JP4707237B2 - 外因性アミノ酸および新規atp再生システムを用いたインビトロ高分子生合成の方法 - Google Patents
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Description
発明の背景
タンパク質や他の生物学的高分子の方向付けされた合成は、生化学の大いなる達成点であると言える。組換えDNA技術の発展は、高度に精製されたコード配列の特徴付けと合成を可能にし、高度に精製されたタンパク質を生産するために使用され、該タンパク質は、天然の細胞では微量しか手に入らない。ポリペプチド鎖は、化学的あるいは生物学的方法で合成することができる。生物学的合成は、細胞環境内で行なわれ、またはタンパク質をインビトロで合成するためには、細胞抽出物およびコード配列が使われる。
【0002】
数十年に渡り、インビトロのタンパク質合成は、クローニングされたりまたは合成された遺伝物質の、実験室規模の発現のための効果的な手段として役立ってきた。近年インビトロのタンパク質合成は、細胞内発現に伴う不都合さのため、伝統的な組換えDNA技術にとって代わるものとみなされてきた。インビボでタンパク質は、細胞の成長とともに合成される幾種かの酵素により分解されたりまたは修飾されたりし、合成の後、グリコシレーション、脱アミド化、または酸化のような翻訳後プロッセッシングにより修飾される。さらに、多くのタンパク質産物は代謝過程を阻害し、かつそれらの合成は細胞を再生産し、遺伝的情報を保護するのに要求される他の細胞内工程と競合しなければならない。
【0003】
遺伝子発現の細胞調節と本質的に掛け離れているので、インビトロのタンパク質合成は、細胞傷害性があったり、不安定であったり、または不溶性であったりするタンパク質を合成するのに有利である。インビボでは、発現レベルが生産物の濃度によって調節されているため、あらかじめ設定された濃度以上にタンパク質を過剰生産することは難しいと言える。細胞の中に蓄積されたタンパク質の濃度は細胞の増殖度に影響を与え、所望のタンパク質を過剰生産させることは難しい。単離と精製の過程において多くの種類のタンパク質は、不溶性または不安定で、かつ細胞内プロテアーゼにより分解されるか、インクルージョンボディー(inclusion body)として凝集し、損失の割合が高い。
【0004】
インビトロ合成はこれらの多くの問題を克服する。さらに多重配置での様々なタンパク質の同時進行で迅速な発現を通して、この技術は研究レベルでの組み合わせアレイの開発、そしてタンパク質のスクリーニングについて貴重な手段を提供する。さらに、様々な天然に存在しないアミノ酸が、ある特定の目的のために効果的にタンパク質に取り入れられる(Noren ら(1989) Science 244: 182-188) 。しかしこのような有望な局面にもかかわらず、インビトロの系は実践的な代替物として広く受け入れられているわけではない。それは主として、タンパク質合成の低収率化を招いている短い反応時間に拠る。
【0005】
Spinnら(1998) Science 242: 1162-1164によるインビトロタンパク質合成系の連続した流れ作業の開発は、反応を数時間に延ばすことができることを証明した。それ以来多くのグループがこのシステムを再現し改良して来た(Kigawaら(1991) J. Biochem. 110: 166-168;Endoら(1992) J. Biotechnol. 25: 221-230)。最近、KimおよびChoi (1996) Biotechnol. Prog. 12: 645-649は、単純な透析膜反応装置を用いたセミ連続操作を取り入れることにより、バッチ法と連続フローシステムの長所を合わせることができることを報告した。彼らは従来のバッチシステムの初期速度を維持しつつ、連続フローシステムの伸長された反応時間を再現することができた。しかし連続的および半連続的取り組みは高価な試薬を多量に必要とし、これは生産収率の増加よりも有意に大きく増加する。
【0006】
従来のバッチシステムにおいていくつかの改良がなされた(Kimら、(1996) Eur. J. Biochem. 239: 881-886;Kuldlickiら(1992) Anal. Biochem. 206: 389-393; Kawarasakiら(1995) Anal. Biochem. 226: 320-324)。半連続システムは、伸長された時間におよんでタンパク質合成の初期速度を維持するが、従来のバッチシステムにもまだいくつかの特典がある。例えば操作の簡便さ、簡単にスケールアップできること、試薬の低価格性、そして再現性の良さである。さらにバッチシステムは、同時に多くの遺伝学的材料を発現させるマルチプレックス形式で、簡単に実施されることができる。
【0007】
特に最近PatnaikとSwartz (1998) Biotechniques 24: 862-868は、タンパク質合成の初期速度を、反応条件の徹底した最適化により、インビボの発現と同様のレベルまで増強することができると報告した。濃縮段階なしに調製した従来の細胞抽出物を用いて、そのような高速のタンパク質合成を彼らが達成したことは注目に値する(Nakanoら(1996) J. Biotechnol. 46: 275-282; Kimら (1996) Eur. J. Biochem. 239: 881-886)。Kigawaら(1999) FEBS Lett 442: 15-19は、濃縮された抽出物とエネルギー源としてのクレアチンリン酸を用いた高いレベルのタンパク質合成を報告している。これらの結果は、特にタンパク質合成反応の長い寿命という観点からのバッチシステムのさらなる改良が、インビトロタンパク質合成の生産性を十分に増加させることを示唆する。しかし、従来のバッチシステムにおけるタンパク質合成の早期の停止の理由は依然としてわかっていない。
【0008】
上で示したように、タンパク質の生産性および生産量の両方とも依然として低く、これは無細胞系のタンパク質合成の産業化を実施する上での障害となっている。よって、比生産速度およびシステム操作の長さを増加させることによる、タンパク質の全生産力の観点からの改良が特に必要となる。商業的な方法の発展のために、これらの条件の最適化が非常に興味を持たれている。
【0009】
関連文献
Mullerら(1993) Science 259: 965-967は、チアミンおよびフラビン依存的酵素であるピルビン酸オキシダーゼの構造を述べている。Ryabovaら(1995) Anal. Biochem. 226: 184-186は、細菌の無細胞翻訳システムにおけるエネルギー源としてのアセチルリン酸の使用を述べている。ピルビン酸オキシダーゼの突然変異体は、米国特許第5,153,138号で述べられ、ピルビン酸オキシダーゼはさらに米国特許4,666,832号および米国特許第4,246,342号で述べられている。
【0010】
発明の概要
生物学的分子のより増強されたインビトロ合成について、その組成と方法が提供される。特に興味深いのは、例えば合成にATPが要求される核酸、ポリペプチド、そして複合等質などのようなポリマーの合成である。発明の一つの態様として、ATPの産生に恒常的システムが用いられる。ここではこのエネルギーシステムの利用が、ATPの加水分解の結果として生じる遊離のリン酸の正味の増加を阻止している。ATPの加水分解によって遊離されるリン酸は、高エネルギーリン酸結合に再利用され、その蓄積を阻止されている。例えば、アセチルリン酸を生じる酵素ピルビン酸オキシダーゼと組み合わせたピルビン酸のような、再生性のエネルギー源の添加により、エネルギーのホメオスタシスが達成される。好ましい態様において、反応混合液における遊離のリン酸を正味に増加させる、ホスホエノールピルビン酸のようなエネルギー源は、除かれている。
【0011】
発明のその他の態様として、タンパク質のインビトロ合成は、反応混合液に存在するアミノ酸の代謝を最適化することにより強化される。最適のアミノ酸の濃度は、ある特定のアミノ酸を望ましくなく代謝する酵素を阻害することにより維持される。トリプトファン、システインそしてアルギニンを含むある種のアミノ酸の濃度は、従来の反応の際、減少することがわかって来た。アラニン、アスパラギン酸そしてアスパラギンを含む他のアミノ酸は、提供されたエネルギー源の消費の下、望ましくなく増加する。これらの反応を触媒する酵素の阻害は、反応混合液に阻害化合物を添加すること、あるいは関係酵素の活性を減少させたり取り除いたりする反応混合液の修飾、あるいはその二つの取り合わせによって達成される。
【0012】
態様の詳細な説明
反応混合液に存在するアミノ酸の代謝の最適化により、および/あるいは再生可能なエネルギーシステムの利用により、増強されたインビトロタンパク質分子合成について、その成分と方法が提供されている。分解反応のためトリプトファン、システインそしてアルギニンを含むある種のアミノ酸の濃度は従来の反応において減少することが明らかとなった。アラニン、アスパラギン酸そしてアスパラギンを含む他のアミノ酸は、供給されるエネルギー源の消費の下、望ましくなく上昇する。これらの反応を触媒する酵素活性を下げることにより、合成の全体的な収率は改善される。
【0013】
無細胞タンパク質合成システムの鍵となる成分は、連続したATPの供給、適正なアミノ酸の供給および活性のある触媒である。微生物の抽出物を利用する典型的なインビトロタンパク質合成系の反応の実行の際、エネルギー源のみの更なる添加では、タンパク質合成の時間を有意に長引かせないことがわかった。活性のあるタンパク質合成がなくても、プレインキュベーションの間に反応混合液が合成能力を失うことが次に明らかにされた。さらなるエネルギー源の添加は合成能力を回復させるには十分でなく、アミノ酸の添加も必要であった。事実これら両方の成分の添加によって、タンパク質合成の反応時間の相当な伸長が可能となり、これはタンパク質の収率の増加と一致した。
【0014】
