JP4717016B2 - O,o’−アミドマロネートおよびn,o−アミドマロネート白金錯体 - Google Patents

O,o’−アミドマロネートおよびn,o−アミドマロネート白金錯体 Download PDF

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Description

発明の背景
シスプラチン(cDDP、またはシスジアミンジクロロプラチナ(II)、図1)は、ヒトでの使用が承認されている最も広く用いられている白金化学療法化合物であり、現在、精巣、卵巣、および頭頚部腫瘍の治療に適応されており、他の物質と併用する場合には、扁平上皮癌および小細胞肺癌の治療に適応されている。シスプラチンの抗腫瘍活性は、インビボでの塩素配位子の喪失に起因して、反応性のモノまたはジアクア錯体を形成し、これが次に腫瘍細胞において鎖間および鎖内DNAクロスリンクを形成して細胞死に至ると考えられている。
しかし、シスプラチンの使用は、その腎毒性および耳毒性のために有意に制限されている。多くの新規低分子Pt錯体が作製されて、治療指数(最小有効量に対する最大認容量の比)が改善された新規化合物を発見する期待を持って試験されている。例えば、イギリスの癌研究所において、塩素原子を他の脱離基に置換すると、より低い腎毒性を示す化合物を生成できることが証明された。これによって、塩素配位子が1.1-シクロブタン-ジカルボン酸キレートに置換されているシスプラチン類似体であるカルボプラチン(図1)が発見された。キレートは、シスプラチンの塩素より不安定性が低く、シスプラチンと類似の殺腫瘍効果を得るためにはより高用量のカルボプラチンを必要とする。しかし、カルボプラチンの高い治療指数および異なる毒性プロフィールによって、この可能性がある短所は打ち消される。カルボプラチンの用量制限毒性は、骨髄抑制である。
オキサリプラチン(図1)は、ヒトでの使用に関して承認されているもう一つのPtキレートである。オキサリプラチンは、シスプラチンの双方の非不安定(アミン、アンモニア)および不安定(塩素)配位子の双方を他の置換基に置換する効果に関する研究の成果であった。オキサリプラチンでは、アンモニア配位子がトランス1R,2R-ジアミノシクロヘキサン(1R,2R-DACH)キレートに置換され、塩素配位子がシュウ酸キレートに置換されている。オキサリプラチンは、結腸直腸癌の治療に適応されている。オキサリプラチンの用量制限毒性は知覚ニューロパシーである。
他の多くの低分子Pt錯体が作製されて試験されたが、これまでのところ有効性および治療指数においてほんのわずかな改善しか得られていない。承認された白金錯体の治療指数を改善するための多くの試みは、併用療法、例えば、シスプラチンとパクリタキセルの同時投与、またはリポソームでの送達のような製剤の変化のいずれかを伴った。
白金錯体の治療指数を改善するもう一つのアプローチは、腫瘍細胞に錯体をターゲティングすることであろう。シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンのような通常の低分子Pt錯体は、腫瘍細胞に特異的にターゲティングされず、静脈内投与後、それらは正常細胞と共に腫瘍細胞にも容易に拡散する。非Pt化学療法に関して広範に研究されている腫瘍ターゲティングの一つの方法は、化学療法剤化合物を、デンドリマー、血清タンパク質、または抗体のようなポリマーまたは他の高分子構造に結合させることを含む。腫瘍におけるポリマーおよびナノ粒子の濃度は、静脈内投与後、正常組織におけるその濃度を超えることが証明されている。この好ましい腫瘍での蓄積は、「透過性および保持の増強」(EPR)作用と呼ばれている。本質的に、腫瘍内皮細胞層は、ポリマーおよびナノ粒子のような大きい化学実体が腫瘍血管の内皮細胞層に容易に通過して、腫瘍の間質領域に入るように(「透過性の増加」)、正常な内皮細胞層より「漏出性が高い」傾向がある。さらに、腫瘍における細胞外液のリンパ排液は、正常細胞よりかなり効率的ではなく、このように正常組織と比較すると、腫瘍からのポリマーおよびナノ粒子の流出速度は減少する(「保持の増強」)。
EPR作用によって腫瘍への化学療法剤の受動的ターゲティングを提供する構築物の例には、ライソゾーム酵素によって切断されるように設計されたテトラペプチドを通して直鎖状のポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドポリマー(ポリ(HPMA))に結合させたドキソルビシンが含まれる。「PKI」と呼ばれるこの水溶性の結合体は、その化学、前臨床試験、および臨床評価を記述する多数の刊行物の主題となっている。同様に、これらの化学療法剤分子の腫瘍への選択的送達のために、ポリ(HPMA)がパクリタキセルおよびカンプトテシンに結合されている。
受動的腫瘍ターゲティングの他に、正常細胞と比較して腫瘍細胞においてアップレギュレートされている受容体に結合する部分をPt錯体に共役させるような能動的メカニズムによって、Pt錯体を腫瘍にターゲティングすることもまた可能であろう。そのような広範なアップレギュレートされた受容体が公知である(Heppeler et al., 2000(非特許文献1);Schlaeppi et al., 1999(非特許文献2);Sudimack et al., 2000(非特許文献3);Dubowchik et al., 1999(非特許文献4);Weiner, 1999(非特許文献5);Buolamwini, 1999(非特許文献6))。受容体結合物質の例には、モノクローナル抗体、ペプチド、ソマトスタチン類似体、葉酸誘導体、レクチン、コバラミンおよびその誘導体のようなビタミン、ビオチンならびに多価陰イオン多糖類が含まれる。モノクローナル抗体(Mclntosh et al., 1997(非特許文献7);Hata, et al., 1992(非特許文献8))、ステロイド(Gust, et al., 1995(非特許文献9);DiZio, et al., 1992(非特許文献10);Gibson., et al., 1990(非特許文献11))および葉酸(Vitols, et al., 1987(非特許文献12))に結合させたPtに関する研究が報告されているが、いずれも臨床では評価されていない。
同様に、受動的ターゲティングと能動的ターゲティングとを組み合わせることも可能である。この例は、酵素切断可能なペプチドを通してドキソルビシンを結合させる、および肝臓において高度に濃縮されるアシアロ糖タンパク質受容体に対して強い親和性を有する糖質であるガラクトースも同様に結合させるポリ(HPMA)を含む化合物であるPK2によって示される。
必要なことは、薬学的に許容されるPt-ポリマー錯体、すなわち能動的および受動的ターゲティング技術を用いて、腫瘍をターゲティングするために用いることができる公知で再現可能な構造および純度の錯体を調製する手段である。本発明は、そのような手段およびそれによって調製されたPt錯体を提供する。
Heppeler et al., 2000 Schlaeppi et al., 1999 Sudimack et al., 2000 Dubowchik et al., 1999 Weiner, 1999 Buolamwini, 1999 Mclntosh et al., 1997 Hata, et al., 1992 Gust, et al., 1995 DiZio, et al., 1992 Gibson., et al., 1990 Vitols, et al., 1987
発明の概要
このように、一つの局面において、本発明は、以下の化学構造を有するアミドマロネートN,O-Pt錯体に関する:
Figure 0004717016
式中、
XはC=OまたはSO2であり;
R1は、水素、脂肪族基、水溶性基、腫瘍ターゲティング基、および一つまたはそれ以上の腫瘍ターゲティング基をさらに含む水溶性基からなる群より選択され;
qは0または1であり;
rは1〜500であり;
[リンカー]は、アルキル基、アミノ酸、ポリアミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)、およびその任意の組み合わせからなる群より選択され;
R2およびR3は、独立して、NH3、一級アミン、二級アミン、三級アミン、および窒素含有複素環からなる群より選択されるか;または
R2およびR3は、独立して、その双方が脂肪族、脂環式、芳香族、アラルキル、または複素環基の炭素原子に共有結合する一級、二級、三級アミノ基であって、アミノ基の窒素原子がPt原子とキレートを形成する場合、それによって5〜7員環が得られ;
R4は、水素、陽イオンおよびエステル形成基からなる群より選択される。錯体は、対応するアミドマロネートO,O'-Pt錯体またはアミドマロネートO,O'-PtおよびN,O-Pt錯体の混合物を、pH 6.0〜10.0の水溶液に接触させる段階を含むプロセスによって本質的に純粋に得られる。
本発明のもう一つの局面は、以下の化学構造を有するアミドマロネートO,O'-Pt錯体である:
Figure 0004717016
式中、
XはC=OまたはSO2であり;
R1は、水素、脂肪族基、水溶性基、腫瘍ターゲティング基、および一つまたはそれ以上の腫瘍ターゲティング基をさらに含む水溶性基からなる群より選択され;
qは0または1であり;
rは1〜500であり;
[リンカー]は、アルキル基、アミノ酸、ポリアミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)、およびその任意の組み合わせからなる群より選択され;
R2およびR3は、独立して、NH3、一級アミン、二級アミン、三級アミン、および窒素含有複素環からなる群より選択されるか;または
R2およびR3は、独立して、その双方が脂肪族、脂環式、芳香族、アルカリル、または複素環基の炭素原子に共有結合する一級、二級、三級アミノ基であって、アミノ基の窒素原子がPt原子とキレートを形成する場合、それによって5〜7員環が得られる。錯体は、対応するアミドマロネートN,O-Pt錯体またはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Pt錯体の混合物を、pH 3.5またはそれ未満の水溶液に接触させる段階を含むプロセスによって本質的に純粋に得られる。
本発明の局面において、本質的に純粋なアミドマロネートN,O-Pt錯体を調製するために用いられるpHは7.0〜8.0である。
本発明の局面において、本質的に純粋なアミドマロネートO,O'-Pt錯体を調製するために用いられるpHは2.0〜3.5である。
本発明の局面において、水溶液の温度は20℃〜50℃である。
本発明の局面において、水溶液の温度は35℃〜40℃である。
本発明の局面において、水溶液は緩衝液を用いて選択されたpHに維持される。
本発明の局面において、緩衝液はリン酸緩衝液である。
本発明の局面において、pHはpHスタットによって選択された範囲に維持される。
本発明の局面において、陽イオンは、Li+、Na+、K+、Ca2+、Mg2+および四級アンモニウムからなる群より選択される。
本発明の局面において、陽イオンはNa+である。
本発明の局面において、R2およびR3はNH3である。
本発明の局面において、R2およびR3は共に1,2-ジアミノシクロヘキサン、
Figure 0004717016
を含む。
本発明の局面において、1,2-ジアミノシクロヘキサンは、1R,2R-ジアミノシクロヘキサンである。
本発明の局面において、[リンカー]は、-Gly-(W)pGly-を含み、式中pは0、1、2、3、4、または5であり、Wは、同じまたは異なってもよいアミノ酸またはアミノ酸の直鎖である。
本発明の局面において、pは0である。
本発明の局面において、pは1であって、WはGlyである。
本発明の局面において、pは2であって、Wは-Phe-Leu-である。
本発明の局面において、pは2であって、WはGly-Glyである。
本発明の局面において、R1は水溶性の基である。
本発明の局面において、水溶性の基は、N-(2-(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドと、およびアクロイル(CH2=CHC(O)-)またはメタクロイル(CH2=C(CH3)C(O)-)とのコポリマーである。
本発明の局面において、R1はポリアミノ酸である。
本発明の局面において、ポリアミノ酸は、ポリグルタメート、およびポリリジンからなる群より選択される。
本発明の局面において、R1は多糖類である。
本発明の局面において、R1は腫瘍ターゲティング基をさらに含む水溶性の基である。
本発明の局面において、腫瘍ターゲティング基は、葉酸、葉酸誘導体、葉酸類似体、ビタミンB12、ビタミンB12誘導体、ビタミンB12類似体、ビオチン、デスチオビオチンおよびビオチン類似体からなる群より選択される。
本発明の局面において、R1は腫瘍ターゲティング基である。
本発明の局面において、腫瘍ターゲティング基は、葉酸、葉酸誘導体、葉酸類似体、ビタミンB12、ビタミンB12誘導体、ビタミンB12類似体、ビオチン、デスチオビオチンおよびビオチン類似体からなる群より選択される。
本発明の局面において、Ptは+2酸化状態である。
本発明の局面において、Ptは+4酸化状態である。
本発明の局面において、R1は以下の化学構造を有する水溶性のランダムコポリマーである:
Figure 0004717016
式中、
tは0.75〜0.99であり;
vは0.01〜0.25であり;
t+v=1.00であり;
zはポリマーの分子量を表し、1〜5000 kDaであり;
R5およびR5'は独立して水素およびCH3からなる群より選択され;かつ
R6は2C−6Cヒドロキシアルキル基である。
本発明の局面において、R6は2-ヒドロキシプロピルアミノ(CH3CH(OH)CH2NH-)である。
本発明の局面において、本質的に純粋な錯体を得ることはさらに、限外濾過を含む。
本発明の局面において、限外濾過はクロスフロー限外濾過を含む。
本発明の局面において、限外濾過は、遠心限外濾過を含む。
本発明の局面は、上記の任意のアミドマロネートO,O'-PtまたはN,O-Pt錯体と、一つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物である。
本発明の局面は、上記の任意のアミドマロネートO,O'-PtまたはN,O-Pt錯体の薬学的有効量を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、固形腫瘍を治療する方法である。
本発明の局面において、錯体は非経口投与される。
本発明の局面は、アミドマロネートO,O'-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物を、pH 6.0〜10.0の水溶液に接触させる段階を含む、本質的に純粋なアミドマロネートO,O'-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物から本質的に純粋なアミドマロネートN,O-Ptキレートを調製する方法である。
本発明の局面において、上記の方法において、pHは7.0〜8.0である。
本発明の局面は、アミドマロネートN,O-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物を、pH 3.5およびそれ未満の水溶液に接触させる段階を含む、本質的に純粋なアミドマロネートN,O-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物から本質的に純粋なアミドマロネートO,O'-Ptキレートを調製する方法である。
本発明の局面において、上記の方法においてpHは2〜3.5である。
本発明の局面において、上記の方法において水溶液の温度は20℃〜50℃である。
本発明の局面において、上記の方法において、水溶液の温度は35〜40℃である。
本発明の局面において、上記の方法において、水溶液は緩衝液を用いて、選択されたpH範囲に維持される。
本発明の局面において、上記の方法において緩衝液はリン酸緩衝液である。
本発明の局面において、上記の方法において、水溶液はpHスタットを用いて選択されたpH範囲に維持される。
