JP2004513652A - エネルギー源として解糖中間体を使用するインビトロにおけるタンパク質合成方法 - Google Patents
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Abstract
合成にATPが必要な生体分子のインビトロ合成を増加させるための組成物および方法が提供される。例えば、核酸、ポリペプチドおよび複雑な炭水化物のようなポリマーの合成は特に興味深い。NADHまたはNAD+の添加と組み合わせて、解糖中間体またはグルコースをエネルギー源として使用する。
Description
【0001】
序文
タンパク質や他の生体高分子の方向付けされた合成は、生化学の大いなる達成点であると言える。組換えDNA技術の発展は、高度に精製されたコード配列の特徴付けと合成を可能にし、高度に精製されたタンパク質を生産するために使用され、該タンパク質は、天然の細胞では微量しか手に入らない。ポリペプチド鎖は、化学的あるいは生物学的方法で合成することができる。生物学的合成は、細胞環境内で行なわれ、またはタンパク質をインビトロで合成するためには、細胞抽出物およびコード配列が使われる。
【0002】
数十年に渡り、インビトロのタンパク質合成は、クローニングされたりまたは合成された遺伝物質の、実験室規模の発現のための効果的な手段として役立ってきた。近年インビトロのタンパク質合成は、細胞内発現に伴う不都合さのため、伝統的な組換えDNA技術にとって代わるものとみなされてきた。インビボでタンパク質は、細胞の成長とともに合成される幾種かの酵素により分解されたりまたは修飾されたりし、合成の後、グリコシレーション、脱アミド化、または酸化のような翻訳後プロッセッシングにより修飾される。さらに、多くのタンパク質産物は代謝過程を阻害し、かつそれらの合成は細胞を再生産し、遺伝的情報を保護するのに要求される他の細胞内工程と競合しなければならない。
【0003】
遺伝子発現の細胞調節と本質的に掛け離れているので、インビトロのタンパク質合成は、細胞傷害性があったり、不安定であったり、または不溶性であったりするタンパク質を合成するのに有利である。インビボでは、発現レベルが生産物の濃度によって調節されているため、あらかじめ設定された濃度以上にタンパク質を過剰生産することは難しいと言える。細胞の中に蓄積されたタンパク質の濃度は細胞の増殖度に影響を与え、所望のタンパク質を過剰生産させることは難しい。単離と精製の過程において多くの種類のタンパク質は、不溶性または不安定で、かつ細胞内プロテアーゼにより分解されるか、インクルージョンボディー(inclusion body)として凝集し、損失の割合が高い。
【0004】
インビトロ合成はこれらの多くの問題を克服する。さらに多重配置での様々なタンパク質の同時進行で迅速な発現を通して、この技術は研究レベルでの組み合わせアレイの開発、そしてタンパク質のスクリーニングについて貴重な手段を提供する。さらに、様々な天然に存在しないアミノ酸が、ある特定の目的のために効果的にタンパク質に取り入れられる(Noren ら(1989) Science 244: 182−188) 。しかしこのような有望な局面にもかかわらず、インビトロの系は実践的な代替物として広く受け入れられているわけではない。それは主として、タンパク質合成の低収率化を招くような短い反応時間であるためであり、反応成分のコストが高いためである。
【0005】
Spinnら(1998) Science 242: 1162−1164によるインビトロタンパク質合成系の連続した流れ作業の開発は、反応を数時間に延ばすことができることを証明した。それ以来多くのグループがこのシステムを再現し改良して来た(Kigawaら(1991) J. Biochem. 110: 166−168;Endoら(1992) J. Biotechnol. 25: 221−230)。最近、KimおよびChoi (1996) Biotechnol. Prog. 12: 645−649は、単純な透析膜反応装置を用いたセミ連続操作を取り入れることにより、バッチ法と連続フローシステムの長所を合わせることができることを報告した。彼らは従来のバッチシステムの初期速度を維持しつつ、連続フローシステムの伸長された反応時間を再現することができた。しかし連続的および半連続的取り組みは高価な試薬を多量に必要とし、これは生産収率の増加よりも有意に大きく増加する。
【0006】
従来のバッチシステムにおいていくつかの改良がなされた(Kimら、(1996) Eur. J. Biochem. 239: 881−886;Kuldlickiら(1992) Anal. Biochem. 206: 389−393; Kawarasakiら(1995) Anal. Biochem. 226: 320−324)。半連続システムは、伸長された時間におよんでタンパク質合成の初期速度を維持するが、従来のバッチシステムにもまだいくつかの特典がある。例えば操作の簡便さ、簡単にスケールアップできること、試薬の低価格性、そして再現性の良さである。さらにバッチシステムは、同時に多くの遺伝学的材料を発現させるマルチプレックス形式で、簡単に実施されることができる。
【0007】
最近、PatnaikとSwartz (1998) Biotechniques 24: 862−868は、タンパク質合成の初期速度を、反応条件の徹底した最適化により、インビボの発現と同様のレベルまで増強することができると報告した。濃縮段階なしに調製した従来の細胞抽出物を用いて、そのような高速のタンパク質合成を彼らが達成したことは注目に値する(Nakanoら(1996) J. Biotechnol. 46: 275−282; Kimら (1996) Eur. J. Biochem. 239: 881−886)。Kigawaら(1999) FEBS Lett 442: 15−19は、濃縮された抽出物とエネルギー源としてのクレアチンリン酸を用いた高いレベルのタンパク質合成を報告している。この結果は、特にタンパク質合成反応の長い寿命という観点からのバッチシステムのさらなる改良が、インビトロタンパク質合成の生産性を十分に増加させることを示唆する。しかし、従来のバッチシステムにおけるタンパク質合成の早期の停止の理由は依然としてわかっていない。新規のATP再生系はKimおよびSwartz(1999)Biotechnol. Bioeng. 66(3):180−188に記載されている。
【0008】
上で示したように、タンパク質の生産性および生産量の両方とも依然として低く、これは無細胞系のタンパク質合成の産業化を実施する上での障害となっている。よって、比生産速度およびシステム操作の長さを増加させることによる、タンパク質の全生産力の観点からの改良が特に必要となる。商業的な方法の発展のために、これらの条件の最適化が非常に興味を持たれている。
【0009】
発明の概要
タンパク質分子のインビトロ合成を増加させるための組成物および方法が提供される。触媒量を添加されるNADHまたはNAD+と組み合わせて、解糖中間体またはグルコースがエネルギー源として使用される。コエンザイムAを反応混合物に含ませてもよい。また、望ましくない反応を触媒する酵素の阻害は、反応混合物に阻害化合物を添加するか、原因となる酵素活性を低下もしくはなくすように反応混合物を改変するか、またはこの2つの組み合わせによって達成される。
【0010】
態様の詳細な説明
ATPの発生で反応が促進される解糖経路を使用することによってタンパク質分子のインビトロ合成を増加させるための組成物および方法を提供する。反応混合物中の解糖経路の活性を維持するために、NAD+/NADHを反応に添加する。例としては、酵素ヘキソキナーゼ、ピルビン酸またはホスホエノールピルビン酸(PEP)と組み合わせて、グルコースをエネルギー源として使用する。好ましい態様においては、アセチルCoAも反応混合物に含まれる。ATPから加水分解されるリン酸塩をグルコースまたはピルビン酸の酸化過程で再利用することにより、合成反応に阻害作用をもたらしうる遊離のリン酸塩が最終的に蓄積することを防ぐ。
【0011】
定義
本発明が、ここで述べられている特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物の種や属、試薬に制限されるものでないことが理解されていなければならない。さらに本明細書において使用される用語は、ある特定の態様のみを述べる目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲にのみ制限され、本発明の範囲を制限することを意図したものでないことが理解されていなければならない。
【0012】
本明細書で用いられているように、単数形である「a」、「and」、そして「the」は文脈が明白に示図しない限り、複数形も含む。よって例えば「a cell」というものはそのような細胞の複数形を含み、「the protein」というものは一つ又は複数のタンパク質および当業者の間で知られているそれらに等価なもの、その他を含む。明白に示されていない限り、本明細書で用いられている全ての専門的そして科学的用語は、この発明が所属する当業者に普通に理解されているものと同じ意味を有している。
【0013】
本明細書で用いる、グルコースまたは解糖中間体エネルギー源とは、ADPからATPへ合成するためのエネルギーを提供する、解糖経路の一部である化合物を意味する。これらのエネルギー源には、グルコース、グルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、フルクトース−1,6−二リン酸、トリオースリン酸、3−ホスホグリセレート、2−ホスホグリセレート、ホスホエノールピルビン酸(PEP)およびピルビン酸が挙げられる。好ましいエネルギー源はPEP、ピルビン酸およびグルコース−6−リン酸である。
【0014】
エネルギー源は、リン酸塩に関して恒常的であってもよく、すなわち、無機リン酸塩の蓄積をもたらさない。このような二次エネルギー源には、ATPの加水分解によって生じる遊離のリン酸塩が再利用される。高エネルギーリン酸結合源を外因的に添加する代わりに、必要な高エネルギーリン酸結合をインサイチュー、例えば、酸化反応との共役によって形成する。恒常的なエネルギー源としては、典型的には、高エネルギーリン酸結合自体を欠損しており、従ってATP再生過程中の反応混合物中に存在する遊離のリン酸塩が使用される。無機リン酸塩は合成の阻害的な副産物となることがあるので、インビトロでは合成を維持する期間が延長されることがある。恒常的なエネルギー源は、高エネルギーリン酸結合の形成を触媒する酵素と組み合わせて提供されてもよい。
【0015】
リン酸代謝に恒常的である例示的な解糖中間体はピルビン酸およびグルコースである。グルコースを使用する場合には、酵素ヘキソキナーゼを、細胞抽出物に存在していなければ含ませることが望ましい。しかし、NADHが存在する場合には、ピルビン酸オキシダーゼなどの再生酵素を含ませる必要はない。
【0016】
エネルギー源は、生物学的に許容されうる好適な塩として、または適用可能である場合には、ピルビン酸(pyruvic acid)のような遊離酸として供給されてもよい。合成初期のエネルギー源の最終濃度は、通常では少なくとも約1 mMであり、さらに通常では少なくとも約10 mMであり、約1000 mMを超えず、通常約100 mMを超えない。反応時間を延長するために、追加の量を合成進行中の反応混合物に添加してもよい。
【0017】
補因子:
外因性補因子NADHまたはNAD+(β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を、少なくとも0.1 mM、好ましくは0.2〜1 mMで、通常約10 mMを超えない濃度で反応混合物に添加する。
【0018】
必要に応じて、アセチルCoA(アセチルコエンザイムA)またはコエンザイムAも反応混合物に含ませる。それは、エネルギー源としてグルコースまたは解糖中間体を使用する際に必要ではないが、反応を増強することが見出されている。有用な濃度は少なくとも約0.05 mMであり、通常少なくとも約0.1 mMであり、約1 mMを超えず、通常約0.5 mMを超えない。
【0019】
グルコースの使用:
恒常的なエネルギー源がグルコースである場合には、グルコースからグルコース−6−リン酸が形成されるのを触媒するために、酵素を反応混合物に含ませる。EC 2. 7. 1.1,は、一般に、この目的のために使用される。ヘキソキナーゼは広範囲の市販品から購入可能であり、数多くの種から単離され、クローニングされている。例として、SwissProt P27595, HXK1_BOVIN; P19367, HXK1_HUMAN; P17710, HXK1_MOUSE; P05708, HXK1_RAT; Q09756, HXK1_SCHPO; P04806, HXKA_YEAST; Q42525, HXK_ARATH; P50506, HXK_DEBOC; P80581, HXK_EMENI; P33284, HXK_KLULA; Q02155, HXK_PLAFA; Q26609, HXK_SCHMAに相当する酵素が挙げられる。
【0020】
グルコースがエネルギー源である場合には、反応混合物は、ATPプールを維持するのに十分な濃度のヘキソキナーゼ、通常少なくとも約0.1U/ml、さらに通常では少なくとも約1U/mlで、好ましくは少なくとも約10U/mlを含み、この場合の単位は、1単位が、30℃、pH 8.0におけるグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼとの共役アッセイ系において1分あたり1μmoleのNADを還元するものと定義される。さらに高濃度であってもよいが、一般に約1000U/mlより低いことが当業者によって理解される。
【0021】
ヘキソキナーゼは種々の方法で反応混合物に提供することができる。精製または半精製酵素を反応混合物に添加することができる。市販の調製物が利用可能であり、または従来の方法により天然もしくは組み換え型の起源から酵素を精製することができる。例えば、S. セレビシエ(S. cerevisiae)ヘキソキナーゼ PII遺伝子、アクセッション番号M14410またはヘキソキナーゼPII、アクセッション番号M14411のような、ヘキソキナーゼの遺伝子配列を組み換え型の酵素源として使用することができる。これらは共にKopetzki et al.(1985) Gene 39: 95−102等に記載されている。
【0022】
