、それぞれ拡散防止部5が介在されており、電線挿入孔20aから装置本体2内に電線を挿入した際には、電線の先部が鎖錠片31cに接触する前に、拡散防止部5に接触するようにしている。
以上のようにして、電源用端子部32と、負荷用端子部33と、4個の鎖錠ばね31と、2個の解除釦34とをボディ20に収納した後には、開閉子42を、開閉子42の基端部を電源用端子部32の支持片32aに接触支持させるとともに、軸部43bをボディ20の軸受け部に支持させた状態で、ボディ20に収納する。
このように開閉子42をボディ20に収納した後には、ボディ20にカバー21を被着するのであるが、この前準備として、カバー21には、反転ハンドル22を取り付けておく。ここで、反転ハンドル22は、軸部22cをカバー21の一対の軸受け部21cにそれぞれ軸支させることでカバー21に揺動自在に取り付けられる。
そして、反転ハンドル22が取り付けられたカバー21を、反転ハンドル22の保持筒部22aの孔部22bに、反転ばね43の前端側を嵌入させるとともに、反転ばね43の後端縁に開閉子42の係合突起42aに係合させた状態で、カバー21の各係止片21dの係止孔21eに、ボディ20の各係止爪20aを凹凸嵌合させることによって、ボディ20に被着する。
最後に、ボディ20に被着されたカバー21の反転ハンドル22の爪部22dに、係止部23aを係止することで、ハンドルカバー23の反転ハンドル22への取り付けを行い、これにより図1(a),(b)に示す端子装置1が得られる。このようにして得られた端子装置1は、カバー21の取付爪21fを用いて配線器具用の取付枠(図示せず)に取り付けられ、この状態で使用に供される。尚、本実施形態の端子装置1のスイッチブロック4の構成は、既存のものを採用しているので、その動作については説明を省略する。
そして、端子装置1に電線を接続する際には、電線の先部を装置本体2の電線挿入孔20aから装置本体2内に挿入して、電線の先部にて鎖錠ばね31の鎖錠片31c及び弾接片31bを押圧していけばよい。このようにすれば、電線が鎖錠ばね31と端子板30の間に導入されて、鎖錠ばね31と端子板30とで狭持されることになり、これにより電線が速結端子部Tに接続されるとともに、鎖錠片31cが電線に食い込むことによって、電線の抜けが防止される。
ここで、速結端子部Tに接続する電線が、図4(b)に示すような、複数の素線60を束ねてなる撚線6であっても、拡散防止部5によって、速結端子部Tによる電線の狭持方向(図4(b)における紙面の面方向)と電線の挿入方向(図4(b)における上方向)とにそれぞれ略直交する方向(図4(b)における左右方向)への素線60の移動が規制されるから、鎖錠ばね31の付勢力によって、素線60が上記略直交する方向に放射状に広がってしまうことが抑制されることになる。
つまり、以上述べた本実施形態の端子装置1によれば、複数の素線60を束ねてなる撚線6を速結端子部Tに接続する際に、速結端子部Tによる電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向に撚線6の素線60が放射状に広がってしまうことが拡散防止部5によって防止されるから、撚線6を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。その結果、撚線6の素線60が、速結端子部Tの端子板30や鎖錠ばね31と装置本体2のボディ20との隙間や、解除釦34とボディ20との隙間等に入り込んで動作不良の原因になることがなくなり、また、速結端子部Tと撚線6の接触部分に異常な温度上昇が生じたり、速結端子部Tと撚線6の電気的接続が不安定になったり、速結端子部Tから撚線6が抜け易くなるといった問題も防止することができる。
また、拡散防止部5の凹部5aは、拡散防止部5の幅方向中央部(図1(c)における上下方向中央部)に近付くにつれて、徐々に深さが深くなるように形成されているので、撚線6の素線60が鎖錠ばね31により付勢されて凹部5aの内面に当接された際には、素線60が拡散防止部5の幅方向中央部側に誘い込まれることになり、これにより素線60が放射状に広がってしまうことを防止し易くしている。
加えて、拡散防止部5を、ボディ20の内側における電線挿入孔20aの開口縁部と、端子板30との間に介在するようにして設けているので、端子板30の形状等の影響を受けることがなく、拡散防止部5の形状や寸法等の設計の自由度、特に拡散防止部5(特に凹部5a)の幅寸法の自由度を向上できるという効果を奏する。上記の例では、前記略直交する方向における凹部5aの幅寸法を、撚線6の外径寸法と略同じ大きさとなるように設定してあり、これにより撚線6の素線60が、撚線6の外径寸法以上に広がらないように規制できるという効果を奏する。
