本発明は、微生物を利用したセレン酸化合物含有液の処理方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、セレン酸化合物含有液に硝酸イオンや亜硝酸イオンが含まれている場合であってもセレン酸還元能が阻害されないセレン酸還元微生物と、この微生物を利用したセレン酸化合物含有液の処理方法並びにセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターに関する。
尚、本明細書においては、セレン酸イオンと亜セレン酸イオンを総称してセレン酸化合物と呼ぶこととする。
セレンは、光照射により電気伝導度が大きくなる性質を有する元素として知られており、その化合物は、半導体、光電池、コピー機の感光体、ガラス工業における色消し剤、着色ガラスといった幅広い用途がある産業上有用な物質である。しかし、その一方で、生物に対して高い毒性を呈する物質としても知られており、平成5年の水質汚濁防止法改正時に、セレンの一律排水基準は0.1mg/Lと制定された。したがって、排水基準値を満たすべく、セレン酸化合物を効率的に処理する方法が各種提案されている。
例えば、セレン酸還元能を有する微生物であるバチルス属(Bacillus spp.) SF-1(FERM P-15431)を、セレン酸またはその含有物と接触させて、元素状セレンに還元して無毒化する方法が提案されている(特許文献1)。
ところで、火力発電所や、半導体製造施設、電気メッキ施設、無機化学工業製品製造業の施設、産業廃棄物処理施設から排出される排水中には、セレン酸化合物と共に硝酸イオンや亜硝酸イオンも含まれる。ここで、セレン酸還元微生物であるバチルス属(Bacillus spp.) SF-1(FERM P-15431)が、硝酸イオンの存在下において、セレン酸還元能が阻害されることが報告されている(非特許文献1)。また、セレン酸含有排水中にセレン酸化物と硝酸イオンが存在する場合、セレン酸イオンの還元が妨害されることが報告されている(特許文献2)。したがって、セレン酸還元微生物により、硝酸イオンや亜硝酸イオンを含むセレン酸化合物含有排水中のセレン酸化合物を効率よく還元処理することが困難な場合がある。
そこで、このような排水中からセレン酸化合物を効率良く還元処理するための技術が各種提案されている。例えば、被処理液の生物処理を複数の生物処理槽によって順次行うようにして、最前段の生物処理槽で硝酸イオンを優先的に還元させ、後段の生物処理槽では、被処理液中の硝酸イオン濃度を低濃度として、硝酸イオンに阻害されることなくセレン酸化合物を還元する技術が開示されている(特許文献2)。
また、脱窒能を有する微生物と、セレン酸イオン(6価セレン)を亜セレン酸イオン(4価セレン)及び/又は元素状セレンに還元する微生物とを少なくとも含有する活性汚泥を使用した微生物処理により、窒素及びセレンを含む排水から少なくとも窒素及びセレン酸イオンを除去する排水処理方法に関する技術が開示されている(特許文献3)。
特開平9−248595
特開平9−253686
特開平10−249392
Journal of Fermentation and Bioengineering Vol.83, No. 6, 517-522.1997
しかしながら、複数の生物処理槽を設けた場合、設備が大掛かりになると共に、設備コストも増大し、また、処理に長時間を要するようになる。さらに、各処理槽を微生物の棲息に最適な状態に管理するための手間やコストが増大してしまう。
また、脱窒能を有する微生物(脱窒菌)と、セレン酸イオンを亜セレン酸イオン及び/又は元素状セレンに還元する微生物(セレン酸還元微生物)とを同一の処理槽に共存させたとしても、被処理液中に含まれる硝酸イオン濃度や亜硝酸イオン濃度が十分に低下しない限り、セレン酸還元微生物のセレン酸還元能は阻害され続けるので、セレン酸化合物の還元処理を効率よく行うことができない。つまり、被処理液中の硝酸イオン濃度や亜硝酸イオン濃度が十分に低下してからセレン酸化合物の還元処理が始まるため、セレン酸化合物の還元処理に要する時間が被処理液中の硝酸イオン濃度や亜硝酸イオン濃度に律速されてしまうという問題がある。
そこで、本発明は、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在下においても、セレン酸化合物の還元処理能力が阻害されることのない微生物を提供することを目的とし、さらには、当該微生物を利用して効率よくセレン酸化合物含有液を処理する方法並びにセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者等が微生物を鋭意探索した結果、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在下においても、セレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができるセレン酸還元微生物を発見した。しかも、このセレン酸還元微生物は、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して、元素状セレンと窒素ガスに還元できることを見出した。そして、このセレン酸還元微生物を利用することで、硝酸イオンや亜硝酸イオンが含まれているセレン酸化合物含有液を効率良く無害化処理できることを知見し、本願発明に至った。
かかる知見に基づく本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法は、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるバチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)のうちのいずれか一方若しくは双方に、嫌気条件下で、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかと共にセレン酸イオン及び亜セレン酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液を接触させる工程を含むようにしている。
このように、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物に、嫌気性条件下で、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液を接触させることで、セレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。しかも、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスにすることができる。つまり、被処理液中の硝酸イオンや亜硝酸イオンは窒素ガスに還元されて無害化され、セレン酸化合物は水に不溶な元素状態(0価)となる。元素状態のセレンは、被処理液を固液分離、例えば濾過処理することにより回収でき、被処理液から元素状セレンを除去して無害化できる。
ここで、本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法に用いられるセレン酸還元微生物は、バチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)である。そして、これらのセレン酸還元微生物を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。尚、組み合わせて用いる場合には、これらのセレン酸還元微生物を単一の処理槽中に共存させても良いし、2つの処理槽を準備して、一槽目ではシュードモナスエスピー 4C−Cで処理し、二槽目ではバチルスエスピー 1C−Cで処理する形態とした2段階処理を行うようにしてもよい。
バチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C)は、バチルス属に属するセレン酸還元微生物であり、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在下においても、嫌気性条件下でセレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。さらに、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して、元素状セレンと窒素ガスに還元することができる。尚、この微生物は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成18年5月24日付けで受託番号FERM P−20925として受託されている。
シュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C)はシュードモナス属に属するセレン酸還元微生物であり、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在下においても、嫌気性条件下でセレン酸イオンを元素状セレンに還元することができる。さらに、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して、元素状セレンと窒素ガスに還元することができる。尚、この微生物は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成18年3月13日付けで受託番号FERM P−20840として受託されている。
次に、本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法は、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)に、嫌気条件下で、炭素数1〜3の低級アルコールを供給しながら硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液を接触させる工程を含むようにしている。
このように、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物に、嫌気性条件下で、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液を接触させることで、セレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。しかも、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスにすることができる。つまり、被処理液中の硝酸イオンや亜硝酸イオンは窒素ガスに還元されて無害化され、セレン酸化合物は水に不溶な元素状態(0価)となる。元素状態のセレンは、被処理液を固液分離、例えば濾過処理することにより回収でき、被処理液から元素状セレンを除去して無害化できる。さらに、セレン酸還元微生物のエネルギー源(電子供与体)として、エタノールなどの炭素数1〜3の低級アルコールを用いることができ、処理コストを大幅に低減することが可能になる。