酵素はまた、合成に使用する抽出物に含ませることができる。例えば、抽出物は、タンパク質合成のための大腸菌(E. coli)から誘導することができる。抽出物を産生するために使用する大腸菌は、好適なヘキソキナーゼをコードするように遺伝的に改変されていてもよい。または、合成反応がタンパク質合成である場合には、好適な量のヘキソキナーゼが合成過程中に産生されるように、鋳型、例えば、ヘキソキナーゼをコードするmRNA、ヘキソキナーゼの好適な発現構築物を含むプラスミド等、を反応混合物に添加することができる。
【0023】
ピルビン酸およびPEPの使用:
アスパラギン酸およびアスパラギンはホスホエノールピルビン酸から形成される。酵素ホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(pps)はピルビン酸をPEPに変換し、合成されるPEPの1分子あたり2当量の高エネルギーリン酸結合(ATPがAMPに変換されている)を消費する。ピルビン酸をエネルギー源として使用する場合には、この酵素によりピルビン酸およびATPが消費される可能性があり、それによってタンパク質合成反応からエネルギー供給が奪われる。
【0024】
ppsを阻害することが報告されているシュウ酸を添加すると(NarindrasorasakおよびBridger(1978) Can. J. Biochem. 56: 816−9)、PEPおよびピルビン酸系の反応期間を延長することができた。ピルビン酸およびPEPをエネルギー源として用いる場合には、シュウ酸によりppsを阻害することにより、asp/asn産生速度が低下し、タンパク質収率が増加した。シュウ酸は、少なくとも約0.5 mMで約100 mMを超えない、通常少なくとも約1 mM、好ましくは少なくとも約3 mMの濃度で添加される。
【0025】
PEPおよびピルビン酸系においてエネルギー源を効率的に使用するためには、酸素を消費してピルビン酸を酢酸に変換する大腸菌ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(pps)の遺伝子を阻害するか、または不活性化することができる。大腸菌ホスホエノールピルビン酸シンセターゼのコード配列はGenbank番号X59381で利用することができ、ニールスバッチ(Niersbach)ら、(1992) Mol. Gen. Genet. 231: 332−336にも報告されている。大腸菌ピルビン酸オキシダーゼのコード配列はGenbank、第X04105号で利用することができ、グラーバー(Grabau)およびクローナン(Cronan)(1986)Nucleic Acids Res. 14: 5449−5460にも報告されている。
【0026】
インビトロ合成:
本明細書で用いられているように、生物学的抽出物および/または厳密に定義された試薬から成る反応混合液における、高分子の無細胞合成を指す。反応混合液は少なくとも、エネルギー源であるATP、例えばDNA、mRNAなどの高分子の産生のための鋳型、アミノ酸、核酸、ならびに酵素および例えばリボソーム、tRNA、ポリメラーゼ、転写因子などの合成のために必要な他の試薬などの補因子、から成る。そのような合成反応系は当技術分野においてよく知られており、文献で報告されている。無細胞系の合成反応はバッチ法、連続フロー法、あるいは半連続フロー法で実行され、これは当技術分野において知られている。
【0027】
反応混合液:
本明細書で用いられているように、核酸の鋳型からポリペプチドの合成を触媒することができる反応液をいう。混合液は望ましくない酵素反応を減少させる代謝阻害剤を含む場合もある。代わりに、あるいはそれと組み合わせて、増強された反応混合液は、アミノ酸の枯渇あるいは蓄積をもたらす望ましくない副反応に関わる酵素活性が減少するように、遺伝的にあるいは他の段階により操作されるであろう。
【0028】
本発明の好ましい態様として、反応液は例えば大腸菌(E. coli)S30の抽出物のような細菌細胞由来の抽出物を含み、これは当技術分野において知られている。便宜上、抽出物の供給源として用いられる生物は供給源生物と呼ぶことにする。そのような抽出物はリボソームやタンパク質合成に必要な他の因子の有効な供給源であるが、タンパク質合成に関与しないにもかかわらずATP、ピルビン酸あるいは他の試薬を消費するような望ましくない副反応に関わる外因性酵素を少量含む場合がある。
【0029】
本明細書で用いられているように、外因性という用語は抽出物に存在する酵素、因子等を言及する際に用いる。外因性成分は、添加によって抽出物中に導入されるものであって、合成時に添加されても、抽出物の開始材料として用いる細胞を遺伝子操作または他の操作をすることで添加されてもよい。例えば関心対象の外因性酵素をコードするプラスミドは、抽出物を調製する前に細菌細胞へ添加されうる。
【0030】
活性のある抽出物を生産する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Pratt (1984)、「原核生物の無細胞系での連結した転写と翻訳(coupled transcription−translation in prokaryotic cell−free systems)」、p. 179−209、Hames, B. D.およびHiggins, S. J.監修、「転写と翻訳:実践的な取り組み方(Transcription and Translation: a practical approach)」、IRL Press、New Yorkにそれを見出すことができる。Kudlickiら(1992) Anal. Biochem. 206(2): 389−93は、超遠心によりS30からリボソームを集めることにより、S30の大腸菌(E. coli)の無細胞抽出物を修飾している。
【0031】
ある特異的なプロモーターの制御下で、遺伝子の発現において抽出物が最適化され得る(例えば、Kudlickiら(1992) Anal. Biochem. 206(2): 389−93を参照されたい。この系は大腸菌(E. coli)の粗抽出物(内在性のT7RNAポリメラーゼを含む細胞より調製されている)とリファンピシン(大腸菌(E. coli)のRNAポリメラーゼの阻害剤)から成る)。Kimら(1996) Eur. J. Biochem. 239: 881−886は試薬濃度を最適化することにより、タンパク質の産生をさらに増強させている。
【0032】
反応混合液は、望ましくない酵素活性の代謝阻害剤を含み得る。そのような阻害剤は反応の最終生成物である場合が多々ある。それはフィードバック機構で阻害する。供給源生物の代謝経路に基づいて特異的な阻害剤が決定される。例えば大腸菌(E. coli)、酵母(S. cerevisiae)、ヒト(H. sapiens)などのような多くの細菌や真核生物の種におけるこれらの経路は、当技術分野においてよく知られている。タンパク質合成を増大させる一方で、望ましくない酵素活性を阻害するのに十分な濃度になるように阻害剤が添加される。特に興味深い経路は、大腸菌(E. coli)細胞におけるピルビン酸に関するもので、オキサロ酢酸からのアスパラギン酸の合成などが含まれる。
【0033】
添加する代謝阻害剤についての代わりの態様として、望ましくない酵素が取り除かれあるいは反応混合液から枯渇される。発明の一つの態様として、酵素のコード配列は、コード配列の全てあるいは一部の欠失、フレームシフトを引き起こす挿入、ドミナントネガティブ突然変異などにより、供給源生物の染色体上でノックアウトあるいは不活性化される。大腸菌(E. coli)を含む多くの生物のゲノムは完全に配列解析されており、遺伝学的修飾が可能である。例えばArigoniら(1998) Nat Biotechnol 16 (9): 851−6によりマーカーレス・ノックアウト法が述べられている。
【0034】
Hoangら(1998) Gene 212: 77−86により標的遺伝子の不活性化の好ましい方法が述べられている。この方法では、組換え反応の選択マーカーであるテトラサイクリン耐性遺伝子とレバン・サッカラーゼ(sacB)をコードする遺伝子を含んでいる遺伝子置換ベクターが用いられている。標的遺伝子は最初クローニングされ、好ましくは遺伝子の重要な領域を取り除かれ変異される。この遺伝子は、染色体遺伝子置換が可能となるように設計されたベクターに、ライゲーション反応によって挿入される。大腸菌(E. coli)はそれらのベクターにより形質転換される。染色体上の標的遺伝子の部位にプラスミドを取り込んだ細胞が選択され、ショ糖存在下で細胞を増殖させることにより、そのプラスミドが染色体から遊離するようにする。ショ糖はsacB遺伝子が染色体上に存在すると毒性を示す。正しく変異した細胞株がテトラサイクリン感受性とショ糖耐性という表現型を基に選択される。PCR分析あるいはDNA配列解析により、望ましい遺伝学的変化が起こったことが確認される。
【0035】
しかし、タンパク質合成反応の持続時間と収率を減少させる酵素は、供給源生物の生育に不可欠である場合もある。その場合、条件的ノックアウト法が用いられる。例えば、標的遺伝子に対する、誘導性プロモーター上のアンチセンス配列が供給源生物の中へ導入される。細胞は一定期間増殖され、標的酵素を細胞から枯渇させるためにアンチセンス構造物が誘導される。
【0036】
酵素は細胞の破壊の後および細胞抽出物の使用の前に細胞抽出物から除去されうる。標的酵素に対して特異的な親和性を持つ抗体や抗体断片を使用したり、細胞抽出物から容易に除去することを可能にする標的酵素の一部として発現されるアフィニティータグを使用したりする、アフィニティー精製やその他従来の精製法を含めた、当技術分野において知られている幾種類かある方法のうちのどれかがタンパク質の精製に用いられる。
【0037】
その他の態様として、ファージディスプレイあるいは他のうまく開発された技術を用い、標的酵素に特異性を有する抗体あるいは抗体断片(例えばFabあるいはscFV)が選択される。その抗体あるいは抗体断片は次に、いくつかの固定化技術のどれかを用いて、いくつかの精製用ビーズあるいはレジンあるいは膜のどれかに固定化される。固定化された抗体は細胞抽出物と接触させられ、標的酵素と結合し、固定化された抗体/酵素複合体は、濾過あるいはゆるやかな遠心操作で除去される。
【0038】
例えば、標的酵素のコード配列は修飾され、Flag(登録商標)(Immunex Corpで開発され、Stratageneで販売されている)による伸長やポリヒスチジンテールのようなタグを持つ場合もある。多くの他の例が公にされてきており、当業者に公知である。タグのついたタンパク質は次に、適切なアフィニティーマトリックスあるいはカラムを通すことにより除かれる。アミノ酸の伸長とその結合パートナーは、細胞抽出物の安定性が保たれ、その化学的組成が著明には変化しないような条件下で、特異的結合が起こるように選択される。
【0039】
さらに他の例として、標的酵素あるいは酵素は、基質アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水結合クロマトグラフィー、電気泳動的分離、あるいはタンパク質精製の技術分野において実践されているその他の方法のような、タンパク質精製においてよく用いられているいくつかの方法のどれを用いても分離することができる。
【0040】
インビトロ合成法
対象の系は、DNA鋳型またはRNA鋳型からのRNA転写を含めたインビトロタンパク質合成に有用である。再生エネルギー源を利用する方法はまた、タンパク質の折りたたみやタンパク質輸送のようなインビトロシステムにも応用可能である。関心対象の合成システムは、DNAの複製、タンパク質合成、さらにDNAの増幅、DNAあるいはRNAのポリペプチドへの翻訳、そして単純な糖からの複合糖質の合成を含む。反応は大規模あるいは小規模反応装置を利用し得る。あるいは多数の同時合成を実行するために多重処理され得る。連続反応は、試薬の流れをもたらすためにフィード機構を用いており、工程の一部として最終生産物を単離し得る。バッチシステムも関心対象の。この場合、活発な合成の期間を長引かせるため、追加の試薬が導入される。反応装置はバッチ、伸長型バッチ、半バッチ、半連続性、フェドバッチそして連続性などのどのモードでも動かせる。これは応用目的に応じて選択される。
【0041】
特に興味深いものは、タンパク質を産生させるためのmRNAの翻訳である。この翻訳はDNAの鋳型からのmRNAのインビトロ合成と連結している。そのような無細胞系はmRNAの翻訳のために必要な因子を全て含んでいる。例えばリボソーム、アミノ酸、tRNA、アミノアシルシンセターゼ、伸長因子、開始因子である。当技術分野において知られている無細胞系には、小麦胚抽出物(Robertsら(1973) P.N.A.S. 70: 2330)、網状赤血球抽出物(Pelhamら(1976) Eur. J. Biochem. 67: 247)、大腸菌(E. coli)抽出物などが含まれる。これらは活性のある内在性のmRNAを除去するために、好ましいヌクレアーゼで処理される。
【0042】
無細胞系抽出物のような上記の成分に加えて、アミノ酸およびエネルギー源、タンパク質合成に特別に必要な材料が反応に加えられ得る。これらの材料には、塩、ポリマー性の化合物、サイクリックAMP、タンパク質あるいは核酸分解酵素の阻害剤、タンパク質合成の阻害剤あるいは調節因子、酸化/還元調整剤、非変性界面活性剤、緩衝液成分、スペルミン、スペルミジンなどが含まれる。
【0043】
塩は好ましくは、酢酸または硫酸のカリウム、マグネシウム、アンモニウムそしてマンガン塩を含み、これらのいくつかは対陽イオンとしてアミノ酸を持つ場合がある。ポリマー化合物としてはポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチル、四級アミノエチルそしてアミノエチルがある。酸化/還元調整剤としては、ジチオスレイトール、アスコルビン酸、グルタチオンそして/あるいはそれらの酸化物がある。さらにトライトンX−100のような非変性界面活性剤が0M−0.5 Mの濃度で用いられる。スペルミンとスペルミジンがタンパク質合成能力を高めるのに用いられ、そしてcAMPが遺伝子発現の調節因子として用いられる。
【0044】
反応培養液のある特定の成分の濃度を変化させる時、それに応じて他の成分の濃度も変化させられる。例えばヌクレオチドやエネルギー源の化合物のようないくつかの成分の濃度は、他の成分の濃度の変化と一致して同時に制御され得る。さらに反応装置内の成分の濃度レベルは刻々と変化する。
【0045】
好ましい反応はpH5〜pH10の範囲、20℃〜50℃の範囲の温度そしてより好ましくはpH6〜pH9の範囲、そして25℃〜40℃の範囲の温度で維持される。
【0046】
