JP4719140B2

JP4719140B2 - 電磁弁装置及びこれを備えたエンジンの燃料噴射装置

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Publication number: JP4719140B2
Application number: JP2006342183A
Authority: JP
Inventors: 久雄小川; 正樹戸田
Original assignee: Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Current assignee: Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date: 2006-12-20
Filing date: 2006-12-20
Publication date: 2011-07-06
Anticipated expiration: 2026-12-20
Also published as: US20080149071A1; EP1944501A2; US7383819B1; EP1944501B1; DE602007004429D1; EP1944501A3; ATE455953T1; JP2008151082A

Description

本発明は、流体通路を開閉する弁体の端部に連結した板状のアーマチュアと、ソレノイドコイルへの通電により発生する吸引力によってアーマチュアを吸引して弁体により流体通路を閉鎖せしめ前記通電の遮断によりアーマチュアへの吸引力を解除するソレノイド装置と、前記通電の遮断時にアーマチュアを弁体による流体通路の開放位置まで押し戻す戻しばねとをそなえた電磁弁装置及び該電磁弁装置を備えたエンジンの燃料噴射装置に関する。

ディーゼルエンジンのユニットインジェクタ式燃料噴射装置には、プランジャ室と排油側との間の燃料通路を連通あるいは遮断するポペット弁の端部に連結した板状のアーマチュアと、ソレノイドコイルへの通電により発生する吸引力によって前記アーマチュアを吸引して前記ポペット弁により前記燃料通路を閉鎖せしめ前記通電の遮断により該アーマチュアへの吸引力を解除するソレノイド装置と、前記通電の遮断時に前記アーマチュアを前記ポペット弁による前記燃料通路の開放位置まで押し戻す戻しばねとをそなえ、前記ソレノイド装置による前記アーマチュアの吸引によりポペット弁を閉じプランジャ室を密閉して燃料噴射を開始し、ソレノイド装置の通電を遮断し戻しばねの戻し力によってポペット弁を開きプランジャ室を開放して燃料噴射を終了するように構成された電磁弁装置を備えたものが多く採用されている。

前述のような電磁弁装置の一つとして、特許文献１（特開平７−２７９７９２号公報）にて提供されている技術がある。
かかる技術における電磁弁装置は、プランジャ室と排油側との間の燃料通路を連通あるいは遮断するニードル弁の端部に連結した板状のアーマチュアと、ソレノイドコイルへの通電により発生する吸引力によって前記アーマチュアを吸引して前記ニードル弁により前記燃料通路を閉鎖せしめ前記通電の遮断により該アーマチュアへの吸引力を解除するソレノイド装置と、前記通電の遮断時に前記アーマチュアを前記ニードル弁による前記燃料通路の開放位置まで押し戻す戻しばねとをそなえ、前記ソレノイド装置による前記アーマチュアの吸引によりニードル弁を閉じプランジャ室を密閉して燃料噴射を開始し、ソレノイド装置の通電を遮断し戻しばねの戻し力によってニードル弁を開きプランジャ室を開放して燃料噴射を終了するように構成されている。

そして、該電磁弁装置は、ケースのアーマチュア側部位置にソレノイド装置の端面とアーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙とアーマチュア室との間の連通路を設けるとともに、該連通路に前記微小間隙からアーマチュア室側に向かう流体に流れを許容する逆止弁を設け、前記ニードル弁の閉時には微小間隙側の圧力上昇によって逆止弁を閉じて微小間隙内を密閉状態にし、該逆止弁により微小間隙内とアーマチュア室との間にアーマチュア及びニードル弁をロック状態にして、該ニードル弁のバウンスを回避している。

特開平７−２７９７９２号公報

しかしながら、前記特許文献１（特開平７−２７９７９２号公報）の技術には、次のような解決すべき課題がある。
（１）ニードル弁の閉時には微小間隙側の圧力上昇によって逆止弁を閉じて微小間隙内とアーマチュア室にアーマチュアへ作用する減衰力が発生し、該ニードル弁のバウンスを回避しているため、ニードル弁が上動して開弁すると同時にアーマチュア室内が圧力上昇するとともに前記微小間隙の圧力が急低下して逆止弁が開き、アーマチュア室内の流体が逆止弁を通って微小間隙内に流入することとなって、該微小間隙内に臨むアーマチュアの表面にキャビテーションエロージョンが発生し易い。
（２）ケースのアーマチュア側部位置にアーマチュア室との間の連通路及びこれを開閉する逆止弁を設置しているので、かかる連通路及び逆止弁の設置スペースを必要として、電磁弁装置が大型化する。

