本発明は、印画紙に形成された画像上に熱転写され、画像を保護するラミネート層を有する熱転写シートに関する。
画像を形成する方法には、例えば、インクリボンの昇華性又は熱拡散性染料からなる染料層を熱転写型プリンタに備わるサーマルヘッドで印画紙の表面に加熱、押圧し、染料層を印画紙に熱転写することで画像を形成する昇華型熱転写方式がある。この昇華型熱転写方式は、フルカラーで連続的な階調表現が可能である。
この昇華型熱転写方式では、印画紙に形成された画像の表面を保護し、変退色を防止し、耐皮脂性及び耐可塑剤性を付与し、耐光性を向上させるため、画像上に熱可塑性樹脂からなるラミネート層を熱転写する。具体的に、印画紙上には、インクリボンの染料が熱転写されることによって画像が形成され、この後、基材上にラミネート層が形成された熱転写シートのラミネート層が画像上の熱転写される。
熱転写シートのラミネート層は、サーマルヘッドで熱転写シートが画像上に押し当てられ、保護する画像部分と対応する部分が加熱され、画像上に熱転写される。このような熱転写シートを用いた場合には、手脂に対する耐皮脂性や、壁紙、フロアマット、テーブルクロス等の塩化ビニル製品に含有されているような可塑剤に対する耐可塑剤性を良好にすることができる。
また、他の熱転写シートとしては、画像を形成するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の染料層とラミネート層とが同一の基材上に並設されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この熱転写シートでは、各色の染料層が並設されている順、即ちイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に染料層を印画紙に熱転写して画像を形成した後、続いて、ラミネート層を印画紙の表面に熱転写する。この熱転写シートを用いた場合には、画像を形成した後、続けて印画紙上にラミネート層を形成することができることから、画像を容易にラミネート層で保護することができる。また、この熱転写シートを用いた場合には、染料を熱転写した後、続けてラミネート層を熱転写することができるため、画像が形成された印画紙の表面に皮脂や可塑剤が触れることがなく画像上にラミネート層が熱転写される。これにより、この熱転写シートでは、画像の品位を維持したまま画像を保護することができる。
上述したように熱転写シートのラミネート層は、画像上及び画像が形成された印画紙上に熱転写されることで、画像品位の向上及び画像を保護することを目的とする。このため、ラミネート層には、画像に光沢を与えると共に、耐皮脂性及び耐可塑剤性を有することが必要である。具体的に、熱転写シートでは、画像の光沢を向上させるため、ラミネート層を構成する樹脂にポリスチレン等の芳香族系樹脂又はポリエステル樹脂等を用いる。
しかしながら、ラミネート層にポリスチレン等の樹脂を用いた場合には、画像の光沢を向上させることができる一方で、染料に含有される化合物の骨格とラミネート層を形成する樹脂の骨格とが類似してしまう場合がある。染料に含有される化合物の骨格とラミネート層の形成する樹脂の骨格が類似した場合、この熱転写シートでは、染料とラミネート層との相性がよくなり、ラミネート層への染料の拡散及び透過が著しくなってしまう。これにより、ラミネート層をポリスチレン等の樹脂で形成した熱転写シートでは、染料が転写後のラミネート層に抜けてしまい、画像に十分な耐皮脂性及び耐可塑剤性を付与することができなくなってしまう。また、熱転写シートでは、ラミネート層をポリスチレンやポリエステル樹脂等で形成した場合、ラミネート層の強度が低下し、クラックが生じやすくなってしまう。
また、熱転写シートでは、ラミネート層の耐皮脂性や耐可塑剤性を向上させるため、ラミネート層を形成する樹脂に親水性の樹脂を用いる。このような熱転写シートでは、ラミネート層への染料の拡散が抑制され、耐皮脂性及び耐可塑剤性が向上する。しかしながら、親水性の樹脂でラミネート層を形成した熱転写シートでは、外気中の水分の吸湿等によりラミネート層が白化し、白化したラミネート層が画像上に熱転写されることによって画像の光沢を著しく低下してしまう。また、この熱転写シートでは、ラミネート層が親水性の樹脂で形成され、印画紙の受容層が染着性を有するアクリル系樹脂等で形成されているため、ラミネート層と受容層との接着性が低下してしまう。これにより、ラミネート層を印画紙の全面に熱転写する場合には、ラミネート層と印画紙との接着性が悪くなり、画像の品位が低下してしまう。以上のことから、熱転写シートでは、画像を高光沢化するためラミネート層にポリスチレン等の芳香族系樹脂等を用いると耐皮脂性及び耐可塑剤性が低下してしまい、耐皮脂性及び耐可塑性を向上させるためラミネート層に親水性の樹脂を用いると光沢が低下してしまう。
