JP4713703B2 - 光拡散板用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光拡散板用ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは高輝度で光散乱性に優れる、液晶ディスプレイ、特にパーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイのバックライトユニットの光拡散板の基板として有用なポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略記することがある)が急速に普及しつつあり、特に携帯性の良いノート型パソコンや省スペースのデスクトップ型パソコンの普及が著しい。それに伴い、液晶ディスプレイの需要が増し、かつまた大画面化が進められている。このため、液晶ディスプレイのバックライトユニットを構成する光拡散板についても種々の特性が新たに要求されるようになってきている。
【0003】
バックライト型液晶ディスプレイは、例えば図1に示すような構造、すなわち白色フィルム6の上に、導光板5、光拡散板4、レンズシート3、液晶パネル2、保護ガラス板1を順次積層した構造からなる。この中、白色フィルム6の上に導光板5、光拡散板4を積層し、該導光板5に光源7から光を導入するようにしたたユニットがバックライトユニットである。図1において、光源(冷陰極管)7から導光板5に導入された光は光拡散板4で拡散され、レンズシート3で集光されたのち液晶パネル2に導かれ、該液晶パネル2に与えられた信号に対応する情報を保護ガラス板1を通して表示する。
【0004】
かかるバックライトユニットでは、導光板5と光拡散板4のスティッキング(部分的密着)が生じると、その部分では光が十分に拡散されないまま透過するので、液晶ディスプレイの画面全体の輝度に斑が生じる。この問題は大画面化する程発生しやすくなる。これを改善する手段の一つとして、特開平11−30708号公報に、シート押出し時に表面に多数の凹部を有するポリシングロールで引き取ることで、光拡散板(シート)の裏面側(光源側)に多数個の半球状突起を形成することが提案されている。また、該公報には、従来技術として、光拡散シートの裏面にエンボス加工を施す方法、ビーズを含む塗液を塗布する方法がその問題点と一緒に紹介されている。
【0005】
本発明者の研究の結果、二軸配向ポリエステルフィルムをベースとし、この片面に光拡散層を設けた光拡散板を製造する場合、その機能を充分に発揮するには、該フィルムの光拡散層に対する接着性を改良する必要のあることが明らかとなった。さらに、前記バックライトユニットでは、より小さい光源で高輝度の液晶画面を形成するユニットであることが望ましいが、そのためには、二軸配向ポリエステルフィルムについても光透過率をより一層高める必要のあることが明らかとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、二軸配向ポリエステルフィルムに、その生産性を保持しながら、より一層の光透過特性、及び光拡散層、特に樹脂ビーズを含む層の易接着性を付与した、光拡散板のベースフィルムとして有用な二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ヘーズ値が2%以下の、特定厚みの二軸配向ポリエステルフィルムの両面に易接着性塗膜を設けると、該塗膜の作用もあって全光線透過率を90%以上にすることができることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、厚み50μm以上200μm以下の二軸配向ポリエステルフィルムの両面に易接着性塗膜が塗設されていて、ヘーズ値が2%未満、全光線透過率が90%以上であり、易接着性塗膜が、(A)ガラス転移点が40〜80℃であり、分子中に基−SO 3 M(ここで、Mは−SO 3 と同当量の、金属原子、アンモニウム基または第4級ホスホニウム基を示す)を有するジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分当り8〜20モル%を占める共重合ポリエステル樹脂、(B)ガラス転移点が25〜70℃のアクリル系樹脂及び(C)微粒子を主成分とする塗膜であることを特徴とする光拡散板用ポリエステルフィルムである。
【0009】
本発明における光拡散板用ポリエステルフィルムは、さらに、二軸配向フィルムを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートであること、二軸配向フィルムを構成するポリエステルが平均粒径0.1μm以上3μm以下の多孔質シリカ及び/または板状珪酸アルミニウムを0.001重量%以上0.1重量%以下含有すること、及び/または易接着性塗膜が、(A)ガラス転移点が40〜80℃であり、分子中に基−SO3M(ここで、Mは−SO3と同当量の、金属原子、アンモニウム基または第4級ホスホニウム基を示す)を有するジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分当り8〜20モル%を占める共重合ポリエステル樹脂、(B)ガラス転移点が25〜70℃のアクリル系樹脂及び(C)微粒子を主成分とする塗膜であることを好ましい態様として包含する。