いくつかのアミノ酸の濃度はプレインキュベーションあるいはタンパク質合成のどちらの時間においても増加し、他のアミノ酸では枯渇することがわかった。特にエネルギー源としてピルビン酸が用いられる時、アラニン、アスパラギン酸そして/あるいはアスパラギンの濃度は有意に増加する。アルギニン、システインそしてトリプトファンは枯渇する程度まで減少する。活発な合成の期間は、エネルギー源およびこれらの三つのアミノ酸の添加により引き延ばすことができる。
【0015】
インビトロタンパク質合成反応の能力を上げるため、代謝阻害剤あるいは供給源生物の操作が行われ、不都合なアミノ酸の産生や枯渇に関わる酵素の働きを減少させた。
【0016】
成分と方法が、それのみであるいは最適なアミノ酸源と組み合わせて、ATPの産生のために用いられる恒常的システムに対して提供された。ここではATPの加水分解によって生じる遊離のリン酸の正味の増加を、このエネルギーシステムを用いることによって妨げることができる。ATPの加水分解により遊離されるリン酸は、エネルギープールへ再利用され、そのため蓄積が妨げられている。
【0017】
ほとんどの生物学的合成の一次エネルギー源はATPである。ATPは、ADPそして例えばホスホエノールピルビン酸(PEP)、クレアチンリン酸、あるいはアセチルリン酸のような高エネルギーリン酸結合の二次的供給源より生成される。これらの化学物質は、それぞれピルビン酸キナーゼ、クレアチンキナーゼ、そしてアセチルキナーゼの触媒反応によりADPをATPに再負荷させる。さらにATPを再利用するためのポリリン酸の利用に関するいくつかの報告もある。エネルギーのホメオスタシスは遊離のリン酸を放出せず、間接的に高エネルギーリン酸結合を供給する、二次エネルギー供給源の添加によって達成される。
【0018】
恒常的エネルギー源として、酵素ピルビン酸オキシダーゼと組み合わせたピルビン酸の利用が例示的である。ピルビン酸を酸化する際、アセチルリン酸ができ、これがADPからATPを直接的に再生する。代謝経路は図11Bで示されている。アセチルリン酸を生じるピルビン酸の酸化の際、ATPから加水分解されるリン酸が再利用され、よってこれにより、合成反応で阻害効果を持ち得る遊離のリン酸の正味の蓄積を妨げることができる。反応混合液は、例えばアセチルリン酸、PEP、クレアチンリン酸などのような、遊離のリン酸の蓄積により生じる少量の二次エネルギー源を含む。しかしその量は、以前に報告されたインビトロ合成反応を伴う有意に低い濃度である。
【0019】
本発明は主として合成反応のために述べられたものであるが、当業者は他のインビトロ反応に、本恒常的エネルギーシステムの利用を認めるであろう。例えばタンパク質の折りたたみとタンパク質の輸送はATPの使用を必要し、本方法の恩典となりうる。
【0020】
定義
本発明が、ここで述べられている特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物の種や属、試薬に制限されるものでないことが理解されていなければならない。さらに本明細書において使用される用語は、ある特定の態様のみを述べる目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲にのみ制限され、本発明の範囲を制限することを意図したものでないことが理解されていなければならない。
【0021】
本明細書で用いられているように、単数形である「a」、「and」、そして「the」は文脈が明白に示図しない限り、複数形も含む。よって例えば「a cell」というものはそのような細胞の複数形を含み、「the protein」というものは一つ又は複数のタンパク質および当業者の間で知られているそれらに等価なもの、その他を含む。明白に示されていない限り、本明細書で用いられている全ての専門的そして科学的用語は、この発明が所属する当業者に普通に理解されているものと同じ意味を有している。
【0022】
インビトロ合成:
本明細書で用いられているように、生物学的抽出物そして/あるいは厳密に定義された試薬を含む反応混合液での、例えばポリペプチドのような生物学的高分子の無細胞合成を指す。反応混合液は少なくとも、エネルギー源であるATP、例えばDNA、mRNAなどの高分子の産生のための鋳型、アミノ酸、ならびに、例えばリボソーム、tRNA、ポリメラーゼ、転写因子などの合成のために必要な補因子、酵素および他の試薬を含む。本発明の一つの態様としてエネルギー源は恒常的なエネルギー源である。例えば酢酸キナーゼやクレアチンキナーゼなどのような高エネルギー結合よりATPを再生することを触媒する酵素も含まれる。そのような酵素は翻訳のために用いられる抽出物に存在するか反応混合液に添加されるだろう。そのような合成反応系は当技術分野においてよく知られており、文献で報告されている。無細胞系の合成反応はバッチ法、連続フロー法、あるいは半連続フロー法で実行され、これは当技術分野において知られている。
【0023】
増強された反応混合液:
本明細書で用いられているように、核酸の鋳型からポリペプチドの合成を触媒することができ、プレインキュベーションおよび活発なタンパク質合成の期間、特定のアミノ酸の濃度を維持するのに最適化された反応液をいう。混合液は望ましくない酵素反応を減少させる代謝阻害剤を含む場合もある。代わりに、あるいはそれと組み合わせて、増強された反応混合液は、アミノ酸の枯渇あるいは蓄積をもたらす望ましくない副反応に関わる酵素活性が減少するように、遺伝的にあるいは他の段階により操作されるであろう。特別な最適化条件が以下で与えられる。
【0024】
トリプトファン代謝に対する増強された条件やアラニン代謝の増強された条件などのように独自の改良点は別個に述べられる。しかし、これらの改良された条件を様々な組み合わせで用いることができ、一つの設定された反応における阻害剤が、不都合な酵素を枯渇させた反応混合液に用いられる場合などが挙げられる。このことは当業者の間では理解されている。
【0025】
本発明の好ましい態様として、反応液は例えば大腸菌(E. coli)S30の抽出物のような細菌細胞由来の抽出物を含み、これは当技術分野において知られている。便宜上、抽出物の供給源として用いられる生物は供給源生物と呼ぶことにする。そのような抽出物はリボソームやタンパク質合成に必要な他の因子の有効な供給源であるが、タンパク質合成に関与しないにもかかわらずアミノ酸、ATP、ピルビン酸あるいは他の試薬を消費するような望ましくない副反応に関わる酵素を少量含む場合がある。
【0026】
活性のある抽出物を生産する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Pratt (1984)、「原核生物の無細胞系での連結した転写と翻訳(coupled transcription-translation in prokaryotic cell-free systems)」、p. 179-209、Hames, B. D.およびHiggins, S. J.監修、「転写と翻訳:実践的な取り組み方(Transcription and Translation: a practical approach)」、 IRL Press、New Yorkにそれを見出すことができる。Kudlickiら(1992) Anal. Biochem. 206(2): 389-93は、超遠心によりS30からリボソームを集めることにより、S30の大腸菌(E. coli)の無細胞抽出物を修飾している。
【0027】
ある特異的なプロモーターの制御下で、遺伝子の発現において抽出物が最適化され得る(例えば、Kudlickiら(1992) Anal. Biochem. 206(2): 389-93を参照されたい。この系は大腸菌(E. coli)の粗抽出物(内在性のT7RNAポリメラーゼを含む細胞より調製されている)とリファンピシン(大腸菌(E. coli)のRNAポリメラーゼの阻害剤)より成る)。Kimら(1996) Eur. J. Biochem. 239: 881-886は試薬濃度を最適化することにより、タンパク質の産生をさらに増強させている。
【0028】
増強された反応混合液は、望ましくない酵素活性の代謝阻害剤を含み得る。そのような阻害剤は反応の最終生成物である場合が多々ある。それはフィードバック機構で阻害する。供給源生物の代謝経路に基づいて特異的な阻害剤が決定される。例えば大腸菌(E. coli)、酵母(S. cerevisiae)、ヒト(H. sapiens)などのような多くの細菌や真核生物の種におけるこれらの経路は、当技術分野においてよく知られている。タンパク質合成を増大させる一方で、望ましくない酵素活性を阻害するのに十分な濃度になるように阻害剤が添加される。
【0029】
特に興味深い経路は、図9で示された大腸菌(E. coli)細胞におけるピルビン酸に関するもので、グルタミン酸とのトランスアミナーゼ反応による、ピルビン酸からのアラニンの産生およびオキザロ酢酸からのアスパラギン酸の合成などが含まれる。興味深い他の経路は、アミノ酸の分解に関わるものであり、例えば図10に示されたようなプトレシンとスペルミジンを形成するアルギニンの分解である。
【0030】
添加する代謝阻害剤についての代わりの態様として、望ましくない酵素が取り除かれあるいは反応混合液から枯渇される。発明の一つの態様として、酵素のコード配列は、コード配列の全てあるいは一部の欠失、フレームシフトを引き起こす挿入、ドミナントネガティブ突然変異などにより、供給源生物の染色体上でノックアウトあるいは不活性化される。大腸菌(E. coli)を含む多くの生物のゲノムは完全に配列解析されており、遺伝学的修飾が可能である。例えばArigoniら(1998) Nat Biotechnol 16 (9): 851-6によりマーカーレス・ノックアウト法が述べられている。
【0031】
