JP4711366B2 - 止め具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車の内装部品や電装部品などを所定のパネルに固定する止め具の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種止め具として、意匠公報第855669号の類似2に示すものが存する。
該従来の止め具は、自動車の内装部品たるトリムボードを固定するものとして開発されたもので、図5に示す如く、トリムボードを保持する頭部1と、パネルの取付孔に係着する脚部2とから成り、前者の頭部1は、首部3を介して離間する対の保持フランジ4・5とシールフランジ6とを有し、後者の脚部2は、その軸線方向に縦スリット7を介して延びる一対の弾性係止壁8を有して、該各弾性係止壁8の上端縁は上記頭部1のシールフランジ6側に連接され、同下端縁同士はその先端において連接されると共に、各弾性係止壁8の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部9を形成する構成となっている。
【0003】
そして、実際の使用に際しては、図6に示す如く、上記頭部1の保持フランジ4・5間にトリムボードTを保持して、斯かる状態のまま、止め具の脚部2をパネルP側に予め穿設されている取付孔H内に挿入すると、該脚部2の各弾性係止壁8が内側に撓んで取付孔Hを通過して、各自の張出肩部9を取付孔Hの孔縁に係止するので、これにより、トリムボードTをパネルP側に固定することが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、従来の止め具の下では、最終的には、トリムボードTをパネルP側にワンタッチで固定できる利点を有するが、反面、弾性係止壁8とその張出肩部9とを同心円上に位置させた関係で、弾性係止壁8が全体として撓む方向、即ち、一対の弾性係止壁8の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線L方向から見た場合には、各弾性係止壁8の中央部に対応する張出肩部9の係止代Δ1よりも、各弾性係止壁8の両端部に対応する張出肩部9の係止代Δ2の方が大きくなっている。
【0005】
この為、パネルPの取付孔Hが止め具の挿入側にバリを突出しない正ピアス孔のような場合にはそれ程問題とはならないが、特に、現今採用されている取付孔Hが止め具の挿入側にバリを突出する逆ピアス孔のような場合には、取付孔Hに対する挿入時に、上記した係止代Δ2が大きな弾性係止壁8の両端部に対応する張出肩部9がバリにより削り取られてしまうので、これに起因して、取付孔Hに対する引き抜き耐力が著しく低下して、脚部2自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できなくなる恐れが十分に考えられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、斯かる従来止め具の課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、自動車部品を保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、点対称に形成されてその軸線方向に縦スリットを介して延び且つ外周断面が円弧状を呈する一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成した止め具において、上記一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線方向に沿った、弾性係止壁の重心中央部に対応する張出肩部の係止代と弾性係止壁の両端部に対応する張出肩部の係止代とを均等となす構成を採用した。
【0007】
請求項2記載の発明は、自動車部品を保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、点対称に形成されてその軸線方向に縦スリットを介して延び且つ外周断面が円弧状を呈する一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成した止め具において、上記弾性係止壁の半径と張出肩部の半径とを同一寸法に設定して、弾性係止壁の半径中心を一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線上に位置させ、張出肩部の半径中心を弾性係止壁の半径中心とは位置をずらして該線上に位置させる構成を採用した。
【0008】
請求項3記載の発明は、自動車部品を保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、その軸線方向に縦スリットを介して延びる一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成した止め具において、上記弾性係止壁の半径と張出肩部の半径とを同一寸法に設定して、張出肩部の半径中心を一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線上から一側へ偏位させる一方、弾性係止壁の頭部側に連接される一側端部に横方向の切り欠きを設ける構成を採用した。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3を前提として、弾性係止壁の頭部側に連接される他側端部にも横方向の切り欠きを設けて、該他側端部の切り欠きの深さよりも一側端部の切り欠きの深さを大きくする構成を採用した。
【0010】