本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、電磁弁装置を大型化することなく小型コンパクト化して、微小間隙の急速な圧力変化によるキャビテーションの発生を防止した電磁弁装置及びこれを備えたエンジンの燃料噴射装置を提供することを目的とする。

先ず本発明の参考発明として、流体通路を開閉する弁体の端部に連結した板状のアーマチュアと、ソレノイドコイルへの通電により発生する吸引力によって前記アーマチュアを吸引して前記弁体により前記流体通路を閉鎖せしめ前記通電の遮断により該アーマチュアへの吸引力を解除するソレノイド装置と、前記通電の遮断時に前記アーマチュアを前記弁体による前記流体通路の開放位置まで押し戻す戻しばねとをそなえた電磁弁装置であって、前記アーマチュアに前記ソレノイド装置側の吸引面と前記弁体側の裏面とを貫通する通路穴を形成するとともに薄板からなる薄板弁を装着し、前記アーマチュアの吸引時に前記薄板弁の撓みにより前記通路穴を開放して前記ソレノイド装置の端面と前記アーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙と前記アーマチュアが臨むアーマチュア室とを連通させ、前記吸引力が解除され前記戻しばねによるアーマチュアの戻し時には前記薄板弁の復元により前記通路穴を閉鎖するように構成されたことを特徴とする電磁弁装置を提案する。

かかる電磁弁装置をエンジンの燃料噴射装置に適用した参考発明は、電磁弁装置は、前記弁体を、弁座に着脱することにより燃料噴射ポンプのプランジャ室と排油側とを連通あるいは遮断するポペット弁により構成するとともに、前記薄板弁が装着された前記アーマチュアへの通電時に前記ポペット弁を閉じて前記プランジャ室と排油側とを遮断することにより燃料噴射を開始し、前記通電の遮断時に前記戻しばねを介して前記ポペット弁を開いて前記プランジャ室と排油側とを連通することにより燃料噴射を終了するように構成してなる。

かかる参考発明によれば、エンジンの燃料噴射装置における燃料噴射開始時に、ソレノイド装置によりアーマチュアを吸引しポペット弁からなる弁体を上昇させ弁座に着座させて該ポペット弁を閉じる際に、アーマチュアの吸引によってソレノイド装置の端面と前記アーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙の圧力が上昇すると、この圧力上昇によってアーマチュアに装着された薄板弁が撓むことにより前記通路穴が開かれて、微小間隙の圧力がアーマチュア室に開放される。

このため、弁体が上昇して閉じるまでの過程では微小間隙の圧力上昇に従い薄板弁の撓みが増加し、該通路穴を通ってアーマチュア室に流入する微小間隙内からの流体の流量が増加することとなって、弁体のすみやかな上動を可能にし、アーマチュアの吸引が解除され戻しばねによるアーマチュアの戻しに伴う弁体の開弁時においてはかかる薄板が前記通路穴を塞ぐための弁体の急激な下降が抑えられ、急激な圧力降下が回避されて緩やかな圧力降下となり、アーマチュアの表面におけるキャビテーションエロージョンの発生を防止できる。