Hoangら(1998) Gene 212: 77-86により標的遺伝子の不活性化の好ましい方法が述べられている。この方法では、組換え反応の選択マーカーであるテトラサイクリン耐性遺伝子とレバン・サッカラーゼ(sacB)をコードする遺伝子を含んでいる遺伝子置換ベクターが用いられている。標的遺伝子は最初クローニングされ、好ましくは遺伝子の重要な領域を取り除かれ変異される。この遺伝子は、染色体遺伝子置換が可能となるように設計されたベクターに、ライゲーション反応によって挿入される。大腸菌(E. coli)はそれらのベクターにより形質転換される。染色体上の標的遺伝子の部位にプラスミドを取り込んだ細胞が選択され、ショ糖存在下で細胞を増殖させることにより、そのプラスミドが染色体から遊離するようにする。ショ糖はsacB遺伝子が染色体上に存在すると毒性を示す。正しく変異した細胞株がテトラサイクリン感受性とショ糖耐性という表現型を基に選択される。PCR分析あるいはDNA配列解析により、望ましい遺伝学的変化が起こったことが確認される。
【0032】
しかし、タンパク質合成反応の持続時間と収率を減少させる酵素は、供給源生物の生育に不可欠である場合もある。その場合、条件的ノックアウト法が用いられる。例えば、標的遺伝子に対する、誘導性プロモーター上のアンチセンス配列が供給源生物の中へ導入される。細胞は一定期間増殖され、標的酵素を細胞から枯渇させるためにアンチセンス構造物が誘導される。
【0033】
酵素は細胞の破壊の後および細胞抽出物の使用の前に細胞抽出物から除去されうる。標的酵素に対して特異的な親和性を持つ抗体や抗体断片を使用したり、細胞抽出物から容易に除去することを可能にする標的酵素の一部として発現されるアフィニティータグを使用したりする、アフィニティー精製やその他従来の精製法を含めた、当技術分野において知られている幾種類かある方法のうちのどれかがタンパク質の精製に用いられる。
【0034】
その他の態様として、ファージディスプレイあるいは他のうまく開発された技術を用い、標的酵素に特異性を有する抗体あるいは抗体断片(例えばFabあるいはscFV)が選択される。その抗体あるいは抗体断片は次に、いくつかの固定化技術のどれかを用いて、いくつかの精製用ビーズあるいはレジンあるいは膜のどれかに固定化される。固定化された抗体は細胞抽出物と接触させられ、標的酵素と結合し、固定化された抗体/酵素複合体は、濾過あるいはゆるやかな遠心操作で除去される。
【0035】
例えば、標的酵素のコード配列は修飾され、Flag(登録商標)(Immunex Corpで開発され、Stratageneで販売されている)による伸長やポリヒスチジンテールのようなタグを持つ場合もある。多くの他の例が公にされてきており、当業者に公知である。タグのついたタンパク質は次に、適切なアフィニティーマトリックスあるいはカラムを通すことにより除かれる。アミノ酸の伸長とその結合パートナーは、細胞抽出物の安定性が保たれ、その化学的組成が著明には変化しないような条件下で、特異的結合が起こるように選択される。
【0036】
さらに他の例として、標的酵素あるいは酵素は、基質アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水結合クロマトグラフィー、電気泳動的分離、あるいはタンパク質精製の技術分野において実践されているその他の方法のような、タンパク質精製においてよく用いられているいくつかの方法のどれを用いても分離することができる。
【0037】
トリプトファン/システインの最適化された反応混合液:
トリプトファンとシステインの両方の濃度は、プレインキュベーションあるいはタンパク質合成中、急速に減少することが観察されている。これらのアミノ酸の最適化された反応混合液はトリプトファナーゼ活性を欠いている。大腸菌(E. coli)のトリプトファナーゼの遺伝子(tnaA)の配列は、Deely およびYanofsky (1981) J. Bact. 147: 787-796;Genbank accession no. 1790144; locus AE000448,大腸菌(E. coli)の全ゲノム配列accession AE000448において見出される。上で述べられたように、公開されている遺伝学的配列を用いて、修飾された細菌の細胞においてトリプトファナーゼは不活性化され得る。そうしない場合、アフィニティー精製あるいは従来の精製法により、酵素活性を反応混合液において枯渇することができる。
【0038】
アルギニンの最適化された反応混合液:
アルギニンも、少なくとも一部プトレッシンやスペルミジンへの変換のため、合成反応混合液より枯渇してしまう。これはプトレッシンおよびスペルミジン産生の二つの既知の経路のうちの一つである。この経路の最初の酵素はアルギニンデカルボキシラーゼである。この酵素はスペルミジンによりフィードバック阻害がかかることが知られている(Tabor およびTabor (1969) J. Biol. Chem. 244: 2286-2292)。よってアルギニンについて最適化された反応液は、この経路の代謝阻害剤を含むか、アルギニンデカルボキシラーゼ活性が減少するように修飾されているものである。
【0039】
発明の一つの態様として、スペルミジンは、阻害剤として初期濃度が少なくとも約0.5 mM、そして約500 mM以下であるように、また通常少なくとも約1 mM、好ましくは約5 mMの濃度になるように加えられる。この経路の他の産物にはプトレッシンとアグマチンが含まれる。
【0040】
他の態様として、大腸菌(E. coli)のアルギニンデカルボキシラーゼ(speA)の遺伝子が不活性化される。遺伝学的配列はGenbank, no. 1789307; locus AE000377, accession AE000377を通してアクセスできる。大腸菌(E. coli)の全染色体の配列はBlattnerら(1997) Science 277: 1453-1474で公開されている。上で述べたように、遺伝子が不活性化されるか、あるいはタンパク質産物が反応混合液より枯渇させられる。
【0041】
この酵素の枯渇は、アルギニン非存在下で細胞を増殖させ、代替経路を使ってオルニチンからプトレッシンとスペルミジンを細胞に作らせるようにすることにより達成される。そのような細胞におけるアルギニンデカルボキシラーゼの活性は有意に低い。
【0042】
Asxの最適化された反応混合液:
アスパラギン酸とアスパラギンはホスホエノールピルビン酸より形成される。ホスホエノールピルビン酸合成酵素(pps)はピルビン酸をPEPに変換し、合成されるPEP一分子について高エネルギーリン酸結合二当量(ATPがAMPに変換される)を消費する。よってピルビン酸がエネルギー源として用いられる場合、この酵素はピルビン酸とATPの両方を消費する可能性を有している。
【0043】
ppsを阻害すると報告されているシュウ酸(NarindrasorasakおよびBridger (1978) Can. J. Biochem. 56: 816-9) の添加により、PEPとピルビン酸両方の系で反応期間を引き延ばすことができた。ピルビン酸とPEP両方をエネルギー源とした場合、シュウ酸によるppsの阻害はasp/asnの産生の速度を遅くさせ、タンパク質の収率を増加させる。シュウ酸は少なくとも約0.5 mMの濃度で与えられ、約100 mM以下である。通常少なくとも約1 mMで、好ましくは約3 mMの濃度で与えられる。
【0044】
PEPとピルビン酸の両方の系におけるエネルギー源の効率的利用のために、酸素を消費しながらピルビン酸を酢酸に変換する、大腸菌(E. coli)のピルビン酸オキシダーゼそして/あるいはホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(pps)を破壊したり、あるいは不活性化したりすることができる。大腸菌(E. coli)のホスホエノールピルビン酸シンセターゼのコード配列は、Genbank, no. X59381でアクセスでき、またNiersbachら(1992) Mol. Gen. Genet. 231: 332-336で公開されている。大腸菌(E. coli)ピルビン酸オキシダーゼのコード配列は、Genbank, no. X04105でアクセスでき、またGrabauおよびCronan (1986) Nucleic Acids Res. 14: 5449-5460で公開されている。
【0045】
アラニンの最適化された反応混合液:
アラニンは少なくとも部分的に、アラニングルタミン酸トランスアミナーゼによるピルビン酸のアラニンへの変換により蓄積されることが明らかとなった。この酵素はWangら(1987) J Bacteriol 169(12): 5610-4で述べられている。上で述べたように、この遺伝子はWangらにより述べられているように単離され、配列解析されて次に不活性化された。あるいはまた酵素活性が反応混合液より枯渇させられた。
【0046】
本明細書で用いられている恒常的なエネルギー源とは、ATPを一次エネルギー源として利用してインビトロ合成反応を始動するための、エネルギー源の二次的供給源をいう。ここではATPの加水分解による遊離したリン酸が再利用される。高エネルギーリン酸結合の供給源の外部からの添加の代わりに、例えば酸化反応との共役を通して、必要な高エネルギーリン酸結合がインサイチューで生成される。恒常的なエネルギー源は一般的に、高エネルギーリン酸結合そのものを欠き、よってATP再生の間、反応混合液において存在している遊離リン酸を利用する。無機リン酸は合成における抑制性の副生成物となりうるので、インビトロで合成が持続される期間が延長され得る。恒常的なエネルギー源は、高エネルギーリン酸結合の創出を触媒する酵素と組み合わせて提供される。
【0047】
発明の一つの態様として、恒常的なエネルギー源とは、ピルビン酸であり、適切な生物学的に受け入れられる塩の形として、あるいは遊離した酸の形として供給される。合成の初期のピルビン酸の最終濃度は、通常少なくとも約1 mMで、さらに通常少なくとも約10 mMであり、そして500 mM以上であり、通常約100 mM以上である。追加のピルビン酸は、反応時間を延ばすために、合成されている際中に反応混合液に添加される。
【0048】