連続操作モードでタンパク質単離手段を用いる時、反応装置からの産物のアウトプットは膜を通ってタンパク質単離手段の方へ流れる。半連続操作モードにおいては、膜の外側あるいは外側の表面は、あらかじめ決められた順で周期的に変化するあらかじめ決められた溶液に接触させられる。これらの溶液はアミノ酸そしてヌクレオチドのような基質を含んでいる。この時反応装置は、透析、ダイアフィルトレーションバッチあるいはフェドバッチモードで操作される。フィード溶液が同じ膜あるいは異なった注入ユニットを通して反応装置に供給され得る。合成されたタンパク質は反応装置の中で蓄積され、システム操作の完了の後、タンパク質精製の通常の方法により単離され精製される。
【0047】
試薬の流れがある場合、液体の流れの方向は膜に対して垂直そして/あるいは接線方向である。接線方向の流れは、再利用しているATPや膜の詰りを防ぐのに効果的であり、垂直の流れの上に重ね合わすことができ得る。膜に対して垂直な流れは、陽圧ポンプあるいは減圧吸引ポンプにより引き起こされたり影響を受けたりする。膜の外側表面に接している溶液は、周期的に替えられ、安定した膜に対して接線方向の流れとなり得る。反応装置は内部であるいは外部から、適切な撹拌方法でかき混ぜられる。
【0048】
反応装置内でタンパク質合成時、望ましいタンパク質を選択的に単離するタンパク質単離手段は、合成された望ましいタンパク質を吸着する成分を携えた、固定化された、抗体分子やその他の分子でコーティングされた粒子が詰め込まれたユニットと正しい大きさの細孔を有した膜を含む。好ましくは、その使用を交互に行なうために、タンパク質単離手段は二つのカラムを含んでいる。そうでない場合、伸長されたベッドクロマトグラフィーを用いてタンパク質産物が吸着される場合がある。この場合膜は使用される場合とされない場合がある。
【0049】
翻訳反応において産生されるタンパク質の量は様々な方法で測定することができる。一つの方法は、翻訳される特定のタンパク質の活性を測るアッセイの有効性に依存している。タンパク質活性を測定するアッセイの例として、ルシフェラーゼのアッセイ系、あるいはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼのアッセイ系がある。これらのアッセイは、翻訳反応より産生される機能的に活性のあるタンパク質の量を測定するものである。活性のアッセイ法は、不適当なタンパク質の折りたたみ、あるいはタンパク質活性に必要な他の翻訳後修飾の欠如により活性を失ったが全長は有しているタンパク質を測定しない。
【0050】
インビトロの転写および翻訳に連結して産生されたタンパク質の量の測定のその他の方法として、既知の量の35S−メチオニンあるいは3H−ロイシンのような放射能標識されたアミノ酸を用い、次に新しく翻訳されたタンパク質に取り込まれた放射能標識されたアミノ酸を測定するというような反応を行なう場合などがある。取り込みによるアッセイは、先端を削られたタンパク質産物を含む、インビトロ翻訳で産生される全てのタンパク質の、放射能標識されたアミノ酸の量を測定する。放射能標識されたタンパク質はさらにタンパク質ゲルで分離され、オートラジオグラフィーにより、産物が正しい大きさでありまた副次的なタンパク質産物が産生されていないことが確認される。
【0051】
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的そして科学的用語は、本発明が関係する当業者が普通に理解するものと同じ意味を有している。本明細書で述べられているものと似ている、あるいは等価な方法、装置そして材料は、本発明を実践したり、試験したりするのに用いられ得るが、好ましい方法、装置そして材料がこれから述べられる。
【0052】
本明細書で言及されている全ての刊行物は記載および開示の目的で、参照として本明細書に取り入れられている。例えば刊行物で記載されている細胞株、構築物、そして方法論があり、これらは現在述べられている本発明と関連して用いられ得る。上記および本文を通じて議論される刊行物は、本出願の出願日以前の開示のためにのみ提供される。先行発明によって、本発明者らがそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして、本発明における刊行物が解釈されてはならない。
【0053】
以下の実施例は、当業者に完全な開示といかに本発明を作成し利用するかの記載を提供するために出されたもので、本発明に係るものの範囲を制限することを意図したものではない。用いられる数値(例えば量、温度、濃度など)に関して正確を来たすように努めているが、若干の実験誤差および偏差は考慮に入れられなければならない。特に明記しない限り、部分とは重量の部分であり、分子量は平均の分子量で、温度は摂氏、圧は大気圧かその近辺である。
【0054】
実験
実施例 1
ピルビン酸、グルコースまたは解糖中間体は、任意の外因性酵素が存在しない場合でも、ATP再生のエネルギーを提供することができる。本発明の内容を制限するわけではないが、ピルビン酸が合成反応にATP再生の可能性を提供する作用機序に2つの経路を提案することができる。第1の経路では、ATP再生は、電子伝達リン酸化反応により達成される。抽出物は総細胞溶解液から調製されるので、抽出物は、呼吸鎖成分が適切に封入され、膜が裏返った小胞を含有する可能性がある。従って、内因性ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるアセチル−CoAへの変換後、ピルビン酸はTCA回路に入ってNADHを産生し、呼吸鎖およびF1F0ATPアーゼを使用してATPを再生する。
【0055】
第2の提案されている経路では、産生されたアセチルCoAは、ホスホトランスアセチラーゼによってアセチルリン酸に変換される。次いで、得られたアセチルリン酸をATP再生に使用する。いずれの場合でも、ピルビン酸の酸化は、任意の有害な副産物を蓄積することなく、ATP産生のエネルギーを提供し、外因性酵素を必要としない。または、ホスホエノールピルビン酸を、糖分解によって得られるエネルギーおよびインサイチューATP産生から得られるエネルギーを組み合わせて、エネルギー源として使用することができる。
【0056】
材料および方法
ホスホエノールピルビン酸(PEP)および大腸菌総tRNA混合物は、Roche Molecular Biochemicals社(インディアナ州インディアナポリス)から購入した。L−[U−14C]ロイシンはAmersham Pharmacia Biotechnology社(スウェーデン、ウプサラ)から購入した。他の試薬は全てSigma社(ミズーリ州セントルイス)から入手した。T7 RNAポリメラーゼは、ダバンロー(Davanloo)ら(1984)の手法に従い、大腸菌株BL21(pAR1219)から調製した。T7プロモーターとT7ターミネーターとの間に細菌クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)配列を含有するプラスミドpK7CATを、タンパク質合成の鋳型として使用した。プラスミドはQiagen社(カリフォルニア州バレンシア)のMaxiキットを使用して精製した。
【0057】
S30抽出物は、以前に記載されているように(Kimら、1996、上記、KimおよびSwartz(1999)、上記)、大腸菌K12(株A19)から調製した。標準的な反応混合物は以下の成分を含む:57 mMのHepes−KOH(pH 7.5)、1.2 mMのATP、各々0.85 mMのGTP、UTP、およびCTP、1 mMのDTT、0.64 mMのcAMP、200 mMのグルタミン酸カリウム、80 mMの酢酸アンモニウム、12 mMの酢酸マグネシウム、34 μg/mlのフォリン酸、6.7 μg/mlのプラスミド、33 μg/mlのT7RNAポリメラーゼ、各々500μMの20種の非標識アミノ酸、11μMの[14C]ロイシン、2%のPEG 8000、32 mMのPEP、ならびに0.24容量のS30抽出物。ピルビン酸またはグルコース−6−リン酸をATP再生化合物として使用した反応では、33 mMのエネルギー源を0.33 mM NADおよび0.26 mM CoAと共に添加した。ある種の反応では、二次エネルギー源の安定性を増加させるために、2.7 mMシュウ酸ナトリウムを使用した。反応は、15〜120μLの反応量で所定の時間、37℃で実施した。
【0058】
合成したタンパク質の量は、液体シンチレーションカウンター(Beckman LS3801)を使用して、Kimら、1996、上記、に記載されているように測定したTCA不溶物の放射活性から推定した。可溶性産物の量を測定するために、試料を12,000 gで10分間遠心分離し、上清中において、TCAにより沈殿させた放射性物質を測定した。合成したタンパク質の分子量を推定するためには、試料を、標準分子量マーカーと共に16% SDS−PAGEゲル(Invitrogen、カリフォルニア州)で分析した(Blu、Invitrogen、カリフォルニア州参照)。標準的な手法に従い、得られたゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色した。細胞抽出物のタンパク質濃度は、市販のアッセイ試薬(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使用して、ブラッドフォード(Bradford)の手法に従い、測定した。
【0059】
ATP濃度を測定するためには、ルシフェラーゼ溶液(0.1μg/mLのルシフェラーゼおよび125 μMのルシフェリン)を含有する不透明なマイクロタイタープレートに希釈した試料を添加し、発光強度をプレートルミノメーター(ML 3000、Dynatech Laboratories、バージニア州チャンティリー)で測定した。試料中のATP濃度は、ATP標準を用いて得られた検量線から求めた。合成したCATの酵素活性は分光光度的手法によって求めた。試料を水で40倍希釈した後、1 mLの事前に加温したアッセイ混合物(100 mMのTris−Cl(pH 7.8)、0.1 mMのアセチル−CoA、0.4 mg/mLの5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)、0.1 mM クロラムフェニコール)を入れたキュベットに10 μLの希釈した試料を添加し、412 nmにおける吸光度の増加率を測定した。1分あたりの吸光単位の変化を13.6で割って、結果は単位として得た(CAT1単位は、1分あたり1μmoleのクロラムフェニコールをアセチル化する)。
【0060】
結果
無細胞タンパク質合成の二次エネルギー源としてのピルビン酸の使用:
無細胞タンパク質合成反応過程中にATPを再生するための二次エネルギー源としてピルビン酸が働くことができることは以前に報告されている。その系では、酵素、ピルビン酸オキシダーゼはピルビン酸をアセチルリン酸に変換し、アセチルリン酸は内因性酢酸キナーゼによりATPを再生するために使用される。このピルビン酸オキシダーゼ依存系はエネルギー源のコストを実質的に削減し、タンパク質合成過程中ATPを安定に維持し、リン酸塩を蓄積しない。
【0061】
しかし、大腸菌酵素(E.C.1.2.2)はアセチルリン酸の形成を触媒しないため(それは、ピルビン酸をアセチルリン酸の代わりに酢酸に変換する)、ピルビン酸のアセチルリン酸への変換には、外因性酵素、ラクトバシラス(Lactobacillus)またはペディオコッカス(Pediococcus)種のピルビン酸オキシダーゼ(E.C.1.2.3.3)が必要である。従って、外因性ピルビン酸オキシダーゼが存在しない場合には、ATPは再生されず、タンパク質合成レベルは無視できるほどである。しかし、市販のピルビン酸オキシダーゼを使用すると、新たな系の経済的利点のいくつかを相殺する。この酵素は、ピルビン酸をアセチルリン酸に酸化するために酸素分子を必要とするので、酸素移動の限界のために、単純なバッチ構成では合成反応を容易にはスケールアップすることができない。
【0062】
これらの限界を回避するために、本発明者らは、外因性酵素および酸素の必要性をなくそうと試みた。無細胞系におけるATP再生に使用されるピルビン酸については、それはまずアセチルリン酸に変換される必要がある。大腸菌細胞では、ピルビン酸は直接アセチルリン酸に変換されない。代わりに、2つの異なる酵素がピルビン酸をアセチルCoAに変換させ、これを、ホスホトランスアセチラーゼによるアセチルリン酸の産生に利用することができる。第1に、ピルビン酸デヒドロゲナーゼはCoAおよびピルビン酸の縮合を触媒し、補因子としてのNADの存在下においてアセチルCoAを産生する。この反応の間、NADはNADHに還元される。一方、ピルビン酸ギ酸リアーゼもピルビン酸からアセチルCoAを産生し、副産物としてギ酸を産生することができる。これらの反応に必要な酵素は全て細胞抽出物に存在すると考えられた。従って、本発明者らは、無細胞タンパク質合成を支持して、ピルビン酸からのATPの再生を刺激するために、補因子、NAD、およびCoAの添加を試験した。
【0063】
補因子を含む、または含まない反応混合物に、33 mMのピルビン酸ナトリウムを添加した。2時間のインキュベーション後、NADおよびCoAの存在下では有意な合成が観察された(図1)。タンパク質合成の最終収率は、PEPを使用した反応の収率の約70%であった。補因子を用いない場合にピルビン酸を使用しても、任意の二次エネルギー源を用いない対照反応と等しく、タンパク質合成は低かった。ピルビン酸ギ酸リアーゼは補因子を必要としないので、ピルビン酸のアセチルCoAへの変換は、ピルビン酸ギ酸リアーゼではなくピルビン酸デヒドロゲナーゼによって達成されることをこの結果は示している。NADは触媒量(0.33 mM)しか必要とされないことから、NADもまた合成反応中に再生されることが明らかであると思われる。還元型NADは、ピルビン酸の乳酸への変換中に再酸化されると思われる。従って、ピルビン酸の酸化反応と還元反応とが共役することによって、NADが再利用される。最適なタンパク質合成にも触媒量のCoA(0.27 mM)が必要であった。ATP再生の仮定経路を図2に図示する。
【0064】
PEPから産生されるピルビン酸の使用:
従来のATP再生系でPEPが消費されると、副産物としてピルビン酸が産生される。ATP再生のためのピルビン酸使用の上記の結果に基づいて、本発明者らは、PEPから産生されるピルビン酸を二次的に使用することによりATP供給を増加させるために、従来の系へのNADおよびCoAの添加を試験した。図3Aは、そのような補因子が存在するとATP供給が改善されることを示している。特に、NADおよびCoAを添加すると、PEP系におけるATP濃度の初期の低下は実質的に遅くなった。