依って、請求項1乃至請求項2記載の発明にあっては、弾性係止壁の張出肩部の係止代がその全域において平準化される関係で、例え、パネルの取付孔が逆ピアス孔のような場合であっても、当該逆ピアス孔に対する挿入時に、バリに強当たりする部分がなくなるので、弾性係止壁の張出肩部が削り取られることがなくなる。従って、小さな挿入力で、止め具の脚部を取付孔に挿入できることは言うまでもないが、特に、従来の如く、取付孔に対する引き抜き耐力が著しく低下することがなくなるので、脚部自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できる。
【0011】
請求項3記載の発明にあっては、張出肩部の半径中心を一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線上から一側へ偏位させた関係で、その周方向において張出肩部の係止代が不均等となる場合でも、係止代が大きくなる弾性係止壁の頭部側に連接される一側端部に横方向の切り欠きを設けて撓み易くしているので、張出肩部の全域における撓み剛性を平準化することが可能となる。従って、取付孔が逆ピアス孔であっても、小さな挿入力で、止め具の脚部を取付孔に挿入できることは言うまでもないが、やはり、従来の如く、取付孔に対する引き抜き耐力が著しく低下することがなくなるので、脚部自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できる。
【0012】
請求項4記載の発明にあっては、これに加えて、係止代が小さくなる弾性係止壁の他側端部にも切り欠きを設けることは、全体として見ると、引き抜き耐力が低下する恐れはあるが、弾性係止壁の一側端部側のみに切り欠きを設けて、当該切り欠きを大きくしすぎると、弾性係止壁の一側端部が取付孔の奥側に入り込んで外せなくなる等の問題が生じるので、切り欠きを両側に分散して、且つ、一側端部の切り欠きの深さを他側端部のそれよりも大きくすることによって、総合的に優れた止め具を提供できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する各好適な実施の形態に基づいて詳述すれば、各実施の形態に係る止め具は、いずれも、合成樹脂の一体成形品で、具体的には図示しないが、従来と同様に、トリムボードを保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、その軸線方向に縦スリットを介して延びる一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成する構成を前提とする。
【0014】
そして、第一実施の形態にあっては、図1に示す如く、一対の弾性係止壁18の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線L方向から見て、弾性係止壁18の重心中央部に対応する張出肩部19の係止代Δ1(0.5mm)と弾性係止壁18の両端部に対応する張出肩部19の係止代Δ2(0.5mm)とを均等となしたことを特徴とするものである。このことは、結果的には、弾性係止壁18の半径Rと張出肩部19の半径rとを同一寸法に設定して、張出肩部19の半径中心を一対の弾性係止壁18の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線L上に位置させる構成として置き変えることができる。
【0015】
依って、第一実施の形態に係る止め具の下では、弾性係止壁18の張出肩部19の係止代がその全域において平準化される関係で、例え、パネルの取付孔が逆ピアス孔のような場合であっても、当該逆ピアス孔に対する挿入時に、バリに強当たりする部分がなくなるので、弾性係止壁18の張出肩部19が削り取られることがなくなる。従って、小さな挿入力で、止め具の脚部を取付孔に挿入できることは言うまでもないが、特に、従来の如く、取付孔に対する引き抜き耐力が著しく低下することがなくなるので、脚部自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できる。このことは、正ピアス孔を対象とした場合と逆ピアス孔を対象とした場合の荷重を測定した図2の結果からも明らかである。尚、この図2の表におけるφはパネル取付孔の直径、tはパネルの板厚とする。
【0016】
次に、第二実施の形態に係る止め具を説明すると、該第二実施の形態のものは、図3に示す如く、弾性係止壁18の半径Rと張出肩部19の半径rとを同一寸法に設定する点では、第一実施の形態と同様であるが、張出肩部19の半径r中心を一対の弾性係止壁18の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線L上から一側へ偏位させる一方、弾性係止壁18の頭部側に連接される一側端部に横方向の切り欠き20aを設けたことを特徴とするものである。
【0017】
依って、第二実施の形態に係る止め具の下では、張出肩部19の半径r中心を一対の弾性係止壁18の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線L上から一側へ偏位させた関係で、張出肩部19の係止代Δ3(0.591mm)・Δ4(0.548mm)・Δ5(0.489mm)・Δ6(0.414mm)・Δ7(0.318mm)が順に不均等となるが、係止代Δ3が大きくなる弾性係止壁18の頭部側に連接される一側端部に横方向の切り欠き20aを設けて撓み易くしているので、張出肩部19の全域における撓み剛性を平準化することが可能となる。従って、取付孔が逆ピアス孔であっても、小さな挿入力で、止め具の脚部を取付孔に挿入できることは言うまでもないが、やはり、従来の如く、取付孔に対する引き抜き耐力が著しく低下することがないので、脚部自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できる。
【0018】