ここで、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物は、例えばシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)である。このセレン酸還元微生物は、上述した機能に加えて、炭素数1〜3の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールをエネルギー源(電子供与体)として機能する微生物である。
前記したセレン酸還元微生物は、セレン酸化合物含有液に直接投入して遊離状態で用いることもできるが、セレン酸還元微生物を担持し得る担体に担持させてセレン酸化合物含有液に投入するようにすることが好ましい。この場合には、セレン酸還元微生物によりセレン酸化合物が還元されて産生される元素状セレンの大部分を担体に付着・蓄積させることができる。したがって、被処理液から担体を取り出すだけで、被処理液中から元素状セレンの大部分を簡単に回収できる。ここで、セレン酸還元微生物を担持し得る担体としては、活性炭、アルミナ、発泡プラスチックや高分子ゲル等を用いることができるが、これらに限られるものではない。
次に、本発明のセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターは、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるバチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)のうちのいずれか一方若しくは双方と、セレン酸還元微生物を担持し得る担体とを含み、セレン酸還元微生物が担体に担持されているものであり、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターである。したがって、このセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターを、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液に嫌気性条件下で浸漬することで、セレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。しかも、元素状セレンは担体に付着・蓄積するので、被処理液からバイオリアクターを取り出すだけで、元素状セレンを簡単に回収できる。
ここで、本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法に用いられるセレン酸還元微生物は、バチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)である。そして、これらの微生物を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。尚、組み合わせて用いる場合には、これらのセレン酸還元微生物を一層の担体に共存させても良いし、担体を二層として、一層目にバチルスエスピー 1C−Cを、二層目にシュードモナスエスピー 4C−Cを担持するようにしてもよい。
次に、本発明のセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターは、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)と、セレン酸還元微生物を担持し得る担体とを含み、セレン酸還元微生物が担体に担持されているものであり、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターである。したがって、このセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターを、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液に嫌気性条件下で浸漬することで、セレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。しかも、元素状セレンは担体に付着・蓄積するので、被処理液からセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターを取り出すだけで、元素状セレンを簡単に回収できる。さらに、エネルギー源として、炭素数1〜3の低級アルコールを用いることができ、処理コストを大幅に低減することが可能になる。
ここで、本発明のセレン酸含有液の処理方法並びにセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターにおける炭素数1〜3の低級アルコールの供給は、ポンプなどの制御装置により行っても良いが、非多孔性膜を少なくとも一部に備える容器中に炭素数1〜3の低級アルコールまたは廃アルコールを密封し、容器の非多孔性膜部分から非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で容器周辺に炭素数1〜3の低級アルコールの供給を行うことが好ましい。
容器内に充填された低級アルコールは、非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で徐放される。そこで、低級アルコールの非多孔性膜透過速度を、非多孔性膜の分子透過性能を決定する要素である膜材料や膜厚、膜密度などで調整することにより、低級アルコールを常時緩やかに供給して、セレン酸還元微生物を機能させ続けて、効率良くセレン酸化合物含有液の処理を行うことができる。
また、セレン酸還元微生物のエネルギー源として、廃アルコールを使用することが環境的にも経済的にも好ましい。非多孔性膜は「分子ふるい」のような役割を持っており、透過させようとする分子の分子量が大きくなるにつれて、その分子を透過し難くなる。また、分子の極性などの性質によってもその透過性が大きく変化する。したがって、非多孔性膜をポリエチレンやポリプロピレンに代表される疎水性の膜とした場合、廃アルコールの中に不純物例えばカテキンやシアン化合物のように微生物に対して毒性を呈する抗菌性の分子が混入していても、分子サイズの大きなカテキンや極性の高いシアン化合物などは透過し難く、微生物にとって無害な低級アルコールを主成分として透過させることが可能となる。
本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法によれば、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるバチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)のうちのいずれか一方若しくは双方に、嫌気性条件下で、セレン酸化合物含有液を接触させる工程を含むようにしているので、セレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。しかも、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元することができ、被処理液中の硝酸イオンや亜硝酸イオンは窒素ガスに還元されて無害化され、セレン酸化合物は水に不溶な元素状態(0価)となり、被処理液を固液分離、例えば濾過処理することにより回収して、被処理液から元素状セレンを除去して無害化できる。したがって、セレン酸化合物の還元処理に要する時間が被処理液中の硝酸イオン濃度や亜硝酸イオン濃度に律速されることなく、効率よくセレン酸化合物の還元処理を行うことができる。また、従来のように、硝酸イオンや亜硝酸イオンを別途処理するための生物処理槽を設けることなく、被処理液中のセレン酸化合物と硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時処理することが可能になるので、設備コストや処理コストを削減することができる。また、複数の処理槽を管理する手間やコストの削減を図ることもできる。
また、本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法によれば、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)に、嫌気性条件下で、セレン酸化合物含有液を接触させる工程を含むようにしているので、上述した効果に加えて、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として用いることができ、処理コストを大幅に低減することが可能になる。
さらに、セレン酸還元微生物を担持し得る担体にセレン酸還元微生物を担持させることで、元素状セレンを担体に付着・蓄積させて簡単に回収することができる。したがって、被処理液の処理に際し、元素状セレンを濾過分離する工程を省くことができる。
また、本発明のセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターによれば、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるバチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)のうちのいずれか一方若しくは双方と、セレン酸還元微生物を担持し得る担体とを含み、セレン酸還元微生物が担体に担持されているものであり、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターであるので、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液中のセレン酸化合物を効率よく元素状セレンに還元することができる。しかも、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスにすることができる上に、元素状セレンは担体に付着・蓄積させて回収することができる。したがって、被処理液からバイオリアクターを回収するだけで、元素状セレンを簡単に回収できるので、元素状セレンを被処理液から分離するための濾過分離工程を省くことができる。
