JP4734182B2 - バイオリアクター及び該バイオリアクターを利用したアンモニアガスの分解除去方法 - Google Patents

バイオリアクター及び該バイオリアクターを利用したアンモニアガスの分解除去方法 Download PDF

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Description

本発明は、バイオリアクター及び該バイオリアクターを利用したアンモニアガスの分解除去方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、畜舎やコンポスト化施設から発生する高濃度のアンモニアガスを除去するためのバイオリアクターおよびに該バイオリアクターを利用したアンモニアガスの分解除去方法に関する。
近年、アンモニア等の窒素化合物による環境汚染が問題となっている。これらの物質は、排水の中に溶けた状態で環境中に排出されるだけでなく、ガス状の形態でも大気中に放出され、その後、雨などと共に落下して土壌酸性化や地下水汚染、富栄養化といった深刻な問題を引き起こす。
これらの環境汚染を引き起こすアンモニアガスは、特に畜舎やコンポスト化施設から大量に発生し、上記の問題点以外にも、これらの施設内や近隣への悪臭の飛散が非常に大きな問題となっている。そこで、アンモニアを含有する排気ガスに、水を細霧状にして接触させて、その水の中に溶け込んだアンモニアを生物化学的反応を利用して亜硝酸や硝酸等の窒素酸化物に酸化交代させる酸化槽と、該窒素酸化物を還元させる還元槽を設けて、窒素ガスとして大気中に放出するようにしたアンモニア除去装置が開示されている(特許文献1)。
ここで、気相中のアンモニアガスを除去する技術としては、例えば、アンモニアガスを活性炭や酸性溶液中に吹き込むことで吸収・吸着するものや(特許文献2)、光触媒などを利用して低濃度のアンモニアガスを直接窒素ガスなどに変換する技術(特許文献3)、高温、高圧の条件下で白金触媒などを用いてアンモニアガスを除去する装置等が知られている(特許文献4)。
特願平11−142952 特開平7−24247 特開平9−75434 特開平8−33842
しかしながら、特許文献1のアンモニア除去装置は、アンモニアガスを水と接触させてからでなければアンモニアガスを除去することができず、水を細霧状にするための装置を設けたり、水を循環させるための設備を設ける必要があるため、装置が大型化・複雑化してしまうという問題点を有していた。
また、活性炭や酸性溶液中にアンモニアガスを吸着・吸収する場合、吸着・吸収されたアンモニアはそのままの形態で残存し、時間の経過と共にアンモニアが除去装置内に蓄積して除去能力が低下してしまう。そのため、別途アンモニアを処理したり、定期的な部品交換が必要であった。
光触媒などを利用したシステムでは、低濃度のアンモニアガスの処理には対応できるものの、光が照射される触媒表面しか活性化できないため、高濃度のアンモニアガスを処理する場合には不適であった。
高温、高圧の条件下で白金触媒などを用いれば、高濃度のアンモニアを処理することは可能であるが、反応に高温、高圧を必要とするため、装置が大がかりになってしまうという問題があった。
そこで、本発明は、畜舎やコンポスト化施設から発生する高濃度なアンモニアガスを、溶液中に溶解することなく、簡単に無害な窒素ガスに変換するバイオリアクターおよび該バイオリアクターを利用したアンモニアガスの分解除去方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するための請求項1に記載のバイオリアクターは、ゲル担体にアンモニア酸化菌、脱窒菌およびメタン酸化菌を固定化し、一面にアンモニアガスとメタンガスを接触させて、前記メタンから前記メタン酸化菌で前記脱窒菌を機能させるエネルギー源を生成して、アンモニアガスを窒素ガスに変換して除去するようにしている。
アンモニア酸化菌は、アンモニウムイオン(NH )を硝化することはできるが、アンモニアガス(NH)を硝化することはできない。しかし、アンモニアガスがゲル表面に付着したとき、このアンモニアガスがアンモニア酸化菌が固定されたゲル担体に含まれている水分と反応してアンモニウムイオンとなる。そこで、ゲル担体中に担持されているアンモニア酸化菌によって硝化され、さらに脱窒菌によって脱窒されて無害な窒素に変換されてから大気中に放出される。
ここで、ゲルは吸水性ポリマーであることが好ましい。バイオリアクター内の微生物は乾燥により死滅してしまうため、定期的に給水して乾燥を防ぐことが必要であるが、吸水性ポリマーは、ゲルに比べて水分を多く含有することができるため、バイオリアクターへ給水する手間を軽くすることができ、もしくは大気中の水分のみで供給が足りる場合には給水の間隔を長くしたり、場合によっては給水を必要としなくなる。
次に、請求項に記載のアンモニアガス処理方法は、コンポスト化処理中の家畜糞尿塊若しくはそれを収めた容器を、アンモニア酸化菌、脱窒菌およびメタン酸化菌を固定化したゲル担体のシートで覆い、前記家畜糞尿塊から放出されるメタンガスをメタン酸化菌で電子供与体に変換してから前記脱窒菌のエネルギー源物質として供給し、アンモニアガスを硝化反応、脱窒反応により窒素ガスに分解してから大気中に放出するようにしている。
この場合には、請求項に記載したように、必要に応じて随意にあるいは定期的に給水するようにして、乾燥を防ぐようにすればよい。