好ましくは、クレアチンリン酸、ポリリン酸、アセチルリン酸そしてホスホエノールピルビン酸を含む、遊離のリン酸の正味の蓄積を来たす二次エネルギー源は、有意な濃度では反応液に添加されない。合成の初期で反応混合液におけるそのようなエネルギー源の濃度は、一般的に約10 mM未満で、さらに通常約1 mM未満であり、約0.5 mM未満でありうる。そのようなエネルギー源からATPそのものは除外されており、それは一次エネルギー源として従来の濃度で反応混合液に含まれる。
【0049】
再生酵素:
本明細書では、遊離のリン酸と恒常的なエネルギー源より高エネルギーリン酸結合を再生する酵素をいう。ここで遊離のリン酸は、ATPの加水分解により再利用される。恒常的なエネルギー源がピルビン酸の場合、図11Bで示されるように、酵素はピルビン酸からアセチルリン酸の形成を触媒する。アセチルリン酸は、合成のエネルギー源として用いられ得るので、ピルビン酸オキシダーゼの反応は、タンパク質合成の過程で加水分解されるATPの再生の基礎となる。
【0050】
典型的な再生酵素はピルビン酸オキシダーゼ、EC 1.2.3.3.; CAS: 9001-96-1である。ピルビン酸オキシダーゼは様々な微生物において産生されることが知られている。例えば、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus plantarum、ぺジオコッカス属、スプレプトコッカス属そしてエアロコッカス属の微生物、ロイコノストック属の微生物などによって産生されることが知られている。
【0051】
反応混合液はATPプールを維持するために十分な再生酵素を含み、その濃度は通常少なくとも約0.1 U/ml、さらに通常少なくとも約1 U/ml、そして好ましくは少なくとも約5 U/mlである。単位の定義として、一単位は、ピルビン酸とリン酸のアセチルリン酸およびCO2への変換の際、1分間に1.0 μmolのH2O2を産出するものである。一般的には約1000 U/ml未満ではあるが、より高い濃度の場合もあることが当業者には理解されなければならない。
【0052】
再生酵素は、様々な方法で反応混合液に提供され得る。反応混合液に、精製されたあるいは半ば精製された酵素が添加され得る。ピルビン酸オキシダーゼ標品は市販されており、また従来の方法により、天然のあるいは組換え体の供給源より精製され得る。ピルビン酸オキシダーゼの遺伝学的配列は、酵素の組換え体の情報源として用いられている。例えば、Mullerら、上記;Pellerbergら(1996) Mol. Microbiol. 19: 803-813;Zhouら、Genbankアクセッション番号3818594などを参照されたい。
【0053】
酵素は、合成に用いられる抽出物に含まれている場合もある。例えばタンパク質合成のため抽出物は大腸菌(E. coli)に由来し得る。抽出物の産生のために用いられる大腸菌(E. coli)は、好ましいピルビン酸オキシダーゼをコードするように遺伝学的に修飾される。そうでない場合、合成反応がタンパク質合成の場合、合成の間ピルビン酸オキシダーゼが好ましい量産生されるよう、例えばピルビン酸オキシダーゼをコードするmRNAやピルビン酸オキシダーゼの好ましい発現構造物を含んでいるプラスミドのような鋳型が、反応混合物に投入される。
【0054】
増強されたインビトロ合成の方法
本合成システムは独立してあるいはインビトロ反応との組み合わせで用いられる。本発明の方法は、インビトロ合成反応、特に反応に対してリン酸の蓄積が阻害作用を示す場合の、特にポリペプチド合成反応、あるいはATPを一次エネルギー源として利用する反応にその用途を見出す。
【0055】
再生エネルギー源を利用する方法はまた、タンパク質の折りたたみやタンパク質輸送のようなインビトロシステムにも応用可能である。関心対象の合成システムは、DNAの複製、タンパク質合成、さらにDNAの増幅、DNAあるいはRNAの鋳型からRNAの転写、RNAのポリペプチドへの翻訳、そして単純な糖からの複合糖質の合成を含む。反応は大規模あるいは小規模反応装置を利用し得る。あるいは多数の同時合成を実行するために多重処理され得る。連続反応は、試薬の流れをもたらすためにフィード機構を用いており、工程の一部として最終生産物を単離し得る。バッチシステムも関心対象である。この場合、活発な合成の期間を長引かせるため、追加の試薬が導入される。反応装置はバッチ、伸長型バッチ、半バッチ、半連続性、フェドバッチそして連続性などのどのモードでも動かせる。これは応用目的に応じて選択される。
【0056】
特に興味深いものは、タンパク質を産生させるためのmRNAの翻訳である。この翻訳はDNAの鋳型からのmRNAのインビトロ合成と連結している。そのような無細胞系はmRNAの翻訳のために必要な因子を全て含んでいる。例えばリボソーム、アミノ酸、tRNA、アミノアシルシンセターゼ、伸長因子、開始因子である。当技術分野において知られている無細胞系には、小麦胚抽出物(Robertsら(1973) P.N.A.S. 70: 2330)、網状赤血球抽出物(Pelhamら(1976) Eur. J. Biochem. 67: 247)、大腸菌(E. coli)抽出物などが含まれる。これらは活性のある内在性のmRNAを除去するために、好ましいヌクレアーゼで処理される。
【0057】
無細胞系抽出物のような上記の成分に加えて、アミノ酸およびエネルギー源、タンパク質合成に特別に必要な材料が反応に加えられ得る。これらの材料には、塩、ポリマー性の化合物、サイクリックAMP、タンパク質あるいは核酸分解酵素の阻害剤、タンパク質合成の阻害剤あるいは調節因子、酸化/還元調整剤、非変性界面活性剤、緩衝液成分、スペルミン、スペルミジンなどが含まれる。
【0058】
塩は好ましくは、酢酸または硫酸のカリウム、マグネシウム、アンモニウムそしてマンガン塩を含み、これらのいくつかは対陽イオンとしてアミノ酸を持つ場合がある。ポリマー化合物としてはポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチル、四級アミノエチルそしてアミノエチルがある。酸化/還元調整剤としては、ジチオスレイトール、アスコルビン酸、グルタチオンそして/あるいはそれらの酸化物がある。さらにトライトンX-100のような非変性界面活性剤が0M-0.5 Mの濃度で用いられる。スペルミンとスペルミジンがタンパク質合成能力を高めるのに用いられ、そしてcAMPが遺伝子発現の調節因子として用いられる。
【0059】
反応培養液のある特定の成分の濃度を変化させる時、それに応じて他の成分の濃度も変化させられる。例えばヌクレオチドやエネルギー源の化合物のようないくつかの成分の濃度は、他の成分の濃度の変化と一致して同時に制御され得る。さらに反応装置内の成分の濃度レベルは刻々と変化する。
【0060】
好ましい反応はpH5-pH10の範囲、20℃-50℃の範囲の温度そしてより好ましくはpH6-pH9の範囲、そして25℃-40℃の範囲の温度で維持される。
【0061】
連続操作モードでタンパク質単離手段を用いる時、反応装置からの産物のアウトプットは膜を通ってタンパク質単離手段の方へ流れる。半連続操作モードにおいては、膜の外側あるいは外側の表面は、あらかじめ決められた順で周期的に変化するあらかじめ決められた溶液に接触させられる。これらの溶液はアミノ酸そしてヌクレオチドのような基質を含んでいる。この時反応装置は、透析、ダイアフィルトレーションバッチあるいはフェドバッチモードで操作される。フィード溶液が同じ膜あるいは異なった注入ユニットを通して反応装置に供給され得る。合成されたタンパク質は反応装置の中で蓄積され、システム操作の完了の後、タンパク質精製の通常の方法により単離され精製される。
【0062】
試薬の流れがある場合、液体の流れの方向は膜に対して垂直そして/あるいは接線方向である。接線方向の流れは、再利用しているATPや膜の詰りを防ぐのに効果的であり、垂直の流れの上に重ね合わすことができ得る。膜に対して垂直な流れは、陽圧ポンプあるいは減圧吸引ポンプにより引き起こされたり影響を受けたりする。膜の外側表面に接している溶液は、周期的に替えられ、安定した膜に対して接線方向の流れとなり得る。反応装置は内部であるいは外部から、適切な撹拌方法でかき混ぜられる。
【0063】
反応装置内でタンパク質合成時、望ましいタンパク質を選択的に単離するタンパク質単離手段は、合成された望ましいタンパク質を吸着する成分を携えた、固定化された、抗体分子やその他の分子でコーティングされた粒子が詰め込まれたユニットと正しい大きさの細孔を有した膜を含む。好ましくは、その使用を交互に行なうために、タンパク質単離手段は二つのカラムを含んでいる。そうでない場合、伸長されたベッドクロマトグラフィーを用いてタンパク質産物が吸着される場合がある。この場合膜は使用される場合とされない場合がある。
【0064】
翻訳反応におい産生されるタンパク質の量は様々な方法で測定することができる。一つの方法は、翻訳される特定のタンパク質の活性を測るアッセイの有効性に依存している。タンパク質活性を測定するアッセイの例として、ルシフェラーゼのアッセイ系、あるいはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼのアッセイ系がある。これらのアッセイは、翻訳反応より産生される機能的に活性のあるタンパク質の量を測定するものである。活性のアッセイ法は、不適当なタンパク質の折りたたみ、あるいはタンパク質活性に必要な他の翻訳後修飾の欠如により活性を失ったが全長は有しているタンパク質を測定しない。
【0065】
インビトロの転写および翻訳に連結して産生されたタンパク質の量の測定のその他の方法として、既知の量の35S-メチオニンあるいは3H-ロイシンのような放射能標識されたアミノ酸を用い、次に新しく翻訳されたタンパク質に取り込まれた放射能標識されたアミノ酸を測定するというような反応を行なう場合などがある。取り込みによるアッセイは、先端を削られたタンパク質産物を含む、インビトロ翻訳で産生される全てのタンパク質の、放射能標識されたアミノ酸の量を測定する。放射能標識されたタンパク質はさらにタンパク質ゲルで分離され、オートラジオグラフィーにより、産物が正しい大きさでありまた副次的なタンパク質産物が産生されていないことが確認される。