さらに、本発明のセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターによれば、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを嫌気条件下で同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であるシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)と、セレン酸還元微生物を担持し得る担体とを含み、セレン酸還元微生物が担体に担持されているものであり、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくともいずれかを含むセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターであるので、上述した効果に加えて、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として用いることができ、処理コストを大幅に低減することが可能になる。
また、本発明のセレン酸含有液の処理方法並びにセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターにおける炭素数1〜3の低級アルコールの供給を、非多孔性膜を少なくとも一部に備える容器中に炭素数1〜3の低級アルコールまたは廃アルコールを密封して、容器の非多孔性膜部分から非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で容器周辺のセレン酸還元微生物に徐放して行うことにより、低級アルコール供給量を一定量に維持するための設備を備える必要がなくなり、ポンプや制御装置で低級アルコール供給量を制御した場合と比較して設備コストやランニングコストを大幅に低下させることが可能である。
また、直接微生物に接触させると微生物を死滅させる虞のある原液のアルコールを用いても、単位面積当たりのアルコール分子の透過量を十分に少なくして、濃度を薄めて与えることができるため、微生物を死滅させることが無い。しかも、アルコールを水で希釈して微生物が死滅しない程度の濃度に調整する従来行われていた工程を省略して手間を省くことができると共に、同じ容積の液量で長時間アルコールを供給することが可能となる。
さらに、廃アルコールの再利用は、廃棄物の量を減らすことができて環境にとって好ましいと共に廃棄物の有用化を可能としてエネルギー源のコストを下げることができる。例えば、現在、蒸留、精製等の過程を経て再生されている廃アルコールを、これらの処理を行うことなくそのまま用いることができ、大幅なコストダウンを実現できる。より具体的には、食品、医薬品製造工程などで生じる廃アルコールを、微生物毒性を持つ物質(カテキンなど)を蒸留などの除去工程を経ることなく、セレン酸還元微生物のエネルギー源として有効利用できる。
本発明のセレン酸還元微生物であるバチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、FERM P-20925)は、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在下においても、嫌気性条件下で亜セレン酸イオンを経由してセレン酸イオンを元素状セレンに還元することができる。つまり、セレン酸イオンと亜セレン酸イオンの双方を元素状セレンまで還元することができる。さらに、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して、元素状セレンと窒素ガスに還元して無害化することができる。つまり、このセレン酸還元微生物は、従来のセレン酸還元微生物の様に、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在化でセレン酸化合物の還元能が阻害されることが無く、しかもセレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元することができるという優れた機能を有する新規微生物である。
また、シュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)はシュードモナス属に属するセレン酸還元微生物であり、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在下においても、嫌気性条件下で亜セレン酸イオンを経由してセレン酸イオンを元素状セレンに還元することができる。つまり、セレン酸イオンと亜セレン酸イオンの双方を元素状セレンまで還元することができる。さらに、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して、元素状セレンと窒素ガスに還元することができる。つまり、この微生物も、従来のセレン酸還元微生物の様に、硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在化でセレン酸化合物の還元能が阻害されることが無く、しかもセレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元することができるという優れた機能を有する新規微生物である。また、エタノールなどの低級アルコールをエネルギー源として用いることができるので、この微生物をセレン酸化合物含有液の処理に供することで、処理コストを低減することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法は、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物に、嫌気性条件下でセレン酸化合物含有液を接触させる工程を含んでいる。
本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法に用いるセレン酸還元微生物としては、バチルスエスピー1C−Cが挙げられる。バチルスエスピー1C−Cはバチルス属に属するセレン酸還元微生物であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成18年5月24日付けで受託番号FERM P−20925として受託されている。バチルスエスピー1C−Cは以下の化学式に示されるように、亜セレン酸イオン(4価セレン)を経由して、セレン酸イオン(6価セレン)を元素状セレン(0価セレン)に還元する。また、亜硝酸イオンを経由して、硝酸イオンを窒素ガスに還元する。
[化学式1] SeO4 2−→SeO3 2−→Se
[化学式2] NO3 −→NO2 −→N2
また、シュードモナスエスピー4C−Cを本発明のセレン酸化合物含有液の処理方法に用いることもできる。シュードモナスエスピー4C−Cはシュードモナス属に属する微生物であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成18年3月13日付けで受託番号FERM P−20840として受託されている。シュードモナスエスピー4C−Cも、化学式1及び2に示されるように、亜セレン酸イオン(4価セレン)を経由して、セレン酸イオン(6価セレン)を元素状セレン(0価セレン)に還元する。また、亜硝酸イオンを経由して、硝酸イオンを窒素ガスに還元する。
ここで、元素状セレンは、水に不溶である。したがって、被処理液から元素状セレンを固液分離、例えば濾過処理することにより、元素状セレンを回収できると共に、被処理液を無害化することができる。また、硝酸イオンや亜硝酸イオンは被処理液から窒素ガスとして排出されて無害化される。
上記セレン酸還元微生物を機能させるためには、セレン酸還元微生物が存在する環境を嫌気条件下、即ち、被処理液中に溶存酸素が実質的に存在しないようにすることが好ましい。尚、溶存酸素が多く、セレン酸還元微生物の還元機能が低下する場合には、被処理液中に窒素ガスや希ガス等の不活性ガスを導入して溶存酸素を減少させ、嫌気性環境を形成してもよい。
ここで、セレン酸還元微生物を担体に担持させて被処理液中に投入することが好ましい。この場合には、セレン酸還元微生物により還元されて産生された元素状セレンの大部分が担体に付着するので、被処理液から担体のみを取り出すだけで被処理液のセレン濃度を大幅に低減することができる。担体としては、セレン酸還元微生物を担持して元素状セレンを付着・蓄積することができる材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、活性炭、アルミナ、発泡プラスチック等の多孔性材料や高分子ゲル等を用いることができる。尚、セレン酸還元微生物は、処理槽内に直接投入して遊離状態で用いても良い。
上記セレン酸還元微生物のエネルギー源物質(電子供与体物質)としては、酵母エキスや含硫アミノ酸あるいは乳酸塩等を用いることができる。尚、シュードモナスエスピー4C−Cは、酵母エキスや含硫アミノ酸あるいは乳酸塩等に加えて、安価で入手しやすい低級アルコールであるエタノール、さらにはエタノールと炭素数が一つだけ異なるメタノールやプロパノールをエネルギー源物質として用いることができるセレン酸還元微生物である。したがって、セレン酸還元微生物としてシュードモナスエスピー4C−Cを用いることで、処理コストをさらに低減することができる。
ここで、バチルスエスピー1C−Cとシュードモナスエスピー4C−Cのセレン酸化合物還元能を比較すると、バチルスエスピー1C−Cはシュードモナスエスピー4C−Cよりもセレン酸イオン及び亜セレン酸イオンを元素状セレンに還元する速度が速いが、メタノール、エタノール、プロパノールなどの安価な低級アルコールをエネルギー源物質として用いることができない。一方、シュードモナスエスピー4C−Cはバチルスエスピー1C−Cよりもセレン酸イオン及び亜セレン酸イオンを元素状セレンに還元する速度が遅いが、メタノール、エタノール、プロパノールなどの安価な低級アルコールをエネルギー源物質として用いることができる。したがって、所望のセレン酸化合物還元処理速度と、処理コストに応じて、バチルスエスピー1C−Cあるいはシュードモナスエスピー4C−Cを単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
バチルスエスピー1C−Cとシュードモナスエスピー4C−Cを組み合わせて用いる場合には、これらのセレン酸還元微生物を単一の処理槽中に共存させても良いし、2つの処理槽中にそれぞれのセレン酸還元微生物を投入して、一槽目ではシュードモナスエスピー 4C−Cで処理し、2槽目ではバチルスエスピー 1C−Cで処理する形態とした2段階処理を行うようにしてもよい。単一の生物処理槽中にバチルスエスピー1C−Cとシュードモナスエスピー4C−Cを共存させる場合、エネルギー源として、酵母エキスと低級アルコールを混合して用いることができる。ここで、バチルスエスピー1C−Cの存在割合を多くすれば、還元処理速度は向上するが、酵母エキスの割合を増やす必要があるため、処理コストが若干嵩む。一方、生物処理槽中のシュードモナスエスピー4C−Cの存在割合を多くすれば、還元処理速度は低下するが、低級アルコールの割合を増やすことができるため、処理コストを低減できる。
また、2つの生物処理槽中にそれぞれのセレン酸還元微生物を投入する場合には、例えば、シュードモナスエスピー4C−Cが存在している前段の処理槽に低級アルコールを供給して生物処理した被処理液を、バチルスエスピー1C−Cが存在している後段の処理槽に入れて二段階処理を行うようにしてもよい。