さらに、拡散防止部5を、合成樹脂成形品であるボディ20に一体に設けるようにしているので、端子板や鎖錠ばね等の金属材料を加工する場合に比べて、形状の設計の自由度を高くでき、しかも製品(又はロット)毎に、拡散防止部の形状がばらついてしまうことがなく、略等しい形状の拡散防止部5を得ることができるから、常に安定した効果が得られるようになる。
尚、上記の例では、端子装置として、例えば単極単投の接点構成を有する片切型のスイッチ機構を備えるスイッチ装置の例を示しているが、スイッチ機構の構成としては、上記の例に限られるものではなく、3路型等、様々な既存のスイッチ機構を採用することができる。また尚、上記の例では、端子装置として、スイッチ機構を有するスイッチ装置の例を示しているが、本実施形態の端子装置は、スイッチ装置に限られるものではなく、コンセント装置や、コネクタ装置等、商用電源や負荷等の電線を接続する装置であればよい。この点は、後述する実施形態2〜6についても同様である。
(実施形態2)
本実施形態の端子装置1Aは、図5(a)〜(c)に示すように、例えば単極単投の接点構成を有する片切型のスイッチ機構を備えるスイッチ装置であり、特に装置本体2Aの構成に特徴がある。尚、以下の説明では、図5(a)における上方を端子装置の前方、図5(a)における下方を端子装置の後方と規定する。また尚、上記実施形態1の端子装置1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
端子装置1Aは、図5(a)〜(c)に示すように、電線挿入孔20aが設けられたボディ20Aを有する装置本体2Aと、端子ブロック3と、スイッチブロック4とを備え、ボディ20Aには、速結端子部Tによる電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向において、撚線の複数の素線の拡散を防止する拡散防止部50が、ボディ20Aにおける電線挿入孔20aの開口縁部と速結端子部Tの端子板30との間に介在するようにボディ20Aに一体に突設されている。
装置本体2Aは、図5(a)に示すように、いずれも合成樹脂成形品からなるボディ20Aと、カバー21と、反転ハンドル22と、ハンドルカバー23とで構成され、その外形寸法は、上記実施形態1の装置本体2と同様の寸法に形成されている。
ボディ20Aは、上記実施形態1のボディ20と同様に拡散防止部を備えているが、その形状が異なっている。
拡散防止部50は、図5(a)〜(c)に示すように、ボディ20Aの内側における各電線挿入孔20aの開口縁部に、該開口縁部と速結端子部Tの端子板30との間に介在するように一体に突設されている。また、拡散防止部50は、電線挿入孔20aにおいてボディ20Aの長手方向外側の開口縁部に突設された略矩形状の主規制部50aと、電線挿入孔20aにおいてボディ20Aの短手方向外側の開口縁部に突設された略矩形状の副規制部50bとを一体に備える略L字状に形成されている。
主規制部50aには、ボディ20Aの長手方向において電線挿入孔20a側を向いた面に、電線挿入孔20aの内面と連続する曲面形状の内面を有する凹部50cが設けられており、これにより、速結端子部Tによる電線の狭持方向(図5(b)における左右方向)と電線の挿入方向(図5(b)における紙面手前方向)にそれぞれ略直交する方向(図5(b)における上下方向)において、撚線の複数の素線の拡散することを防止している。
凹部50cは、拡散防止部50の幅方向中央部(図5(b)における上下方向中央部)に近付くにつれて、徐々に深さが深くなるように形成されているから、撚線の素線が鎖錠ばね31により付勢されて凹部50cの内面に当接された際には、素線が拡散防止部50の幅方向中央部側に誘い込まれることになり、これにより素線が放射状に広がってしまうことを防止し易くしている。また、前記略直交する方向における凹部50cの幅寸法は、撚線の外径寸法と略同じ大きさとなるように設定されており、これにより撚線の素線が、撚線の外径寸法以上に広がらないように規制している。
さらに、拡散防止部50では、副規制部50bを設けることによって、撚線の素線が、ボディ20Aの短手方向外側に広がってしまうことを防止している。