【0010】
本発明において、二軸配向フィルムを構成するポリエステルはポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。このポリエチレンテレフタレートは、ホモポリマーであってもよく、また第三成分を共重合したコポリマーであってもよいが、ホモポリマーが好ましい。コポリマーである場合、エチレンテレフタレートの繰返し単位が、全繰返し単位の85モル%以上、さらには90モル%以上、特に95モル%以上を占めることが好ましい。第三成分の割合が多すぎると、フィルムの光線透過率が低下し、また熱安定性や寸法安定性が低下し、好ましくない。コポリマーの第三成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等が例示できる。これらの中イソフタル酸が特に好ましい。これらは単独または二種以上を併用することができる。例えば、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの場合、イソフタル酸成分は全酸成分当り5モル%以下であることが好ましく、また所望により、他の第三成分としての酸成分またはアルコール成分が3モル%以下の割合で共重合されていても良い。
【0011】
前記ポリエチレンテレフタレートは、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとを重縮合反応させる方法、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させた後重縮合反応させる方法、テレフタル酸のビスグリコールエステルを重縮合させる方法等の方法によって製造することができる。
【0012】
前記ポリエステルの分子量は、重合度が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するので、固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)の値で0.4以上、さらには0.5〜1.2、特に0.55〜0.85であることが好ましい。
【0013】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、その生産性を確保するために、表面に多数の微細突起を有していることが好ましい。これら微細突起は、ポリエステル中に分散含有されている不活性粒子に由来する。
【0014】
この不活性粒子は、粒子周辺のボイドの発生を抑えるか無くして、フィルムのヘーズ値を2%未満にする条件を満足できれば特に限定されないが、多孔質シリカ粒子、板状珪酸アルミニウム粒子が特に好ましい。また、球状シリカのような高透明で、製膜、加工工程中でのフィルム擦過傷を防止する粒子も好ましく用いることができる。かかる不活性粒子は単独使用でも二種以上の併用でも良い。
【0015】
この多孔質シリカ粒子は、平均粒径が0.01μm以上0.1μm以下の一次粒子の凝集体から構成されることが好ましい。多孔質シリカ粒子はポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートに対して高い親和性を示す。一次粒子の平均粒径が0.01μm未満では、粒子の比表面積が大きくなるため粒子同士が凝集し易くなり、粗大粒子を生成するようになるため好ましくない。かかる粗大粒子をフィルム中に含有すると、フィルムの光線透過率を低下させるようになる。一方、一次粒子の平均粒径が0.1μmを超えると、粒子の多孔質性が失われるようになり、ポリエステルに対する親和性が失われ、粒子の周辺にボイドが発生し易くなり、フィルムの光線透過率低下を引き起こす原因となるため、好ましくない。
【0016】
この一次粒子の平均粒径は、透過電子顕微鏡による10万倍の拡大写真で観察できる一次粒子の像をトレース又は投影して画像解析装置により面積円相当直径として求めた平均粒径である。
【0017】
前記多孔質シリカ粒子の平均粒径(二次粒径)は0.1μm以上3.0μm以下、さらには0.7μm以上2.5μm以下、特に1.0μm以上2.3μm以下であることが好ましい。多孔質シリカ粒子の含有量は、0.001重量%以上0.1重量%以下、さらに0.002重量%以上0.08重量%以下、特に0.003重量%以下0.05重量%以下であることが好ましい。この含有量が0.001重量%未満であると、製膜工程特に延伸工程でローラとフィルムが摩擦し、フィルム表面に針状の傷が多発することがあり、一方0.1重量%を超えると、所望のヘーズ値、光線透過率が得られないことがあり、好ましくない。
【0018】
前記多孔質シリカ粒子の細孔容積は0.5〜2.0ml/g、さらには0.6〜1.8ml/gであることが好ましい。この細孔容積が0.5ml/g未満では、多孔質性に乏しく、ポリエステルに対する親和性が失われるため好ましくない。一方、細孔容積が2.0ml/gを超えると、凝集が起り易く、粒径の調整が困難になり好ましくない。
【0019】