尚、シュードモナスエスピー4C−Cのように、炭素数1〜3の低級アルコールをエネルギー源として、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物をセレン酸化合物含有液の処理に用いることで、炭素数1〜3の低級アルコールのみをエネルギー源として用いることができるので、大幅な処理コスト低減が可能となる。
ここで、シュードモナスエスピー4C−Cのエネルギー源物質となる低級アルコールは、その供給量が過剰であるとセレン酸還元微生物が消費しきれずに被処理液中に残留し水質を悪化させる虞がある。その反面、供給量が少ないと、エネルギー源不足となってセレン酸還元微生物が十分に機能せず、セレン酸化合物の還元処理が十分に行えない虞がある。そこで、以下に説明するように、非多孔性膜を少なくとも一部に備える容器中に低級アルコールを密封し、非多孔性膜から低級アルコールを容器の周辺に徐放させて供給することが好ましい。
図17に非多孔性膜を少なくとも一部に備える容器中に低級アルコール(以下、単にアルコールと呼ぶこともある)を密封した電子供与体供給装置の一実施形態を示す。この電子供与体供給装置1は、アルコール3と、非多孔性膜2を少なくとも一部に備える密封構造の容器4を含み、容器4内にはアルコール3が充填され、アルコール3を容器4の非多孔性膜2の部分から非多孔性膜2の分子透過性能に支配される速度で容器4の周辺に供給し、容器4の周辺のセレン酸還元微生物にアルコール3を緩やかに供給するものである。本実施形態では、容器4の全体が非多孔性膜2で構成される袋状を成し、周縁をヒートシールで溶着したり、接着剤により接着したりするようにしてアルコール3を密封するようにしているが、形態や構造は特に限定されない。例えば、容器4をチューブ状やシート状としてもよい。また、袋状の容器(単に袋と呼ぶこともある)4は、全体を非多孔性膜で構成するものに特に限られず、片面だけを非多孔性膜で構成したり、1つの面のさらに一部分を非多孔性膜のみで構成するようにしても良い。部分的に非多孔性膜を用いる場合には、その他の部分は金属製やプラスチック製の剛体フレーム、アルコールを透過しない膜を用いても良い。また、容器4を被処理液に入れた際に浮いてしまう場合には、容器4に錘を備えるようにしたり、被処理液に浸からない部分をアルコールを透過させることのない膜として、被処理液に接触している部分以外からのアルコールの徐放を抑えるようにしてもよい。
電子供与体供給装置1に用いられる非多孔性膜2は、アルコール3の分子を少しずつ透過させることによって徐放するものである。この非多孔性膜2は、膜材料、膜厚、封入するアルコール3の分子量や性質、温度、アルコールの濃度により、単位面積当たりを透過するアルコール3の分子量を制御することが可能である。例えば、同じ容器を用いた場合でも、アルコール3の濃度を高めれば、アルコールの透過速度を高めることができる。また、非多孔性膜2の表面積を増減させることで、アルコール3の徐放面を増減することができる。したがって、被処理液の一部に非多孔性膜2を接触させて、被処理液と非多孔性膜の接触面の表面積に応じて、徐放面を増減できる。本発明者等のポリエチレン膜に対する実験によると、同じ膜材料の場合には膜厚によって単位面積当たりの分子透過量が変化することが確認されている。そこで、セレン酸還元微生物に必要なアルコール供給量に応じて、適宜膜厚などを選定することによって、必要な速度で必要な量のアルコールを供給することができる。このとき、アルコールは、非多孔性膜2の分子透過性能に支配される緩やかな速度で漏れ出る。したがって、直接供給すると微生物を死滅させる虞のある原液のアルコールを用いた場合であっても、容器周辺のセレン酸還元微生物に対し生存に影響を与えることのない濃度に希釈された状態で供給される。
ここで、非多孔性膜2は、膜構成分子の密度や構造によっても分子透過量が変化する。ポリエチレンを例に挙げて説明すると、JIS K6922‐2により分類される低密度ポリエチレン(密度910kg/m3以上、930kg/m3未満)を用いた場合と比較して、高密度ポリエチレン(密度942kg/m3以上)を用いた場合には、アルコール3の膜外への透過量が減少する。したがって、アルコール3の所望の供給量に応じて、非多孔性膜2の膜厚と膜密度のバランスにより、アルコール3の供給量を制御すればよい。また、膜内部のポリエチレン鎖の分子構造は、例えば延伸処理により可変可能であるから、当該処理により所望の膜材料の膜密度を可変して、アルコール3の供給量を制御することが可能である。
アルコール3の分子は、疎水基であるアルキル基と親水基である水酸基の双方を有している。したがって、非多孔性膜2としては、疎水性の膜、親水性の膜または親水性と疎水性の両方の性質を有する膜のいずれかを用いることで、アルコール3を透過させることができる。疎水性の膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンその他のオレフィン系の膜が挙げられる。親水性の膜としては、分子構造中に親水基を有する膜、例えば、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリビニルアルコール、ビニロン、セロハン、ポリグルタミン酸などが挙げられる。親水性と疎水性の両方の性質を有する膜としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、つまり、疎水性のポリエチレン構造と親水性のポリビニルアルコール構造の両方を有する共重合体膜が挙げられる。親水性と疎水性の両方の性質を有する膜は、疎水性のポリエチレンと親水性のポリビニルアルコールの含有比率を変えることにより、疎水性を強めたり、親水性を強めたりすることができる。その他にも上記の非多孔性膜に比べ透過性が劣るが、極めて遅い徐放性能が要求される時には、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレンアクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート混合物系などの気液系膜、つまり、その分子構造中の親水基や極性基の状態によって透過性が変化する膜が挙げられる。
尚、ポリエチレンやポリプロピレンは、微生物の活動の場である水領域や土壌、汚泥と、それ以外の領域を良好に区画することが可能である。また、適度な物質の透過性、熱可逆性を有しており、柔軟で成形が容易であるという利点を有している。しかも、ポリエチレンやポリプロピレンは、安価で入手しやすいため、ポリエチレンやポリプロピレンを用いることはコスト面や性能面から考えても非常に好ましい。
ここで、アルコール3の非多孔性膜2の透過は、アルコール3の分子が非多孔性膜2に溶け込み、その溶け込んだ分子が膜内部を拡散して反対側に達することにより起こる。したがって、膜への溶け込みが起こらない程分子量の大きなカテキンなどは非多孔性膜を透過しにくい。また、ポリエチレンやポリプロピレン等は水となじむ官能基が存在しない疎水性の強い膜であると共に低極性であるため、極性分子である水が膜に溶け込みにくい。したがって、水に溶けやすい極性の高い物質であるシアン化合物などもほとんど透過できない。また、水は水分子同士の水素結合が強いため、常温では水が当該膜を透過することはほとんど無い。したがって、非多孔性膜2は、水や極性の高いシアン化合物、分子量の大きなカテキン等の不純物はほとんど透過させずに、アルコール3を主成分として透過させる「分子ふるい」として機能する。したがって、非多孔性膜としてポリエチレンやポリプロピレンに代表される疎水性の膜を用いた場合には、アルコールに不純物例えばカテキンやシアン化合物のように微生物に対して毒性を呈する抗菌性の分子が混入している廃アルコールを用いることができる。アルコールの替わりに廃アルコールを使用することは環境的にも経済的にも好ましい。また、アルコールは、容器内に充填されている状態が液体であっても、揮発した状態であっても、容器外には分子状態で放出される。つまり、アルコールは、非多孔性膜2を透過して、液体のように分子間の引力により凝集することのないガス(気体)の状態で徐放される。したがって、非多孔性膜2はガス透過性膜とも表現できる。また、容器外部の環境が液相(排水、地下水等)である場合にもアルコールを容器外部に分子状態で徐放することが可能である。
次に、図18及び図19に電子供与体供給装置の他の実施形態を示す。この実施形態の電子供与体供給装置1は、非多孔性膜2からなる容器4を完全密封された独立したものとはせずに、アルコール3を導入する手段を有する密封構造の袋状とした容器とし、アルコール3を外部から補充可能としたものである。
アルコール3を補給するための機構は、容器4の縁の一部にアルコール3を注入する供給部5を設けてノズルないしパイプ7を装着する構造でも良いし、予め容器4と一体となったノズルないしパイプ7のようなものでも良い。図19に示す電子供与体供給装置1は、容器4の縁に設けられた供給部5に着脱可能に装着された供給ノズル7あるいは容器4と一体となった供給ノズル7と、アルコール3を貯留するタンク6とをチューブ8などで連結し、必要に応じてアルコール3を補充可能としている。この場合、タンク6と容器4とはチューブ8を介して連通されているので、タンク6内にアルコール3’を貯留しておけば、袋4内のアルコール3が減少してきたときに、サイフォンの原理を利用してチューブ両端での圧力の差によりアルコール3’をタンクから補充できる。尚、容器4は供給部5あるいはノズル7を設けているので厳密な意味での密封構造ではないが、供給ノズル7内がタンクから供給されるアルコール3’で満たされている状態では、液面がシールとなって容器内は事実上密封状態にある。このため、液状あるいはガス化したアルコール3が供給部5やノズル7を通って容器4外に漏れ出ることはない。
尚、低級アルコールの供給方法に関しては、図17〜図19に示されるものに限られず、例えば、排水中に低級アルコールを直接供給してもよいが、上述したように、エネルギー源である低級アルコールの供給が過剰であると微生物が消費しきれずに排水中に残留し水質を悪化させる虞がある。その反面、低級アルコールの供給量が少ないと、エネルギー源不足となって微生物が十分に機能せず、セレン酸化合物の処理が十分に行えない虞がある。したがって、ポンプなどを用いてその供給量とタイミングを制御するようにしてもよい。