【0065】
ホスホエノールピルビン酸シンセターゼの強力な阻害剤であるシュウ酸塩は、ピルビン酸またはPEPを用いた合成反応においてATP濃度を増加させる。シュウ酸塩の影響は、NAD/CoAの存在下でも観察された。CAT合成の収率は、2.7 mMシュウ酸塩を添加しても増加した(図3B)。また、タンパク質合成は、アミノ酸の初濃度を増加することによってさらに刺激されることを本発明者らは発見した。ATP濃度が補因子およびシュウ酸塩を添加することによって増加される場合には、タンパク質合成の速度および期間は共に、アミノ酸の初濃度を2 mMに増加することによって有意に改善された(図3B)。より高い高濃度では同様の効果が得られなかった。結果として、1時間のインキュベーション後のCAT合成の最終収率は350μg/mLになった。さらに、報告されている手法に従い、新鮮なアミノ酸、PEP、およびマグネシウムを定期的に添加すると、合成反応は3時間を超えて持続し、最終収率は750μg/mLになった(図4)。合成されたCATは、クーマシーブルー染色後、SDS−PAGEゲル上に1つの強いバンドを示した。発現したCATの約60%は可溶性であり、測定した比活性は報告の値である125単位/mgに匹敵した(表1)。
【0066】
【表1】異なるATP再生系による3時間のインキュベーション後のCAT収率および比活性
*PEPから産生されるピルビン酸を使用するために、材料および方法の項に記載したように、NAD、CoA、およびシュウ酸塩を反応混合物に添加した。
【0067】
別の二次エネルギー源としてのグルコース−6−リン酸:
ピルビン酸をATP再生に使用できると思われる観察から、本発明者らの無細胞系においてATPを再生するために早期解糖中間体を使用することができるかどうかを本発明者らはさらに検討した。グルコース−6−リン酸は解糖経路の最初の中間体であるので、その使用を検討した。33 mMのグルコース−6−リン酸をピルビン酸/NAD系と同じ反応条件下で使用した場合、グルコース−6−リン酸はタンパク質合成を支持した。また、初速度は、PEPによる反応より実質的に低かったが、タンパク質合成は2時間以上持続した(図5A)。結果として、インキュベーション終了時には約30%以上のCATが産生された。おそらく、これは、ATP濃度が極めて長く維持されたことによる。グルコース−6−リン酸によるタンパク質合成過程中のATP濃度の時間経過は、ATPレベルの比較的安定な維持期間とそれに続くインキュベーション期間にわたる緩やかな低下によって特徴付けられた(図5B)。PEPまたはピルビン酸を使用する反応と異なり、シュウ酸ナトリウムの添加はATP濃度の維持をさらには改善しなかった。
【0068】
グルコース−6−リン酸によるATP再生は、グルコース−6−リン酸をピルビン酸に変換するのに必要な糖分解酵素は全て本発明の反応条件下において活性であることを示している。これにより、タンパク質合成の二次エネルギー源をかなり柔軟に選択できる。グルコース−6−リン酸とピルビン酸との間の解糖中間体のいずれもATP再生に使用することができる。
【0069】
合成されたCATの比活性は、本明細書に記載する二次エネルギー源の全て、PEP、ピルビン酸、PEP/ピルビン酸、およびグルコース−6−リン酸を用いた報告のデータより大きかった(125単位/mg) (表1)。
【0070】
外因性酵素が存在しない場合には、ピルビン酸およびグルコース−6−リン酸などの別のエネルギー源を使用することによって無細胞タンパク質合成過程中にATP再生を達成することができることを本明細書に示す。二次エネルギー源としてピルビン酸を用いる場合には、従来のエネルギー源であるPEPを使用する反応と比較して、約70%の合成収率が得られた。NADHをNADに再生するためにはピルビン酸の半分が必要となるので、これは驚くべきことではない。しかし、PEP消費のために、ピルビン酸を使用すると、タンパク質合成の経済的効率も改善される。
【0071】
ピルビン酸を使用するATP再生反応は、従来のエネルギー源であるPEPの利用効率を改善するためにも使用することができる。PEPは、ATP再生に使用されるか、または細胞抽出物のホスファターゼ活性により分解されることによって、PEPは等モル量のピルビン酸を産生する。補因子NADおよびCoAが反応混合物に存在する場合には、新たに産生されたピルビン酸の半分はATP再生に利用可能である(別の半分はNADの再生に使用される)。結果として、エネルギー源の2段階利用により、ATPの総濃度は上昇し、持続時間が延長され、タンパク質合成の産生力が改善される。以前の報告によると、ホスホエノールピルビン酸シンセターゼの代謝阻害剤(シュウ酸ナトリウム)を添加すると、ATP濃度がさらに増加された。また、ATP供給が改善されると産生力が増加された。また、ATPレベルが増加している場合には、アミノ酸の初濃度が増加するとタンパク質合成の収率はさらに増加した。最後に、アミノ酸、PEP、およびマグネシウムをフェドバッチ(fed−batch)添加することにより、合成反応を3時間以上持続させて、最終収率750μg/mLを産生することができる。
【0072】
解糖経路の最初の中間体であるグルコース−6−リン酸を二次エネルギー源として使用することで、PEP系を用いる場合より収率が高くなることも示されている。PEPと比較した場合、グルコース−6−リン酸を使用すると、主に反応期間を延長することによって合成収率が実質的に増加した。これはATPの供給増加によると思われ、グルコース−6−リン酸は、PEPまたはピルビン酸と比較したとき、ATPを再生する可能性が大きいことにより説明することができる。PEPまたはピルビン酸は最大で等しい数のATP分子しか再生できないが、グルコース−6−リン酸のピルビン酸への酸化過程中には3分子のATPを産生することができる。(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼによって還元される2分子のNAD分子を再生するためには、解糖経路から産生されるピルビン酸は2分子必要である)。本発明者らは、無細胞タンパク質合成を支持するための二次エネルギー源として解糖中間体のいずれも使用することができることをこれらの結果は強く暗示している。
【0073】
グルコースの使用は、経済効率に関して従来のタンパク質発現技術と競争力の高い無細胞系を提供すると思われる。本発明者らの最初の結果はこのような可能性を示唆している。グルコースをヘキソキナーゼと共に使用するとタンパク質合成を支持した。また、ATPはこの系において酸化的リン酸化によって再生されないが、本発明の細胞抽出物は、酸化的リン酸化に使用されると思われ、生きている細胞の機能を模倣することによってタンパク質合成にATPを供給するための極めて効率的な方法を提供する能動的膜小胞を含有することができる。
【0074】
各mRNAは複数回使用されるため、本発明者らは、ATPの翻訳への需要が優勢であると推定する。タンパク質合成過程中、EF−Tu回路は2分子のGTPsを消費し、EF−Gは、リボソームを移動させるためにさらにもう1つGTP分子を必要とする。また、tRNAのアミノアシル化過程中にATP分子はAMPに加水分解されるため、アミノ酸残基を付加するためには5分子のATPが必要であると本発明者らは推定した。これらの仮定に基づいて、本発明者らはATPの利用効率を算出した(表2)。
【0075】
【表2】異なるATP再生系におけるATPの利用効率
1PEPから産生されるピルビン酸を使用するために、材料および方法の項に記載したように、NAD、CoA、およびシュウ酸塩を反応混合物に添加した。
2アミノ酸の初濃度は2 mMであった。
【0076】
PEPを使用する標準的な反応では、15μLの反応中に合成されたCATの最終量は99.3 pモルであり、2.2×10−8モルのペプチド結合となる。従って、タンパク質合成に0.11μモルのATPが使用されたと本発明者らは仮定することができる。同じ反応混合物に産生されうるATPの総量は0.5μモルであるので、ATPの利用効率は22%であると推定される。一方、本発明者らは、ピルビン酸を使用した反応において、1.50×10−8モルのペプチド結合に等しい66pモルのCATを産生することができた。ATP再生のためにはピルビン酸は半分のみ使用されうるので、0.25μモルのATPを産生することができ、利用効率は30%になる。
【0077】
従来のPEP系にNAD、CoA、およびシュウ酸塩を添加することによって、本発明者らは、15μLの反応において182 pモルのCATを得ることができた。利用可能なATPの総量は0.75μモル(PEPから0.5μモル、およびPEPから産生されるピルビン酸から0.25μモル)であるので、ATPの利用効率は27.0%であると推定された。しかし、アミノ酸の初濃度を2 mMに増加すると、産生されるCATの量は313 pモルに増加し、ATPの利用効率は47.4%に達した。
【0078】
一方、グルコース−6−リン酸を用いたATPの利用効率はわずか8.8%であった(ただし、1分子のグルコース−6−リン酸は3分子のATPを産生することができる)。従って、タンパク質合成には潜在的なATPプールのごくわずかしか使用されない。これは、再生されるATPの大半が、本発明の細胞抽出物中に存在するATPアーゼ活性によって分解されるか、または副反応が解糖中間体を分解していることを示唆している。言い換えると、例えば、ATPの非生産的な分解を触媒する酵素をコードする遺伝子を阻害することによって、そのような活性を同定し、除去することによってグルコース−6−リン酸からのタンパク質合成を改善することを本発明者らは予測することができる。増殖に必須である酵素活性を除去するために、本発明者らは、細胞抽出物調製中にそのような酵素を除去できるように、親和性標識でそのような酵素を遺伝子的に標識することができる。ATP再生は試薬価格の実質的な部分を占めるので、ATP利用効率の改善も無細胞タンパク質合成の経済性に大きな影響を与える。大腸菌株のこのような「遺伝子最適化」を、改善したATP再生系と組み合わせることにより、効率の高いバッチ無細胞タンパク質合成系が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼの合成を示すグラフである。33 mMのピルビン酸ナトリウム、0.33 mMのNADおよび0.27 mMのCoAを、表示の組み合わせで15μLの反応混合物に添加して、合成反応中にATPを再生した。反応は2時間実施し、TCAに不溶の放射性物質を測定した。対照反応では、ピルビン酸および補因子の代わりに33 mMのPEPを使用した。
【図2】ピルビン酸によるATP再生機序の案である。
【図3】タンパク質合成およびATP濃度の時間経過である。33 mMのPEPを含有する120μLの標準的な反応混合物を調製し、0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoAおよび2.7 mMのシュウ酸ナトリウムの存在下においてインキュベートした。ATP濃度(A)を測定するために、10μLの試料を取り、同じ容量の10% TCA溶液と混合し、10分間遠心した。材料と方法の項に記載したように、10μLの上清をATP分析に使用した。所定の経過時点において、5μLの試料を取り、TCAに不溶の放射性物質をカウントして、タンパク質合成(B)を測定した。白丸は対照反応、黒丸はNADおよびCoAを含有し、アスタリスクはNAD、CoAおよびシュウ酸塩を含有し、黒四角はNAD、CoA、シュウ酸塩および2 mMのアミノ酸を含有する。各反応の終点において、5μLの試料を取り、16% SDS−PAGEゲルで実施した。標準的な手法により、ゲルをクーマシーブルーで染色した(図3Aの差込)。レーンMは標準分子量マーカー、Cは鋳型プラスミドを含有しない対照反応、1は標準的な反応、2は0.33 mMのNADおよび0.27 mMのCoAを含有する反応、3は0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoAおよび2.7 mMのシュウ酸ナトリウムを含有する反応、4は0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoA、2.7 mMのシュウ酸ナトリウムおよび2 mMのアミノ酸を含有する反応である。
【図4Aおよび4B】タンパク質合成中におけるPEP、アミノ酸およびマグネシウムの補給を示す。合成反応は、2 mMのアミノ酸、33 mMのPEP、0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoAおよび2.7 mMのシュウ酸ナトリウムが120μlの容量中に存在する場合に実施した。インキュベーション期間中に、初濃度のPEP、アミノ酸および酢酸マグネシウムを1時間ごとに反応に添加した。所定の経過時点に5μlの試料を取り、ATP濃度(図4A)およびCAT合成の収率(図4B)を測定した。同じ容量の水をシングルバッチ反応に添加した。白丸はシングルバッチ反応、黒丸は添加を行った反応である。各反応の終点において取った試料をSDS−ポリアクリルアミドゲルで分析し、次にクーマシーブルー染色を実施した(パネルBの差込)。Mは標準分子量マーカー、Cは鋳型プラスミドを含有しない対照、Bはシングルバッチ反応、FBはPEP、アミノ酸および酢酸マグネシウムを添加した反応である。矢印は発現したCATを示す。
【図5】グルコース−6−リン酸を二次エネルギー源として使用したCATの発現を示す。33 mMのグルコース−6−リン酸、0.33 mMのNADおよび0.27 mMのCoAを120μLの合成反応に添加した。5μLおよび10μLの試料を取り、タンパク質合成およびATP濃度をそれぞれ測定し、図3のように分析した。白丸はPEPを使用した従来の反応、黒丸はグルコース−6−リン酸をエネルギー源として使用した反応である。
序文
タンパク質や他の生体高分子の方向付けされた合成は、生化学の大いなる達成点であると言える。組換えDNA技術の発展は、高度に精製されたコード配列の特徴付けと合成を可能にし、高度に精製されたタンパク質を生産するために使用され、該タンパク質は、天然の細胞では微量しか手に入らない。ポリペプチド鎖は、化学的あるいは生物学的方法で合成することができる。生物学的合成は、細胞環境内で行なわれ、またはタンパク質をインビトロで合成するためには、細胞抽出物およびコード配列が使われる。
【0002】