そこで、本発明は、画像を高光沢化させると共に、画像上に転写されるラミネート層の耐皮脂性及び耐可塑剤性を向上させ、画像に耐皮脂性及び耐可塑性を付与し、高品位・高保存性を有する画像を形成することができる熱転写シートを提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明に係る熱転写シートは、画像上に熱転写され、上記画像を保護するラミネート層が基材上に形成され、ラミネート層には、下記の化学式1に示す化合物と化学式2に示す化合物の比が20重量%:80重量%〜50重量%:50重量%である共重合体が含有されている。
本発明では、耐皮脂性及び耐可塑剤性を向上させることができる化学式1に示す化合物と、画像を高光沢化させることができる化学式2に示す化合物との比が20重量%:80重量%〜50重量%:50重量%である共重合体をラミネート層に含有させることにより、このラミネート層が熱転写された画像には耐皮脂性及び耐可塑剤性が付与されると共に、高光沢化することができる。これにより、本発明では、高品位・高保存性の画像を形成することができる。
以下、本発明を適用した熱転写シートについて図面を参照して詳細に説明する。熱転写シートは、熱転写型プリンタに備わるサーマルヘッドにより、インクリボンの染料層が印画紙に熱転写されて形成された画像を保護するラミネート層を有する。この熱転写シート1は、インクリボンとは別に、図1に示すように、基材2上にラミネート層3が形成されており、基材2のラミネート層3とは反対側の面に耐熱保護層4が形成されている。
ここで、先ず、染料層及びラミネート層3が熱転写される印画紙5について説明する。印画紙5は、図2に示すように、シート基材6の一方の主面に熱転写された染料を受容する受容層7を有する。受容層7は、熱転写された染料を受容し、受容した染料を保持することによって画像を形成する層である。受容層7を構成する樹脂には、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースエステル、塩化ビニル・アクリル等を用いる。
なお、受容層7には、熱転写型プリンタ内で印画紙の給排紙が円滑に行えるように離型処理を施してもよい。離型処理の方法としては、例えばシリコン系、フッ素系等の離型剤を受容層7に添加したり、画像形成に支障をきたさない範囲でポリイソシアネート等の硬化剤を受容層7に添加する方法等がある。
また、印画紙5には、受容層7に離型処理を行う他に、熱転写型プリンタ内で給排紙をより円滑にするため、シート基材6の他方の主面にバックコート層8を設けてもよい。
このような構成からなる印画紙5には、受容層7にインクリボンの染料層が熱転写され、熱転写された染料層を受容し、保持することで画像が形成される。この画像を保護するラミネート層3が設けられた熱転写シート1は、ラミネート層3が形成される基材2にフィルム状のものを用いる。この基材2は、例えば、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム等である。なお、基材2には、これらの他に従来から熱転写シートの基材として用いられるものを用いてもよい。
ラミネート層3は、印画紙5の受容層7に形成された画像上に熱転写され、画像上に透明な層を形成する。このラミネート層3は、画像上に熱転写されることにより、画像の表面を保護し、変退色を防止し、耐皮脂性及び耐可塑剤性を付与し、耐光性を向上させる。
このラミネート層3には、下記の化学式1に示す化合物と化学式2に示す化合物との共重合体が含有される。
化学式1に示す化合物は、フェノキシ(メタ)アクリレートである。フェノキシ(メタ)アクリレートは、ラミネート層3に含有されることによって、ラミネート層3が親水性となり、ラミネート層3の耐皮脂性及び耐可塑剤性を向上させることができる。また、このフェノキシ(メタ)アクリレートは、ラミネート層3を軟らかくすることができ、画像上へのラミネート層3の転写性を向上させることができる。
このフェノキシ(メタ)アクリレートと共重合させる化学式2に示す化合物は、スチレンである。このスチレンは、ラミネート層3に含有されることによって、ラミネート層3が熱転写された画像を高光沢化させることができる。
ラミネート層3には、フェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体が含有されることによって、フェノキシ(メタ)アクリレートにより耐皮脂性及び耐可塑性が画像に付与されると共に、スチレンにより画像が高光沢化される。