【0066】
本発明は、記載されている特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物の種あるいは属、構築物、そして試薬とどれであれ、それらに制限されるものではないことが理解されなければならない。本明細書で用いられる用語は、ある特定の態様を述べる目的のみのためで、添付の特許請求の範囲のみに制約される本発明の範囲を制限するために意図されているわけではない。
【0067】
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的そして科学的用語は、本発明が関係する当業者が普通に理解するものと同じ意味を有している。本明細書で述べられているものと似ている、あるいは等価な方法、装置そして材料は、本発明を実践したり、試験したりするのに用いられ得るが、好ましい方法、装置そして材料がこれから述べられる。
【0068】
本明細書で言及されている全ての刊行物は記載および開示の目的で、参照として本明細書に取り入れられている。例えば刊行物で記載されている細胞株、構築物、そして方法論があり、これらは現在述べられている本発明と関連して用いられ得る。上記および本文を通じて議論される刊行物は、本出願の出願日以前の開示のためにのみ提供される。先行発明によって、本発明者らがそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして、本発明における刊行物が解釈されてはならない。
【0069】
以下の実施例は、当業者に完全な開示といかに本発明を作成し利用するかの記載を提供するために出されたもので、本発明に係るものの範囲を制限することを意図したものではない。用いられる数値(例えば量、温度、濃度など)に関して正確を来たすように努めているが、若干の実験誤差および偏差は考慮に入れられなければならない。特に明記しない限り、部分とは重量の部分であり、分子量は平均の分子量で、温度は摂氏、圧は大気圧かその近辺である。
【0070】
実施例
実施例1
プレインキュベーション実験
最初の実施例は、エネルギー源とアミノ酸供給源の両方が枯渇している場合を示している。以下の実施例を通して、無細胞系のタンパク質合成のために、二つの標準的方法が用いられた。まず、ADPからATPを再生するために、ホスホエノールピルビン酸(PEP)とピルビン酸キナーゼを用いる。これはPEPシステムと呼ばれる。次にATPを再生するために、ピルビン酸とピルビン酸オキシダーゼを用いる。これはピルビン酸システムと呼ばれる。
【0071】
PEPシステムの標準反応混合液は、標準レベルのタンパク質発現(約100 μg/mlあるいは13.8 μg/ml細胞タンパク質)をもたらす。そして以下の成分よりなる。
【0072】
57 mMヘペス-水酸化カリウム(pH 8.2)、1.2 mM ATP、それぞれ0.85 mMのGTP、UTPおよびCTP、1 mM DTT、0.64 mMのcAMP、200 mMグルタミン酸カリウム、80 mM酢酸アンモニウム、15 mM酢酸マグネシウム、34 mg/mフォリン(folinic)酸、6.7 μg/mlプラスミド、33 μg/mlのT7DNAポリメラーゼ、それぞれ500 μMの20個のアミノ酸、[3H]ロイシン(0.27Gベクレル/mmol)、2% PEG8000、20 mMのPEP(ホスホエノールピルビン酸)、そして0.24倍容のS30抽出物。
【0073】
T7RNAポリメラーゼは、Davanlooら(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81: 2035-2039の若干の改変法により、大腸菌(E. coli)BL21株(pAR1219)の培地より調製された。以前報告された手順により(Kimら、上記)、S30抽出物が野生型の大腸菌(E. coli) K12 (A19株)の培地より調製された。ピルビン酸システムの標準的反応混合液はほとんど同一である。PEPが除外され、そこへ33 mMピルビン酸、6 U/mlピルビン酸オキシダーゼ、6.7 mMリン酸カリウム、そして3.3 mM TPP(チアミンホスフェート)が添加される。
【0074】
反応は37℃に設定された湯浴中で一定期間行われた。合成されたタンパク質の量は(Kimら、上記)で述べられたように、冷TCA不溶性の放射活性の測定で見積もられた。試料の放射活性は液体シンチレーションカウンター(Beckman)で測定された。SDS-PAGE分析は標準分子量マーカーと16%SDS-PAGEゲル(NOVEX)を用いて行われた。発現されたタンパク質は標準的なクーマシー・ブルー染色法により視覚化された。
【0075】
初期実験でタンパク質合成は、PEPシステムでは約30分後に停止し、ピルビン酸の系では200分後に停止した。しかし計算によると、必要な試薬の枯渇の量からして、不十分なタンパク質が合成されたことが示唆された。合成の停止の原因を調査するために、プレインキュベーション実験が用いられた。これらの実験では、DNAの鋳型は添加されておらず、放射活性のあるロイシンの取り込みの測定により、ほんの僅かなタンパク質合成が起こっていることがわかった。プレインキュベーションが種々の期間で実施され、その後、DNAの鋳型が添加され、一時間のインキュベーション期間後にタンパク質合成が測定された。図1の結果は、タンパク質合成を支持する反応混合液の能力が、タンパク質が発現されていなくても、急速に悪化したことを示す。さらなるエネルギーの添加は、活性を回復することができなかった。さらなるアミノ酸の添加も回復することができなかった。活性はエネルギー源のPEP、そして20個のアミノ酸の二次的添加のみにより回復することができた。これらの驚くべき結果は、エネルギー源とアミノ酸がタンパク質合成に依存せずに不活性化されることを意味する。
【0076】
実施例2
補給実験
他の一連の実験では、プレインキュベーションは用いられなかった。反応を長引かせるために、代わりに、合成反応混合液への添加が繰り返された。ピルビン酸の系におけるそのような実験の結果は図2で示されている。各反応の初期の容量は、15 μlである。反応が始まった後、一時間ごとに1.1 μlずつ添加する。対照1においては水が加えられる;対照2においては0.25 μlの2 Mピルビン酸と0.85 μlの水である。対照3においては0.85 μlのアミノ酸混合液と0.25 μlの水;そして「Pyr/AA」と標識された曲線に関しては0.25 μlの2 Mピルビン酸と0.8 μlのアミノ酸混合液である。曲線は、S30細胞抽出物中のミリグラムタンパク質当りのタンパク質合成収率を示している。明らかに、エネルギー源のみをさらに加えることは、タンパク質合成の効果的な持続には十分ではない。
【0077】
実施例3
アミノ酸の濃度変化の測定
驚くべきことに、いくつかのアミノ酸は増加し、一方他のアミノ酸は、新しいタンパク質に取り込まれる速度より、はるかに速く減少する。前実施例で指摘された観察事項は、タンパク質合成反応の間、個々のアミノ酸の濃度を測定することを喚起した。この場合、900 μlのピルビン酸で稼動される反応が開始された。1時間ごとに100 μlの試料をとり、冷水で1:1に希釈し、200 μlの冷10%TCA(トリクロロ酢酸)溶液を加えることで脱タンパク質化した。遠心分離の後、上清がBeckman 1600アミノ酸分析器で分析された。ほとんどのアミノ酸が濃度を変えなかった。しかし二つの非常に驚くべき結果が図3Aと図3Bに示されている。アラニンおよびアスパラギン酸/アスパラギンの両方で濃度が有意に上昇した。対照的にアルギニン、トリプトファンそしてシステインの濃度全てが有意に減少した。一番目の場合、データはピルビン酸がATPの再生というよりは、アミノ酸合成に用いられることを示唆した。これは反応の非効率性の潜在的に深刻な原因である。二番目の場合、反応を長引かせるためにアミノ酸の添加が必要である理由は、三つのアミノ酸が枯渇するからであることを示す。
【0078】
実施例4
アルギニン、システイン及びトリプトファンによる補充
三つのアミノ酸のみの補充は、全ての20個のアミノ酸の補充とほぼ同じ量の産物を産生した。アルギニン、システイン、そしてトリプトファンの枯渇がタンパク質の収率を制限するという仮説を試験するため、三つのうちの一つあるいは二つのみを繰り返して加える実験が実施された。三つ全てのアミノ酸の添加が最大の生産収率のために要求された。驚くべきことに図4のデータは、これらの三つのアミノ酸のみの添加で、20個の全てのアミノ酸の添加と同じ効果があることを指摘している。PEPシステムを用い15 μlの反応混合物より始めることで、実験が実施された。20分ごとに添加が行なわれた。対照1においては、1.15 μlの水が20分ごとに加えられた。対照2においては、0.3 μlの1 M PEPおよび0.85 μlの水;「PEP/全AAmix」では0.3 μlの1 M PEPと0.85 μlのアミノ酸混合液;そして「PEP/Arg, Cys, Trp」では、0.3 μlの1 M PEPおよび0.75 μlのそれぞれ10 mMアルギニン、10 mMシステインそして10 mMトリプトファン溶液が加えられた。
【0079】
より大きな添加容量のため、「PEP/Arg, Cys, Trp」の場合、より希釈されているが、そのタンパク質収率は20個全てのアミノ酸が繰り返して添加される場合とほとんど同じである。これらのデータは20個全てのアミノ酸を添加する代わりに、いくつかのサブセットのみを添加することで、有意な費用節減が認識されることを示している。
【0080】
実施例5
スペルミジンはアルギニンの枯渇を遅らせる
5 mMのスペルミジンはアルギニンの消失を遅延させる。このことはプトレッシンとスペルミジンの合成経路が、アルギニンの消失に関わっていることを示唆する。
【0081】