数十年に渡り、インビトロのタンパク質合成は、クローニングされたりまたは合成された遺伝物質の、実験室規模の発現のための効果的な手段として役立ってきた。近年インビトロのタンパク質合成は、細胞内発現に伴う不都合さのため、伝統的な組換えDNA技術にとって代わるものとみなされてきた。インビボでタンパク質は、細胞の成長とともに合成される幾種かの酵素により分解されたりまたは修飾されたりし、合成の後、グリコシレーション、脱アミド化、または酸化のような翻訳後プロッセッシングにより修飾される。さらに、多くのタンパク質産物は代謝過程を阻害し、かつそれらの合成は細胞を再生産し、遺伝的情報を保護するのに要求される他の細胞内工程と競合しなければならない。
【0003】
遺伝子発現の細胞調節と本質的に掛け離れているので、インビトロのタンパク質合成は、細胞傷害性があったり、不安定であったり、または不溶性であったりするタンパク質を合成するのに有利である。インビボでは、発現レベルが生産物の濃度によって調節されているため、あらかじめ設定された濃度以上にタンパク質を過剰生産することは難しいと言える。細胞の中に蓄積されたタンパク質の濃度は細胞の増殖度に影響を与え、所望のタンパク質を過剰生産させることは難しい。単離と精製の過程において多くの種類のタンパク質は、不溶性または不安定で、かつ細胞内プロテアーゼにより分解されるか、インクルージョンボディー(inclusion body)として凝集し、損失の割合が高い。
【0004】
インビトロ合成はこれらの多くの問題を克服する。さらに多重配置での様々なタンパク質の同時進行で迅速な発現を通して、この技術は研究レベルでの組み合わせアレイの開発、そしてタンパク質のスクリーニングについて貴重な手段を提供する。さらに、様々な天然に存在しないアミノ酸が、ある特定の目的のために効果的にタンパク質に取り入れられる(Noren ら(1989) Science 244: 182−188) 。しかしこのような有望な局面にもかかわらず、インビトロの系は実践的な代替物として広く受け入れられているわけではない。それは主として、タンパク質合成の低収率化を招くような短い反応時間であるためであり、反応成分のコストが高いためである。
【0005】
Spinnら(1998) Science 242: 1162−1164によるインビトロタンパク質合成系の連続した流れ作業の開発は、反応を数時間に延ばすことができることを証明した。それ以来多くのグループがこのシステムを再現し改良して来た(Kigawaら(1991) J. Biochem. 110: 166−168;Endoら(1992) J. Biotechnol. 25: 221−230)。最近、KimおよびChoi (1996) Biotechnol. Prog. 12: 645−649は、単純な透析膜反応装置を用いたセミ連続操作を取り入れることにより、バッチ法と連続フローシステムの長所を合わせることができることを報告した。彼らは従来のバッチシステムの初期速度を維持しつつ、連続フローシステムの伸長された反応時間を再現することができた。しかし連続的および半連続的取り組みは高価な試薬を多量に必要とし、これは生産収率の増加よりも有意に大きく増加する。
【0006】
従来のバッチシステムにおいていくつかの改良がなされた(Kimら、(1996) Eur. J. Biochem. 239: 881−886;Kuldlickiら(1992) Anal. Biochem. 206: 389−393; Kawarasakiら(1995) Anal. Biochem. 226: 320−324)。半連続システムは、伸長された時間におよんでタンパク質合成の初期速度を維持するが、従来のバッチシステムにもまだいくつかの特典がある。例えば操作の簡便さ、簡単にスケールアップできること、試薬の低価格性、そして再現性の良さである。さらにバッチシステムは、同時に多くの遺伝学的材料を発現させるマルチプレックス形式で、簡単に実施されることができる。
【0007】
最近、PatnaikとSwartz (1998) Biotechniques 24: 862−868は、タンパク質合成の初期速度を、反応条件の徹底した最適化により、インビボの発現と同様のレベルまで増強することができると報告した。濃縮段階なしに調製した従来の細胞抽出物を用いて、そのような高速のタンパク質合成を彼らが達成したことは注目に値する(Nakanoら(1996) J. Biotechnol. 46: 275−282; Kimら (1996) Eur. J. Biochem. 239: 881−886)。Kigawaら(1999) FEBS Lett 442: 15−19は、濃縮された抽出物とエネルギー源としてのクレアチンリン酸を用いた高いレベルのタンパク質合成を報告している。この結果は、特にタンパク質合成反応の長い寿命という観点からのバッチシステムのさらなる改良が、インビトロタンパク質合成の生産性を十分に増加させることを示唆する。しかし、従来のバッチシステムにおけるタンパク質合成の早期の停止の理由は依然としてわかっていない。新規のATP再生系はKimおよびSwartz(1999)Biotechnol. Bioeng. 66(3):180−188に記載されている。
【0008】
上で示したように、タンパク質の生産性および生産量の両方とも依然として低く、これは無細胞系のタンパク質合成の産業化を実施する上での障害となっている。よって、比生産速度およびシステム操作の長さを増加させることによる、タンパク質の全生産力の観点からの改良が特に必要となる。商業的な方法の発展のために、これらの条件の最適化が非常に興味を持たれている。
【0009】
発明の概要
タンパク質分子のインビトロ合成を増加させるための組成物および方法が提供される。触媒量を添加されるNADHまたはNAD+と組み合わせて、解糖中間体またはグルコースがエネルギー源として使用される。コエンザイムAを反応混合物に含ませてもよい。また、望ましくない反応を触媒する酵素の阻害は、反応混合物に阻害化合物を添加するか、原因となる酵素活性を低下もしくはなくすように反応混合物を改変するか、またはこの2つの組み合わせによって達成される。
【0010】
態様の詳細な説明
ATPの発生で反応が促進される解糖経路を使用することによってタンパク質分子のインビトロ合成を増加させるための組成物および方法を提供する。反応混合物中の解糖経路の活性を維持するために、NAD+/NADHを反応に添加する。例としては、酵素ヘキソキナーゼ、ピルビン酸またはホスホエノールピルビン酸(PEP)と組み合わせて、グルコースをエネルギー源として使用する。好ましい態様においては、アセチルCoAも反応混合物に含まれる。ATPから加水分解されるリン酸塩をグルコースまたはピルビン酸の酸化過程で再利用することにより、合成反応に阻害作用をもたらしうる遊離のリン酸塩が最終的に蓄積することを防ぐ。
【0011】
定義
本発明が、ここで述べられている特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物の種や属、試薬に制限されるものでないことが理解されていなければならない。さらに本明細書において使用される用語は、ある特定の態様のみを述べる目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲にのみ制限され、本発明の範囲を制限することを意図したものでないことが理解されていなければならない。
【0012】
本明細書で用いられているように、単数形である「a」、「and」、そして「the」は文脈が明白に示図しない限り、複数形も含む。よって例えば「a cell」というものはそのような細胞の複数形を含み、「the protein」というものは一つ又は複数のタンパク質および当業者の間で知られているそれらに等価なもの、その他を含む。明白に示されていない限り、本明細書で用いられている全ての専門的そして科学的用語は、この発明が所属する当業者に普通に理解されているものと同じ意味を有している。
【0013】
本明細書で用いる、グルコースまたは解糖中間体エネルギー源とは、ADPからATPへ合成するためのエネルギーを提供する、解糖経路の一部である化合物を意味する。これらのエネルギー源には、グルコース、グルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、フルクトース−1,6−二リン酸、トリオースリン酸、3−ホスホグリセレート、2−ホスホグリセレート、ホスホエノールピルビン酸(PEP)およびピルビン酸が挙げられる。好ましいエネルギー源はPEP、ピルビン酸およびグルコース−6−リン酸である。
【0014】
エネルギー源は、リン酸塩に関して恒常的であってもよく、すなわち、無機リン酸塩の蓄積をもたらさない。このような二次エネルギー源には、ATPの加水分解によって生じる遊離のリン酸塩が再利用される。高エネルギーリン酸結合源を外因的に添加する代わりに、必要な高エネルギーリン酸結合をインサイチュー、例えば、酸化反応との共役によって形成する。恒常的なエネルギー源としては、典型的には、高エネルギーリン酸結合自体を欠損しており、従ってATP再生過程中の反応混合物中に存在する遊離のリン酸塩が使用される。無機リン酸塩は合成の阻害的な副産物となることがあるので、インビトロでは合成を維持する期間が延長されることがある。恒常的なエネルギー源は、高エネルギーリン酸結合の形成を触媒する酵素と組み合わせて提供されてもよい。
【0015】
リン酸代謝に恒常的である例示的な解糖中間体はピルビン酸およびグルコースである。グルコースを使用する場合には、酵素ヘキソキナーゼを、細胞抽出物に存在していなければ含ませることが望ましい。しかし、NADHが存在する場合には、ピルビン酸オキシダーゼなどの再生酵素を含ませる必要はない。
【0016】
エネルギー源は、生物学的に許容されうる好適な塩として、または適用可能である場合には、ピルビン酸(pyruvic acid)のような遊離酸として供給されてもよい。合成初期のエネルギー源の最終濃度は、通常では少なくとも約1 mMであり、さらに通常では少なくとも約10 mMであり、約1000 mMを超えず、通常約100 mMを超えない。反応時間を延長するために、追加の量を合成進行中の反応混合物に添加してもよい。
【0017】
補因子:
外因性補因子NADHまたはNAD+(β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を、少なくとも0.1 mM、好ましくは0.2〜1 mMで、通常約10 mMを超えない濃度で反応混合物に添加する。
【0018】
必要に応じて、アセチルCoA(アセチルコエンザイムA)またはコエンザイムAも反応混合物に含ませる。それは、エネルギー源としてグルコースまたは解糖中間体を使用する際に必要ではないが、反応を増強することが見出されている。有用な濃度は少なくとも約0.05 mMであり、通常少なくとも約0.1 mMであり、約1 mMを超えず、通常約0.5 mMを超えない。
【0019】
グルコースの使用:
恒常的なエネルギー源がグルコースである場合には、グルコースからグルコース−6−リン酸が形成されるのを触媒するために、酵素を反応混合物に含ませる。EC 2. 7. 1.1,は、一般に、この目的のために使用される。ヘキソキナーゼは広範囲の市販品から購入可能であり、数多くの種から単離され、クローニングされている。例として、SwissProt P27595, HXK1_BOVIN; P19367, HXK1_HUMAN; P17710, HXK1_MOUSE; P05708, HXK1_RAT; Q09756, HXK1_SCHPO; P04806, HXKA_YEAST; Q42525, HXK_ARATH; P50506, HXK_DEBOC; P80581, HXK_EMENI; P33284, HXK_KLULA; Q02155, HXK_PLAFA; Q26609, HXK_SCHMAに相当する酵素が挙げられる。
【0020】
グルコースがエネルギー源である場合には、反応混合物は、ATPプールを維持するのに十分な濃度のヘキソキナーゼ、通常少なくとも約0.1U/ml、さらに通常では少なくとも約1U/mlで、好ましくは少なくとも約10U/mlを含み、この場合の単位は、1単位が、30℃、pH 8.0におけるグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼとの共役アッセイ系において1分あたり1μmoleのNADを還元するものと定義される。さらに高濃度であってもよいが、一般に約1000U/mlより低いことが当業者によって理解される。
【0021】
ヘキソキナーゼは種々の方法で反応混合物に提供することができる。精製または半精製酵素を反応混合物に添加することができる。市販の調製物が利用可能であり、または従来の方法により天然もしくは組み換え型の起源から酵素を精製することができる。例えば、S. セレビシエ(S. cerevisiae)ヘキソキナーゼ PII遺伝子、アクセッション番号M14410またはヘキソキナーゼPII、アクセッション番号M14411のような、ヘキソキナーゼの遺伝子配列を組み換え型の酵素源として使用することができる。これらは共にKopetzki et al.(1985) Gene 39: 95−102等に記載されている。
【0022】
酵素はまた、合成に使用する抽出物に含ませることができる。例えば、抽出物は、タンパク質合成のための大腸菌(E. coli)から誘導することができる。抽出物を産生するために使用する大腸菌は、好適なヘキソキナーゼをコードするように遺伝的に改変されていてもよい。または、合成反応がタンパク質合成である場合には、好適な量のヘキソキナーゼが合成過程中に産生されるように、鋳型、例えば、ヘキソキナーゼをコードするmRNA、ヘキソキナーゼの好適な発現構築物を含むプラスミド等、を反応混合物に添加することができる。
【0023】
ピルビン酸およびPEPの使用:
アスパラギン酸およびアスパラギンはホスホエノールピルビン酸から形成される。酵素ホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(pps)はピルビン酸をPEPに変換し、合成されるPEPの1分子あたり2当量の高エネルギーリン酸結合(ATPがAMPに変換されている)を消費する。ピルビン酸をエネルギー源として使用する場合には、この酵素によりピルビン酸およびATPが消費される可能性があり、それによってタンパク質合成反応からエネルギー供給が奪われる。
【0024】
ppsを阻害することが報告されているシュウ酸を添加すると(NarindrasorasakおよびBridger(1978) Can. J. Biochem. 56: 816−9)、PEPおよびピルビン酸系の反応期間を延長することができた。ピルビン酸およびPEPをエネルギー源として用いる場合には、シュウ酸によりppsを阻害することにより、asp/asn産生速度が低下し、タンパク質収率が増加した。シュウ酸は、少なくとも約0.5 mMで約100 mMを超えない、通常少なくとも約1 mM、好ましくは少なくとも約3 mMの濃度で添加される。