しかして、本発明のアンモニア酸化菌脱窒菌およびメタン酸化菌を固定化したゲル担体よりなるバイオリアクターによれば、気相中のアンモニアガスを分解除去することが可能であり、畜舎やコンポスト化施設等から発生する高濃度アンモニアガスをも無害な窒素ガスに分解除去することが可能である。また、コンポスト化施設等のアンモニアガスと同時にメタンガスも発生する場合には、このメタンガスを利用して、脱窒菌への電子供与体となるメタノールを生成できるので、エネルギー源物質を供給することなく、アンモニアガスを除去できるようになる。
さらに、本発明のバイオリアクターは、非常に簡易で単純なシート構造であるから、場所を選ばずに設置することが可能であり、家畜舎内あるいはコンポスト化施設内などの高濃度アンモニアガス含有雰囲気中にカーテンのように吊して使用したり、もしくは家畜糞尿塊あるいはコンポスト化処理中の家畜糞尿塊などの高濃度アンモニア発生源を覆うようにして使用することもできる。また、ゲル担体内に固定する微生物を処理ガス中から除去しようとする目的の化合物に合わせたものとすれば、アンモニアガス以外の成分を除去できることは言うまでもない。
尚、ゲルを吸水性ポリマーとすることで、担体の保水力が向上する。従って、乾燥による微生物の死滅を防ぐことが可能となり、バイオリアクターへ給水する手間を軽くすることができ、もしくは大気中の水分のみで供給が足りる場合には給水する必要としなくなる。また、バイオリアクター表面にアンモニアガスが付着した際に、アンモニアガスがアンモニウムイオンに変換されやすくなり、アンモニアガス除去効率を上昇させることが可能となる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1に本発明のガス状アンモニア用バイオリアクターの一実施形態を示す。このバイオリアクター1は、アンモニア酸化菌7と脱窒菌8とをゲル担体2に固定化したシートである。このバイオリアクター1は、高濃度アンモニア発生源、例えば家畜糞尿塊あるいはコンポスト化処理中の家畜糞尿塊若しくはそれらを収めた容器、さらには家畜舎内あるいはコンポスト化施設内などの高濃度アンモニアガス含有雰囲気中において、アンモニア発生源そのものを覆ったり、あるいはアンモニアガス含有雰囲気中に吊り下げたりすることにより、アンモニアガスを窒素ガスに分解してから大気中に放出するものである。
このバイオリアクター1に、エネルギー源と水分を定期的あるいは不定期若しくは常時供給することにより、アンモニアガスをゲル担体2内で窒素ガスに分解してから大気中に放出するものである。エネルギー源の供給は、タンク17に貯留されたエネルギー源物質4をポンプなどのエネルギー源供給手段5によって、アンモニアガスと接触していない側のゲル担体2の面に必要に応じて随意にあるいは定期的に若しくは常時液滴状若しくは霧状にして散布するようにしている。また、給水については、エネルギー源物質4の供給と同時に行っても良いが、必要とする量あるいは敢えてアンモニア発生源側において水分の少ない環境が望まれる場合などの状況に対応する必要がある場合には別個に行うことが好ましい。
アンモニア酸化菌7としては、従来この種の分野で知られているものが使用できるが、より具体的には、例えば、
Nitrosomonas europaea IFO-14298、
Nitrosomonas europaea、 N.marina
Nitrosococcus oceanus、 N.mobilis、
Nitrosospira briensis、
Nitroso lobus multiformis、
Nitrosovibrio tenuis、
を挙げることができるがこれらに限られるものではない。
また、脱窒菌8としては、
Paracoccus denitrificans JCM-6892**
Paracoccus denitrificans**
Alcaligenes eutrophus**、 A. faecalis、
Alcaligenes sp.Ab-A-1、 Ab-A-2、 G-A-2-1(FERM P-13862、 P-13860、P-13861)*、
Pseudomonas denitrificans、
Thiosphaera pantotropha***
Thiobacillus denitrificans***
を挙げることができるがこれらに限られるものではない。
尚、亜硝酸酸化菌をさらに担持してもよい。亜硝酸酸化菌としては、従来この種の分野で知られているものが使用できるが、より具体的には、例えば、
Nitrobacter winogradskyi 、N. hamburgensis、
Nitrospina gracilis*、
Nitrococcus mobilis*、
Nitrospira marina
などを挙げることができる。
尚、上記において*を付した菌株は海水の処理にのみ適用できる菌株であり、それ以外は淡水の処理にのみ適用できる菌株である。N.europaeaとN.winogradskyiは淡水で用いることのできるものと海水で用いることができるものが存在する。寄託番号が付された菌株は、出願人により寄託済の菌株である。**を付した菌株は、水素をエネルギー源として使用できる菌株であり、***を付した菌株は、硫黄のみをエネルギー源とすることができ、硫化水素などの硫黄化合物を使って脱窒できる菌である。これらの微生物は水を含むゲル担体2中に担持して用いることができる。また*を付した微生物は塩分濃度の高い環境、例えば海洋周辺の大気中でも用いることができる。
これらアンモニア酸化菌7と脱窒菌8は、例えばリン酸緩衝液等に懸濁させて、成形前のゲル担体に混合して担持させるようにすればよい。亜硝酸酸化菌も同様にゲル担体に担持させることができる。