図3と4で示されるデータは、アルギニン、システイン、そしてトリプトファンの3つのアミノ酸の分解は、タンパク質合成反応の効率と期間を重度に制限することを示している。細菌の生理学の現時点での知識は、酵素トリプトファナーゼの作用がトリプトファンとシステインの消失の有望な原因であることを示唆している。アルギニンの場合、原因の一つはアルギニンデカルボキシラーゼの作用である。これは、正常な細菌の生理にとって重要なカチオン性の分子であるプトレッシンとスペルミジンをアルギニンに変換する経路の最初の酵素である。プトレッシンとスペルミジンはオルニチンより合成される。しかし利用可能の時はアルギニンの方が好まれる(図10を見よ)。アルギニンデカルボキシラーゼは、スペルミジンによりフィードバック阻害がかかることが知られている。よってスペルミジンがアルギニンの損失を遅らせることができるかどうか見る実験が組まれた。図5で示されるデータは5 Mスペルミジンがアルギニンの枯渇を有意に遅らせることを示す。よってアルギニンデカルボキシラーゼは少なくともアルギニンの損失の有意な原因となる。これらのデータはまた、酵素阻害剤がアミノ酸の分解を回避するために効果的であることを示す。
【0082】
実施例6
シュウ酸はアスパラギン酸 / アスパラギン産生の速度を遅らせ、タンパク質合成を増大させる
最も高い可能性としてPEPシンターゼ(pps)を阻害することにより、シュウ酸はアスパラギン酸/アスパラギンの蓄積の速度を遅らせ、タンパク質の収率を増加させることを示している。
【0083】
図3に示されるデータはいくつかのアミノ酸は濃度が増加することを示している。これらのアミノ酸が確実に枯渇しないため、最初これは偶然のように思われた。しかし、これらのアミノ酸の形成が、タンパク質合成のためのエネルギー源を有意に減少させることが理解された。アラニンの場合、ピルビン酸が、アラニングルタミン酸トランスアミナーゼで触媒されるグルタミン酸との反応で直接変換される。この反応は、ピルビン酸の系でエネルギー源を直接消費する。
【0084】
アスパラギン酸およびアスパラギンの形成の場合、結果はより深刻である。これらのアミノ酸は、オキザロ酢酸より形成される。このオキザロ酢酸は一方、PEPより誘導される(図9)。PEPの系では、これはエネルギー源の直接的な流出である。ピルビン酸の系では、これらのアミノ酸の形成はピルビン酸がPEPに変換されることを示す。これは、ピルビン酸オキシダーゼ反応に利用可能なピルビン酸の量を減少させる。しかし、この変換がATPからAMPへの変換を要求するという認識がさらにもっと重大である。アミノ酸合成のために作製され、使用されるPEP1モル当り、2モルのATPと1モルのピルビン酸が失われる。
【0085】
ピルビン酸からPEPへの変換はホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(pps)により触媒される。シュウ酸はppsを阻害することが報告されている。pps反応がアスパラギン酸およびアルギニン合成に真に関係していること、そしてこれらの反応がタンパク質の収率を減らすことを試験するために、2.7 mMのシュウ酸がピルビン酸の系とPEPの系両方に加えられた。図6は、アスパラギン酸とアスパラギンの形成がこの阻害剤により減少することを示している。図7と8は、両方の系でシュウ酸がタンパク質の収率を増加させることを示している。ピルビン酸の系では、アミノ酸の形成に対して、ピルビン酸とATPの損失がより少ない。エネルギー源としてのPEPの場合、ピルビン酸はPEPがそのリン酸をADPに移動させた後、直接的な産物となる。そのピルビン酸はppsによりPEPに戻されるが、新しいPEP一分子につき、二つのATPが消費される。このようにPEPは初期のエネルギー源であるにもかかわらず、酵素であるppsはATPを消費する。ピルビン酸とPEPがエネルギー源の場合、シュウ酸によるppsの阻害は、産物の収率を増加させるという有意な利益をもたらした。
【0086】
実施例7
有害な酵素の産生の回避
トリプトファナーゼ、アルギニンデカルボキシラーゼそしてホスホエノールピルビン酸シンセターゼのような活性の存在が、無細胞系の反応においてタンパク質の収率に重大な負の効果を持つことを、以前のデータは示している。これらの反応を制御するのに酵素阻害剤を用いるのは、一つの効果的な方法である。しかし、細胞抽出物に酵素が存在しない場合、阻害剤の費用を回避することができる。それらを回避する一つの方法は、これらの酵素の誘導を回避するように細胞を増殖させることである。一つの例は、グルコースを主要な炭素およびエネルギー源として細胞を増殖させることである。トリプトファナーゼの産生は、グルコース代謝の抑制により抑制されていることが知られている。さらに糖新生がもはや必要でないので、糖新生で主要に使われる酵素であるppsの誘導はより少ないだろう。もう一つの方法は、当技術分野において定義づけされたあるいは半ば定義づけされた培養液で、細胞を増殖させることである。しかしその培養液は、アルギニンを含んでいないものである。この場合、プトレッシンとスペルミジンがオルニチンより誘導され、アルギニンデカルボキシラーゼ活性は誘導されない。
【0087】
実施例 8
ピルビン酸をエネルギー源として用いたタンパク質合成
無細胞系のタンパク質合成時のATPの再生の新しい取り組みが、無機リン酸の蓄積を回避することにより開発され、合成反応を引き延ばした。この取り組みは、大腸菌(Escherichia coli)に由来したバッチシステムで実際に示された。外因性のエネルギー源が高エネルギーリン酸結合を含んでいるような従来の方法と対照的に、新しい系は、反応混合液中に必要な高エネルギーリン酸結合を連続して生成させるように設計されている。これにより、タンパク質の合成時、放出されたリン酸が再利用される。最も高い可能性として遊離のマグネシウムの濃度を減少させることにより、もし蓄積され得るならば、リン酸はタンパク質合成を阻害する。
【0088】
ぺディオコッカス種のピルビン酸オキシダーゼは、チアミンピロホスフェート(TPP)とフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)とともに反応混合液へ導入された後、ピルビン酸と無機リン酸よりアセチルリン酸の生成を触媒した。大腸菌(Escherichia coli)S30の抽出物において十分な活性を持って既に存在しているアセチルキナーゼは、ATPの再生を触媒した。アセチルリン酸の生成のために酸素が要求され、副生成物として産生されたH2O2は内在性のカタラーゼ活性により十分に分解される。
【0089】
化学エネルギーの連続した供給、そしてまた無機リン酸の阻止を通してタンパク質合成の期間は2.5時間まで延長された。タンパク質の蓄積レベルは増加した。ヒトのリンホトキシンの合成は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)より多くの恩典を与える。それは、前者がリン酸による阻害により敏感だからである。CATの発現において、新しいシステムにおけるタンパク質合成の初期速度は従来のシステムに比べて有意に低かったが、反応の寿命の著明な改良が、ホスホエノールピルビン酸(PEP)を用いる従来のシステムに匹敵する、タンパク質合成の収率をもたらした。
【0090】
本システムの利点は、無機リン酸とマグネシウムの濃度に特に敏感なある種のタンパク質の発現で最も際立っている。無機リン酸とマグネシウムの濃度に強く依存する、ヒトのリンホトキシン(hLT)の場合、3時間のインキュベーションの後の最終収率は、PEPを使う従来の反応によるそれの1.5倍に達した。
【0091】
材料および方法
ホスホエノールピルビン酸(PEP)および大腸菌の総tRNA混合物はベーリンガー・マンハイム社(インジアナポリス、インジアナ州)から購入した。L-[U-14C]ロイシン(11.7 GBq/mmol)、L-[U-3H]ロイシン(4.14 TBq/mmol)および[5,6-3H]UTPは、アマシャムバイオテクノロジー社(アップサラ、スウェーデン)から購入した。その他の試薬は、シグマ社(セントルイス、ミズーリ州)から得た。T7 RNAポリメラーゼは、ダバンルーら(Davanloo、(1984)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:2035〜2039)の方法に従って、大腸菌株BL21(pAR1219)の培養から調製した。プラスミドpK7CATは、T7プロモーターとT7ターミネーターとのあいだに細菌CAT配列を含み(キガワら(Kigawa)、(1995)、Journal of Biomolecular NMR 6(2):129〜134)、これをCAT合成の鋳型として用いた。hLT合成に関して、プラスミドpK7LTは、pK7CATのCAT配列をヒトリンフォトキシン配列に置換することによって構築した。S30抽出物は、既に記述されているように(キムら(Kim)、(1996b)、上記)、大腸菌K12(株A19)から調製した。
【0092】
標準的な反応混合物は、以下の成分からなる:57 mM Hepes-KOH(pH 8.2)、1.2 mM ATP、各0.85 mMのGTP、UTP、およびCTP、1 mM DTT、0.64 mM cAMP、200 mMグルタミン酸カリウム、80 mM NH4(OAc)、15 mM Mg(OAc)2、34 mg/mlフォリン酸、6.7 μg/ml プラスミド、33 μg/ml T7RNAポリメラーゼ、非標識アミノ酸20個がそれぞれ500 μM、および[14C]ロイシン(11.0 μM)、または[3H]ロイシン(1.2 μM)、2%PEG 8000、32 mM PEP、およびS30抽出物0.24 容量。ピルビン酸をエネルギー再生化合物として用いる反応では、PEPを標準的な反応混合物から除去して、32 mMピルビン酸、6U/mlピルビン酸オキシダーゼ、6.7 mMリン酸カリウム、3.3 mM TPPおよび0.3 mM FADを加えた。反応は、37℃の水浴中で容量15〜60 μlで所定の期間実施した。
【0093】
合成されたタンパク質の量は、既に記述されているように(キムら(Kim)、1996a、上記)測定したTCA-不溶性放射活性から推定した。試料の放射活性は、液体シンチレーションカウンター(ベックマン、LS3801)において測定した。SDS-PAGE分析に関して、試料を14Cの標準マーカー(アマシャム社)によって16%SDS-PAGEゲル(NOVEX)にローディングした。コダックXOMATフィルムを乾燥ゲルに一晩露出して、自動X線フィルム現像器において現像した。