加えて、本実施形態の拡散防止部50は、上記実施形態1の拡散防止部5よりも電線の挿入方向における長さ(換言すれば電線挿入孔20aの開口縁部からの高さ)が長く形成されており、これにより上記実施形態1の拡散防止部5よりも撚線の素線が放射状に広がってしまうことを防止し易くしている。
ところで、上述したように拡散防止部50の電線の挿入方向における長さを長くしたり、副規制部50bを設けたりすることで、拡散防止部50を広範に設けようとした際には、鎖錠ばね31(特に、電線挿入孔20aの近傍に位置する鎖錠片31c)と干渉するおそれがある。そこで、本実施形態では、鎖錠ばね31との干渉を避けるために、拡散防止部50の副規制部50bの先端部をテーパ状に形成してテーパ面50dを設けることで、鎖錠ばね31と拡散防止部50とが干渉しないようにしている。
以上述べた本実施形態の端子装置1Aによれば、複数の素線を束ねてなる撚線を速結端子部Tに接続する際に、速結端子部Tによる電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向に撚線の素線が放射状に広がってしまうことが拡散防止部50によって防止されるから、撚線を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。その結果、撚線の素線が、速結端子部Tの端子板30や鎖錠ばね31と装置本体2Aのボディ20Aとの隙間や、解除釦34とボディ20Aとの隙間等に入り込んで動作不良の原因になることがなくなり、また、速結端子部Tと撚線の接触部分に異常な温度上昇が生じたり、速結端子部Tと撚線の電気的接続が不安定になったり、速結端子部Tから撚線が抜け易くなるといった問題も防止することができる。
加えて、拡散防止部50を、ボディ20Aの内側における電線挿入孔20aの開口縁部と、端子板30との間に介在するようにして設けているので、端子板30の形状等の影響を受けることがなく、拡散防止部50の形状や寸法等の設計の自由度、特に拡散防止部50(特に主規制部50aの凹部50c)の幅寸法の自由度を向上できるという効果を奏する。上記の例では、前記略直交する方向における凹部50cの幅寸法を、撚線の外径寸法と略同じ大きさとなるように設定してあり、これにより撚線の素線が、撚線の外径寸法以上に広がらないように規制できるという効果を奏する。
さらに、拡散防止部50を、合成樹脂成形品であるボディ20Aに一体に設けるようにしているので、端子板や鎖錠ばね等の金属材料を加工する場合に比べて、形状の設計の自由度を高くでき、しかも製品(又はロット)毎に、拡散防止部の形状がばらついてしまうことがなく、略等しい形状の拡散防止部50を得ることができるから、常に安定した効果が得られるようになる。
しかも、本実施形態の端子装置1Aでは、拡散防止部50の先端部をテーパ状に形成して、鎖錠ばね31と拡散防止部50とが干渉しないようにすることで、実施形態1よりも拡散防止部50を広範囲に亘って形成しているので、実施形態1の拡散防止部5よりも撚線の素線が放射状に広がってしまうことを防止し易くなって、撚線をさらに確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。また、拡散防止部50を設けるために、鎖錠ばね31の形状等を変更する必要がなく、容易に製造できるという効果を奏する。
(実施形態3)
本実施形態の端子装置1Bは、図6(a),(b)に示すように、装置本体2Bの構成に特徴があり、その他の構成は上記実施形態2の端子装置1Aと同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
装置本体2Bは、いずれも合成樹脂成形品からなるボディ20Bと、カバー21と、反転ハンドル22と、ハンドルカバー23とで構成され、その外形寸法は、上記実施形態1の装置本体2と同様の寸法に形成されている。
ボディ20Bは、図6(a),(b)に示すように、前面が開口した矩形箱状に形成されており、その底壁部の四隅部には、図6(a)に示すように、電線を装置本体2B内に挿入するための電線挿入孔24が設けられており、電線挿入孔24は、電線を挿入可能な程度の大きさの略円形状に形成された大径部24aと、大径部24aの内面におけるボディ20Bの長手方向外側(図6(a)に示す例では右側)の部位に設けられた小径部24bとで構成されている。
また、ボディ20Bの内側における電線挿入孔24の開口縁部には、図6(a),(b)に示すように、該開口縁部と速結端子部Tの端子板30との間に介在するように拡散防止部51が一体に突設されている。