また、前記板状珪酸アルミニウム粒子は板状のアルミノ珪酸塩粒子ということもできる。この板状珪酸アルミニウム粒子は任意のものを用いることができるが、天然に産出するカオリン鉱物からなるカオリンクレー等が例示される。さらに、カオリンクレーは水洗等の精製処理を施されたものであってもよい。
【0020】
前記板状珪酸アルミニウム粒子の平均粒径は0.1〜3.0μm、さらには0.3〜2.0μmであることが好ましい。この含有量は0.001重量%以上0.1重量%以下、さらには0.002重量%以上0.08重量%以下であることが好ましい。この平均粒径が0.1μm未満では、フィルムの滑り性が損なわれ、生産性、作業性が低下するので好ましくない。一方、3μmを超えると、フィルムの光線透過率が低下するので好ましくない。また、この含有量が0.001重量%未満では、製膜工程、特に縦延伸工程でロールとフィルムが摩擦し、フィルム表面に針状の傷が多発することがあり好ましくない。一方、含有量が0.1重量%を超えると、フィルムのヘーズ値や光線透過率が低下するので好ましくない。
【0021】
ここで、多孔質シリカ粒子の平均粒径(二次粒径)及び板状珪酸アルミニウム粒子の平均粒径は、測定した全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球形直径」を意味する。「等価球形直径」とは、粒子と同じ容積を有する想像上の球(理想球)の直径を意味し、粒子の電子顕微鏡写真または通常の沈降法による測定から求めることができる。
【0022】
ポリエステルに不活性粒子を含有させる方法としては、公知の任意の方法を用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレートの重合時に、不活性粒子をエチレングリコールに超音波振動等で均一分散させ、所望により公知の方法で湿式分級、精製してから添加することで、ポリマー中に分散含有させることができる。
【0023】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、50μm以上200μm以下、好ましくは75μm以上175μm以下である。この厚みが50μm未満では腰が弱く、加工時に平面性が失われたり、傷が生じたりし易い。一方、厚みが200μmを超えると、腰が強すぎて加工作業性が悪く、透明性が低下し、好ましくない。
【0024】
前記二軸配向ポリエステルフィルムは、その製造法によって制限されることはなく、例えば従来から知られている逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法等によって製造することができる。これらのうち逐次二軸延伸法が好ましい。
【0025】
逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法においては、先ず、所定の組成のポリエステルをダイを通して溶融押出し、予め20〜40℃程度に設定されたキャスティングドラム上にて急冷固化させて未延伸フィルムを得る。このときキャスティングドラム面に接するフィルム面は急冷されるが、その反対面の冷却は遅れる。特に未延伸フィルムの厚みが1mm以上になると、この遅れが著しくなり、この面(反対面)の結晶化が進行し、二軸延伸後のフィルムの表面を粗くし、フィルム表面特性において表裏差を著しくする。この現象を軽減する手段として、キャステイングドラム上の未延伸フィルムに空気側面(キャスティングドラム面に接する面の反対面)から冷風を高速で吹付け、該フィルムを強制冷却することは好ましい。得られる未延伸フィルムの厚みは0.5mm以上であることが好ましい。未延伸フィルムは、その後、一般によく知られた条件で二軸方向に延伸するが、フィルム走行方向(縦方向)に3.0〜4.5倍、これと直角方向(横方向)に3.0〜4.5倍、面積倍率で9〜20倍に延伸するのが好ましい。延伸温度は、90℃〜140℃が好ましい。
【0026】
また二軸延伸後、必要に応じて熱固定を行うことができる。熱固定温度は180〜250℃が好ましく、210〜235℃がより好ましい。二軸延伸後のフィルム厚みは50〜200μmである。
【0027】
本発明における光拡散板用ポリエステルフィルムは二軸配向ポリエステルフィルムの両面に易接着性の塗膜を有する。この塗膜は、光拡散層に対して接着性を奏するものであれば特に限定されないが、(A)共重合ポリエステル樹脂、(B)アクリル系樹脂及び(C)微粒子を主成分とする塗膜であること好ましい。
【0028】
前記共重合ポリエステル樹脂(A)はガラス転移点が40〜80℃であり、分子中に基−SO3M(ここで、Mは−SO3と同当量の金属原子、アンモニウム基または第4級ホスホニウム基を示す)を有するジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分当り8〜20モル%、好ましくは9〜16モル%を占める共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。基−SO3Mの含有量が上記の範囲内にあると、塗膜の光拡散材、更には透明樹脂ビーズ、特にアクリル樹脂ビーズに対する接着性やベースフィルムに対する接着性が優れたものになる。
【0029】