【0025】
PEPおよびピルビン酸系においてエネルギー源を効率的に使用するためには、酸素を消費してピルビン酸を酢酸に変換する大腸菌ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(pps)の遺伝子を阻害するか、または不活性化することができる。大腸菌ホスホエノールピルビン酸シンセターゼのコード配列はGenbank番号X59381で利用することができ、ニールスバッチ(Niersbach)ら、(1992) Mol. Gen. Genet. 231: 332−336にも報告されている。大腸菌ピルビン酸オキシダーゼのコード配列はGenbank、第X04105号で利用することができ、グラーバー(Grabau)およびクローナン(Cronan)(1986)Nucleic Acids Res. 14: 5449−5460にも報告されている。
【0026】
インビトロ合成:
本明細書で用いられているように、生物学的抽出物および/または厳密に定義された試薬から成る反応混合液における、高分子の無細胞合成を指す。反応混合液は少なくとも、エネルギー源であるATP、例えばDNA、mRNAなどの高分子の産生のための鋳型、アミノ酸、核酸、ならびに酵素および例えばリボソーム、tRNA、ポリメラーゼ、転写因子などの合成のために必要な他の試薬などの補因子、から成る。そのような合成反応系は当技術分野においてよく知られており、文献で報告されている。無細胞系の合成反応はバッチ法、連続フロー法、あるいは半連続フロー法で実行され、これは当技術分野において知られている。
【0027】
反応混合液:
本明細書で用いられているように、核酸の鋳型からポリペプチドの合成を触媒することができる反応液をいう。混合液は望ましくない酵素反応を減少させる代謝阻害剤を含む場合もある。代わりに、あるいはそれと組み合わせて、増強された反応混合液は、アミノ酸の枯渇あるいは蓄積をもたらす望ましくない副反応に関わる酵素活性が減少するように、遺伝的にあるいは他の段階により操作されるであろう。
【0028】
本発明の好ましい態様として、反応液は例えば大腸菌(E. coli)S30の抽出物のような細菌細胞由来の抽出物を含み、これは当技術分野において知られている。便宜上、抽出物の供給源として用いられる生物は供給源生物と呼ぶことにする。そのような抽出物はリボソームやタンパク質合成に必要な他の因子の有効な供給源であるが、タンパク質合成に関与しないにもかかわらずATP、ピルビン酸あるいは他の試薬を消費するような望ましくない副反応に関わる外因性酵素を少量含む場合がある。
【0029】
本明細書で用いられているように、外因性という用語は抽出物に存在する酵素、因子等を言及する際に用いる。外因性成分は、添加によって抽出物中に導入されるものであって、合成時に添加されても、抽出物の開始材料として用いる細胞を遺伝子操作または他の操作をすることで添加されてもよい。例えば関心対象の外因性酵素をコードするプラスミドは、抽出物を調製する前に細菌細胞へ添加されうる。
【0030】
活性のある抽出物を生産する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Pratt (1984)、「原核生物の無細胞系での連結した転写と翻訳(coupled transcription−translation in prokaryotic cell−free systems)」、p. 179−209、Hames, B. D.およびHiggins, S. J.監修、「転写と翻訳:実践的な取り組み方(Transcription and Translation: a practical approach)」、IRL Press、New Yorkにそれを見出すことができる。Kudlickiら(1992) Anal. Biochem. 206(2): 389−93は、超遠心によりS30からリボソームを集めることにより、S30の大腸菌(E. coli)の無細胞抽出物を修飾している。
【0031】
ある特異的なプロモーターの制御下で、遺伝子の発現において抽出物が最適化され得る(例えば、Kudlickiら(1992) Anal. Biochem. 206(2): 389−93を参照されたい。この系は大腸菌(E. coli)の粗抽出物(内在性のT7RNAポリメラーゼを含む細胞より調製されている)とリファンピシン(大腸菌(E. coli)のRNAポリメラーゼの阻害剤)から成る)。Kimら(1996) Eur. J. Biochem. 239: 881−886は試薬濃度を最適化することにより、タンパク質の産生をさらに増強させている。
【0032】
反応混合液は、望ましくない酵素活性の代謝阻害剤を含み得る。そのような阻害剤は反応の最終生成物である場合が多々ある。それはフィードバック機構で阻害する。供給源生物の代謝経路に基づいて特異的な阻害剤が決定される。例えば大腸菌(E. coli)、酵母(S. cerevisiae)、ヒト(H. sapiens)などのような多くの細菌や真核生物の種におけるこれらの経路は、当技術分野においてよく知られている。タンパク質合成を増大させる一方で、望ましくない酵素活性を阻害するのに十分な濃度になるように阻害剤が添加される。特に興味深い経路は、大腸菌(E. coli)細胞におけるピルビン酸に関するもので、オキサロ酢酸からのアスパラギン酸の合成などが含まれる。
【0033】
添加する代謝阻害剤についての代わりの態様として、望ましくない酵素が取り除かれあるいは反応混合液から枯渇される。発明の一つの態様として、酵素のコード配列は、コード配列の全てあるいは一部の欠失、フレームシフトを引き起こす挿入、ドミナントネガティブ突然変異などにより、供給源生物の染色体上でノックアウトあるいは不活性化される。大腸菌(E. coli)を含む多くの生物のゲノムは完全に配列解析されており、遺伝学的修飾が可能である。例えばArigoniら(1998) Nat Biotechnol 16 (9): 851−6によりマーカーレス・ノックアウト法が述べられている。
【0034】
Hoangら(1998) Gene 212: 77−86により標的遺伝子の不活性化の好ましい方法が述べられている。この方法では、組換え反応の選択マーカーであるテトラサイクリン耐性遺伝子とレバン・サッカラーゼ(sacB)をコードする遺伝子を含んでいる遺伝子置換ベクターが用いられている。標的遺伝子は最初クローニングされ、好ましくは遺伝子の重要な領域を取り除かれ変異される。この遺伝子は、染色体遺伝子置換が可能となるように設計されたベクターに、ライゲーション反応によって挿入される。大腸菌(E. coli)はそれらのベクターにより形質転換される。染色体上の標的遺伝子の部位にプラスミドを取り込んだ細胞が選択され、ショ糖存在下で細胞を増殖させることにより、そのプラスミドが染色体から遊離するようにする。ショ糖はsacB遺伝子が染色体上に存在すると毒性を示す。正しく変異した細胞株がテトラサイクリン感受性とショ糖耐性という表現型を基に選択される。PCR分析あるいはDNA配列解析により、望ましい遺伝学的変化が起こったことが確認される。
【0035】
しかし、タンパク質合成反応の持続時間と収率を減少させる酵素は、供給源生物の生育に不可欠である場合もある。その場合、条件的ノックアウト法が用いられる。例えば、標的遺伝子に対する、誘導性プロモーター上のアンチセンス配列が供給源生物の中へ導入される。細胞は一定期間増殖され、標的酵素を細胞から枯渇させるためにアンチセンス構造物が誘導される。
【0036】
酵素は細胞の破壊の後および細胞抽出物の使用の前に細胞抽出物から除去されうる。標的酵素に対して特異的な親和性を持つ抗体や抗体断片を使用したり、細胞抽出物から容易に除去することを可能にする標的酵素の一部として発現されるアフィニティータグを使用したりする、アフィニティー精製やその他従来の精製法を含めた、当技術分野において知られている幾種類かある方法のうちのどれかがタンパク質の精製に用いられる。
【0037】
その他の態様として、ファージディスプレイあるいは他のうまく開発された技術を用い、標的酵素に特異性を有する抗体あるいは抗体断片(例えばFabあるいはscFV)が選択される。その抗体あるいは抗体断片は次に、いくつかの固定化技術のどれかを用いて、いくつかの精製用ビーズあるいはレジンあるいは膜のどれかに固定化される。固定化された抗体は細胞抽出物と接触させられ、標的酵素と結合し、固定化された抗体/酵素複合体は、濾過あるいはゆるやかな遠心操作で除去される。
【0038】
例えば、標的酵素のコード配列は修飾され、Flag(登録商標)(Immunex Corpで開発され、Stratageneで販売されている)による伸長やポリヒスチジンテールのようなタグを持つ場合もある。多くの他の例が公にされてきており、当業者に公知である。タグのついたタンパク質は次に、適切なアフィニティーマトリックスあるいはカラムを通すことにより除かれる。アミノ酸の伸長とその結合パートナーは、細胞抽出物の安定性が保たれ、その化学的組成が著明には変化しないような条件下で、特異的結合が起こるように選択される。
【0039】
さらに他の例として、標的酵素あるいは酵素は、基質アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水結合クロマトグラフィー、電気泳動的分離、あるいはタンパク質精製の技術分野において実践されているその他の方法のような、タンパク質精製においてよく用いられているいくつかの方法のどれを用いても分離することができる。
【0040】
インビトロ合成法
対象の系は、DNA鋳型またはRNA鋳型からのRNA転写を含めたインビトロタンパク質合成に有用である。再生エネルギー源を利用する方法はまた、タンパク質の折りたたみやタンパク質輸送のようなインビトロシステムにも応用可能である。関心対象の合成システムは、DNAの複製、タンパク質合成、さらにDNAの増幅、DNAあるいはRNAのポリペプチドへの翻訳、そして単純な糖からの複合糖質の合成を含む。反応は大規模あるいは小規模反応装置を利用し得る。あるいは多数の同時合成を実行するために多重処理され得る。連続反応は、試薬の流れをもたらすためにフィード機構を用いており、工程の一部として最終生産物を単離し得る。バッチシステムも関心対象の。この場合、活発な合成の期間を長引かせるため、追加の試薬が導入される。反応装置はバッチ、伸長型バッチ、半バッチ、半連続性、フェドバッチそして連続性などのどのモードでも動かせる。これは応用目的に応じて選択される。
【0041】
特に興味深いものは、タンパク質を産生させるためのmRNAの翻訳である。この翻訳はDNAの鋳型からのmRNAのインビトロ合成と連結している。そのような無細胞系はmRNAの翻訳のために必要な因子を全て含んでいる。例えばリボソーム、アミノ酸、tRNA、アミノアシルシンセターゼ、伸長因子、開始因子である。当技術分野において知られている無細胞系には、小麦胚抽出物(Robertsら(1973) P.N.A.S. 70: 2330)、網状赤血球抽出物(Pelhamら(1976) Eur. J. Biochem. 67: 247)、大腸菌(E. coli)抽出物などが含まれる。これらは活性のある内在性のmRNAを除去するために、好ましいヌクレアーゼで処理される。
【0042】
無細胞系抽出物のような上記の成分に加えて、アミノ酸およびエネルギー源、タンパク質合成に特別に必要な材料が反応に加えられ得る。これらの材料には、塩、ポリマー性の化合物、サイクリックAMP、タンパク質あるいは核酸分解酵素の阻害剤、タンパク質合成の阻害剤あるいは調節因子、酸化/還元調整剤、非変性界面活性剤、緩衝液成分、スペルミン、スペルミジンなどが含まれる。
【0043】
塩は好ましくは、酢酸または硫酸のカリウム、マグネシウム、アンモニウムそしてマンガン塩を含み、これらのいくつかは対陽イオンとしてアミノ酸を持つ場合がある。ポリマー化合物としてはポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチル、四級アミノエチルそしてアミノエチルがある。酸化/還元調整剤としては、ジチオスレイトール、アスコルビン酸、グルタチオンそして/あるいはそれらの酸化物がある。さらにトライトンX−100のような非変性界面活性剤が0M−0.5 Mの濃度で用いられる。スペルミンとスペルミジンがタンパク質合成能力を高めるのに用いられ、そしてcAMPが遺伝子発現の調節因子として用いられる。
【0044】
反応培養液のある特定の成分の濃度を変化させる時、それに応じて他の成分の濃度も変化させられる。例えばヌクレオチドやエネルギー源の化合物のようないくつかの成分の濃度は、他の成分の濃度の変化と一致して同時に制御され得る。さらに反応装置内の成分の濃度レベルは刻々と変化する。
【0045】
好ましい反応はpH5〜pH10の範囲、20℃〜50℃の範囲の温度そしてより好ましくはpH6〜pH9の範囲、そして25℃〜40℃の範囲の温度で維持される。
【0046】
連続操作モードでタンパク質単離手段を用いる時、反応装置からの産物のアウトプットは膜を通ってタンパク質単離手段の方へ流れる。半連続操作モードにおいては、膜の外側あるいは外側の表面は、あらかじめ決められた順で周期的に変化するあらかじめ決められた溶液に接触させられる。これらの溶液はアミノ酸そしてヌクレオチドのような基質を含んでいる。この時反応装置は、透析、ダイアフィルトレーションバッチあるいはフェドバッチモードで操作される。フィード溶液が同じ膜あるいは異なった注入ユニットを通して反応装置に供給され得る。合成されたタンパク質は反応装置の中で蓄積され、システム操作の完了の後、タンパク質精製の通常の方法により単離され精製される。
【0047】
試薬の流れがある場合、液体の流れの方向は膜に対して垂直そして/あるいは接線方向である。接線方向の流れは、再利用しているATPや膜の詰りを防ぐのに効果的であり、垂直の流れの上に重ね合わすことができ得る。膜に対して垂直な流れは、陽圧ポンプあるいは減圧吸引ポンプにより引き起こされたり影響を受けたりする。膜の外側表面に接している溶液は、周期的に替えられ、安定した膜に対して接線方向の流れとなり得る。反応装置は内部であるいは外部から、適切な撹拌方法でかき混ぜられる。
【0048】