拡散防止部51は、図6(a)に示すように、電線挿入孔24においてボディ20Bの長手方向外側の開口縁部(すなわち、電線挿入孔24において小径部24bが設けられている側の開口縁部)に突設された略矩形状の主規制部50aと、電線挿入孔24においてボディ20Bの短手方向外側の開口縁部に突設された略矩形状の副規制部50bとを一体に備える略L字状に形成されている。
この主規制部50aには、ボディ20Bの長手方向において電線挿入孔24側を向いた面に、電線挿入孔24の大径部24aの内面と連続する曲面形状の内面を有する凹部50cが設けられており、これにより、速結端子部Tによる電線の狭持方向(図6(a)における左右方向)と電線の挿入方向(図6(a)における紙面手前方向)にそれぞれ略直交する方向(図6(a)における上下方向)において、撚線の複数の素線の拡散することを防止している。
また、凹部50cは、拡散防止部51の幅方向中央部(図6(a)における上下方向中央部)に近付くにつれて、徐々に深さが深くなるように形成されているから、撚線の素線が鎖錠ばね31により付勢され、凹部50cの内面に当接された際には、素線が拡散防止部51の幅方向中央部側に誘い込まれることになり、これにより素線が放射状に広がってしまうことを防止し易くしている。
さらに、本実施形態のボディ20Bでは、電線挿入孔24が大径部24aと小径部24bとで構成されているため、主規制部50aには、小径部24bの内面に連続する曲面形状の内面を有する凹部からなる誘導凹部50eが設けられており、上述したように凹部50cによって拡散防止部51の幅方向中央側に集められた素線は、さらに誘導凹部50eに誘い込まれることになる。ここで、誘導凹部50eは、凹部50cと同様に、拡散防止部51の幅方向中央部(図6(a)における上下方向中央部)に近付くにつれて、徐々に深さが深くなるように形成されているから、撚線の素線が鎖錠ばね31により付勢された際には、素線が拡散防止部51の幅方向中央部側に誘い込まれることになり、これにより、さらに素線が放射状に広がってしまうことを防止し易くしている。
したがって、以上述べた本実施形態の端子装置1Bによれば、上記実施形態2と同様の効果を奏する上に、拡散防止部51において電線が当接される面である凹部50cの内面には、撚線の複数の素線を収束するように誘い込む誘導凹部50eが形成されているので、撚線の複数の素線が鎖錠ばねにより付勢されて凹部50cに当接された際に、素線が誘導凹部50eに誘い込まれることになるから、素線が放射状に広がってしまうことをさらに防止し易くなるという効果を奏する。
ところで、本実施形態の端子装置1Bの例は、図6(a),(b)に示す例に限られるものではなく、例えば図7(a)に示すように、誘導凹部50eの内面を、拡散防止部51において電線が当接される面である凹部50cの内面と連続する曲面状に形成するようにしてもよい。このようにすれば、図6(a),(b)に示す例とは異なり、凹部50cの内面と誘導凹部50eの内面との繋ぎ目に角がなくないから、撚線の素線が凹部50cから誘導凹部50e側に移動しようとする際に、上記のような角に引っ掛かってしまうことがなくなって、撚線の素線を誘導凹部側に誘い込み易くなるという効果を奏する。
また、図7(b)に示すように、誘導凹部50eの内面を、上述したような曲面形状ではなく、凹部50cの内面と連続する平面P1,P2と、平面P1,P2を繋ぐ平面P3とで構成するようにしてもよい。このようにすれば、図7(a)に示す例と同様に、凹部50cの内面と誘導凹部50eの内面との繋ぎ目に角がなくないから、撚線の素線が凹部50cから誘導凹部50e側に移動しようとする際に、上記のような角に引っ掛かってしまうことがなくなって、撚線の素線を誘導凹部側に誘い込み易くなるという効果を奏する。加えて、平面形状は曲面形状に比べて加工が容易であるから、ボディ20B用の金型等を容易に作成することが可能となり、これにより製造を容易に行えるようになるという効果を奏する。
(実施形態4)
上述した実施形態1の端子装置1では、装置本体2に拡散防止部5を設けていたが、本実施形態の端子装置1Cでは、速結端子部の端子板に拡散防止部52を設けていることに特徴がある。尚、上記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略し、以下の説明では、図8(a)における上方を端子装置の前方、図8(a)における下方を端子装置の後方と規定する。