ゲル担体2としては、微生物や酵素の固定化に用いられているゲルを使用することができる。具体的には、コラーゲン、フィブリン、アルブミン、カゼイン、セルロースファイバー、セルローストリアセタート、寒天、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、アガロース等の天然高分子、ポリアクリルアミド、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリビニルクロリド、γ−メチルポリグルタミン酸、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリウレタン、光硬化性樹脂(ポリビニルアルコール誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリブタジエン誘導体等)等の合成高分子、またはこれらの複合体が挙げられる。
尚、ゲル担体2として吸水性ポリマーを用いることにより、担体の保水力がより高まる。従って、バイオリアクター表面にアンモニアガスが付着した際に、アンモニアガスがアンモニウムイオンに変換されやすくなり、アンモニアガス除去効率を上昇させることが可能となる。また、担体が乾燥し難くなるため、ゲルを用いた場合と比べて給水の手間を非常に軽くでき、もしくは大気中の水分のみで供給が足りる場合には給水は必要としなくなる。
ここで、吸水性ポリマーとしては、一般的に用いられているものを使用することができるが、具体的には、ポリアクリル酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸やそれらの改変物、ポリエチレングリコール改変物等が挙げられる。尚、ここで言う改変物とは、イオン性基をもつ高分子を前記高分子の一部に架橋させた物である。
担体2は使用に便利なシート状に成形される。例えば、光硬化性樹脂のように鋳型にて成形し、光照射して強度の大きい膜が得られる場合はゲル担体単独でシート状等の使用しやすい形状に成形してもよい。また、ゲル担体単独では十分な強度が得られないようなゲルや吸水性ポリマーを用いる場合には、アンモニアガスを十分に通すような多孔性膜や不織布等の補強材を併用することが好ましい。この場合には、不織布などの補強材にゲルや吸水性ポリマーを塗布して担体を成形する。尚、本明細書において、シート状とは、家畜糞尿を覆い被せることが可能なフレキシブルなものであったり、家畜舎内などの高濃度アンモニア含有雰囲気中にカーテンのように吊下げられるようなものであったり、あるいは家畜糞尿を収容するコンポスト用容器などを覆ったりするような柔軟性のものは勿論のこと、コンポスト用容器に載置する蓋のように比較的剛性のある板状のものも含むものである。
エネルギー源物質4としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを使用することができるが、これらのアルコールは殺菌作用があり、原液のままで使用すると、アンモニア酸化菌および脱窒菌は死滅する。そこで、これらの微生物が死滅しない程度に水で希釈して使用する必要がある。酵母のようにアルコール発酵を行う微生物はアルコールに強いものの、20容量%以上のアルコール濃度とすると微生物が死滅する虞がある。また、5容量%以上のアルコール濃度で死滅する虞のあるアルコール耐性が低い微生物も存在する。しかしながら、アルコールは速やかに水に溶解して拡散・希釈がされやすい為、10容量%以下のアルコール濃度とすれば、微生物が死滅する問題は発生しにくい。尚、水で希釈したメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを使用することで、エネルギー源供給時に水も同時に供給可能となり、給水の手間を軽くすることが可能である。また、エネルギー源物質4としては、酢酸等のカルボン酸、乳酸、グルコースやスクロース等の糖類を用いることもできる。酢酸や酢酸等のカルボン酸、乳酸、グルコースやスクロース等の糖類も殺菌作用や浸透圧などの影響があるため、高濃度で使用すると、アンモニア酸化菌および脱窒菌が活動できない恐れがある。したがって、アルコールの場合と同様、10容量%以下の濃度とすれば、微生物が不活性化する問題は発生しにくい。
エネルギー源物質4のバイオリアクター1への供給は、ゲル担体2のアンモニアガスと接触していない側の面に一様に均一に供給するようことが好ましく、例えば霧状にして供給することが好ましいが、これに限られるものではない。
また、エネルギー源物質4としては、液状で供されるものに限られず、例えば生分解性プラスチックのように固体で供されるものでも実施可能である。この場合には、例えば、生分解性プラスチックフィルムを担体内に包含するようにしてもよいし、担体に接触させるようにしてもよい。このようにして用いることで、脱窒菌へエネルギー源が供給されるようになる。
更には、エネルギー源物質4としては、分子状態で担体に供給されるものでも良い。例えば、図3に示すように、非多孔性膜15から成る袋14に、エネルギー源物質4として水素、硫化水素及び非多孔性膜15を透過し得る有機化合物のうちの一種以上を密封したものを用いることも可能である。この袋状の容器14は、非多孔性膜15の周縁をヒートシールで溶着したり、接着剤により接着して、エネルギー源物質4を密封するようにしている。袋状の容器14は、全体を非多孔性膜のみで構成するものに特に限られず、一部例えば片面だけを非多孔性膜で構成したり、1つの面のさらに一部分を非多孔性膜で構成するようにしても良い。部分的に非多孔性膜15を用いる場合には、その他の部分は金属製やプラスチック製の剛体のフレームを用いても良い。