発明の詳細な説明
表の簡単な説明
(表1)38℃で主にO,O-アミドマロネートPt錯体の組成に及ぼすpHの影響を示す。
(表2)38℃で、100%N,O-アミドマロネートPt錯体の組成に及ぼすpHの影響を示す。
(表3)主にO,O-Ptキレートおよび100%N,O-アミドマロネートから開始してpH 5.0〜5.5でのアミドマロネートPt錯体の組成に及ぼす二つの陰イオン、塩素(Cl-)および過塩素酸(ClO4 -)の影響を示す。
(表4)ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-Pt(NH3)2、100%N,O-キレートに関する経時的な放出されたPtの百分率対pHを示す。
(表5)シスプラチンおよびカルボプラチンと比較した本発明の様々な化合物のIC50を示す。
(表6)本発明のO,O'-およびN,O-アミドマロネートPt錯体に対するマウスの認容レベルの比較を示す。
定義
「本質的に純粋な」という句は、Ptの90%より多く、好ましくは95%より多く、および最も好ましくは99%より多くが一つの異性体、すなわちO,O'-PtまたはN,O-Ptアミドマロネートキレートとしてキレートを形成しているアミドマロネートPtキレート(Ama=Pt)を指す。
「治療的有効量」は、それによって患者における腫瘍または複数の腫瘍の増殖の停止、増殖速度の減少、大きさの退縮または完全な消失が起こる投与量である。本発明の目的に関して、本明細書に記述の化合物の治療的有効量は、約1 mg Pt/kg〜約1 gm Pt/kg体重の範囲であろう。
本明細書において用いられるように、「患者」は、哺乳類、特にヒトを指す。
「アクリルアミドポリマー」は、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、および両者のコポリマーを指す。
「Pt錯体」という用語は、Pt原子がPt(II)の場合は配位子4個、Pt(IV)の場合は6個と配位結合している種を示す。
「キレート」は、Pt錯体のPt原子と環を形成する二座配位子を指す。
「アミン」という用語はアンモニア、NH3を指す。
「一級アミン」という用語は、Raが脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環基からなる群より選択される化学式RaNH2を有する化合物を指す。
「二級アミン」という用語は、RaおよびRbが脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環基からなる群より独立して選択される化学式RaRbNHを有する化合物を指す。
「三級アミン」という用語は、Ra、Rb、およびRcが脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環基からなる群より独立して選択される化学式RaRbRcNを有する化合物を指す。
「四級アンモニウム」という用語は、Ra、Rb、Rc、およびRdが脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環基からなる群より独立して選択される、式RaRbRcRdN+を有する化合物を指す。四級アンモニウム基は、対イオン、例えば塩素(Cl-)、またはカルボキシル(COO-)、しかしこれらに限定されない対イオンを必要とし、後者は、四級アンモニウム基がその一部である分子に結合してもよく、またはそれに対して外部であってもよい、例えば物理的に離れたF3CCOO-基であってもよいがこれらに限定されない。
本明細書において用いられるように、「脂肪族」という用語は、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和(すなわち、一つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を含む)炭化水素を指す。好ましくは、脂肪族は、炭素原子1〜10個からなり(本明細書において、「1〜10」または「1から10」のような数字の範囲が提供される場合、基は、炭素原子1個、炭素原子2個、炭素原子3個等から表記の炭素原子の最大数までおよびこれを含む炭素原子からなる可能性があることを意味する)。より好ましくは現在、これは炭素原子1〜6個を有する低級脂肪族基である。
本明細書において用いられるように、「脂環式」という用語は、炭素の少なくともいくつかが環を形成する脂肪族基を指す。
「ヒドロキシアルキル」基は、如何なる二重または三重結合も含まず、一つまたはそれ以上の-OH基によって置換されている脂肪族基を指す。
本明細書において用いられるように、「エステル形成部分」は、カルボキシレート酸素に共有結合した場合に、すなわちカルボキシル基の-C(O)O酸素がエステル、すなわち-C(O)OR基を形成する、脂肪族、脂環式、アラルキル、またはヘテロアラルキルR基を指す。
本明細書において用いられるように、「芳香族」基は、環において完全な非局在化π電子系を有する全て炭素の単環または縮合環多環式基(すなわち、炭素原子の隣接する対を共有する環)を指す。アリール基の例は、フェニル、ナフタレニル、およびアントラセニルであるが、それらに限定されない。
本明細書において用いられるように、アラルキル基は、それに共有結合した脂肪族基を有するアリール基を指し、脂肪族基は基が結合している如何なる他の部分に対してもアラルキル基の結合点である。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル等が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
本明細書において用いられるように、「複素環」基は、環の一つまたはそれ以上が窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される一つまたはそれ以上の原子を含む、単環または縮合環基を指す。この用語には、環が、ヒュッケル則によって芳香族である完全な非局在化π電子系を有するヘテロ芳香族基が含まれる。ヘテロ芳香族基の例は、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリンおよびカルバゾールであるがそれらに限定されるわけではない。この用語にはまた、環が一つまたはそれ以上の二重結合を含んでもよいが、完全な非局在化π電子系を有しないヘテロ脂環式基が含まれる。
本明細書において用いられるように、「腫瘍ターゲティング基」は、治療化合物、例えば本発明の治療化合物を他の組織と比較して腫瘍に選択的に送達する基を指す。ターゲティングはEPR作用を利用する場合には受動的であってもよく、または抗体、レクチン、葉酸、ビオチン、ビタミンB12、およびメソトレキセートおよびデスチオビオチンのようなその類似体に結合させる場合には、能動的であってもよい。
本明細書において用いられるように、「水溶性基」は、それ自身、一般的に水溶性が不良であるO,O-PtおよびN,O-Ptアミドマロネートキレートを含む分子の水溶性を提供するまたは増加させる基を指す。水溶性基の例には、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキル-メタクリルアミド)およびそのコポリマーのようなポリマー;ポリエチレングリコール(PEG);ポリプロピレンオキシド(PEO);ポリビニルアルコール;ポリ(ビニルピロリドン);水溶性のデンドリマー;マンノースおよびグルコースのような糖;アスコルビン酸;グリセロール;セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシン、アルギニン、シトルリン等のような水溶性基を含むアミノ酸およびポリアミノ酸;デキストロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのような多糖類;ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンのようなグリコサミノグリカン;スルホン酸、スルホネート、4級アンモニウム塩およびヒドロキシ、メトキシ、ポリオール、ポリエーテル、アミド等のような個々の水溶性官能基が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
「ポリマー結合N,O-アミドマロネートジアミンプラチナ(II)錯体」は、Pt(II)がアミド窒素およびAmaのカルボキシレート酸素とキレートを形成して、そのようなAma=Pt部分の一つまたはそれ以上が直接またはリンカーを通してポリマー骨格に共有結合している化合物を指す。
「リンカー」は、ポリマー骨格からAma-Ptキレートを空間的に分離する基を指す。リンカーは、その一つの末端がポリマー骨格と共有結合を形成することができ、そのもう一方の末端がAmaと共有結合することができる、ポリエチレングリコール、アミノ酸またはポリアミノ酸のような、しかしこれらに限定されない任意の種類の実体となりうる。
本明細書において用いられるように、「陽イオン」は、アルカリおよびアルカリ土類金属陽イオン、ならびに四級アンモニウム基が含まれるがそれらに限定されるわけではない薬学的に許容される任意の陽性荷電種を指す。特に、本発明の陽イオンは、H+、Na+、K+、Li+、Ca2+、Mg2+、および四級アンモニウム基からなる群より選択される。
本明細書において用いられるように、「陰イオン」は、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、四フッ化ホウ素、テトラフェニルホウ素、六フッ化リン、過塩素酸塩等が含まれるがそれらに限定されるわけではない任意の薬学的に許容される陰性荷電種を指す。
本明細書において用いられるように、「アミノ酸」は、非カルボニル炭素原子に共有結合した一つまたはそれ以上のNH2基を有する任意の有機酸、例えばβ-アラニン、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、p-アミノ安息香酸、ならびにPEGスペーサーによって離れているアミンおよびカルボキシル基のような、しかしこれに限定されない有機酸を指す。「アミノ酸」はまた、全ての天然および非天然のα-アミノ酸およびそのN-アルキル誘導体を指す。
本明細書において用いられるように、「ポリアミノ酸」は、ペプチド結合によって結合した直鎖または分岐鎖アミノ酸を指す。ポリアミノ酸を構成するアミノ酸は、同じであってもよくまたは異なってもよい。
本明細書において用いられるように、「ポリ(Glu)-Ama-diEt」は、カルボキシル側鎖のごく一部(すなわち15%)がAma-diEt基によって置換されているポリマーを指す。
本明細書において用いられるように、「ポリ(Glu-Ama-diEt)」は、全てのカルボキシル側鎖がAma-diEt基に置換されているポリマーを指す。
本明細書において用いられるように、「ポリ(Glu)Ama=Pt(NH3)2」は、二つのEt基が、Ptが同様に二つのカルボキシル基とキレートを形成している(O,O'-Ptキレート)、またはAmaのカルボキシル基の一つおよびアミド基の窒素とキレートを形成している(N,O-Ptキレート)シス-ジアミンPt基によって置換されているポリ(Glu)-Ama-diEt基を指す。
本明細書において用いられるように、「ポリ(Glu-Ama)=Pt(NH3)2」は、Ama基のごく一部(すなわち、10〜15%)がシスジアミンプラチナ(II)種と配位結合しているAma-Ptキレートを指す。
本明細書において用いられるように、「-Ama=Pt-DACH」は、PtがO,O'-またはN,O-コンフィギュレーションのいずれかでAmaとキレートを形成して、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)のアミノ基ともキレートを形成している基を指す。
本明細書において用いられるように、「ポリ(HPMA)-GG-」、「ポリ(HPMA)-GGG-」、「ポリ(HPMA)-GGGG-」、「ポリ(HPMA)-GFLG-」等は、HPMAと、GG、GGG、GGGG、GFLG等が共有結合しているアクリルアミドまたはメタアクリルアミドとのコポリマーを指す。すなわち、本発明の目的に関して、GGは、例えば実際に
Figure 0004717016
を指し、式中Rは水素またはメチルであって、GG部分のC-末端はONp、Ama-diEt等によってさらに置換され、最終的に本発明の請求の化合物において、アミドマロネートO,O'-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-Ptによって置換されると理解される。
「pHスタット」によってとは、溶液のpHを連続的または一定間隔で測定する段階、および選択された範囲にpHを戻す必要がある場合には酸または塩基によって滴定する段階によって、選択された範囲内に溶液のpHを維持することができる装置を用いることを意味する。
下付文字「r」は、下付文字によって修飾された部分の実際の数を指す。「r」が100である場合、括弧内の部分の100個がR1に共有結合していることを意味する。
本明細書において用いられるように、「一つまたはそれ以上の腫瘍ターゲティング基をさらに含む水溶性基」は、水溶性基がそれ自身同様に腫瘍ターゲティング基であってもよい状況、および一つまたはそれ以上の腫瘍ターゲティング基が水溶性基に付随している状況の双方を指す。この句はまた、先の組み合わせを指す;すなわち水溶性基は腫瘍ターゲティング基であってもよく、さらにそれに付随した一つまたはそれ以上の異なる腫瘍ターゲティング基を有してもよい。
本明細書において用いられるように、アミドマロネートO,O'-PtキレートまたはN,O-Pt錯体を指す場合の「対応する」は、「対応する」錯体が同じ分子に由来するが、主な違いは、一つの場合においてPtが二つのカルボキシレート酸素原子を通してアミドマロネートとキレートを形成しており、他の場合において、Ptがカルボキシレート酸素とアミド窒素とを通してアミドマロネートとキレートを形成している点である。
省略語
Ama:アミドマロネート
Ama-diEt:ジエチルアミドマロネート
DACH:1,2-ジアミノシクロヘキサン
1R,2R-DACH:1R,2R-ジアミノシクロヘキサン
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMAP:N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
EDC:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
FID:自由誘導減衰
EまたはGlu:グルタメート
FまたはPhe:フェニルアラニン
Gまたはgly:グリシン
Lまたはleu:ロイシン
HOBt:ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPA:2-ヒドロキシプロピルアミン
HPMA:N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド
MA:メタクロイル
MTD:最大認容量、薬物による毒性に起因する死亡が起こらない、評価された最高用量。
N,O-Pt:Ptがアミド基の窒素と、アミドマロネート部分のカルボキシレート酸素の一つとに結合しているAma-Ptキレート
O,O'-Pt:Ptがアミドマロネート部分の二つのカルボキシレート酸素に結合しているAma-Ptキレート
ONpまたはONpエステル:p-ニトロフェノールエステルとしてのニトロフェノキシ基
RCF:相対的遠心力
TFF:タンジェンシャルフロー濾過
考察
本発明は、初回のAma-Ptキレート形成反応から通常得られる二つの種の混合物から、本質的に純粋なO,O'-Ptキレート(図3A)またはN,O-Ptキレート(図3B)を選択的および再現性よく調製する方法に関する。