端子装置1Cは、図8(a),(b)に示すように、電線挿入孔20aが設けられたボディ20Cを有する装置本体2Cと、該装置本体2Cのボディ20Cの電線挿入孔20aより挿入された電線を、導電性を有する端子板30Cと鎖錠ばね31の間に導入して、端子板30Cと鎖錠ばね31で狭持する速結端子部Tを有する端子ブロック3Cと、スイッチブロック4とを備え、端子ブロック3Cの端子板30Cには、速結端子部T1による電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向において、撚線の複数の素線の拡散を防止する拡散防止部52が一体に形成されている。
まず、装置本体2Cについて説明する。装置本体2Cは、図8(a)に示すように、いずれも合成樹脂成形品からなるボディ20Cと、カバー21と、反転ハンドル22と、ハンドルカバー23とで構成されており、その外形寸法は、上記実施形態1の装置本体2と同様の外形寸法に形成されている。
ボディ20Cは、上記実施形態1のボディ2と同様のものであるが、図8(a)に示すように、拡散防止部5を備えていない点で異なっている。
端子ブロック3Cは、図8(a)に示すように、一対の端子板30C,30Cを有する電源用端子部32Cと、負荷用端子部33と、4個の鎖錠ばね31と、2個の解除釦34とを有している。
電源用端子部32Cは、図9(a)に示すように、銅板等の導電性を有する金属板から曲成されており、略矩形状に形成されてボディ20Cの電線挿入孔20aからボディ20C内に挿入された電線が個別に接触される一対の端子板30C,30Cと、開閉子42を基端部で揺動自在に支持する支持片32aと、各端子板30Cとの間で鎖錠ばね31を狭持する押さえ片32bとを一体に備えている。
ここで、端子板30Cにおいて、図8(b)に示すように、電線挿入孔20aから装置本体2C内に電線を挿入した際に、電線が鎖錠片31cに接触する前に、電線と接触される部位には、一対のリブ52a,52aが設けられている。ここで、一対のリブ52a,52aは、端子板30Cの幅方向(すなわち、速結端子部T1による電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向)の両側を、鎖錠ばね31側(端子板30Cにおいて電線が接触される面側)に膨出することで形成されており、この一対のリブ52aが設けられた端子板30Cの部位が拡散防止部52として用いられる。つまり、本実施形態の端子装置1Cでは、拡散防止部52は、速結端子部Tの端子板30Cを凹凸形状に加工することにより形成されているのである。
以上述べた本実施形態の端子装置1Cでは、電源用端子部32Cの一対の端子板30C,30Cと、各端子板30Cに対応する鎖錠ばね31とによって2つの速結端子部T1が構成されるとともに、負荷用端子部33の一対の端子板30,30と、各端子板30に対応する鎖錠ばね31とによって2つの速結端子部Tが構成されている。また、各速結端子部T1の端子板30Cにおいて、電線挿入孔20aから装置本体2C内に電線を挿入した際に電線の先部が鎖錠片31cに接触する前に電線の先部が接触される部位には、一対のリブ52a,52aを有する拡散防止部52が設けられている。
そして、端子装置1Cの速結端子部T1に電線を接続する際には、電線の先部を装置本体2Cの長手方向一端側の電線挿入孔20aから装置本体2C内に挿入して、電線の先部にて鎖錠ばね31の鎖錠片31c及び弾接片31bを押圧していけばよい。このようにすれば、電線が鎖錠ばね31と端子板30Cの間に導入されて、鎖錠ばね31と端子板30Cとで狭持されることになり、これにより電線が速結端子部T1に接続されるとともに、鎖錠片31cが電線に食い込むことによって、電線の抜けが防止される。
ここで、速結端子部T1に接続する電線が、複数の素線を束ねてなる撚線であっても、拡散防止部52の一対のリブ52a,52aによって、速結端子部T1による電線の狭持方向(図8(b)における左右方向)と電線の挿入方向(図8(b)における上方向)とにそれぞれ略直交する方向(図8(b)における紙面に直交する方向)への素線の移動が規制されるから、素線が上記略直交する方向に放射状に広がってしまうことが抑制されることになる。
つまり、以上述べた本実施形態の端子装置1Cによれば、複数の素線を束ねてなる撚線を速結端子部T1に接続する際に、速結端子部T1による電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向において、撚線の両側に、拡散防止部52の一対のリブ52a,52aが設けられていることによって、撚線の素線が前記略直交する方向に放射状に広がってしまうことが防止されるから、撚線を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。その結果、撚線の素線が、速結端子部T1の端子板30Cや鎖錠ばね31と装置本体2Cのボディ20Cとの隙間や、解除釦34とボディ20Cとの隙間等に入り込んで動作不良の原因になることがなくなり、また、速結端子部T1と撚線の接触部分に異常な温度上昇が生じたり、速結端子部T1と撚線の電気的接続が不安定になったり、速結端子部T1から撚線が抜け易くなるといった問題も防止することができる。
