以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
図1は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機の外観を示す斜視図である。図2は、ドラム式洗濯機の側方からの縦断面図である。図1に示すように、ドラム式洗濯機1は、その外殻を構成する外箱2を備えており、外箱2の上部には、操作キーや表示部を有する操作パネル3と、外ドア6と内ドア20とを一体開放するためのドア開ボタン8とが設けられている。操作パネル3の裏側には、図2に示すように、制御部4が配置されており、使用者の設定操作または予め設定されたプログラムに従って、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の各工程を連続または単独で実行する。
外箱2の前面(図2の左側)には、図2に示すように、円形の外箱開口部5が形成されており、図1に示すように、外箱開口部5を閉蓋する円形の外ドア6が設けられ、外ドア6の右端側には外ドア6の開閉時に把持するための外ハンドル7が設けられている。外箱2の内部には、有底円筒形の水槽18が、奥側(図2の右側)が下方となるように水平に対して10〜20°程度傾斜させて、複数のサスペンション41にて弾性支持されて設けられている。水槽18には、その円筒軸の前方側(図2の左側)の面に、外箱開口部5に対向する円形の水槽開口部19が形成されており、水槽開口部19を開閉自在に閉蓋する円形の内ドア20が取り付けられている。
内ドア20は、外ドア6と対向して配置され、外ドア6の内面側にはレバー機構60が設けられ、内ドア20の外面側にはマグネット部80が設けられている。内ドア20には、ドラム32の内方へ向けて突出させた突出部42が設けられ、水槽開口部19の内周面には、ゴムなどの弾性材料により構成されるシール部材43が設けられている。内ドア20の閉塞状態では、内ドア20の突出部42および内ドア20背面側の外周端部がシール部材43に当接して、水槽開口部19を水密に保持している。
水槽18の内部には、図2に示すように、有底筒状のドラム32が、ベアリング37によって回転可能に支持されている。水槽18の底部には、ドラム32を回転駆動させるモータ35がドラム32に連結して設けられており、モータケース36によりその外周を覆われている。ドラム32の周壁には、内外を連通する多数の小孔33と、周方向120°間隔でバッフル34とが設けられている。また、ドラム32には、水槽開口部19と対向する円形のドラム開口部38が形成されており、その外周には、断面形状略L形状の絞り部39が形成され、さらにその外周には、流体バランサ40が設けられている。
外箱2の後方上部には、図示しない水道が接続される給水入口44が設けられており、水槽18の内部と給水経路46を介して連通されている。給水経路46の途中には、給水弁45と、図示しない洗剤ケースとが設けられている。外箱2の下部には、水槽18の底面に接続する排水ダクト48と、排水ダクト48と外箱2の外部とを連通する排水ホース49と、制御部4からの指示に基づき開閉する排水弁47と、糸くずなどを捕集するリントフィルタ52とが設けられている。また、排水ダクト48には、洗濯運転中の排水ダクト48の水を水槽18に再供給する循環ポンプ50と循環ダクト51とがさらに設けられている。また、外箱2の内部には、洗濯物を乾燥させる周知の図示しない乾燥ユニットが設けられている。
図3は、外ドアと内ドアとが互いに離隔された状態での外ドアおよび内ドア周辺の模式断面図である。図3に示すように、外ドア6には、開閉時の回動の支軸である回動軸99と、回動軸99とは反対側の右端部付近に設けられるラッチ11と、レバー本体61とが取り付けられている。外箱2の内側には、ラッチ座16および壁部17が取り付けられており、これらとラッチ11とが係合することによって、外ドア6は閉塞状態となる。なお、ラッチ11、ラッチ座16および壁部17は、外ドアラッチ機構10に含まれる。