最後に、第三実施の形態に係る止め具を説明すると、該第三実施の形態のものは、上記した第二実施の形態をそのまま踏襲するものであるが、これに加えて、図4に示す如く、弾性係止壁18の頭部側に連接される他側端部にも横方向の切り欠き20bを設けて、該他側端部の切り欠き20bの深さよりも一側端部の切り欠き20aの深さを大きくしたことを特徴とするものである。
【0019】
依って、第三実施の形態に係る止め具の下では、係止代が小さくなる弾性係止壁18の他側端部にも切り欠き20bを設けるので、全体として見ると、引き抜き耐力が低下する恐れはあるが、弾性係止壁18の一側端部側のみに切り欠き20aを設けて、当該切り欠き20aを大きくしすぎると、弾性係止壁18の一側端部が取付孔の奥側に入り込んで外せなくなる等の問題が生じるので、切り欠き20a・20bを両側に分散して、且つ、一側端部の切り欠き20aの深さを他側端部のそれよりも大きくすることによって、総合的に優れた止め具を提供することが可能となる。
【0020】
【発明の効果】
以上の如く、本発明は、上記構成の採用により、請求項1乃至請求項2の下では、弾性係止壁の張出肩部の係止代がその全域において平準化される関係で、例え、パネルの取付孔が逆ピアス孔のような場合であっても、当該逆ピアス孔に対する挿入時に、バリに強当たりする部分がなくなるので、弾性係止壁の張出肩部が削り取られることがなくなる。従って、小さな挿入力で、止め具の脚部を取付孔に挿入できることは言うまでもないが、特に、従来の如く、取付孔に対する引き抜き耐力が著しく低下することがなくなるので、脚部自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できる。
【0021】
請求項3の下では、張出肩部の半径中心を一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線上から一側へ偏位させた関係で、その周方向において張出肩部の係止代が不均等となる場合でも、係止代が大きくなる弾性係止壁の頭部側に連接される一側端部に横方向の切り欠きを設けて撓み易くしているので、張出肩部の全域における撓み剛性を平準化することが可能となる。従って、取付孔が逆ピアス孔であっても、小さな挿入力で、止め具の脚部を取付孔に挿入できることは言うまでもないが、やはり、従来の如く、取付孔に対する引き抜き耐力が著しく低下することがなくなるので、脚部自体の取付孔に対する確実・強固な係着状態が保障できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施の形態に係る止め具の端面図である。
【図2】(A)は正ピアス孔を対象とした荷重測定データー、(B)は逆ピアス孔を対象とした荷重測定データーである。
【図3】本発明の第二実施の形態に係る止め具の端面図である。
【図4】本発明の第三実施の形態に係る止め具の端面図である。
【図5】(A)は従来の止め具を示す正面図、(B)は図5のAのA−A線端面図である。
【図6】従来の止め具を用いてトリムボードをパネルに固定した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
18 弾性係止壁
19 張出肩部
20a 切り欠き
20b 切り欠き
L 一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線
R 弾性係止壁の半径
r 張出肩部の半径
Claims (4)
- 自動車部品を保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、点対称に形成されてその軸線方向に縦スリットを介して延び且つ外周断面が円弧状を呈する一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成した止め具において、上記一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線方向に沿った、弾性係止壁の重心中央部に対応する張出肩部の係止代と弾性係止壁の両端部に対応する張出肩部の係止代とを均等となしたことを特徴とする止め具。
- 自動車部品を保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、点対称に形成されてその軸線方向に縦スリットを介して延び且つ外周断面が円弧状を呈する一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成した止め具において、上記弾性係止壁の半径と張出肩部の半径とを同一寸法に設定して、弾性係止壁の半径中心を一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線上に位置させ、張出肩部の半径中心を弾性係止壁の半径中心とは位置をずらして該線上に位置させたことを特徴とする止め具。
- 自動車部品を保持する頭部と、パネルの取付孔に係着する脚部とから成り、脚部は、その軸線方向に縦スリットを介して延びる一対の弾性係止壁を有して、該各弾性係止壁の上端縁を頭部側に連接し、同下端縁同士をその先端において連接すると共に、各弾性係止壁の上部外周面にパネルの取付孔の孔縁に係止する張出肩部を形成した止め具において、上記弾性係止壁の半径と張出肩部の半径とを同一寸法に設定して、張出肩部の半径中心を一対の弾性係止壁の取付孔係止位置における断面の重心同士を結ぶ線上から一側へ偏位させる一方、弾性係止壁の頭部側に連接される一側端部に横方向の切り欠きを設けたことを特徴とする止め具。
- 弾性係止壁の頭部側に連接される他側端部にも横方向の切り欠きを設けて、該他側端部の切り欠きの深さよりも一側端部の切り欠きの深さを大きくしたことを特徴とする請求項3記載の止め具。
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