JP4703111B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
(a)正極活物質からなる正極、
(b)負極活物質からなる負極、ならびに
(c)非水電解質
を備える非水電解質二次電池に関する。本発明において、正極活物質は、LiとCoとを含む複合酸化物の粒子からなり、前記複合酸化物は、さらに元素M1および元素M2を含んでいる。ここで、元素M1は、Mg、CuおよびZnよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、元素M2は、Al、Ca、Ba、Sr、YおよびZrよりなる群から選ばれた少なくとも1種である。元素M1は、前記複合酸化物の粒子中に均一に分布しており、元素M2は、前記粒子の内部よりも表層部に多く分布している。また、非水電解質は、LiPF6およびLiBF4を溶質として含む。
また、粒子の表面から0.3r以内および中心から0.3r以内の領域における元素濃度は、例えば以下の方法で測定可能である。
また、割合R2は、割合R1以下であることが好ましい。
また、前記粒子の比表面積は、0.2m2/g以上1.2m2/g以下であることが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態にかかる非水電解質二次電池の一部を切り欠いた斜視図である。
本発明の非水電解質二次電池において、正極活物質としては、LiとCoとを含む複合酸化物の粒子からなるものが用いられる。この複合酸化物は、さらに元素M1および元素M2を含む。ここで、元素M1は、Mg、CuおよびZnよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、元素M2は、Al、Ca、Ba、Sr、YおよびZrよりなる群から選ばれた少なくとも1種である。元素M1は、上記粒子中に均一に分布しており、元素M2は、上記粒子の内部よりも表層部に多く分布している。
(1)工程A
工程Aは、Mg、CuおよびZnよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素M1とCoとを含み、元素M1とCoとが均一に分布している化合物Xを調製する工程である。化合物Xには、例えばM1を含む水酸化コバルト、M1を含む酸化コバルト、M1を含む炭酸コバルトなどが適する。M1を含む酸化物は、空気中で安定であり、コスト的に最も有利な四酸化三コバルト(Co3O4)からなることが好ましいが、一酸化一コバルト(CoO)、三酸化二コバルト(Co2O3)等からなるものでもよい。
まず、Co塩には、硫酸コバルト、硝酸コバルトなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、特に硫酸コバルトが好ましい。
また、前記溶液に注ぐアルカリ水溶液のアルカリ濃度は、例えば10〜50重量%である。アルカリ水溶液に溶解させるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを用いることができる。
Co塩とM1の塩とを溶解させた水溶液およびアルカリ水溶液の温度は、いずれも特に限定されないが、例えば20〜60℃である。
工程Bは、Al、Ca、Ba、Sr、YおよびZrよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素M2を含む化合物Zと、化合物Xと、リチウム化合物とを、混合し、得られた混合物を加熱することにより、LiとCoとM1とM2とを含む複合酸化物を得る工程である。
ただし、割合R2は、割合R1以下であることが好ましい。割合R2が、割合R1をこえると、放電容量の低下が大きくなる。
酸化リチウムなどを用いることができる。なかでも炭酸リチウムおよび水酸化リチウムが、環境面とコスト面で最も有利である。
工程Bでは、前記混合物を800℃以上1050℃以下、さらには900℃以上1050℃以下で加熱することが好ましい。加熱温度が800℃未満では、LiとCoとM1とM2とを含む複合酸化物の結晶性が低くなり、それを用いた電池に充分な放電容量が得られない。一方、加熱温度が1050℃をこえると、LiとCoとM1とM2とを含む複合酸化物の比表面積が低くなり、それを用いた電池の高負荷特性が低くなる。
および元素M2を含んでおり、M1は、前記粒子中に均一に分布しており、M2は、前記粒
子の内部よりも表層部に多く分布している正極活物質を得ることができる。
非水電解質二次電池に用いる正極活物質を、以下に述べる共沈法を採用して調製した。
工程A
硫酸コバルトおよび硫酸マグネシウムを溶解させた水溶液を調製した。前記水溶液における硫酸コバルトの濃度は1mol/Lとし、硫酸マグネシウムの濃度は、正極活物質に含まれるMgの量がモル比で2%となるように適宜調整した。攪拌下にある前記水溶液を50℃に維持し、その中に、水酸化ナトリウムを30重量%含む水溶液をpH12になるように滴下して、マグネシウム含有水酸化コバルトを沈殿させた。水酸化コバルトの沈殿を濾過して水洗し、空気中で乾燥させ、次いで400℃で5時間焼成し、マグネシウム含有酸化コバルトを得た。