内ドア20には、開閉時の揺動の支点となるヒンジ部90と、その反対側の右端部付近に設けられる係合片28とが取り付けられている。水槽18の前方側には、ラッチ24が取り付けられており、これと係合片28とが係合することで、内ドア20が閉塞状態となる。なお、ラッチ24および係合片28は、内ドアラッチ機構23に含まれる。ヒンジ部90は、ヒンジ本体91と、内ドア20の開閉時に第一の回転中心となる第一軸92および第二の回転中心となる第二軸93と、ヒンジ本体91を内ドア20に連結する連結部94と、ヒンジ部90を水槽18の前面に固定する固定具96とを含んでいる。また、外ドア6には、ヒンジ部90と対向する部分に凹部98が設けられている。
図3の状態では、レバー本体61と内ドア20とは互いに離隔しているので、この状態で水槽18が異常振動しても、外ドア6と内ドア20との間で水槽18の振動が直接外箱2へ伝達されない。したがって、ドラム式洗濯機1の運転中には図3の状態となるようにすることにより、洗濯機全体の振動を抑制しそれによる騒音の発生も抑制した、ドラム式洗濯機1を提供できる。
図4は、レバー機構の構成を示す模式断面図である。図5は、図4に示す矢印V方向から見たレバー機構の模式図である。図4および図5を参照して、レバー機構60の構成を説明する。図4および図5に示すように、レバー機構60は、回動可能に設けられたレバー本体61と、レバー本体61の回動の駆動力源であるモータ64を備える。
レバー本体61の一方の面には、後述する内ドア20側の磁着部21が磁着する磁着面62が形成されており、お互いに磁着した状態を維持しながら磁着部21が磁着面62上を摺動可能なように、所定の長さを有する平滑な面として形成されている。ここで、磁着面62は、磁性体材料を表面として形成してもよく、磁着部21との磁着を妨げない程度に表面を樹脂等の滑りやすく傷のつきにくい材料で覆ってもよい。また、レバー本体61の磁着面62の裏面63には、リンクレバー67,69,72と、ストッパ76とが配置されている。
モータ64には、モータ64にて往復駆動されるアクチュエータ65が取り付けられており、アクチュエータ65はリンク部66を介してリンクレバー67の一端と連結している。リンクレバー67の一端の他端は、リンク部68を介してリンクレバー69の一端と連結し、リンクレバー69の他端は、リンク部71を介してリンクレバー72の一端と連結している。リンクレバー67,72は、アクチュエータ65の移動(図5の左右)方向に沿ってスライド移動可能に設けられ、リンクレバー69は、支軸70回りに回動可能に設けられている。また、リンクレバー67には、裏面63に向かって立設するように支持部73が一体成形されている。ストッパ76は、モータ64の駆動力にて移動可能に設けられている。図3および図4の状態においては、ストッパ76はラッチ11に向かって突出して係合している。
図6は、外ドア用のラッチの側面図である。図6に示すように、ラッチ11は、回動軸である軸部13と、ラッチ座16および壁部17と係合する爪部12と、ストッパ76と係合することでラッチ11の回動を規制する係止部14とを有する。図3〜図5の状態では、ラッチ11は、ストッパ76と係止部14とが係合したロック状態であるので、ドラム式洗濯機1の運転中は、外ドア6は開放できない。この状態では、誤ってドア開ボタン8を押下しても外ドア6が開かないため、ドラム式洗濯機1の運転中の外ドア6の開放による安全面等の種々の不具合を防止することができる。
図7は、レバー本体の斜視図である。図7に示すように、レバー本体61の裏面63には、補強用の複数のリブ61cと、突起部74とが形成されている。レバー本体61の側面には、レバー機構60にレバー本体61を回動可能に支持する支持突起61aと、リンクレバー72の他端と連結する結合突起61bとが形成されている。突起部74は、その先端に表面が湾曲した湾曲面74aを有し、支持部73が湾曲面74a上を摺動することにより、レバー本体61は支持突起61a回りに回動する。また、一対の支持突起61aの一方には、レバー本体61を付勢する付勢手段であるスプリング75が取り付けられている。磁着面62を磁着部21から離隔させる方向に、スプリング75は、レバー本体61を付勢している。
図8は、図4の状態からレバー本体を回動させた後のレバー機構を示す模式断面図である。図9は、図8の矢印IX方向から見たレバー機構の模式図である。すなわち、モータ64を駆動したことにより、アクチュエータ65は図中の左方向へ移動し、これに伴い、リンクレバー67は図中の左方向へスライド移動し、リンクレバー69は支軸70回りに回転して、リンクレバー72は図中の右方向へスライド移動している。