本出願の親出願である米国特許出願第09/755,229号において、最初に形成されたO,O'-PtおよびN,O-Ptアミドマロネートキレートの混合物を、塩化ナトリウム濃度が65 mMまたはそれ以上であるpH約7.4のリン酸緩衝生理食塩水によって処置すると、N,O-Ptキレートがほぼ独占的に生成されることが証明された。他の陰イオンも類似の結果を生じた。これらの結果に基づいて、O,O'-PtキレートのN,O-Ptキレートへの変換を行うためには特定の陰イオン濃度が必要であるという仮説が立てられた。陰イオンは、変換にとって有用である可能性があるが、どの異性体が得られるかの決定を支配するように思われるのは実際にはpHである。実際に、異性体の混合物を供するpHに応じて、得られたキレートの構造を完全に制御することが可能である。すなわち、低いpH、すなわち3.5またはそれより低いpHでは、N,O-Ptキレートが完全に排除される点までO,O'-Ptキレートが優勢であるが、pH約6.0〜約10.0では、同様にO,O'-Ptキレートが本質的に完全に排除される点までN,O-Ptキレートが優勢である。中間のpHでは、様々な比の異性体が得られ、N,O-PtキレートはpHが6およびそれ以上でより優勢となる。これは以下の表において示される。
表1において、p(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2の主にO,O'-Ptキレートの水溶液を38℃で様々なpH範囲に供した。
(表1)
Figure 0004717016
認められるように、pH 3.0〜3.5では、混合物は本質的に完全にO,O'-Ptキレートとなるが、pH 6.0〜6.5では、O,O'-Ptキレートは、本質的に完全にN,O-Ptキレートに変換する。中間のpH、すなわち4.0〜4.5および5.0〜5.5では、時間と共にN,O-Ptキレートの量の増加が得られる。
100%N,O-Ptキレートp(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2を同じpH範囲および温度に供したところ、表2に示す結果が得られた。
(表2)
Figure 0004717016
認められるように、N,O-Ptキレートは、pH 6.0〜6.5では本質的に不変であり、pHが低下するとO,O'-Ptキレートへの何らかの変換がpH 3.0〜3.5まで起こり、pH 3.0〜3.5ではN,O-PtキレートのO,O'-Ptキレートへの変換は本質的に完全である。
陰イオンの添加が一つの異性体から他の異性体への変換に影響を及ぼすために必要ではないことを決定的に証明するために、中間のpH範囲、5.0〜5.5および38℃で、添加した塩素または過塩素酸陰イオンの存在下で実験を行った。認められるように、添加した陰イオンの存在下での変換百分率は、陰イオンを全く添加しなかった場合に得られた百分率と有意差を示さなかった。
(表3)
Figure 0004717016
上記の現象は一般的であるように思われ、Pt=DACH類似体についても類似の結果が得られた(データは示していない)。N,O-PtアミドマロネートDACHキレートをpH 6.0未満に供する場合は常に、これはO,O'-PtアミドマロネートDACHキレートに再配列して、pHが低くなれば変換はより迅速かつより完全である。同様に、O,O'-PtアミドマロネートDACHキレートを3.5より上のpHに供する場合、これはN,O-PtアミドマロネートDACHキレートに変換し始め、pH 6.0およびそれ以上では、N,O-Ptキレートへの変換は完全である。DACHキレートとシス-ジアミンキレートの変換のあいだに認められた差は、N,O-Ptキレート型の場合、前者は後者ほど完全にはO,O'-Ptキレートに変換しないという点であるように思われる。一方、DACHキレートは、シスジアミンの場合よりO,O'-PtからN,O-Ptキレートにより急速および十分に変換し、前者は約8時間で本質的に完全に変換されるのに対し、後者は少なくとも20時間である(データは示していない)。
当初、脱気した水およびアルゴン大気をキレートの変換実験において用いた。しかし、脱気および不活性大気は必要ではないように思われる。実際に、最初に得られたキレート混合物が変換前に単離されないO,O'-Ptキレートの代用合成が考案された。その代わりに、1時間の白金添加期間の後、キレート混合物のpHを非脱気水を用いて開放大気においてpH 3.0〜3.5に調節すると、本質的に純粋なO,O'-Ptキレートが得られたが、より純粋なO,O'-Ptキレートが望ましい場合、脱気水および不活性大気を用いてもよいがその影響は小さい。
本発明の化合物のAma-Ptキレートのどの異性体が得られるかを本質的に完全に制御することができるために、少なくとも二つの長所が存在する。第一に、本明細書において開示された方法は、化学療法剤として登録するために規制当局の要件を見たさなければならない本質的に純粋な化合物を提供する。第二に、化合物の治療指数は、特定の治療プロトコールの要件を満たすように制御することができる。すなわち、N,O-Ptキレートが、対応するO,O'-Ptキレートより実質的に高いMTDsおよび伸長により良好な治療指数を示すことが、既に示された(米国特許出願第09/755,229号)。特定の理論に拘束されないが、これは現在のところ、O,O'-Ptキレートが活性な低分子Pt化合物をN,O-Ptキレートより急速に放出するという事実によると考えられている。このことは、実施例31において行われた、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-Pt(NH3)2、100%N,O-キレート、約20 kDaを様々なpH範囲に供した実験によって証明される。結果を表4に示す。
(表4)
Figure 0004717016
認められうるように、約6.0より高いpHでは、24時間後でも放出されるPtは非常に少量である。一方、pH 3.4では8時間で12%が放出され、24時間で30%が放出される。表1〜3において、N,O-Ptキレートはより低いpHでO,O'-Ptキレートに変換するが、O,O-Ptキレートはより高いpHでN,O-Ptキレートに変換し、さらにN,O-Ptキレートは6.0より高いpHで比較的安定であることが証明された。このように、100%N,O-Ptキレートを、実施例31においてpH 6.4、7.4、および8.2に供すると、N,O-Ptキレートと同様に不変であろうと予想される。一方、pH 3.4では表1〜3は、N,O-PtキレートのO,O'-Ptキレートへのかなり急激な変換が起こることを示している。中間のpH 5.0〜5.5では、表1〜3は、N,O'-Ptキレートがその安定性の一部を喪失して、O,O'-Ptキレートに変換し始めることを示している。表4では、pH 6.4、7.5、および8.2において、放出されるPtは非常に少なく、N,O-PtキレートがPtを容易に放出しないが、pH 3.4では実質的な量のPtが放出され、O,O'-PtキレートがPtをかなりより効率的に放出するという仮説を支持する。中間のpH 5.4では表1〜3は、N,O-PtキレートがO,O'-Ptキレートに変換することを示しているが、より低いpHではその速度は遅く、表4においてPtの中間量が放出される。
生理的な状況において、上記は以下のことを示唆している:新生物および正常細胞はいずれも、様々な基質を溶解する酵素を含むオルガネラであるライソゾームを含む。これらの酵素は、酸性環境に曝露されることによる活性化を必要とする。ライソゾームは必須の環境を提供する;その内部pHは約5.0である。本明細書の開示は、ライソゾームに入るN,O-Ptキレートの有意な量がO,O'-Ptキレートに変換して、後者は次に活性な低分子Pt種を放出するであろうと予測するであろう。本発明のポリマーまたは高分子結合N,O'-キレートは、腫瘍において選択的に蓄積して、その細胞のライソゾームに遭遇すると予想されるであろう。酸性環境によって、化合物のO,O'-Ptキレートへの変換が起こり、次にこれは、活性な低分子Pt種を放出して、次にこれが細胞を殺して最終的に腫瘍を殺すであろう。一方、ポリマー/高分子結合N,O-キレートは、正常な臓器の細胞(およびライソゾーム)に対するアクセスが限られており、したがって血管系を通して循環中に追放され、その生理的pH(約7.4)によって、比較的非毒性のN,O-Ptキレート型で残る化合物が得られるであろう。
実施例
化学物質
シスプラチン、ピリジン、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジエチルアミノマロネートHCl塩、ジエチルN-アセトアミドマロネート、AgNO3、NaOH、1R,2R-ジアミノシクロヘキサン、ポリグルタメート-Na塩、KIおよびPBSはSigma-Aldrich USAによって供給された。用いた溶媒は、HPLC等級であり、試薬はACS等級またはそれ以上であった。イオン交換樹脂AG 501-X8(D)H+、HO-型、AG 50W-X8 H+、およびChelex 100 Biotech等級は、BioRad Laboratoriesによって供給された。Milli-Q水システムを用いてクラス1の水を得た。K2PtCl4は、All-Chemie Ltd, Mt. Pleasant, SCによって供給された。濾過助剤289パルプは、Schleicher and Schuellから得た。ポリ(HPMA)-GFLG-ONp、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt(45 kDa)およびポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt(351 kDa)は、Polymer Laboratories, Shropshire, UKによって合成された。アミノ酸分析およびMALDI-TOF-MSは、Peptide Technologies Corp. Gaithersburg, MDによって行われた。
装置および機器
スケールに応じて、25 mm Whatman GD/X PVDFシリンジフィルター、Millipore社のGP Expressメンブレンを備えたSteritop培地ボトルフィルター、またはMillipore社のPVDFメンブレンを備えたMillipakインラインフィルターのいずれかによって、0.2μm滅菌濾過を行った。UV光を備えた層流フードを滅菌操作のために用いた。pHは、低いpH測定の場合にはpH 4に較正し、高いpH測定ではpH 10に較正したゲル電極を用いて、Beckman Phi-34 pHメーターによって測定した。凍結乾燥固体における静電気は、Zerostat gun(Aldrich)によって中和して、SIMCO, Hatfield, PAからの静電場計によって誘導した。白金は、Jobin Yvon JY24分光計を用いて、3%HNO3において1〜60 ppmに希釈した試料および標準物質に関して、ICP-OESによって分析した。水は、EM Science社のAquastar C2000を用いてKarl Fisher滴定によって決定した。Na、Cl、およびPに関する元素分析は、Desert Analytics, Tucson, AZが行った。1H NMRスペクトルは、Varian, Inc.の400 MHz Unity/Inovaシステムによって得た。195Pt NMRスペクトルは、Varianの300 MHz Mercuryシステム、または300 MHz Avance Brukerシステムによって得た。凍結乾燥は、Virtus社のFreezemobile 12ELを用いて行った。
%O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートの少量の精製
反応混合物の一定時間での少量におけるO,O'-およびN,O-キレートの百分率を、195Pt NMR分光計のみを行う場合にはPt-キレート100 mgより多く、または%Ptおよび%H2Oも同様に決定する場合には、約200 mgを生じるために反応混合物の十分量(濃度に応じて4〜15 mL)を採取することによって決定した。少量を、Millipore社の5 kDa Biomaxメンブレンを備えたCentricon Plus-20遠心フィルターを用いて超遠心によって精製した。充填した装置を、推奨されるRCFで、1 mL未満が残るまで遠心した。濾液を捨てて、残留物を水15〜18 mLによって希釈して、試料を遠心した。これをもう一度繰り返して、残留物を凍結乾燥して、分析のための試料を得た。
PBSからの白金の放出
経時的に放出された小さい白金種の百分率を、リン酸緩衝生理食塩水(10 mMリン酸塩、123 mM Cl-)15 mLにおいてポリマー-白金結合体の約30 mgを溶解して、37℃の水浴中で溶液をインキュベートすることによって測定した。表記の時間で、少量の2.0 mLを、3 kDaの公称排除限界分子量を有する遠心フィルター(Millipore社のCentricon YM-3)に移して、濾液>1.5 mLが蓄積するまで遠心した。一定時間の濾液および最初の溶液をICP-OESによって白金に関して分析した。放出された小さいPt種の百分率を以下の式:((濾液中のPtのppm)/(保存溶液におけるPtのppm))×100を用いて決定した。
サイズ排除クロマトグラフィー
N,O-Ptキレートを、35℃のカラムオーブンにおいて二つのPL Aquagel-OH混合8 μmカラム(Polymer Labs)およびRI検出器を備えたHPLC機器からなるSECシステムにおいて分析した。10.0 mM LiClO4を含むMeOH/H2Oの35/65混合物からなる移動相を、1.0 mL/分で押し出した。カラムをPEO/PEG標準物質によって較正して、結果を保持時間の逆数の関数としてlog(Mp)の4次元多項式に適合させた。MwおよびMnに関する報告された値は、移動相において溶解した2 mg/ml試料100 μLの3回測定の平均値を表す。
タンジェンシャルフロー濾過
約2 gより多いスケールでは、ポリマーのO,O'-PtおよびN,O-Ptキレートを、5 kD公称排除限界分子量のBiomaxポリエーテルスルホン製の面積0.05〜0.1 m2のメンブレンを用いてタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって精製した。濾過の前に、0.1 N NaOHを推奨される流速で30〜60分間ポンプで流すことによって、システムを洗浄および清浄した。苛性物質を除去して、残渣および透過液のpHが本質的に中性(pH<8)となるまで新鮮なMilli-Q水を循環させた。透過液の流速を入り口圧力2.0 barおよび出口圧力0.35 barで測定した。Milli-Q水はまた構成液としても用いた。
NMR分光法
195Pt NMRスペクトルは、5 mm試験管において93/7 H2O/D2O中で濾過した溶液0.70 mLから得た。十分な試料(80〜120 mg)を用いて、白金が>50 mMである溶液を得た。プローブを各試料に関して調節した。パルス幅90°、取得時間10 m秒、スペクトルウィンドウ100 kHzおよび減衰なしを用いた。送信器を、O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートシフトのほぼ中間に調節した(シスジアミンPtに関して-1896 ppmおよびDACH-Ptに関して-2450)。シス-ジアミン-PtおよびDACH=Pt種に関してそれぞれ十分な(>35:1)s/n比を得るためには、典型的に積算回数50,000〜100万回が必要であった。得られたFIDは、平坦な基準値が得られるまでますます左にシフトさせて、100 Hz線広幅化を行って、フーリエフィル2048を処理前に適用した。積分領域を設定して、スペクトルの基準値をVNMRソフトウェアv6.1を用いてスプライン適合に供した。試料を-1624 ppmで95/5 H2O/D2Oおよび100 mM HCl中でK2PtCl4の100 mM試料に対して外部参照した。これはまた、90°パルス幅およびT1を決定するためにも用いた。
195Pt NMRに関して用いた同じ試料を用いて13C NMRスペクトルを得た。取得時間0.50秒、減衰3.0秒、約70°パルス幅および積算5000〜10000回を回収して、3.5 Hz線広幅化を行った。s/n>100が典型的に得られた。水溶性試料を、67.19 ppmで93/7 H2O/D2Oにおいて1,4-ジオキサンに対して外部参照した。