容器14に用いられる非多孔性膜15は、エネルギー源物質4の分子を少しずつ透過させることによって徐放するものである。この非多孔性膜15は、膜材料、膜厚、封入するエネルギー源物質4の分子量や性質、温度、エネルギー源物質4の膜内部の濃度により、単位面積当たりを透過するエネルギー源物質4の分子の量を制御することが可能である。尚、非多孔性膜15の表面積を増加させることで、エネルギー源物質4の徐放面を増加することができる。本発明者等のポリエチレン膜に対する実験によると、同じ膜材料の場合には膜厚によって単位面積当たりの分子透過量が変化することが確認されている。そこで、微生物に必要なエネルギー源物質供給量に応じて、適宜膜厚などを選定することによって、必要な速度で必要な量のエネルギー源物質を供給することができる。このとき、エネルギー源物質4は、非多孔性膜15の分子透過性能に支配される緩やかな速度で漏れ出る。したがって、エネルギー源物質4として、直接供給すると微生物を死滅させる虞のある原液のアルコールを用いた場合であっても、容器14の周辺の微生物に対し生存に影響を与えることのない濃度に希釈された状態で微生物に供給される。
ここで、非多孔性膜15は、膜構成分子の密度や構造によっても分子透過量が変化する。ポリエチレンを例に挙げて説明すると、JIS K6922‐2により分類される低密度ポリエチレン(密度910kg/m以上、930kg/m未満)を用いた場合と比較して、高密度ポリエチレン(密度942kg/m以上)を用いた場合には、エネルギー源物質4の膜外への透過量が減少する。したがって、所望のエネルギー源物質供給量に応じて、非多孔性膜2の膜厚と膜密度のバランスにより、エネルギー源物質供給量を制御すればよい。また、膜内部のポリエチレン鎖の分子構造は、例えば延伸処理により可変することができるので、当該処理により所望の膜材料の膜密度や分子構造を変化させて、エネルギー源物質供給量を制御することが可能である。
非多孔性膜15としては、疎水性の膜、親水性の膜または親水性と疎水性の両方の性質を有する膜を、容器内に充填されるエネルギー源物質4の性質に合わせて用いることができる。疎水性の膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンその他のオレフィン系の膜が挙げられる。親水性の膜としては、分子構造中に親水基を有する膜、例えば、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリビニルアルコール、ビニロン、セロハン、ポリグルタミン酸などが挙げられる。親水性と疎水性の両方の性質を有する膜としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、つまり、疎水性のポリエチレン構造と親水性のポリビニルアルコール構造の両方を有する共重合体膜が挙げられる。親水性と疎水性の両方の性質を有する膜は、疎水性のポリエチレンと親水基のポリビニルアルコールの含有比率を変えることにより、疎水性を強めたり、親水性を強めたりすることができる。その他にも上記の非多孔性膜に比べ透過性が劣るが、極めて遅い徐放性能が要求される時には、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレンアクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート混合物系などの気液系膜、つまり、その分子構造中の親水基や極性基の状態によって透過性が変化する膜が挙げられる。
安価で耐久性や耐薬品性に優れた安定な素材であるポリエチレンやポリプロピレン等の疎水性の膜を用いることで、分子構造中に親水基を有していない疎水性物質であるベンゼンやトルエンなどの揮発性有機物を透過させることができる。また、メタノールやエタノールその他のアルコールや酢酸など、分子構造中に親水基を有している一部の物質も疎水性の膜を透過することが本発明者等の実験により確かめられている。一方、水溶性の高い糖類は疎水性の膜を透過することができない。この場合には、ポリビニルアルコール膜などの親水性の膜を用いることで透過させることができる。尚、メタノールやエタノール、酢酸も水に可溶な物質であるから、ポリビニルアルコール膜を透過することが可能である。
また、親水性と疎水性の両方の性質を有するエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いることで、親水性の物質と疎水性の物質をそれぞれ透過させることができるし、親水性の物質と疎水性の物質の双方を同時に透過させることも可能である。また、共重合体を構成するエチレンとビニルアルコールの比により、物質の透過量を制御することが可能である。つまり、エチレンの量を増やすと疎水性物質の透過量を増やすことができ、ポリビニルアルコールの量を増やすと親水性物質の透過量を増やすことができる。
尚、ポリエチレンやポリプロピレンは、適度な物質の透過性、熱可逆性を有しており、柔軟で成形が容易であるという利点を有している。したがって、疎水性の膜としてポリエチレンやポリプロピレンを用いることはコスト面や性能面から考えても非常に優れている。