リンクレバー72の図中の右方向への移動に伴い、結合突起61bが移動してレバー本体61が磁着部21へ向けて回動する。それと同時に支持部73は、リンクレバー67とともに図中の左方向へ移動する。レバー本体61と支持部73との移動に伴い、図3〜図5の状態では遊嵌凹部63aと対向する位置にあった支持部73が、突起部74の湾曲面74a上を摺動し、支持部73と突起部74とが係合することにより、レバー本体61は支持部73に支持される。また、モータ64の駆動に伴い、ストッパ76はモータ64の内部に格納され、係止部14との係合が解除される。それに伴い、ラッチ11は、軸部13回りに回転できるロック解除状態となり、外ドア6の開閉が可能となる。
製品バラツキや洗濯物量の多少による水槽18の変位等により、外箱2の内部における内ドア20の位置は必ずしも一定ではない。このため、モータ64を駆動力源として、磁着面62と磁着部21とが当接するまでレバー本体61が回転駆動するようにすれば、内ドア20と外ドア6とを確実に連結させることができ、使用上好ましい。また、後述するように、外ドアラッチ機構10および内ドアラッチ機構23には、その係合状態を検出するセンサを設けている。外ドアラッチ機構10および内ドアラッチ機構23の両方の係合を検知した後に、モータ64でレバー本体61を駆動して内ドア20と外ドア6との連結を解除させるのが、安全上好ましい。これらの観点から、電動アクチュエータであるモータ64によってレバー本体61を駆動させる構成とするのが望ましい。
図10は、レバー本体が回動した後の外ドアおよび内ドア周辺の模式断面図である。図10に示すように、レバー本体61は、図中反時計方向へのレバー本体61の回動により、磁着部21が磁着面62に当接し、互いの磁力により、内ドア20と外ドア6とは一体開閉可能に連結されている。そのため、外ハンドル7による開放操作によって、外ドア6と内ドア20との両方を開けることができ、また、外ドア6の閉塞操作によって、外ドア6と内ドア20との両方を閉めることができる。
図11は、マグネット部を側方から見た模式断面図である。図12は、図11中の矢印XII方向から見たマグネット部の模式図である。図11および図12に示すように、マグネット部80は、外殻を構成するケース81と、磁着面62と当接するスライダー82と、ケース81の内部に保持されるマグネット83と、裏蓋84とを備える。スライダー82は、マグネット83と磁着面62との間に形成されており、磁着面62とスライダー82の摺動による相互の傷付きを抑えている。裏蓋84の係止爪部84aが内ドア20の取付部と係合して、磁着部21が構成される。
ここで、マグネット83は、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石や他の任意の永久磁石を用いてもよい。また、機械的強度の向上や耐食性の向上のため、マグネット83には、ニッケルめっきやエポキシ樹脂塗布などの表面処理が施されていてもよい。また、マグネット部80としては、電磁石を用いてもよい。また、スライダー82は、磁着面62と当接して摺動するため、耐磨耗性に優れた材料で形成するのが好ましい。また、磁着面62を磁性体を有する金属材料(たとえば、フェライト系ステンレス鋼であるJIS SUS430)で形成する場合、磁着面62への傷付き防止のために、スライダー82は樹脂材料、たとえば、高耐摩耗性を有するPOM(ポリオキシメチレン)樹脂でスライダー82を形成するのが好ましい。
図13は、外ドアラッチ機構の全体構成を示す模式図である。図13に示すように、外ドアラッチ機構10は、ラッチ11と、ラッチ座16および壁部17を含んで構成される。図14は、内ドアラッチ機構の全体構成を示す模式図である。図14に示すように、内ドアラッチ機構23は、内ドア20に取り付けられた可動部27と、水槽18に取り付けられた固定部26とを含んで構成される。可動部27は、可動部27から固定部26へ向かって突出して形成される係合片28と、固定部26と対向する面の一部を凹ませた挿通穴30とを有する。固定部26は、ラッチ24と、挿通部29とを有する。ラッチ24は、係合片28が固定部26に近接すると、係合片28に形成された係合孔28aと係合し、挿通部29は挿通穴30に挿通される。ラッチ24は、係合孔28aに係合する爪部24aと、係合片28の先端部と当接する腕部24bと、ラッチ24の回転軸である軸部25とを有する。