また、本実施形態の端子装置1Cでは、速結端子部T1の端子板30Cに拡散防止部52を一体に設けているので、実施形態1とは異なり端子装置の装置本体に一体に設けた拡散防止部にあわせて速結端子部の端子板の寸法を調整したりする必要がなく、従来の装置本体をそのまま用いることができるから、製造が容易になるという効果を奏する。
ところで、上記の例では、拡散防止部52用の一対のリブ52a,52aを、端子板30Cを凹凸形状に加工することにより形成しているが、図9(b)に示すように、端子板30Cを曲げ加工することにより拡散防止部53を形成するようにしてもよい。
すなわち、図9(b)に示す例では、端子板30Cにおいて、電線挿入孔20aから装置本体2C内に電線を挿入した際に電線の先部が鎖錠片31cに接触する前に電線の先部が接触される部位における幅方向両端部に、それぞれ一体に突設した一対のリブ53a,53aを、鎖錠ばね31側(端子板30Cにおいて電線が接触される面側)に曲げ加工することで、一対のリブ53a,53aが設けられた端子板30Cの部位を拡散防止部53として用いるようにしている。
このような図9(b)に示す拡散防止部53を備える端子板30Cを用いた場合でも、図9(a)に示す拡散防止部52を備える端子板30Cを用いた場合と同様の効果が得られる。但し、図9(b)に示すように端子板30Cを曲げ加工する場合、端子板30Cが細いと、曲げ加工が困難になってしまうが、図9(a)に示すように端子板を凹凸形状に加工する場合は、端子板30Cが細くても拡散防止部を容易に設けることができるというメリットがある。
尚、上記の例では、電源用端子部のみに拡散防止部52(又は拡散防止部53)を設ける例を示しているが、勿論、負荷用端子部にも拡散防止部52(又は拡散防止部53)を設けるようにしてもよい。
ところで、本実施形態で述べた拡散防止部が設けられた端子板30を、上記の実施形態1〜3のいずれかの構成に採用することで、拡散防止部を、速結端子部の端子板と装置本体の両方に設けるようにしてもよく、このようにすれば、さらに撚線を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。この点は、後述する実施形態5においても同様である。
(実施形態5)
本実施形態の端子装置1Dは、端子板30Dの構成に特徴があり、その他の構成は、上記実施形態4と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。尚、以下の説明では、図10(a)における上方を端子装置の前方、図10(a)における下方を端子装置の後方と規定する。
端子装置1Dは、図10(a),(b)に示すように、電線挿入孔20aが設けられたボディ20Cを有する装置本体2Cと、該装置本体2Cのボディ20Cの電線挿入孔20aより挿入された電線を、導電性を有する端子板30Dと鎖錠ばね31の間に導入して、端子板30Dと鎖錠ばね31で狭持する速結端子部T2を有する端子ブロック3Dと、スイッチブロック4とを備え、端子ブロック3Dの端子板30Dには、速結端子部T2による電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向において、撚線の複数の素線の拡散を防止する拡散防止部54が、一体に形成されている。
端子ブロック3Dは、図10(a)に示すように、一対の端子板30D,30Dを有する電源用端子部32Dと、一対の端子板30,30を有する負荷用端子部33と、4個の鎖錠ばね31と、2個の解除釦34とを有している。
電源用端子部32Dは、図11に示すように、銅板等の導電性を有する金属板から曲成されており、略矩形状に形成されてボディ20Cの電線挿入孔20aからボディ20C内に挿入された電線が個別に接触される一対の端子板30D,30Dと、開閉子42を基端部で揺動自在に支持する支持片32aと、各端子板30Dとの間で鎖錠ばね31を狭持する押さえ片32bとを一体に備えている。