上記基−SO3Mにおいて、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属原子、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属原子が好ましく、特にナトリウム、カリウムが好ましい。また、Mとしてはアンモニウム基、テトラエチルアンモニウム基、テトラブチルホスホニウム基も好ましい。
【0030】
基−SO3Mを含むジカルボン酸としては下記式(1)で表われる化合物を例示することができ、更に具体的には下記式(2)〜(4)で表わされる化合物を挙げることができる。これらは単独使用でも二種以上の併用でもよい。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
前記共重合ポリエステル樹脂を構成する他のジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、その他ダイマー酸などを挙げることができる。これらは二種以上が共重合ポリエステル樹脂中に含まれる。共重合ポリエステル樹脂は、酸成分としてさらに上記のジカルボン酸と共にマレイン酸、フマール酸、イタコン酸などを含むことができる。
【0036】
前記共重合ポリエステル樹脂を構成するグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコールなどの炭素数2〜10のアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジアルキレングリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有するジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)、その他ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ハイドロキノンのアルキレンオキシド付加物などを挙げることができる。
【0037】
前記共重合ポリエステル樹脂は前述のジカルボン酸成分及びグリコール成分以外にp−ヒドロキシ安息香酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの如きヒドロキシカルボン酸成分を少量含むことができる。
【0038】
前記共重合ポリエステル樹脂は、さらに、線状ポリマーの特性を実質的に維持する範囲の少割合で、3官能以上の多官能性化合物成分を含むことができる。この化合物としては、例えばトリメリット酸、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。
【0039】
前記共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は4000〜27000であることが好ましい。また、ガラス転移点は40〜80℃、さらには45〜75℃であることが好ましい。共重合ポリエステル樹脂のガラス転移点が上記範囲内にあることにより、光拡散板用ポリエステルフィルムの耐ブロッキング性を向上し、かつまた透明性を向上することができる。
【0040】
このような共重合ポリエステル樹脂はそれ自体公知の方法で製造することができる。例えば、基−SO3Mを有するジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、その他のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、及びグリコールを出発原料としエステル化反応またはエステル交換反応を行ない、引続いて重縮合反応を行なうことにより容易に得ることができる。所望のガラス転移点を有する共重合ポリエステル樹脂は、予備実験によりポリマー組成とガラス転移点との関係を知ることができるので、その知見に基づいて容易に製造することができる。
【0041】
前記アクリル系樹脂(B)としては、ガラス転移点が25〜70℃、さらには40〜66℃のアクリル系樹脂であることが好ましい。ガラス転移点がこの範囲にあることにより、本発明の光拡散板用ポリエステルフィルムは接着性、耐ブロッキング性及び透明性に優れたものになる。
【0042】
前記アクリル系樹脂(B)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、アクリルニトリル、β−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸アンモニウムなどの如きアクリル系モノマーの重合体あるいは共重合体、さらには上記モノマーと小割合の、スチレンで代表されるビニールモノマーとの共重合体を挙げることができる。なお、アクリ系樹脂は非架橋型のポリマーである。
【0043】
前記アクリル系樹脂(B)は、塗膜用塗液を水性塗液として調製することの容易さから、水溶性のものであることが好ましい。
【0044】
前記微粒子(C)としては、例えば架橋アクリル系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、メラミン樹脂で代表される有機系粒子、酸化珪素、酸化チタン、タルク、カオリン、酸化アルミニウム、カーボン、炭化珪素で代表される無機系粒子を挙げることができる。微粒子(C)の平均粒径は0.01〜1μm、さらには0.02〜0.08μmであるのが好ましい。