次に、図10に本発明にかかるセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターの一実施形態を示す。このバイオリアクター9は、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物を担体に担持させ、担体にセレン酸化合物含有液を接触させて、セレン酸化合物を元素状セレンに還元するものである。本実施形態では、セレン酸還元微生物を担持させた担体11をシート状に成形して、セレン酸化合物含有液14に浸漬し、エネルギー源物質をセレン酸化合物含有液14に添加することで、セレン酸イオンが亜セレン酸イオンを経由してを元素状セレンに還元され、元素状セレンをバイオリアクター9の担体11に付着・蓄積させて簡単に回収することができる。尚、図10(B)に示すように、元素状セレンをバイオリアクター9の担体11に付着・蓄積させると、赤色を呈するようになる。この際、セレン酸化合物含有液14は無色透明であり、還元処理により生成された元素状セレンのほとんどを、バイオリアクター9の担体11に付着・蓄積させて回収することが可能である。尚、バイオリアクター9は、担体11にセレン酸還元微生物を担持させただけの形態には限られず、金属製やプラスチック製の剛体のフレームなどにより強度を向上させてもよいし、不織布やナイロンネットを担体11の表面に貼着して、バイオリアクター9を保護するようにしてもよい。
バイオリアクター9に付着した元素状セレンを回収する方法としては、バイオリアクター9を燃焼させることにより元素状セレンを蒸発させ、燃焼ガスに同伴したセレンを濃縮させるようにすればよい。または、バイオリアクター9に付着した元素状セレンを酸化して水溶性の形態とした上で水に浸漬して回収すればよい。この場合には、バイオリアクター9を再利用できる。
ここで、本発明のセレン酸化合物含有液処理用バイオリアクターに用いられるセレン酸還元微生物は、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物であれば特に限定されない。例えば、バチルスエスピー 1C−C(Bacillus sp.1C-C、 FERM P-20925)及びシュードモナスエスピー 4C−C(Pseudomonas sp.4C-C、 FERM P-20840)が挙げられる。そして、これらの微生物を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。尚、組み合わせて用いる場合には、これらのセレン酸還元微生物を一層の担体に共存させても良いし、担体を二層として、一層目にバチルスエスピー 1C−Cを、二層目にシュードモナスエスピー 4C−Cを担持するようにしてもよい。
担体11としては、微生物や酵素の固定化に用いられている高分子ゲルを使用することができる。具体的には、コラーゲン、フィブリン、アルブミン、カゼイン、セルロースファイバー、セルローストリアセタート、寒天、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、アガロース等の天然高分子、ポリアクリルアミド、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリビニルクロリド、γ−メチルポリグルタミン酸、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリウレタン、光硬化性樹脂(ポリビニルアルコール誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリブタジエン誘導体等)等の合成高分子、またはこれらの複合体が挙げられる。また、吸水性ポリマーを用いることも可能である。吸水性ポリマーを用いる場合には高分子ゲルを用いる場合と比べて被処理液の吸収が起こりやすく、被処理液中のセレン酸化合物の処理をより効率的に行うことができる。吸水性ポリマーとしては一般的に用いられているものを使用することができるが、具体的には、ポリアクリル酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸やそれらの改変物、ポリエチレングリコール改変物等が挙げられる。尚、ここで言う改変物とは、イオン性基をもつ高分子を前記高分子の一部に架橋させた物である。
また、本実施形態のバイオリアクター9は濾過分離や固液分離により元素状セレンを回収することが困難な汚泥などの環境であっても、元素状セレンを担体に付着させて簡単に回収することができる。つまり、本実施形態におけるバイオリアクター9は、場所を選ぶことなく、非常に手軽に用いることができるものである。その使用方法も嫌気条件下でエネルギー源を供給して、除染対象環境に浸漬するだけでよく、非常に簡易である。しかも、セレン酸化合物が除染対象環境から除去できたか否かは、バイオリアクターの色から判断できる。
さらに、セレン酸化合物、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを同時に還元して元素状セレンと窒素ガスを産生するセレン酸還元微生物を担体に担持させているので、セレン酸化合物除去対象環境に高濃度の硝酸イオンや亜硝酸イオンが存在していても、セレン酸化合物の元素状セレンへの還元反応が阻害されること無く、同時に硝酸イオンや亜硝酸イオンを無害な窒素ガスに変換することができる非常に優れた機能を持つバイオリアクターとなる。
ここで、シュードモナスエスピー4C−Cが担持されているバイオリアクター9にエネルギー源物質としてアルコールを供給する場合、上述した図17〜図19に示す電子供与体供給装置1によりアルコールを緩やかに供給することで、微生物に無駄なくアルコールを供給することができると共に、ランニングコストや設備のコンパクト化を図ることができ、好ましい。さらに好ましくは、図20並びに図21に示すように、バイオリアクター9を袋状として、その内部空間12に電子供与体供給装置1を収容することである。例えば、不織布10を表面側に備えて袋状とし、内部空間12に図17〜図19に示した電子供与体供給装置1を収容してアルコール3を担体11に供給する。尚、図20並びに図21に示すように、不織布10を袋の外側表面のみに備える形態には限られず、袋の内側表面、つまり内部空間12側表面のみに備えても良いし、袋の外側表面と内側表面の双方に備えるようにしてもよい。また、バイオリアクター9を金属製やプラスチック製の剛体のフレームなどにより強度を向上させてもよいし、不織布10の替わりにナイロンネットなどを用いるようにしてバイオリアクター9の表面を保護するようにしてもよい。ただし、不織布10のような保護材をバイオリアクター9の表面に設けることは必須要件ではない。
ここで、低級アルコールの供給方法に関しては、図17〜図19に示されるものに限られず、例えば、排水中に低級アルコールを直接供給してもよいし、低級アルコールを直接バイオリアクター9の内部空間12に供給するようにしてもよい。尚、上述したように、エネルギー源である低級アルコールの供給が過剰であるとセレン酸還元微生物が消費しきれずに排水中に残留し水質を悪化させる虞がある。その反面、低級アルコールの供給量が少ないと、エネルギー源不足となってセレン酸還元微生物が十分に機能せず、セレン酸化合物の処理が十分に行えない虞がある。したがって、ポンプなどを用いてその供給量とタイミングを制御することが好ましい。
また、低級アルコールを直接バイオリアクター9の内部空間12に供給する場合、低級アルコールを原液のまま使用するとセレン酸還元微生物が死滅する虞があるので、微生物が死滅しない程度の濃度、例えば、10容量%程度の濃度に希釈された低級アルコールを用いる必要がある。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、電子供与体供給装置1の容器4の表面に、シュードモナスエスピー4C−Cが担持されている担体11を貼着させて備えるようにしてもよい。また、不織布を起毛処理してそこにシュードモナスエスピー4C−Cを直接担持させるようにしてもよいし、あるいは、非多孔性膜2の表面を起毛処理して、シュードモナスエスピー4C−Cを担持させるようにしても良い。
また、被処理液の嫌気性雰囲気を長期間保持するために、非多孔性膜を一部に有する密封構造の容器中に酸素吸収物質を充填した酸素吸収装置を被処理液中に浸漬するようにしてもよい。酸素吸収物質としては、酸素を吸収でき、非多孔性膜を腐食しないものであればよく、還元鉄のような固体還元剤や、還元剤を入れた溶液、例えば亜硫酸ナトリウム溶液などを用いることができるが、これらに限定されない。この酸素吸収装置によれば、非多孔性膜の酸素分子透過性能に支配される緩やかな速度で被処理液中の溶存酸素を吸収できるので、被処理液の嫌気性雰囲気を長期間保持することができる。
さらに、バイオリアクター9がセレン酸化合物を還元して得られる元素状セレンにより赤色を呈することを利用して、環境中にセレン酸化合物が存在するか否かを判定するための簡易モニターとしてバイオリアクター9を使用することも可能である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
Bacillus sp.1C-C(以下、単に1C−Cと呼ぶこともある。)は、NB培地中、30℃で振とう(110rpm)培養した。培地の組成を表1に示す。培養した1C−Cは、遠心分離により集菌し、リン酸緩衝液(9g/l Na2HPO4・12H2O、1.5g/l KH2PO4、pH=7.5)により3回洗浄した。洗浄菌体は230mg wet wt./mlになるようリン酸緩衝液に懸濁した後に実験に使用した。
(実施例2)
セレン酸イオンを含有している人工排水中で1C−Cを培養し、1C−Cのセレン酸イオン還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表2に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は100mg-Se/Lとした。硝酸イオンは人工排水中に含有させなかった。1C−Cの人工排水中への初期投入量は1.15mg wet wt./mlとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、1時間、4時間、22時間、46時間、70時間、142時間培養した際のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図1に示す。セレン酸イオン濃度は培養から22時間後には0mg-Se/Lとなった。一方、亜セレン酸イオン濃度は培養から22時間は増加し、その後減少し続けた。したがって、1C−Cは、亜セレン酸イオンを経由してセレン酸イオンを元素状セレンに還元する能力を有していることが確認された。つまり、1C−Cは、セレン酸イオンを元素状セレンに還元すると共に、亜セレン酸イオンを元素状セレンに還元する能力を有していることが明らかとなった。
(実施例3)