次に、エネルギー源物質4としては、微生物が必要とするエネルギー源物質であると共に微生物に対して毒性を呈さない物質であって、非多孔性膜15を腐食しない性質を持ち、かつ非多孔性膜15を透過できる分子量、性質を有するものが適宜選択され、その状態はガス状であっても液状であってもよい。ガス状物質を例示すると、水素、硫化水素や、メタン、エタンなどの有機化合物が挙げられる。液状物質を例示すると、メタノール、エタノール、プロパノール等の揮発性有機物が挙げられる。尚、微生物によってはベンゼン、トルエン、フェノールなどの揮発性有機物も利用可能であるが、これらに限定されるものではない。尚、これらのエネルギー源物質4は、1種類である必要はなく、水素、硫化水素、非多孔性膜を透過し得る有機化合物のうちの二種類以上が混在した状態であっても、エネルギー源物質を微生物に供給可能である。また、本発明者等の実験によると、酢酸が厚さ0.05mmのポリエチレン膜を透過することが確認された。また、乳酸が、厚さ0.01mmのポリエチレン膜を透過することが確認された。また、厚さ0.025mmのポリビニルアルコール膜をグルコースやスクロースが透過したことが確認されたことから、親水性の膜であるポリビニルアルコール膜や親水性と疎水性両方の性質を有する膜であるエチレンビニルアルコール共重合体膜を用いることにより、酢酸その他のカルボン酸、グルコースやスクロースその他の糖類や、乳酸をエネルギー源物質として用いることが可能である。
ここで、エネルギー源物質4としてアルコールを用いる場合でも、原液のまま使用可能である。従来であれば、メタノールやエタノール等のアルコールを微生物のエネルギー源として用いる場合には、微生物が死なない程度の濃度に水で希釈する必要があったが、本発明によれば、エネルギー源物質は微生物へ緩やかに供給されるため、アルコールの原液を用いても、アルコールの濃度が薄められて微生物に供給されるため、微生物が死に至ることはない。尚、必ずしもアルコールの原液を用いることはなく、アルコールの原液を水で希釈して用いた場合や、不純物が混在しているような場合であっても、アルコール分子のみが非多孔性膜を透過して微生物に緩やかに供給される。したがって、アルコールに不純物例えばカテキンやシアン化合物のように微生物に対して毒性を呈する抗菌性の分子が混入していても、非多孔性膜としてポリエチレンやポリプロピレンに代表される疎水性の膜を用いた場合には、分子量の大きなカテキンや極性の高いシアン化合物などは透過し難く、微生物にとって無害なエネルギー源物質を主成分として透過させて容器外に徐放させることが可能となり、不純物は容器内にほとんど残留する。したがって、廃アルコールのように、不純物を含んでいるエネルギー源物質を用いることができる。
エネルギー源物質4の非多孔性膜15の透過は、エネルギー源物質4の分子が膜に溶け込み、その溶け込んだ分子が膜内部を拡散して反対側に達することにより起こる。したがって、膜への溶け込みが起こらない程分子量の大きなカテキンなどは非多孔性膜を透過しにくい。また、ポリエチレンやポリプロピレン等は水となじむ官能基が存在しない疎水性の強い膜であると共に低極性であるため、極性分子である水が膜に溶け込みにくい。したがって、水に溶けやすい極性の高い物質であるシアン化合物などもほとんど透過できない。また、水は水分子同士の水素結合が強いため、常温では水が当該膜を透過することはほとんど無い。したがって、非多孔性膜15は、水や極性の高いシアン化合物、分子量の大きなカテキン等の不純物はほとんど透過させずに、所望のエネルギー源物質4を主成分として透過させる「分子ふるい」として機能する。また、エネルギー源物質4は、容器内に充填されている状態が気体、液体、蒸気(揮発性有機物が揮発して生成されたもの)のどの状態であっても、容器外には分子状態で放出される。つまり、エネルギー源物質4は、非多孔性膜15を透過して、液体のように分子間の引力により凝集することのないガス(気体)の状態で徐放される。したがって、非多孔性膜15はガス透過性膜とも表現できる。また、容器外部の環境が気相(大気等)である場合だけでなく、液相(排水、地下水等)である場合にもエネルギー源物質4を容器外部に分子状態で徐放することが可能である。つまり、ゲル担体2として用いられている、水を含んだ高分子ゲルや吸水性ポリマー中にエネルギー源物質4を分子状態で徐放することが可能である。
尚、非多孔性膜は、エネルギー源物質を膜に溶け込ませることにより透過させており、多孔質膜のように孔の大きさや数でエネルギー源物質の種類や量を制御するものではない。したがって、長期間の使用による孔の閉塞の問題も生じることが無く、定期的な逆洗浄の必要もない。したがって長期間メンテナンスを行うことなく使用でき、ランニングコストを低減できる。
また、非多孔性膜15の性質は使用されるエネルギー源物質4の性質によって決定するのがよい。例えば、非多孔性膜2を疎水性とすれば、炭素鎖のような疎水基を有する分子を透過しやすくなる。一方、非多孔性膜15を親水性とすれば、親水基を有する分子や水に溶けやすい分子を透過しやすくなる。よって、使用するエネルギー源物質4の性質に合わせて、非多孔性膜2の性質を決定すればよい。また、膜内部に極性を与えることで膜を構成する分子鎖どうしの結合を強めて分子鎖間の空隙を小さくし、分子透過性能の制御を行うことが可能である。例えば、ポリ塩化ビニリデンのようにポリエチレンの水素の一部が塩素で置換された極性分子により構成された膜は、ポリエチレンと比較して分子鎖間の空隙が小さく、分子透過性能が低くなる。さらに、疎水性膜と親水性膜を貼り合わせて、両方の性質を与える膜として、エネルギー源物質4の透過性を制御することもできる。