図15は、外ドアラッチ機構および内ドアラッチ機構を連結する連結機構の概略を示す模式図である。図15に示すように、ドア開ボタン8と外ドアラッチ機構10とは、ワイヤ9aによって、外ドアラッチ機構10と内ドアラッチ機構23とは、ワイヤ9aと異なる他のワイヤとしてのワイヤ9bによって連結されている。ドア開ボタン8を押下する操作を行なうと、図15中の矢印に示すように、ワイヤ9aが上方に向けて(外ドアラッチ機構10の設置位置からドア開ボタン8の設置位置へ向かう方向)引っ張られ、外ドアラッチ機構10の一部が引っ張られて上方に移動し、さらに、途中で張力の作用する向きを変えられたワイヤ9bが引っ張られるため、内ドアラッチ機構23も引っ張られて、内ドアラッチ機構23の一部も移動する。
以上のような構成を有する外ドアラッチ機構10および内ドアラッチ機構23の動作について説明する。図16〜図18は、外ドアラッチ機構の係合が外れる過程について示す模式断面図である。図16に示すように、ラッチ11は、その爪部12が、外箱2に固定された壁部17に形成される貫通孔17aを貫通し、壁部17に対して相対的に移動可能なラッチ座16の開口部16aから内部に挿通されている。図16の状態において、壁部17の一部は、開口部16aに対向し、この壁部17の一部と爪部12とが対向することにより、この壁部17の一部と爪部12とが係合して、外ドアラッチ機構10が、外ドア6を閉塞状態に保持する。
図16の状態で、ドア開ボタン8が押下されると、ワイヤ9aを介して引張力が作用し、ラッチ座16が壁部17と爪部12の対向面積が小さくなる方向へ移動する。この状態を図17に示す。図17では、図中の直線矢印に示すようにラッチ座16が図中の上方向に移動し、ラッチ11は図中の曲線矢印に示すように軸部13回りに反時計回り方向に回転している。さらにドア開ボタン8を押下した状態を図18に示す。図18では、図中の直線矢印に示すようにラッチ座16が図中の上方向にさらに移動し、ラッチ11は図中の曲線矢印に示すように軸部13回りに反時計回り方向にさらに回転している。その結果、壁部17と爪部12との対向は解除、すなわち、爪部12と壁部17との係合はなくなり、外ドア6のロック状態が解除される。図18の状態から、外ドア6の開放方向(外ドア6が壁部17から離れる方向)に外ドア6が移動すると、ラッチ11はラッチ座16および壁部17から外れ、外ドア6は自由に開けられ得る。
図19は、内ドアラッチ機構のラッチの係合状態を示す模式断面図である。図19では、爪部24aは、係合片28に形成された係合孔28aの内部に入り込んだ係合状態であり、内ドア20が固定部26に固定されるため、内ドア20の閉塞状態を維持したロック状態となる。また、図19に示すように、軸部25には、ラッチ24を図19中の時計回り方向に付勢する付勢手段としてのスプリング25aが設置されている。このスプリング25aの付勢方向には、腕部24bに当接して回動を規制する保持腕部31が設けられており、ラッチ24と係合片28との係合状態を維持する。
図20は、保持腕部を移動させるワイヤ機構の模式図である。図20に示すように、保持腕部31には、ワイヤ9bが掛けられるピン31aが部材表面から突起して設けられている。図15を参照して説明したように、ドア開ボタン8が押下されるとワイヤ9bに張力が発生するため、ピン31aに図20中の上方向への引張力が作用し、保持腕部31が図20中の上方向に移動する。
図21は、内ドアラッチ機構のラッチの解除状態を示す模式断面図である。上述したドア開ボタン8の押下に伴って保持腕部31が移動して、腕部24bとの接触状態が解除されると、ラッチ24が軸部25回りに時計回りに回動して、爪部24aは係合孔28aの外部へと外れた係合解除状態となり、係合片28を含む可動部27が自由に移動できる、ロック解除状態となる。このラッチ24の回動によって、腕部24bが図21に示す左方向に係合片28を押圧するので、係合片28は、図21に示す左方向(内ドア20が開く方向)に付勢される。