硝酸イオンを含有している人工排水中で1C−Cを培養し、1C−Cの硝酸イオン還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表3に示す。人工排水の初期硝酸イオン(NO3 −)濃度は100mg-N/Lとした。セレン酸イオンは人工排水中に含有させなかった。1C−Cの人工排水中への初期投入量は1.15mg wet wt./mlとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、1時間、4時間、22時間、46時間、70時間、142時間培養した際の硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図2に示す。硝酸イオン濃度は培養から22時間後に0mg-N/Lとなった。一方、亜硝酸イオン濃度は培養から22時間は増加し、その後減少し続けた。したがって、1C−Cは、亜硝酸イオンを経由して硝酸イオンを窒素ガスに還元する能力を有していることが確認された。つまり、1C−Cは、硝酸イオンを窒素ガスに還元すると共に、亜硝酸イオンを窒素ガスに還元する能力を有していることが明らかとなった。
(実施例4)
セレン酸イオンと硝酸イオンが共存している人工排水中で1C−Cを培養し、1C−Cのセレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表4に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は100mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は100mg-N/Lとした。1C−Cの人工排水中への初期投入量は1.15mg wet wt./mlとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、1時間、4時間、22時間、46時間、70時間、142時間培養した際のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図3に示す。(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度、SeO4 2−+SeO3 2−濃度を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度、NO3 −+NO2 −濃度を示す図である。図3(A)に示されるように、セレン酸イオン濃度は培養から22時間後には0mg-Se/Lとなった。一方、亜セレン酸イオン濃度は培養から22時間は増加し、その後減少し続けた。また、図3(B)に示されるように、硝酸イオン濃度は培養から22時間後に0mg-N/Lとなった。一方、亜硝酸イオン濃度は培養から22時間は増加し、その後減少し続けた。したがって、1C−Cは、亜硝酸イオンを経由して硝酸イオンを無害な窒素ガスに還元するのと同時に、亜セレン酸イオンを経由してセレン酸イオンを元素状セレンに還元する機能を有することが確認された。つまり、1C−Cは、硝酸イオンや亜硝酸イオンが存在する環境下においても、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンを還元処理する能力を有しており、しかも、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンを還元処理するのと同時に硝酸イオンや亜硝酸イオンも還元処理できる優れた能力を有する微生物であることが明らかとなった。
また、硝酸イオンが含まれていない人工排水中における1C−Cのセレン酸イオン還元処理能力を調査した結果を示す図1においては、142時間培養後のSeO4 2−+SeO3 2−濃度が68mg-Se/Lであったが、図3(A)では、52mg-Se/Lであった。つまり、硝酸イオンを含んでいる人工排水を用いた場合の方が、1C−Cのセレン酸イオン還元処理能が高まっていることが確認された。したがって、1C−Cは、硝酸イオンの存在下でセレン酸イオンの還元処理能が低下してしまう従来知られていた微生物とはその機能を異にする微生物であり、硝酸イオンや亜硝酸イオンを含むセレン酸化合物含有液の処理に非常に適した微生物であることが明らかとなった。
尚、表4に示すように、人工排水中には硝酸塩以外にも種々の化合物、例えば、硫酸塩や塩化物、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸等が含まれているにも関わらず、1C−Cは硝酸イオンを無害な窒素ガスに還元するのと同時に、セレン酸イオンを元素状セレンに還元していた。つまり、1C−Cはこのような化合物が含まれている排水、例えば、火力発電所から排出される脱硫排水中であっても十分に機能することが明らかとなった。
(実施例5)
セレン酸イオンと高濃度の硝酸イオンが共存している人工排水中で1C−Cを培養し、1C−Cのセレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表5に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は20mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は500mg-N/Lとした。1C−Cの人工排水中への初期投入量は0.77mg wet wt./mlとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、15時間、39時間、111時間培養した際のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図4に示す。(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度、SeO4 2−+SeO3 2−濃度を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度、NO3 −+NO2 −濃度を示す図である。図4(A)に示されるように、セレン酸イオン濃度と亜セレン酸イオン濃度は、培養から39時間後には0mg-Se/Lとなった。したがって、1C−Cは、排水中の初期硝酸イオン濃度が500mg-N/Lと高濃度な場合であっても、セレン酸イオンを元素状セレンに還元可能であることが明らかとなった。
また、図4(B)に示されるように、硝酸イオン濃度は培養開始から111時間後まで減少し続け、亜硝酸イオン濃度は増加し続けた。したがって、1C−Cによる硝酸イオンの還元は起こっているが、亜硝酸イオンの還元までは起こっていないことが確認された。これは、初期硝酸イオン濃度が高濃度であることが原因であり、処理時間を長くすることで、亜硝酸イオンの還元反応を生じさせることが可能である。
(実施例6)
亜セレン酸イオンと高濃度の硝酸イオンが共存している人工排水中で1C−Cを培養し、1C−Cの亜セレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表6に示す。人工排水の初期亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度は20mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は500mg-N/Lとした。1C−Cの人工排水中への初期投入量は0.77mg wet wt./mlとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、15時間、39時間、111時間培養した際の亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図5に示す。(A)亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度、NO3 −+NO2 −濃度を示す図である。図5(A)に示されるように、亜セレン酸イオン濃度は、培養から39時間後には0mg-Se/Lとなった。したがって、1C−Cは、排水中の初期硝酸イオン濃度が500mg-N/Lと高濃度な場合であっても、亜セレン酸イオンを元素状セレンに還元可能であることが明らかとなった。
また、図5(B)に示されるように、硝酸イオン濃度は培養開始から111時間後まで減少し続け、亜硝酸イオン濃度は増加し続けた。したがって、1C−Cによる硝酸イオンの還元は起こっているが、亜硝酸イオンの還元までは起こっていないことが確認された。これは、初期硝酸イオン濃度が高濃度であることが原因であり、処理時間を長くすることで、亜硝酸イオンの還元反応を生じさせることが可能である。
(実施例7)
1C−Cのセレン酸イオン及び硝酸イオン還元処理能力のエネルギー源供給量依存性について調査した。使用した人工排水の組成を表7に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO
4 2−)濃度は50mg-Se/L、硝酸イオン(NO
3 −)濃度は500mg-N/Lとした。1C−Cの人工排水中への初期投入量は1.84mg wet wt./mlとした。エネルギー源物質である酵母エキス濃度はそれぞれ、0g/L、1g/L、5g/L、10g/Lとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、18時間、42時間、66時間、162時間培養した際のセレン酸イオン(SeO
4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO
3 2−)、硝酸イオン(NO
3 −)、亜硝酸イオン(NO
2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図6並びに図7に示す。図6の(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。図7の(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。図6(A)に示されるように、セレン酸イオン濃度は、酵母エキス濃度の増加に伴い減少し易くなる傾向が見られ、酵母エキス濃度を5g/Lとした場合には162時間後にセレン酸イオン濃度が0mg-Se/Lとなり、酵母エキス濃度を10g/Lとした場合には42時間後にセレン酸イオン濃度が0mg-Se/Lとなった。尚、図6(B)において、酵母エキス濃度が1g/L、5g/Lの場合には、亜セレン酸イオン濃度が全培養期間を通して0mg-Se/Lであった。この理由は、セレン酸イオンの元素状セレンへの還元反応速度が、セレン酸イオンから亜セレン酸イオンへの還元反応速度に律速されたことに起因している。つまり、セレン酸イオンの還元反応により生成された亜セレン酸イオンを蓄積させることなく、亜セレン酸イオンの全量を元素状セレンに還元したことを意味している。酵母エキス濃度が10g/Lの場合には、培養初期(0〜66時間)において、亜セレン酸イオンの蓄積が見られた。この理由は、セレン酸イオンの元素状セレンへの還元反応速度が、亜セレン酸イオンから元素状セレンへの還元反応速度に律速されたことに起因している。つまり、セレン酸イオンの還元反応により生成される亜セレン酸イオンの量が多かったため、培養初期(0〜66時間)においては、亜セレン酸イオンの全量を元素状セレンに還元することができなかったことを意味している。尚、図7に示されるように、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの減少速度は、酵母エキス濃度に影響されなかった。したがって、1C−Cは、酵母エキス供給量を増やすことで、セレン酸イオンの還元処理速度を高めることができるが、硝酸イオンの還元処理速度には影響を与えないことが明らかとなった。