【0094】
インキュベーションの際のmRNA濃度の変化は、NaOH加水分解段階を省略したことを除いて、タンパク質合成の推定に用いられた方法と同じ方法を用いて、[3H]-UTPを含む反応からの試料のTCA不溶性放射反応性を測定することによってモニターした。
【0095】
無機リン酸の定量的分析は、軽微な改変を加えた後、サヘキら(Saheki、(1985)、Anal. Biochem. 148:277〜281)の技法に従って実施した。試料2μlを採取して20%SDS溶液15 μlおよび水43 μlと混合した。溶液A (100 mM酢酸亜鉛、15 mMモリブデン酸アンモニウム、pH 5.0)670 μlおよび溶液B(10%アスコルビン酸)170 μlを連続的に加えた後、それぞれの試験管を30℃の旋回インキュベーター内で15分間インキュベートした。最後に、無機リン酸の濃度を、試料のOD850測定値と標準曲線から推定した。
【0096】
結果
PEPの非生産的分解。 当初32 mM PEPを含む標準的な反応混合物における無機リン酸の濃度を、タンパク質合成の反応期間の際に測定した。標準的な反応混合物(対照)と表示の成分(図12)を除いた反応混合物を調製して、インキュベートした。試料2μlを所定の時点で採取して、無機リン酸の濃度を、材料および方法において記述したように測定した。図12に示すように、反応混合物における無機リン酸の濃度は、インキュベート期間のあいだに直線的に増加した。
【0097】
無機リン酸の蓄積は反応混合物にプラスミドを加えない場合でも同じ割合で起こり、このことは、有意なタンパク質合成がない場合でも、リン酸の生成が同じ速度で起こることを示している。mRNAと染色体DNAの混入によるタンパク質合成レベルのバックグラウンドは、プラスミドDNAを含まない陰性対照反応のCPM値がpK7CATについてプログラムされた反応の10%未満であったため、本発明者らの系では無視できるほどである。
【0098】
有機リン酸化合物の非生産的分解は、ATP再生とタンパク質合成に利用できるPEPの量を減少させ、同様に、リン酸の蓄積を増加させる。インキュベーション混合物にS30抽出物がなければ、無機リン酸の蓄積は無視できるほどであることから、リン酸の蓄積は、S30抽出物に存在するホスファターゼ活性によって触媒され、有機リン酸化合物の自然発生的な分解の結果ではないことを示唆している(図2)。
【0099】
60分のインキュベーションの後、反応混合物における無機リン酸の濃度は、28 mMに達した。ヌクレオチド三リン酸から直接生成されうる無機リン酸の最高濃度は、7.6 mM(ATPから2.4 mM、および他のヌクレオチド三リン酸から5.1 mM)に過ぎないため、PEPの有意な量が、ホスファターゼ(複数)の直接分解によって、または加水分解したヌクレオチドリン酸を再度加えることのいずれかによって消費されることは明らかであった。
【0100】
PEPを有する、または有しないインキュベーションにおいて無機リン酸濃度の比較によって、反応混合物への無機リン酸の遊離は、PEPの存在に強く依存することが確認された(図12)。さらに、反応における無機リン酸の最終濃度または産生速度はいずれも、四つのヌクレオチド全てを反応混合物から除去した場合でも有意に減少した。これらの結果は、PEPが、ホスファターゼの主要な標的であり、カップリングしていないPEPの加水分解が、タンパク質合成の収量を有意に減少させうることを示唆している。実際に、上記の結果は、30分間のタンパク質合成反応のあいだに、50%ものエネルギー源が消費されうることを示している。このことは、ATP再生を制限して、少なくとも部分的に、インビトロタンパク質合成反応の初期停止を説明することができる。しかし、後にPEPを付加しても、反応期間を有意に延長しなかった。次に本発明者らは、反応混合物における無機リン酸の蓄積に注目したが、これはタンパク質合成を、可能性が最も高いのは遊離マグネシウムイオンのキレート化によって、阻害しうるためである。
【0101】
実施例9
リン酸再利用によるエネルギー源としてのピルビン酸の利用
PEPの他に、リン酸クレアチニンとリン酸アセチルは、真核生物および原核生物起源の様々なインビトロタンパク質合成系におけるエネルギー源に用いて成功している。これらの基質はいずれも、本発明者らの系においてPEPと同程度に効率よくタンパク質合成を支持した。しかし、PEPと同様に、それらはS30抽出物とのインキュベーションのあいだに高エネルギーリン酸結合を失う。このように、ATPを再生するためにリン酸結合エネルギー源の直接使用に依存する限り、エネルギー源の非生産的な枯渇および無機リン酸の蓄積はほとんど不可避であるように思われる。バッチシステムにおいてより長い反応期間を得るために、本発明は、高エネルギーリン酸結合を有する化合物の高濃度を必要としない系、言い換えれば、インサイチューで高エネルギーリン酸ドナーと共にATPを再生することができる系を提供する。
【0102】
ピルビン酸オキシダーゼ(E.C.1.2.3.3)は、数段階においてピルビン酸の酸化的脱炭酸を触媒することによって、乳酸菌の好気的増殖において重要な役割を果たしている。重要なことは、共因子、すなわちTPPとFADの存在下において、この酵素は、ピルビン酸と無機リン酸との縮合を触媒して、アセチルリン酸を生成することであり、これは本発明者らのインビトロタンパク質合成系においてエネルギー源として作用しうる。無機リン酸の蓄積を回避しながらアセチルリン酸を持続的に提供できるか否かを調べるために、この反応を調べた。タンパク質合成またはアセチルリン酸の分解のいずれかによって産生された無機リン酸は再利用されて、アセチルリン酸のもう一つの分子を生成するであろう。次に、アセチルリン酸は必要なATPを再生するであろう。この戦略のための単純なダイヤグラムを図1Bに示す。さらに、アセチルリン酸とATPはいずれも、持続的に産生されて、枯渇されるために、両者のピーク濃度は、非生産的加水分解を妨害するために十分に低く保たれる可能性がある。
【0103】
ピルビン酸オキシダーゼ系におけるCATの発現
インビトロタンパク質合成の反応条件下でこのスキームを調べるために、必要な化合物を反応混合物に異なる濃度で導入して、37℃で1時間インキュベートした。ピルビン酸、ピルビン酸オキシダーゼ、FAD、TPP、および無機リン酸の異なる濃度を含む標準的な反応混合物を調製して、1時間インキュベートした。[3H]ロイシン取り込みの最終的な量を材料と方法において記載のように測定した。図13A:6.7 U/mlピルビン酸オキシダーゼ、0.3 mM FAD、3.3 mM TPP、6.7 mM無機リン酸。図13B:32 mMピルビン酸、0.3 mM FAD、3.3 mM TPP、6.7 mM無機リン酸、6.7 mM無機リン酸。図13C:32 mMピルビン酸、6.7 U/mlピルビン酸オキシダーゼ、3.3 mM TPP、6.7 mM無機リン酸。図13D:32 mMピルビン酸、6.7 U/mlピルビン酸オキシダーゼ、0.3 mM FAD、6.7 mM無機リン酸。図13E:32 mMピルビン酸、6.7 U/mlピルビン酸オキシダーゼ、3.3 mM TPP、0.3 mM FAD。
【0104】
図13A〜13Eに示すように、TCA沈殿可能な放射活性は、ATP再生のための新規戦略がCAT合成を支持することを証明する。当初、合成されたタンパク質の最終的な量は、PEPを用いた対照反応と比較して低かった。合成されたCATの量は、外から加えたピルビン酸オキシダーゼ濃度の増加と共に増加し、6.6 U/mlピルビン酸オキシダーゼで安定に達した。FADの濃度に対しては比較的感受性が悪いものの、タンパク質合成の収率は、TPPおよび無機リン酸の濃度に鋭く反応してそれぞれ、最大タンパク質合成3.3 mMおよび6.6 mMを生じた。タンパク質合成の収率は、ピルビン酸オキシダーゼを反応混合物から除去すると、ほぼ無視できる程度であった。
【0105】
それぞれの系の反応混合物120 μlを調製して、37℃の水浴中でインキュベートした。試料10 μ lを30分ごとに採取して、タンパク質の[14C]ロイシン標識放射活性を、材料および方法において記述したように測定した。1時間のインキュベーションの後、合成されたタンパク質の最終量は、PEP反応の場合のわずか50%に達したに過ぎなかった。本発明者らは、この新しい系においてタンパク質合成の時間経過を調べて、PEPシステムと比較した。顕著に、図14に示すように、ピルビン酸系におけるタンパク質合成の初速度は2時間以上維持されたのに対し、PEPによる反応は、20分後に有意に遅くなった。その結果、タンパク質合成の初速度が減少したにもかかわらず、新しい系は、PEPを用いる従来の系と比較して容積測定収率でタンパク質を生成することができた。
【0106】
持続的なタンパク質合成期間によって、mRNAレベルの維持も持続的となった。mRNAに取り込まれた[3H]-UTPからの放射活性の測定によって、ピルビン酸を利用する反応ではmRNAの量が100分以上安定に維持されたのに対し、PEPを用いる反応では鋭い初回のピーク後指数的に減少したことが示された(図15)。mRNA含有量の劇的な減少は、インビトロタンパク質合成系におけるmRNAの半減期が短いことによって説明することができる。エネルギー源が早期に枯渇したために、PEPシステムは、分解とのバランスを保つために、mRNAの新しい分子を生成することができないであろう。一方、ATPの持続的な供給によって、ピルビン酸系におけるmRNAの持続的な産生が支持される。
【0107】
この反応サイクルを通じてのアセチルリン酸の産生は、二酸化炭素、酢酸、および過酸化水素のような副産物を生成する。これらの副産物の産生は、反応緩衝液のpHを有意に変化させないことが認められた。その上、おそらく最も重篤な副産物である過酸化水素は、持続的な一定速度のタンパク質応性によって示唆されるように系を減損しないように思われる。おそらく、本発明者らの反応系は、過酸化水素の毒性を回避するために十分な内因性カタラーゼ活性を含む。反応混合物に外因性のカタラーゼを加えても、タンパク質合成の速度または期間のいずれにも影響を及ぼさなかった。