図22は、ラッチ機構の係合状態が解除された後の外ドアおよび内ドア周辺の模式断面図である。図22に示す状態で、係合片28が腕部24bから押されることにより、外ドア6と内ドア20とは、一体となって開く方向に付勢される。レバー本体61の回動に伴い、ストッパ76によるラッチ11のロック状態が解除されるので、その後のドア開ボタン8の押下により、外ドアラッチ機構10の係合状態が解除され、続いて内ドアラッチ機構23の係合状態が解除されることによって、外ドア6と内ドア20とが一体として開く。つまり、ドア開ボタン8を押下する一操作によって、外ドア6および内ドア20の両方ともにわずかに開いた微開状態となる。
この微開状態において外ドア6および内ドア20が閉塞状態から移動した開放角度は、任意の角度であればよい。ただし、広角にドアを開放すると使用者にぶつかる等の不具合が発生する可能性があるため、たとえば10°以上30°以下の範囲で開放角度を設定すればよい。この状態から外ハンドル7を把持して外ドア6を開放すれば、容易に外ドア6および内ドア20の両方を開けることが可能となる。また、外ドア6と内ドア20とが一体で開いた状態から、前面側から外ドア6を押して、外ドア6を外箱2へ向かって移動させる操作によって、外ドア6と内ドア20との両方を閉めることが可能となる。
なお、内ドア20と外ドア6との両方が開いた後に、ドア開ボタン8から手を離して押下解除状態とすると、ワイヤ9aに作用していた張力は解除され、ラッチ座16および壁部17は図18の状態から図16の状態へ戻って、爪部12が壁部17と係合可能となる。ここで、外ドア6を閉めると、外ドアラッチ機構10は係合状態となる。また、ワイヤ9bに作用する張力も解除されるので、保持腕部31は図21の状態から下方へ移動し、屈曲部24cに当接する。ここで、ラッチ24はスプリング25aの付勢力により回動状態で保持されているので、保持腕部31は、屈曲部24cと接触した状態で支持される。その後、内ドア20が閉められると、係合片28から腕部24bに対して図21に示す右方向へ向かう力が加えられるため、ラッチ24が軸部25回りに反時計回りに回転し、図19の状態に戻って、内ドアラッチ機構23は係合状態となる。
ここで、製品ばらつき等によって、水槽18が外箱2内で後方に変位してしまうと、本来、内ドアラッチ機構23が係合状態となる所定位置まで内ドア20を移動させても、内ドアラッチ機構23が係合状態にならない可能性がある。そのため外ドア6は、本実施の形態のように、上記所定位置よりも内ドア20を閉める方向に移動可能とされているのが望ましい。具体的には、図16を参照して、ラッチ座16内部に入り込んだラッチ11の図中右側の頭部11a(図6参照)の先端面とそれと対向するラッチ座16の面との間には隙間G1がある。ラッチ11の図中上側の爪部の突出側とは反対の面においても同様に、それと対向するラッチ座16の面との間に隙間G2が存在する。これにより、外ドア6を壁部17に近接させる方向に外ドア6をさらに移動させると、外ドア6と一体化されている内ドア20も、内ドア20が閉まる方向に移動させることができる。
また、内ドア20と外ドア6とを確実に一体で開けるためには、外ドアラッチ機構10の係合状態が解除された以降に、内ドアラッチ機構23の係合状態が解除される必要がある。そのため、外ドアラッチ機構10の係合状態の解除に必要なワイヤ9aの引っ張り移動長さ(これをストロークと称する)が、内ドアラッチ機構23の係合状態の解除に必要なワイヤ9bのストロークよりも、小さく設定されている必要がある。たとえば、内ドアラッチ機構23の係合を解除するためのワイヤ9bのストロークを10mmと設定した場合、外ドアラッチ機構10の係合を解除するためのワイヤ9aのストロークを、それより小さい5mmと設定することにより、内ドア20と外ドア6との両方がわずかに開けられた微開状態を確実に得ることができる。
次に、内ドア20の開閉時に用いられるヒンジ部90について説明する。図23は、ヒンジ部の構成を示す斜視図である。図24は、ヒンジ部の正面図である。図25は、ヒンジ部の側面図である。図26は、ヒンジ部の平面図である。