1H NMRスペクトルをTMSまたはTMSPに対して参照して、標準的なパラメータを用いて得た。HODシグナルのプレ飽和をしばしば用いた。カップリング定数(J)はヘルツである。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、それらは、本発明の範囲を如何なるようにも制限すると意図されないし、また制限すると解釈されない。
実施例1:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt、約25 kDの調製
乾燥器で乾燥させた1 Lの丸底フラスコに磁気攪拌子を入れて、隔壁を入れて、真空下で冷却した。冷却後、窒素を導入して、隔壁を除去し、ジエチルアミノマロネート塩酸塩29.79 g(140.8 mmol)を加えた。隔壁を元に戻して無水ピリジン800 mLをカニューレによってフラスコに加えた。ポリ(HPMA)-GFLG-ONp(化合物1、米国特許第5,965,118号の図1A)50 gの3分の1を加えた。ほぼ溶解した後、ONp-ポリマーの次の3分の1を加えた。第二の3分の1がほぼ溶解した後、ONp-ポリマーの最後の3分の1を加えた。
C18カラム、pH 4.5 MeCN移動相および316 nmでのUV検出を用いて遊離および総p-ニトロフェノールに関して反応をHPLCによってモニターした。少量を、塩基の加水分解(pH 12、5分)後の遊離のp-ニトロフェノールおよび総p-ニトロフェノールに関して分析した。約23℃で20〜24時間攪拌した後、反応は本質的に終了した(図6)。
反応混合物を40〜45℃の水浴中で3時間加熱した後室温まで冷却し、ピリジンを<40℃の真空下で除去した。残渣を無水EtOHに溶解すると、25%wt/vol溶液が得られた。粗産物を無水EtOAc 2.5 Lおよびジエチルエーテル0.5 Lによって沈殿させた。混合物を3〜5時間攪拌した後、中等度の大きさのガラスフリットを通して濾過した。残渣をエーテル約100 mLによって3回洗浄して、ラバーダム下で乾燥させると、暗黄色の固体57〜59 gが得られ、これをフィルターケーク1 gあたりAG501-X8(D)IX樹脂(H+およびOH-型)3.1 gを加えた後、EtOH 500 mLに溶解した。混合物を2.5時間軽く攪拌した後、濾過して樹脂を除去した。EtOHの容積を減少させて、25%wt/vol溶液を得て、産物を沈殿させた。産物を回収して洗浄すると、暗黄色の固体45〜46 gが得られた。1H NMRは、Ama-diEt基に特徴的なピークを示し、EtOHおよびEtOAcのそれぞれに関して<1%を除き低分子の特徴を示さなかった。
アミノ酸分析(gly:HIPA:leu:pheのモル比)3.1:7.1:1.0:1.2;
Figure 0004717016
実施例2:シス-ジアミンジアクアプラチナ(II)二硝酸塩の調製
シスプラチン(8.996 g、29.98 mmol)、AgNO3(9.959 g、58.62 mmol)、5%HNO3 3〜5滴、および水190 mLを、ホイルで覆った低化学線培地ボトルにおいて室温で一晩攪拌した後、60〜65℃で3.5時間加熱した。<30℃に冷却後、混合物を0.22μmフィルターを通して濾過すると、pH 2の透明な溶液を得た。PtおよびAg分析(ICP-OES)は典型的に、15,000〜25,000 ppm Ptおよび4〜14 ppm Agの範囲であった。各調製物をPtに関して分析し、使用直前に55℃で5分間加熱した後室温まで冷却した。
シス-ジアミンジアクアプラチナ(II)二硝酸塩のジ-15Nアイソトポマー調製物は、-1582 ppmで195Pt NMRトリプレットを示し、これはAppleton et al., 1989によって報告された-1580 ppmの文献値と厳密にマッチした。
実施例3:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2O,O'-Ptキレートの調製
A.ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEtの加水分解
攪拌子を備えた1 L培地ボトルにおいて水200 mlに、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt(19.35 mmol Ama-diEt残基)45 gを加えた。激しく攪拌した後、水135 mlを加えて、12〜13%(wt/v)混合物を得た。溶解が得られた後(1〜2時間)、2N NaOH 27 ml(54 mmol)を加えてpHを12.5〜12.7にした。pHをこの範囲で30分間維持した後、AG 50i-X8(D)IX樹脂(H+およびOH-)45 gを加えた。pHが7未満に低下すれば、樹脂を濾過滅菌によって除去した。濾液のpHを2 N NaOHによって7.6に上昇させると、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-(CO2 - Na+)2の溶液が得られた。
B.ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2, O,O'-Ptキレートの調製
上記のpH 7.6の溶液に、590.9 mM(22,940 ppm Pt)溶液のシス-ジアミンジアクアプラチナ(II)二硝酸塩199 mLを加えて反応混合物のpHを5.0±0.1にした。一晩攪拌した後、pHは約4.2に低下し、少量の沈殿物が形成された。16〜18時間後、Chelex 100樹脂17 gを加えて、混合物を1.5時間攪拌した。濾過前、濾過助剤パルプ約0.5 gを加えて分散させた。混合物を目の粗いガラスフリットによって濾過した。産物約125 mgを含む濾液の少量を採取して、0.2μmメンブレンを通して濾過し、遠心限外濾過によって精製した。残留物を凍結乾燥すると産物約110 mgが得られた。
Figure 0004717016
分析は、この材料が約9%Pt、5〜10%水、および0.02%Naを含むことを示している。
実施例4:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2, N,O-Ptキレートの調製
A.O,O'-PtからN,O-Ptキレートへの変換
実施例3からChelex 100樹脂を濾過後、濾液約1 Lが得られ、NaCl 5.85 g(100 mmol)、Na2HPO4・7H2O 16.35 g(61 mmol)およびNaH2PO4 1.93 g(14 mmol)を加えることによって、溶液を100 mM NaClおよび75 mMリン酸塩(pH 7.4)にした。pHを1 N NaOHまたは5%HNO3によって7.4に調節して、濾過滅菌し、同じ濃度の緩衝液によって滅菌培地ボトルに洗浄して溶液1.2 Lを得て、ボトルを0.22μmメンブレンスクリューキャップによってキャップした。溶液を水浴中で37〜38℃に加温した後、37℃の乾燥器で22時間乾燥させた。この時点で、限外濾過によって精製した少量の195Pt NMR分光法により、白金キレートが≧95%N,O-Ptキレートおよび<5%O,O'-Ptキレートであることが示された。
B.N,O-PtキレートのTFF精製および凍結乾燥
N,O-Ptキレート1.2 Lを本明細書において記述されるようにTFFによって精製した。透明な暗赤色の溶液である残留物を濾過滅菌して凍結乾燥すると、赤茶色の固体41.4 gが得られた:%Pt=7.9±0.15、5.6%、1.07%Na、<.05%P、0.07%Cl;
Figure 0004717016
37℃でPBSにおけるPt放出、3時間で0.6%、24時間で2.0%。
実施例5:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACH, O,O'-Ptキレートの調製
A.シス-ジアクア-1R,2R-DACH=Pt(II)二硝酸塩の調製
K2PtCl4 3.65 g(8.79 mmol)および水37 mLを含む125 mlアーレンマイヤーフラスコを加温して、茶-赤色の溶液を得て、これにKI 5,84 g(35.2 mmol)の水溶液6 mLを加えて、暗赤色溶液を得た。室温まで冷却した後、1R,2R-ジアミノシクロヘキサン0.962 gを加えた。黄色い沈殿物が直ちに形成された。25℃で3時間攪拌した後、混合物を4℃に冷却して一晩維持した。沈殿物を回収して冷水、EtOHおよびエーテルによって洗浄すると、シス-I2Pt-1R,2R-DACH 4.98 gが得られた。次に、シス-I2Pt-1R,2R-DACH 1.00 g(1.776 mmol)、AgNO3 0.5898 g(3.472 mmol)および水16 mlを遮光した容器において混合して、室温で一晩攪拌し、その後60〜65℃で3.5時間攪拌した。室温まで冷却した後、AgClを濾過によって除去して少量の水で1回洗浄した。濾液のICP-OESによる分析によって、これが13,500 ppm Pt(69.1 mM)シス-(H2O)Pt-1R,2R-DACHを含むことが示された。
B.ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACH, O,O'-Ptキレートの調製
ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt(2.80 g、1.232 mmol Ama-diEt基)を加水分解して中和すると、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-(CO2Na)2のpH 7.6溶液が得られた。これに、シス-(H2O)2Pt-1R,2R-DACH二硝酸塩1.48 mmolの水溶液を加えて、混合物を室温で一晩攪拌した。濾過助剤パルプ0.1 gを加えた後、形成された沈殿物を濾過滅菌によって除去した。次に、反応物の3分の1をChelex樹脂0.3 gによって90分間処置して、濾過滅菌した後、遠心限外濾過によって精製した。試料を凍結乾燥すると、赤茶色の固体0.71 gが得られた:8.7%Pt、4.2%H2O;
Figure 0004717016
37℃でPBSにおけるPt放出:3時間で6.0%、24時間で10.9%。
実施例6:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACH, N,O-Ptキレートの調製
実施例5からの反応混合物の残りの3分の2を、Chelex樹脂0.6 gと共に90分間攪拌した後、濾過滅菌した。透明な溶液を110 mM NaClおよび85 mMリン酸塩(pH 7.4)にした。溶液を37〜38℃で22時間維持した後、遠心限外濾過によって精製して凍結乾燥すると、赤茶色の固体1.33 gが得られた:8.1%Pt、7.1%H2O;
Figure 0004717016
-1900ではピークを認めず、他のピークを認めなかった:37℃でPBSにおけるPt放出:3時間で2.0%、24時間で2.1%。
実施例7:ポリ(Glu)-Ama-diEtの調製
ポリグルタメート0.5 g(3.29 mmol-CO2基)および攪拌子を含むボトルに、ジエチルアミノマロネートHCl塩104 mg(0.493 mmol)、DMAP 3 mg、および無水DMF(HPLC等級、4Aふるいで>48時間)10 mLをドライボックスにおいて加えて、内容物を攪拌すると曇った混合物が得られた。次に、DCC 315 mg(1.36 mmol)を加えて、ボトルの口から隔壁を挿入して、1.0 M HClのエーテル溶液2 mLを加えて、混合物を室温で一晩攪拌した。CHCl3 15 mlを加えた後、曇った混合物を3850 RCFで15分間遠心した。上清を捨てて、残った白色ゲルを2.5%NaHCO3と共に30分間攪拌した。混合物を遠心して凍結乾燥すると、白色固体1.91 gが得られ、その1H NMRスペクトルは、DMF、EtOH、DCC/DCUの存在を示し、ポリグルタメート、ジエチルアミドマロネート、およびジエチルアミノマロネートのピークを示した(4.3 ppm(gluのα-CHおよび-OCH2CH3)および2.4 ppm(gluのCH2)でのピーク面積は約1:1であるが、ポリグルタメートでは比は1:2であった)。材料を水に溶解して、遠心限外濾過によって精製すると、白色固体216 mgが得られ、1H NMRスペクトルは、DCC/DCUの存在を示した。同様に、NaODを材料のD2O溶液に加えると、ポリ(glu)-Ama-diEt 1gあたり0.67 mmolのAma-diEt基に対応するEtOHを放出した。これを精製せずに実施例8において用いた。
実施例8:ポリ(Glu)-Ama=Pt(NH3)2, O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートの調製
A.ポリ(glu)-Ama=Pt(NH3)2, O,O'-Ptキレートの調製
攪拌子を備えた20 mLバイアル中の水4 mLに、実施例7からのポリ(glu)-Ama-diEt 188mg(0.126 mmol Ama-diEt当量)を加えた。溶解した後、pHを12.4〜12.8に20分間上昇させた後、AG-50W-X8 H+ IX樹脂0.2 gを加えた。2分以内にpHは6に低下した。目の粗いガラスフリットによる濾過によって樹脂を除去して、濾液を濾過滅菌した。新鮮な2N NaOHによって濾液のpHを7.1に上昇させて、シス-ジアミンジアクアプラチナ(II)二硝酸塩の19,000 ppm Pt溶液(0.126 mmol)1.3 mLを加えた。これを35分間攪拌した後、遠心限外濾過によって精製した。18 mlに濃縮して水15 mLによって3回洗浄した後、残留物を凍結乾燥すると白色固体182 mgが得られ、その195Pt NMRスペクトルは、二つのピークを示した:-1595および-1732 ppmが約1:4の比。-1732での主なピークは、シスジアミンプラチナ(II)のO,O'-Ptキレートである。
B.ポリ(グルタメート)-Ama=Pt(NH3)2, N,O-Ptキレートの調製
上記のポリ(グルタメート)-Ama=Pt(NH3)2, O,O'-Ptキレートを、実施例4のO,O'-PtからN,O-Ptキレートへの変換条件:110 mM NaCl、85 mMリン酸塩、pH 7.4に供した。38℃で約22時間後、これを遠心限外濾過によって精製して、残留物を凍結乾燥すると、白色固体163 mgが得られ、これは15.5%Pt(0.77 mmol Pt/gポリマー)0.035%Pを含んだ:
Figure 0004717016
実施例9:ポリ(glu-Ama-diEt)の調製
ポリグルタメート0.5 g(-CO2Na基3.29 mmol)および攪拌子を含むボトルに、ジエチルアミノマロネートHCl塩1.39 g(6.58 mmol)、EDC 1.89 g(9.862 mmol)、HOBt 0.503 g(3.287 mmol)、および無水DMF(HPLC等級、4Aふるいで>48時間)20〜25 mLをドライボックスにおいて加えて、攪拌すると曇った混合物が得られた。室温で一晩攪拌した後、混合物を水150 mLに注ぐと白色沈殿物が得られた。材料を水に懸濁して濾過して水によって洗浄した。真空下で3日間乾燥させた後、固体0.79 gが得られた:
Figure 0004717016
さらに精製を行わずに、この材料を実施例10において用いた。
実施例10:ポリ(glu-Ama)=Pt(NH3)2, O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートの調製
ポリ(glu-AmadiEt)0.79 g(Ama-diEt基2.75 mmol)のEtOHスラリー30 mLを、40 mM NaOHにした。pHを12.3〜12.6に維持して混合物を加温して30分間超音波処理すると、わずかに曇った溶液が得られた。H+ IX樹脂1.8 gによってpHを7.26に低下させて、濾過滅菌すると、かすかに黄色い溶液が得られた。真空下で容積を約30 mLに減少させて、シス-ジアミンジアクア-プラチナ(II)二硝酸塩の18,400 ppm Pt(0.39 mmol)溶液4.2 mLを加えると、pH 5.97の溶液が得られた。pHを5%HNO3によって5.0に低下させて、室温で1時間攪拌した。