そして本発明は、流体通路を開閉する弁体の端部に連結した板状のアーマチュアと、ソレノイドコイルへの通電により発生する吸引力によって前記アーマチュアを吸引して前記弁体により前記流体通路を閉鎖せしめ前記通電の遮断により該アーマチュアへの吸引力を解除するソレノイド装置と、前記通電の遮断時に前記アーマチュアを前記弁体による前記流体通路の開放位置まで押し戻す戻しばねとをそなえた電磁弁装置であって、前記アーマチュアに前記ソレノイド装置側の吸引面と前記弁体側の裏面とを貫通する通路穴を形成し、該アーマチュアと前記弁体との連結部に前記通路穴と前記弁体の内部に形成された密閉空間との間を開閉する逆止弁を設け、前記逆止弁は、前記アーマチュアの吸引による前記弁体の上昇時には前記ソレノイド装置の端面と前記アーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙と前記密閉空間との圧力差により前記通路穴を開放して前記微小間隙と前記アーマチュアが臨むアーマチュア室とを該通路穴を介して連通させ、前記戻しばねの戻し力による前記弁体の下降時には前記密閉空間と前記微小間隙との圧力差により前記通路穴を閉鎖して該通路穴を介しての連通を遮断するように構成されたことを特徴とする。
更に前記アーマチュアに設けた通路穴は、上部側通路穴が吸引面の中央部から一定深さまで明けられ、ここから分岐された通路穴が二股状に外周側に向けて明けられているとともに、逆止弁の弁体が前記上部通路を閉塞可能に位置し、前記微小間隙と前記弁体内部空間との圧力差により前記通路穴を開閉するように構成されているのがよい。

かかる電磁弁装置をエンジンの燃料噴射装置に適用した発明は、前記弁体を、弁座に着脱することにより燃料噴射ポンプのプランジャ室と排油側とを連通あるいは遮断するポペット弁により構成して、前記アーマチュアと該ポペット弁との連結部に前記逆止弁が設けられ、前記アーマチュアへの通電時に前記ポペット弁を閉じて前記プランジャ室と排油側とを遮断することにより燃料噴射を開始し、前記通電の遮断時に前記戻しばねを介して前記ポペット弁を開いて前記プランジャ室と排油側とを連通することにより燃料噴射を終了するように構成してなる。

かかる発明によれば、エンジンの燃料噴射装置における燃料噴射開始時に、ソレノイド装置によりアーマチュアを吸引しポペット弁からなる弁体を上昇させ弁座に着座させて該ポペット弁を閉じる際に、アーマチュアの吸引によってソレノイド装置の端面と前記アーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙の圧力が上昇すると、該圧力上昇によってアーマチュアに設けられた逆止弁がアーマチュアと弁体との連結部に形成された通路穴を開き、微小間隙内の流体が該通路穴を通ってアーマチュア室に流入可能となって微小間隙の圧力がアーマチュア室に開放される。

このため、弁体が上昇して閉じるまでの過程では微小間隙の圧力上昇に従い逆止弁の開弁によって、前記通路穴を通ってアーマチュア室に流入する微小間隙内からの流体の流量が増加することとなって、弁体の上昇による前記微小間隙の圧力上昇が緩慢となり、これによりアーマチュアの吸引が解除され戻しばねによるアーマチュアの戻しに伴う弁体の開弁時における前記微小間隙の急激な圧力降下が回避されて緩やかな圧力降下となり、アーマチュアの表面におけるキャビテーションエロージョンの発生を防止できる。

本参考発明によれば、エンジンの燃料噴射装置における燃料噴射開始時に、ソレノイド装置によるアーマチュアの吸引による該ソレノイド装置の端面とアーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙の圧力上昇によって、アーマチュアに装着された薄板弁が撓むことにより前記通路穴が開かれて、微小間隙の圧力がアーマチュア室に開放される。
このため、弁体が閉じるまでの過程では微小間隙の圧力上昇に従い薄板弁の撓みが増加し、該通路穴を通ってアーマチュア室に流入する微小間隙内からの流体の流量が増加して、弁体上昇による微小間隙の圧力上昇が緩慢となり、これによりアーマチュアの戻しに伴う弁体の開弁時における微小間隙の急激な圧力降下が回避されて緩やかな圧力降下となり、アーマチュアの表面におけるキャビテーションエロージョンの発生を防止できる。