このような非多孔性膜15からなる袋14にエネルギー源物質4を密封した状態でゲル担体2のアンモニアガスと接触していない側の面に載置したり、あるいはゲル担体2の内部にポケットを作って収納することにより、エネルギー源物質の供給が必要な微生物の近くに配置することができる。この場合には、容器14内のエネルギー源物質4あるいは非多孔性膜15を分子ふるいとして通過するエネルギー源物質4の分子が自律的に一定速度で緩やかに容器14から漏洩し、微生物に供給される。しかも、容器4から透過するエネルギー源物質の量は、非多孔性膜の膜材料や膜厚、膜密度などの選択によって、必要とするエネルギー源物質量となるように制御されているので、微生物の生存に影響を与えることのない濃度に希釈された状態で微生物にエネルギー源物質として供給される。尚、ゲル担体2内に収納される袋14の場合には袋の両面が非多孔性膜であることが好ましいが、ゲル担体2の上に載置ないし接着などで固定する袋14の場合には袋のゲル担体2と接する面側のみを非多孔性膜とすることが無駄にエネルギー源を大気中などに放出することがなく好ましい。
以上のように構成された本実施形態のアンモニアガス用バイオリアクターによれば、以下に示す担体内部で起こる生物化学的反応をもって、アンモニアガスを無害な窒素に変換してアンモニアガスの大気中への拡散を防ぐ。
即ち、家畜糞尿3より放出されるアンモニアガス6(NH)がシート状のゲル担体2に触れると、ゲル膜表面でHと反応してアンモニウムイオン(NH )となる。次いでこのアンモニウムイオン(NH )はアンモニア酸化菌7による生物化学的反応により硝化され、硝酸イオン(NO )となる。尚、アンモニア酸化菌は好気性細菌であり、酸素の供給が必要である。
硝酸イオン(NO )は脱窒菌8による生物化学的反応により脱窒され、無害な窒素ガス(N)となって大気中に排出される。尚、脱窒菌8はエネルギー源である電子供与体を供給することにより機能するようになる。また、脱窒菌は嫌気性細菌であり、好気性雰囲気下では機能しないが、ゲル担体中に脱窒菌と共に担持されているアンモニア酸化菌が酸素を消費することにより、ゲル担体2の中には脱窒菌が機能するための嫌気性条件が局所的に形成され、脱窒菌も機能するようになる。
上述の実施形態のバイオリアクター1は、脱窒菌8を機能させるアルコールなどのエネルギー源物質4を外部から供給するものであるが、電子供与体をゲル担体2内部で生成するようにしても良い。図2にアンモニア発生源からアンモニアガスと同時に発生するメタンガスを利用して脱窒菌を機能させる一実施形態を示す。この実施形態のバイオリアクター10は、ゲル担体2にアンモニア酸化菌及び脱窒菌の他に、メタン酸化菌を固定化したものである。本実施形態では、コンポスト化処理中の家畜糞尿11から発生するアンモニアガス6を、生物化学的反応により分解除去して窒素ガスにする例を挙げて説明しているが、これに限られるものではない。尚、ゲル担体2にメタン酸化菌を固定化する点を除く構成は前述の実施形態と同様なので、説明を省略する。
メタン酸化菌13としては、従来この種の分野で知られているものが使用できるが、より具体的には、例えば、
Pseudomonas methanica、
Methanomonas methanooxidans、
Methylococcus capsulatus
などを挙げることができる。この菌もアンモニア酸化菌7や脱窒菌8の場合と同じように、例えばリン酸緩衝液等に懸濁させて、成形前の担体に混合することで担体に担持させるようにすればよい。
このバイオリアクター9によれば、電子供与体を脱窒菌8のエネルギー供給源として用いなくとも、気相中のメタンガス12をバイオリアクター内部でメタノールに変換することにより、脱窒菌8へ電子供与体を供給することが可能となる。即ち、コンポスト化処理中の家畜糞尿11より放出されるメタンガス12(CH)を担体内部でメタン酸化菌13と反応させてメタノールを生成し、該メタノールを脱窒菌8へのエネルギー源として利用することを可能とする。
したがって、コンポスト化施設等、アンモニアと同時にメタンガスも発生するような場所においては、このバイオリアクターを用いることで、エネルギー源を外部から供給する必要がなくなる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、アンモニア酸化菌、脱窒菌およびメタン酸化菌をゲルに固定化した担体からなるバイオリアクターにおいては、メタンガスが発生するような施設においては、エネルギー源供給物質は必要ないとしたが、メタンガスの発生量が少なく、脱窒菌が良好に機能しない場合には、バイオリアクターの外部からエネルギー源物質を補給するようにしてもよい。
さらに、非多孔性膜15からなる袋14を完全密封された独立したものとした例を挙げたが、エネルギー源物質4を外部から補充可能とすることも可能である。例えば、エネルギー源物質4を封入する袋14の縁の一部にエネルギー源物質4を注入する供給口部18を設けてノズル19を装着する構造、あるいは袋14とノズル19を一体化した構造とすることにより、液体のエネルギー源物質4を貯留するタンク20とチューブ21を介して連結し、袋14内のエネルギー源物質4が減少してきたときに、サイフォンの原理を利用してチューブ両端での圧力の差を利用して揮発性有機物16’をタンクから補充できる。尚、袋14は供給口部18あるいはノズル19を設けているので厳密な意味での密封構造ではないが、供給ノズル19内がタンクから供給される揮発性有機物16’で満たされている状態では、液面がシールとなって容器内は事実上密封状態にある。このため、液状あるいはガス化した有機物16が供給口部18やノズル19を通って袋14外に漏れ出ることはない。