1時間攪拌後、上記の反応混合物の試料を凍結乾燥すると白色固体90 mgが得られ、その1H NMRスペクトルは、エチルエステルの67%のみが加水分解されたことを示した:10.3%Pt;
Figure 0004717016
ポリ(glu-Ama)=Pt(NH3)2, O,O'-Ptキレート溶液の残りの32 mLを、NaCl 207 mg、NaH2PO4・H2O 76 mgおよびNa2HPO4・7H2O 588 mgを加えることによって110 mM NaClおよび85 mMリン酸塩にした。pHを7.4に調節して、溶液を濾過滅菌した後、42℃で16時間インキュベートした。溶液はこの時点でわずかに曇っていた。これを再度濾過した後、遠心限外濾過によって精製した。残留物を凍結乾燥すると、淡黄色の固体約600 mgが得られた:11.4%Pt;
Figure 0004717016
実施例11:Ac-Ama=Pt(NH3)2, O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートの調製
20 mLバイアルにおいて、N-アセトアミドマロネート800 mg(3.68 mmol)を水8 mlおよび2N NaOH 2.0 mlと共に攪拌した。3分以内に、pH 12.6でかすかに黄色の溶液が得られた。30分後、H+ IX樹脂を加えて、pHを7.0に低下させた。樹脂を濾過によって除去して、pHを7.5に上昇させ、シス-ジアミンジアクア-プラチナ(II)二硝酸塩の28,375 ppm Pt(3.68 mmol)溶液2.53 mLを加えた。pHは4.4に低下した。2N NaOH 2滴を加えると、白色の固体が形成された。混合物を濾過して、試料を10%D2Oにして、195Pt NMRによって分析した。-1734でのピークのみが認められた。
濾液を100 mM KIおよび50 mM KHCO3(pH 7.7〜7.9)にして濾過滅菌した。これを40℃に加温して、18時間維持した。形成されたオレンジ色の沈殿物を濾過によって除去して、濾液を真空下で除去した。残渣をアセトン20 mLと共に1時間攪拌した。一部を濾過して、7%D2Oにして、195Pt NMR分光法によって分析した。-2057 ppmでの唯一のピークを認め、N,O-AC-Ama-Pt(NH3)2が明らかであった。
実施例12:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt、45 kDaおよび350 kDaの調製
A.MA-GFLG-Ama-diEtの調製
MA-GFLG-ONp約25 gをジエチルアミノマロネートHCl塩1.2当量、TEA 3当量、およびHOBtのDMF溶液1当量によって50℃で約16時間処置した。DMFを真空で除去して、残渣をジエチルエーテルにおいてスラリーにして4℃で一晩冷却した。産物を濾過によって回収して、エーテルによって洗浄し、真空下で乾燥させるとMA-GFLG-Ama-diEtが得られ、その同一性および純度を1H NMR分光法およびHPLCによって確認した:
Figure 0004717016
B.ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt、約45 kDの調製
濃縮器を備えたフラスコに、12.7 wt%HPMAおよびMA-GFLG-Ama-diEt単量体を90/10の比で、0.6 wt%純粋AIBN、p-ニトロフェノール(総単量体10 モル%)および86 wt%アセトンを加えた。混合物を窒素によって約30分間脱気した後、50℃で65時間加熱した。ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEtを濾過によって回収して、エーテルによって洗浄した。これを約25%wt/volで無水EtOHに再溶解して、その後EtOAc 8倍量によって沈殿させた。得られた固体を濾過によって回収して、エーテルによって洗浄し、真空下で乾燥させると乳白色の粉末約20 gが得られた。その1H NMRスペクトルは、25 kDa化合物のスペクトルと非常に類似していた:Mw=44.5 kDa、PDI=1.76、二相性。アミノ酸分析:(μmol/mgポリマー)gly:2-ヒドロキシプロピル-アミン:leu:pheが2.7:8.1:0.9:0.9;MALDI-TOF-MS(NBA matrix)m/z M+ 40〜45 kDa、M2+ 14〜16 kDa。
C.ポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt、約350 kDの調製
45 kDポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEtのために用いた技法を、p-ニトロフェノールを省略したことを除き、繰り返した。白色粉末約25 gが得られた。その1H NMRスペクトルは、ピークがより広幅化しているが25 kDaのスペクトルと非常に類似であった:分子量=351 kDa、PDI=3.95、三相性。
実施例13:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2, N,O-Ptキレート、45 kDaの調製
攪拌子を含む250培地ボトルに、水72 mLおよびポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt 15.5 g(6.82 mmol Ama-diEt基)を加えた。激しく攪拌した後、さらに水48 mLを加えて、混合物を約1時間攪拌すると、淡い紫色の溶液が得られた。この溶液に、新鮮な2 M NaOH 12 mLを加えて、pHを12.6に上昇させた。pHを12.4〜12.8に30分間維持した後、混合床IX樹脂(AG501-X8(D)H+、OH-型)15.4 gを加えた。pHは3分後に5.0に低下して、その後樹脂を滅菌Steritop 1.50 mlフィルターを通して濾過によって除去した。新しい2N NaOHによって濾液のpHを7.60に上昇させて、新たに調製したシス-ジアミンプラチナ(II)溶液8.14 mmol(64 ml、24,200 ppm Pt)を一度に加えた。添加後、pHは5.1であった。次に、混合物を一晩攪拌した。翌日、pHは4.42であり、Chelex 100樹脂5.10 gを加えた。pHは5.33に上昇し、混合物を90分間攪拌した。樹脂を目の粗いガラスフリットを通しての濾過によって除去して、溶液460 mLを得た。濾液を、NaCl 2.96 g、NaH2PO4・H2O 1.08 g、およびNa2HPO4・7H2O 7.66 gによって110 mM NaClおよび80 mMリン酸塩にした。pHを2N NaOHおよび5%HNO3によって7.4に調節した後、Steritopフィルターによって滅菌した培地ボトルに濾過滅菌して、これを換気フード内でメンブレンキャップによってキャップした。これを39℃の水浴中に20分間入れて、37〜38℃のインキュベータオーブンに22時間入れた。
37〜38℃で22時間後、溶液をTFFによって精製した。溶液を5%wt/volまで濃縮して、透過液の7倍量を回収して、残留物を8〜10%まで濃縮した。残留物をMillipak 20フィルターによって滅菌凍結乾燥フラスコに濾過滅菌した。凍結乾燥後、乳白色の固体11.2 gを得た:8.89%Pt、5.4%H2O、1.03%Na、0.05%Cl、<0.05%P;
Figure 0004717016
および実施例4において報告された全てのピーク;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ-2055(100%)。
実施例14:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2, N,O-Ptキレート、>351 kDaの調製
攪拌子を備えた500 mL培地ボトルに、水120 mLおよびポリ(HPMA)-GFLG-Ama-diEt(351 kDa)20 g(8.80 mmol Ama-diEt)を加えた。激しく攪拌した後、水100 mlを加えて、混合物を2時間攪拌すると無色の溶液が得られた。pH電極を挿入して、新しい2N NaOH 14 mLを加えた。pHは12.74に上昇して、12.4〜12.8に30分間維持した。その後、混合床(H+、OH-型)IX樹脂(AG501-X8(D))19.9 gを加えると、3分以内にpHは6に低下した。混合物をSteritopボトルキャップフィルターによって濾過滅菌して、2 N NaOHおよび5%HNO3によってpHを7.63に調節した。新たに調製したシス-ジアミンジアクア-プラチナ(II)二硝酸塩の24,200 ppm Pt溶液85.5 mL(10.6 mmol)を1度に加えると、pH 5.02の溶液が得られた。粒子の大きさのためにわずかに曇った混合物を室温で一晩攪拌した。このあいだに、pHは4.25に低下して、Chelex 100樹脂6.77 gを加えた。pHは5.33に上昇して、90分間攪拌後、濾過助剤パルプ0.2 gを加えた。混合物を、目の粗いガラスフリットによって濾過滅菌した。溶液725 mlを、NaCl 4.661 g(79.8 mmol)、Na2HPO4・12H2O 12.24 g(45.7 mmol)およびNaH2PO4・H2O 1.703 g(10.1 mmol)によって110 mM NaClおよび85 mMリン酸塩にした。pHを7.4に調節して、混合物をSteritopフィルターによって1 L培地ボトルに濾過滅菌した。ボトルをメンブレンキャップによって密封して40℃の水浴中に20分間入れた後、37〜38℃のインキュベータに入れた。約22時間後、内容物をTFFによって精製した。より濃縮した溶液は粘性が高すぎるため、材料約50 mgを用いてNMRスペクトルを得た。残留物の凍結乾燥によって白色固体19.9 gが得られた:7.95%Pt、7.0%H2O、1.03%Na、0.09%Cl、<0.05%P;
Figure 0004717016
および実施例4に関して報告された全ての他のピーク;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ-2055(100%、N, O-);SEC三相、Mp=468 kDa、147 kDa、Mn=66.3 kDa、PDI=13.8;Pt放出、3時間で0.68%、24時間で2.28%。
実施例15:ポリ(HPMA)-GG-ONp、23 kDaの調製
アルミホイルで覆って、Omnifitからの堅固な3弁キャップ、噴霧管、および攪拌子を備えた乾燥5 L培地ボトルに、HPMA(245.5 g、1.7146 mol、11当量)、MA-GlyGly-ONp(50.0 g、0.1556 mol、1当量)および無水HPLC等級のアセトン(1970 g)を加えた。不均一な混合物を激しく攪拌して、アルゴンを90分間噴霧すると、曇った無色の混合物が得られた。AIBN(14.2 g、0.8647 mol再結晶型CH2Cl2)を250 mL培地ボトルにおいてアセトン75 mLに溶解した。アルゴンを90分間噴霧した後、アルゴンを激しく噴霧しながらこの溶液を培地ボトルに注いだ。250 ml培地ボトルをアセトン30 mLによってすすいで、すすいだ液を反応容器に移した。90分後、噴霧を停止して、反応容器を50℃の水浴に48時間入れた。その後、底に白い沈殿物が形成された反応混合物を、室温まで冷却して、容器の気体を排出した。反応混合物を750 mL遠心管4本に移した。各ボトルを2600 RCF(3800 rpm)で5℃で10分間遠心した。上清をデカントして捨て、ポリマーが全て回収されるまでこのプロセスを繰り返した。粗ポリマー沈殿物を、床容積の1〜2倍量(約200 mL)のアセトンによって3回洗浄して、床容積の1〜2倍量(約150 mL)のジエチルエーテルによって3回洗浄した。各洗浄に関して、溶媒を導入して、ボトルを1分間振とうした後、先と同様に遠心した。最終の洗浄後、ポリマーを真空下で一定重量まで乾燥させると、ポリ(HPMA)-GlyGly-ONp 228.8 gが得られた:
Figure 0004717016
各<1%のEtOHおよびEtOAcを除き、低分子を認めなかった。
実施例16:ポリ(HPMA)-GG-Ama-diEtの調製
攪拌子および隔壁キャップを備えた乾燥器で乾燥させた500 mL培地ボトルに、ポリ(HPMA)-GG-ONp 6.0 g(ONpの3.162 mmol)およびジエチルアミノマロネートHCl塩(Ama-diEt HCl)2.673 g(12.6 mmol)を加えた。無水ピリジン(87 ml)をフラスコにカニューレによって加えて、溶液が得られるまで混合物を40℃で攪拌した。反応の程度は、遊離および総HONpを測定することによって決定し、それらが等しくなれば、無水酢酸エチル800 mLを加えて1時間攪拌することによって産物を沈殿させた。混合物を3840 RCFでの10分間の遠心によって回収した後、Et2O 100 mLによって3回洗浄した。沈殿物をEtOH 70 mLに溶解して、AG501-X8(D)IX樹脂(H+ & OH-型)18 gと共に1時間軽く攪拌した。樹脂を濾過して、ポリマーを遠心沈降によって沈殿および精製した。真空下で乾燥させた後、ポリ(HPMA)-GG-Ama-diEtの白色粉末6.25 gが得られた:
Figure 0004717016
および各<1%EtOHおよびEtOAcを除き、低分子を認めなかった。
実施例17:ポリ(HPMA)-GG-Ama=Pt(NH3)キレート、約22 kDaの調製
A.ポリ(HPMA)-GG-Ama-diEt、約25 kDaの加水分解
攪拌子を備えた50 mL遠心管に、p(HPMA)-GG-Ama-diEt 0.5 g(0.2635 mmol Ama残基)およびMilli-Q H2O 4.2 mLを加えた。溶解後、2M NaOH 0.347 mL(0.694 mmol NaOH)を加えて、pHを12.6に90分間維持した。溶液をBio-Rex MSZ 501D樹脂0.71 gと共に攪拌した。pHが7.84に低下した後、樹脂を濾過によって除去した。濾液のpHを2 M NaOHによって7.31に調節した。
B.ポリ(HPMA)-GG-Ama=Pt(NH3)2, O,O'-キレートの調製
上記のpH 7.3溶液に、シス-ジアミンジアクアプラチナ(II)二硝酸塩の30,149 ppm溶液2.40 mL(0.316 mmol Pt)を加えた。pHを2 M NaOHによって直ちに5.6に調節した。一晩攪拌した後、pHは3.31に低下した。これを5.4に上昇させて、Chelex樹脂0.192 gを加えた。90分間軽く攪拌した後、樹脂を濾過滅菌によって除去すると、わずかに着色した表記の化合物9 mLを生じた。
C.ポリ(HPMA)-GG-Ama=Pt(NH3)2, N,Oキレートの調製
濾液の上記の9 mLを、NaCl 0.069 g(0.89 mmol)、NaH2PO4・H2O 0.019 g(0.142 mmol)、およびNa2HPO4・7H2O 0.153 g(0.57 mmol)によって110 mM NaClおよび80 mMリン酸塩(pH 7.4)にした。pHを7.4に調節して、溶液を水浴中で38℃に加温した後、38℃の乾燥器に24時間移した。溶液を遠心限外濾過によって精製して、凍結乾燥すると、表記の化合物0.413 gが乳白色の固体として得られた:10.5%Pt、7.31%H2O;3および24時間でのPt放出、1.4%、4.6%。
Figure 0004717016
実施例18:ポリ(HPMA)-GG-Ama=Pt=DACHキレート、約24 kDaの調製
A.ポリ(HPMA)-GG-Ama-diEt(〜24 kDa)(53 b)の加水分解
攪拌子を備えた250 mL培地ボトルにp(HPMA)-GG-Ama-diEt 5.0 g(2.635 mmol Ama-diEt)およびMilli-Q H2O 42 mLを加えた。溶解後、2 M NaOH(6.94 mmol NaOH)3.47 mLを加えて、pHを12.6に90分間維持した。次に、Bio-Rex MSZ 501D樹脂5 gを加えて、pHが7.41に低下するまで混合物を軽く攪拌して、その時点で樹脂を濾過によって除去した。濾液のpHを2 M NaOHによって7.49に調節した。