また、共重合体は、フェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比が20重量%:80重量%〜50重量%:50重量%である。フェノキシ(メタ)アクリレートの重合比が20重量%よりも少ない場合には、共重合体中のスチレンの重合比が80重量%であり、スチレンの含有量が多くなるため、画像が高光沢化される。しかしながら、この場合には、染料に含有される化合物の骨格とスチレンの骨格が類似してしまう場合があり、染料とラミネート層3との相性がよくなってしまう。これにより、スチレンの含有量が多い場合には、ラミネート層への染料の拡散及び透過が生じ、耐皮脂性及び耐可塑性が低下してしまう。このため、このようなラミネート層3では、画像上に熱転写された後、画像に手等が触れた際に皮脂により画像の品位が低下することや、壁紙、フロアマット、テーブルクロス等の塩化ビニル製品に接触した際に染料が製品に移行することを防止できなくなってしまう。また、このラミネート層3では、スチレンの含有量が多いため、ラミネート層3の強度が低下し、クラックが生じやすくなる。
一方、フェノキシ(メタ)アクリレートの重合比が50重量%よりも多い場合には、ラミネート層3の親水性が高くなり、耐皮脂性及び耐可塑剤性を向上させることができる。しかしながら、この場合には、ラミネート層3が外気中の水分の吸湿等により白化し、この白化したラミネート層3が熱転写されると画像の光沢が低下してしまう。また、フェノキシ(メタ)アクリレートの重合比が50重量%よりも多い場合には、ラミネート層3の親水性が高くなることで、有機溶剤に溶解し難くなり、基材2上にラミネート層3を形成する際の塗工性を低下させてしまう。
したがって、ラミネート層3では、含有される共重合体のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比を20重量%:80重量%〜50重量%:50重量%とすることによって、塗工性が低下することなく、ラミネート層の耐皮脂性及び耐可塑性を向上させることができる共に、画像を高光沢化させることができる。
また、共重合体は、重量平均分子量が1万〜100万程度が好ましく、より好ましくは10万〜50万程度である。重量平均分子量が小さすぎる場合には、ラミネート層3が脆くなり、基材2上にラミネート層3を形成する際に塗膜特性が悪化する虞がある。一方、共重合体は、重量平均分子量が大きすぎると、ラミネート層3を形成する際の塗工液の粘度が高くなり、塗布しにくくなる。また、このような共重合体では、ラミネート層3を画像上に熱転写する際の加熱及び加圧等に必要なエネルギーが多量となり、ラミネート層3の転写不良が生じやすくなる。
共重合体の重合方法は、特に限定されることはなく、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の任意の重合方法を用いることができる。これらの重合方法の中では、残存モノマーの低減が可能な溶液重合が好ましい。
ラミネート層3には、共重合体の他に、保存性を向上させるため紫外線吸収剤や酸化防止剤等を適宜配合する。例えば、紫外線吸収剤には、ベンゾフェノン系、ジフェニルアクリレート系、ベンゾトリアゾール系を用いることができる。酸化防止剤には、フェノール系、有機硫黄系、リン酸系等を用いることができる。
また、ラミネート層3を基材2の主面に形成する際には、上述した共重合体や紫外線吸収剤、酸化防止剤等を溶剤に溶解させ、得られた塗工液を基材2上に塗工し、乾燥させてラミネート層3を形成する。溶剤としては、例えばメチルエチルケトンやトルエン等であり、これらの他に従来から溶剤として用いられているものも用いることができる。
基材2の他方の主面に形成される耐熱保護層4は、ラミネート層3を画像上に熱転写する際に、熱転写シート1とサーマルヘッドとの融着を防止する。耐熱保護層4は、例えばガラス点移転温度(Tg)が80℃以上の耐熱性樹脂、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂等で形成する。また、耐熱保護層4には、熱転写型プリンタ内での熱転写シート1の走行性や貼り付きを防止するために各種の潤滑剤や帯電防止剤が添加されている。
以上のような構成からなる熱転写シート1では、染料により形成された画像上に熱転写されるラミネート層3にフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体が含有されていることにより、ラミネート層3の耐皮脂性及び耐可塑剤性が向上し、ラミネート層3が画像上に熱転写されることにより、画像の耐皮脂性及び耐可塑剤性が向上すると共に、画像を高光沢化させることができる。これにより、この熱転写シート1は、品位や保存性に優れた画像を形成することができる。