また、非多孔性膜15は酸性物質や塩基性物質を透過させることができる。酸性物質または塩基性物質の分子が膜に溶け込み、その溶け込んだ分子が膜内部を拡散して反対側に達することにより起こる。例えば、酸性物質である酢酸をポリエチレンやポリプロピレン等の疎水性の非多孔性膜により構成される容器4内に封入することにより、酢酸分子またが非多孔性膜に溶け込んで、膜内部を拡散して反対側に達することにより膜外に供給され、容器周辺のpHを変化させてゲル担体2のpHを制御することができる。また、酸性物質である塩酸、または塩基性物質である水酸化ナトリウムをポリビニルアルコールなどの親水性の非多孔性膜により構成される容器4内に封入することにより、水素イオン、水酸化物イオンが非多孔性膜に溶け込んで、膜内部を拡散して反対側に達することにより膜外に供給され、容器周辺のpHを変化させてゲル担体2のpHを制御することもできる。また、エチレンビニルアルコール共重合体膜を用いた場合には、塩酸、酢酸などの酸性水溶液、または水酸化ナトリウムなどの塩基性水溶液を膜外に供給し、容器周辺のpHを上昇または低下させてゲル担体2のpHを制御することもできる。したがって、ゲル担体17内部の微生物にとって好ましいpH環境を持続させて、バイオリアクターの機能を長期に亘って維持できる。
<実施例1>
ポリエチレン膜を用いて袋を形成し、その中にメタノール、エタノールを密封した場合の有機物の透過量を測定して、ポリエチレン膜に対するメタノール及びエタノールの透過性について確認した。
厚さ0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.5mmのポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)中にメタノール(和光純薬工業製、99.8%)、エタノール(和光純薬工業製、99.5%)を密封して袋状とし、これを水の中に浸漬し、経過日数に対して分子透過量をTOC濃度を測定することによりメタノールおよびエタノールの透過量を評価した。TOC濃度は燃焼−赤外線式全有機炭素分析計(TOC−650、東レエンジニアリング製)により測定した。尚、密封した液量は全て5mlとした。この結果を図5の(A)並びに(B)に示す。図中において、Bはバックグラウンド、MeOHはメタノール、EtOHはエタノール、0.05、0.1、0.3、0.5等の数値はポリエチレン膜厚(単位;mm)を表している。この実験から、メタノール、エタノール共に、ポリエチレン膜厚が薄くなるにつれて、TOC濃度も増加していくことから、ポリエチレン膜の膜厚により、エネルギー源物質供給量の制御が可能であることが確認された。
<実施例2>
酢酸、乳酸及びグルコースのポリエチレン膜透過性を調査した。厚さ0.05mmのポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)中に酢酸(和光純薬工業製、99.7%)を密封して袋状とした。また、厚さ0.01mmのポリエチレン膜(商品名:ポリエチレンラップ、(株)ダイエー製)中に乳酸(和光純薬工業製、DL‐乳酸85〜92%溶液)、グルコース(和光純薬工業製、10%水溶液)をそれぞれ密封して袋状とした。密封した溶液量はすべて5mLとした。これらをそれぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してTOC濃度を測定して、酢酸、乳酸及びグルコースの透過量を評価した。また、ポリエチレン膜中にエタノール(和光純薬工業製、99.5%)を密封して袋状としたものについても同様にTOC濃度濃度を測定し、酢酸、乳酸及びグルコースのポリエチレン膜透過性との比較を行った。この結果を図6に示す。図中において、EtOHはエタノール、Aceは酢酸、Lacは乳酸、Gluはグルコースを表している。この実験から、酢酸はエタノールよりもポリエチレン膜の透過速度が速いことが確認された。一方、乳酸とグルコースはポリエチレン膜をほとんど透過しないことが確認された。したがって、メタノールやエタノール等のアルコールに加えて、酢酸もポリエチレン膜を透過することが明らかとなった。また、乳酸やグルコース等の水に良く溶ける物質はポリエチレン膜を透過し難いことが明らかとなった。
<実施例3>
ポリエチレン膜を透過しなかったグルコースと、単糖類であるグルコースより分子量の大きい二糖類のスクロースのポリビニルアルコール(PVA)膜透過性を調査した。
厚さ0.025mmのポリビニルアルコール膜(商品名:ビニロンフィルムDX−N#25、東セロ株式会社製)中に、グルコース(和光純薬工業製、10%水溶液)、スクロース(和光純薬工業製、10%水溶液)をそれぞれ密封して袋状とした。密封した溶液量はすべて5mLとした。これらをそれぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してTOC濃度を測定して、グルコース及びスクロースの透過量を評価した。この結果を図7に示す。図中において、Gluはグルコース、Sucはスクロースを表している。この実験から、グルコースとスクロースはPVA膜を透過していることが確認された。また、TOC濃度が平衡状態に達する時間は、グルコースが約15時間後であるのに対し、スクロースは約50時間後であり、スクロースの方がグルコースと比較して遅いことが確認された。したがって、分子量の大きいグルコースやスクロース等の糖類もPVA膜のような親水性の膜を用いることで透過させることが可能であることが明らかとなった。また、単糖類であるグルコースよりも分子量の大きい二糖類のスクロースの方がTOC濃度の平衡状態に達する時間が遅かったことから、分子の大きさによりPVA膜の分子透過速度を制御することが可能であることが明らかとなった。尚、本実験では、グルコースやスクロースのPVA膜透過速度が、メタノールやエタノール、酢酸のポリエチレン膜透過速度に比べて速い傾向が見られた。これは、使用したPVA膜の膜厚が0.025mmと薄かったことに起因しており、PVA膜厚を厚くすることやポリエチレン膜とPVA膜の中間の性質を持つエチレンビニルアルコール共重合体膜を用いることにより、グルコースやスクロースの透過速度を抑えることが可能である。