B.ポリ(HPMA)-GG-Ama=Pt=DACH, O,O'-キレートの調製
上記のpH 7.5の濾液に、シス-ジアクア-1R,2R-DACH=Pt(II)二硝酸塩の23,808 ppm溶液25.9 mL(3.16 mmol Pt)を加えた。pHを5.23に調節した。一晩攪拌した後、pHは4.11に低下した。2 M NaOHによってpHを再度5.4に調節して、Chelex樹脂1.92 gを加えて、その後混合物を90分間軽く攪拌した後濾過滅菌すると、表記の化合物を含む濾液100 mLが得られた。
C.ポリ(HPMA)-GG-Ama=Pt=DACH, N, O-キレートの調製
上記の濾液を、NaCl 0.648 g(11 mmol)、NaH2PO4・H2O 0.221 g(1.6 mmol)、およびNa2HPO4・7H2O 1.71 g(6.4 mmol)を加えることによって、110 mM NaClおよび80 mMリン酸塩(pH 7.4)にした。pHを7.4に調節して、溶液を水浴中で38℃に加温した後、38℃の乾燥器に24時間移した。溶液にTFF精製を行って凍結乾燥すると、乳白色の固体4.31 gが得られた:9.7%Pt、7.62%H2O;3および24時間での%Pt放出、1.3%、5.5%:
Figure 0004717016
実施例19:ポリ(HPMA)-GGG-Ama-diEtの調製
A.Gly-Ama-diEt、TFA塩の調製
NaHCO3(324.98 g、3.87 mol)および水1.5 Lの混合物を、4 LアーレンマイヤーフラスコにおいてジエチルアミノマロネートHCl(740.78 g、3.50 mol)に徐々に加えて、得られた二相混合物を15分間激しく攪拌した。CH2Cl2層を回収して、CH2Cl2 0.5 mlを水層に加えて、混合物を15分間攪拌して、CH2Cl2層を回収した。水層のpHは7.8であった。CH2Cl2層を合わせて、無水Na2SO4上で乾燥させて濾過した。容積が約0.6 Lに減少するまでCH2Cl2を真空下で除去した。この溶液を2 Lの三頚丸底フラスコに移して、t-BOC-Gly-OH(569.34 g、3.25 mol)を加えた。混合物を攪拌して、10℃に冷却した。CH2Cl2 400 mLに溶解したDCC(670.57 g、3.25 mol)を、激しく攪拌されているジエチルアミノマロネート/t-BOC-Gly-Ame混合物に2.5時間かけて加え、温度を25℃未満に維持した。DCCの添加が完了した後、混合物を氷浴中で45分間攪拌して、温度を約5℃に低下させた。冷浴を外して、反応混合物を室温でさらに4時間攪拌した後、一晩放置した。形成された白色の沈殿物を濾過によって除去してCH2Cl2 100 mLによって洗浄した。濾液およびCH2Cl2洗浄液を合わせて、溶媒を真空下で除去すると、黄色の結晶材料が得られ、真空下で乾燥後t-BOC-Gly-Ama-diEt 881.8 gが得られた:
Figure 0004717016
t-BOC-Gly-Ama-diEt(985.2 g、2.96 mol)のCH2Cl2溶液770 mLに、トリフルオロ酢酸(TFA)を加えた。得られた混合物を攪拌して、6時間後沈殿物が形成され、これを8時間後に回収した。CHCl3からの再結晶によって、TFA-Gly-Ama-diEt 1025.1 gが白色固体として得られた:
Figure 0004717016
B.ポリ(HPMA)-GGG-Ama-diEt、約23 kDの調製
乾燥器で乾燥させ、隔壁キャップ、攪拌子、およびアルゴン入り口を備えた5 Lの培地ボトルにTFA-Gly-Ame(104.28 g、0.3012 mol)、ピリジン(2.1516 kg)およびTEA(45.01 g、0.4448 mol)を加えた。溶液が得られた後、ポリ(HPMA)-GlyGly-ONp(225 g、0.10316 mol ONp)を30分間かけて4〜5回に分けて加えた。2.5時間後、全てまたはほぼ全てのポリマーが溶解した後、遊離および総HONpの百分率を決定するために少量を採取した。分析のあいだ、反応物を攪拌し続けた。分析により、反応が100%完全である(室温で3.5〜4時間)ことが示された後、反応容器にキャップをして40℃に加熱し、そのまま2時間維持した。透明な黄色の反応混合物の500〜550 mLずつ5個を、それぞれが磁気攪拌子を有する5 L培地ボトル5本に移した。激しく攪拌した後、EtOAc/ジエチルエーテル(500 mL/80 mL)の580 mLを6回徐々に加えることによって粗産物を各5 L培地ボトルから沈殿させた。曇った黄色の混合物を1時間攪拌して、沈殿物を遠心によって回収して床容積の1〜2倍量のEtOAcによって1回洗浄して、床容積の1〜2倍量のジエチルエーテルによって2回洗浄した。産物を真空下で乾燥した後、5 L培地ボトルにおいて激しく攪拌したEtOH(10〜15%wt/vol)約2 Lに徐々に加えた。溶解後、Bio-Rex MSZ 501D指標IX樹脂(EtOH洗浄)1008 gを加えた。混合物を2.5時間軽く攪拌した後、指標の青いビーズが残っているか否かを30分毎に調べた。青色のビーズが認められなければ、IX樹脂さらに150〜200 gを加えた。青色のビーズが30分後に残っていれば、Whatman GF/Bガラスマイクロファイバーフィルターを通して濾過することによって樹脂を除去した。EtOH溶液からのポリマーを沈殿させて、回収して、上記のように洗浄した後、真空下で約72時間乾燥させると、ポリ(HPMA)-GlyGlyGly-Ameが黄色の細粉として得られる。SEC(MeOH/H2O)Mp=24 kDa、Mw=24 kDa、Mn=15 kDa、PDI=1.6;
Figure 0004717016
実施例20:ポリ(HPMA)-GGGG-Ama-diEt、22 kDaの調製
A.t-BOC-GlyGly-OHの調製
隔壁および攪拌子を有する乾燥器で乾燥させた20 mLバイアルに、ジオキサン6 ml、Gly-Gly(1.325 g、10.0 mmol)、BOC-ON(2.714 g、11.0 mmol)およびEt3N(2.10 mL、15 mmol)を加えた。混合物を2時間攪拌して、そのあいだに透明な黄色の溶液が形成された。混合物をEtOAc(20 mL)およびH2O(15 mL)によって抽出した。水層を回収して、EtOAcによって洗浄し、5%クエン酸50 mLに加えた。t-BOC-GlyGlyOHをEtOAc(200 ml)によって抽出して、無水Na2SO4上で乾燥させた。EtOAcを真空下で除去して、熱いEt2Oによって粉砕した。結晶を回収した後、Et2Oによって洗浄して乾燥させると、表記の化合物1.309 gが得られた:
Figure 0004717016
B.t-BOC-GlyGly-Ama-diEtの調製
100 mL培地ボトルにt-BOC-GlyGly-OH(10.02 g、43.15 mmol)、ジエチルアミノマロネートHCl(9.13 g、43.15 mmol)、EDC(12.66 g、66.04 mmol)、HOBt(0.66 g、4.315 mmol)およびピリジン200 mLを加えた。室温で21時間攪拌した後、ピリジンを真空下で除去して残渣をCHCl3 3×300 mLによって抽出した。CHCl3層を無水MgSO4上で乾燥させて、CH2Cl2を真空下で除去して、残渣を4℃でヘキサン:エーテル(7:3)から再結晶した。t-BOC-GlyGLy-Ama-diEt 12.32 gが白色結晶として回収された:
Figure 0004717016
C.TFA-GlyGly-Ama-diEt塩の調製
隔壁キャップと攪拌子を備えた100 mL培地ボトルに、t-BOC-GlyGly-Ama-diEt(5.12 g、13.14 mmol)およびCH2Cl2(15 ml)を加えた。激しく攪拌しながら、TFA(CH2Cl2 25 mL中に25 mL)を滴下して加えた。1時間後、反応が完了し、TFAを真空下で除去して、トリフルオロ酢酸塩をEt2Oによって沈殿させた。TFA-GlyGly-Ama-diEtを濾過によって回収して、Et2Oによって洗浄して、無水EtOH:エーテル(7:3 v/v)から再結晶させた。白色結晶を真空下で乾燥させると、産物5.21 gが得られた:
Figure 0004717016
D.ポリ(HMPA)-GGGG-Ama-diEt、約22 kDaの調製
乾燥器で乾燥させて、攪拌子および隔壁を備えた250 mL丸底フラスコに、TFA GG-Ama-diEt 5.724 g(14.19 mmol)を加えて、混合物の空気をN2に入れ替えた。次に、無水ピリジン70 mLを加えて溶解後、ポリ(HMPA)-GG-ONp 7.015 gを3回に分けて加え、毎回前回の分が溶解した後に加えた。混合物を40℃に加温して、反応の程度をHPLCによってモニターした。23時間後、反応は完了した。次に、無水EtOAc 700 mLおよび無水Et2O 100 mLを室温で加えて、混合物を1時間攪拌してポリマーを沈殿させた。沈殿物を遠心によって回収した。得られた沈降物を無水EtOH 60 mLに溶解して、AG 501-X8(D)IX樹脂(H+ & OH-型)と共に2.5時間攪拌した。樹脂を濾過によって除去して、ポリマーをEtOAc 800 mLによって沈殿させた。1時間攪拌後、沈殿物を遠心によって単離して、EtOAcおよびエーテルによって連続的に洗浄し、真空下で乾燥させると、表記の化合物5.77 gが乳白色の粉末として得られた:
Figure 0004717016
実施例21:ポリ(HPMA)-GGGG-Ama=Pt=1R,2R-DACH、約22 kDaの調製
A.ポリ(HPMA)-GGGG-Ama-diEtの加水分解
攪拌子、ポリ(HPMA)-GGGG-Ama-diEt 5.5 g(2.895 mmol Ama残基)およびMilli-Q水46 mLを含む250 mLボトルを、溶解するまで攪拌した。2 M NaOH 3.81 mL(7.62 mmol)によってpHを12.6に上昇させて90分間そのまま維持した。混合物を、Bio-Rex MSZ 501D樹脂5.5 gによってpH 7.51に調節して、その後樹脂を濾過して除去した。濾液のpHを2 M NaOHによって6.93にすると、ポリ(HPMA)-GGGG-Ama(CO2Na)2の溶液が得られた。
B.ポリ(HPMA)-GGGG-Ama=Pt=1R,2R-DACH O,O'-キレートの調製
ポリ(HPMA)-GGGG-Ama(CO2Na)2の上記の溶液に、シス-ジアクア-1R,2R-DACH=Pt(II)二硝酸塩溶液27.5 mL(3.47 mmol Pt)を加えた。4.41に低下したpHを、2 M NaOHによって5.14に調節した。一晩攪拌するあいだに、pHは2.44に低下した。2 N NaOHによってpHを5.4に調節して、Chelex 100樹脂2.114 gを加えて、混合物を軽く攪拌した。90分後、樹脂を濾過滅菌によって除去して濾液100 mLを得た。
C.ポリ(HPMA)-GGGG-Ama=Pt=1R,2R-DACH N,O-キレートの調製
上記の濾液100 mLを、NaCl 0.648 g(11 mmol)、NaH2PO4・H2O 0.221 g(1.6 mmol)、およびNa2HPO4・7H2O 1.71 g(6.4 mmol)によって110 mM NaClおよび80 mMリン酸塩(pH 7.4)にして、2 M NaOHによってpHを7.4に調節した。溶液を水浴中で38℃に加温した後、38℃の乾燥器に24時間移した。溶液をTFFによって精製して凍結乾燥すると、乳白色固体4.31 gが得られた:8.86%Pt、9.35%H2O;3および24時間での%Pt放出、0.972%、3.173%:
Figure 0004717016
実施例22:3-アミノプロピルスルホンアミドマロネート、ジエチルエステル、HCl塩の調製
A.3-クロロプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステル(Cl(CH2)3SO2Ama-diEt)
CHCl3 400 mLおよびEt3N(50 mL)におけるジエチルアミノマロネートHCl(Ama-diEt HCl、24.34 g、0.115 mol)の溶液に、3-クロロプロパンスルホニルクロリド(21.25 g、0.12 mol)をCHCl3 100 mLにおいてを不活性大気中で一定の蒸気として加えた。得られた混合物を3時間還流して、室温まで冷却し、1 N HCl(2×300 mL)および水(2×300 mL)によって抽出した。有機相を回収して、無水Na2SO4において乾燥させ、CHCl3を真空下で除去すると、Cl-(CH2)3-SO2-Ama-diEt 29.05 gが得られた:
Figure 0004717016
B.3-ヨードプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステル
NaI(34.47 g 0.23 mol)のアセトン溶液400 mLに、Cl-(CH2)3-SO2-Ama-diEt(29.05 g、0.092 mol)を加えた。反応混合物を6時間還流した後室温まで冷却した。NaClを濾過によって除去して、濾液を真空下で除去して、残渣をCH2Cl2 300 mLに溶解した。この溶液をNa2S2O3水溶液(3×250 mL)および水(3×250 mL)によって洗浄した。有機相を無水Na2SO4上で乾燥させて、溶媒を真空下で除去すると、表記の化合物29.07 gが得られた:
Figure 0004717016
C.3-アジドプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステルN3-(CH2)3-SO2-AmadiEtの調製
方法A:(注意、NaN3は、ハロゲン化溶媒と反応してアルキルジアジドを形成する可能性があり、これは単離されると爆発する可能性がある)。3-ヨードプロパン-スルホニルアミドマロネートジエチルエステル(29.00 g、0.071 mol)のCCl4溶液300 mLに、10 mol%トリオクチルメチル-塩化アンモニウムを含むNaN3(11.38 g、0.175 mol)の水溶液50 mLを加えた。得られた混合物を80℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。水層を分離して、ジクロロメタン(100 mL)によって洗浄した。有機相を合わせて、水(3×100 mL)によって洗浄した後、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空下で除去すると、表記の化合物18.94 gが得られた。
方法B:3-クロロプロパンスルホニルアミノマロネートジエチルエステル(44.21 g、0.14 mol)のDMF溶液200 mLに、NaN3(29.25 g、0.45 mol)を加えた。反応混合物を90℃で16時間攪拌した後、室温まで冷却した。混合物を氷水に注いで、ジクロロメタンによって抽出した。合わせた有機相を塩水で洗浄して、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空下で除去すると、表記の化合物28.02 gが得られた:
Figure 0004717016
D.3-アミノプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステルの調製
3-アジドプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステル(27.60 g、0.086 mol)のエタノール溶液(70 mL)およびPd/C 1g(10%)を、60 psi H2のParr水素添加装置に8時間入れた。水素を2時間毎に補充した。混合物をセライトパッドによって濾過して、1N HClのエタノール溶液(10 mL)を濾液に加えた。溶媒を真空下で除去して、残渣をAl2O3上でCH2Cl2/MeOH(4/1、v/v)を用いてカラムクロマトグラフィーによって精製すると、表記の化合物26.84 gが塩酸塩として得られた:
Figure 0004717016
実施例23:ポリ(HPMA)-GG-NH(CH2)3SO2-Ama-diEt、約22 Daの調製