ヒンジ部90は、図26に示すように、概略板形状に形成された連結体としてのヒンジ本体91の一方の端部に第一軸92が、他方の端部に第一軸92と軸線方向が平行な第二軸93が設けられており、かつ、第一軸92には固定具96が第一軸92周りに相対回動可能に、第二軸93には連結部94が第二軸93周りに相対回動可能に取り付られている。固定具96は、水槽18の前面外側に取り付け固定され、連結部94は、内ドア20の背面に取り付けられている。すなわち、内ドア20は、第一軸92および第二軸93によって、水槽18に対して回動可能に支持されている。また、ヒンジ本体91には、複数のリブ95がヒンジ本体91の表面から突起して形成されており、内ドア20を支持するために十分な強度が確保されている。
図27は、内ドア20が閉じられた状態を示すヒンジ部の断面図である。ヒンジ本体91は、図27に示す断面形状が直線状の平板91aと、断面形状が曲線状の曲板91bとを含む。平板91aは、固定具96に対向するように配置されている。曲板91bは、固定具96から離れる方向(水槽18の前面から前方側に離れる向き)に曲げられており、水槽18の前面に対して凸形状に湾曲するように配置されている。また、ヒンジ本体91の固定具96に対向する側の面には、固定具96側に突出して当接するように弾性体97が取り付けられている。そのため、内ドア20が閉められるときのヒンジ本体91と固定具96との衝突が防止され、ヒンジ本体91と固定具96とのいずれか一方の破損や変形等の不具合の発生が抑制されている。ここで、弾性体97としては、たとえばゴムやばねなどの周知の弾性材料を適用することができる。
図28は、内ドア20が開けられた状態を示すヒンジ部の断面図である。ヒンジ本体91が第一軸92回りに回動する範囲は、第一軸92よりも水槽18の外側の範囲に限られており、ヒンジ部90を回動させるためのスペースは、水槽18の前方の外部のみに確保されていればよい。換言すると、水槽18の内側には、ヒンジ部90を移動させるためのスペースを考慮する必要はない。そのため、ドラム32を、水槽18の前端部まで詰めて配置することができるので、製品奥行きを小さく抑えることが可能となる。
以上の構成を備えるヒンジ部90を用いて、ドラム式洗濯機1の内ドア20が開く態様について、以下説明する。図29は、外ドアが45°開状態におけるドラム式洗濯機の斜視図である。図30は、外ドアが45°開状態における、外ドアおよび内ドア周辺の模式断面図である。図29および図30に示す45°開状態に至るまでは、内ドア20は、主に第一軸92回りに回動する。第一軸92回りにヒンジ本体91が回動すると、内ドア20および第二軸93を水槽18の前方側へ向けて移動し、第二軸93と回動軸99とがドラム式洗濯機1の前後方向においてほぼ同じ位置の状態となる。第一軸92回りの回動と同時に内ドア20は、第二軸93回りにも回動して外ドア6と内ドア20との略平行状態を維持している。このとき、磁着部21は、磁着面62に磁着した状態で磁着面62上を摺動し、外ドア6と内ドア20とが一体の状態で開放される。ここで、磁着面62は平滑な面で形成されており、磁着部21は磁着面62上を滑らかに摺動するので、より確実に内ドア20と外ドア6とが一体の状態で開閉させることができる。
図31は、外ドアが全開状態におけるドラム式洗濯機の斜視図である。図32は、外ドアが全開状態における、外ドアおよび内ドア周辺の模式断面図である。内ドア20は、45°開状態から図31および図32に示す全開状態に至るまでは、主に第二軸93回りに回動することによって開けられる。このとき、磁着部21は、磁着面62に磁着した状態で磁着面62上をさらに摺動し、内ドア20と外ドア6とが一体の状態で開放される。このように、内ドア20が、第一軸92および第二軸93の複数の回転軸を有するヒンジ部90にて水槽18に対して回動するので、外ドア6と内ドア20とを容易に一体として開けることが可能となる。
逆に、外ドア6と内ドア20とが一体として開けている状態から、外ドア6を前面側から押して、外ドア6を外箱2へ向かって移動させる操作によって、外ドア6と内ドア20とを容易に一体として閉めることが可能となる。つまり、本実施の形態のドラム式洗濯機1では、1ドア方式のドラム式洗濯機と同様の開閉操作によって、外ドア6と内ドア20との両方を開閉することができる。