(実施例8)
1C−Cを担体に担持させたバイオリアクターを作製して排水処理性能の評価を行った。担体には、光硬化性樹脂PVA−SbQ(SPP−H−13、東洋合成工業製)を使用した。光硬化性樹脂PVA−SbQ0.34gに対し、1C−Cの菌懸濁液0.075mlとリン酸緩衝液(9g/l Na2HPO4・12H2O、1.5g/l KH2PO4、pH=7.5)0.075mlを添加して、メタルハロゲンランプ下で20分間照射し、シート状の固定化担体(縦15mm、横15mm、厚さ0.22mm)を成形した。
このバイオリアクター2個を人工排水中に浸漬して、セレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表8に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は50mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は50mg-N/Lとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋を閉じてバイアル瓶内を嫌気性条件とし、0時間、113時間、185時間、281時間、425時間、593時間後のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。また、試験中の人工排水温度は30℃とした。
結果を図8に示す。セレン酸イオン濃度は、113時間後には0mg-Se/Lとなった。亜セレン酸イオン濃度は113時間までは増加し、その後減少し続け、最終的には8mg-Se/Lとなった。一方、硝酸イオン濃度は113時間後には0mg-N/Lとなった。亜硝酸イオン濃度は、全測定時間を通して0mg-N/Lであった。この理由は、硝酸イオンの窒素ガスへの還元反応速度が、硝酸イオンから亜硝酸イオンへの還元反応速度に律速されたことに起因している。つまり、硝酸イオンの還元反応により生成された亜硝酸イオンを蓄積させることなく、亜硝酸イオンの全量を窒素ガスに還元したことを意味している。したがって、1C−Cを担体に担持させた場合にも、排水中に1C−Cを遊離させた場合と同様にセレン酸イオンと硝酸イオンを同時に元素状セレンと窒素ガスに還元処理できることが確認された。
次に、バイオリアクターを人工排水中に浸漬して、亜セレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表9に示す。人工排水の初期亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度は50mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は50mg-N/Lとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋を閉じてバイアル瓶内を嫌気性条件とし、0時間、17時間、113時間、185時間、281時間、425時間、593時間後の亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。また、試験中の人工排水温度は30℃とした。
結果を図9に示す。亜セレン酸イオン濃度は、281時間後には0mg-Se/Lとなった。一方、硝酸イオン濃度は17時間後には0mg-N/Lとなった。亜硝酸イオン濃度は、17時間後までは増加したが、その後減少して、113時間後には0mg-N/Lとなった。したがって、1C−Cを担体に担持させた場合にも、排水中に1C−Cを遊離させた場合と同様に亜セレン酸イオンと硝酸イオンを同時に元素状セレンと窒素ガスに還元処理できることが確認された。
尚、バイオリアクターは図10に示すように処理終了後には赤色を呈し、排水の色は無色透明であることが確認された。つまり、1C−Cによりセレン酸イオンが還元されて産生された元素状セレンが、担体に付着・蓄積し、排水中に元素状セレンはほとんど沈殿しないことが確認された。したがって、処理終了後に担体を排水中から抜き取るだけで、排水中のセレン酸化合物を回収可能であることが明らかとなった。
(実施例9)
Pseudmonas sp.4C-C(以下、単に4C−Cと呼ぶこともある。)は、NB培地中、30℃で振とう(110rpm)培養した。培地の組成は表1と同様である。培養した4C−Cは、遠心分離により集菌し、リン酸緩衝液(9g/l Na2HPO4・12H2O、1.5g/l KH2PO4、pH=7.5)により3回洗浄した。洗浄菌体は230mg wet wt./mlになるようリン酸緩衝液に懸濁した後に実験に使用した。
(実施例10)
セレン酸イオンと硝酸イオンが共存している人工排水中で4C−Cを培養し、4C−Cのセレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表10に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は10mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は100mg-N/Lとした。エネルギー源物質にはエタノールを用いた。4C−Cの人工排水中への初期投入量は0.77mg wet wt./mlとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋をし、30℃で振とう(100rpm)して、0時間、15時間、39時間、63時間、135時間培養した際のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。
結果を図11並びに図12に示す。図11の(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。図12の(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。尚、図11並びに図12に示すコントロールは、排水中に4C−Cを添加しなかった場合のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度変化を示すものである。図11に示されるように、セレン酸イオン濃度は培養から39時間後には0mg-Se/Lとなった。亜セレン酸イオン濃度は培養から39時間は増加し、その後減少し続けた。また、図11(C)に示されるように、4C−Cを添加することで、SeO4 2−+SeO3 2−濃度が、培養から135時間後も減少し続けることが確認された。一方、図12に示されるように、硝酸イオン濃度は培養から39時間後に0mg-N/Lとなった。亜硝酸イオン濃度は培養から15時間は増加し、その後減少して、39時間後には0mg-N/Lとなった。したがって、4C−Cも1C−Cと同様に、亜硝酸イオンを経由して硝酸イオンを無害な窒素ガスに還元するのと同時に、亜セレン酸イオンを経由してセレン酸イオンを元素状セレンに還元する機能を有することが確認された。つまり、4C−Cは、硝酸イオンや亜硝酸イオンが存在する環境下においても、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンを還元処理する能力を有しており、しかも、セレン酸イオンや亜セレン酸イオンを還元処理するのと同時に硝酸イオンや亜硝酸イオンも還元処理できる優れた能力を有する微生物であることが明らかとなった。
(実施例11)
4C−Cを担体に担持させたバイオリアクターを作製して排水処理性能の評価を行った。担体には、光硬化性樹脂PVA−SbQ(SPP−H−13、東洋合成工業製)を使用した。光硬化性樹脂PVA−SbQ0.8gに対し、4C−Cの菌懸濁液0.1mlとリン酸緩衝液(9g/l Na2HPO4・12H2O、1.5g/l KH2PO4、pH=7.5)0.2mlを添加して、メタルハロゲンランプ下で20分間照射し、不織布の片面にシート状に固定化担体(縦40mm、横20mm、厚さ0.7mm)を成形した。また、4C−Cを添加していない担体も同様に成形加工して比較試料とした。
4C−Cのエネルギー源には、厚さ0.05mmの低密度ポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)中にエタノール(和光純薬工業製、99.5%)0.3mlを密封した袋状ポリエチレンを用い、ポリエチレン膜からエタノールを緩やかに徐放させて4C−Cに微生物に供給した。
上記袋状ポリエチレンは不織布の片面にシート状に固定化した担体で不織布が外側になるように包み込み、このバイオリアクターをバイアル瓶に入れた人工排水中に浸漬して、セレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表11に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は50mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は50mg-N/Lとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋を閉じてバイアル瓶内を嫌気性条件とし、0時間、14時間、36時間、84時間、180時間、300時間後のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。また、試験中の人工排水温度は30℃とした。
結果を図13並びに図14に示す。図13の(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。図14の(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。尚、図13並びに図14に示すコントロールは、排水中にバイオリアクターを浸漬しなかった場合のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度変化を示すものである。図13に示されるように、セレン酸イオン濃度は、36時間後に0mg-Se/Lとなった。亜セレン酸イオン濃度は36時間までは増加し、その後減少し続けた。また、図13(C)に示されるように、4C−Cを担持させたバイオリアクターを排水中に浸漬することで、SeO4 2−+SeO3 2−濃度が、培養から300時間後も減少し続けることが確認された。一方、図14に示されるように、硝酸イオン濃度は36時間後に0mg-N/Lとなった。亜硝酸イオン濃度は培養から14時間は増加し、その後減少して、36時間後には0mg-N/Lとなった。したがって、4C−Cを担体に担持させた場合にも、排水中に1C−Cを遊離させた場合と同様にセレン酸イオンと硝酸イオンを同時に元素状セレンと窒素ガスに還元処理できることが確認された。