ここで、端子板30Dにおいて、図10(b)に示すように、電線挿入孔20aから装置本体2C内に電線を挿入した際に電線の先部が鎖錠片31cに接触する前に電線の先部が接触される部位には、電線挿入孔20a側の端部が開放された溝部54aが設けられている。ここで、溝部54aは、端子板30Dの幅方向(すなわち、速結端子部Tによる電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向)の中央部を、鎖錠ばね31と反対側に凹設することで形成されており、この溝部54aが設けられた端子板30Dの部位が拡散防止部54として用いられる。つまり、本実施形態の端子装置1Dでは、拡散防止部54は、速結端子部T2の端子板30Dを凹凸形状に加工することにより形成されているのである。
また、溝部54aの内側面は、図11に示すように、端子板30Dにおいて電線が接触される面の面方向にいくにつれて拡開となる緩やかなテーパ面に形成されている。したがって、この拡散防止部54では、端子板30Dの幅方向においては、溝部54aの幅方向の内側面によって、撚線の素線が放射状に広がってしまうことを防止するとともに、溝部54a内に撚線の素線が誘い込み易くし、電線の挿入方向においては、電線が溝部54aの内面に引っ掛かることなく鎖錠ばね31cと端子板30Dとの間に導入できるようにしている。
以上述べた本実施形態の端子装置1Dでは、電源用端子部32Dの一対の端子板30D,30Dと、各端子板30Dに対応する鎖錠ばね31とによって2つの速結端子部T2が構成されるとともに、負荷用端子部33の一対の端子板30,30と、各端子板30に対応する鎖錠ばね31とによって2つの速結端子部Tが構成されている。また、各速結端子部Tの端子板30Dにおいて、電線挿入孔20aから装置本体2C内に電線を挿入した際に電線の先部が鎖錠片31cに接触する前に電線の先部が接触される部位には、溝部54aを有する拡散防止部54が設けられている。
そして、端子装置1Dに電線を接続する際には、電線の先部を装置本体2Cの長手方向一端側の電線挿入孔20aから装置本体2C内に挿入して、電線の先部にて鎖錠ばね31の鎖錠片31c及び弾接片31bを押圧していけばよい。このようにすれば、電線が鎖錠ばね31と端子板30Cの間に導入されて、鎖錠ばね31と端子板30Cとで狭持されることになり、これにより電線が速結端子部T2に接続されるとともに、鎖錠片31cが電線に食い込むことによって、電線の抜けが防止される。
ここで、速結端子部T2に接続する電線が、複数の素線を束ねてなる撚線であっても、拡散防止部54の溝部54aの内側面によって、速結端子部T2による電線の狭持方向(図10(b)における左右方向)と電線の挿入方向(図10(b)における上方向)とにそれぞれ略直交する方向(図10(b)における紙面に直交する方向)への素線の移動が規制されるから、素線が上記略直交する方向に放射状に広がってしまうことが抑制されることになる。
つまり、以上述べた本実施形態の端子装置1Dによれば、複数の素線を束ねてなる撚線を速結端子部T2に接続する際に、速結端子部T2による電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向において、撚線が拡散防止部54の溝部54a内に位置することで、撚線の素線が前記略直交する方向に放射状に広がってしまうことが防止されるから、撚線を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。その結果、撚線の素線が、速結端子部T2の端子板30Dや鎖錠ばね31と装置本体2Cのボディ20Cとの隙間や、解除釦34とボディ20Cとの隙間等に入り込んで動作不良の原因になることがなくなり、また、速結端子部T2と撚線の接触部分に異常な温度上昇が生じたり、速結端子部T2と撚線の電気的接続が不安定になったり、速結端子部T2から撚線が抜け易くなるといった問題も防止することができる。
また、本実施形態の端子装置1Dでは、速結端子部T2の端子板30Dに拡散防止部54を一体に設けているので、実施形態1とは異なり端子装置の装置本体に一体に設けた拡散防止部にあわせて速結端子部の端子板の寸法を調整したりする必要がなく、従来の装置本体をそのまま用いることができるから、製造が容易になるという効果を奏する。
さらに、端子板が細く曲げ加工を行うことが困難な場合でも、拡散防止部を容易に設けることができるという効果を奏する。
尚、上記の例では、電源用端子部のみに拡散防止部54を設ける例を示しているが、勿論、負荷用端子部にも拡散防止部54を設けるようにしてもよい。
(実施形態6)