外ドアおよび内ドアが用いられるドラム式洗濯機において、内ドアを、回転軸が一つのヒンジ機構によって水槽に支持していた場合、内ドアを一定の角度開放させるためには、外ドアヒンジを外箱側面側寄りにまたは内ドアヒンジを外箱左右方向中央寄りに形成する必要があった。すなわち、外ドアを大きくまたは内ドアを小さくする必要があった。内ドアを小さくすると、ドラム内への洗濯物の出し入れ作業性が低下し、外ドアを大きくすると、狭隘なスペースでは外ドアを全開にできない、などの問題が生じる。本実施の形態のドラム式洗濯機1では、回転軸を複数有するヒンジ部90を用いて、内ドア20を立体的に回動させるので、内ドア20の小径化や外ドア6の大径化の問題を回避できる。
図33は、ドラム式洗濯機のドアが開放される過程を示す流れ図である。以下、図33を参照して、本実施の形態のドラム式洗濯機1のドアが開放される手順について、順を追って説明する。なお、本実施の形態のドラム式洗濯機1は、運転終了後に、レバー機構60が移動して内ドア20と外ドア6とを一体化させるとともに、ラッチ11に対するロックを解除させるように制御されている。まず、使用者は、ドラム式洗濯機1が運転中であるか否かを判断し(S101)、運転中であれば、操作パネル3に設けられた一時停止ボタンを押下して(S102)、ドラム式洗濯機1の運転を一時停止させる。この状態で、操作パネル3に設けられたロック解除ボタンを押下すると(S103)、図3〜図10を参照して説明したように、モータ64が作動し、レバー本体61が移動して内ドア20と外ドア6とは一体化されるとともに、ストッパ76が移動してラッチ11の回転を規制するロックが解除される(S104)。
一方、工程(S101)でドラム式洗濯機1が運転中でない、または工程(S104)の状態で、使用者がドア開ボタン8を押下すると(S105)、図13〜図22を参照して説明したように、ワイヤ9a,9bが移動して(S106)、外ドアラッチ機構10のラッチ11の係合状態が解除され(S107)、続いて内ドアラッチ機構23のラッチ24の係合状態が解除される(S108)。ここで、スプリング25aの弾性力により腕部24bが係合片28を押圧し、内ドア20に開放力が作用すると、一体化した内ドア20および外ドア6が、図22に示す微開状態となる(S109)。そして、使用者がドア開ボタン8の押下をやめると(S110)、ワイヤ9a,9bは元の位置に復帰し(S111)、使用者が外ハンドル7を操作すると、内ドア20および外ドア6は一体として回動する(S112)。
図34は、ドラム式洗濯機のドアが閉塞される過程を示す流れ図である。以下、図34を参照して、本実施の形態のドラム式洗濯機1のドアが閉塞される手順について、順を追って説明する。まず、外ドア6および内ドア20の両方が開けられた状態で、使用者は、ドラム32の内部に洗濯物を投入し(S201)、外ドア6を回動操作してドアを閉める(S202)。ドアを開けるときと同様に、ドアを閉めるときにも、内ドア20および外ドア6は一体として回動する。外ドア6を閉めていくと、内ドアラッチ機構23(S203)と、外ドアラッチ機構10とが係合状態となる(S204)。
この状態で、操作パネル3に設けられた洗濯開始ボタンを操作すると(S205)、外ドアラッチ機構10のラッチ11の係合状態を検出するセンサと内ドアラッチ機構23のラッチ24の係合状態を検出するセンサがいずれも係合状態であるか否かを検出する(S206)。このとき、ラッチ11,24のいずれか一方または両方の係合状態が異常であれば、ドラム式洗濯機1を一時停止状態とし、表示や音で使用者に報知する。
ラッチ11,24の両方が係合状態が正常であれば、レバー本体61を密着状態から乖離状態へ移動させる。このとき、内ドア20は内ドアラッチ機構23によって機械的に固定されているために、内ドア20と外ドア6とが離隔された状態となる。同時に、ストッパ76によりラッチ11が回転を規制された状態となり、外ドア6が開放できないロック状態となり(S207)、その後、洗濯が開始される(S208)。
このように、本実施の形態のドラム式洗濯機は、従来の1ドア方式のドラム式洗濯機と同様の操作、すなわちドア開ボタン8の押下および外ハンドル7の操作によって外ドア6と内ドア20との両方を開放し、外ドア6を閉塞させる操作によって外ドア6と内ドア20との両方を閉塞することができ、操作性に優れている。
さらに、本実施の形態のドラム式洗濯機は、運転中には外ドア6と内ドア20とを離隔させた免震状態とすることにより、水槽18が振動した場合でもその振動が外箱2へ伝播されることを抑制し、外箱2の振動および騒音の発生を低減させることができる。