次に、本発明を適用した他の熱転写シート10について説明する。熱転写シート10は、図3に示すように、基材11とラミネート層12との間に離型層13が形成されている。熱転写シート10は、上述した熱転写シート1のように基材2上にラミネート層12が直接形成されず、離型層13を介して基材11上にラミネート層12が形成されている点で熱転写シート1とは異なる。なお、基材2及びラミネート層13は、上述した熱転写シート1と同様の構成からなるため詳細な説明を省略する。
この熱転写シート10は、基材11とラミネート層12との間に離型層13が設けられていることによって、ラミネート層12を画像上に熱転写する際の加熱、押圧により、基材11とラミネート層12とが熱融着することを防止することができる。離型層13は、例えばシリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等の離型剤で形成する。
この熱転写シート10にも、ラミネート層12にフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体が含有されていることによって、上述した熱転写シート1と同様に、画像に耐皮脂性及び耐可塑剤性を付与すると共に、画像を高光沢化させることができる。これにより、熱転写シート10は、品位や保存性に優れた画像を形成することができる。
また、本発明を適用した他の熱転写シート20について説明する。この熱転写シート20は、図4及び図5に示すように、同一の基材21上に画像を形成する染料層22とラミネート層23とが形成されている。この熱転写シート20は、基材21上に染料層22とラミネート層23とが形成されており、上述した熱転写シート1のように基材2上にラミネート層3のみ形成されているものとは構成が異なる。この熱転写シート20では、ラミネート層23を画像に対応する部分の一部分を加熱する上述した熱転写シート1とは異なり、印画紙5の画像が形成されている受容層7の全面にラミネート層23を熱転写することにより、画像を保護する。
具体的に、熱転写シート20は、基材21の一方の主面にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の染料層22Y、22M、22C、ラミネート層23が一定間隔をもって面順次に繰り返し形成されている。また、基材21の染料層22が形成されている面と同一の面には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の染料層22Y、22M、22C、ラミネート層23を1つのまとまりとして、この1つのまとまりを検出するための検出マーク24がイエローの染料層12Yと、シアンの染料層12Cとの間に形成されている。また、この熱転写シート20には、基材21の染料層22やラミネート層23が形成されている面とは反対側の面に耐熱保護層25が形成されている。なお、熱転写シート20では、各色の染料層12を図4及び図5に示すように、イエローの染料層22Y、マゼンタの染料層22M、シアンの染料層22Cの順に並設することに限定されない。
各色の染料層22Y、22M、22Cは、少なくとも染料と熱可塑性樹脂とから形成されている。染料としては、次のようなものを用いることができる。イエロー染料としては、アゾ系、ジスアゾ系、メチン系、スチリル系、ピリドン・アゾ系キノフタロン系等やこれらの混合系等を用いる。マゼンタ染料としては、アゾ系、アントラキノン系、スチリル系、複素環系アゾ染料やこれらの混合系等を用いる。シアン染料としては、インドアニリン系及びインドアニリン系とアントリキノン系、ナフトキノン系、複素環系アゾ染料との混合系が用いることができる。なお、各色の染料としては、これらの染料の他に従来から用いられている染料を用いることができる。
染料層22に含有させる熱可塑性樹脂としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロール、ヒドロキシエチレンセルロール、ヒドロキシプロピレンセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン等のビニル系樹脂や各種ウレタン樹脂等を用いる。なお、染料層22には、これらの熱可塑性樹脂の他に従来から用いられている熱可塑性樹脂も用いることができる。
このような構成からなる熱転写シート20は、各色の染料層を並設されている順、即ちイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に染料層22を印画紙上に熱転写して画像を形成した後、続いて、画像が形成された印画紙の表面の全面にラミネート層23を熱転写して画像を保護する。
この熱転写シート20の場合にも、ラミネート層23に上述したフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体を含有させることにより、画像に耐皮脂性及び耐可塑剤性を付与すると共に、画像を高光沢化させることができる。また、この熱転写シート20では、ラミネート層23に共重合体が含有されていることにより、印画紙5の受容層7の接着性も良好である。