上述した実施形態4の端子装置1Cでは、速結端子部Tの端子板30Cに拡散防止部を設けていたが、本実施形態の端子装置では、速結端子部の鎖錠ばねに拡散防止部を設けていることに特徴がある。尚、上記実施形態1又は実施形態4と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
つまり、本実施形態の端子装置では、図12(a)に示すような鎖錠ばね31Eを用いている。この鎖錠ばね31Eは、実施形態1で述べた鎖錠ばね31と同様に、平板部31aと、弾接片31bと、鎖錠片31cとを一体に備えているが、鎖錠片31cの先端面(電線に接触される側の面)に、切欠部55aが設けられている点で異なっている。
ここで、切欠部55aは、鎖錠片31cの幅方向中央部にいくにつれて深さが深くなる略半円状に形成されており、この切欠部55aが設けられた鎖錠片31cの部位が拡散防止部55として用いられる。つまり、本実施形態の端子装置では、拡散防止部55は、速結端子部の鎖錠ばね31Eを加工することにより形成されているのである。
したがって、本実施形態の端子装置に電線を接続する際に、電線の先部にて鎖錠ばね31の鎖錠片31cを押圧しようとした際には、撚線が鎖錠片31cに設けられた拡散防止部55の切欠部55a内に位置した状態で、鎖錠片31cが押圧されることになるから、速結端子部による電線の狭持方向と電線の挿入方向とにそれぞれ略直交する方向への撚線の素線の移動が規制され、これにより、撚線の素線が鎖錠ばね31Eの付勢力によって、上記略直交する方向に放射状に広がってしまうことが抑制されることになる。
以上述べたように本実施形態の端子装置によれば、複数の素線を束ねてなる撚線を速結端子部に接続する際に、速結端子部による電線の狭持方向と電線の挿入方向にそれぞれ略直交する方向に撚線の素線が放射状に広がってしまうことが、拡散防止部55によって防止されるから、撚線を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。その結果、撚線の素線が、速結端子部の端子板や鎖錠ばねと装置本体のボディとの隙間や、解除釦とボディとの隙間等に入り込んで動作不良の原因になることがなくなり、また、速結端子部Tと撚線の接触部分に異常な温度上昇が生じたり、速結端子部Tと撚線の電気的接続が不安定になったり、速結端子部Tから撚線が抜け易くなるといった問題も防止することができる。
また、本実施形態の端子装置では、速結端子部の鎖錠ばね31Eに拡散防止部55を一体に設けているので、実施形態1とは異なり端子装置の装置本体に一体に設けた拡散防止部にあわせて速結端子部の端子板の寸法を調整したりする必要がなく、従来の装置本体をそのまま用いることができるから、製造が容易になるという効果を奏する。
ところで、上記の例では、鎖錠片31cに切欠部55aを形成することで拡散防止部55を設けているが、図12(b),(c)に示すように、鎖錠片31cを曲げ加工することにより拡散防止部56を形成するようにしてもよい。
すなわち、図12(b),(c)に示す例では、鎖錠片31cの幅方向両端側を、鎖錠片31cにおいて電線挿入孔20aと対向する面の面方向側に曲げることで、鎖錠片31cにおいて電線挿入孔20aと対向する面に凹部56aを形成し、この凹部56aが形成された鎖錠片31cの部位を拡散防止部56として用いるようにしている。尚、凹部56aは、鎖錠片31cの基端側から先端側にいくにつれて、底面の幅方向の寸法が小さくなるような形状に形成してあり、これにより撚線の素線を鎖錠片31cの幅方向中央部に集め易くしている。
このような図12(b),(c)に示す拡散防止部56を備える鎖錠ばね31Eを用いた場合でも、図12(a)に示す拡散防止部55を備える鎖錠ばね31Eを用いた場合と同様の効果を得ることができる。
ところで、上述したように、拡散防止部が設けられた鎖錠ばね31Eを、上記の実施形態1〜3のいずれかの構成に採用すれば、速結端子部の鎖錠ばねと装置本体の両方に拡散防止部が設けられた端子装置を得ることができる。また、鎖錠ばね31Eを、上記の実施形態4又は実施形態5の構成に採用すれば、速結端子部の端子板と鎖錠ばねの両方に拡散防止部が設けられた端子装置を得ることができる。或いは、このように鎖錠ばねと端子板の両方に拡散防止部を設ける構成を、上記実施形態1〜3のいずれかの構成に採用すれば、速結端子部の鎖錠ばね及び端子板と装置本体の全てに拡散防止部が設けられた端子装置を得ることができる。このように、拡散防止部を1つではなく、複数設けるようにすれば、さらに撚線を確実且つ安定に接続できるという効果を奏する。