反応装置内でタンパク質合成時、望ましいタンパク質を選択的に単離するタンパク質単離手段は、合成された望ましいタンパク質を吸着する成分を携えた、固定化された、抗体分子やその他の分子でコーティングされた粒子が詰め込まれたユニットと正しい大きさの細孔を有した膜を含む。好ましくは、その使用を交互に行なうために、タンパク質単離手段は二つのカラムを含んでいる。そうでない場合、伸長されたベッドクロマトグラフィーを用いてタンパク質産物が吸着される場合がある。この場合膜は使用される場合とされない場合がある。
【0049】
翻訳反応において産生されるタンパク質の量は様々な方法で測定することができる。一つの方法は、翻訳される特定のタンパク質の活性を測るアッセイの有効性に依存している。タンパク質活性を測定するアッセイの例として、ルシフェラーゼのアッセイ系、あるいはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼのアッセイ系がある。これらのアッセイは、翻訳反応より産生される機能的に活性のあるタンパク質の量を測定するものである。活性のアッセイ法は、不適当なタンパク質の折りたたみ、あるいはタンパク質活性に必要な他の翻訳後修飾の欠如により活性を失ったが全長は有しているタンパク質を測定しない。
【0050】
インビトロの転写および翻訳に連結して産生されたタンパク質の量の測定のその他の方法として、既知の量の35S−メチオニンあるいは3H−ロイシンのような放射能標識されたアミノ酸を用い、次に新しく翻訳されたタンパク質に取り込まれた放射能標識されたアミノ酸を測定するというような反応を行なう場合などがある。取り込みによるアッセイは、先端を削られたタンパク質産物を含む、インビトロ翻訳で産生される全てのタンパク質の、放射能標識されたアミノ酸の量を測定する。放射能標識されたタンパク質はさらにタンパク質ゲルで分離され、オートラジオグラフィーにより、産物が正しい大きさでありまた副次的なタンパク質産物が産生されていないことが確認される。
【0051】
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的そして科学的用語は、本発明が関係する当業者が普通に理解するものと同じ意味を有している。本明細書で述べられているものと似ている、あるいは等価な方法、装置そして材料は、本発明を実践したり、試験したりするのに用いられ得るが、好ましい方法、装置そして材料がこれから述べられる。
【0052】
本明細書で言及されている全ての刊行物は記載および開示の目的で、参照として本明細書に取り入れられている。例えば刊行物で記載されている細胞株、構築物、そして方法論があり、これらは現在述べられている本発明と関連して用いられ得る。上記および本文を通じて議論される刊行物は、本出願の出願日以前の開示のためにのみ提供される。先行発明によって、本発明者らがそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして、本発明における刊行物が解釈されてはならない。
【0053】
以下の実施例は、当業者に完全な開示といかに本発明を作成し利用するかの記載を提供するために出されたもので、本発明に係るものの範囲を制限することを意図したものではない。用いられる数値(例えば量、温度、濃度など)に関して正確を来たすように努めているが、若干の実験誤差および偏差は考慮に入れられなければならない。特に明記しない限り、部分とは重量の部分であり、分子量は平均の分子量で、温度は摂氏、圧は大気圧かその近辺である。
【0054】
実験
実施例 1
ピルビン酸、グルコースまたは解糖中間体は、任意の外因性酵素が存在しない場合でも、ATP再生のエネルギーを提供することができる。本発明の内容を制限するわけではないが、ピルビン酸が合成反応にATP再生の可能性を提供する作用機序に2つの経路を提案することができる。第1の経路では、ATP再生は、電子伝達リン酸化反応により達成される。抽出物は総細胞溶解液から調製されるので、抽出物は、呼吸鎖成分が適切に封入され、膜が裏返った小胞を含有する可能性がある。従って、内因性ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるアセチル−CoAへの変換後、ピルビン酸はTCA回路に入ってNADHを産生し、呼吸鎖およびF1F0ATPアーゼを使用してATPを再生する。
【0055】
第2の提案されている経路では、産生されたアセチルCoAは、ホスホトランスアセチラーゼによってアセチルリン酸に変換される。次いで、得られたアセチルリン酸をATP再生に使用する。いずれの場合でも、ピルビン酸の酸化は、任意の有害な副産物を蓄積することなく、ATP産生のエネルギーを提供し、外因性酵素を必要としない。または、ホスホエノールピルビン酸を、糖分解によって得られるエネルギーおよびインサイチューATP産生から得られるエネルギーを組み合わせて、エネルギー源として使用することができる。
【0056】
材料および方法
ホスホエノールピルビン酸(PEP)および大腸菌総tRNA混合物は、Roche Molecular Biochemicals社(インディアナ州インディアナポリス)から購入した。L−[U−14C]ロイシンはAmersham Pharmacia Biotechnology社(スウェーデン、ウプサラ)から購入した。他の試薬は全てSigma社(ミズーリ州セントルイス)から入手した。T7 RNAポリメラーゼは、ダバンロー(Davanloo)ら(1984)の手法に従い、大腸菌株BL21(pAR1219)から調製した。T7プロモーターとT7ターミネーターとの間に細菌クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)配列を含有するプラスミドpK7CATを、タンパク質合成の鋳型として使用した。プラスミドはQiagen社(カリフォルニア州バレンシア)のMaxiキットを使用して精製した。
【0057】
S30抽出物は、以前に記載されているように(Kimら、1996、上記、KimおよびSwartz(1999)、上記)、大腸菌K12(株A19)から調製した。標準的な反応混合物は以下の成分を含む:57 mMのHepes−KOH(pH 7.5)、1.2 mMのATP、各々0.85 mMのGTP、UTP、およびCTP、1 mMのDTT、0.64 mMのcAMP、200 mMのグルタミン酸カリウム、80 mMの酢酸アンモニウム、12 mMの酢酸マグネシウム、34 μg/mlのフォリン酸、6.7 μg/mlのプラスミド、33 μg/mlのT7RNAポリメラーゼ、各々500μMの20種の非標識アミノ酸、11μMの[14C]ロイシン、2%のPEG 8000、32 mMのPEP、ならびに0.24容量のS30抽出物。ピルビン酸またはグルコース−6−リン酸をATP再生化合物として使用した反応では、33 mMのエネルギー源を0.33 mM NADおよび0.26 mM CoAと共に添加した。ある種の反応では、二次エネルギー源の安定性を増加させるために、2.7 mMシュウ酸ナトリウムを使用した。反応は、15〜120μLの反応量で所定の時間、37℃で実施した。
【0058】
合成したタンパク質の量は、液体シンチレーションカウンター(Beckman LS3801)を使用して、Kimら、1996、上記、に記載されているように測定したTCA不溶物の放射活性から推定した。可溶性産物の量を測定するために、試料を12,000 gで10分間遠心分離し、上清中において、TCAにより沈殿させた放射性物質を測定した。合成したタンパク質の分子量を推定するためには、試料を、標準分子量マーカーと共に16% SDS−PAGEゲル(Invitrogen、カリフォルニア州)で分析した(Blu、Invitrogen、カリフォルニア州参照)。標準的な手法に従い、得られたゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色した。細胞抽出物のタンパク質濃度は、市販のアッセイ試薬(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使用して、ブラッドフォード(Bradford)の手法に従い、測定した。
【0059】
ATP濃度を測定するためには、ルシフェラーゼ溶液(0.1μg/mLのルシフェラーゼおよび125 μMのルシフェリン)を含有する不透明なマイクロタイタープレートに希釈した試料を添加し、発光強度をプレートルミノメーター(ML 3000、Dynatech Laboratories、バージニア州チャンティリー)で測定した。試料中のATP濃度は、ATP標準を用いて得られた検量線から求めた。合成したCATの酵素活性は分光光度的手法によって求めた。試料を水で40倍希釈した後、1 mLの事前に加温したアッセイ混合物(100 mMのTris−Cl(pH 7.8)、0.1 mMのアセチル−CoA、0.4 mg/mLの5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)、0.1 mM クロラムフェニコール)を入れたキュベットに10 μLの希釈した試料を添加し、412 nmにおける吸光度の増加率を測定した。1分あたりの吸光単位の変化を13.6で割って、結果は単位として得た(CAT1単位は、1分あたり1μmoleのクロラムフェニコールをアセチル化する)。
【0060】
結果
無細胞タンパク質合成の二次エネルギー源としてのピルビン酸の使用:
無細胞タンパク質合成反応過程中にATPを再生するための二次エネルギー源としてピルビン酸が働くことができることは以前に報告されている。その系では、酵素、ピルビン酸オキシダーゼはピルビン酸をアセチルリン酸に変換し、アセチルリン酸は内因性酢酸キナーゼによりATPを再生するために使用される。このピルビン酸オキシダーゼ依存系はエネルギー源のコストを実質的に削減し、タンパク質合成過程中ATPを安定に維持し、リン酸塩を蓄積しない。
【0061】
しかし、大腸菌酵素(E.C.1.2.2)はアセチルリン酸の形成を触媒しないため(それは、ピルビン酸をアセチルリン酸の代わりに酢酸に変換する)、ピルビン酸のアセチルリン酸への変換には、外因性酵素、ラクトバシラス(Lactobacillus)またはペディオコッカス(Pediococcus)種のピルビン酸オキシダーゼ(E.C.1.2.3.3)が必要である。従って、外因性ピルビン酸オキシダーゼが存在しない場合には、ATPは再生されず、タンパク質合成レベルは無視できるほどである。しかし、市販のピルビン酸オキシダーゼを使用すると、新たな系の経済的利点のいくつかを相殺する。この酵素は、ピルビン酸をアセチルリン酸に酸化するために酸素分子を必要とするので、酸素移動の限界のために、単純なバッチ構成では合成反応を容易にはスケールアップすることができない。
【0062】
これらの限界を回避するために、本発明者らは、外因性酵素および酸素の必要性をなくそうと試みた。無細胞系におけるATP再生に使用されるピルビン酸については、それはまずアセチルリン酸に変換される必要がある。大腸菌細胞では、ピルビン酸は直接アセチルリン酸に変換されない。代わりに、2つの異なる酵素がピルビン酸をアセチルCoAに変換させ、これを、ホスホトランスアセチラーゼによるアセチルリン酸の産生に利用することができる。第1に、ピルビン酸デヒドロゲナーゼはCoAおよびピルビン酸の縮合を触媒し、補因子としてのNADの存在下においてアセチルCoAを産生する。この反応の間、NADはNADHに還元される。一方、ピルビン酸ギ酸リアーゼもピルビン酸からアセチルCoAを産生し、副産物としてギ酸を産生することができる。これらの反応に必要な酵素は全て細胞抽出物に存在すると考えられた。従って、本発明者らは、無細胞タンパク質合成を支持して、ピルビン酸からのATPの再生を刺激するために、補因子、NAD、およびCoAの添加を試験した。
【0063】
補因子を含む、または含まない反応混合物に、33 mMのピルビン酸ナトリウムを添加した。2時間のインキュベーション後、NADおよびCoAの存在下では有意な合成が観察された(図1)。タンパク質合成の最終収率は、PEPを使用した反応の収率の約70%であった。補因子を用いない場合にピルビン酸を使用しても、任意の二次エネルギー源を用いない対照反応と等しく、タンパク質合成は低かった。ピルビン酸ギ酸リアーゼは補因子を必要としないので、ピルビン酸のアセチルCoAへの変換は、ピルビン酸ギ酸リアーゼではなくピルビン酸デヒドロゲナーゼによって達成されることをこの結果は示している。NADは触媒量(0.33 mM)しか必要とされないことから、NADもまた合成反応中に再生されることが明らかであると思われる。還元型NADは、ピルビン酸の乳酸への変換中に再酸化されると思われる。従って、ピルビン酸の酸化反応と還元反応とが共役することによって、NADが再利用される。最適なタンパク質合成にも触媒量のCoA(0.27 mM)が必要であった。ATP再生の仮定経路を図2に図示する。
【0064】
PEPから産生されるピルビン酸の使用:
従来のATP再生系でPEPが消費されると、副産物としてピルビン酸が産生される。ATP再生のためのピルビン酸使用の上記の結果に基づいて、本発明者らは、PEPから産生されるピルビン酸を二次的に使用することによりATP供給を増加させるために、従来の系へのNADおよびCoAの添加を試験した。図3Aは、そのような補因子が存在するとATP供給が改善されることを示している。特に、NADおよびCoAを添加すると、PEP系におけるATP濃度の初期の低下は実質的に遅くなった。
【0065】
ホスホエノールピルビン酸シンセターゼの強力な阻害剤であるシュウ酸塩は、ピルビン酸またはPEPを用いた合成反応においてATP濃度を増加させる。シュウ酸塩の影響は、NAD/CoAの存在下でも観察された。CAT合成の収率は、2.7 mMシュウ酸塩を添加しても増加した(図3B)。また、タンパク質合成は、アミノ酸の初濃度を増加することによってさらに刺激されることを本発明者らは発見した。ATP濃度が補因子およびシュウ酸塩を添加することによって増加される場合には、タンパク質合成の速度および期間は共に、アミノ酸の初濃度を2 mMに増加することによって有意に改善された(図3B)。より高い高濃度では同様の効果が得られなかった。結果として、1時間のインキュベーション後のCAT合成の最終収率は350μg/mLになった。さらに、報告されている手法に従い、新鮮なアミノ酸、PEP、およびマグネシウムを定期的に添加すると、合成反応は3時間を超えて持続し、最終収率は750μg/mLになった(図4)。合成されたCATは、クーマシーブルー染色後、SDS−PAGEゲル上に1つの強いバンドを示した。発現したCATの約60%は可溶性であり、測定した比活性は報告の値である125単位/mgに匹敵した(表1)。
【0066】
【表1】異なるATP再生系による3時間のインキュベーション後のCAT収率および比活性