尚、4C−Cを担持させていない担体のみから作製したバイオリアクターのNO3 −+NO2 −濃度が180時間後に0mg-N/Lとなることが確認された。この理由は、担体を滅菌せずに用いたため、バイオリアクター作製時に混入した微生物の作用で脱窒反応が生じていることによるものと考えられる。このことから、バイオリアクター作製時に担体をあえて滅菌処理する必要はなく、むしろ滅菌処理しないことで脱窒反応を起こす微生物が混入することにより、硝酸イオンや亜硝酸イオン存在環境下で用いるのに好適なバイオリアクターとなることが明らかとなった。
次に、人工排水中のセレン酸イオン濃度と硝酸イオン濃度を変えて、4C−Cを担持させたバイオリアクターのセレン酸イオンと硝酸イオンの還元処理能力について調査した。人工排水の組成を表12に示す。人工排水の初期セレン酸イオン(SeO4 2−)濃度は10mg-Se/L、硝酸イオン(NO3 −)濃度は100mg-N/Lとした。この人工排水30mlを50ml容バイアル瓶に入れて蓋を閉じてバイアル瓶内を嫌気性条件とし、0時間、15時間、39時間、63時間、135時間後のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を測定した。測定はイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)によりおこなった。また、試験中の人工排水温度は30℃とした。
結果を図15並びに図16に示す。図15の(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。図16の(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。尚、図15並びに図16に示すコントロールは、排水中にバイオリアクターを浸漬しなかった場合のセレン酸イオン(SeO4 2−)、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度変化を示すものである。図15に示されるように、セレン酸イオン濃度は、63時間後に0mg-Se/Lとなった。亜セレン酸イオン濃度は63時間までは増加し、その後減少し続けた。また、図15(C)に示されるように、4C−Cを担持させたバイオリアクターを排水中に浸漬することで、SeO4 2−+SeO3 2−濃度が、培養から135時間後も減少し続けることが確認された。一方、図16に示されるように、硝酸イオン濃度は63時間後に0mg-N/Lとなった。亜硝酸イオン濃度は培養から63時間は増加し、その後減少して、135時間後には0mg-N/Lとなった。したがって、セレン酸イオンと硝酸イオンの濃度を変化させた場合にも、4C−Cはセレン酸イオンと硝酸イオンを同時に元素状セレンと窒素ガスに還元処理する機能を発揮することが確認された。
尚、4C−Cを担持させたバイオリアクターにおいても、図10に示すように処理終了後には赤色を呈し、排水の色は無色透明であることが確認された。つまり、4C−Cによりセレン酸イオンが還元されて産生された元素状セレンが、担体に付着・蓄積し、排水中に元素状セレンはほとんど沈殿しないことが確認された。したがって、処理終了後に担体を排水中から抜き取るだけで、排水中のセレン酸化合物を回収可能であることが明らかとなった。
(実施例12)
非多孔性膜としてポリエチレン膜を用いて袋を形成し、その中にメタノール、エタノールを密封した場合の有機物の透過量を測定して、ポリエチレン膜からのメタノール、エタノールの透過性について調査した。
厚さ0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.5mmのポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)を袋状として、その中にメタノール(和光純薬工業製、99.8%)、エタノール(和光純薬工業製、99.5%)をそれぞれ密封した。密封した溶液量は全て5mLとした。これを水の中に浸漬し、経過日数に対して分子透過量をTOC濃度を測定することによりメタノールおよびエタノールの透過量を評価した。TOC濃度は燃焼−赤外線式全有機炭素分析計(TOC−650、東レエンジニアリング製)により測定した。この結果を図22の(A)並びに(B)に示す。図中において、Bはバックグラウンド、MeOHはメタノール、EtOHはエタノール、0.05、0.1、0.3、0.5等の数値はポリエチレン膜厚(単位;mm)を表している。この実験から、メタノール、エタノール共に、ポリエチレン膜厚が薄くなるにつれて、TOC濃度も増加していくことから、ポリエチレン膜の膜厚により、メタノール、エタノール等のアルコールの供給量の制御が可能であることが確認された。
セレン酸イオンを含む人工排水で1C−Cを培養した際のセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度及びSeO4 2−+SeO3 2−濃度の経時変化を示す図である。
硝酸イオンを含む人工排水で1C−Cを培養した際の硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度及びNO3 −+NO2 −濃度の経時変化を示す図である。
硝酸イオンとセレン酸イオンを含む人工排水で1C−Cを培養した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度及びSeO4 2−+SeO3 2−濃度の経時変化を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度及びNO3 −+NO2 −濃度の経時変化を示す図である。
セレン酸イオンと高濃度の硝酸イオンを含む人工排水で1C−Cを培養した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度及びSeO4 2−+SeO3 2−濃度の経時変化を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度及びNO3 −+NO2 −濃度の経時変化を示す図である。
亜セレン酸イオンと高濃度の硝酸イオンを含む人工排水で1C−Cを培養した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度及びNO3 −+NO2 −濃度の経時変化を示す図である。
セレン酸イオンと高濃度の硝酸イオンを含む人工排水中における1C−Cのセレン酸イオン還元処理能力の酵母エキス濃度依存性を示す図で、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。
セレン酸イオンと高濃度の硝酸イオンを含む人工排水中における1C−Cの硝酸イオン還元処理能力の酵母エキス濃度依存性を示す図で、(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。
1C−Cを担持させたバイオリアクターを硝酸イオンとセレン酸イオンを含む人工排水に浸漬した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度及びSeO4 2−+SeO3 2−濃度の経時変化、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度及びNO3 −+NO2 −濃度の経時変化を示す図である。
1C−Cを担持させたバイオリアクターを硝酸イオンと亜セレン酸イオンを含む人工排水に浸漬した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度の経時変化を、(B)は硝酸イオン(NO3 −)濃度、亜硝酸イオン(NO2 −)濃度及びNO3 −+NO2 −濃度の経時変化を示す図である。
バイオリアクターを人工排水に浸漬処理した前後の色の変化を示す図である。
硝酸イオンとセレン酸イオンを含む人工排水で4C−Cを培養した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。
硝酸イオンとセレン酸イオンを含む人工排水で4C−Cを培養した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。
4C−Cを担持させたバイオリアクターを硝酸イオン(50mg/L)とセレン酸イオン(50mg/L)を含む人工排水に浸漬した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。
4C−Cを担持させたバイオリアクターを硝酸イオン(50mg/L)とセレン酸イオン(50mg/L)を含む人工排水に浸漬した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。
4C−Cを担持させたバイオリアクターを硝酸イオン(100mg/L)とセレン酸イオン(10mg/L)を含む人工排水に浸漬した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)はセレン酸イオン(SeO4 2−)濃度を、(B)は亜セレン酸イオン(SeO3 2−)濃度を、(C)はSeO4 2−+SeO3 2−濃度を示す図である。
4C−Cを担持させたバイオリアクターを硝酸イオン(100mg/L)とセレン酸イオン(10mg/L)を含む人工排水に浸漬した際の各種イオン濃度の経時変化を示す図であり、(A)は硝酸イオン(NO3 −)濃度を、(B)は亜硝酸イオン(NO2 −)濃度を、(C)はNO3 −+NO2 −濃度を示す図である。
本発明のアルコール供給方法の一実施形態である密封タイプの例を示す図で、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
本発明のアルコール供給方法の他の実施形態である補充タイプの例を示す図で、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図18の実施形態のアルコール供給方法の全体構成を示す概略説明図である。
本発明のバイオリアクターの構成の一例を示す斜視図である。
本発明のバイオリアクターの構成の一例を示す縦断面図であり、(A)はアルコール密封タイプである図17の容器を用いた例を、(B)はアルコール補充タイプである図19の容器を用いた例をそれぞれ示す。
ポリエチレン膜からのアルコールの透過量測定結果を示す図であり、(A)はメタノール、(B)はエタノールの測定結果である。
符号の説明
2 非多孔性膜
3 低級アルコール
9 バイオリアクター
11 担体