以上、非多孔性膜であるポリエチレン膜及びポリビニルアルコール膜を用いた各種物質の透過性実験結果から、非多孔性膜の性質と物質分子の性質、物質分子の大きさ(分子量)、非多孔性膜の膜厚により、非多孔性膜透過速度を制御できることが明らかとなった。
また、ポリエチレン膜の様な疎水性の膜であっても、親水基を有する分子であるメタノールやエタノール、酢酸を透過させることが可能であることが明らかとなった。したがって、メタノールやエタノール、酢酸分子よりも炭素数の多い疎水性の高い分子は、疎水性の膜を透過しやすくなる。また、親水基を有していない分子、例えば、ベンゼンやトルエン等は疎水性の膜と非常になじみやすく、これらの分子を透過させやすい。また、ポリエチレン膜とポリビニルアルコール膜の中間の性質を有するエチレンビニルアルコール(EVOH)膜を用いることで、分子の親水性、疎水性に関わらず、透過させることが可能である。
また、水の中でのエネルギー源物質徐放性が確認されたことから、非多孔性膜にエネルギー源物質を密封した袋を、水を含むゲル担体に載置したり、その内部にポケットを作って収納することにより、エネルギー源物質を分子状態でゲル担体中に徐放して、微生物に緩やかに供給できることが明らかとなった。
<実施例4>
酸性物質である塩酸や酢酸、塩基性物質である水酸化ナトリウムやアンモニアをポリエチレン膜またはPVA膜から透過させることによる、ポリエチレン膜またはPVA膜周辺環境のpH制御性について調査した。
厚さ0.01mmのポリエチレン膜(商品名:ポリエチレンラップ、(株)ダイエー製)中に、HCl溶液(和光純薬工業製、1N)、酢酸(和光純薬工業製、99.7%)、NaOH溶液(和光純薬工業製、1N)、アンモニア溶液(和光純薬工業製、25%)をそれぞれ密封して袋状とした。また、厚さ0.025mmのPVA膜(商品名:ビニロンフィルムDX‐N#25、東セロ株式会社製)中に、HCl溶液(和光純薬工業製、1N)、NaOH溶液(和光純薬工業製、1N)をそれぞれ密封して袋状とした。溶液を密封した袋は、それぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してpHを測定し、ポリエチレン膜またはPVA膜による酸性物質や塩基性物質の透過性の評価を行った。この結果を図8に示す。この実験から、酸性物質である酢酸、塩基性物質であるアンモニアがポリエチレン膜を透過して、袋の周辺環境のpHの制御が可能であることが確認され、酸性物質である塩酸、塩基性物質である水酸化ナトリウムはポリエチレン膜は透過しにくいがPVA膜を透過して、袋の周辺環境のpHの制御が可能であることが確認された。したがって、酸性物質や塩基性物質の透過性をポリエチレン膜、PVA膜またはその中間性質を持つエチレンビニルアルコール共重合体膜の選別、膜の厚さにより制御して、袋の周辺のゲル担体を所望のpHに変化させて、所望のpHを長期に亘り維持できることが明らかとなった。
本発明の一実施形態であるアンモニア酸化菌および脱窒菌を固定化した担体からなるバイオリアクターを示す図であり、(A)は担体断面図、(B)はその使用状態を説明する斜視図である。 本発明の他の実施形態であるアンモニア酸化菌、脱窒菌およびメタン酸化菌を固定化した担体からなるバイオリアクターを示す図であり、(A)は担体断面図、(B)はその使用状態を説明する斜視図である。 エネルギー源である袋状の容器の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。 エネルギー源供給方式の他の実施形態を原理的に示す縦断面図である。 ポリエチレン膜からの有機物の透過量測定結果を示す図で、(A)はメタノール、(B)はエタノールのそれぞれの測定結果を示す。 ポリエチレン膜からのエタノール、酢酸、乳酸およびグルコースの透過量測定結果を示す図である。 ポリビニルアルコール膜からのグルコースおよびスクロースの透過量測定結果を示す図である。 ポリエチレン膜から酸性物質や塩基性物質を放出させて周辺環境のpH値を測定した結果を示す図である。
符号の説明
1 バイオリアクター
2 ゲル担体
3 家畜糞尿
4 エネルギー源物質
6 アンモニア
7 アンモニア酸化菌
8 脱窒菌
10 バイオリアクター
11 コンポスト化処理中の家畜糞尿
12 メタンガス
13 メタン酸化菌
14 袋状の容器
15 非多孔性膜

Claims (4)

  1. ゲル担体にアンモニア酸化菌、脱窒菌およびメタン酸化菌を固定化し、一面にアンモニアガスとメタンガスを接触させて、前記メタンから前記メタン酸化菌で前記脱窒菌を機能させるエネルギー源を生成して、アンモニアガスを窒素ガスに変換して除去するガス状アンモニアを除去するバイオリアクター。
  2. 前記ゲルが吸水性ポリマーである請求項1に記載のバイオリアクター。
  3. コンポスト化処理中の家畜糞尿塊若しくはそれを収めた容器を、アンモニア酸化菌、脱窒菌およびメタン酸化菌を固定化したゲル担体のシートで覆い、前記家畜糞尿塊から放出されるメタンガスをメタン酸化菌で電子供与体に変換してから前記脱窒菌のエネルギー源物質として供給し、アンモニアガスを硝化反応、脱窒反応により窒素ガスに分解してから大気中に放出することを特徴とするアンモニアガス処理方法
  4. 必要に応じて随意にあるいは定期的に給水するものである請求項3記載のアンモニアガス処理方法
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