*PEPから産生されるピルビン酸を使用するために、材料および方法の項に記載したように、NAD、CoA、およびシュウ酸塩を反応混合物に添加した。
【0067】
別の二次エネルギー源としてのグルコース−6−リン酸:
ピルビン酸をATP再生に使用できると思われる観察から、本発明者らの無細胞系においてATPを再生するために早期解糖中間体を使用することができるかどうかを本発明者らはさらに検討した。グルコース−6−リン酸は解糖経路の最初の中間体であるので、その使用を検討した。33 mMのグルコース−6−リン酸をピルビン酸/NAD系と同じ反応条件下で使用した場合、グルコース−6−リン酸はタンパク質合成を支持した。また、初速度は、PEPによる反応より実質的に低かったが、タンパク質合成は2時間以上持続した(図5A)。結果として、インキュベーション終了時には約30%以上のCATが産生された。おそらく、これは、ATP濃度が極めて長く維持されたことによる。グルコース−6−リン酸によるタンパク質合成過程中のATP濃度の時間経過は、ATPレベルの比較的安定な維持期間とそれに続くインキュベーション期間にわたる緩やかな低下によって特徴付けられた(図5B)。PEPまたはピルビン酸を使用する反応と異なり、シュウ酸ナトリウムの添加はATP濃度の維持をさらには改善しなかった。
【0068】
グルコース−6−リン酸によるATP再生は、グルコース−6−リン酸をピルビン酸に変換するのに必要な糖分解酵素は全て本発明の反応条件下において活性であることを示している。これにより、タンパク質合成の二次エネルギー源をかなり柔軟に選択できる。グルコース−6−リン酸とピルビン酸との間の解糖中間体のいずれもATP再生に使用することができる。
【0069】
合成されたCATの比活性は、本明細書に記載する二次エネルギー源の全て、PEP、ピルビン酸、PEP/ピルビン酸、およびグルコース−6−リン酸を用いた報告のデータより大きかった(125単位/mg) (表1)。
【0070】
外因性酵素が存在しない場合には、ピルビン酸およびグルコース−6−リン酸などの別のエネルギー源を使用することによって無細胞タンパク質合成過程中にATP再生を達成することができることを本明細書に示す。二次エネルギー源としてピルビン酸を用いる場合には、従来のエネルギー源であるPEPを使用する反応と比較して、約70%の合成収率が得られた。NADHをNADに再生するためにはピルビン酸の半分が必要となるので、これは驚くべきことではない。しかし、PEP消費のために、ピルビン酸を使用すると、タンパク質合成の経済的効率も改善される。
【0071】
ピルビン酸を使用するATP再生反応は、従来のエネルギー源であるPEPの利用効率を改善するためにも使用することができる。PEPは、ATP再生に使用されるか、または細胞抽出物のホスファターゼ活性により分解されることによって、PEPは等モル量のピルビン酸を産生する。補因子NADおよびCoAが反応混合物に存在する場合には、新たに産生されたピルビン酸の半分はATP再生に利用可能である(別の半分はNADの再生に使用される)。結果として、エネルギー源の2段階利用により、ATPの総濃度は上昇し、持続時間が延長され、タンパク質合成の産生力が改善される。以前の報告によると、ホスホエノールピルビン酸シンセターゼの代謝阻害剤(シュウ酸ナトリウム)を添加すると、ATP濃度がさらに増加された。また、ATP供給が改善されると産生力が増加された。また、ATPレベルが増加している場合には、アミノ酸の初濃度が増加するとタンパク質合成の収率はさらに増加した。最後に、アミノ酸、PEP、およびマグネシウムをフェドバッチ(fed−batch)添加することにより、合成反応を3時間以上持続させて、最終収率750μg/mLを産生することができる。
【0072】
解糖経路の最初の中間体であるグルコース−6−リン酸を二次エネルギー源として使用することで、PEP系を用いる場合より収率が高くなることも示されている。PEPと比較した場合、グルコース−6−リン酸を使用すると、主に反応期間を延長することによって合成収率が実質的に増加した。これはATPの供給増加によると思われ、グルコース−6−リン酸は、PEPまたはピルビン酸と比較したとき、ATPを再生する可能性が大きいことにより説明することができる。PEPまたはピルビン酸は最大で等しい数のATP分子しか再生できないが、グルコース−6−リン酸のピルビン酸への酸化過程中には3分子のATPを産生することができる。(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼによって還元される2分子のNAD分子を再生するためには、解糖経路から産生されるピルビン酸は2分子必要である)。本発明者らは、無細胞タンパク質合成を支持するための二次エネルギー源として解糖中間体のいずれも使用することができることをこれらの結果は強く暗示している。
【0073】
グルコースの使用は、経済効率に関して従来のタンパク質発現技術と競争力の高い無細胞系を提供すると思われる。本発明者らの最初の結果はこのような可能性を示唆している。グルコースをヘキソキナーゼと共に使用するとタンパク質合成を支持した。また、ATPはこの系において酸化的リン酸化によって再生されないが、本発明の細胞抽出物は、酸化的リン酸化に使用されると思われ、生きている細胞の機能を模倣することによってタンパク質合成にATPを供給するための極めて効率的な方法を提供する能動的膜小胞を含有することができる。
【0074】
各mRNAは複数回使用されるため、本発明者らは、ATPの翻訳への需要が優勢であると推定する。タンパク質合成過程中、EF−Tu回路は2分子のGTPsを消費し、EF−Gは、リボソームを移動させるためにさらにもう1つGTP分子を必要とする。また、tRNAのアミノアシル化過程中にATP分子はAMPに加水分解されるため、アミノ酸残基を付加するためには5分子のATPが必要であると本発明者らは推定した。これらの仮定に基づいて、本発明者らはATPの利用効率を算出した(表2)。
【0075】
【表2】異なるATP再生系におけるATPの利用効率
1PEPから産生されるピルビン酸を使用するために、材料および方法の項に記載したように、NAD、CoA、およびシュウ酸塩を反応混合物に添加した。
2アミノ酸の初濃度は2 mMであった。
【0076】
PEPを使用する標準的な反応では、15μLの反応中に合成されたCATの最終量は99.3 pモルであり、2.2×10−8モルのペプチド結合となる。従って、タンパク質合成に0.11μモルのATPが使用されたと本発明者らは仮定することができる。同じ反応混合物に産生されうるATPの総量は0.5μモルであるので、ATPの利用効率は22%であると推定される。一方、本発明者らは、ピルビン酸を使用した反応において、1.50×10−8モルのペプチド結合に等しい66pモルのCATを産生することができた。ATP再生のためにはピルビン酸は半分のみ使用されうるので、0.25μモルのATPを産生することができ、利用効率は30%になる。
【0077】
従来のPEP系にNAD、CoA、およびシュウ酸塩を添加することによって、本発明者らは、15μLの反応において182 pモルのCATを得ることができた。利用可能なATPの総量は0.75μモル(PEPから0.5μモル、およびPEPから産生されるピルビン酸から0.25μモル)であるので、ATPの利用効率は27.0%であると推定された。しかし、アミノ酸の初濃度を2 mMに増加すると、産生されるCATの量は313 pモルに増加し、ATPの利用効率は47.4%に達した。
【0078】
一方、グルコース−6−リン酸を用いたATPの利用効率はわずか8.8%であった(ただし、1分子のグルコース−6−リン酸は3分子のATPを産生することができる)。従って、タンパク質合成には潜在的なATPプールのごくわずかしか使用されない。これは、再生されるATPの大半が、本発明の細胞抽出物中に存在するATPアーゼ活性によって分解されるか、または副反応が解糖中間体を分解していることを示唆している。言い換えると、例えば、ATPの非生産的な分解を触媒する酵素をコードする遺伝子を阻害することによって、そのような活性を同定し、除去することによってグルコース−6−リン酸からのタンパク質合成を改善することを本発明者らは予測することができる。増殖に必須である酵素活性を除去するために、本発明者らは、細胞抽出物調製中にそのような酵素を除去できるように、親和性標識でそのような酵素を遺伝子的に標識することができる。ATP再生は試薬価格の実質的な部分を占めるので、ATP利用効率の改善も無細胞タンパク質合成の経済性に大きな影響を与える。大腸菌株のこのような「遺伝子最適化」を、改善したATP再生系と組み合わせることにより、効率の高いバッチ無細胞タンパク質合成系が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼの合成を示すグラフである。33 mMのピルビン酸ナトリウム、0.33 mMのNADおよび0.27 mMのCoAを、表示の組み合わせで15μLの反応混合物に添加して、合成反応中にATPを再生した。反応は2時間実施し、TCAに不溶の放射性物質を測定した。対照反応では、ピルビン酸および補因子の代わりに33 mMのPEPを使用した。
【図2】ピルビン酸によるATP再生機序の案である。
【図3】タンパク質合成およびATP濃度の時間経過である。33 mMのPEPを含有する120μLの標準的な反応混合物を調製し、0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoAおよび2.7 mMのシュウ酸ナトリウムの存在下においてインキュベートした。ATP濃度(A)を測定するために、10μLの試料を取り、同じ容量の10% TCA溶液と混合し、10分間遠心した。材料と方法の項に記載したように、10μLの上清をATP分析に使用した。所定の経過時点において、5μLの試料を取り、TCAに不溶の放射性物質をカウントして、タンパク質合成(B)を測定した。白丸は対照反応、黒丸はNADおよびCoAを含有し、アスタリスクはNAD、CoAおよびシュウ酸塩を含有し、黒四角はNAD、CoA、シュウ酸塩および2 mMのアミノ酸を含有する。各反応の終点において、5μLの試料を取り、16% SDS−PAGEゲルで実施した。標準的な手法により、ゲルをクーマシーブルーで染色した(図3Aの差込)。レーンMは標準分子量マーカー、Cは鋳型プラスミドを含有しない対照反応、1は標準的な反応、2は0.33 mMのNADおよび0.27 mMのCoAを含有する反応、3は0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoAおよび2.7 mMのシュウ酸ナトリウムを含有する反応、4は0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoA、2.7 mMのシュウ酸ナトリウムおよび2 mMのアミノ酸を含有する反応である。
【図4Aおよび4B】タンパク質合成中におけるPEP、アミノ酸およびマグネシウムの補給を示す。合成反応は、2 mMのアミノ酸、33 mMのPEP、0.33 mMのNAD、0.27 mMのCoAおよび2.7 mMのシュウ酸ナトリウムが120μlの容量中に存在する場合に実施した。インキュベーション期間中に、初濃度のPEP、アミノ酸および酢酸マグネシウムを1時間ごとに反応に添加した。所定の経過時点に5μlの試料を取り、ATP濃度(図4A)およびCAT合成の収率(図4B)を測定した。同じ容量の水をシングルバッチ反応に添加した。白丸はシングルバッチ反応、黒丸は添加を行った反応である。各反応の終点において取った試料をSDS−ポリアクリルアミドゲルで分析し、次にクーマシーブルー染色を実施した(パネルBの差込)。Mは標準分子量マーカー、Cは鋳型プラスミドを含有しない対照、Bはシングルバッチ反応、FBはPEP、アミノ酸および酢酸マグネシウムを添加した反応である。矢印は発現したCATを示す。
【図5】グルコース−6−リン酸を二次エネルギー源として使用したCATの発現を示す。33 mMのグルコース−6−リン酸、0.33 mMのNADおよび0.27 mMのCoAを120μLの合成反応に添加した。5μLおよび10μLの試料を取り、タンパク質合成およびATP濃度をそれぞれ測定し、図3のように分析した。白丸はPEPを使用した従来の反応、黒丸はグルコース−6−リン酸をエネルギー源として使用した反応である。
Claims (17)
- 主要なエネルギー源としてATPを含む合成反応に、エネルギー源としてグルコースまたは解糖中間体を、NADHと組み合わせて添加する段階を含む、生体高分子を合成する方法。
- グルコースまたは解糖中間体がピルビン酸である、請求項1に記載の方法。
- グルコースまたは解糖中間体がグルコースであり、合成反応が酵素ヘキソキナーゼをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- グルコースまたは解糖中間体がグルコース−6−リン酸である、請求項1に記載の方法。
- グルコースまたは解糖中間体がホスホエノールピルビン酸である、請求項1に記載の方法。
- 合成反応が、アセチルCoAまたはコエンザイムAをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 第2のエネルギー源が少なくとも約1 mMの初濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
- 第2のエネルギー源が少なくとも約10 mMの初濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
- ヘキソキナーゼが、少なくとも約0.5 U/mlの初濃度で存在する、請求項3に記載の方法。
- 合成反応が、ピルビン酸代謝の代謝阻害剤を含む、請求項1に記載の方法。
- 阻害剤がシュウ酸を含む、請求項10に記載の方法。
- 合成反応が、酵素ホスホエノールピルビン酸シンセターゼを欠損している大腸菌抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
- 生体高分子の合成が、mRNAを翻訳してポリペプチドを産生することを含む、請求項1に記載の方法。
- 合成が、DNA鋳型からmRNAを転写することも含む、請求項13に記載の方法。
- 生体高分子の合成がバッチ反応として実施される、請求項1に記載の方法。
- 生体高分子の合成が連続反応として実施される、請求項1に記載の方法。
- エネルギー源が、合成中に間隔をおいて添加される、請求項15に記載の方法。
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