そして本発明によれば、エンジンの燃料噴射装置における燃料噴射開始時に、ソレノイド装置によりアーマチュアを吸引しポペット弁からなる弁体を閉じる際に、前記微小間隙の圧力が上昇すると、該圧力上昇によってアーマチュアに設けられた逆止弁がアーマチュアと弁体との連結部に形成された通路穴を開き、前記微小間隙内の流体が該通路穴を通ってアーマチュア室に流入可能となって微小間隙の圧力がアーマチュア室に開放される。
このため、弁体が閉じるまでの過程では微小間隙の圧力上昇に従う逆止弁の開弁によって、通路穴を通ってアーマチュア室に流入する微小間隙内からの流体の流量が増加して、弁体の上昇による前記微小間隙の圧力上昇が緩慢となり、これによりアーマチュアの戻しに伴う弁体の開弁時における微小間隙の急激な圧力降下が回避されて緩やかな圧力降下となり、アーマチュアの表面におけるキャビテーションエロージョンの発生を防止できる。

また前記特許文献１（特開平７−２７９７９２号公報）の技術では、ニードル弁の閉時に微小間隙側の圧力上昇によって逆止弁を閉じて微小間隙内を密閉状態にするために、アーマチュアの外周面とケース部材の内周面との間の間隙寸法を微小に形成する必要があり前記両面に高い加工精度を必要とするが、本発明においては、微小間隙内を密閉状態する必要は無いためアーマチュアの外周面とケース部材の内周面との間の間隙を大きく採ることができて、前記両面に高い加工精度は不要であり、加工工数を低減できる。

また、本参考発明によれば、前記特許文献１の技術のように、ケースのアーマチュア側部位置に連通路及び逆止弁の設置スペースを必要とせず、またアーマチュアにソレノイド装置側の吸引面とポペット弁からなる弁体側の裏面とを貫通する通路穴を形成するとともに薄板からなる薄板弁を装着し、あるいはアーマチュアに通路穴を形成し、アーマチュアと弁体との連結部に通路穴と弁体の内部に形成された密閉空間との間を開閉する逆止弁を設けるという、小型コンパクトで設置スペースが小さい装置で以って、前記のような効果を備えた電磁弁装置が得られる。

以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。

図５は本発明が適用されるディーゼルエンジンの電磁式ユニットインジェクタの全体構成を示す断面図である。
図５において、ユニットインジェクタ１００の弁本体１内には、プランジャ２が往復摺動可能に嵌合され、該プランジャ２は図示しない燃料カムによりタペット１６及びタペットスプリング１７を介して往復駆動される。該プランジャ２の頂面が臨むプランジャ室３には、後述するポペット弁４の開弁時に給・排油系から燃料通路２８を通って燃料が供給されており、該ポペット弁４が閉じられると、前記プランジャ２の下動によってプランジャ室３内の燃料が高圧に加圧され、この高圧燃料は燃料通路２２を通って燃料溜め２１に達し、針弁１９を針弁ばね２５のばね力に抗して押し上げて該針弁１９を開弁させる。
前記針弁１９の開弁により、前記燃料溜め２１内の高圧燃料はノズルチップ１８の先端部に設けられた噴孔２０から図示しない燃焼室内に噴射されて燃焼せしめられる。

前記ノズルチップ１８は、スペーサ２４を介してノズルナット２４によりスプリングケース２６に流体蜜に締着され、該スプリングケース２６は固定ナット２７により前記弁本体１の下端部に流体蜜に締着されている。

前記プランジャ２により加圧された高圧燃料の噴射タイミングは、電磁弁装置１０によって制御する。
即ち、該電磁弁装置１０には、ソレノイドケース３４の内部にソレノイドコイル１１をそなえたソレノイドコア１１ａが設けられるとともに、該ソレノイドコア１１ａの下面と微小間隙３３を介して、アーマチュア室３０内に配置された板状のアーマチュア１２が対向配置されている。そして、該アーマチュア１２は弁座５内に往復動可能に嵌合されたポペット弁４の上端部に取付ねじ３５によって固定されている。該ポペット弁４は、ポペット弁内部空間３１が形成された中空体に構成されている。
また、前記ソレノイドコイル１１は、ソレノイドコントローラ１５からの制御信号により通電、遮断されるようになっており、該ソレノイドコイル１１に通電されると、かかる通電により発生する吸引力によって前記アーマチュア１２を微小間隙３３の微小寸法Ｃまで吸引して前記ポペット弁４を前記弁座５のシート部６に着座させ、前記プランジャ室３への燃料通路２８を密閉することにより燃料噴射を開始する。