【0045】
前述の共重合ポリエステル樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)および微粒子(C)の割合は、これらの合計量を基準にして、共重合ポリエステル樹脂(A)が20〜80重量%、アクリル系樹脂(B)が10〜50重量%、微粒子(C)が5〜25重量%であることが好ましい。この範囲内であると、光拡散板用ポリエステルフィルムは走行性、接着性、耐ブロッキング性及び透明性に優れたものになる。
【0046】
本発明における光拡散板用ポリエステルフィルムの易接着性塗膜は、上記成分の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、滑り性付与剤、紫外線吸収剤等の一種以上を含むことができる。この塗膜の厚みは0.01〜0.2μm、さらには0.02〜0.12μmであることが好ましい。
【0047】
二軸配向ポリエステルフィルムの表面に易接着性塗膜を設けるには、通常、共重合ポリエステル樹脂(A)及びアクリル系樹脂(B)を溶解または分散し、微粒子(C)を分散した水性分散液(溶液)をポリエステルフィルムの両面に塗付し、乾燥することにより行なうことができる。かかる塗剤をフィルムの両面に塗布する工程は任意に選ぶことができるが、二軸配向ポリエステルフィルムの製造工程内で、縦延伸の後、横延伸の前が好ましい。
【0048】
このようにして形成された塗膜は均一な表面を有し、斑がない。しかも、光拡散材、特にアクリル系樹脂ビーズに対する接着力も強いので、該ビーズを用いての光拡散板の製造に際し、該ビーズを含む光拡散層をフィルム両面に塗設するが、その接着性に優れている。
【0049】
本発明における光拡散板用ポリエステルフィルムは、ヘーズ値が2%未満である必要がある。ヘーズ値が2%を超えると、光拡散板に要求される輝度が得られない。このヘーズ値は、主としてポリエステルフィルム中の不活性粒子の種類、平均粒径、含有量、粒子周辺に生じるボイドの程度等によって変わるので、これらを調整することで所望のヘーズ値を満たすようにするのが好ましい。
【0050】
本発明における光拡散板用ポリエステルフィルムは、さらに、全光線透過率が90%以上である必要がある。この全光線透過率が90%未満では、光拡散板に要求される輝度が得られない。このように、通常の透明グレードのポリエステルフィルムの全光線透過率(88%前後)を超える高い光線透過率を得るためには、上記の低ヘーズ値を得る方法とともに、前記の易接着性塗膜をフィルム両面に塗設することが肝要である。全光線透過率の向上は、易接着性塗膜の反射防止効果と考えられるが、予期しない効果である。
【0051】
本発明の光拡散板用ポリエステルフィルムは、液晶表示装置の光拡散板に有用である。この適用例について以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0052】
図1は液晶表示装置の断面図であり、本発明の光拡散板用ポリエステルフィルムは、光拡散板4の基板として用いる。該光拡散板用ポリエステルフィルムの裏面(光源側)には透明樹脂のアクリル樹脂からなるビーズ、例えば半球状ビーズがほぼ等間隔に接着されている。ビーズは平均粒径が20〜30μmのものが好ましい。このビーズは、導光板5と光拡散板4のスティッキングを防止する作用を担う。スティッキングは部分的密着であり、この部分では光線が十分拡散されないまま透過するので、液晶表示装置の画面全体としては輝度のムラが生じてしまう。本発明のフィルムの表面(液晶パネル側)にも、アクリル樹脂製のビーズ、例えば半球状ビーズが、裏面より密接して接着されており、透過光線を拡散させる作用を担っている。仮に光拡散板4を省略すると、液晶表示装置の画面に輝度ムラが発生し、著しく商品価値を低下させる。本発明の光拡散板用ポリエステルフィルムは、高透明にしてアクリル樹脂製ビーズとの接着力が強く、光拡散板の基板に好適に用いられる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明する。なお、「部」は重量部を意味する。また、各特性値の測定方法は下記の通りである。
【0054】
(1)フィルムの厚み
外付マイクロメータで100点測定し、この平均値を求めてフィルムの厚みとする。
【0055】
(2)ヘーズ値
日本電色工業社製のへーズ測定器(NDH−20)を使用してフィルムのへーズ値を測定する。
【0056】
(3)全光線透過率
日本電色工業社製のへーズ測定器(NDH−20)を使用して、トラップを取り外し、標準白板を取り付け、試料なしの場合の入射光量に対する試料ありの場合の全光線透過量の割合を%で表示する。
【0057】
(4)粒子の一次粒子径
粒子を含有するフィルムを断面方向に厚さ100nmの超薄切片とし、透過電子顕微鏡(日本電子製JEM−1200EX)を用いて、10万倍の倍率で粒子、すなわち凝集粒子(二次粒子)及びそれを構成する一次粒子を写真観察する。この写真にて、個々の一次粒子の面積円相当の直径を画像解析装置を用いて粒子1000個について測定し、平均した粒子直径を一次粒子径とする。なお、粒子種の同定は、SEM−XMA、ICPによる金属元素の定量分析などを使用して行う。