100 mL培地ボトルに、3-アミノプロパンスルホニルアミノマロネートジエチルエステル(2.81 g、8.46 mmol)およびピリジン(80 mL)を攪拌しながら加えた。p(HPMA)-GG-ONp(8.00 g、4.22 mmol)およびHOBt(0.0968 g、0.6321 mmol)を加えて、混合物を21時間攪拌した後、40℃の水浴中に入れた。全体で44時間後、反応は、HPLC分析によって遊離のHONpが総HONpと等しくなることから示されるように完了した。混合物を1 L培地ボトルに移して、絶えず攪拌しながらEtOAc(900 mL)を加えてポリマーを沈殿させた。固体を遠心によって単離した(4800 rpm、5分、5℃)。上清の液体をデカントして、固体を無水EtOH(10%溶液)に溶解した。Bio-Rex MSZ 501D樹脂(30.0 g)を加えて、混合物を2.5時間攪拌した。樹脂を濾過によって除去して、濾液を約25%溶液まで濃縮した。EtOAc(900 mL)を加えて、混合物を1時間攪拌した。ポリマーを遠心によって単離して、EtOAcおよびEt2Oによって洗浄した後、真空下で乾燥させると、乳白色の粉末6.00 g(75%)が得られた:
Figure 0004717016
実施例24:ポリ(HPMA)-GG-NH(CH2)3SO2Ama=Pt(NH3)2、約22 kDaの調製
A.ポリ(HPMA)-GG-NH(CH2)3SO2Ama(CO2Na)2の調製
ポリ(HPMA)-GG-C3-スルフ-Ama-diEtの加水分解は、ポリ(HPMA)-GGNH(CH2)3SO2Ama-diEt(0.50 g、0.2635 mmol Ama-diEt残基)、H2O 4.2 mL、2N NaOH(0.35 m、0.70 mmol)を用いて上記のカルボキサミド化合物に関して用いた条件と同じ条件下で行った。pH 12.4〜12.6で30分後、Bio-Rex MSZ501(D)樹脂(0.50 g)によって溶液をpH<7に調節した。
B.ポリ(HPMA)-GG-NH(CH2)3SO2Ama=Pt(NH3)2,O,O'-キレート(主に)の調製
段階Aにおいて得られた材料を、シス-ジアミンジアクアプラチナ(II)二硝酸塩の30,060 ppm Pt溶液2.05 mlによって処置した。pHを5.0〜5.4に90分間維持して、混合物をChelex樹脂(0.1923 g)と共にさらに90分間軽く攪拌した後、樹脂を濾過によって除去した。
C.ポリ(HPMA)-GG-C3-スルフ-Ama=Pt(NH3)2, N,O-キレートの調製
BからのほとんどがO,O'-であるキレートを、NaCl 0.077 g(1.3175 mmol)、NaH2PO4・H2O 0.0265 g(0.1920 mmol)、およびNa2HPO4 0.2059 g(0.7681 mmol)によって処置した。pHを7.4に調節して、溶液を38℃の水浴中に入れた後、38℃の乾燥器に20時間入れた。遠心限外濾過および凍結乾燥後、茶色の固体0.134 gを得た:
Figure 0004717016
実施例25:ポリ(HPMA)-GG-NH(CH2)3SO2Ama=Pt=DACH、約22 kDaの調製
100 mL培地ボトルに、ポリ(HPMA)-GG-NH(CH2)3SO2-Ama-diEt(6.0 g、3.162 mmol Ama-diEt基)およびH2O 50 mLを加えた。ポリマーをpH 12.4〜12.6で2N NaOH(4.2 mL)によって2時間加水分解した後、IX樹脂によって中和した。pHを2N NaOHおよび5%HNO3によって7.4に調節して、シス-ジアクオ-1R,2R-DACH-Pt(II)二硝酸塩(24,484 ppm Pt、1.2当量/Ama-diEt)30.3 mLを加えた。pHを5.4に増加して、混合物を一晩攪拌した。Chelex樹脂(1.92 g)を加えて、混合物を90分間軽く攪拌した。樹脂を除去した後、溶液の容積を100 mlに調節してNaCl(0.6431 g)、NaH2PO4・H2O(0.221 g)およびNa2HPO4・7H2O(1.71 g)を加えた。塩が溶解した後、溶液を濾過して38℃で24時間維持した後、TFFによって精製して凍結乾燥後、茶色の固体5.13 gが得られた:%Pt 6.25、%H2O 9.37%;3および24時間での%Pt放出はそれぞれ、1.0%および1.93%であった;ならびに195Pt NMR(H2O:D2O、93:7)δ-2257、approx.-2280 and -2432。
実施例26:GG-NH(CH2)3SO2Ama、ジエチルエステルTFA塩の調製
t-BOC-Gly-Gly-OH(9.29 g、0.0400 mol)およびHOBt(6.1260 g、0.0400 mol)のDMF溶液(18 mL)の攪拌溶液に、0℃でDCC(8.25 g、0.0400 mol)を加えた。混合物を0℃で45分間攪拌した後、TEA(5.0595 g、0.0500 mol)を、異なるフラスコに入った3-アミノプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステルHCl塩(13.3136 g、0.0400 mol)とDMF 10 mLとの混合物に加えた。この混合物を室温で10分間攪拌して、濾過し、濾液を50 mLフラスコにおいて高真空下で5分間放置した。3-アミノプロパンスルホンアミドマロネートジエチルエステルのDMF溶液を攪拌中のt-BOC-Gly-Gly-OH/HOBt/DCC混合物に加えた。得られた混合物を0℃で2時間攪拌した後、室温に戻して、さらに6時間攪拌した。混合物を濾過して濾液を水300 mLに注いでCH2Cl2(3×400 mL)によって抽出した。合わせた有機相を塩水(3×300 mL)および水(3×300 mL)によって洗浄して、無水Na2SO4上で乾燥させて濾過した。溶媒を真空下で除去した。残渣をCH2Cl2/アセトン、99/1〜0/100によってSi-ゲル上で精製すると、産物9.10 gが白色固体として得られた:
Figure 0004717016
t-BOC-Gly-Gly-3-アミノプロピルスルホンアミドマロネートジエチルエステル(7.7880 g、0.0200 mol)のTFA/DCM 1/1 40 mLにおける溶液をアルゴン大気中で攪拌した。2時間後、TLC分析(CH2Cl2/MeOH、9/1、v/v)は、反応が完了したことを示し、溶媒を真空下で除去した。残渣をジエチルエーテル5 mLによって粉砕して、濾過し、沈殿物を真空下で乾燥させると、表記の化合物7.66 gが得られた:
Figure 0004717016
実施例27:ポリ(HPMA)-GFLG-NH(CH2)3SO2-Ama-diEt、約24 kDaの調製
乾燥器で乾燥させて、攪拌子および隔壁キャップを備えた100 mL培地ボトルに、NH(CH2)3SO2-Ama-diEt HCl 2.24 g(6.74 mmol)および無水ピリジン80 mLを加えて、混合物を攪拌した。ポリ(HPMA)-GFLG-ONp 8.03 gを加えて、混合物を溶解するまで攪拌した後、40〜45℃で44.5時間維持した。このあいだに、少量を遊離および総HONpに関して分析した。43時間後、反応は完了した。粗産物を無水EtOAc 0.6 Lおよびジエチルエーテル0.2 Lによって沈殿させた。室温で1.5時間攪拌後、沈殿物を遠心によって単離した。上清を捨てて、沈殿物を洗浄し、遠心して、デカントしてジエチルエーテル30 mLによって3回洗浄した。乾燥後、固体を無水EtOH 80 mLに溶解して25.0gのAG 501-X8(D)IX樹脂(H+&-OH型)と共に軽く攪拌した。2.5時間後、樹脂を濾過によって除去して、EtOAc 0.9 Lおよびジエチルエーテル0.2 Lによって沈殿させた。1時間攪拌後、ポリマーを単離して、先と同様に洗浄した。産物を真空で乾燥させると、表記の化合物7.08 gが乳白色の粉末として得られた:
Figure 0004717016
実施例28:ポリ(HPMA)-GFLG-NH(CH2)3SO2Ama=Pt(NH3)2の調製
A.ポリ(HPMA)-GFLG-NH(CH2)3SO2-Ama-diEtの加水分解
ポリ(HPMA)-GFLG-NH2(CH2)3SO2-Ama-diEt(0.50 g、0.2110 mmol Ame-diEt残基)、H2O 4.2 mL(12%溶液を生成する)、および2N NaOH(0.295 mL、0.590 mmol)を用いて先と同様に加水分解を行った。pH 12.4〜12.6で30分後、Bio-Rex MSZ 501(D)樹脂(0.50 g)を加えて、pHを<7にした。
B.ポリ(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt(NH3)2O,O-キレートの調製
白金添加は、シス-ジアミンアクアプラチナ(II)二硝酸塩1.60 mL(0.253 mmol)およびChelex樹脂0.1540 gを用いて先と同様に行った。
C.ポリ(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt(NH3)2N,O-キレートの調製
このキレートの変換および精製は、NaCl 0.0482 g(0.8248 mol)、NaH2PO4・H2O 0.0166 g(0.1203 mmol)およびNa2HPO4・7H2O 0.1287 g(0.4801 mmol)を用いて先と同様に行った。遠心限外濾過および凍結乾燥後、表記の化合物0.219 gが茶色の固体として得られた:
Figure 0004717016
37℃でのPBSにおけるPt放出、3時間で3.02%、24時間で5.44%。
実施例29:ポリ(HPMA)-GFLG-C3-NH(CH2)3SO2-Ama=Pt=DACHの調製
A.ポリ(HPMA)-GFLG-C3-NH(CH2)3SO2-Ama-diEtの加水分解
ポリ(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama-diEtの加水分解は、ポリ(HPMA)-GFLG-NH(CH2)3SO2-Ama-diEt(5.50 g、2.321 mmol Ame-diEt残基)、H2O 46 mL(12%溶液を生成)、2N NaOH(3.241 mL、6.48 mmol)およびBio-Rex MSZ 501(D)樹脂(5.50 g)を用いて先に用いた条件と同じ条件下で行った。
B.:ポリ(HPMA)-GFLG-NH(CH2)3SO2-Ama=Pt=DACH O,O-キレートの調製
この化合物は、シス-ジアクア-1R,2R-DACHプラチナ(II)二硝酸塩の26,487 ppm Pt溶液20.50 mLおよびChelex樹脂(1.6943 g)を用いて、既に記述された条件と同じ条件で調製した。
C.:ポリ(HPMA)-GFLG-NH(CH2)3SO2-Ama=Pt=DACH N,O-キレートの調製
この調製は、類似の変換に関して先に記述した条件と同じ条件下で行った。用いた試薬の量は、PBS溶液に関してNaCl 0.6428 g(11 mmol)、NaH2PO4 0.2208 g(1.60 mmol)およびNa2HPO4 1.7156 g(6.40 mmol)であった。タンジェンシャルフロー濾過によって精製後、産物4.10 gが茶色の固体として得られた:%Pt=6.58:
Figure 0004717016
37℃のPBSにおけるPt放出、3時間で2.12%、24時間で4.54%。
実施例30:O,O'-Pt対N,O-Ptキレートの異性体比のpHに対する依存性
50 mL遠心管4本にそれぞれ、p(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2 1.00 g(100%、N,O-キレート)、または92%O,O-キレート、8%N,O-キレート混合物をそれぞれ加えた。これらの材料をMilli-Q水27 mL(およそ4質量%溶液)に溶解して、適当であれば、1M NaOHまたは5%HClO4を用いて望ましいpH範囲に調節した。次に、試料を38℃の水浴中で攪拌しながら加熱して、その明記されたpH範囲内で維持した。適した時間まで一定時間に少量を採取して凍結して、適した時間に溶液を遠心限外濾過によって濃縮し(4800 rpm、30℃で1回遠心)、NMR試験管に移した。少量のD2Oを各試験管に加えて、195Pt NMRスペクトルを記録した。データを表1〜3に示す。
実施例31:ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2,N,O-キレート、約20 kDaの経時的な放出されたPtの百分率対pH
10 mMクエン酸、20 mMリン酸塩、および100 mM NaClのクエン酸PBSの保存溶液を調製して、これをボトルに分けて、これを所望のpHに調節した。ボトルを乾燥器において37℃に加温して、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2,N,O-キレート、〜20 kDaを加えて、緩衝液1 mLあたり濃度約2 mgのポリマー白金結合体を得た。混合物を十分に混合して無色の溶液を得た。表記の時間において、約2.5 mLの少量3本をそれぞれのpHで溶液から採取して、既に洗浄したYM-3超遠心装置(Amicon)に移して5000 RCF、37℃で50分間遠心した。全ての時点で全ての試料を採取して調製した後、濾液および保存溶液を、白金輝線214.42 nmでICP-OESによってPt標準物質(0〜10 ppm)に対して分析した。それぞれの時点およびそれぞれのpHで、試料3個を調製して分析した。
実施例32:O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートのインビトロ活性
様々なO,O'-Ptキレート類似体の相対的細胞障害活性を、B16F10黒色腫細胞の組織培養を用いるクローン原性(コロニー形成)アッセイによってインビトロで評価した。この方法において、類似体の活性を、シスプラチンおよびカルボプラチンの活性と比較した。N,O-Ptキレートへの変換の影響も同様に評価した。簡単に説明すると、細胞を培養皿に播種して接着させた。培養物を、所望の濃度の試験物質を含む培地において7日間インキュベートした。固定後、細胞>50個を含む細胞集団の数をコロニーとして採点した。試験物質のそれぞれの濃度を1試料あたり3個ずつアッセイした。1試料あたり3個ずつの皿におけるコロニー数の平均値を、対照値(試験物質なし)における平均コロニー数によって除して、それぞれの濃度の試験物質に関する%生存値を得た。各物質のIC50(50%増殖阻害が起こる濃度)を、50%生存点に最も近い上下のデータ値を用いて、直線回帰分析によって決定した。結果を表8に示す。
(表5)アミドマロネートのO,O'-PtおよびN,O-Ptキレートのクローン原性アッセイからの細胞障害性結果
Figure 0004717016
実施例33:認容および最大認容量試験
分子量〜20 kDaのポリ(HPMA)-GFLG-Ama-Pt(NH3)2のO,O'-PtとN,O-Ptキレート型を比較する1回投与IV試験により、マウスにおける最大認容量(MTD)が、O,O'-PtキレートおよびN,O-Ptキレートに関してそれぞれ、80〜100および400 mg Pt/kgであることが示され、ポリマー結合N,O-Ptキレートによってより大きい安全性域が得られることが証明された。これらの試験に関して、MTDは薬物による毒性のために如何なるマウスも死亡しない、評価した最高用量であると定義された。
いずれかのキレートを5日間毎日投与したB16黒色腫瘍を有するマウス10匹の群の最高平均体重によって示されるように、双方のキレートの多数回投与の認容性を表9に示す。データはまた、O,O'-Ptキレートの用量と同等の用量でN,O-Ptキレートの毒性がないこと、および同等の平均体重減少を生じるために必要なN,O-Ptキレートの用量は実質的により高いことを示している。
(表6)ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2,O,O'-PtおよびN,O-Ptキレート、25 kDaの毎日5回投与に関する%体重減少の平均値として表記される認容性
Figure 0004717016