以下、本発明の好適な実施例を実験結果に基づいて説明する。
〈実施例1〉
実施例1では、次のようにして熱転写シートを作製した。具体的には、基材として、一方の主面に耐熱保護層を有する厚さ6μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製ルミラー)を用意し、この基材の他方の主面にラミネート層を形成した図1に示すような熱転写シートである。ラミネート層を形成する際には、化学式1に示すフェノキシ(メタ)アクリレートと化学式2に示すスチレンとの重合比が20重量部:80重量部となるように混合し、共重合物を生成した。この共重合物を精製して固形分100%の樹脂にし、この樹脂100重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、トルエン200重量部とを混合してラミネート層の塗工液を作製した。得られた塗工液を基材の一方の主面に乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工し、温度120℃で1分間乾燥させて熱転写シートを作製した。
〈実施例2〉
実施例2では、ラミネート層に含有させる樹脂を作製する際に共重合物のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比を50重量部:50重量部としたこと以外は、実施例1と同様に熱転写シートを作製した。
〈実施例3〉
実施例3では、ラミネート層に含有させる樹脂を作製する際に共重合物のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比を35重量部:65重量部としたこと以外は、実施例1と同様に熱転写シートを作製した。
〈比較例1〉
比較例1では、ラミネート層に含有させる樹脂としてフェノキシ(メタ)アクリレートのみを単独重合し、この重合物を精製して得られた固形分100%の樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様に熱転写シートを作製した。
〈比較例2〉
比較例2では、ラミネート層に含有させる樹脂としてスチレンのみを単独重合し、この重合物を精製して得られた固形分100%の樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様に熱転写シートを作製した。
〈比較例3〉
比較例3では、ラミネート層に含有させる樹脂を作製する際に共重合物のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比を10重量部:90重量部としたこと以外は、実施例1と同様に熱転写シートを作製した。
〈比較例4〉
比較例4では、ラミネート層に含有させる樹脂を作製する際に共重合物のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比を60重量部:40重量部としたこと以外は、実施例1と同様に熱転写シートを作製した。
以上のように作製した実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例4の熱転写シートに対して、ラミネート層を画像上に転写し、画像の光沢度及び耐可塑性について評価した。評価結果を以下の表1に示す。
ここで、光沢度の評価については、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各染料層及びラミネート層が形成された図4及び図5に示すようなインクリボン(ソニー株式会社製、UPC−8840A)のラミネート層部分に実施例1〜3及び比較例1〜4の各熱転写型の熱転写シートを切り貼りした。そして、このインクリボンを用いて、熱転写プリンタ(ソニー株式会社製、UP−D8800プリンタ)でソニー株式会社製UPC−8840A印画紙に、白ベタを印画し、画像上にラミネート層を熱転写した。得られた画像の光沢度をGloss Meter VG2000 (NIPPON DENSHOKU製)にて60°グロスの測定を行った。そして、測定して得られた光沢度により次のように光沢度を評価した。光沢度が100以上の場合には、表1中に◎で示し、光沢度が60以上で100より小さい場合には、表1中に○で示した。◎及び○の場合には、画像の光沢が高く良好であるとみなした。そして、光沢度が60より小さい場合には、表1中に×で示した。この場合には、画像の光沢が低いものとみなした。