【0058】
(5)粒子の平均粒径
島津製作所製CP―50型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年、頁242〜247参照)。
【0059】
(6)粒子の細孔容積
カンタクローム社製オートソーブ−1を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.98における窒素吸着量から粉体の細孔容積を求める。
【0060】
(7)アクリル樹脂易接着性
フィルムの易接着塗膜上にアクリル樹脂塗剤を乾燥後塗布量を15g/m2となるようにマイヤーバーコートし、80℃、3分乾燥後、アクリル樹脂塗布層の表面にセロテープ(ニチバン製18mm幅)を貼り、急速に剥離したときの剥離状況を目視観察し、以下の基準にて判断する。
○:5%未満剥離(良好)
×:5%以上剥離(不良)
【0061】
なお、上記のアクリル樹脂塗剤の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂主剤(A){溶媒(メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール/トルエンを重量比で25/25/50混合した混合溶媒)に濃度40wt%のアクリル樹脂(メチルメタアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレートがモル比で20/2/1)成分を溶解したもの}と、硬化剤(B)(ヘキサメチレンジイソシアネートをモル比で1)と、帯電防止剤(C)(メチルエチルケトンに濃度70wt%の2−アミノエチルアルキルフォスフェートを溶解したもの)と、希釈剤(D)(メチルエチルケトン/トルエンを重量比で2/1混合したもの)とを、重量比で(A)/(B)/(C)/(D)=15/1/1/3とした塗剤。
【0062】
(8)輝度
トプコン社製のレンズ式輝度計BM−7を用い、図1の光拡散板4の表面の視野角±80°(冷陰極管側を−90°、正面を0°、冷陰極管から最も離れている側を+90°とする)の輝度(cd/m2)を測定し、最も高い輝度値を採用する。
【0063】
(9)加工作業性
光拡散板に加工するに際し、実施例1のフィルムの作業性を良好(○)として、これより劣るものを△、作業が不可能なものを×とした。
【0064】
[実施例1]
メチルテレフタレート96部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン0.038部及び三酸化アンチモン0.041部を夫々反応器に仕込み、攪拌下内温が240℃になるまでメタノールを留出せしめながらエステル交換反応を行い、該エステル交換反応が終了したのちトリメチルホスフェート0.097部を添加した。引き続いて、反応生成物を昇温し、最終的に高真空下280℃の条件で重縮合を行って固有粘度([η])0.64のポリエチレンテレフタレートチップを得た。
【0065】
次に、このポリエチレンテレフタレートチップの一部に平均粒径1.7μmの多孔質シリカ(一次粒子の径0.004μm、細孔容積1.2ml/g)を0.4重量%添加し、170℃で3時間乾燥したのち、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、急冷固化してマスターチツプを得た。
【0066】
ポリマー中の多孔質シリカの濃度が0.008重量%になるように、ポリエチレンテレフタレートチップと上記マスターチップのポリマーをブレンドし、160℃で3時間乾燥したのち、295℃で溶融押出し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめて未延伸フイルムを得た。続いて、該未延伸フイルムを95℃で縦方向に3.5倍に延伸し、次いで下面、更に上面に下記の塗剤を乾燥後の厚みがそれぞれ0.04μmになるように塗布し、さらに110℃で横方向に3.8倍に延伸したのち、230℃で熱処理し、厚みが100μmの二軸配向ポリエステルフイルムを得た。得られたフイルムの特性を表1に示す。
【0067】
次に、得られた二軸配向ポリエステルフィルムを215×290mmに裁断し、その裏面(導光板側)に直径20μm、高さ10μmの半球状アクリルビーズを突起間ピッチ約30μmで一面に接着した。表面にも同寸法の半球状アクリルビーズを突起間ピッチ約21μmで一面に接着した。これを光拡散板として、図1の液晶パネルとレンズシートを取り除いた構造の試験拡散板を作成し、表面の輝度と輝度ムラを測定した。この結果を表1に示す。
【0068】
[塗剤]
テレフタル酸−イソフタル酸−5−Naスルホイソフタル酸(前記化学式(1)の化合物:全ジカルボン酸成分の13モル%を占める)−エチレングリコール−ネオぺンチレングリコール共重合ポリエステル樹脂P(Tg=49℃)を56部、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−アクリル酸−メタクリルアミド−N−メチロールアクリルアミド共重合体S(T g:42℃)を25部、架橋アクリル樹脂フィラー(40nm径)を10部およびエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体を9部の割合で含む4%濃度水性液(塗液)を上記フィルムの両面にロールコーターで逐次塗布した。