上述した説明と一部重複する部分もあるが、本実施の形態の特徴的な構成を列挙すると以下のようになる。本実施の形態のドラム式洗濯機1は、前面に外箱開口部5が形成された外箱2と、外箱2内に弾性支持され、外箱開口部5に対向する水槽開口部19が形成された水槽18と、外箱開口部5を開閉する外ドア6と、水槽開口部19を開閉する内ドア20とを備える。またドラム式洗濯機1は、水槽18の前面に取り付けられ、内ドア20を回動可能に支持するヒンジ部90を備える。
ヒンジ部90は、互いに平行に設けられた第一軸92および第二軸93と、第一軸92および第二軸93を連結する連結体としてのヒンジ本体91とを含む。内ドア20は、第一軸92を回転中心として回動可能、かつ、第二軸93を回転中心として回動可能であるように、水槽18に支持されている。水槽18の外部をヒンジ本体91の可動範囲とするように、ヒンジ部90は形成されている。
このようにすれば、外ドア6と内ドア20とを一体化させたとき、1ドア方式のドラム式洗濯機と同様の、外ドア6を開閉させる操作によって外ドア6と内ドア20との両方を開閉できるので、ドラム式洗濯機1の操作性を向上させることができる。ヒンジ本体91の可動範囲を水槽18の外部とし、水槽18の内側にヒンジ部90を移動させるためのスペースを必要としないので、ドラム式洗濯機1の洗濯時の作業性の悪化を回避することができる。
また、本実施の形態のドラム式洗濯機1は、水槽18の前面に固定された固定具96を備える。第一軸92は、固定具96に支持されている。ヒンジ本体91は、内ドア20が閉められたとき固定具96と対向するように配置されている。このようにすれば、固定具96によってヒンジ本体91の回転移動が遮られるので、ヒンジ本体91の可動範囲を確実に水槽18の外部に規定することができる。
また、ヒンジ本体91の固定具96に対向する側の表面には、弾性体97が設けられている。このようにすれば、内ドア20が閉められるときのヒンジ本体91と固定具96との衝突を防止することができる。
また、ヒンジ本体91は、板状に形成されている。ヒンジ本体91は、一方の端部において第一軸92と結合し、他方の端部において第二軸93と結合する。このようにすれば、ヒンジ本体91を軽量化させ、ヒンジ本体91の運動性を向上させることができる。
また、ヒンジ本体91は、水槽18の前面に対して凸に湾曲する湾曲部91bを含む。このようにすれば、第一軸92まわりにヒンジ本体91を回転移動させることにより、曲板91bに連結された第二軸93がドラム式洗濯機1のより外方(前方)側へ移動させることができ、その状態から第二軸93回りに内ドア20を回転させて、内ドア20の全開状態を容易に得ることができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ドラム式洗濯機、2 外箱、3 操作パネル、5 外箱開口部、6 外ドア、7 外ハンドル、8 ドア開ボタン、9a,9b ワイヤ、10 外ドアラッチ機構、11,24 ラッチ、11a 頭部、12 爪部、13 軸部、14 係止部、16 ラッチ座、16a 開口部、17 壁部、17a 貫通孔、18 水槽、19 水槽開口部、20 内ドア、21 磁着部、23 内ドアラッチ機構、24a 爪部、24b 腕部、24c 屈曲部、25 軸部、25a スプリング、26 固定部、27 可動部、28 係合片、28a 係合孔、29 挿通部、30 挿通穴、31 保持腕部、31a ピン、32 ドラム、40 流体バランサ、41 サスペンション、60 レバー機構、61 レバー本体、61a 支持突起、61b 結合突起、61c リブ、62 磁着面、63 裏面、63a 遊嵌凹部、64 モータ、65 アクチュエータ、66 リンク部、67,69,72 リンクレバー、68,71 リンク部、70 支軸、73 支持部、74 突起部、74a 湾曲面、75 スプリング、76 ストッパ、80 マグネット部、81 ケース、82 スライダー、83 マグネット、84 裏蓋、84a 係止爪部、90 ヒンジ部、91 ヒンジ本体、91a 平板、91b 曲板、92 第一軸、93 第二軸、94 連結部、95 リブ、96 固定具、97 弾性体、98 凹部、99 回動軸。