また、画像の耐可塑性の評価については、光沢度の評価と同様にインクリボンのラミネート層部分に実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた各熱転写型の熱転写シートを切り貼りし、黒ベタを印画し、ラミネート層を熱転写した。画像が形成された印画紙を5cm×5cmの大きさに断裁し、ラミネート層側に可塑剤フィルム(オカモト スーパーフィルム ノンタックE ♯320オカモト製)を合わせて重ね、1kg荷重をかけ温度50℃の環境下にて48時間放置した。その後、画像を取り出し、重ね合わせた可塑剤フィルムへの染料転写量を目視により観察した。そして目視の結果より耐可塑剤性について次のように評価した。可塑剤フィルムへの染料転写が無い場合には、表1中に◎で示し、若干可塑剤フィルムへの染料の転写が見受けられるが品位を損ねるほどではない場合には、表1中に○で示した。この◎及び○の場合には、画像の耐可塑性が良好であるとみなした。また、可塑剤フィルムへの染料の転写があり、品位を損ねた場合には、表1中に×で示した。この場合には、画像の耐可塑性が低いとみなした。
表1に示す評価結果から、ラミネート層に化学式1に示すフェノキシ(メタ)アクリレートと化学式2に示すスチレンとの重合比が20重量%:80重量%〜50重量%:50重量%となっている実施例1〜実施例3は、比較例1〜比較例4と比べて光沢度及び耐可塑性の評価が良好であった。
比較例1は、ラミネート層に含有されている重合物がフェノキシ(メタ)アクリレートのみからなるため、ラミネート層の親水性が高くなり、耐可塑剤性が良好である一方で、外気中の水分を吸湿しラミネート層が白化した。これにより、比較例1では、画像の光沢度が悪くなり、光沢の評価が低下した。
比較例2では、ラミネート層に含有されている重合物がスチレンのみからなるため、高光沢化される一方で、熱転写後のラミネート層に染料が透過しやすくなった。これにより、比較例2では、可塑剤フィルムに染料が転写し、耐可塑性の評価が低下した。
比較例3では、ラミネート層に含有される共重合物のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンの重量比が10重量%:90重量%であるため、共重合物中のスチレンの含有量が多くなっている。比較例3では、スチレンの共重合物中の含有量が多いため、比較例2と同様に、光沢化が良好である一方で、ラミネート層に染料が透過しやすくなった。これにより、比較例3では、可塑剤フィルムに染料が転写し、耐可塑性の評価が低下した。
比較例4では、ラミネート層に含有される共重合物のフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンの重量比が60重量%:40重量%であるため、共重合物中のフェノキシ(メタ)アクリレートの含有量が多くなっている。比較例4では、フェノキシ(メタ)アクリレートの含有量が多いため、比較例1と同様に、ラミネート層の親水性が高くなり、耐可塑剤性が良好である一方で、ラミネート層が白化した。これにより、比較例4では、画像の光沢度が悪くなり、光沢の評価が低下した。
これらの比較例に対して、実施例1〜実施例3では、ラミネート層にフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合物が含有されており、その重合比が20重量%:80重量%〜50重量%:50重量%である。実施例1〜実施例3では、このような重合比でフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとを共重合させることによって、共重合物中におけるフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの重合比が適切となる。これにより、実施例1〜実施例3では、フェノキシ(メタ)アクリレートによりラミネート層が親水性となり、耐可塑剤性が向上し、スチレンにより高い光沢度が得られ、ラミネート層が熱転写された画像の耐可塑剤性が向上すると共に、高光沢化された。したがって、実施例1〜実施例3では、耐可塑剤性及び光沢度の評価が共に良好となった。
以上のことから、熱転写シートを作製する際に、ラミネート層にフェノキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体を含有させることは、画像に高光沢化と耐可塑性とを共に付与することができることから、熱転写シートを作製する際に重要であることがわかる。
本発明を適用した熱転写シートの断面図である。
印画紙の断面図である。
同熱転写シートの他の実施例を示す断面図である。
同熱転写シートの他の実施例を示す平面図である。
同熱転写シートの他の実施例を示す断面図である。
符号の説明
1 熱転写シート、2 基材、3 ラミネート層、4 耐熱保護層