【0108】
図16は、PEPおよびピルビン酸を用いる反応から採取した試料のオートラジオグラフを示す。この結果は、双方の系において、CATが合成された唯一のタンパク質であることを示している。[14C]ロイシンを含むPEP(図16A)およびピルビン酸(図16B)系の試料5μlを、様々な時間で採取して、ゲルにローディングした。泳動させた後、ゲルを乾燥させて、オートラジオグラフィーを行った。
【0109】
新しい系におけるヒトリンフォトキシンの発現
新しい系の可能性をさらに調べるために、本発明者らは、ヒトリンフォトキシンの発現にこれを応用した。予想外にも、リンフォトキシンの発現レベルは、ピルビン酸系でははるかに高かった(PEPシステムと比較して150%、図17参照)。プラスミドpK7CATおよびpK7LTを用いて、標準的なPEP(白い棒)系、またはピルビン酸を用いる新しい系(黒い棒)においてCATおよびLTを生成した。ヒトリンフォトキシンのインビトロ発現に及ぼす無機リン酸およびマグネシウムイオンの作用を調べた後、このタンパク質の発現レベルは、無機リン酸およびマグネシウム濃度の変化に対してCATの場合より感受性があることが判明した(図18)。
【0110】
図18Aにおいて、CATおよびLTを、Mg(OAc)2の濃度を変化させたPEPシステムを用いて産生した。図18Bは、PEPシステムの標準的な反応混合物に、無機リン酸の異なる濃度を外から加えて、1時間インキュベートした。白丸と棒は、hLT;黒丸と棒はCAT。言い換えれば、CATの発現は、比較的広い範囲の最適化されたマグネシウム濃度を示すが、マグネシウム濃度のわずかな変化はhLTの収率に劇的に影響を及ぼす。同様に、外因性無機リン酸の異なる濃度を反応混合物に加えると、リンフォトキシン合成は、過剰量の無機リン酸に対してより易損性となった。
【0111】
本明細書に記載した知見は、ATP再生反応によるアセチルリン酸のようなエネルギー源のインサイチュー生成とカップリングすると、タンパク質合成反応にとってATPの安定な供給を提供することを証明する。これによって次に、タンパク質合成の初速度がより長い反応期間にわたって維持されることが可能となる。これらの結果は、従来の系において起こったタンパク質合成の初期停止は、少なくとも部分的にATP再生化合物の分解に帰因しうることを示している。
【0112】
従来のバッチインビトロタンパク質合成系は、タンパク質合成の最大収率を得るためにPEPの比較的高い初濃度(およそ30 mM)を必要とする。そのような高濃度は、PEPに対する親和性が低いホスファターゼをエネルギー源に結合させて分解させるために、非生産的分解の速度および程度を増加させるであろう。対照的に、新しい系におけるアセチルリン酸の濃度は、外から加えた無機リン酸(6.7 mM)の濃度を大きく超えないが、ヌクレオチド三リン酸(1.2 mM ATPおよび各0.8 mM GTP、UTP、およびCTP)から放出されたリン酸のわずかな関与があるかも知れない。より可能性が高いのは、アセチルリン酸の生成は律速段階であるように思われ、アセチルリン酸に関して酢酸キナーゼの報告されたKm値は0.2 mMであるために、その濃度はかなり低いであろう(ケスラー&ナッペ(Kessler and Knappe)、(1996)、「大腸菌およびサルモネラの細胞分子生物学(Esherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology)」、ナイハートら(Neidhardt)編、アメリカ微生物学会、ワシントンD.C.、199〜205頁)。このように、本発明者らの系において律速濃度で維持されたアセチルリン酸を着実に供給することは、高エネルギーリン酸結合の利用の有効性を改善すると予想される。
【0113】
ATP再生能の枯渇の他に、PEPの分解によって、反応混合物からの本質的なマグネシウムイオンの分離によってタンパク質合成の転写および翻訳反応の双方に及ぼす阻害剤として作用しうる、無機リン酸の化学量論的蓄積が起こる。
【0114】
無機リン酸を再利用する方法を用いればこの問題は回避される。さらに、ヒトリンフォトキシンの発現について示されるように、本発明者らの新しい系は、その発現が無機リン酸に対して最も感受性が高いタンパク質に関して最も都合がよいであろう。リン酸およびマグネシウム濃度に対するこの多様な感受性はまた、それぞれの新しいタンパク質に関する最適化されたマグネシウム濃度を決定する必要性を説明するために役立つ可能性がある。ピルビン酸をエネルギー源として用いれば、タンパク質毎により一貫した成績が得られると期待される。
【0115】
最後に、この系によって、反応混合物におけるピルビン酸オキシダーゼ活性を調節することによってタンパク質合成速度を容易に制御することが可能となった。これは、タンパク質合成速度の関数としてタンパク質の折り畳みを含むタンパク質合成の様々な局面を調べる有用な方法を提供する。
【0116】
本発明者らの本発明の系は、経済的利益を提供する。周知のように、インビトロタンパク質合成系の費用が高いことは、タンパク質産生の工業的方法としてそれを用いる障害の一つとなっていた。反応成分の中でも、高エネルギーリン酸結合化合物は、費用の最も大きい部分を占める。試薬の価格に基づく計算は、PEPが総反応費用の70%以上を占めることを示している。おそらく、市販のATP再生化合物の最も安価な材料はアセチルリン酸であろう。しかし、ピルビン酸の費用はアセチルリン酸と比較するとほぼ無視でき、PEPの場合ではなお言うまでもなく、この系はタンパク質の細胞不含産生のための試薬の費用を大きく減少させるであろう。さらに、ピルビン酸オキシダーゼの費用は、S30抽出物の調製のために用いられる大腸菌株においてそれをクローニングすることによって削減することができる。
【0117】
著しく長い反応期間を維持しながら、本発明の系のタンパク質合成の初速度を増強するための様々な努力によって、バッチ形状での細胞不含タンパク質合成系を開発してもよく、これによって生物活性タンパク質のファミリーの経済的な、多様な産生が可能となる。さらに、そのようなアプローチは、工業用タンパク質を経済的で大規模に産生するための新しいアプローチの開発に貢献しうる。
【0118】
実施例 10
エネルギー源の繰り返し付加によるタンパク質合成
合成反応は、PEPとアミノ酸の混合物を20分毎にPEPシステムに加えたこと、そしてピルビン酸とアミノ酸の混合物を1時間毎にピルビン酸系に加えたことを除いては、CATの合成に関して実施例8および実施例9に記載したように設定した。いずれの場合においても、当初用いた同じ濃度を毎回加えた。結果を表1および図9Aと9Bに示す。
【0119】
【表1】
*20分毎に加える。
#1時間毎に加える。
**当初の反応容量の収率/ml。
【0120】
明らかに、ピルビン酸系は、PEPシステムと比較してはるかに長いタンパク質合成期間およびはるかに高い産物収率を可能にする。ピルビン酸はより安価であるのみならず、新しい系は同様に、アミノ酸とエネルギー源とを繰り返し加えることによって伸長させると、少なくとも2倍多くの産物を生じうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレインキュベーション後のアミノ酸とエネルギー源の添加による影響を示すグラフである。
【図2】 ピルビン酸とアミノ酸の添加による効果の時間経過を示したものである。
【図3】 インビトロタンパク質合成の際のアミノ酸濃度の変化を示す。
【図4】 合成反応に対する特定のアミノ酸の補充の効果を示したものである。
【図5】 アルギニンの枯渇の際のスペルミジンの効果を示す。
【図6】 asxの生成に対するシュウ酸の効果を示す。
【図7】 シュウ酸存在-非存在下でピルビン酸をエネルギー源として用いたタンパク質合成の時間経過(time course)である。
【図8】 シュウ酸存在-非存在下でホスホエノールピルビン酸をエネルギー源として用いたタンパク質合成の時間経過である。
【図9】 大腸菌におけるピルビン酸の代謝経路を図示している。
【図10】 プトレッシンとスペルミジンの形成に至る代謝経路を図示している。
【図11】 インビトロタンパク質合成におけるATPの再生を図示する経路図である。図11Aはホスホエノールピルビン酸(PEP)およびピルビン酸キナーゼ(PK)を用いた従来のスキームを示す。図11Aはホスホエノールピルビン酸(PEP)とピルビン酸キナーゼ(PK)を用いた従来の図式を示している。図11Bはピルビン酸、ピルビン酸オキシダーゼ(Pox)そして内在性のアセチルキナーゼ(AcK)の利用を表している。
【図12】 種々の条件の下、反応混合液における無機リン酸の蓄積を表しているグラフである。
【図13】 タンパク質合成のためのエネルギー源としてのピルビン酸の使用を図示したグラフである。
【図14】 PEP(白丸)およびピルビン酸(黒丸)を用いた従来のシステムにおけるCAT合成の時間経過である。
【図15】 PEP(白丸)およびピルビン酸(黒丸)をインキュベーションをしている時の、CATのmRNAの濃度の時間経過である。
【図16】 インビトロで合成されたCATのSDS-PAGE解析である。
【図17】 エネルギー源としてPEPあるいはピルビン酸を用いたタンパク質発現を示している。
【図18】 外因性の無機リン酸とマグネシウムイオンの濃度に対するCATおよびhLT産生の異なった感受性を表したグラフである。
【図19】 エネルギー源の反復された添加による影響を表している。
Claims (1)
- 無細胞系の微生物細胞抽出物を含む反応混合物であって、ピルビン酸代謝の代謝阻害剤としてシュウ酸を含む反応混合物においてポリペプチドを合成する段階を含む、無細胞系のポリペプチド合成法。
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