一方、前記ソレノイドコントローラ１５によりソレノイドコイル１１への通電が遮断されると、前記アーマチュア１２及びこれに固定されたポペット弁４はポペット弁ばね（戻しばね）８のばね力によって下方に押し戻されて該ポペット弁４がシート部６から離れて開弁する。該ポペット弁４の開弁により、前記プランジャ室３への燃料通路２８が排油ポート７及び排油室３２（図１参照）側に開放され、プランジャ室３側の圧力が急低下して燃料噴射が終了する。
本発明は、以上のように構成された電磁弁装置１０の構造に係るものである。

図１は本参考発明の第１参考例を示すディーゼルエンジンの電磁式ユニットインジェクタ用電磁弁装置の断面図で、ポペット弁上昇時を示す。また、図２は前記第１実施例における電磁弁装置の断面図でポペット弁下降時を示す。
図１〜２において、前記アーマチュア１２には、前記ソレノイドコア１１ａ側の吸引面１２ａと前記ポペット弁４側の裏面とを貫通する通路穴１３が、該アーマチュア１２の外周寄りの部位の同一半径位置に（同一半径に近い位置であればよい）が形成されている。
また、該アーマチュア１２の前記ポペット弁４側の裏面には、ステンレス薄板、樹脂製薄板等のばね機能をそなえた薄板からなる薄板弁１４が装着されている。該薄板弁１４は、中央部を前記取付ねじ３５によって前記ポペット弁４の上端部と共締めにて前記アーマチュア１２の裏面に固定され、中央部が固定端、外周部が自由端となっている。

以上のように構成された電磁弁装置１０において、図１に示される燃料噴射時には、エンジン回転数、エンジン負荷等のエンジン運転状態検出信号に基づく前記ソレノイドコントローラ１５からの制御信号によりソレノイドコイル１１に通電されると、かかる通電により発生する吸引力によって前記アーマチュア１２が微小間隙３３の微小寸法Ｃまで吸引されて、該アーマチュア１２に固定されているポペット弁４が上昇して弁座５のシート部６に着座する。これにより前記プランジャ室３への燃料通路２８が密閉されて、燃料噴射を開始する。

かかるアーマチュア１２及びポペット弁４の上動による、前記ソレノイドコア１１ａの端面１１ｂとアーマチュア１２の吸引面１２ａとの間に形成される微小寸法Ｃなる微小間隙３３内の圧力上昇によって、アーマチュア１２に装着された薄板弁１４の外周部が図１のように撓むことにより前記通路穴１３が開かれる。これにより、弁体のすみやかな上動を可能とする。
また、前記ポペット弁４が閉じるまでの過程では、前記微小間隙３３内の圧力上昇に従い薄板弁１４の撓みが増加し、前通路穴１３を通ってアーマチュア室３０に流入する微小間隙３３内からの流体（空気）の流量が増加して、ポペット弁４の上昇による微小間隙３３の圧力上昇が緩慢となる。

そして図２のように、燃料噴射終了時に、前記ソレノイドコントローラ１５によりソレノイドコイル１１への通電が遮断され、前記アーマチュア１２及びこれに固定されたポペット弁４がポペット弁ばね（戻しばね）８のばね力によって下方に押し戻されて開弁する場合には、かかるポペット弁４の下動により前記微小間隙３３の圧力が低下して、前記薄板弁１４がこれのばね力によって復元して前記通路穴１３を閉じる。よって弁体の急激な下降が抑えられ、急激な圧力降下が回避される。
これにより、従来技術に見られるような、前記アーマチュア１２の表面におけるキャビテーションエロージョンの発生を防止できる。
図１〜２において、図５と同一の部材は同一の符号で示す。