得られたマグネシウム含有酸化コバルトと、水酸化アルミニウムと、炭酸リチウムとを、Alの量がモル比で0.5%となるように混合した。なお、Li:(Co+Mg+Al)は、モル比で1:1とした。この混合物をロータリーキルンに入れ、空気雰囲気中で650℃で10時間予備加熱した。次いで、予備加熱後の混合物を電気炉内で950℃まで2時間で昇温し、950℃で10時間焼成することにより、正極活物質を合成した。
測定用の試料は、活物質を、エポキシ樹脂と混合し、硬化させたのち、硬化物を切断、研磨して調製した。この試料を、上記分析法(主として、EPMA)で面分析して、粒子の表層部と中心部の元素分布および濃度分布について測定した。
[正極活物質粒子表面からの深さ方向の分析]
粒子表面からの深さ方向の分析は、粒子表面を徐々にスパッタリングし、その表面を主としてTOF−SIMS測定を行うことにより実施した。
平均粒子径が約20μmになるように粉砕・分級した100重量部の鱗片状黒鉛に、結着剤としてスチレン/ブタジエンゴムを3重量部と、カルボキシメチルセルロースを1重量%含む水溶液100重量部とを加え、撹拌・混合し、ペースト状の負極合剤を得た。この負極合剤を、集電体となる厚さ15μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延し、所定寸法に裁断して、負極を得た。
上記のようにして得られた正極と負極とを用いて、図1に示されるような角型非水電解質二次電池(幅34mm、高さ50mm)を組み立てた。
[放電容量]
環境温度20℃で、各電池の充放電サイクルを繰り返した。ここで、各充放電サイクルにおいて、充電を、以下のような条件で行った。つまり、最大電流値600mAで、充電終止電位4.2Vの定電流充電を行い、電位が4.2Vに到達してからは2時間の定電圧充電を行った。また、放電を、以下のような条件で行った。つまり、電流値600mAで、放電終止電位3.0Vの定電流放電を行った。1サイクル目の正極活物質1gあたりの放電容量を表1に示す。
保存前の放電容量に対する、高温下、充電状態で保存した後の放電容量の割合(容量回復率)を、以下のように測定した。
環境温度20℃で、上述と同じ条件で電池の充放電を5サイクル繰り返したのち、電池を充電し、85℃で3日間保存した。こののち、20℃で、電池を放電した。次いで、電池の充放電を、上述の条件で1サイクル行うことにより、保存後の放電容量を測定した。測定結果から、保存前の放電容量に対する保存後の放電容量を、容量回復率として百分率(%)で求めた。なお、保存前の放電容量とは、上記1サイクル目の正極活物質1gあたりの放電容量であり、保存後の放電容量とは、保存後の正極活物質1gあたりの放電容量である。得られた結果を、表1に示す。
環境温度20℃で、上記のような条件で、充放電サイクルを100回繰り返して、100サイクル目の放電容量の、1サイクル目の放電容量に対する割合を、容量維持率として百分率(%)で求めた。同様に、得られた結果を表1に示す。
表1に示されるように、LiPF6およびLiBF4を溶質として含む非水電解質を用いた電池は、比較電池1の場合と同程度、もしくはそれ以上の容量維持率を有することが理解される。
上記のような条件で、充放電を3サイクル繰り返し、その終了後に、環境温度20℃で、最大電流値600mA、終止電圧4.4Vで定電流充電を行い、4.4Vに到達してからは2時間の定電圧充電を行った。充電終了後、電池を分解し、正極より正極合剤を取り出し、そのうちの2mgをSUS PANに入れ、熱安定性の指標を与えるDSC測定を行った。測定は、RIGAKU Thermo Plus(理学電機製)を用い、室温から400℃まで10℃/分で空気雰囲気で行った。表1に、測定で観測された第1発熱温度も示しておく。
電池A3(比較電池1)については、上記の通りである。
[放電容量]
環境温度20℃で、各電池の充放電サイクルを繰り返した。各充放電サイクルにおける、充電および放電の条件は、実施例1の場合と同様である。1サイクル目の正極活物質1gあたりの放電容量を表2に示す。
図2に示されるように、電池A1〜A6は、Mgの割合の増加に伴う容量低下が小さいが、電池B1〜B4は、容量低下が大きくなっている。このような結果は、電池B1〜B4では、Mgが正極活物質の表層部に偏在しており、また、未反応のMg化合物が残存しやすいことに基づくものと考えられる。
実施例1と同様にして、容量維持率を測定した。結果を表1に示す。
また、割合R1と100サイクル目の容量維持率との関係を図3に示す。
実施例1と同様にして、第1発熱温度を測定した。得られた結果を表2に示す。
図4に示されるように、電池A1〜A6および電池B1〜B4は、共に正極活物質に含まれるMgの割合の増加に伴い、熱安定性が向上している。このような結果は、Mgにより、充電状態の正極活物質の結晶構造が安定化されていることに基づくものと考えられる。また、電池A1〜A6の方が、電池B1〜B4よりも良好な結果を示していることから、電池A1〜A6では、正極活物質内にMgが均一に存在しているため、Mgの添加効果が少量で効率よく得られていることがわかる。
電池A7〜A12に用いる正極活物質は、Mgの割合R1を2%に固定し、Alの割合R2を変化させたこと以外、実施例1と同様に合成した。