実施例34:皮下接種(s.c.)B16黒色腫モデルにおける腫瘍増殖の阻害:N,O-Ptキレート
ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2,N,O-Ptキレート、25 kDa対シスプラチンおよび生理食塩水対照の腫瘍増殖阻害を雌性C57BL/6マウスにおいて評価した。N,O-Ptキレートおよびシスプラチンを17.5 mg Pt/kgおよび3 mg Pt/kgで毎日5回投与した。N,O-Ptキレートの用量はそのMTDの十分下であるが、シスプラチンの用量はそのMTD付近である。処置群あたり動物10匹の右後部わき腹にB16F10マウス黒色腫細胞106個を皮下接種した。移植後6日目から、軽いメチウラン麻酔下で腫瘍の大きさをキャリパーを用いて毎日測定した。得られた腫瘍の体積(mg)を、式(W2×L)/2を用いて推定し、式中Wは腫瘍の長径であり、Lは腫瘍の短径である。腫瘍の大きさが50 mgまたはそれ以上に達した場合に、各動物において処置を開始した。
各試験動物を個々に追跡して、各動物の処置1日目は、腫瘍の大きさが投与開始を示す日に対応した。試験化合物は全て、尾静脈を通してIV投与して、体重20 gあたり容積0.2〜0.3 mLで投与した。投与容量を確立するために、投与前に動物を毎日観察して、体重を測定し、その後試験終了まで毎日測定した。結果を図9に示す。
実施例35:皮下接種B16黒色腫モデルにおける腫瘍増殖阻害:O,O'-Ptキレート
ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2,O,O'-Ptキレート、25 kDa(O,O'-Pt)対シスプラチンおよび生理食塩水対照の腫瘍増殖阻害を、雌性C57BL/6マウスにおいて評価した。O,O'-Ptキレートおよびシスプラチンを17.5 mg Pt/kgおよび3 mg/kgで5日間毎日投与した。O,O'-Ptキレートの用量はシスプラチンの用量と同様にほぼそのMTDであった。結果を図10に示す。
実施例36:皮下接種B16黒色腫モデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O-Ptキレート
ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2,N,O-Ptキレート、25 kDa(N,O-Pt)対カルボプラチンおよび生理食塩水対照の腫瘍増殖阻害を、雌性C57BL/6マウスにおいて評価した。N,O-Ptキレートおよびカルボプラチンを200 mg Pt/kgおよび65 mg/kgで5日間毎日投与した。このN,O-Ptキレートの用量はカルボプラチンの用量と同様にほぼそのMTDであった。結果を図11に示す。
実施例47:皮下接種扁平上皮癌異種移植片モデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O-Ptキレート
ポリ(HPMA)-GFLG-AmaPt(NH3)2,N,O-Ptキレート、25 kDa対カルボプラチンおよび溶媒対照(等張グルコース)の腫瘍増殖阻害を、処置群あたり1群7匹のBALB/c nu/nuマウスにおいて評価した。ヒト扁平上皮腫瘍細胞(UMSCC10b)を4カ所の部位(左右両肩および左右両わき腹)に移植した(部位あたり細胞106個)。N,O-Ptキレートおよびカルボプラチンは、1回IP注射として400 mg Pt/kgおよび65 mg/kgで投与した。N,O-Ptキレートの用量はカルボプラチンの用量と同様にほぼそのMTDである。腫瘍が群の平均値の50 mgに達した場合、マウス全てに試験治療を投与した。結果を図12に示す。
実施例38:多用量プロトトコールを用いたB16黒色腫モデルにおけるp(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACHの抗腫瘍活性
B16黒色腫モデルにおいて、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACHの抗腫瘍活性をカルボプラチンの抗腫瘍活性と比較する試験を行い、各物質をIP注射として5日間毎日投与した(qd×5)。ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACH材料も同様に15、16、および17日に投与した。このレジメでは、双方の化合物のそのそれぞれの最大認容(等毒性)量を投与した。
体重18〜20 gの雌性C57BL/6マウスに、組織培養から回収したB16F10腫瘍細胞106個を皮下に移植した。得られた腫瘍の大きさを試験期間を通して個々に追跡した。腫瘍塊(mg)は(W2×L)/2として計算し、式中Wは腫瘍短径でありLは腫瘍長径である。腫瘍の大きさが75〜100 mgに達した場合に個々の処置を行った。注射容量は、0.04 mL/g体重であり、薬物は腹腔内投与した。腫瘍体積および体重を毎日測定した。データを腫瘍量の平均値±SEMとして表記して、各処置群における動物の50%が死亡する、または過剰な腫瘍量、腫瘍潰瘍化、または罹患のために動物が屠殺されるまで、これをプロットした。異なる物質の活性を比較するために、各物質をそのそれぞれの最大認容量(MTD)で投与して、MTDは、腫瘍の負荷に帰因しない、再現よく誘導される初期毒性死が10%(1群の動物10匹中1匹)に過ぎず、10〜15%の平均最大体重減少(すなわち、それが起こった日にかかわらず、個々のマウスの体重における最低値の群の平均値)が起こるがその後体重減少が回復する用量であると定義される。
このモデルにおいて、p(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACHの5日間毎日投与の最大認容量およびカルボプラチンの対応する最大認容量は60 mg/kg(32 mg Pt/kgに対応する)である。各処置群における腫瘍増殖の平均値のプロットを、図Aに示す。これらの結果は、カルボプラチンが最も控えめな腫瘍増殖阻害を示したことを示している。対照的に、腫瘍の増殖は、p(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACH処置療法後では実質的に遅くなり延長した。
実施例39:多用量プロトコールを用いたB16黒色腫モデルにおけるp(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt=DACHの抗腫瘍活性
B16黒色腫モデルにおいて、p(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt=DACHの抗腫瘍活性をカルボプラチンの抗腫瘍活性と比較する試験を行い、各物質をIP注射として5日間毎日投与した(qd×5)。この療法では、双方の化合物をそのそれぞれの最大認容(等毒性)量で投与した。
本試験において用いた方法は、実施例38のp(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt=DACH試験において用いた方法と同一であった。
このモデルにおいて5日間毎日投与した場合のp(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt=DACHの最大認容量は75 mg Pt/kgであり、カルボプラチンの対応する最大認容量は60 mg/kg(32 mg Pt/kgに相当)である。各処置群における腫瘍増殖の平均値のプロットを図Bに示す。これらの結果は、カルボプラチンがこの試験において非常に弱い腫瘍増殖阻害を示したことを示している。対照的に、p(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt=DACH処置療法後では腫瘍増殖のより顕著な阻害を認めた。
結論
このように、本発明は、本質的に純粋なアミドマロネートO,O'-PtおよびN,O-Ptキレートを選択的に調製する手段を提供する。本発明はまた、方法を用いて調製された本質的に純粋なアミドマロネートO,O'-PtおよびN,O-Ptキレートを提供する。N,O-キレートは、pH約6.0およびそれ以上で比較的安定であり、そのpHより低いpHでは小さいPt種を放出することが示され、より低いpHが認められる腫瘍またはリポソームのような構造では活性な小さいPt種を選択的に放出するという結果が得られた。
本明細書に開示の方法に変更および改変を行ってもよいことは当業者に明らかであろう。そのような変更および改変は本発明の範囲内である。例えば、これに限定されないが、カルボキシル、スルホネート、またはスルフェート基(ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸等のようなグリコサミノグリカンが含まれるがそれらに限定されるわけではない)を有するポリ(HPMA)およびポリ(glu)以外の他のポリマーを、通常の共役物質によって水性または非水性条件で直接、またはアミノ酸もしくはポリアミノ酸のようなスペーサーを通してAma-diEtに結合させることができることは、当業者によって認識されるであろう。次に、これらのポリマー-アミドマロネート結合体を加水分解して、本明細書において記述されるように白金を添加してO,O'-Ptキレートを生成することができ、次に、これを対応するN,O-Ptキレートを生成するように変換することができる。同様に、当業者は、本明細書の開示に基づいてN,O-Ptキレートがハーフエステルまたはモノアルキルアミドマロネートで構成されうることを認識するであろう。例えば、ジアルキルエステルの1当量NaOHもしくはKOHによる部分的加水分解によってモノエステルを調製することができ、またはマロン酸もしくは加水分解されたN-アシルアミドマロン酸による処置によって双方のハーフエステルを生成することができる。精製後、モノエステルをpH 4〜5で白金添加することができる。次に、pHを約6またはそれ以上に上昇させると、N,O-Pt錯体が形成されるであろう。本明細書に記述の化合物のそのような変更は全て本発明の範囲に含まれる。
シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンの構造、およびアミドマロネート-シス-ジアミンプラチナ(II)のO,O'-PtおよびN,O-Ptキレートの基本構造を示す。 アミノマロネート-シス-ジアミンプラチナ(II)のO,O'-Ptキレートの構造を示す。 アミノマロネート-シス-ジアミンプラチナ(II)のN,O-Ptキレートの構造を示す。 アミドマロネート-シス-ジアミンプラチナ(II)のO,O'-Ptキレートの構造を示す。 アミドマロネート-シス-ジアミンプラチナ(II)のN,O-Ptキレートの構造を示す。 Y=ONp(ONp=p-ニトロフェノールエステル)またはAma-diEtであるポリ(HPMA)-GFLG-Yの調製および構造を示す。Y=ONpである場合、多分散性が狭い低分子量ポリマーが形成される。ONp基がなければ、またはp-ニトロフェノールを付加すれば、非常に高分子量のポリ(HPMA)ポリマーが得られる。351 kDa材料は、如何なるONpエステルも含まないおよびp-ニトロフェノールが付加されない反応に由来した。p-ニトロフェノールをONpエステルなしで重合化反応に加えると、より狭くより均一な分子量分布を有するより小さいHPMAポリマーが得られる。 ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2N,O-Ptキレートの調製のための合成スキームを示す。 ポリ(HPMA)-GFLG-AmadiEtの調製の際のp-ニトロフェノールの放出を示す。これは、置換反応を低分子の放出によってモニターすることができる唯一の方法である。 ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2のO,O'-PtおよびN,O-Ptキレートの構造およびその対応する195Pt NMRスペクトルを示す。スペクトルは二つのキレートのピークの位置の差を示す。O,O'-Ptキレートのスペクトルは、それが約85%O,O'-Ptおよび15%N,O-Ptキレートからなることを示している。N,O-Ptキレートのスペクトルは、それが約10%O,O'-PTおよび90%N,O-Ptキレートからなることを示している。 図5の段階Cの際の%O,O'-PtおよびN,O-Ptキレートのプロットを示す。これは、O,O'-Ptキレートの形成が1〜2時間で完全であることを示している。 生理食塩水を対照として用い、シスプラチンをそのMTD(最大認容量)付近の用量で投与して、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2のN,O-PtキレートをそのMTDよりかなり下の用量で投与した、実施例35のB16黒色腫腫瘍増殖阻害試験からのプロットを示す。 生理食塩水を対照として用い、シスプラチンをそのMTD付近の用量で投与して、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2のO,O'-PtキレートもそのMTD付近の用量で投与した、実施例36のB16黒色腫腫瘍増殖阻害試験からのプロットを示す。 生理食塩水を対照として用い、カルボプラチンをそのMTD付近の用量で投与して、ポリ(HPMA)-GFLG-Ama=Pt(NH3)2のN,O-PtキレートをそのMTD付近の用量で投与した、実施例37のB16黒色腫腫瘍増殖阻害試験からのプロットを示す。 等張グルコースを対照として用い、カルボプラチンをそのMTD付近の用量を投与して、ポリ(HPMA)-GFLG-AmaPt(NH3)2のN,O-PtキレートをそのMTDよりかなり下の用量およびそのMTD付近の用量で投与した、ヒト異種移植片腫瘍増殖阻害試験からのプロットを示す。 B16黒色腫腫瘍モデルにおいてp(HPMA)-GFLG-Ama=Pt=DACHおよびカルボプラチンの抗腫瘍活性の比較である、実施例38において記述した実験から得られた結果のグラフ表示である。 B16黒色腫腫瘍モデルにおいてp(HPMA)-GFLG-C3-スルフ-Ama=Pt=DACHおよびカルボプラチンの抗腫瘍活性の比較である、実施例39において記述した実験から得られた結果のグラフ表示である。

Claims (9)

  1. アミドマロネートO,O'-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物を、pH 6.0〜10.0の水溶液に接触させる段階を含む、90%より高い純度のアミドマロネートO,O'-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物から90%より高い純度のアミドマロネートN,O-Ptキレートを調製する方法。
  2. pHが7.0〜8.0である、請求項記載の方法。
  3. アミドマロネートN,O-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物を、pH 3.5およびそれ未満の水溶液に接触させる段階を含む、90%より高い純度のアミドマロネートN,O-PtキレートまたはアミドマロネートN,O-PtおよびO,O'-Ptキレートの混合物から90%より高い純度のアミドマロネートO,O'-Ptキレートを調製する方法。
  4. pHが2〜3.5である、請求項記載の方法。
  5. 水溶液の温度が20℃〜50℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 水溶液の温度が35〜40℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 水溶液が、緩衝液を用いて選択されたpH範囲に維持される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 緩衝液がリン酸緩衝液である、請求項記載の方法。
  9. 水溶液が、pHスタットを用いて選択されたpH範囲に維持される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
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