図３は本発明の実施例を示すディーゼルエンジンの電磁式ユニットインジェクタ用電磁弁装置の断面図で、ポペット弁上昇時を示す。また、図４は前記実施例における電磁弁装置の断面図でポペット弁下降時を示す。
かかる実施例において、前記アーマチュア１２には、前記ソレノイドコア１１ａ側の吸引面１２ａと前記ポペット弁４側の裏面とを貫通する通路穴４４，４１が形成されている。上部側の通路穴４４は吸引面１２ａの中央部から一定深さまで明けられ、ここから分岐された通路穴４１が二股状に外周側に向けて明けられている。
そして、前記ポペット弁４の上端部の前記アーマチュア１２との連結部には、前記通路穴４４，４１と前記ポペット弁４の内部に形成された密閉空間であるポペット弁内部空間３１との間を開閉する逆止弁４０が設けられている。

前記逆止弁４０は、球状の弁体４２と該弁体４２の押し戻し用のばね４３とにより構成され、前記ソレノイドコア１１ａの端面１１ｂと前記アーマチュア１２の吸引面１２ａとの間に形成される前記微小間隙３３と前記ポペット弁内部空間３１との圧力差により前記通路穴４４，４１を開閉するようになっている。

以上のように構成された電磁弁装置において、図３に示される燃料噴射時には、エンジン回転数、エンジン負荷等のエンジン運転状態検出信号に基づく前記ソレノイドコントローラ１５からの制御信号によりソレノイドコイル１１に通電されると、かかる通電により発生する吸引力によって前記アーマチュア１２が微小間隙３３の微小寸法Ｃまで吸引され、該アーマチュア１２に固定されているポペット弁４が上昇して弁座５のシート部６に着座する。これにより前記プランジャ室３への燃料通路２８が密閉されて、燃料噴射を開始する。

かかるアーマチュア１２及びポペット弁４の上動によって、前記ソレノイドコア１１ａの端面１１ｂとアーマチュア１２の吸引面１２ａとの間に形成される微小寸法Ｃに容積が縮小された微小間隙３３の圧力が上昇するとともに、前記ポペット弁４の上動によって密閉空間である前記ポペット弁内部空間３１の容積が増加して該ポペット弁内部空間３１が負圧になる。
かかる微小間隙３３（正圧）とポペット弁内部空間３（負圧）との圧力差によって、前記ポペット弁４の上端部の前記アーマチュア１２との連結部に設けられた逆止弁４０の弁体４２が下方に押し開かれて前記通路穴４４，４１を開く。
これにより、前記微小間隙３３内の流体（空気）が、矢印のように、前記通路穴４４，４１を通ってアーマチュア室３０に流入して、微小間隙３３の圧力がアーマチュア室３０に開放される。

このため、前記ポペット弁４が上昇してシート部６を閉じるまでの過程では前記微小間隙３３の圧力上昇に従う逆止弁４０の開弁によって、前記通路穴４４，４１を通ってアーマチュア室３０に流入する微小間隙３３内からの流体の流量が増加することとなって、ポペット弁４の上昇による前記微小間隙３３の圧力上昇が緩慢となり、急激な圧力上昇が回避されるとともに弁体のすみやかな上動を可能とする。

そして図４のように、燃料噴射終了時に、前記ソレノイドコントローラ１５によりソレノイドコイル１１への通電が遮断され、前記アーマチュア１２及びこれに固定されたポペット弁４がポペット弁ばね（戻しばね）８のばね力によって下方に押し戻されて開弁する場合、ポペット弁内部空間３が正圧となり逆止弁が閉弁する。このため、弁体の急激な下降が抑えられ、急激な圧力降下が回避される。
これにより、従来技術に見られるような、前記アーマチュア１２の表面におけるキャビテーションエロージョンの発生を防止できる。
図３〜４において、図５と同一の部材は同一の符号で示す。

以上の実施例によれば、前記特許文献１の技術のように、ケースのアーマチュア側部位置に連通路及び逆止弁の設置スペースを必要とせず、本実施例のようにアーマチュア１２に通路穴４４，４１を形成し、アーマチュア１２とポペット弁４との連結部に通路穴４４，４１とポペット弁内部空間３１との間を開閉する逆止弁４０を設けるという、小型コンパクトで設置スペースが小さい装置で以って、前記のような効果を備えた電磁弁装置１０が得られる。