【0069】
[実施例2〜5]
実施例1に準じ、表1に示すようにポリエステル、滑剤、塗剤を変更してそれぞれ厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。これらフィルムの特性を表1に示す。
これらフィルムを実施例1と同様の光拡散板とし、その評価をした。これらの結果を表1に示す。
【0070】
なお、塗剤中の共重合ポリエステル樹脂Q、及びアクリル系樹脂Tは次の通りである。
共重合ポリエステル樹脂Q:
2,6−ナフタレンジカルボン酸−イソフタル酸−5−カリウムスルホイソフタル酸(前記式(2)の化合物:全ジカルボン酸の11モル%を占める)−エチレングリコール−ビスフェノールA・エチレンオキシド付加物共重合体(Tg:55℃)
アクリル系樹脂T:
メタアクリル酸メチル−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸ブチル−N−メトキシメチルアクリルアミド−β−ヒドロキシエチルメタアクリレート共重合体(Tg:48℃)
【0071】
[比較例1]
易接着性塗膜を塗設しなかった以外は、実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。アクリルビーズとの接着性がなく、光拡散板に加工することができなかった。
【0072】
[比較例2]
滑剤粒子の板状珪酸アルミニウム(平均粒径0.9μm)を汎用グレード並みの0.08wt%添加する以外は、実施例1と同様にして厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムおよび光拡散板を得た。 ヘーズ値が高く、拡散板の輝度が低く、光拡散板用として不適であった。
【0073】
[比較例3]
ポリエステルにイソフタル酸23mol%共重合ポリエチレンテレフタレートを用い、それに対応して工程の温度条件を変更して厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。軟化温度が低く、光拡散板への加工ができなかった。
【0074】
[比較例4]
フィルムの厚みを25μmとし、延伸倍率を縦方向3.6倍、横方向3.9倍とする以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。フィルムの腰が弱く、光拡散板への加工作業性が悪く、光拡散板用として不適であった。
【0075】
[比較例5]
フィルム厚みを250μmとし、実施例1に準じながら、延伸倍率は縦方向3.2倍、横方向3.3倍に変更して二軸配向ポリエステルフィルムを得た。フィルムの腰が強すぎ、光拡散板への加工作業性が悪い上にヘーズ値が高く、光拡散板用として不適であった。
【0076】
【表1】
【0077】
以上の結果、実施例のフィルムは、本発明の要件を満足している。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、高透明であり、かつ両面のアクリル樹脂に対する接着性に優れ、液晶表示装置の光拡散板の基板として好適なポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の概念の断面図である。
【符号の説明】
1・・・保護ガラス
2・・・液晶パネル
3・・・レンズシート
4・・・光拡散板
5・・・導光板
6・・・白色フィルム
7・・・冷陰極管(1.6 W)
なお、図1では各部材は離れているが、実際は密接している。
Claims (4)
- 厚み50μm以上200μm以下の二軸配向ポリエステルフィルムの両面に易接着性塗膜が塗設されていて、ヘーズ値が2%未満、全光線透過率が90%以上であり、易接着性塗膜が、(A)ガラス転移点が40〜80℃であり、分子中に基−SO 3 M(ここで、Mは−SO 3 と同当量の、金属原子、アンモニウム基または第4級ホスホニウム基を示す)を有するジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分当り8〜20モル%を占める共重合ポリエステル樹脂、(B)ガラス転移点が25〜70℃のアクリル系樹脂及び(C)微粒子を主成分とする塗膜であることを特徴とする光拡散板用ポリエステルフィルム。
- 二軸配向フィルムを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載の光拡散板用ポリエステルフィルム。
- 二軸配向フィルムを構成するポリエステルが平均粒径0.1μm以上3μm以下の多孔質シリカ及び/または板状珪酸アルミニウムを0.001重量%以上0.1重量%以下含有する請求項1または2に記載の光拡散板用ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光拡散板用ポリエステルフィルムの両面に光拡散層が積層されている光拡散板。
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