硫酸コバルト、硫酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウムを溶解させた水溶液を調製した。前記水溶液における硫酸コバルトの濃度は1mol/Lとし、硫酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウムの濃度は表3に従って適宜調整した。攪拌下にある前記水溶液を50℃に維持し、その中に、水酸化ナトリウムを30重量%含む水溶液をpH12になるように滴下して、マグネシウム/アルミニウム含有水酸化コバルトを沈殿させた。この水酸化コバルトの沈殿を濾過して水洗し、空気中で乾燥させ、次いで400℃で5時間焼成し、マグネシウム/アルミニウム含有酸化コバルトを得た。得られたマグネシウム/アルミニウム含有酸化コバルトを用い、水酸化アルミニウムを用いなかったこと以外、実施例1と同様に正極活物質を合成した。
また、電池B6に用いる正極活物質中では、MgとAlの両者が、活物質粒子中に均質に分布していた。すなわち、電池B6に用いる正極活物質中には、Alが活物質粒子の内部により多く取り込まれていた。
また、Alの割合R2と1サイクル目の放電容量との関係を図5に示す。
また、Alの割合R2と100サイクル目の容量維持率との関係を図6に示す。
また、Alの割合R2と第1発熱温度との関係を図7に示す。
また、Alの割合R2とタップ密度との関係を図8に示す。
電池A13〜A17に用いる正極活物質は、Mgの割合R1を2%に固定し、工程Bにおいて、水酸化アルミニウムの代わりに水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化イットリウムまたは硝酸ジルコニウムを用いるとともに、Ca、Ba、Sr、YまたはZrの割合R2を0.5%に固定したこと以外、参考例1の電池A1の場合と同様に合成した。
表4に示すように、参考例1と同様に、電池A13〜A17の方が、電池B9〜B13よりも、容量が大きく、容量維持率が高く、熱安定性も優れている。このような結果は、電池B9〜B13では、Mgが正極活物質の表層部に偏在しており、また、未反応のMg化合物が残存しやすいのに対し、電池A13〜A17では、Mgが正極活物質に均一に分布していることに基づくものと考えられる。
また、Al、Ca、Ba、Sr、YおよびZrのいずれを用いても、同様の傾向が見られることがわかる。
表5に示すように、参考例1と同様に、電池A18〜A19の方が、電池B14〜B15よりも、容量が大きく、容量維持率が高く、熱安定性も優れている。このような結果は、電池B14〜B15では、CuまたはZnが正極活物質の表層部に偏在しており、また、未反応のCuまたはZn化合物が残存しやすいのに対し、電池A18〜A19では、CuまたはZnが正極活物質に均一に分布していることに基づくものと考えられる。
また、Mg、CuおよびZnのいずれを用いても、同様の傾向が見られることがわかる。
また、電池A21に用いる正極活物質は、Mg含有酸化コバルトの代わりに、Mgを均一に固溶させた炭酸コバルトを用いたこと以外、参考例1の電池A3の場合と同様に合成した。
また、電池B17に用いる正極活物質は、酸化コバルトの代わりに、炭酸コバルトを用いたこと以外、参考例1の電池B2の場合と同様に合成した。
表6に示すように、参考例1と同様に、電池A20〜A21の方が、電池B16〜B17よりも、容量が大きく、容量維持率が高く、熱安定性も優れている。このような結果は、電池B16〜B17では、Mgが正極活物質の表層部に偏在しており、また、未反応のMg化合物が残存しやすいのに対し、電池A20〜A21では、Mgが正極活物質に均一に分布していることに基づくものと考えられる。
また、Mg含有炭酸コバルトやMg含有水酸化コバルトを、Mg含有酸化コバルトの代わりに用いても、参考例1と同様の傾向が見られることがわかる。
2 正極リード
3 負極リード
4 電池ケース
5 封口板
6 負極端子
7 封栓
Claims (4)
- 非水電解質二次電池であって、
(a)正極活物質からなる正極、
(b)負極活物質からなる負極、ならびに
(c)非水電解質
を備え、
前記正極活物質は、LiとCoとを含む複合酸化物の粒子からなり、
前記複合酸化物は、さらに元素M1および元素M2を含んでおり、
元素M1は、Mg、CuおよびZnよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
元素M2は、Al、Ca、Ba、Sr、YおよびZrよりなる群から選ばれた少なくと
も1種であり、
元素M1は、前記粒子中に均一に分布しており、
元素M2は、前記粒子の内部よりも表層部に多く分布しており、
前記複合酸化物に含まれるLi、Co、M 1 およびM 2 の合計モル数に占めるM 1 のモル数の割合R 1 が、0.5%以上8%以下であり、前記合計モル数に占めるM 2 のモル数の割合R 2 が、0.05%以上2%以下であり、
前記非水電解質が、LiPF6およびLiBF4を溶質として含む、
非水電解質二次電池。 - 割合R2が、割合R1以下である請求項1記載の非水電解質二次電池。
- 前記粒子の半径をrとするとき、粒子表面から0.3r以内の領域には、粒子中心から0.3r以内の領域の1.2倍以上の濃度で元素M2が分布している請求項1記載の非水電解質二次電池。
- 前記粒子の平均粒子径が、1μm以上20μm以下であり、比表面積が、0.2m2/g以上1.2m2/g以下である請求項1記載の非水電解質二次電池。
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