またかかる実施例においては、前記微小間隙３３内を前記特許文献１（特開平７−２７９７９２号公報）の技術のように密閉状態する必要は無いため、アーマチュア１２の外周面と弁本体１の内周面との間の間隙を大きく採ることができて、前記特許文献１のような両面に高い加工精度は不要であり、加工工数を低減できる。

本発明は、以上の実施例に限られることなく、アーマチュアとこれに連結される弁体（スリーブ弁等）とをそなえた電磁弁装置に広く適用できる。

本発明によれば、電磁弁装置を大型化することなく小型コンパクト化して、アーマチュア及びその周辺部財のキャビテーションエロージョンの発生を防止した電磁弁装置及びこれを備えたエンジンの燃料噴射装置を提供できる。

本参考発明の参考例を示すディーゼルエンジンの電磁式ユニットインジェクタ用電磁弁装置の断面図で、ポペット弁上昇時を示す。前記参考例における電磁弁装置の断面図で、ポペット弁下降時を示す。本発明の実施例を示すディーゼルエンジンの電磁式ユニットインジェクタ用電磁弁装置の断面図で、ポペット弁上昇時を示す。前記実施例における電磁弁装置の断面図で、ポペット弁下降時を示す。本発明が適用されるディーゼルエンジンの電磁式ユニットインジェクタの全体構成を示す断面図である。

１弁本体
２プランジャ
３プランジャ室
４ポペット弁
５弁座
６シート部
８ポペット弁ばね
１０電磁弁装置
１１ソレノイドコイル
１１ａソレノイドコア
１２アーマチュア
１２ａ吸引面
１３通路穴
１４薄板弁
１５ソレノイドコントローラ
１９針弁
２０噴孔
２８燃料通路
３０アーマチュア室
３３微小間隙
４０逆止弁
４１，４４通路穴
１００ユニットインジェクタ

Claims

流体通路を開閉する弁体の端部に連結した板状のアーマチュアと、ソレノイドコイルへの通電により発生する吸引力によって前記アーマチュアを吸引して前記弁体により前記流体通路を閉鎖せしめ前記通電の遮断により該アーマチュアへの吸引力を解除するソレノイド装置と、前記通電の遮断時に前記アーマチュアを前記弁体による前記流体通路の開放位置まで押し戻す戻しばねとをそなえた電磁弁装置であって、前記アーマチュアに前記ソレノイド装置側の吸引面と前記弁体側の裏面とを貫通する通路穴を形成し、該アーマチュアと前記弁体との連結部に前記通路穴と前記弁体の内部に形成された密閉空間との間を開閉する逆止弁を設け、前記逆止弁は、前記アーマチュアの吸引による前記弁体の上昇時には前記ソレノイド装置の端面と前記アーマチュアの吸引面との間に形成される微小間隙と前記密閉空間との圧力差により前記通路穴を開放して前記微小間隙と前記アーマチュアが臨むアーマチュア室とを該通路穴を介して連通させ、前記戻しばねの戻し力による前記弁体の下降時には前記密閉空間と前記微小間隙との圧力差により前記通路穴を閉鎖して該通路穴を介しての連通を遮断するように構成されたことを特徴とする電磁弁装置。
前記アーマチュアに設けた通路穴は、上部側通路穴が吸引面の中央部から一定深さまで明けられ、ここから分岐された通路穴が二股状に外周側に向けて明けられているとともに、逆止弁の弁体が前記上部通路を閉塞可能に位置し、前記微小間隙と前記弁体内部空間との圧力差により前記通路穴を開閉するように構成されている前記請求項1記載の電磁弁装置。
前記弁体を、弁座に着脱することにより燃料噴射ポンプのプランジャ室と排油側とを連通あるいは遮断するポペット弁により構成して、前記アーマチュアと該ポペット弁との連結部に前記逆止弁が設けられ、前記アーマチュアへの通電時に前記ポペット弁を閉じて前記プランジャ室と排油側とを遮断することにより燃料噴射を開始し、前記通電の遮断時に前記戻しばねを介して前記ポペット弁を開いて前記プランジャ室と排油側とを連通することにより燃料噴射を終了するように構成してなる請求項１記載の電磁弁装置をそなえたことを特徴とするエンジンの燃料噴射装置。